説明

撚線導体

【課題】中空部を有する従来の撚線導体と比較して、低い圧縮率で、かつ、口径の大きな撚線導体を提供する。
【解決手段】複数層かならなる外層2を有し、前記外層2における各層2a、2bは、複数本の素線4、5を同一円周上に配設して構成され、前記外層2における各層2a、2bを構成する素線4、5の数は全て同一であり、前記外層2における各層2a、2bを構成する素線4、5の基となる線材の直径は全て同一であり、前記外層2における各層2aを構成する素線4の基となる線材の直径は、この層における内側に隣接する層2bを構成する素線5の基となる線材の直径より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚線導体に関するもので、詳しくは、電線等に使用される撚線導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線等に使用される撚線導体を構成する各素線の基となる線材は、断面円形の丸線で同一の直径、かつ、同一の素材で形成されていることが一般的である。該線材としては、銅線、この銅線に、錫、ニッケル、銀をメッキしたもの、アルミ線、各種合金線が使用される。
【0003】
また、従来、中央部に中空部を持つ撚線導体の製造方法として、同一円周上に配置される複数本の線材に撚りを掛けながら、複数種類の圧縮ダイスを通す製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、これを従来技術1とする。
【0004】
また、中央部に中空部を持つ撚線導体の製造方法として、予め、素線の断面形状が、環を複数に分割した扇型形状に成形した異形素線を、組み撚り合わせる製造方法が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。以下、これを従来技術2とする。
【0005】
前記従来技術1の撚線導体においては、複数種類の圧縮ダイスを使用して製造することから、その製造方法が複雑で、製造効率が悪いという問題がある。
【0006】
また、前記従来技術2の撚線導体においては、撚線導体の種類毎に、異形素線を準備する必要があるため、異形素線には汎用性が無く、異形素線の設計及び製造に手間やコストがかかり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
また、上記の問題点を解決した中央部に中空部を持つ撚線導体の製造方法として、特許文献4に記載の製造方法が知られている。以下、これを従来技術3とする。
【特許文献1】実開昭64−35615号公報
【特許文献2】特公昭61−9691号公報
【特許文献3】特公平4−66952号公報
【特許文献4】特開平11−25758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来技術3の撚線導体は、同一円周上に配置される素線の本数が多くなるほど、中空部を形成することが難しくなり、形成できたとしても撚線導体の外部からの外部応力に対して弱く、中空部が潰れ易いため、同一円周上に最大20本の素線を配置することが限界であった。
【0009】
また、隣接する線相互の滑り易さから撚り戻りが生じ、撚り目が開くという問題点がある。
【0010】
この問題点が生じるのは、次の要因によるものと考えられる。
従来技術3の撚線導体101においては、全て断面円形で、同一の直径を有し、かつ、同一の素材からなる軟質線を使用していることから、全ての線材が同じ物理特性を有し、圧縮ダイスにより圧縮変形して形成された図10に示す隣接素線102、102間の接触面103は、図10に示すように、平面形状となる。このように、接触面103が平面形状であることにより、隣接する素線102、102間の接触面103で滑り現象が起き易くなり、中空部の形状が潰れ易くなると考えられる。
【0011】
また、一般的に、撚線導体101に用いる線材が同一素材の場合、製造可能な圧縮率の下では、隣接する素線102、102間の接触面103は、平面状の規則的な圧縮痕の形態となる。また、各素線102の圧縮部位の変形状態は、構成本数が増加するほど均一に分散され、かつ、接触部位も少なくなるため、隣接する素線102、102間の接触面103で滑り現象が起き易くなり、堅牢なアーチ形状を構築することが難しくなると考えられる。
【0012】
また、同一円周上に配置される素線102の本数が多くなるほど、素線102の両側の接触面103、103で構成される角度は狭く、鋭角となる。また、圧縮痕は構成本数の増加に伴い分散し、軽度化するため、隣接する素線102、102間での滑り現象が起きやすくなると考えられる。
【0013】
更に、線材として硬質線を使用した場合には、隣接する素線102、102の接触面103における圧縮痕は、軟質線を用いたときのように平面状とはならず、点面形状に留まる。そのため、硬質線を用いる場合には、軟質線を用いた場合よりも、隣接する素線102、102間の接触面103における滑り現象が起き易く、より中空部の形状が潰れ易くなる。
