説明

撥水または撥油性仕上げ処理層

【解決手段】 少なくとも2つの撥水性成分または撥油性成分を有する分散物から造られた撥水または撥油性仕上げ処理層において、第一の成分が少なくとも1種類の分散剤を含みそして第二成分が少なくとも1種類の、分散された相またはコロイドを含みそして分散剤および分散された相がゲル状態で存在しそして分散された相のコロイドが分散剤中に異方性に分布しており、その結果コロイドが仕上げ処理層の表面の領域に濃縮されて存在して、仕上げ処理層と周囲雰囲気との間に仕上げ処理層の面を形成することを特徴とする、上記撥水または撥油性仕上げ処理層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性および撥油性紡織繊維および布並びに紡織繊維、織物および布の仕上げ処理法、特に耐洗濯性および耐浄化性の撥水性および撥油性仕上げ効果を紡織繊維、織物および布に生じさせるための該仕上げ処理法に関する。この仕上げ効果は一般に撥水仕上げおよび撥油仕上げとも称される。
【背景技術】
【0002】
今日、繊維加工において沢山の疎水性化用薬品が使用されている。その際に一方においては洗濯耐久性と非洗濯耐久性との間におよびもう一方においてはフッ化炭素含有および非フッ化炭素含有撥水剤との間に相違がある。別のグループにはシリコーン含有撥水剤がある。シリコーン含有撥水剤をフッ化炭素樹脂と組合せて使用することも公知である。重金属含有脂肪酸誘導体、特に有機金属化合物を含有するパラフィンは単独でおよびフッ素化炭素樹脂と組合せて紡織繊維、織物および布の仕上げ処理の際に使用される。
【0003】
あらゆる撥水剤は多かれ少なかれ非極性で水不溶性である点で共通する。それ故にこれらはエマルジョンあるいは微小エマルジョンの形で使用される。
【0004】
洗濯耐久性でない撥水剤は、生み出される撥水効果の質も今日の規準および要求をもはや満たしていないので、今日ではあまり重要ではない。
【0005】
最もしばしば見られる製品およびそれを用いて行なわれる仕上げ処理は反応性の、脂肪変性されたα−アミノアルキル化生成物、フッ素化炭素樹脂およびシリコーン誘導体およびそれらの混合物をベースとするものである。最も良好な撥水効果は今日の方法によるとフッ素化炭素樹脂あるいは脂肪変性され、予備重縮合された反応性のα−アミノアルキル化生成物(エキステンダー)と自己架橋性結合剤(補助剤:Booster )との組合せで達成される。
【0006】
脂肪変性された反応性基含有化合物とは、少なくとも1つの反応性基と併せて1つ以上のアルキル基(C8 〜C25)が共有結合されているあらゆる化合物を意味する。有利に使用される脂肪変性されたα−アミノアルキル化生成物は脂肪アミンの>N−メチロール化合物、脂肪酸アミド並びにメチロール基が部分的エーテル化されていてもよい、ホルムアルデヒドでメチロール化された尿素誘導体がある。
【0007】
一方においては消費者の環境保護意識が高まっているためにそしてもう一方ではますます厳しくなる法規制のために、最も新しい環境規準にも適合する繊維仕上げ処理法の要求が高まっている。このことは使用される繊維材料並びに染料および仕上げ処理剤が広義において環境にやさしくなければならないことを意味している。消費者はためらうことなく着ることができる織物を望んでいる。衣類の場合には、肌にやさしくそしてアレルギー発生物質が存在していないで、かつこの場合には気持ちよく着られることおよび機能性に対する非常に高い要求を満足することが重要である。
【0008】
織物を製造する間に、使用される原料および仕上げ処理剤および補助物質に関する心配がないことが保証されなければならない。製造および加工の間に生じる廃棄薬品、排水および排気に関する危惧のない廃棄物処理性も要求される。そして密閉系の意味では結局、織物をできるだけ少ない環境汚染度で廃棄することができるかまたは回収できるべきである。
【0009】
総合してこれらの要求は既に今日、多くの染料、ハロゲン化およびシリコーン含有薬品並びにシリコーン自体に、例えば衣料および工業の分野の撥水仕上げ処理において使用されている様なシリコーンに向けられている。特別にハロゲン化された仕上げ処理剤は、それを使用した場合に、廃棄しにくい排水中含有物質並びにそれを用いて仕上げ処理された工業用繊維製品および寿命の経過後の衣類の廃棄処分の問題をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、その機能的性質において公知の仕上げ処理法によって製造される製品と最高の水準で同等であるかまたは凌駕する紡織繊維および布を製造することを可能とする繊維の特に撥水および撥油処理の為の新規の仕上げ処理法を実現し、その際に今日の規準に従って使用される薬品を新規の、従来には使用されていなかった化合物に全部または一部交換することを可能とすることである。
