摺動式等速自在継手
【課題】 スプラインに捩れ角を設けることなく、簡便な手段により、内側継手部材とシャフトとの嵌合部に生じるガタを確実に低減する。
【解決手段】 外側継手部材10と、その外側継手部材10との間で軸方向変位および角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材20とを備え、その内側継手部材20の孔22にシャフト50を挿入してトルク伝達可能に嵌合させた摺動式等速自在継手であって、内側継手部材20とシャフト50との嵌合部60をシャフト50の挿入側に配設すると共に、その嵌合部60に軸方向荷重を付与する固定部70をシャフト50の反挿入側に配設する。嵌合部60は、内側継手部材20の孔22のテーパ状開口部位にスプライン23を形成すると共に、シャフト50の外周面のテーパ状部位にスプライン53を形成した構造を備えている。固定部70は、シャフト50の外周面に形成されたねじ52と、そのねじ52との螺合によりシャフト50に対して内側継手部材20を締め付け固定するナット72とで構成されている。
【解決手段】 外側継手部材10と、その外側継手部材10との間で軸方向変位および角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材20とを備え、その内側継手部材20の孔22にシャフト50を挿入してトルク伝達可能に嵌合させた摺動式等速自在継手であって、内側継手部材20とシャフト50との嵌合部60をシャフト50の挿入側に配設すると共に、その嵌合部60に軸方向荷重を付与する固定部70をシャフト50の反挿入側に配設する。嵌合部60は、内側継手部材20の孔22のテーパ状開口部位にスプライン23を形成すると共に、シャフト50の外周面のテーパ状部位にスプライン53を形成した構造を備えている。固定部70は、シャフト50の外周面に形成されたねじ52と、そのねじ52との螺合によりシャフト50に対して内側継手部材20を締め付け固定するナット72とで構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、船舶や各種産業機械の動力伝達系において使用され、例えば4WD車やFR車などで使用されるドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれて駆動側と従動側の二軸間で軸方向変位および角度変位を許容する摺動式等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達するドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれる等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
【0003】
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、一般的に、エンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手をシャフトで連結した構造を具備する。
【0004】
このドライブシャフトのエンジン側に組み付けられる摺動式等速自在継手の一つに、トルク伝達部材としてローラを用いたローラタイプのトリポード型等速自在継手(TJ)がある。他の摺動式等速自在継手には、トルク伝達部材としてボールを用いたボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)がある。また、ドライブシャフトの駆動車輪側に組み付けられる固定式等速自在継手には、ツェッパ型等速自在継手(BJ)やアンダーカットフリー型等速自在継手(UJ)がある。
【0005】
これら各種の等速自在継手は、内側継手部材の孔にシャフトの軸端部を挿入してスプライン嵌合させた構造を具備する。つまり、内側継手部材の孔の内周面にスプラインを形成すると共に、シャフトの軸端部の外周面にスプラインを形成し、内側継手部材の孔にシャフトの軸端部を挿入することにより、内側継手部材のスプラインとシャフトのスプラインとを嵌合させてトルク伝達可能としている。
【0006】
ドライブシャフトに使用される等速自在継手では、自動車のNVH(Noise Vibration Harshness)特性の向上を図るため、内側継手部材のスプラインとシャフトのスプラインとの嵌合部に生じるガタを抑制する手段が種々講じられている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された等速自在継手では、シャフトのスプラインに捩れ角を設け、その捩れ角を持つシャフトのスプラインを内側継手部材のスプラインに嵌合させることにより、その嵌合部に生じるガタを低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平6−33220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述したように、特許文献1で開示された従来の等速自在継手は、内側継手部材のスプラインとシャフトのスプラインとの嵌合部に生じるガタを低減することを目的として、シャフトのスプラインに捩れ角を設けた構造を具備している。
【0009】
しかしながら、内側継手部材とシャフトとのスプライン嵌合をタイトにするため、シャフトのスプラインの捩れ角を大きく設定すると、内側継手部材の孔にシャフトを挿入するに際して、大きな荷重を付与しなければならず、内側継手部材とシャフトとをスプライン嵌合により結合させることが困難となる。
【0010】
これを回避するため、シャフトのスプラインの捩れ角を小さく設定すると、ルーズなスプライン嵌合になり易く、その嵌合部に生じるガタを完全になくすことが難しくなってくる。このように、スプラインの捩れ角を最適に設定することは非常に難しい。
【0011】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、スプラインに捩れ角を設けることなく、簡便な手段により、内側継手部材とシャフトとの嵌合部に生じるガタを確実に低減し得る摺動式等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、外側継手部材と、その外側継手部材との間で軸方向変位および角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、その内側継手部材の孔に軸部材を挿入してトルク伝達可能に嵌合させた摺動式等速自在継手であって、内側継手部材と軸部材との嵌合部を軸部材の挿入側に配設すると共に、その嵌合部に軸方向荷重を付与する固定部を軸部材の反挿入側に配設したことを特徴とする。ここで、「軸部材の挿入側」とは、内側継手部材に対して軸部材が軸方向に沿って挿入される側を意味し、「軸部材の反挿入側」とは、内側継手部材に対して軸部材が軸方向に沿って挿入される側の反対側を意味する。
【0013】
本発明では、内側継手部材と軸部材との嵌合部を軸部材の挿入側に配設すると共に、その軸部材の反挿入側に配設された固定部により、前述の嵌合部に軸方向荷重を付与する。この軸方向荷重の付与により、嵌合部では、軸方向と角度をなす嵌合面が密着して軸方向および径方向のガタを低減することができる。
【0014】
本発明における嵌合部は、内側継手部材の孔をテーパ状に開口させ、そのテーパ状開口部位にスプラインを形成すると共に、軸部材の外周面でテーパ状開口部位と対向するように形成されたテーパ状部位にスプラインを形成し、内側継手部材のスプラインと軸部材のスプラインとを嵌合させた構造が望ましい。このようにすれば、内側継手部材のテーパ状開口部位に形成されたスプラインと軸部材のテーパ状部位に形成されたスプラインとを、固定部による軸方向荷重の付与でタイトに嵌合させることができる。
【0015】
また、本発明における嵌合部は、内側継手部材の孔の開口端面部位に凹凸条を放射状に形成すると共に、軸部材の外周に形成されたフランジの開口端面部位と対向する端面部位に凹凸条を放射状に形成し、内側継手部材の凹凸条と軸部材の凹凸条とを嵌合させた構造であってもよい。このようにすれば、内側継手部材の孔の開口端面部位に形成された凹凸条と軸部材のフランジの端面部位に形成された凹凸条とを、固定部による軸方向荷重の付与でタイトに嵌合させることができる。
【0016】
本発明における固定部は、軸部材の外周面に形成されたねじと、そのねじとの螺合により軸部材に対して内側継手部材を締め付け固定するナットとで構成されていることが望ましい。このようにすれば、ナットにより内側継手部材を軸部材に対して締め付け固定することで嵌合部に軸方向荷重を付与することができる。
