説明

摺動性部材およびその製造方法

【課題】本発明の課題は、フッ素樹脂表面を有する摺動性部材よりも優れた摺動性を有する摺動性部材を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る摺動性部材は、所定の形状を呈し少なくとも一部に疎水性表面を有する基体と、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを有し疎水性表面の少なくとも一部を被覆する摺動性改質剤とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用カテーテルや医療用ワイヤー等の摺動性部材、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「医療用のカテーテルや医療用ワイヤー等の摺動性部材の表面をフッ素樹脂で被覆することによってその摺動性を向上することができること」が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−205183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、近年、産業界では、そのような摺動性部材に対して更なる摺動性の向上が求められている。
本発明の課題は、フッ素樹脂表面を有する摺動性部材よりも優れた摺動性を有する摺動性部材、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願出願人は、実験および考察を鋭意繰り返した結果、所定の形状を呈し少なくとも一部に疎水性表面を有する基体と、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを有し疎水性表面の少なくとも一部を被覆する摺動性改質剤とを備える摺動性部材がフッ素樹脂表面を有する摺動性部材よりも優れた摺動性を有することを見出した。なお、ここにいう「疎水性表面」としては、フッ素樹脂表面、オレフィン系樹脂表面、エステル系樹脂表面、アクリレート系樹脂表面、ポリウレタン系樹脂表面、又はポリアミド系樹脂表面などが挙げられる。また、ここにいう「フッ素樹脂」としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)等やこれらのブレンド物などが挙げられる。また、ここにいう「オレフィン系樹脂」としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル等やこれらのブレンド物などが挙げられる。また、ここにいう「エステル系樹脂」としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等やこれらのブレンド物などが挙げられる。また、ここにいう「アクリレート樹脂」としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート等やこれらのブレンド物などが挙げられる。また、ここにいう「ポリアミド系樹脂」としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等やこれらのブレンド物などが挙げられる。
【0005】
また、本発明において、疎水性表面はフッ素樹脂表面であることが好ましい。
また、本発明において、摺動性改質剤は0.1〜2μmの厚みを有するのが好ましい。
また、本発明において、親水性ブロックはポリオキシエチレン基であるのが好ましい。
また、本発明において、ポリオキシエチレン基は繰り返し単位が1〜5であることが好ましい。
【0006】
また、本発明において、疎水性ブロックは炭化水素基であるのが好ましい。なお、ここにいう「炭化水素基」とは、例えば、アルキル基や、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。また、この炭化水素基にはヘテロ原子が含まれていてもよい。
また、本発明において、炭化水素基はオレイル基、ラウリル基、及びステアリル基から成る群から選択される炭化水素基であるのが好ましい。
【0007】
また、本発明において、摺動性改質剤は、下記一般式(1):
1O(CH2CH2O)nH (1)
(ただし、式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基であり、nは1〜5である)、
または、下記一般式(2):
2COO(CH2CH2O)nH (2)
(ただし、式中、R2は炭素数7〜21の炭化水素基であり、mは1〜3である)、
または、下記一般式(3):
3O(CH2CH(CH3)O)mH (3)
(ただし、式中、R3は炭素数8〜22の炭化水素基であり、nは1〜5である)、
または、下記一般式(4):
4COO(CH2CH(CH3)O)mH (4)
(ただし、式中、R4は炭素数7〜21の炭化水素基であり、mは1〜3である)、
または、下記一般式(5):
5O(CH2CH(CH3)O)s(CH2CH2O)tH (5)、
(ただし、式中、R5は炭素数8〜22の炭化水素基であり、s及びtは1〜5である)、
または、下記一般式(6):