【0014】
従って、この従来の方法においては、硬質線を用いた中空部を有する圧縮撚線を製造することは困難であった。
【0015】
一方、市場においては、中空部が安定し、かつ、撚線導体の口径の大きなものが求められているが、従来技術3においては、同一円周上に20本配置することが限界であるため、口径の大きなものを作ることができなかった。
【0016】
また、従来技術3において、同一円周上に20本の素線を配置するためには、10%以上の圧縮率((1−圧縮ダイスの内径/線材を寄集めた時の外径)×100)が必要であったため、線材が有するのび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性の低下が大きいという問題点がある。
【0017】
また、市場においては、硬質線を用いた中空部を有する圧縮撚線も求められているが、上述のように製造することは困難であった。
【0018】
そこで、本発明は、前記の問題点を解決した撚線導体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、複数層かならなる外層を有し、前記外層における各層は、複数本の素線を同一円周上に配設して構成され、前記外層における各層を構成する素線の数は全て同一であり、前記外層における各層を構成する素線の基となる線材の直径は全て同一であり、前記外層における各層を構成する素線の基となる線材の直径は、この層における内側に隣接する層を構成する素線の基となる線材の直径より大きいことを特徴とする撚線導体である。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記外層における各層を構成する素線の外面同士で形成される谷間部に、この層の内側に隣接する層を構成する素線が位置することを特徴とするものである。
【0021】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記外層を構成する素線は、該素線と隣接する外層を構成する全ての素線と当接していることを特徴とするものである。
【0022】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2又は3記載の発明において、前記外層における各層を構成する素線の数は、5本以上であることを特徴とするものである。
【0023】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の発明において、前記外層を構成する素線の基となる線材として、硬さの異なる2種類以上の線材を用い、前記外層における各層を構成する素線は、各層において全て同一の硬さであることを特徴とするものである。
【0024】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の発明において、前記外層を構成する素線の基となる線材として、硬質線又は/及び軟質線を用いたことを特徴とするものである。
【0025】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6の何れか1項に記載の発明において、前記外層の内側に、中空部を有することを特徴とするものである。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至6の何れか1項に記載の発明において、前記外層の内側に、単数又は複数本の線材、又は充填材からなる内層を配置したことを特徴とするものである。
【0027】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記外層の内面が、前記内層の外面と係止しないことを特徴とするものである。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記外層の内面が、前記内層の外面と係止することを特徴とするものである。
【0029】
請求項11記載の発明は、請求項1乃至10の何れか1項に記載の発明において、圧縮成形したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数層の外層で構成され、該外層における各層を構成する素線の数は全て同一で、前記外層における各層を構成する素線の基となる線材の直径は全て同一で、前記外層における各層を構成する素線の基となる線材の直径を、この層における内側に隣接する層を構成する素線の基となる線材の直径より大きくすることにより、素線は、隣接する全ての素線と当接することができる。これにより、ある1本の素線と、これと層の周方向に隣接する2本の素線との夫々の接触点と、撚線導体の中心点とを、夫々に結んだ線がなす角度は、周方向において全ての素線において略同一、すなわち、撚線導体の軸を中心とする周方向に規則的に配置することができるため、外層が堅牢なアーチ構造を形成し、撚線導体を潰れにくくすることができる。
【0031】
また、従来技術3の撚線導体よりも、堅牢なアーチ構造を構成することが出来ることにより、隣接する素線の接触面間で滑り現象が起き難く、撚り戻りも生じ難く、撚り目の開きが生じ難い。