【0011】
本発明の別の課題は、時とともに弱まる撥水または撥油効果を再びその全部または少なくとも部分的に再生することを可能とする、繊維の撥水および撥油処理である。
【0012】
更に別の本発明の課題は、仕上げ処理物の品質および機能を低下させることなく、環境を汚染する不所望の化学薬品を省くことを可能とする繊維処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの課題は請求項1に従う新規の撥水または撥油仕上げ処理層、請求項19に従う新規の繊維製品および請求項23の新規の仕上げ処理法によって解決される。
【0014】
本発明の本質的特徴は、仕上げ処理成分の空間的自己組織化を可能とする“ゲスト−ホスト”系として分散物系(この場合、分散物はエマルジョンも包含する)を使用することである。“ゲスト”−成分および“ホスト”−成分(それぞれ分散された相および分散剤)の自己組織化によって、仕上げ処理層内の“ホスト”−成分の内部に“ゲスト”−成分(即ち分散された相)が異方性的に分布される。“ゲスト”成分は完成仕上げ処理層中におよび仕上げ処理層の表面の所に集中しており、適用された仕上げ処理層とその周囲雰囲気との間の相界面のところの物理的、化学的および物理化学的性質がそれによって支配されている。
【0015】
分散物系の水性相中のゲル形成性添加物、例えば高分子量の可溶性多糖類または極性の架橋性成分、例えばグリセリンおよびメトキシメチロール化尿素誘導体によって、上記の自己機能化に平行して織物上での膜形成が生じる。この工程の際に、初めの均一な分散物系が乾燥条件に依存してコアセルベートと称される2つの水性相に分離する。両方の相の一方は主としてゲル形成性ポリマー成分を含有し、他方は非極性の撥水性あるいは撥油性成分によって支配されている。乾燥の間に進行する架橋反応および脱溶媒和によってポリマーゲルの収縮が発生し、その収縮の結果、予めゲルとして存在する構造から膜の多孔質系が生じる。
【0016】
完成仕上げ処理層は実質的にゲル状態の分散物である。この不均一分散系は柱状構造を形成しそしてそれとともに仕上げ処理された繊維上に微小粗面を形成するのに役立ち、これがいわゆる“ロータス(Lotus) ”- 効果を有する。この現象は天然物から公知であり(Ultrastructure and chemistry of the cell wall of the moss Rhacocarpus purpurascens: a puzzling architecture among plants [1,2]) 、本発明により繊維の撥水性および撥油性仕上げ処理に転用される。自然な”ロータス"-効果は三次元表面構造に基づいており、その際に自己組織化によって薄層上に生じるワックス結晶は植物の自己洗浄効果に非常に有利である微小粗面を生じさせる[3]。
【0017】
自己組織化および膜構造形成(それぞれ“ゲスト”−および“ホスト”−成分の部分的相分離傾向)が表面での疎水性または疎油性“ゲスト”成分(それぞれ仕上げ処理層とその周囲の雰囲気との間の相分離層)の富化をもたらす。従って“ゲスト”−および“ホスト”−成分の自己組織化が均一に分布した系に比較して仕上げ処理層表面のところに著しく向上した撥水性−および撥油性効果をもたらす。
【0018】
この新規の仕上げ処理法は、必要な場合には、公知の方法と反対に、環境を害する化学薬品の全部または一部を省くことを可能とする。それぞれに使用される化学薬品は、一方では仕上げ処理の要求プロフィールによって、もう一方ではそれらの物理的、化学的および物理化学的特徴によって、a)所望の三次元表面構造(“ロータス”効果を達成するための柱状構造)を生ずることおよび/またはb)撥水性化−または撥油性化浴液の生じる固有の相不安定性で選択される。
【0019】