6COO(CH2CH(CH3)O)u(CH2CH2O)vH (6)
(ただし、式中、R6は炭素数7〜21の炭化水素基であり、u及びvは1〜3である)
で示されるもの(いわゆる中性界面活性剤(非イオン界面活性剤))であるのが好ましい。
【0008】
また、本発明において、疎水性表面がフッ素樹脂表面である場合、疎水性ブロックは含フッ素炭化水素基であるのが好ましい。
なお、本発明において、基体は、例えば、医療用部材の基体などであって、具体的には医療用ワイヤーやカテーテル(チューブ)等の形状を呈する。
また、本発明において、基体がカテーテルである場合、疎水性表面は、カテーテルの内面および外面の少なくとも一方に存在する。
【0009】
なお、本発明において、摺動性改質剤としては、上記以外に、例えば、ポリエチレングリコールや、ポリカチオン、ポリアニオン等も挙げられる。なお、ここで、ポリカチオンとしては、例えば、四級化されたポリアクリルアミドや、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリアリールアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルビニリデン、四級化末端基を有するナフィオン(NAFION)(登録商標)、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、並びに四級化された含窒素末端基を有する電解質の合成および天然ポリマー等が挙げられる。また、ここで、ポリアニオンとしては、ポリエチレンスルホネート、ポリスチレンスルホネート、ナフィオン、過フッ素酸アイオノマー等が挙げられる。
【0010】
また、本願出願人は、上記のような摺動性部材を次のような製造方法に従って製造できることを見出した。摺動性部材製造方法では、少なくとも摺動性改質剤塗布工程および乾燥工程を経て最終の摺動性部材が製造される。摺動性改質剤塗布工程では、基体の疎水性表面に、摺動性改質剤の溶液を接触させて摺動性改質剤塗布基体を製造する。乾燥工程では、摺動性改質剤塗布基体を乾燥する。
【0011】
なお、本発明において、溶液には0.1〜5wt%の摺動性改質剤が含まれるのが好ましい。
また、本発明において、摺動性改質剤がポリエチレングリコールモノオレエートである場合、溶液は60℃±5℃に保たれるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る摺動性部材は、実験結果によると、乾燥状態であっても湿潤状態であってもフッ素樹脂表面を有する摺動性部材よりも優れた摺動性を示す。また、この摺動性部材は、耐久性に優れており、繰り返し使用による劣化の度合いが非常に小さい。なお、本発明に係る摺動性部材がこのような優れた物性を示す原因については不明である。
また、従来、滑り面が水膨潤性のゲル膜で覆われるカテーテルや医療用ワイヤーが存在するが、このようなカテーテルや医療用ワイヤーは、ゲル膜の膜厚が50μm以上ないと十分な滑り性を有しない。しかし、本発明を応用したカテーテルや医療用ワイヤーは、表面処理剤の膜厚が0.1μm程度であっても十分な滑り性を発現する。したがって、本発明を応用したカテーテルや医療用ワイヤーは、径の細さを維持したまま、十分な滑り性を確保することできるという特徴を有する。
【0013】
また、本発明に係る摺動性部材製造方法では、このような優れた摺動性部材を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る摺動性改質医療用ワイヤー及び摺動性改質医療用カテーテルの構造とその製造方法について説明する。なお、説明の便宜上、摺動性改質医療用ワイヤーと摺動性改質医療用カテーテルとに分けてその構造と製造方法を説明する。
〔摺動性改質医療用ワイヤー〕
(1)摺動性改質医療用ワイヤーの構造
本発明の実施の形態に係る摺動性改質医療用ワイヤー10は、図1に記載されるように、芯材としての金属製ワイヤー11、金属製ワイヤー11の外表面を覆う中間樹脂層12、中間樹脂層12の外表面を覆うフッ素樹脂接着層13、フッ素樹脂接着層13の外表面を覆うフッ素樹脂層14、およびフッ素樹脂層14の外表面を覆う摺動性改質層15を備える。
【0015】
本発明の実施の形態に用いられる金属製ワイヤー11としては、ストレート形状のもの又は先端先細りのテーパ形状のものが好ましい。また、この金属製ワイヤー11は超弾性合金やステンレス鋼等から形成されるのが好ましい。超弾性合金としては、例えば、Ti-Ni(Ni:49-51 atomic%, Ti-Niに第3元素を添加したものも含む), Cu-Al-Zn(Al:3-8 atomic%,Zn:15-28 atomic%), Fe-Mn-Si(Mn:30 atomic%,Si:5 atomic%), Cu-Al-Ni(Ni:3-5 atomic%,Al:28-29 atomic%), Ni-Al(Al:36-38 atomic%), Mn-Cu(Cu:5-35 atomic%), Au-Cd(Cd:46-50 atomic%)等が挙げられる。
【0016】