【0017】
なお、本発明におけるナットは、セルフロックナットであることが望ましい。ここで、「セルフロックナット」とは、振動などに対する緩み止め構造を備えたナットを意味する。このようなセルフロックナットを使用すれば、軸部材に対する内側継手部材の締め付け固定が強固となり、振動などによる緩みを未然に防止できる。
【0018】
本発明において、内側継手部材の孔の開口端面部位に、ナットが当接するチャンファ面を形成した構造が望ましい。このようにすれば、ナットをチャンファ面に当接させてねじ込むことにより、嵌合部に軸方向荷重を付与することが容易となる。
【0019】
また、本発明における固定部は、内側継手部材の内径と軸部材の外径との間に環状隙間を形成し、その環状隙間に押し込み部材を圧入することにより軸部材に対して内側継手部材を固定した構造であってもよい。このようにすれば、内側継手部材と軸部材との間の環状隙間に押し込み部材を圧入することで嵌合部に軸方向荷重を付与することができる。
【0020】
本発明における押し込み部材は、環状隙間の全周に亘って圧入されていることが望ましい。このようにすれば、押し込み部材により嵌合部の全周に亘って軸方向荷重を均等に付与することができる。なお、この押し込み部材は、環状隙間の円周方向複数箇所に圧入されているようにしてもよい。
【0021】
本発明において、内側継手部材の孔の開口端面部位に、押し込み部材が当接するチャンファ面を形成した構造が望ましい。このようにすれば、押し込み部材をチャンファ面に当接させて押し込むことにより、嵌合部に軸方向荷重を付与することが容易となる。
【0022】
なお、本発明における外側継手部材は、軸線方向に延びる三本のトラック溝が内周面に形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成され、内側継手部材は、先端がトラック溝内に挿入された三本の脚軸を有するトリポード部材であり、脚軸に回転自在に支持されると共に外側継手部材のトラック溝に挿入されてローラ案内面に沿って案内されるローラを備えた構造を具備することが望ましい。つまり、前述のような構造を具備するローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用可能である。
【0023】
また、本発明における外側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が内周面の複数箇所に形成され、内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールと、外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在してボールを保持するケージとを備えた構造が望ましい。つまり、このような構造を具備するボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手に適用可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、内側継手部材と軸部材との嵌合部を軸部材の挿入側に配設すると共に、その軸部材の反挿入側に配設された固定部により、前述の嵌合部に軸方向荷重を付与する。この軸方向荷重の付与により、嵌合部では、軸方向と角度をなす嵌合面が密着して軸方向および径方向のガタを低減することができる。
【0025】
その結果、従来のようにスプラインに捩れ角を設けることなく、簡便な手段により、内側継手部材と軸部材とを嵌合部によりタイトに結合させることができ、信頼性の高い長寿命の摺動式等速自在継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【図2】図1の実施形態におけるトリポード型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図3】図2のA方向から見た矢視図である。
【図4】図1の実施形態におけるダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図5】図4のB方向から見た矢視図である。
【図6】本発明の他の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【図7】図6の実施形態におけるトリポード型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図8】図6の実施形態におけるダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【図10】図9の実施形態におけるトリポード型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図11】図9の実施形態におけるダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【図13】図12の実施形態におけるトリポード型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図14】図12の実施形態におけるダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図15】環状の押し込み部材を使用した固定部を示す部分側面図である。
【図16】棒状の押し込み部材を使用した固定部を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る摺動式等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、ローラタイプのトリポード型等速自在継手およびボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手を例示する。なお、本発明は、シングルローラタイプのトリポード型等速自在継手以外に、作動時の低振動化を可能としたダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手にも適用可能である。
【0028】
図2および図3はローラタイプのトリポード型等速自在継手の基本構成を示し、図2は継手の軸線に対する縦断面図、図3は図2の継手をA方向から見た矢視図である(但し、一つのローラ30のみを断面で示す)。この実施形態のトリポード型等速自在継手は、図2および図3に示すように、外側継手部材10と、トリポード部材である内側継手部材20と、ローラ30とで主要部が構成されている。
【0029】
外側継手部材10は、一端が開口したカップ状をなし、軸方向に延びる三本の直線状トラック溝11が内周面に円周方向等間隔で形成されている。各トラック溝11は、その内側両壁に互いに対向する一対のローラ案内面12を有する。ローラ案内面12は円弧状断面を有し、外側継手部材10の軸線方向に直線状に延びる。この外側継手部材10の内部には、内側継手部材20とローラ30が軸方向摺動自在に収容されている。内側継手部材20は、円筒状をなすボスの外周面に三本の脚軸21が円周方向等間隔(120°間隔)で放射状に一体形成されたものである。脚軸21は、その先端がトラック溝11の底部付近まで半径方向に延在し、その外周面は一般的に円筒面とされている。
【0030】
外側継手部材10のトラック溝11のローラ案内面12と脚軸21の外周面との間に針状ころ40を介してローラ30が回転自在に配設される。ローラ30の外周面は縦断面円弧状とされ、ローラ案内面12とアンギュラ接触により二箇所で接触する場合と、サーキュラ接触により一箇所で接触する場合がある。一方、ローラ30の内周面は、円筒状に形成されている。このローラ30と脚軸21との間に、複数の針状ころ40が、保持器のない、いわゆる単列総ころ状態で配設されている。脚軸21の外周面は針状ころ40の内側転動面を構成し、ローラ30の内周面は針状ころ40の外側転動面を構成している。
【0031】
図4および図5はボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手の基本構成を示し、図4は継手の軸線に対する縦断面図、図5は図4の継手をB方向から見た矢視図である。この実施形態のダブルオフセット型等速自在継手は、図4および図5に示すように、外側継手部材110、内側継手部材120、ボール130およびケージ140で主要部が構成されている。
【0032】
