説明

撚線機

【課題】短尺の撚り線を製造する小型・高速化が可能な撚線機を提供する。
【解決手段】交叉して回転する一対のベルト21A、21Bで撚り機構8を構成し、オーバーツイストローラ7からなる捻り機構によって捻りトルクを加えた複数本のコード素線2A〜2Cの束T2を挟んでベルト21A、21Bが回転することにより、コード素線2A〜2Cを撚りながら送り出し、送り出した撚り線9を、カッター12で所定長さに切断する。捻り機構にはオーバーツイストローラー7に代えて回転異形ダイスを使用してもよい。また、比較的小さい捻り力で撚れる線材の場合は、撚り機構8だけで撚るようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数本の線材を撚って短尺の撚り線を製造する撚線機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばタイヤ補強材として使用するスチールコード等の撚り線を製造する撚線機として、チューブラー型撚線機やバンチャー型撚線機が一般に使用されている。これらチューブラー型やバンチャー型の撚線機は、複数本の線材を連続的に撚ってリールに巻き取り、リールに巻き取った長い撚り線を、タイヤ成形時等に所定の長さに切って使用することを前提としたものである。しかし、これら従来のチューブラー型やバンチャー型の撚線機は、撚られた線が回りながら出てくるもので、撚り線の回転に合わせて巻取り用のリールを巻取り装置ごと回転させる必要がある。
【0003】
それに対し、捻り機構であるオーバーツイストローラーを備えた回転体に送り機構を付加して、オーバーツイストローラーを引取りキャプスタンに兼用し、撚り点の前後で撚り線側または線材側の何れか一方をフリーにして、撚り線となって出てきたものを短く切るようにした撚線機が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。この撚線機は、例えばタイヤ成形時にインラインで使用し、撚り線となって出てきたものを順次短く切って、その場で、例えばタイヤ補強用に並べてタイヤを成形してしまうことを前提とするもので、リールに巻き取らないので、真直性に優れた短尺の撚り線を効率良く製造でき、また、リールを巻取り装置ごと回転させるような大掛かりな機構が必要でないので、チューブラー型やバンチャー型に較べてコンパクトな撚線機とすることができる。
【特許文献1】国際公開第2004/048679号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、短尺の撚り線を製造する上記従来の撚線機は、オーバーツイストローラーに送り機構を付加するものであるため、装置構成が複雑で更なる小型化が困難であり、また、高速化が困難である。
【0005】
本発明は、短尺の撚り線を製造する小型・高速化が可能な撚線機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撚線機は、複数本の線材を撚って短尺の撚り線を製造する撚線機であって、束になって供給された複数本の線材を交叉して回転する一対のベルトで挟んで撚りながら送り出す撚り機構を備えたことを特徴とする。
【0007】
この撚線機では、束になって供給された複数本の線材が、撚り機構の一対のベルトに挟まれ、それら一対のベルトが交叉して回転することにより、ベルト走行方向に摩擦力が発生し、撚り線進行方向に直角な方向の分力が線材に対する捻り力となり、撚り線進行方向の分力が送り力(引取り力)となって、複数本の線材が捩られると同時に送られ、撚りながら送り出される。こうして撚り線となって出てきたものを短く切ることにより、短尺の撚り線を製造し、例えばタイヤ成形時に、撚り線となって出てきたものを順次短く切って、その場で、例えばタイヤ補強用に並べてタイヤを成形してしまうようにできる。
【0008】
この撚線機は、リールに巻き取らないので、真直性に優れた短尺の撚り線を効率良く製造できる。そして、リールを巻取り装置ごと回転させるような大掛かりな機構が必要でなく、また、オーバーツイストローラーに送り機構を付加するような複雑な構成が必要でないため、小型・高速化が容易である。
【0009】