中間樹脂層12は、金属製ワイヤー11の柔軟性を損なわず、化学的、熱的に安定なナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、シリコンゴム、ポリウレタン、及びこれらの複合体などから成る群から選択される少なくとも1つの合成樹脂から形成されるのが好ましい。なお、本実施の形態において、体内に挿入した摺動性改質医療用ワイヤー10の位置確認を容易にするため、この中間樹脂層12を形成する樹脂にタングステン粉末やバリウム粉末などのX線造影性物質を混合しておいてもかまわない。
【0017】
フッ素樹脂接着層13は、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、およびポリイミド樹脂ならびにこれらの誘導体より成る群から選択される少なくとも1つの樹脂にフッ素樹脂の粉体などが含まれているものが好ましい。最外層のフッ素樹脂層14との接着性を向上させるためである。このフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、もしくはテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(PETFE)、またはこれらのブレンド物が挙げられる。なお、本実施の形態において耐熱性や接着性の改善のために、フッ素樹脂接着層13を形成する樹脂に、セラミックスやカーボンなどの粉末を混合しておいてもかまわない。
【0018】
フッ素樹脂層14は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(PETFE)より成る群から選択される少なくとも1つのフッ素樹脂から形成されるのが好ましい。なお、このフッ素樹脂層14は、表面に凹凸があってもかまわない。表面に凹凸がある場合、さらにその摺動性が向上する。
【0019】
摺動性改質層15は、下記一般式(1)〜(6)に示される化合物や、ポリエチレングリコール、ポリカチオン、ポリアニオン等の摺動性改質剤から形成されるのが好ましい。なお、これらは適宜組み合わせて使用されてもよい。
1O(CH2CH2O)nH (1)
(ただし、式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基であり、nは1〜5である)
または、下記一般式(2):
2COO(CH2CH2O)nH (2)
(ただし、式中、R2は炭素数7〜21の炭化水素基であり、mは1〜3である)
または、下記一般式(3):
3O(CH2CH(CH3)O)mH (3)
(ただし、式中、R3は炭素数8〜22の炭化水素基であり、nは1〜5である)
または、下記一般式(4):
4COO(CH2CH(CH3)O)mH (4)
(ただし、式中、R4は炭素数7〜21の炭化水素基であり、mは1〜3である)
または、下記一般式(5):
5O(CH2CH(CH3)O)s(CH2CH2O)tH (5)
(ただし、式中、R5は炭素数8〜22の炭化水素基であり、s及びtは1〜5である)
または、下記一般式(6):
6COO(CH2CH(CH3)O)u(CH2CH2O)vH (6)
(ただし、式中、R6は炭素数7〜21の炭化水素基であり、u及びvは1〜3である)
なお、これらの中でも、ポリオキシエチレン(5モル)ソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(4モル)ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(4モル)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4モル)ステアリルエーテル、ジエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(3モル)オキシプロピレン(2モル)ラウリルエーテル、ジエチレングリコールモノラウリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(3モル)オキシプロピレン(3モル)ミリスチン酸エステル、ジエチレングリコールステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等が好ましく、nが2であるポリエチレングリコールモノオレエート(Polyethlenglycol mono oleate)<CH3(CH27CH=CH(CH27COO(CH2CH2O)2H>(ジエチレングリコールモノオレエートともいう)やポリオキシエチレンオレイルエーテル(Polyoxyethene oleyl ether)<CH3(CH27CH=CH(CH28O(CH2CH2O)2H>が特に好ましい。なお、これらの摺動性改質剤は、適宜組み合わせて使用されてもよい。
【0020】