この等速自在継手は、一端が開口したカップ状をなし、軸方向に延びる直線状トラック溝111が内周面の複数箇所に形成された外側継手部材110と、軸方向に延びる直線状トラック溝121が外側継手部材110のトラック溝111と対をなして外周面の複数箇所に形成された内側継手部材120と、外側継手部材110のトラック溝111と内側継手部材120のトラック溝121との間に配されたボール130と、外側継手部材110の内周面と内側継手部材120の外周面との間に介在してボール130を保持するケージ140とを備えた構造を具備する。
【0033】
なお、この実施形態では、6個ボールの等速自在継手(図5参照)を例示するが、8個ボールの等速自在継手にも適用可能であり、ボール130の個数は任意である。この外側継手部材110の内部には、内側継手部材120、ボール130およびケージ140が軸方向摺動自在に収容されている。
【0034】
図2のトリポード型等速自在継手および図4のダブルオフセット型等速自在継手において、この内側継手部材20,120の孔22,122に軸部材であるシャフト50,150が以下の構造でもって結合されている。この内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造については、トリポード型等速自在継手とダブルオフセット型等速自在継手で以下に共通して説明する。
【0035】
内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造において、図2および図4に示すように、内側継手部材20,120とシャフト50,150との嵌合部60,160をシャフト50,150の挿入側(図中左側)に配設すると共に、その嵌合部60,160に軸方向荷重を付与する固定部70,170をシャフト50,150の反挿入側(図中右側)に配設する。
【0036】
この結合構造では、内側継手部材20,120の孔22,122にシャフト50,150の軸端部51,151を挿入して嵌合部60,160によりトルク伝達可能に連結した後、外側継手部材10,110の奥側に位置する固定部70,170により嵌合部60,160に軸方向荷重を付与する。そのため、この内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造は、ローラ30(ボール130およびケージ140)が取り付けられた内側継手部材20,120の孔22,122にシャフト50,150を挿入して嵌合させることにより組み付けた後、そのアッセンブリ体を外側継手部材10,110に収容するようにした摺動式等速自在継手の組み立て要領でもって実現可能となっている。この内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合作業は、アッセンブリ体を外側継手部材10,110に収容する前に行われる。
【0037】
この内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造における嵌合部60,160は、図1に示すように、内側継手部材20,120の孔22,122をテーパ状に開口させ、その軸方向外側(図中左側)へ向けて拡径するテーパ状開口部位にスプライン23,123を形成すると共に、シャフト50,150の外周面でテーパ状開口部位と対向するように形成されて軸方向外側(図中左側)へ向けて拡径するテーパ状部位にスプライン53,153を形成し、内側継手部材20,120のスプライン23,123とシャフト50,150のスプライン53,153とを嵌合させた構造を具備する。これらスプライン23,123およびスプライン53,153は、軸方向に延びる凹凸条となっている。
【0038】
また、内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造における固定部70,170は、シャフト50,150の軸端部51,151の外周面に形成されたねじ52,152と、そのねじ52,152との螺合によりシャフト50,150に対して内側継手部材20,120を締め付け固定するナット72,172とで構成されている。さらに、内側継手部材20,120の孔22,122の開口端面部位に、ナット72,172が当接するチャンファ面24,124を形成している。
【0039】
なお、このナット72,172において、内側継手部材20,120のチャンファ面24,124と対向する部位にチャンファ面74,174が形成されている。このように、ナット72,172のチャンファ面74,174を内側継手部材20,120のチャンファ面24,124に当接させることにより、ナット72,172を安定して押し込むことが可能となる。
【0040】
この内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造では、内側継手部材20,120の孔22,122にシャフト50,150の軸端部51,151を挿入して内側継手部材20,120のテーパ状開口部位のスプライン23,123にシャフト50,150のテーパ状部位のスプライン53,153を嵌合させる。このようにして、内側継手部材20,120とシャフト50,150との嵌合部60,160をシャフト50,150の挿入側に配設する。
【0041】
その上で、シャフト50,150の軸端部51,151のねじ52,152にナット72,172を螺合させ、そのナット72,172によりシャフト50,150に対して内側継手部材20,120を締め付け固定する。この時、ナット72,172のチャンファ面74,174を内側継手部材20,120のチャンファ面24,124に当接させた状態でナット72,172を押し込む。このナット72,172による締め付け固定でもって、前述の嵌合部60,160に軸方向荷重を付与する。このようにして、嵌合部60,160に軸方向荷重を付与する固定部70,170をシャフト50,150の反挿入側に配設する。
【0042】
内側継手部材20,120のテーパ状開口部位に形成されたスプライン23,123とシャフト50,150のテーパ状部位に形成されたスプライン53,153とを嵌合させると共に、ナット72,172により内側継手部材20,120をシャフト50,150に対して締め付け固定する。このナット72,172の締め付けで嵌合部60,160に軸方向荷重を付与することにより、その嵌合部60,160では、軸方向と角度(テーパ角度)をなすスプライン23,123とスプライン53,153の嵌合面が密着して軸方向および径方向のガタを低減することができ、内側継手部材20,120とシャフト50,150とをタイトに結合させることができる。なお、嵌合部60,160では、スプライン23,123およびスプライン53,153における凸条の幅寸法を凹条の幅寸法よりも大きく設定すれば、内側継手部材20,120とシャフト50,150とをより一層タイトに嵌合させることができる。
【0043】
以上の実施形態では、内側継手部材20,120のテーパ状開口部位にスプライン23,123を形成すると共に、シャフト50,150のテーパ状部位にスプライン53,153を形成した場合について説明したが、図6に示す構造の嵌合部61,161であってもよい。この嵌合部61,161は、内側継手部材20,120の孔22,122の開口端面部位に凹凸条25,125を放射状に形成すると共に、シャフト50,150の外周に形成されたフランジ54,154の端面部位に凹凸条55,155を放射状に形成し、内側継手部材20,120の凹凸条25,125とシャフト50,150の凹凸条55,155とを嵌合させた構造を具備する。
【0044】
なお、図7はトリポード型等速自在継手に適用した場合、図8はダブルオフセット型等速自在継手に適用した場合をそれぞれ例示する。この図7および図8において、図2および図4と同一部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。
【0045】
このように、内側継手部材20,120の孔22,122の開口端面部位に形成された凹凸条25,125とシャフト50,150のフランジ54,154の端面部位に形成された凹凸条55,155とを嵌合させると共に、ナット72,172により内側継手部材20,120をシャフト50,150に対して締め付け固定することで嵌合部61,161に軸方向荷重を付与することにより、その嵌合部61,161では、軸方向と角度(90°)をなす凹凸条25,125と凹凸条55,155の嵌合面が密着して軸方向および径方向のガタを低減することができ、内側継手部材20,120とシャフト50,150とをタイトに結合させることができる。なお、嵌合部61,161でも、凹凸条25,125および凹凸条55,155における凸条の幅寸法を凹条の幅寸法よりも大きく設定すれば、内側継手部材20,120とシャフト50,150とをより一層タイトに嵌合させることができる。
【0046】