比較的小さい捻り力で撚れる線材の場合は、この一対のベルトからなる撚り機構だけで撚り線にすることができる。また、細径で且つ強度の大きい線材のように、大きな捻りトルクを必要とする場合は、撚り機構に供給される前の束になった複数本の線材に捻りトルクを加える捻り機構を設けることにより簡単に撚り線にすることができる。そして、その捻り機構には、オーバーツイストローラーや回転異形ダイスを使用するのがよい。
【0010】
この撚線機は、捻り機構にオーバーツイストローラーを使用した場合、線材の引取り(送り)は一対のベルトからなる撚り機構が受け持つため、オーバーツイストローラーは捻り力を付与するだけのものであってよく、オーバーツイストローラーに送り機構を付加したものである従来の短尺用の撚線機に較べて機構自体の構成および駆動系の構成が簡単になる。
【0011】
また、捻り機構に回転異形ダイスを使用した場合、装置の小型・高速化が一層容易となる。この場合、回転異形ダイスは、一対のベルトにより撚られた線(製品)の撚りピッチの略2倍分で1回転させるため、撚られた線の略半分の回転数で駆動すればよく、消費動力も少なくて済む。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明の撚線機は、リールに巻き取らないので、真直性に優れた短尺の撚り線を効率良く製造でき、リールを巻取り装置ごと回転させるような大掛かりな機構が必要でなく、また、オーバーツイストローラーに送り機構を付加するような複雑な構成が必要でないため、小型・高速化が容易である。
【0013】
そして、この撚線機は、比較的小さい捻り力で撚れる線材の場合は、一対のベルトからなる撚り機構だけで撚り線にすることができ、細径で且つ強度の大きい線材のように、大きな捻りトルクを必要とする場合でも、撚り機構に供給される前の束になった複数本の線材に捻りトルクを加える捻り機構を設けることにより簡単に撚り線にすることができる。
【0014】
そして、その捻り機構には、オーバーツイストローラーや回転異形ダイスを使用することができ、オーバーツイストローラーを使用した場合、オーバーツイストローラーは捻り力を付与するだけのものであってよく、オーバーツイストローラーに送り機構を付加したものである従来の短尺用の撚線機に較べて機構自体の構成および駆動系の構成が簡単になる。
【0015】
また、捻り機構に回転異形ダイスを使用した場合、装置の小型・高速化が一層容易となり、消費動力も少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(実施の形態の第1の例)
図1および図2は本発明の実施の形態の第1の例を示している。図1は撚線機の全体構成を示す図、図2は撚り機構部の平面図(a)および側面図(b)である。
【0018】
この実施の形態の撚線機は、例えばタイヤ製造ラインにインライン配置されるスチールコード製造用の撚線機として使用されるもので、それぞれコード素線(線材)が巻かれている複数個(図の例では3個)の繰出しリール1A,1B,1Cと、各繰出しリール1A,1B,1Cから繰り出されるコード素線2A,2B,2Cの張力を調整するダンサーローラー3A,3B,3Cと、繰り出された各コード素線2A〜2Cを分離して通す穴を備えた目板4と、目板4の穴を通ったコード素線2A〜2Cを集合させて通すダイス6と、このダイス6を通った複数本のコード素線2A〜2Cの束T1に捻りトルクを加える捻り機構であるオーバーツイストローラー7と、オーバーツイストローラ7によって捻りトルクが加えられた複数本のコード素線2A〜2Cの束T2に更に捻り力を加えると同時に送り力(引取り力)を加え、撚りながら送り出すベルト式の撚り機構8と、撚り機構8の前後でコード素線2A〜2Cおよび製品となった撚り線9を通すダイス10および11と、撚り機構8で撚られ製品となって送り出された撚り線9を順次所定長さに切断するカッター12とを備えている。
【0019】
撚り機構8は、交叉して回転する一対のベルト(平ベルト)21A、21Bにより構成されている。これら一対のベルト21A,21Bは、各一対の駆動側および従動側のローラー22A,23A;22B,23Bに掛けられ、それぞれ駆動側のローラー22A,23Aがスプロケット24,25を介して図示しないモータにより駆動されることにより、図1及び図2に矢印で示すようにそれぞれ一定方向に回転(走行)する。そして、これら一対のベルト21A,21Bは、平面視にて交叉し、上下に重なって、その交叉する部分が、オーバーツイストローラ7により捻りトルクが加えられた複数本のコード素線2A〜2Cの束T2を挟み、それら一対のベルト21A,21Bが回転することにより、ベルト走行方向に摩擦力が発生し、その撚り線進行方向(図1および図2で右方向)に直角な方向の分力がコード素線2A〜2Cの束T2に対する捻り力となり、撚り線進行方向の分力が送り力(引取り力)となるよう配置される。