これについては請求項1に従って、少なくとも2種類の異なる撥水性化学薬品並びに架橋性のゲル構造形成性化学薬品(分散剤および分散された相)を繊維または織物表面に付与し、そしてそれが該化学薬品の物理的、化学的および物理化学的性質のために後続の乾燥および固定工程の間に所望の微小粗面および/または撥水性化浴液の固有の相不安定性を生じさせる。
【0020】
自己組織化および膜形成は相不安定性によって並びに1種類または複数種の仕上げ処理成分の相変換によっても決まる。
【0021】
従って撥水性系の本質的性質は撥水性成分の色々な凝集状態および/または混合相(油/水型−エマルジョン)の熱力学的不安定性にあり、それに引き続いて撥水性成分の一つが自己組織化の過程の範囲内で界面(液相/気相または固相/気相)で界面活性剤の様に顕著に配向するかまたは例えば柱状構造を生じさせる。付与した際のゾル状の分散物は別の方法段階でゲル状に変換される。この場合、撥水性成分の一つ、即ち“ホスト”または分散剤が無構造のマトリックスまたは膜構造を形成し、その中に第二成分、即ち“ゲスト”または分散された相が導入される。これが“ゲスト−ホスト”系に相当する。
【0022】
第二成分または“ゲスト”成分はその官能的性質によって第二のグループに粗く二つのグループに分離する。一方は“ロータス" 成分と呼ばれ、もう一方は“ミセル"-成分と呼ばれる。両方の成分グループはそれが固定されるまで乾燥する間に僅かな移動性があり、この移動性が自己組織化およびそれゆえの所望の撥水性または疎油性効果にとって決定的に重要である。
【0023】
新規の仕上げ処理層はエネルギー供給による分散剤と分散された相のゲル状態を少なくとも部分的に可逆的にゾル状態に変えることを可能とする。このことはなかでも仕上げ処理層に長期間負荷をかけた後に弱まる撥水性または撥油性を再び全部または少なくとも部分的に再生することを可能とする。この場合、外部からどんな物質も供給する必要がない。自己組織化性およびゾル状分散物中でのコロイドの移動性が仕上げ処理層の表面( 即ち、取り囲む媒体に対しての境界層) での再組織化および濃縮をもたらす。最も簡単な場合には繊維製品の撥水および撥油効果が洗濯物乾燥器で中で単に加熱することによって既に新しい仕上げ処理層を再生することができる。
【0024】
上記の“ゲスト−ホスト”−系は仕上げ処理の要求プロフィールに従って追加的成分により拡大することができる。例えば、一方においては繊維材料への接着性をそしてもう一方においては仕上げ処理物の洗浄耐久性を改善するために、ポリマー造膜剤を併用する。
【0025】
自己組織化および柱状構造の形成にとって本質的に重要なのは、撥水性化または撥油性化浴液を製造することである。この目的のためには重量的に主成分(エキシテンダー)の撥水性化系または撥油性化系を、一般に未だ主成分よりも非極性である第二成分が乳化されている水性エマルジョン中に導入する。これに平行してポリマーのバインダーおよび場合によっては触媒も含有するゲル形成性化学薬品である第二の溶液を製造する。撥水剤を含有するエマルジョンをゲル化用化学薬品を含有する水溶液中に乳化することによって、両方の溶液で油/水−型エマルジョンを生成する。撥水性成分または撥油性成分の乳化は例えば高速回転する撹拌式(ローター/スターター原理)系または高圧混合系を用いて行う。こうして製造される撥水性化浴液または撥油性化浴液を工業的に慣用の適用技術、例えばパジング、刷毛塗り、噴霧塗装または泡立て塗装によって付与する。
【0026】
撥水性層または撥油性層をより良好に接着させるために、特に合成繊維材料の場合にはプライマー層とも称される補助層を付与してもよい。合成織物の場合にプライマー層を調製する目的は撥水性または撥油性層の撥水性化用または撥油性化用薬品および結合剤化学薬品を共有的に固定化するための直接的あるいは間接的ポリマー固定用反応基を供給することである。天然繊維物質の場合のプライマー層は例えば膨潤を制御するためにまたは撥水性または撥油性に平行してしばしば要求されるしわ不形成性に制御するために役立つ。
【0027】
プライマー層の生成およびその用途は担体物質の化学的性質に左右される。合成または再生繊維、織物または布よりなる担体物質の場合にプライマー層を変性された担体物質表面から直接的に形成するかまたは架橋した天然または合成の水酸基、カルボニル基、アミノ基またはチオール基含有ポリマーを担体物質に適用するのが有利であることが実証されている。例えばポリエステル材料はポリエステルの部分鹸化によってポリマー固定された水酸基およびカルボニル基をもたらすことが可能である。この部分鹸化の場合には、持ち分としてはポリエステル物質の0.01〜1%、好ましくは0.2〜0.4%に相当する、ポリエステル材料の上の層を除く。間接的にポリマー固定された反応基は例えば天然または合成の水酸基含有ポリマー、例えばリグニン、多糖類、ポリビニルアルコール等を適用しそして次に例えばイソシアネートまたはα−アミノアルキル化生成物、例えばジメチロールエチレン尿素またはヘキサメチロールメラミン誘導体で架橋させることによって生成できる。