【0032】
また、中空部を有する場合は、従来技術3の撚線導体と比較して、外層をより堅牢なアーチ構造とすることができるため、中空部が安定したものとすることができ、従来技術3の撚線導体においては、20本が最大であったが、本発明は、それより構成本数の多い本数でも安定した中空部を有する撚線導体を製造することができる。また、従来技術3の撚線導体よりも、低い圧縮率でも、中空部が安定した撚線導体を提供することが出来る。
【0033】
更に、請求項2記載の発明によれば、外層における各層を構成する素線の外面同士で形成される谷間部に、この層の内側に隣接する層を構成する素線が位置することにより、より堅牢なアーチ構造を構成することができる。
【0034】
更に、請求項3記載の発明によれば、外層を構成する素線は、この素線と隣接する外層を構成する全ての素線と当接していることにより、より堅牢なアーチ構造を構成することができる。
【0035】
更に、請求項5記載の発明によれば、仕様材質の選択肢の幅を拡大することができ、撚線導体の物理特性等を向上することが期待できる。
【0036】
更に、請求項6記載の発明によれば、硬質材を線材として使用できることにより、仕様材質の選択の幅を拡大することができる。また、硬質線を用いて撚線導体を製造した後に、熱処理を加えて軟質材とすることが可能となり、撚線導体の特性値の向上、製造のリードタイムの短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0038】
図1は、本発明の実施例1を示すものである。図1は、撚線導体1の軸方向と直交する方向に切断した断面図で、その各素線の断面を示す斜線は、図の煩雑を避けるために省略した。
【0039】
該撚線導体1は、図1に示すように、最外層2aと、該最外層2aの内側に配置した第2層2bの2層からなる外層2で構成され、該外層2の内部には、空洞の中空部3が形成されている。
【0040】
前記最外層2aは、図1に示すように、12本の素線4を同一円周上に配置して形成され、最外層2aを構成する12本の素線4の基となる12本の線材は、断面円形で、全て同一の直径及び同一の素材からなるものである。
【0041】
また、前記第2層2bは、図1に示すように、12本の素線5を同一円周上に配置して形成され、第2層2bを構成する12本の素線5の基となる12本の線材は、断面円形で、全て同一の直径及び同一の素材からなるものである。
【0042】
したがって、前記最外層2aを構成する素線4の本数と、前記第2層2bを構成する素線5の本数とは同一に設定されている。
【0043】
前記最外層2aを構成する素線4の基となる線材の直径は、前記第2層2bを構成する素線5の基となる線材の直径よりも大きく設定されている。
【0044】
前記最外層2aを構成する素線4の外面同士で形成される谷間部6に、前記第2層2bを構成する素線5が位置し、中空部3の中心点Aと隣接する第2層2bを構成する素線5、5の接触点Bとを結んだ線の延長線上に、前記最外層2aを構成する素線4の中心点Cが位置している。
【0045】
前記最外層2aを構成する1本の素線4は、第2層2bを構成する2本の素線5、5と軸方向において線接触し、第2層2bを構成する1本の素線5は、最外層2aを構成する2本の素線4、4と軸方向において線接触している。すなわち、素線4、5は、隣接する素線4、5と当接している。
【0046】
前記最外層2aを構成する素線4の基となる線材、及び、前記第2層2bを構成する素線5の基となる線材として、銅線、この銅線に、錫、ニッケル、銀等をメッキしたもの、アルミ線、各種合金線、及び、エナメル線、ホルマル線等の絶縁被覆されたもの等を使用することができる。なお、前記最外層2aを構成する素線4の基となる線材の素材と、前記第2層2bを構成する素線5の素材は、同じ素材を用いても良いし、異なる素材を用いてもよい。例えば、最外層2aを構成する素線4の基となる線材に軟質材を用い、第2層2bを構成する素線5の基となる線材に硬質材を用いてもよい。
【0047】
また、前記最外層2aを構成する素線4の基となる線材、及び、前記第2層2bを構成する素線5の基となる線材の直径は、上記のような関係が成り立つように任意に設定することができる。
【0048】
前記撚線導体1は、上記の構造を有しているために、次のような作用、効果を奏する。
撚線導体1は、2層からなる外層2で構成され、該最外層2aを構成する素線4の数と、第2層2bを構成する素線5の数が同一である。また、隣接する2本の素線4、4の谷間部6に1本の素線5が配設され、素線4、5は、隣接する全ての素線4、5と当接している。これにより、図1に示すように、ある1本の素線4(5)と、これと層の周方向に隣接する2本の素線4(5)、4(5)との夫々の接触点D、Eと、中空部3の中心点Aとを、夫々に結んだ線ADと線AEとがなす角度θは、周方向において全ての素線4(5)において略同一、すなわち、撚線導体1の軸を中心とする周方向に規則的に配置しているため、外層2が堅牢なアーチ構造を形成し、中空部3が潰れにくくなる。