図1に示す固定部70,170のナット72,172は、内径に雌ねじのみを刻設した一般的な構造のものであるが、この一般的なナット72,172に代えて、図9に示すように、セルフロックナット73,173を使用するようにしてもよい。このセルフロックナット73,173とは、振動などに対する緩み止め構造を備えたナットである。このようなセルフロックナット73,173を使用することにより、シャフト50,150に対する内側継手部材20,120の締め付け固定が強固となり、振動などによる緩みを未然に防止できる。セルフロックナット73,173には、雌ねじにナイロンリングや加締め板などを付加した構造のものなど種々の形態のものがある。
【0047】
なお、図10はトリポード型等速自在継手に適用した場合、図11はダブルオフセット型等速自在継手に適用した場合をそれぞれ例示する。この図10および図11において、図2および図4と同一部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。また、前述のセルフロックナット73,173は、図9に示す嵌合部60,160に対してだけでなく、図示しないが、図6に示す構造の嵌合部61,161に対しても適用可能である。
【0048】
また、前述の実施形態では、シャフト50,150の軸端部51,151のねじ52,152とそのねじ52,152に螺合するナット72,172(セルフロックナット73,173)で構成された固定部70,170について説明したが、これらねじ52,152およびナット72,172(セルフロックナット73,173)に代えて、図12に示す構造の固定部71,171であってもよい。
【0049】
この固定部71,171は、内側継手部材20,120の内径とシャフト50,150の外径との間に環状隙間mを形成し、その環状隙間mに押し込み部材75,175を圧入することによりシャフト50,150に対して内側継手部材20,120を固定した構造を具備する。さらに、内側継手部材20,120の孔22,122の開口端部位に、押し込み部材75,175が当接するチャンファ面26,126を形成している。なお、この押し込み部材75,175にもチャンファ面76,176が形成されている。このように、押し込み部材75,175のチャンファ面76,176を内側継手部材20,120のチャンファ面26,126に当接させることにより、その楔作用でもって押し込み部材75,175を安定して押し込むことが可能となる。
【0050】
内側継手部材20,120のテーパ状開口部位に形成されたスプライン23,123とシャフト50,150のテーパ状部位に形成されたスプライン53,153とを嵌合させると共に、押し込み部材75,175を環状隙間mに圧入することにより内側継手部材20,120をシャフト50,150に対して固定することで嵌合部60,160に軸方向荷重を付与する。これにより、その嵌合部60,160では、軸方向と角度(テーパ角度)をなすスプライン23,123とスプライン53,153の嵌合面が密着して軸方向および径方向のガタを低減することができ、内側継手部材20,120とシャフト50,150とをタイトに結合させることができる。
【0051】
なお、図13はトリポード型等速自在継手に適用した場合、図14はダブルオフセット型等速自在継手に適用した場合をそれぞれ例示する。この図13および図14において、図2および図4と同一部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。また、前述の押し込み部材75,175は、図12に示す嵌合部60,160に対してだけでなく、図示しないが、図6に示す構造の嵌合部61,161に対しても適用可能である。
【0052】
また、前述の固定部71,171は、環状の押し込み部材75,175を環状隙間mの全周に亘って圧入した構造としている(図15参照)。このように環状の押し込み部材75,175を使用することにより、その押し込み部材75,175により嵌合部60,160の全周に亘って軸方向荷重を均等に付与することができる。なお、他の固定部71,171の構造としては、図16に示すように、棒状の押し込み部材77,177を環状隙間mの円周方向複数箇所(図では4箇所)に圧入した構造とすることも可能である。
【0053】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0054】
10,110 外側継手部材
20,120 内側継手部材
22,122 孔
23,123 スプライン
24,124 チャンファ面
25,125 凹凸条
26,126 チャンファ面
50,150 軸部材(シャフト)
52,152 ねじ
53,153 スプライン
55,155 凹凸条
60,160 嵌合部
61,161 嵌合部
70,170 固定部
71,171 固定部
72,172 ナット
73,173 セルフロックナット
75,175 押し込み部材
m 環状隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、船舶や各種産業機械の動力伝達系において使用され、例えば4WD車やFR車などで使用されるドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれて駆動側と従動側の二軸間で軸方向変位および角度変位を許容する摺動式等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達するドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれる等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
【0003】
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、一般的に、エンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手をシャフトで連結した構造を具備する。
【0004】
このドライブシャフトのエンジン側に組み付けられる摺動式等速自在継手の一つに、トルク伝達部材としてローラを用いたローラタイプのトリポード型等速自在継手(TJ)がある。他の摺動式等速自在継手には、トルク伝達部材としてボールを用いたボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)がある。また、ドライブシャフトの駆動車輪側に組み付けられる固定式等速自在継手には、ツェッパ型等速自在継手(BJ)やアンダーカットフリー型等速自在継手(UJ)がある。
【0005】
これら各種の等速自在継手は、内側継手部材の孔にシャフトの軸端部を挿入してスプライン嵌合させた構造を具備する。つまり、内側継手部材の孔の内周面にスプラインを形成すると共に、シャフトの軸端部の外周面にスプラインを形成し、内側継手部材の孔にシャフトの軸端部を挿入することにより、内側継手部材のスプラインとシャフトのスプラインとを嵌合させてトルク伝達可能としている。
【0006】
ドライブシャフトに使用される等速自在継手では、自動車のNVH(Noise Vibration Harshness)特性の向上を図るため、内側継手部材のスプラインとシャフトのスプラインとの嵌合部に生じるガタを抑制する手段が種々講じられている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された等速自在継手では、シャフトのスプラインに捩れ角を設け、その捩れ角を持つシャフトのスプラインを内側継手部材のスプラインに嵌合させることにより、その嵌合部に生じるガタを低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平6−33220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述したように、特許文献1で開示された従来の等速自在継手は、内側継手部材のスプラインとシャフトのスプラインとの嵌合部に生じるガタを低減することを目的として、シャフトのスプラインに捩れ角を設けた構造を具備している。
【0009】
しかしながら、内側継手部材とシャフトとのスプライン嵌合をタイトにするため、シャフトのスプラインの捩れ角を大きく設定すると、内側継手部材の孔にシャフトを挿入するに際して、大きな荷重を付与しなければならず、内側継手部材とシャフトとをスプライン嵌合により結合させることが困難となる。
【0010】
これを回避するため、シャフトのスプラインの捩れ角を小さく設定すると、ルーズなスプライン嵌合になり易く、その嵌合部に生じるガタを完全になくすことが難しくなってくる。このように、スプラインの捩れ角を最適に設定することは非常に難しい。