【0028】
撥水剤と組合せて使用されるポリマーバインダーまたはゲル形成剤は、架橋性の重縮合ホルムアルデヒド樹脂(Luwipal 66、製造元: BASF社) またはそれの個々の成分、プレポリマーのアクリル酸−またはメタクリル酸誘導体、イソシアネート、ポリウレタン等を多重反応性基を持つ化合物、例えば多糖類、グリセリンまたはゼラチン併用してもよい。全てのバインダー系あるいはゲル化剤系は、固有のまたは相応する熱処理の後で性質として有している制限された水混和性に特徴がある。
【0029】
撥水性化主要成分(エキステンダーとも称する)として、熱処理および相応する触媒により耐洗濯性に、繊維製品上に固定されるモノマーのまたはプレポリマーの、あるいは予備重合されているが常に脂肪変性された非極性のアクリレート、メタクリレート、イソシアネートまたはエポキシ誘導体および尿素誘導体を使用することができる。
【0030】
その性質のために主として撥水性層または撥油層の自己組織化(層分離)、および相界面のところでのある方向に配向した柱状構造の形成の原因になる“ゲスト”−成分、即ち分散された相は、仕上げ処理に要求されるプロフィール次第で非常に相違しているが常に顕著な非極性である撥水性または撥油性補助物質よりなっていてもよい。
− 固定プロセスの間に相界面(固体/気体)に対して拡散しそして撥水性効果または撥油性効果に有利な位置で固定される高沸点で非極性の液体としては特にシリコーン油、脂肪変性されたエステル、エーテルまたはアミド(例えばグリセリンエステルおよび−エーテル、ソルビタンエステルおよび−エーテルを挙げることができる。
− 別のグループには固体として撥水性−または撥油性エマルジョン中に分散されそして続く熱的固定の間に全部または一部だけ溶融しそして所望の効果によってその物理的性質を持つ相界面を主体とさせる脂肪酸エステル、アルキルエーテル(C12〜C25)および例えば重縮合された脂肪酸アミドがある。
− 第三のグループは柱状構造を形成する物質を包含する。これらには例えば微小化ワックス(粒度0.1〜50μm、好ましくはほぼ20μm)、例えばポリオレフィン−および脂肪酸アミドワックス並びに脂肪変性されたアミノアルキル化生成物としてのワックスおよび疎水性二酸化珪素粒子(粒度:5〜100nm)、好ましくは5〜50nmの粒度を有するナノ粒子が挙げられ、これらも同様に撥水性化または撥油性化浴液中に分散されそして次いで仕上げ処理層中に固定される。かゝる物質の例には特に有利に使用される Ceridust-ワックス(Clariant)またはアエロジル(Aerosile)(Degussa) がある。
【0031】
以下の実施例で本発明の方法の効果を明らかにする。
【実施例】
【0032】
実施例1:
180gの1平方メートル重量を有するポリエステル織物に部分的鹸化(0.3%)によってプライマー層を、ポリエステルと撥水性層との間の接着補助のために生成する。こうして前処理された織物を撥水性化浴液に浸漬して約60%の浴液付着量とし、次いで乾燥しそして150℃で3分縮合する。撥水性化浴液は以下の成分を含有している:
水 923.5mL/L
クエン酸 5 g/L
硫酸アルミニウム 0.5 g/L
Perapret HVN(バインダー) 26 g/L
グア(ゲル形成剤) 2 g/L
Phobotex FTC(エキステンダー) 40 g/L
グリセリンモノオレエート 5 g/L
撥水処理したこの織物は、一般にフッ素化炭素樹脂あるいはシリコーン含浸処理を用いた場合にのみ得ることができる様な非常に良好な試験値を示す(表1)。評価規準としてISO 4920−1981に従う噴霧試験、 Bundesmann に従う撥水性評点(ISO 9865/1993)並びに散水試験の間に検流計(gavimetrisch)で測定した水吸収量(百分率)を利用する。
【0033】
表1:撥水性の試験値