なお、本実施の形態において、ポリカチオンとしては、四級化されたポリアクリルアミドや、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリアリールアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルビニリデン、四級化末端基を有するナフィオン(NAFION)(登録商標)、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、並びに四級化された含窒素末端基を有する電解質の合成および天然ポリマー等が挙げられる。なお、これらのポリカチオンは適宜組み合わせて使用してもよい。また、本実施の形態において、ポリアニオンとしては、ポリエチレンスルホネート、ポリスチレンスルホネート、ナフィオン、過フッ素酸アイオノマー等が挙げられる。なお、これらのポリアニオンは適宜組み合わせて使用してもよい。
【0021】
また、上記摺動性改質剤は、一部または全部の水素原子などがフッ素原子に置換されていてもよい。また、本実施の形態において、摺動性改質層の厚みは0.1〜2μmであるのが好ましい。
なお、本実施の形態では、摺動性改質層15を除いたものを中間ワイヤー(基体)と称する。また、この中間ワイヤーは、特願2005−137145に記載される内容に従って製造することができる。
【0022】
ところで、本実施の形態に係る摺動性改質医療用ワイヤー10は、金属製ワイヤー11、中間樹脂層12、フッ素樹脂接着層13、フッ素樹脂層14、および摺動性改質層15を備えているが、本発明に係る摺動性改質医療用ワイヤーは、このような構造に限定されず、摺動性改質医療用ワイヤー10から中間樹脂層12およびフッ素樹脂接着層13の少なくとも一方を除いたものや、摺動性改質医療用ワイヤー10にさらなる層を挿入したものであってもよい。また、フッ素樹脂層を、オレフィン系樹脂層、エステル系樹脂層、アクリレート系樹脂層、ポリウレタン系樹脂層、又はポリアミド系樹脂層、あるいはこれらの樹脂のブレンド物から成る層などに置換してもよい。
【0023】
(2)摺動性改質医療用ワイヤーの製造方法
本発明に係る摺動性改質医療用ワイヤー10は、主に、ディッピング工程、洗浄工程、および乾燥工程を経て製造される。
ディッピング工程では、中間ワイヤーを所定温度および所定濃度に調製された摺動性改質剤溶液に所定時間浸漬した後に、その中間ワイヤーを引き上げる。なお、本実施の形態では、摺動性改質剤溶液から引き上げた中間ワイヤーを摺動性改質剤塗布中間ワイヤーと称する。また、本実施の形態において、中間ワイヤーの浸漬時間は特に限定されず、中間ワイヤーを浸漬後、瞬時に引き上げてもよい。
【0024】
洗浄工程では、ディッピング工程で得られた摺動性改質剤塗布中間ワイヤーを十分に水洗いする。なお、ここで用いられる水の温度は特に限定されないが、30℃以下の温度の水を用いるのが好ましい。
乾燥工程では、洗浄工程で水洗いされた摺動性改質剤塗布中間ワイヤーを室温で乾燥させる。
【0025】
〔摺動性改質医療用カテーテル〕
(1)摺動性改質医療用カテーテルの構造
本発明の実施の形態に係る摺動性改質医療用カテーテル20は、図2に記載されるように、内外面にフッ素樹脂23,24が表出したポリイミドチューブ22(以下、単にPIチューブと称する)、及びPIチューブ22の内表面を覆う摺動性改質層25を備える。
【0026】
PIチューブ22は、ポリイミド樹脂から形成されており、上述したように内外面にフッ素樹脂23,24が表出している。なお、このようなPIチューブ22は、特開2005−205183号公報に記載される内容に従って製造することができる。ここで、ポリイミド樹脂は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの略等モルを有機極性溶媒中で反応させて得られるポリアミック酸から熱転化あるいは化学処理されて生成される。芳香族テトラカルボン酸二無水物の代表例としては、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、2,3,3′,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2′−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物などが挙げられる。また、芳香族ジアミンの代表例としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン(pPDA)、m−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3′−ジクロロベンジジン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニルジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド−3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、3,3′−ジメチルベンジジン、4,4′−ジアミノフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、m−キシリレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン等が挙げられる。なお、これら芳香族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族ジアミンは、単独であるいは混合して使用することができる。また、フッ素樹脂23,24は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)、ポリ弗化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(PETFE)より成る群から選択される少なくとも1つのフッ素樹脂であるのが好ましい。