【0020】
この撚線機では、複数のコード素線2A〜2Cがそれぞれ繰出しリール1A〜1Cから繰り出され、ダンサーローラー3A〜3Cにより張力が調整され、目板4の穴を通り、ダイス6を通って束T1となり、その複数のコード素線2A〜2Cに、回転駆動用プーリー31を介して図示しないモータで回転駆動されるオーバーツイストローラー7によって捻りトルクが加えられる。そして、オーバーツイストローラ7によって捻りトルクが加えられた複数本のコード素線2A〜2Cの束T2が、ダイス10を経て撚り機構8に導かれ、撚り機構8の一対のベルト21A,21Bに挟まれて、回転するベルト21A,21Bにより撚られながら送り出される。そして、撚り機構8によって撚られ、ダイス11を経て送り出された撚り線9は、カッター12で順次所定長さに切断され、例えばタイヤ製造ラインにおいてその場でタイヤ補強材として供給される。
【0021】
なお、図示の例は3本のコード素線を撚ってスチールコードを製造する場合であるが、この第1の例の撚線機は、複数本の線材を撚って短尺の撚り線を製造する撚線機一般に広く適用できる。
【0022】
(実施の形態の第2の例)
図3は本発明の実施の形態の第2の例を示している。(a)は撚線機の要部構成を示す図、(b)は回転異形ダイスの穴の形状を示す図である。
【0023】
この実施の形態の撚線機は、先の第1の例と同様に、例えばタイヤ製造ラインにインライン配置されるスチールコード製造用の撚線機として使用されるもので、捻り機構として、先の第1の例のオーバーツイストローラー7に代えて回転異形ダイス41を使用している。複数本(図の例では3本)のコード素線2A〜2Cを繰り出す繰出しリールを備える点、繰り出された各コード素線2A〜2Cの張力を調整するダンサーローラーを備える点は、先の第1の例と同様である。但し、この実施の形態では、目板を使用せず、繰出しリールから繰り出された複数本のコード素線2A〜2Cを直接集合させるダイス42を備えている。一対のベルト21A、21Bからなる撚り機構8を備える点は先の第1の例と同様である。また、撚り機構8の前後にダイス10,11を備える点、撚り機構8で撚られ製品となって送り出された撚り線9を順次所定長さに切断するカッター12を備える点も先の第1の例と同様である。そして、撚り機構8の構成および動作は先の第1の例と同様である。
【0024】
回転異形ダイス41の穴43は、図3の(b)に示すように、複数本(図の例では3本)のコード素線2A〜2Cの束T1を相対回転できない状態で通すよう略三角に形成されている。
【0025】
この撚線機では、複数のコード素線2A〜2Cがそれぞれ繰出しリール(図示せず)から繰り出され、ダンサーローラー(図示せず)で張力が調整され、ダイス42を通って束T1となり、その複数のコード素線2A〜2Cが、回転異形ダイス41の穴43に通され、回転駆動用スプロケット44を介し図示しないモータによって回転異形ダイス43が回転駆動されることによって捻りトルクが加えられる。そして、回転異形ダイス43によって捻りトルクが加えられた複数本のコード素線2A〜2Cの束T2が、ダイス10を経て撚り機構8に導かれて、撚り機構8の一対のベルト21A,21Bに挟まれ、回転するベルト21A,21Bによって撚りながら送り出される。そして、撚り機構8によって撚られ、ダイス11を経て送り出された撚り線9は、カッター12で順次所定長さに切断され、例えばタイヤ製造ラインにおいてその場でタイヤ補強材として供給される。
【0026】
なお、図示の例は3本のコード素線を撚ってスチールコードを製造する場合であるが、この第2の例の撚線機も、複数本の線材を撚って短尺の撚り線を製造する撚線機一般に広く適用できる。
【0027】
(実施の形態の第3の例)
図4は本発明の実施の形態の第3の例を示している。(a)は撚線機の撚り機構部の平面図、(b)はその側面図(b)である。
【0028】