【0011】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、スプラインに捩れ角を設けることなく、簡便な手段により、内側継手部材とシャフトとの嵌合部に生じるガタを確実に低減し得る摺動式等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、外側継手部材と、その外側継手部材との間で軸方向変位および角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、その内側継手部材の孔に軸部材を挿入してトルク伝達可能に嵌合させた摺動式等速自在継手であって、内側継手部材と軸部材との嵌合部を軸部材の挿入側に配設すると共に、その嵌合部に軸方向荷重を付与する固定部を軸部材の反挿入側に配設したことを特徴とする。ここで、「軸部材の挿入側」とは、内側継手部材に対して軸部材が軸方向に沿って挿入される側を意味し、「軸部材の反挿入側」とは、内側継手部材に対して軸部材が軸方向に沿って挿入される側の反対側を意味する。
【0013】
本発明では、内側継手部材と軸部材との嵌合部を軸部材の挿入側に配設すると共に、その軸部材の反挿入側に配設された固定部により、前述の嵌合部に軸方向荷重を付与する。この軸方向荷重の付与により、嵌合部では、軸方向と角度をなす嵌合面が密着して軸方向および径方向のガタを低減することができる。
【0014】
本発明における嵌合部は、内側継手部材の孔をテーパ状に開口させ、そのテーパ状開口部位にスプラインを形成すると共に、軸部材の外周面でテーパ状開口部位と対向するように形成されたテーパ状部位にスプラインを形成し、内側継手部材のスプラインと軸部材のスプラインとを嵌合させた構造が望ましい。このようにすれば、内側継手部材のテーパ状開口部位に形成されたスプラインと軸部材のテーパ状部位に形成されたスプラインとを、固定部による軸方向荷重の付与でタイトに嵌合させることができる。
【0015】
また、本発明における嵌合部は、内側継手部材の孔の開口端面部位に凹凸条を放射状に形成すると共に、軸部材の外周に形成されたフランジの開口端面部位と対向する端面部位に凹凸条を放射状に形成し、内側継手部材の凹凸条と軸部材の凹凸条とを嵌合させた構造であってもよい。このようにすれば、内側継手部材の孔の開口端面部位に形成された凹凸条と軸部材のフランジの端面部位に形成された凹凸条とを、固定部による軸方向荷重の付与でタイトに嵌合させることができる。
【0016】
本発明における固定部は、軸部材の外周面に形成されたねじと、そのねじとの螺合により軸部材に対して内側継手部材を締め付け固定するナットとで構成されていることが望ましい。このようにすれば、ナットにより内側継手部材を軸部材に対して締め付け固定することで嵌合部に軸方向荷重を付与することができる。
【0017】
なお、本発明におけるナットは、セルフロックナットであることが望ましい。ここで、「セルフロックナット」とは、振動などに対する緩み止め構造を備えたナットを意味する。このようなセルフロックナットを使用すれば、軸部材に対する内側継手部材の締め付け固定が強固となり、振動などによる緩みを未然に防止できる。
【0018】
本発明において、内側継手部材の孔の開口端面部位に、ナットが当接するチャンファ面を形成した構造が望ましい。このようにすれば、ナットをチャンファ面に当接させてねじ込むことにより、嵌合部に軸方向荷重を付与することが容易となる。
【0019】
また、本発明における固定部は、内側継手部材の内径と軸部材の外径との間に環状隙間を形成し、その環状隙間に押し込み部材を圧入することにより軸部材に対して内側継手部材を固定した構造であってもよい。このようにすれば、内側継手部材と軸部材との間の環状隙間に押し込み部材を圧入することで嵌合部に軸方向荷重を付与することができる。
【0020】
本発明における押し込み部材は、環状隙間の全周に亘って圧入されていることが望ましい。このようにすれば、押し込み部材により嵌合部の全周に亘って軸方向荷重を均等に付与することができる。なお、この押し込み部材は、環状隙間の円周方向複数箇所に圧入されているようにしてもよい。
【0021】
本発明において、内側継手部材の孔の開口端面部位に、押し込み部材が当接するチャンファ面を形成した構造が望ましい。このようにすれば、押し込み部材をチャンファ面に当接させて押し込むことにより、嵌合部に軸方向荷重を付与することが容易となる。
【0022】
なお、本発明における外側継手部材は、軸線方向に延びる三本のトラック溝が内周面に形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成され、内側継手部材は、先端がトラック溝内に挿入された三本の脚軸を有するトリポード部材であり、脚軸に回転自在に支持されると共に外側継手部材のトラック溝に挿入されてローラ案内面に沿って案内されるローラを備えた構造を具備することが望ましい。つまり、前述のような構造を具備するローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用可能である。
【0023】
また、本発明における外側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が内周面の複数箇所に形成され、内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールと、外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在してボールを保持するケージとを備えた構造が望ましい。つまり、このような構造を具備するボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手に適用可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、内側継手部材と軸部材との嵌合部を軸部材の挿入側に配設すると共に、その軸部材の反挿入側に配設された固定部により、前述の嵌合部に軸方向荷重を付与する。この軸方向荷重の付与により、嵌合部では、軸方向と角度をなす嵌合面が密着して軸方向および径方向のガタを低減することができる。
【0025】
その結果、従来のようにスプラインに捩れ角を設けることなく、簡便な手段により、内側継手部材と軸部材とを嵌合部によりタイトに結合させることができ、信頼性の高い長寿命の摺動式等速自在継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【図2】図1の実施形態におけるトリポード型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図3】図2のA方向から見た矢視図である。
【図4】図1の実施形態におけるダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図5】図4のB方向から見た矢視図である。
【図6】本発明の他の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【図7】図6の実施形態におけるトリポード型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図8】図6の実施形態におけるダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【図10】図9の実施形態におけるトリポード型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図11】図9の実施形態におけるダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態で、内側継手部材とシャフトとの結合構造を示す要部拡大断面図である。
【図13】図12の実施形態におけるトリポード型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図14】図12の実施形態におけるダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図15】環状の押し込み部材を使用した固定部を示す部分側面図である。