【0027】
摺動性改質層25は、摺動性改質医療用ワイヤー10の摺動性改質層15を形成する摺動性改質剤と同様のものから形成される。
なお、本実施の形態では、摺動性改質層25を除いたものを中間カテーテル(基体)と称する。
ところで、本実施の形態に係る摺動性改質医療用カテーテル20は、PIチューブ22及び摺動性改質層25を備えているが、本発明に係る摺動性改質医療用カテーテルは、このような構造に限定されず、PIチューブが内表面にのみフッ素樹脂が表出したものであってもよいし、摺動性改質医療用カテーテル20にさらなる層が挿入されたものであってもよい。また、表面に凹凸が形成されていてもよい。また、ポリイミド樹脂およびフッ素樹脂の少なくとも一方を、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂、アクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、又はポリアミド系樹脂、あるいはこれらの樹脂のブレンド物などに置換してもよい。
【0028】
(2)摺動性改質医療用カテーテルの製造方法
本発明に係る摺動性改質医療用カテーテル20は、主に、片端閉塞工程、摺動性改質剤溶液注入工程、摺動性改質剤溶液密閉工程、摺動性改質剤溶液抜き取り工程、洗浄工程、および乾燥工程を経て製造される。
片端閉塞工程では、中間カテーテルの片端を閉塞する。なお、この閉塞方法としては、中間カテーテルの片端に結び目をつくる方法や、中間カテーテルの片端の口に栓をする方法、中間カテーテルの片端の口をテープ等で塞ぐ方法などが挙げられる。
【0029】
摺動性改質剤溶液注入工程では、中間カテーテルの開放口から摺動性改質剤溶液をシリンジ等を用いて中間カテーテルの孔21に注入する。
摺動性改質剤溶液密閉工程では、中間カテーテルの開放端を閉塞し、摺動性改質剤溶液を所定時間中間カテーテルの孔内に密閉した後、その中間カテーテルを所定の温度に保つため恒温槽に静置する。なお、この閉塞方法としては、片端閉塞工程における場合と同様に、中間カテーテルの片端に結び目をつくる方法や、中間カテーテルの片端の口に栓をする方法、中間カテーテルの片端の口をテープ等で塞ぐ方法などが挙げられる。また、本実施の形態において、摺動性改質剤溶液の密閉時間は特に限定されず、中間カテーテルの孔21に摺動性改質剤溶液を注入した後、瞬時に摺動性改質剤溶液を抜き取ってもよい(つまり、本工程を省略してもよい)。
【0030】
摺動性改質剤抜き取り工程では、中間カテーテルの一方の端部の口の開放し、摺動性改質剤溶液を中間カテーテルの孔21内から抜き取る。なお、この開放方法としては、中間カテーテルの片端に切断する方法や、中間カテーテルの片端の口にされている栓を抜く方法、中間カテーテルの片端の口を塞いでいるテープ等をはぎ取る方法などが挙げられる。なお、本実施の形態では、摺動性改質剤溶液が抜き取られた中間カテーテルを摺動性改質剤塗布中間カテーテルと称する。
【0031】
洗浄工程では、摺動性改質剤塗布中間カテーテルの両端部の口を開放した上で、摺動性改質剤塗布中間カテーテルの孔21内に水をシリンジ等を用いて注入し、孔内壁を十分に水洗いすると同時に所定の孔径を確保する。なお、ここで用いられる水の温度は特に限定されないが、30℃以下の温度の水を用いるのが好ましい。
乾燥工程では、洗浄工程で水洗いされた摺動性改質剤塗布中間カテーテルを室温で乾燥させる。
【0032】
〔摺動性改質医療用ワイヤー及び摺動性改質医療用カテーテルの諸物性の測定〕
ここでは、摺動性改質医療用ワイヤー10の接触角の測定方法および摺動性改質医療用ワイヤー10の摩擦抵抗値の測定方法について説明する。
(1)摺動性改質剤の接触角の測定方法
本実施の形態では、所定温度に調整した摺動性改質剤溶液にPTFE表面を有するシートサンプルを浸漬し、30分静置した後、十分に水洗いし、常温で乾燥することにより接触角測定用サンプルを調製した。そして、本実施の形態では、協和界面化学(株)製 (FACE CA−Z)の測定器を用いて23℃の純水に対する接触角を測定した。
【0033】
(2)摺動性改質医療用ワイヤーの摩擦抵抗値の測定方法
摺動性改質医療用ワイヤー10の摩擦抵抗値は、図3に示されるような摩擦抵抗値測定装置30によって測定される。