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│ 最初 │3回洗濯後(EN 26330 に従う)
───────────┼─────────┼──────────────
噴霧試験 │ 100% │ 100%
水吸収量 │ 9% │ 12%
撥水性評点 │1'/5、5'/5、10'/5 │ 1'/5、5'/4、10'/4
───────────┴─────────┴──────────────
【0034】
実施例2:
250gの1平方メートル重量を有するポリエステル織物に部分的鹸化(0.5%)によってプライマー層を調製する。こうして前処理された織物をパッドで含浸処理して55%の浴液付着量としテンター上で80℃で連続的に乾燥する。撥水性仕上げ処理物の固定を160℃で3分実施する。
【0035】
撥水性化浴液は他の成分と別に、撥水性層の柱状構造の原因になる疎水性化二酸化珪素ナノ粒子(アエロジル(Aerosile))を含有する:
水 757 mL/L
酢酸 5 g/L
硫酸アルミニウム 0.5 g/L
グリセリン 3 g/L
Lyofix CHN 9 g/L
Cerol EWL 220 g/L
トリパルミチン 4 g/L
アエロジル(Aerosile)R812S 1.5 g/L
撥水性処理したこの織物は、非常に良好な撥水性結果(表2)の他に、“乾燥された”非常に柔らかな手触りを示す。即ち、このものは滑らかな手触りをもたらすシリコーン撥水仕上げ処理と相違している。他の長所は織物の改善された滑り防止性である。評価規準は実施例1のそれと同様である。
【0036】
表2:撥水性の試験値
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│ 最初 │ 3回洗濯後
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噴霧試験 │ 100% │ 100%
水吸収量 │ 7% │ 9%
撥水性評点 │1'/5、5'/5、10'/5 │ 1'/5、5'/5、10'/5
───────────┴─────────┴──────────────
【0037】
実施例3:
150gの1平方メートル重量を有する乾燥しそして漂白した木綿布に、撥水性化処理する前に架橋剤含有溶液を含浸させて、後での水との接触の際に繊維中に水が侵入したりおよび繊維が膨潤するのを減少させる。このプライマー層を造るために、含浸浴液は10g/LのRucon FAN (Rudolf Chemie) 、3g/Lのクエン酸、5g/Lの塩化マグネシウムおよび10g/LのPerapret HVN (BASF) を含有する。プライマー浴液で含浸処理した後に織物を110℃で2分間乾燥する。今度は、相分離によって生じる撥水効果を得るために全部の成分を含有する撥水性化浴液を適用する。
【0038】
水 922.3mL/L
グア 2 g/L
クエン酸 3 g/L
硫酸アルミニウム 1 g/L
Phobotex FTC 50 g/L
メタクリル酸ドデシルエステル 15 g/L
過酸化尿素 1.5 g/L
硫酸鉄 0.2 g/L
トリス−(トリメチルシリル)−ホスファート 5 g/L
パッド上で実施した織物含浸処理の後(浴液付着量72%)、テンター(Spannrahmen)上で100℃で乾燥を行う。撥水性化薬品の固定を同様にテンター上で160℃で2分実施する。
【0039】
この様にして生じた撥水性化物は実施例1および2について測定したのと同様の試験値を示す。
【0040】
表3:撥水性の試験値
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│ 最初 │ 3回洗濯後
───────────┼─────────┼──────────────
噴霧試験 │ 100% │ 100%
撥水性評点 │1'/5、5'/5、10'/5 │ 1'/5、5'/5、10'/5
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【0041】
実施例4:
120gの1平方メートル重量を有する予備処理しそして着色した木綿/ポリエステル−混紡織物(70/30) に、木綿部分を後架橋させるために、架橋剤溶液を含浸させそして130℃で乾燥しそして予備重合する。架橋剤としてはホルムアルデヒドの少ない尿素誘導体(ジメトキシ−エチレン尿素)を触媒としてのクエン酸および塩化マグネシウムの使用下に使用する。