【図16】棒状の押し込み部材を使用した固定部を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る摺動式等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、ローラタイプのトリポード型等速自在継手およびボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手を例示する。なお、本発明は、シングルローラタイプのトリポード型等速自在継手以外に、作動時の低振動化を可能としたダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手にも適用可能である。
【0028】
図2および図3はローラタイプのトリポード型等速自在継手の基本構成を示し、図2は継手の軸線に対する縦断面図、図3は図2の継手をA方向から見た矢視図である(但し、一つのローラ30のみを断面で示す)。この実施形態のトリポード型等速自在継手は、図2および図3に示すように、外側継手部材10と、トリポード部材である内側継手部材20と、ローラ30とで主要部が構成されている。
【0029】
外側継手部材10は、一端が開口したカップ状をなし、軸方向に延びる三本の直線状トラック溝11が内周面に円周方向等間隔で形成されている。各トラック溝11は、その内側両壁に互いに対向する一対のローラ案内面12を有する。ローラ案内面12は円弧状断面を有し、外側継手部材10の軸線方向に直線状に延びる。この外側継手部材10の内部には、内側継手部材20とローラ30が軸方向摺動自在に収容されている。内側継手部材20は、円筒状をなすボスの外周面に三本の脚軸21が円周方向等間隔(120°間隔)で放射状に一体形成されたものである。脚軸21は、その先端がトラック溝11の底部付近まで半径方向に延在し、その外周面は一般的に円筒面とされている。
【0030】
外側継手部材10のトラック溝11のローラ案内面12と脚軸21の外周面との間に針状ころ40を介してローラ30が回転自在に配設される。ローラ30の外周面は縦断面円弧状とされ、ローラ案内面12とアンギュラ接触により二箇所で接触する場合と、サーキュラ接触により一箇所で接触する場合がある。一方、ローラ30の内周面は、円筒状に形成されている。このローラ30と脚軸21との間に、複数の針状ころ40が、保持器のない、いわゆる単列総ころ状態で配設されている。脚軸21の外周面は針状ころ40の内側転動面を構成し、ローラ30の内周面は針状ころ40の外側転動面を構成している。
【0031】
図4および図5はボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手の基本構成を示し、図4は継手の軸線に対する縦断面図、図5は図4の継手をB方向から見た矢視図である。この実施形態のダブルオフセット型等速自在継手は、図4および図5に示すように、外側継手部材110、内側継手部材120、ボール130およびケージ140で主要部が構成されている。
【0032】
この等速自在継手は、一端が開口したカップ状をなし、軸方向に延びる直線状トラック溝111が内周面の複数箇所に形成された外側継手部材110と、軸方向に延びる直線状トラック溝121が外側継手部材110のトラック溝111と対をなして外周面の複数箇所に形成された内側継手部材120と、外側継手部材110のトラック溝111と内側継手部材120のトラック溝121との間に配されたボール130と、外側継手部材110の内周面と内側継手部材120の外周面との間に介在してボール130を保持するケージ140とを備えた構造を具備する。
【0033】
なお、この実施形態では、6個ボールの等速自在継手(図5参照)を例示するが、8個ボールの等速自在継手にも適用可能であり、ボール130の個数は任意である。この外側継手部材110の内部には、内側継手部材120、ボール130およびケージ140が軸方向摺動自在に収容されている。
【0034】
図2のトリポード型等速自在継手および図4のダブルオフセット型等速自在継手において、この内側継手部材20,120の孔22,122に軸部材であるシャフト50,150が以下の構造でもって結合されている。この内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造については、トリポード型等速自在継手とダブルオフセット型等速自在継手で以下に共通して説明する。
【0035】
内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造において、図2および図4に示すように、内側継手部材20,120とシャフト50,150との嵌合部60,160をシャフト50,150の挿入側(図中左側)に配設すると共に、その嵌合部60,160に軸方向荷重を付与する固定部70,170をシャフト50,150の反挿入側(図中右側)に配設する。
【0036】
この結合構造では、内側継手部材20,120の孔22,122にシャフト50,150の軸端部51,151を挿入して嵌合部60,160によりトルク伝達可能に連結した後、外側継手部材10,110の奥側に位置する固定部70,170により嵌合部60,160に軸方向荷重を付与する。そのため、この内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造は、ローラ30(ボール130およびケージ140)が取り付けられた内側継手部材20,120の孔22,122にシャフト50,150を挿入して嵌合させることにより組み付けた後、そのアッセンブリ体を外側継手部材10,110に収容するようにした摺動式等速自在継手の組み立て要領でもって実現可能となっている。この内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合作業は、アッセンブリ体を外側継手部材10,110に収容する前に行われる。
【0037】
この内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造における嵌合部60,160は、図1に示すように、内側継手部材20,120の孔22,122をテーパ状に開口させ、その軸方向外側(図中左側)へ向けて拡径するテーパ状開口部位にスプライン23,123を形成すると共に、シャフト50,150の外周面でテーパ状開口部位と対向するように形成されて軸方向外側(図中左側)へ向けて拡径するテーパ状部位にスプライン53,153を形成し、内側継手部材20,120のスプライン23,123とシャフト50,150のスプライン53,153とを嵌合させた構造を具備する。これらスプライン23,123およびスプライン53,153は、軸方向に延びる凹凸条となっている。
【0038】
また、内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造における固定部70,170は、シャフト50,150の軸端部51,151の外周面に形成されたねじ52,152と、そのねじ52,152との螺合によりシャフト50,150に対して内側継手部材20,120を締め付け固定するナット72,172とで構成されている。さらに、内側継手部材20,120の孔22,122の開口端面部位に、ナット72,172が当接するチャンファ面24,124を形成している。
【0039】
なお、このナット72,172において、内側継手部材20,120のチャンファ面24,124と対向する部位にチャンファ面74,174が形成されている。このように、ナット72,172のチャンファ面74,174を内側継手部材20,120のチャンファ面24,124に当接させることにより、ナット72,172を安定して押し込むことが可能となる。
【0040】
この内側継手部材20,120とシャフト50,150との結合構造では、内側継手部材20,120の孔22,122にシャフト50,150の軸端部51,151を挿入して内側継手部材20,120のテーパ状開口部位のスプライン23,123にシャフト50,150のテーパ状部位のスプライン53,153を嵌合させる。このようにして、内側継手部材20,120とシャフト50,150との嵌合部60,160をシャフト50,150の挿入側に配設する。
【0041】
その上で、シャフト50,150の軸端部51,151のねじ52,152にナット72,172を螺合させ、そのナット72,172によりシャフト50,150に対して内側継手部材20,120を締め付け固定する。この時、ナット72,172のチャンファ面74,174を内側継手部材20,120のチャンファ面24,124に当接させた状態でナット72,172を押し込む。このナット72,172による締め付け固定でもって、前述の嵌合部60,160に軸方向荷重を付与する。このようにして、嵌合部60,160に軸方向荷重を付与する固定部70,170をシャフト50,150の反挿入側に配設する。
【0042】