この摩擦抵抗値測定装置30を使用するに際しては、先ず、直径90mmの金属製円柱治具31にポリウレタン樹脂チューブ(内径2.5mm、外径4.0mm、長さ200mm)32を接着固定する。そして、この金属製円柱治具31を引張試験機40の固定側チャック41に取り付ける。その後、本実施の形態に係る摺動性改質医療用ワイヤー10をポリウレタン樹脂チューブ32に挿入し、この摺動性改質医療用ワイヤー10の一方を引張試験機40のクリップ42に固定する。そして、この状態で、摺動性改質医療用ワイヤー10を50mm/分の速度で鉛直上方Daに引っ張り上げ、このときの荷重をロードセル43により測定する。つまり、本測定方法では、摺動性改質医療用ワイヤー10とポリウレタン樹脂チューブ32との摩擦抵抗値が測定されることになる。なお、このとき、引張り荷重が小さいほど摩擦抵抗が小さいことになる。また、本実施の形態では、測定するに際して、摺動性改質医療用ワイヤー10の任意の位置から50mm長さに至るまでの摩擦抵抗値を測定し、その摩擦抵抗値をチャート用紙に記録した。また、本実施の形態では、複数回、このような測定を繰り返して得られる複数の摩擦抵抗値の平均値を求め、最終的な摩擦抵抗値とした。
【0034】
なお、水中における摺動性改質医療用ワイヤー10の摩擦抵抗値を求める場合は、ポリウレタン樹脂チューブ32の孔内を水で満たせばよい。
(3)摺動性改質医療用カテーテルの摩擦抵抗値の測定方法
摺動性改質医療用カテーテル20の摩擦抵抗値は、摺動性改質医療用ワイヤーの摩擦抵抗値を測定する場合と同様に、図3に示されるような摩擦抵抗値測定装置30によって測定される。ただし、感度向上のために金属製円柱治具31の径を小さくしたり、引張速度を速めたりしている。
【0035】
この摩擦抵抗値測定装置30を使用するに際しては、先ず、摺動性改質医療用カテーテル20の孔21内にフッ素樹脂コートしたステンレスワイヤー(φ0.35mm)(以下、対象ワイヤーという)を挿入し、摺動性改質医療用カテーテル20の両端約25mm部分をそれぞれ垂直に保持できるように直径67mmの金属製円柱治具31に4周巻きつけ、粘着テープで固定する。そして、この金属製円柱治具31を引張試験機40の固定側チャック41に取り付ける。そして、この状態で、対象ワイヤーを200mm/分の速度で鉛直上方Daに引っ張り上げ、このときの荷重をロードセル43により測定する。つまり、本測定方法では、摺動性改質医療用カテーテル20の内面とフッ素樹脂との摩擦抵抗値が測定されることになる。なお、このとき、引張り荷重が小さいほど摩擦抵抗が小さいことになる。また、本実施の形態では、引張り荷重の値を引張距離100mmにわたりチャートに記録した。また、本実施の形態では、複数回、このような測定を繰り返して得られる複数の摩擦抵抗値の平均値を求め、最終的な摩擦抵抗値とした。
なお、水中における摺動性改質医療用カテーテル20内面の摩擦抵抗値を求める場合は、摺動性改質医療用カテーテル20の孔21内を水で満たせばよい。
【0036】
〔実施例〕
以下に本実施の形態に係る摺動性改質医療用ワイヤー10及び摺動性改質医療用カテーテル20について幾つかの実施例を示す。
【実施例1】
【0037】
60℃に調整したポリエチレングリコールモノオレエート(PGO)(オキシエチレンの繰り返し単位は2である)の1.0重量%の水溶液(以下、PGO水溶液という)に表裏にPTFEが表出したポリイミドシートを浸漬し、30分静置した後、十分に水洗いし、常温で乾燥した。その後、協和界面化学(株)製 (FACE CA−Z)の測定器を用いて、そのシートサンプルの表裏の23℃の純水に対する接触角を測定した。結果は表1の通りである。
【実施例2】
【0038】
60℃に調整したポリオキシエチレンオレイルエーテル(POO)(オキシエチレンの繰り返し単位は2である)の1.0重量%の水溶液(以下、POO水溶液という)に表裏にPTFEが表出したポリイミドシートを浸漬し、30分静置した後、十分に水洗いし、常温で乾燥した。その後、協和界面化学(株)製 (FACE CA−Z)の測定器を用いて、そのシートサンプルの表裏の23℃の純水に対する接触角を測定した。結果は表1の通りである。
【実施例3】
【0039】
60℃に調整したPGO水溶液にPTFEシートを浸漬し、30分静置した後、十分に水洗いし、常温で乾燥した。その後、協和界面化学(株)製 (FACE CA−Z)の測定器を用いて、23℃の純水に対する接触角を測定した。結果は表1の通りである。
【実施例4】
【0040】
60℃に調整したPOO水溶液にPTFEシートを浸漬し、30分静置した後、十分に水洗いし、常温で乾燥した。その後、協和界面化学(株)製 (FACE CA−Z)の測定器を用いて、23℃の純水に対する接触角を測定した。結果は表1の通りである。
【実施例5】
【0041】
ステンレスワイヤーにポリウレタン層、PTFE接着層、およびPTFE層が設けられたもの(以下、第1中間ワイヤーという)を60℃に調整したPGO水溶液に浸漬し、30分静置した後、十分に水洗いし、常温で乾燥した。さらに、その後、この摺動性改質医療用ワイヤーを不織布で擦って余分に付着したPGOをそぎ落とし、最終的なPGO層の厚みを0.1〜2μmの範囲内に収めた。なお、第1中間ワイヤーでは、ステンレスワイヤーの外面にポリウレタン層が形成され、ポリウレタン層の外面にPTFE接着層が形成され、PTFE接着層の外面にPTFE層が形成されている。つまり、第1中間ワイヤーの最外層はPTFE層である。
【0042】