【0049】
これにより、本実施例1の撚線導体と同様の構成をとることにより、従来技術3よりも大口径の撚線導体を製造することができるようになる。また、堅牢なアーチ構造を形成することにより、滑り現象がおき難くなり、素線4、5の撚り戻りも生じ難く、従来技術3より撚り目が開きにくく、従来技術3の撚線導体よりも精度の高いシールド形態とすることができる。
【0050】
この構成より、従来技術3の同心円上に同一素線を配置した撚線導体においては、同一円上に20本が最大であったが、それより構成本数の多い本数でも安定した撚線導体を製造することができる。
【0051】
また、本実施例1の撚線導体は、従来技術3の撚線導体と比較して、堅牢なアーチ構造を形成することができるため、従来技術3の撚線導体よりも、低い圧縮率でも、中空部3が安定した撚線導体を提供することが出来る。
【0052】
また、前記最外層2aを構成する素線4の基となる線材の素材と、前記第2層2bを構成する素線5の素材を、異なる素材とした場合には、仕様材質の選択肢の幅を拡大し、最外層2aを構成する素線4の基となる線材に軟質材を用い、第2層2bを構成する素線5の基となる線材に硬質材を用いる等により、撚線導体の物理特性等を向上することが期待できる。
【0053】
[試作品1]
前記最外層2aを構成する12本の素線4の基となる12本の線材として、直径0.260mmの裸軟銅線を用い、前記第2層2bを構成する12本の素線5の基となる12本の線材として、直径0.164mmの裸軟銅線を用い、圧縮率((1−圧縮ダイスの内径/線材を寄集めた時の外径)×100):2.73%、撚りピッチ:8.2mmで、前記実施例1の撚線導体1を製造することができた。
【0054】
このように、本実施例1の撚線導体は、従来技術3(圧縮率10%以上)と比較して、低い圧縮率で撚線導体1を製造することができるため、線材が有するのび特性、柔軟性、可とう性等の物理特性の低下を低く抑えることが出来、信頼性の高い品質を得ることができることがわかる。
【実施例2】
【0055】
前記実施例1においては、外層2を前述のように構成したが、外層は、複数層で、かつ、外層における各層を構成する素線の数は、全て同一で、かつ、外層における各層を構成する素線の基となる線材の直径は、この内側に隣接する層を構成する素線の基となる線材の直径より大きいものであればよく、例えば、図2に示すように、構成しても良い。
【0056】
図2は、本実施例2を示す1例で、この撚線導体11は、外層12を有し、該外層12を、最外層12aと、該最外層12aの内側に配置した第2層12bと、該第2層12bの内側に配置した第3層12cの3層で構成したものである。
【0057】
前記最外層12aは、図2に示すように、12本の素線14を同一円周上に配置して形成され、最外層12aを構成する12本の素線14の基となる12本の線材は、全て同一の直径及び同一の素材からなるものである。
【0058】
前記第2層12bは、図2に示すように、12本の素線15を同一円周上に配置して形成され、第2層12bを構成する12本の素線15の基となる12本の線材は、全て同一の直径及び同一の素材からなるものである。
【0059】
前記第3層12cは、図2に示すように、12本の素線16を同一円周上に配置して形成され、第3層12cを構成する12本の素線16の基となる12本の線材は、全て同一の直径及び同一の素材からなるものである。
【0060】
したがって、前記最外層2aを構成する素線14の本数と、前記第2層12bを構成する素線15の本数と、前記第3層12cを構成する素線16の本数は同一に設定されている。すなわち、外層12における各層12a、12b、12cを構成する素線の数は、全て同一である。
【0061】
前記最外層12aを構成する素線14の基となる線材の直径は、前記第2層12bを構成する素線15の基となる線材の直径よりも大きく設定され、前記第2層12bを構成する素線15の基となる線材の直径は、前記第3層12cを構成する素線16の基となる線材の直径よりも大きく設定されている。すなわち、外層における各層を構成する素線の基となる線材の直径は、この内側に隣接する層を構成する素線の基となる線材の直径より大きく設定されている。
【0062】
前記最外層12aを構成する素線14の外面同士で形成される谷間部17に、第2層12bを構成する素線15が位置し、前記第2層12bを構成する素線15の外面同士で形成される谷間部18に、第3層12cを構成する素線16が位置し、素線14、15、16は、隣接する素線14、15、16と軸方向において線接触、すなわち、当接している。
【0063】
なお、本実施例における上記以外の構造、構成は前記実施例1と同様である。
本実施例2においても、前記実施例1と同様の作用、効果を奏する。
【0064】
[試作品2]