この実施の形態の撚線機は、先の第1の例と同様に、例えばタイヤ製造ラインにインライン配置されるスチールコード製造用の撚線機として使用されるもので、先の第1の例のオーバーツイストローラー7や第2の例の回転異形ダイス41といった捻り機構を設けず、一対のベルト21A、21Bからなる撚り機構8だけで複数本(図の例では3本)のコード素線2A〜2Cを撚る。比較的小さい捻り力で撚れる線材の場合は、これで十分に撚り線にすることができる。複数本(図の例では3本)のコード素線2A〜2Cを繰り出す繰出しリールを備える点、繰り出された各コード素線2A〜2Cの張力を調整するダンサーローラーを備える点は、先の第1および第2の例と同様である。また、先の第1の例と同様に目板(図示せず)を備え、撚り機構8の前後にダイス10,11備えている。そして、撚り機構8の入口側のダイス10の手前に、各コード素線2A〜2Cをダイス10に案内する筒状のガイド50A,50B,50Cを備えている。撚り機構8で撚られ製品となって送り出された撚り線9を順次所定長さに切断するカッター12とを備える点は先の第1および第2の例と同様である。そして、撚り機構8の構成および動作は先の第1の例で説明したとおりである。
【0029】
この撚線機では、複数のコード素線2A〜2Cがそれぞれ繰出しリール(図示せず)から繰り出され、ダンサーローラー(図示せず)で張力が調整され、目板(図示せず)の穴を通り、ガイド50A〜50Cに案内されてダイス10を通り、束T1となり、撚り機構8に導かれて、撚り機構8の一対のベルト21A,21Bに挟まれ、ベルト21A,21Bによって撚られながら送り出される。そして、撚り機構8で撚られ、ダイス11を経て送り出された撚り線9は、カッター12で順次所定長さに切断され、例えばタイヤ製造ラインにおいてその場でタイヤ補強材として供給される。
【0030】
なお、図示の例は3本のコード素線を撚ってスチールコードを製造する場合であるが、この第3の例の撚線機もまた、複数本の線材を撚って短尺の撚り線を製造する撚線機一般に広く適用できるものである。
【0031】
本発明は、その他、予め所定長さに切断した複数本の線材の束を、上記一対のベルト21A、21Bからなる撚り機構8に供給し、両端フリーの状態で撚ることにより短尺の撚り線を製造するような実施の形態も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例の撚線機の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の第1の例の撚線機の撚り機構部の平面図(a)および側面図(b)である。
【図3】本発明の実施の形態の第2の例の撚線機の要部構成を示す図(a)および回転異形ダイスの穴の形状を示す図(b)である。
【図4】本発明の実施の形態の第3の例の撚線機の撚り機構部の平面図(a)および側面図(b)である。
【符号の説明】
【0033】
1A、1B、1C 繰出しリール
2A、2B、2C コード素線
3A、3B、3C ダンサーローラー
4 目板
6、10、11、42 ダイス
7 オーバーツイストローラー(捻り機構)
8 撚り機構
9 撚り線
12 カッター
21A、21B ベルト
22A,23A 駆動側のローラー
22B、23B 従動側のローラー
24,25 スプロケット
31 回転駆動用プーリー
41 回転異形ダイス(捻り機構)
43 穴
44 回転駆動用スプロケット
50A、50B、50C ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の線材を撚って短尺の撚り線を製造する撚線機であって、束になって供給された複数本の線材を交叉して回転する一対のベルトで挟んで撚りながら送り出す撚り機構を備えたことを特徴とする撚線機。
【請求項2】
前記撚り機構に供給される前の束になった複数本の線材に捻りトルクを加える捻り機構を設けた請求項1記載の撚線機。
【請求項3】
前記捻り機構にオーバーツイストローラーを使用した請求項2記載の撚線機。
【請求項4】
前記捻り機構に回転異形ダイスを使用した請求項2記載の撚線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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