【0042】
第二の作業工程で織物の撥油性化を、以下の成分を含有する浴液を織物に適用しそして120℃で1分間乾燥することによって行なう。浴液吸収量は織物の乾燥重量を規準として65%である。
【0043】
水 953 mL/L
酢酸(60%濃度) 1 mL/L
Ruco−Guard EPF 1561 40 g/L
Ruco−Guard LAD 4 g/L
アエロジル R812S 2 g/L
固定をテンター上で160℃の温度で1分実施する。
【0044】
仕上げ処理された織物は表4の試験値が示す通り、非常に良好な撥水および撥油性を示す。
【0045】
表4:撥油性の試験値
───────────┬─────────┬──────────────
│ 最初 │ 3回洗濯後
───────────┼─────────┼──────────────
噴霧試験 │ 100% │ 100%
撥水性評点 │1'/5、5'/5、10'/5 │ 1'/5、5'/5、10'/5
撥油性* │ 6 │ 6
───────────┴─────────┴──────────────
* AATCC試験法118−1997に従う(撥油性:耐炭化水素試験)
【0046】
実施例5:
170gの1平方メートル重量を有する、80%のポリアミ(polyami) 、10%のPES−Coolmax(R) および10%のLycraよりなる組成の二重織物に、この織物の主として一方の面を撥水性にするために、泡立った浴液を塗布する。この塗布用浴液は全体として、撥水効果を得そして柱状構造を形成するための化学薬品を含有している。
【0047】
水 914.5 g/L
クエン酸 5 g/L
硫酸アルミニウム 0.5 g/L
Phobotex ETC 60 g/L
グリセリン 3 g/L
Lyofix CHN 10 g/L
トリパルチミン 4 g/L
Ceridust 9615A 3 g/L
撥水性化浴液を泡立て装置に通してテンターの被覆装置中に配量供給しそして織物の一方の面に塗布する。乾燥を上記のテンター上で約50℃の冷却限界温度で行い、テンター上で次いで縮合/固定を実施する。これを160℃で2分間行う。
【0048】
この仕上げ処理で得られる効果(表5)は、スポーツ用衣類にとって非常に重要な良好な湿分移動性と同時に非常に良好な撥水効果を示している。
【0049】
表5:仕上げ処理の試験データ
───────────┬─────────┬──────────────
│ 最初 │ 3回洗濯後
───────────┼─────────┼──────────────
噴霧試験 │ 100% │ 100%
撥水性評点 │1'/5、5'/5、10'/5 │ 1'/4、5'/4、10'/4
水吸収性 │ 7 % │ 13 %
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【0050】
実施例6:
150gの1平方メートル重量を有するポリアミド織物を浴液で含浸処理する。この浴液の内容物は固定の際に生じる成分の自己組織化のために柱状構造を形成する。Wollpol A 702(酸性架橋性アクリルプレポリマー、Reichhold 社)およびアクリルステアレートが、浴液中に微細乳化しているPhobotex FECを更に良好に固定するためのバインダー系の一部である。撥水性化用浴液をパッドによって織物に適用し、これをテンター上で乾燥しそして凝縮する。疎水性化浴液は以下の成分よりなる:
水 825.5mL/L
イソプロパノール 50 mL/L
Meypro−Guar Casaa M−200 2 g/L
塩化マグネシウム六水和物 4 g/L
Wollpol A 702(50%) 30 g/L
アクリルステアレート 10 g/L
Phobotex FEC 75 g/L
アゾイソブチロニトリル 0.5 g/L
乾燥温度は60℃であり、縮合条件は150℃で2.5分の処理時間である。
【0051】
この様に実施した撥水仕上げ処理は表6に示す非常に良好な効果に特徴がある。この様に撥水性化処理した織物はスポーツウエアー製品に使用するのに卓越的に適している。
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│ 最初 │ 3回洗濯後
───────────┼─────────┼──────────────
噴霧試験 │ 100% │ 100%