前記最外層12aを構成する12本の素線14の基となる12本の線材として、直径0.260mmの裸硬銅線を用い、前記第2層12bを構成する12本の素線15の基となる12本の線材として、直径0.164mmの裸硬銅線を用い、前記第3層12cを構成する12本の素線16の基となる12本の線材として、直径0.104mmの裸硬銅線を用い、圧縮率((1−圧縮ダイスの内径/線材を寄集めた時の外径)×100):0.36%、撚りピッチ:8.2mmで、本実施例2の撚線導体を製造することができた。
【0065】
このように、本実施例2の撚線導体11は、従来技術3(圧縮率10%以上)と比較して、低い圧縮率で撚線導体1を製造することができた。
【0066】
また、従来技術では使用が困難である硬質線を用いても、中空部3が安定した本実施例2の撚線導体11を製造できることがわかる。このように、硬質材を線材として使用できることにより、仕様材質の選択の幅を拡大することができる。また、硬質線を用いて撚線導体を製造した後に、熱処理を加えて軟質材とすることが可能となり、撚線導体の特性値の向上、製造のリードタイムの短縮を図ることができる。
【実施例3】
【0067】
前記実施例1、2においては、外層2、12における各層を構成する素線の数を12本としたが、外層における各層を構成する素線の数は5本以上であればよく、その本数は任意に設定することが出来、例えば、図3に示すように、18本で構成しても良いし、図4〜6に示すように24本で構成しても良い。
【0068】
図3は、本実施例3を示す1例で、この撚線導体21は、外層22を有し、該外層22を、最外層22aと、該最外層22aの内側に配置した第2層22bと、該第2層22bの内側に配置した第3層22cの3層で構成し、外層22における各層22a、22b、22cを構成する素線の数を、全て18本としたものである。
【0069】
図4は、本実施例3を示す他の例で、この撚線導体26は、外層27を有し、該外層27を、最外層27aと、該最外層27aの内側に配置した第2層27bと、該第2層27bの内側に配置した第3層27cの3層で構成し、外層27における各層27a、27b、27cを構成する素線の数を、全て24本としたものである。
【0070】
図5は、本実施例3を示す他の例で、この撚線導体31は、外層32を有し、該外層32を、最外層32aと、該最外層32aの内側に配置した第2層32bと、該第2層32bの内側に配置した第3層32cと、該第3層32cの内側に配置した第4層32d
の4層で構成し、外層32における各層32a、32b、32c、32dを構成する素線の数を、全て24本としたものである。
【0071】
図6は、本実施例3を示す他の例で、この撚線導体36は、外層37を有し、該外層37を、最外層37aと、該最外層37aの内側に配置した第2層37bと、該第2層37bの内側に配置した第3層37cと、該第3層37cの内側に配置した第4層37dと、該第3層37dの内側に配置した第4層37eの5層で構成し、外層37における各層37a、37b、37c、37d、37eを構成する素線の数を、全て24本としたものである。
【0072】
例えば、前記最外層22aを構成する18本の素線の基となる18本の線材として、直径0.260mmの線材を用い、前記第2層22bを構成する18本の素線の基となる18本の線材として、直径0.192mmの線材を用い、前記第3層22cを構成する18本の素線の基となる18本の線材として、直径0.142mmの線材を用いることにより、図3に示すような撚線導体を構成することが出来る。
【0073】
また、例えば、前記最外層27aを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.260mmの線材を用い、前記第2層27bを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.207mmの線材を用い、前記第3層27cを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.165mmの線材を用いることにより、図4に示すような撚線導体を構成することが出来る。
【0074】
また、例えば、前記最外層32aを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.260mmの線材を用い、前記第2層32bを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.207mmの線材を用い、前記第3層32cを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.165mmの線材を用い、前記第4層32dを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.131mmの線材を用いることにより、図5に示すような撚線導体を構成することが出来る。
【0075】