内側継手部材20,120のテーパ状開口部位に形成されたスプライン23,123とシャフト50,150のテーパ状部位に形成されたスプライン53,153とを嵌合させると共に、ナット72,172により内側継手部材20,120をシャフト50,150に対して締め付け固定する。このナット72,172の締め付けで嵌合部60,160に軸方向荷重を付与することにより、その嵌合部60,160では、軸方向と角度(テーパ角度)をなすスプライン23,123とスプライン53,153の嵌合面が密着して軸方向および径方向のガタを低減することができ、内側継手部材20,120とシャフト50,150とをタイトに結合させることができる。なお、嵌合部60,160では、スプライン23,123およびスプライン53,153における凸条の幅寸法を凹条の幅寸法よりも大きく設定すれば、内側継手部材20,120とシャフト50,150とをより一層タイトに嵌合させることができる。
【0043】
以上の実施形態では、内側継手部材20,120のテーパ状開口部位にスプライン23,123を形成すると共に、シャフト50,150のテーパ状部位にスプライン53,153を形成した場合について説明したが、図6に示す構造の嵌合部61,161であってもよい。この嵌合部61,161は、内側継手部材20,120の孔22,122の開口端面部位に凹凸条25,125を放射状に形成すると共に、シャフト50,150の外周に形成されたフランジ54,154の端面部位に凹凸条55,155を放射状に形成し、内側継手部材20,120の凹凸条25,125とシャフト50,150の凹凸条55,155とを嵌合させた構造を具備する。
【0044】
なお、図7はトリポード型等速自在継手に適用した場合、図8はダブルオフセット型等速自在継手に適用した場合をそれぞれ例示する。この図7および図8において、図2および図4と同一部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。
【0045】
このように、内側継手部材20,120の孔22,122の開口端面部位に形成された凹凸条25,125とシャフト50,150のフランジ54,154の端面部位に形成された凹凸条55,155とを嵌合させると共に、ナット72,172により内側継手部材20,120をシャフト50,150に対して締め付け固定することで嵌合部61,161に軸方向荷重を付与することにより、その嵌合部61,161では、軸方向と角度(90°)をなす凹凸条25,125と凹凸条55,155の嵌合面が密着して軸方向および径方向のガタを低減することができ、内側継手部材20,120とシャフト50,150とをタイトに結合させることができる。なお、嵌合部61,161でも、凹凸条25,125および凹凸条55,155における凸条の幅寸法を凹条の幅寸法よりも大きく設定すれば、内側継手部材20,120とシャフト50,150とをより一層タイトに嵌合させることができる。
【0046】
図1に示す固定部70,170のナット72,172は、内径に雌ねじのみを刻設した一般的な構造のものであるが、この一般的なナット72,172に代えて、図9に示すように、セルフロックナット73,173を使用するようにしてもよい。このセルフロックナット73,173とは、振動などに対する緩み止め構造を備えたナットである。このようなセルフロックナット73,173を使用することにより、シャフト50,150に対する内側継手部材20,120の締め付け固定が強固となり、振動などによる緩みを未然に防止できる。セルフロックナット73,173には、雌ねじにナイロンリングや加締め板などを付加した構造のものなど種々の形態のものがある。
【0047】
なお、図10はトリポード型等速自在継手に適用した場合、図11はダブルオフセット型等速自在継手に適用した場合をそれぞれ例示する。この図10および図11において、図2および図4と同一部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。また、前述のセルフロックナット73,173は、図9に示す嵌合部60,160に対してだけでなく、図示しないが、図6に示す構造の嵌合部61,161に対しても適用可能である。
【0048】
また、前述の実施形態では、シャフト50,150の軸端部51,151のねじ52,152とそのねじ52,152に螺合するナット72,172(セルフロックナット73,173)で構成された固定部70,170について説明したが、これらねじ52,152およびナット72,172(セルフロックナット73,173)に代えて、図12に示す構造の固定部71,171であってもよい。
【0049】
この固定部71,171は、内側継手部材20,120の内径とシャフト50,150の外径との間に環状隙間mを形成し、その環状隙間mに押し込み部材75,175を圧入することによりシャフト50,150に対して内側継手部材20,120を固定した構造を具備する。さらに、内側継手部材20,120の孔22,122の開口端部位に、押し込み部材75,175が当接するチャンファ面26,126を形成している。なお、この押し込み部材75,175にもチャンファ面76,176が形成されている。このように、押し込み部材75,175のチャンファ面76,176を内側継手部材20,120のチャンファ面26,126に当接させることにより、その楔作用でもって押し込み部材75,175を安定して押し込むことが可能となる。
【0050】
内側継手部材20,120のテーパ状開口部位に形成されたスプライン23,123とシャフト50,150のテーパ状部位に形成されたスプライン53,153とを嵌合させると共に、押し込み部材75,175を環状隙間mに圧入することにより内側継手部材20,120をシャフト50,150に対して固定することで嵌合部60,160に軸方向荷重を付与する。これにより、その嵌合部60,160では、軸方向と角度(テーパ角度)をなすスプライン23,123とスプライン53,153の嵌合面が密着して軸方向および径方向のガタを低減することができ、内側継手部材20,120とシャフト50,150とをタイトに結合させることができる。
【0051】
なお、図13はトリポード型等速自在継手に適用した場合、図14はダブルオフセット型等速自在継手に適用した場合をそれぞれ例示する。この図13および図14において、図2および図4と同一部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。また、前述の押し込み部材75,175は、図12に示す嵌合部60,160に対してだけでなく、図示しないが、図6に示す構造の嵌合部61,161に対しても適用可能である。
【0052】
また、前述の固定部71,171は、環状の押し込み部材75,175を環状隙間mの全周に亘って圧入した構造としている(図15参照)。このように環状の押し込み部材75,175を使用することにより、その押し込み部材75,175により嵌合部60,160の全周に亘って軸方向荷重を均等に付与することができる。なお、他の固定部71,171の構造としては、図16に示すように、棒状の押し込み部材77,177を環状隙間mの円周方向複数箇所(図では4箇所)に圧入した構造とすることも可能である。
【0053】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0054】
10,110 外側継手部材
20,120 内側継手部材
22,122 孔
23,123 スプライン
24,124 チャンファ面
25,125 凹凸条
26,126 チャンファ面
50,150 軸部材(シャフト)
52,152 ねじ
53,153 スプライン
55,155 凹凸条
60,160 嵌合部
61,161 嵌合部
70,170 固定部
71,171 固定部
72,172 ナット
73,173 セルフロックナット
75,175 押し込み部材
m 環状隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側継手部材と、前記外側継手部材との間で軸方向変位および角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、前記内側継手部材の孔に軸部材を挿入してトルク伝達可能に嵌合させた摺動式等速自在継手であって、前記内側継手部材と前記軸部材との嵌合部を軸部材の挿入側に配設すると共に、前記嵌合部に軸方向荷重を付与する固定部を前記軸部材の反挿入側に配設したことを特徴とする摺動式等速自在継手。
【請求項2】
前記嵌合部は、内側継手部材の孔をテーパ状に開口させ、そのテーパ状開口部位にスプラインを形成すると共に、前記軸部材の外周面で前記テーパ状開口部位と対向するように形成されたテーパ状部位にスプラインを形成し、前記内側継手部材のスプラインと前記軸部材のスプラインとを嵌合させた請求項1に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項3】