この摺動性改質医療用ワイヤーの乾燥状態および湿潤状態での摩擦抵抗値を上述した測定方法に従って測定した。結果は表2の通りである。
【実施例6】
【0043】
ステンレスワイヤーにPTFE層が設けられたもの(以下、第2中間ワイヤーという)を60℃に調整したPGO水溶液に浸漬し、30分静置した後、十分に水洗いし、常温で乾燥した。さらに、その後、この摺動性改質医療用ワイヤーを不織布で擦って余分に付着したPGOをそぎ落とし、最終的なPGO層の厚みを0.1〜2μmの範囲内に収めた。なお、第2中間ワイヤーでは、ステンレスワイヤーの外面にPTFE層が形成されている。つまり、第2中間ワイヤーの最外層はPTFE層である。
【0044】
この摺動性改質医療用ワイヤーの乾燥状態および湿潤状態での摩擦抵抗値を上述した測定方法に従って測定した。結果は表3の通りである。
【実施例7】
【0045】
内面にPTFEを表出させたポリイミドチューブ(酸二無水物:BPDA、ジアミン:pPDA)(長さ900mm、内径0.5mm)の片端を閉じた後に、60℃に調整したPGO水溶液をシリンジを用いてその孔内に流し込み、そのポリイミドチューブの孔内をPGO水溶液で満たして密閉した。この状態でチューブを60℃の水槽に入れ、温度を保ちながら30分間静置した。その後、孔内のPGO水溶液を抜き、さらにシリンジを用いてチューブ内に水を十分に流し込むことでチューブ内面を十分に水洗いした。
【0046】
この摺動性改質医療用カテーテル内面の水中での摩擦抵抗値を上述した測定方法に従って測定した。結果は表4の通りである。なお、表4には、初期摩擦抵抗値と、同測定を100回繰り返し行ったときの100回目の摩擦抵抗値とが示されている。また、表4には、比較例として摺動性改質処理を行っていないPTFEチューブのデータを併記している。
【実施例8】
【0047】
内面にPTFEを表出させたポリイミドチューブ(酸二無水物:BPDA、ジアミン:pPDA)(長さ900mm、内径0.5mm)の片端を閉じた後に、60℃に調整したPGO水溶液をシリンジを用いてその孔内に流し込み、そのポリイミドチューブの孔内をPGO水溶液で満たして密閉した。この状態でチューブを60℃の水槽に入れ、温度を保ちながら30分間静置した。その後、孔内のPGO水溶液を抜き、さらにシリンジを用いてチューブ内に水を十分に流し込むことでチューブ内面を十分に水洗いした。以下、このようにして作製された摺動性改質医療用カテーテルをPGOコーティングカテーテルと称する。
【0048】
また、内面にPTFEを表出させたポリイミドチューブ(長さ900mm、内径0.5mm)の片端を閉じた後に、60℃に調整したPOO水溶液をシリンジを用いてその孔内に流し込み、そのポリイミドチューブの孔内をPOO水溶液で満たして密閉した。この状態でチューブを60℃の水槽に入れ、温度を保ちながら30分間静置した。その後、孔内のPOO水溶液を抜き、さらにシリンジを用いてチューブ内に水を十分に流し込むことでチューブ内面を十分に水洗いした。以下、このようにして作製された摺動性改質医療用カテーテルをPOOコーティングカテーテルと称する。
【0049】
そして、PGOコーティングカテーテル、POOコーティングカテーテル、及び内面にPTFEを表出させたポリイミドチューブそれぞれの孔内に水を充填した後、それぞれの孔内にフッ素樹脂コートしたステンレスワイヤー(φ0.35mm)(以下、対象ワイヤーという)を挿入し、それぞれのカテーテルを同一の血管モデル(カテーテルを実際の人間の動脈血管のように形成することができる支持体)に装着した。なお、本実施例では、各カテーテルの長さを1mとした。そして、8人の被験者に対象ワイヤーを引っ張ったり、押したり、回したりしてもらい、滑り性に最も優れるものに「1」を、その次に滑り性に優れるものに「2」を、最も滑り性が劣るものに「3」を付してもらった。結果は表5の通りである。
【実施例9】
【0050】
PTFEチューブ(長さ900mm、内径0.5mm)の片端を閉じた後に、60℃に調整したPGO水溶液をシリンジを用いてその孔内に流し込み、そのPTFEチューブの孔内をPGO水溶液で満たして密閉した。この状態でチューブを60℃の水槽に入れ、温度を保ちながら30分間静置した。その後、孔内のPGO水溶液を抜き、さらにシリンジを用いてチューブ内に水を十分に流し込むことでチューブ内面を十分に水洗いした。
【0051】
この摺動性改質医療用カテーテル内面の乾燥状態および湿潤状態での摩擦抵抗値を上述した測定方法に従って測定した。結果は表6の通りである。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
〔結果〕
表1から明らかなように、PGOおよびPOOの摺動性改質剤は、PTFE表面を有効に親水化している。
また、表2、表3、表5、および表6から明らかなように、PGO及びPOOにより摺動性改質された医療用ワイヤーやカテーテルは、乾燥状態においても湿潤状態においてもPTFE表面を有する医療用ワイヤーやカテーテルよりも優れた滑り性を示す。
【0059】