また、例えば、前記最外層37aを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.260mmの線材を用い、前記第2層37bを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.207mmの線材を用い、前記第3層37cを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.165mmの線材を用い、前記第4層37dを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.131mmの線材を用い、前記第5層37eを構成する24本の素線の基となる24本の線材として、直径0.105mmの線材を用いることにより、図6に示すような撚線導体を構成することが出来る。
【0076】
なお、本実施例における上記以外の構造、構成は前記実施例1、2と同様である。
本実施例3においても、前記実施例1、2と同様の作用、効果を奏する。
【実施例4】
【0077】
本実施例4の撚線導体は、前記実施例1乃至3の外層の内側に、単数又は複数の線材で形成された内層を設けたものである。
【0078】
該内層を構成する線材の直径は、任意に定めるもので、外層を構成する線材の直径と、同一としてもよいし、異なる径としてもよい。また、該内層を形成する線材として、銅線、この銅線に、錫、ニッケル、銀等をメッキしたもの、アルミ線、各種合金線、及び、エナメル線、ホルマル線等の絶縁被覆されたもの等を使用することができ、外層を形成する素線と同じ材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。
【0079】
該内層の外周部と外層の内周部の一部とは接しているが、係止はしておらず、内層を容易に取り除くことができるようになっている。また、撚線導体の製造時において、内層は外層からの圧力をうけず、内層を構成する線材が圧縮変形することはない。
【0080】
図7に、本実施例4の撚線導体の1例を示す。
図7に示す撚線導体41の外層42を、前記実施例2の撚線導体11の外層12と同様に、12本の最外層42aと、12本の第2層42bと、12本の第3層42cの3層で構成し、該第3層42cの内部には空間43が形成されている。
【0081】
前記外層42の内側、すなわち、空間43内に、1本の内層線44からなる内層45を配設し、該内層線43の直径は、前記第3層42cの内径よりも小さく設定されている。
【0082】
なお、本実施例4においては、1本の内層線43を内層45としたが、内層45を構成する内層線の本数、直径は任意に設定する。
【0083】
なお、本実施例における上記以外の構成は前記実施例1乃至3と同様である。
また、本実施例4においても、前記実施例1と同様の作用、効果を奏する。
【実施例5】
【0084】
前記実施例4の撚線導体においては、外層の内側部に内層の外側部が係止していないが、外層の内周部に内層の外周部が係止した撚線導体としてもよい。
【0085】
本実施例5の撚線導体においては、外層の内側部に内層の外側部が係止していることにより、撚線導体から内層を容易に取り除くことはできないようになっている。
【0086】
図8に、本実施例5の撚線導体の1例を示す。
図8に示す撚線導体51の外層52を、前記実施例2の撚線導体11の外層12と同様に、12本の最外層52aと、12本の第2層52bと、12本の第3層52cの3層で構成している。
【0087】
外層52の内側に、1本の内層線54からなる内層55を配設し、該内層線54の直径は、前記第3層52cの内径よりも大きく設定され、外層52の内側に係止している。
【0088】
前記撚線導体51を製造する際に、圧縮成形することにより、前記内層55の外面を、前記外層52の内面、すなわち、第3層52cの内面に係止させたものである。
【0089】
なお、本実施例5においては、1本の内層線54を内層55としたが、内層55を構成する内層線の本数、直径は任意に設定する。
【0090】
なお、本実施例における上記以外の構造、構成は、前記実施例1乃至4と同様である。
また、本実施例5においても、前記実施例1乃至4と同様の作用、効果を奏する。
【実施例6】
【0091】
前記実施例5の撚線導体においては、撚線導体を圧縮成形することにより、外層の内周部に内層の外周部を係止したが、内層の最外径を、外層を構成する最内層の内径と同一に設定することにより、撚線導体を圧縮成形することなく、外層の内周部に内層の外周部を係止するようにしてもよい。
【0092】
本実施例6の撚線導体においては、外層の内側部に内層の外側部が係止していることにより、撚線導体から内層を容易に取り除くことはできないようになっている。
【0093】
図9に、本実施例6の撚線導体の1例を示す。
図9に示す撚線導体61の外層62を、前記実施例2の撚線導体11の外層12と同様に、12本の最外層62aと、12本の第2層62bと、12本の第3層62cの3層で構成している。
【0094】
外層62の内側に、1本の内層線64からなる内層65を配設し、該内層線64の直径は、前記第3層62cの内径と同一に設定され、外層62の内側に係止している。
【0095】