前記嵌合部は、内側継手部材の孔の開口端面部位に凹凸条を放射状に形成すると共に、前記軸部材の外周に形成されたフランジの前記開口端面部位と対向する端面部位に凹凸条を放射状に形成し、前記内側継手部材の凹凸条と前記軸部材の凹凸条とを嵌合させた請求項1に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項4】
前記固定部は、軸部材の外周面に形成されたねじと、前記ねじとの螺合により軸部材に対して内側継手部材を締め付け固定するナットとで構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項5】
前記ナットは、セルフロックナットである請求項4に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項6】
前記内側継手部材の孔の開口端部位に、前記ナットが当接するチャンファ面を形成した請求項4又は5に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項7】
前記固定部は、前記内側継手部材の内径と前記軸部材の外径との間に環状隙間を形成し、前記環状隙間に押し込み部材を圧入することにより軸部材に対して内側継手部材を固定した請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項8】
前記押し込み部材は、前記環状隙間の全周に亘って圧入されている請求項7に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項9】
前記押し込み部材は、前記環状隙間の円周方向複数箇所に圧入されている請求項7に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項10】
前記内側継手部材の孔の開口端部位に、前記押し込み部材が当接するチャンファ面を形成した請求項7〜9のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項11】
前記外側継手部材は、軸線方向に延びる三本のトラック溝が内周面に形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成され、前記内側継手部材は、先端が前記トラック溝内に挿入された三本の脚軸を有するトリポード部材であり、前記脚軸に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材のトラック溝に挿入されて前記ローラ案内面に沿って案内されるローラを備えた請求項1〜10のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項12】
前記外側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が内周面の複数箇所に形成され、前記内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が前記外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールと、前記外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在して前記ボールを保持するケージとを備えた請求項1〜10のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項1】
外側継手部材と、前記外側継手部材との間で軸方向変位および角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、前記内側継手部材の孔に軸部材を挿入してトルク伝達可能に嵌合させた摺動式等速自在継手であって、前記内側継手部材と前記軸部材との嵌合部を軸部材の挿入側に配設すると共に、前記嵌合部に軸方向荷重を付与する固定部を前記軸部材の反挿入側に配設したことを特徴とする摺動式等速自在継手。
【請求項2】
前記嵌合部は、内側継手部材の孔をテーパ状に開口させ、そのテーパ状開口部位にスプラインを形成すると共に、前記軸部材の外周面で前記テーパ状開口部位と対向するように形成されたテーパ状部位にスプラインを形成し、前記内側継手部材のスプラインと前記軸部材のスプラインとを嵌合させた請求項1に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項3】
前記嵌合部は、内側継手部材の孔の開口端面部位に凹凸条を放射状に形成すると共に、前記軸部材の外周に形成されたフランジの前記開口端面部位と対向する端面部位に凹凸条を放射状に形成し、前記内側継手部材の凹凸条と前記軸部材の凹凸条とを嵌合させた請求項1に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項4】
前記固定部は、軸部材の外周面に形成されたねじと、前記ねじとの螺合により軸部材に対して内側継手部材を締め付け固定するナットとで構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項5】
前記ナットは、セルフロックナットである請求項4に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項6】
前記内側継手部材の孔の開口端部位に、前記ナットが当接するチャンファ面を形成した請求項4又は5に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項7】
前記固定部は、前記内側継手部材の内径と前記軸部材の外径との間に環状隙間を形成し、前記環状隙間に押し込み部材を圧入することにより軸部材に対して内側継手部材を固定した請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項8】
前記押し込み部材は、前記環状隙間の全周に亘って圧入されている請求項7に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項9】
前記押し込み部材は、前記環状隙間の円周方向複数箇所に圧入されている請求項7に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項10】
前記内側継手部材の孔の開口端部位に、前記押し込み部材が当接するチャンファ面を形成した請求項7〜9のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項11】
前記外側継手部材は、軸線方向に延びる三本のトラック溝が内周面に形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成され、前記内側継手部材は、先端が前記トラック溝内に挿入された三本の脚軸を有するトリポード部材であり、前記脚軸に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材のトラック溝に挿入されて前記ローラ案内面に沿って案内されるローラを備えた請求項1〜10のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項12】
前記外側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が内周面の複数箇所に形成され、前記内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が前記外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールと、前記外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在して前記ボールを保持するケージとを備えた請求項1〜10のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−226587(P2011−226587A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97892(P2010−97892)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
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