また、表4から明らかなように、PGOにより摺動性改質された医療用ワイヤーは、100回の繰り返し試験後でもその滑り性が維持されており、繰り返し使用に対して優れた耐久性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る摺動性部材は、乾燥状態であっても湿潤状態であってもフッ素樹脂表面を有する摺動性部材よりも優れた摺動性を示す上、さらに耐久性に優れており、繰り返し使用による劣化の度合いが非常に小さいという特徴を有し、医療用カテーテルや、医療用ワイヤー、スキー板、スノーボード板など優れた摺動性が必要とされる用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る摺動性改質医療用ワイヤーの横断面図である。
【図2】本発明に係る摺動性改質医療用カテーテルの横断面図である。
【図3】本発明に係る摺動性改質医療用ワイヤーおよび摺動性改質医療用カテーテルの摩擦抵抗値を測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10 摺動性改質医療用ワイヤー
14 フッ素樹脂層
15,25 摺動性改質層
20 摺動性改質医療用カテーテル
22 フッ素樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状を呈し少なくとも一部に疎水性表面を有する基体と、
親水性ブロックおよび疎水性ブロックを有し前記疎水性表面の少なくとも一部を被覆する摺動性改質剤と、
を備える、摺動性部材。
【請求項2】
前記疎水性表面は、フッ素樹脂表面である、
請求項1に記載の摺動性部材。
【請求項3】
前記摺動性改質剤は、0.1〜2μmの厚みを有する、
請求項1または2に記載の摺動性部材。
【請求項4】
前記親水性ブロックは、ポリオキシエチレン基である、
請求項1から3のいずれかに記載の摺動性部材。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレン基は、繰り返し単位が1〜5である、
請求項4に記載の摺動性部材。
【請求項6】
前記疎水性ブロックは、炭化水素基である、
請求項1から5のいずれかに記載の摺動性部材。
【請求項7】
前記炭化水素基は、オレイル基、ラウリル基、及びステアリル基から成る群から選択される炭化水素基である、
請求項6に記載の摺動性部材。
【請求項8】
前記摺動性改質剤は、下記一般式(1):
1O(CH2CH2O)nH (1)
(ただし、式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基であり、nは1〜5である)、
または、下記一般式(2):
2COO(CH2CH2O)nH (2)
(ただし、式中、R2は炭素数7〜21の炭化水素基であり、mは1〜3である)、
または、下記一般式(3):
3O(CH2CH(CH3)O)mH (3)
(ただし、式中、R3は炭素数8〜22の炭化水素基であり、nは1〜5である)、
または、下記一般式(4):
4COO(CH2CH(CH3)O)mH (4)
(ただし、式中、R4は炭素数7〜21の炭化水素基であり、mは1〜3である)、
または、下記一般式(5):
5O(CH2CH(CH3)O)s(CH2CH2O)tH (5)、
(ただし、式中、R5は炭素数8〜22の炭化水素基であり、s及びtは1〜5である)、
または、下記一般式(6):
6COO(CH2CH(CH3)O)u(CH2CH2O)vH (6)
(ただし、式中、R6は炭素数7〜21の炭化水素基であり、u及びvは1〜3である)
で示される、
請求項1から3のいずれかに記載の摺動性部材。
【請求項9】
前記疎水性ブロックは、含フッ素炭化水素基である、
請求項2に記載の摺動性部材。
【請求項10】
前記基体は、医療用部材の基体である、
請求項1から9のいずれかに記載の摺動性部材。
【請求項11】
前記医療用部材の基体は、医療用ワイヤーである、
請求項10に記載の摺動性部材。
【請求項12】
前記医療用部材の基体は、カテーテルである、
請求項10に記載の摺動性部材。
【請求項13】
前記疎水性表面は、前記カテーテルの内面および外面の少なくとも一方に存在する、
請求項12に記載の摺動性部材。
【請求項14】
請求項1に係る摺動性部材を製造する摺動性部材製造方法であって、
前記基体の前記疎水性表面に、前記摺動性改質剤の溶液を接触させて摺動性改質剤塗布基体を製造する摺動性改質剤溶液塗布工程と、
前記摺動性改質剤塗布基体を乾燥する乾燥工程と、
を備える、摺動性部材製造方法。
【請求項15】
前記溶液には、0.1〜5wt%の摺動性改質剤が含まれる、
請求項14の摺動性部材製造方法。
【請求項16】
前記摺動性改質剤は、ポリエチレングリコールモノオレエートであり、
前記溶液は、60℃±5℃に保たれている、
請求項14または15に記載の摺動性部材製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−202846(P2007−202846A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26125(P2006−26125)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】