前記撚線導体61を製造する際に、圧縮成形することなく、前記内層65の外面を、前記外層62の内面、すなわち、第3層62cの内面に係止させたものである。
【0096】
なお、本実施例5においては、1本の内層線64を内層65としたが、内層65を構成する内層線の本数、直径は任意に設定する。
【0097】
なお、本実施例における上記以外の構造、構成は、前記実施例1乃至4と同様である。
また、本実施例5においても、前記実施例1乃至4と同様の作用、効果を奏する。
【実施例7】
【0098】
前記実施例4乃至6においては、内層を線材により構成したが、充填材を用いてもよい。
【0099】
前記充填材として、線材よりも軟らかな材質のものであれば良く、例えば、ゴム、糸、ケプラー、被覆線、テフロン(登録商標)チューブ等が挙げられる。
【0100】
なお、本実施例における上記以外の構造、構成は、前記実施例1乃至6と同様である。
本実施例7においても、前記実施例1乃至6と同様の作用、効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明における実施例1の撚線導体を示す横断面図。
【図2】本発明における実施例2の撚線導体の一例を示す横断面図。
【図3】本発明における実施例3の撚線導体の一例を示す横断面図。
【図4】本発明における実施例3の撚線導体の他の例を示す横断面図。
【図5】本発明における実施例3の撚線導体の他の例を示す横断面図。
【図6】本発明における実施例3の撚線導体の他の例を示す横断面図。
【図7】本発明における実施例4の撚線導体の一例を示す横断面図。
【図8】本発明における実施例5の撚線導体の一例を示す横断面図。
【図9】本発明における実施例6の撚線導体の一例を示す横断面図。
【図10】従来技術3の撚線導体を示す横断面図。
【符号の説明】
【0102】
1、11、21、26、31、36、41、51、61 撚線導体
2、12、22、27、32、37、42、52、62 外層
3 中空部
4、5、14、15、16 素線
45、55、65 内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層かならなる外層を有し、前記外層における各層は、複数本の素線を同一円周上に配設して構成され、前記外層における各層を構成する素線の数は全て同一であり、前記外層における各層を構成する素線の基となる線材の直径は全て同一であり、前記外層における各層を構成する素線の基となる線材の直径は、この層における内側に隣接する層を構成する素線の基となる線材の直径より大きいことを特徴とする撚線導体。
【請求項2】
前記外層における各層を構成する素線の外面同士で形成される谷間部に、この層の内側に隣接する層を構成する素線が位置することを特徴とする請求項1記載の撚線導体。
【請求項3】
前記外層を構成する素線は、該素線と隣接する外層を構成する全ての素線と当接していることを特徴とする請求項1又は2記載の撚線導体。
【請求項4】
前記外層における各層を構成する素線の数は、5本以上であることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の撚線導体。
【請求項5】
前記外層を構成する素線の基となる線材として、硬さの異なる2種類以上の線材を用い、前記外層における各層を構成する素線は、各層において全て同一の硬さであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の撚線導体。
【請求項6】
前記外層を構成する素線の基となる線材として、硬質線又は/及び軟質線を用いたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の撚線導体。
【請求項7】
前記外層の内側に、中空部を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の撚線導体。
【請求項8】
前記外層の内側に、単数又は複数本の線材、又は充填材からなる内層を配置したことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の撚線導体。
【請求項9】
前記外層の内面が、前記内層の外面と係止しないことを特徴とする請求項8記載の撚線導体。
【請求項10】
前記外層の内面が、前記内層の外面と係止することを特徴とする請求項8記載の撚線導体。
【請求項11】
圧縮成形したことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の撚線導体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−158331(P2009−158331A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336007(P2007−336007)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(395005169)三洲電線株式会社 (10)
【Fターム(参考)】