撥水性評点 │1'/5、5'/5、10'/5 │ 1'/5、5'/5、10'/5
水吸収性 │ 3 % │ 8 %
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2つの別の使用例によって以下にアクリレートをベースとする”ホスト”−系を説明する。上記のステアリン変性されたメラミンホルムアルデヒド樹脂をステアリン変性されたポリアクリレートに交換すると、なかでもエマルジョン安定性にとつて有利であることが判った。
【0052】
色々に変性されたアクリル酸−およびメタクリル酸−モノマー(例えばアクリル酸ドデシルエステル、メタクリル酸−ドデシルエステル、末端に第三ブチル基を持つアクリル酸−およびメタクリル酸エステル、トリメチルシラン基を持つアクリル酸−およびメタクリル酸エステル)を実験した。これらは乳化重合によってランダムに変性された溶融性で架橋性のプレポリマーを生じさせる。
【0053】
実施例7:
230gの1平方メートル重量を有するポリエステル織物を撥水性化処理浴液で含浸処理する。この浴液の”ホスト”−成分はステアリル変性された架橋性のアクリルプレポリマーよりなる。アクリルプレポリマーの製造は乳化重合法によって行う。このアクリルプレポリマーは20〜40%の母体エマルジョンとして利用する。”ゲスト−ホスト”−系の安定性をより良好にするために、固定の過程で織物上の相表面に移動するトリグリセリド(”ゲスト”)を既にアクリレートエマルジョンの製造の間に混入する。アクリルプレポリマーおよびトリグリセリドを含有する母体エマルジョンを次いで以下の処方に従う他の化学薬品と一緒に、準備された水性混合物中に撹拌混入する。ステアリル変性されたアクリルプレポリマーは、60〜90℃の温度範囲内での乾燥の間に生じる非常に良好な形成膜に特徴がある。
【0054】
水 733 g/L
イソプロパノール 80 g/L
ソルビタンモノラウレート(Span 20) 2.5 g/L
アクリレート母体エマルジョン(32%) 180 g/L
アエロジル R812S 4.5 g/L
撥水性化用浴液を織物に含浸させることによって適用する。付着重量は織物乾燥重量を規準として48%である。乾燥条件は110℃で1.5分間である。次の縮合を150℃で2分実施する。
【0055】
アクリレートベースで製造された撥水性化仕上げ処理液は撥水性規準に関してPhobotex−仕上げ処理液と直接的に比較できるが、本質的に高い浴液安定性および実質的にホルムアルデヒドのない仕上げ処理であるという長所を有する。
───────────┬─────────┬──────────────
│ 最初 │ 3回洗濯後
───────────┼─────────┼──────────────
噴霧試験 │ 100 % │ 100 %
水吸収性 │ 6 % │ 8 %
撥水性評点 │1'/5、5'/5、10'/5 │ 1'/5、5'/4、10'/4
───────────┴─────────┴──────────────
【0056】
実施例8:
用途分野がスポーツウエアー商品分野であるポリエステル織物を、既に何度も上述した”ゲスト−ホスト”−原理に相応する撥水性化仕上げ処理する。”ホスト”−系はメタクリル酸、メタクリル酸ドデシルエステルおよび第三ブチル−アミノエチルメタクリレート(SERPOL QMO 204)よりなるモノマー混合物から乳化重合法で製造されるアクリルプレポリマーで形成する。ステアリル変性された架橋性のアクリルプレポリマーよりなる。アクリレート母体エマルジョンを製造するためにモノマー混合物に、モノマー重量を規準として10%のステアリルトリグリセリドを混入する。アクリル母体エマルジョンの固形分含有量は35%である。トリグリセリドを含有するアクリルプレポリマーは、所望の造膜性および層表面のところでのトリグリセリドの特有の動的配向との関連で50〜90℃の優れた溶融挙動を示す。撥水性化処理浴液を製造するためにアクリレート母体エマルジョンを他の部分的に前分散された化学薬品(例えば Aerosil R 812 S) と一緒に、準備された水中に撹拌混入する。
【0057】
水 794 g/L
イソプロパノール 50 g/L
アクリレート母体エマルジョン(35%) 150 g/L
アエロジル R812S 5 g/L
ポリビニルピロリドン K 90 1 g/L
適用は織物を含浸処理して55%の浴液付着量とするように行う。続く乾燥は110℃で1.5分間実施する。次の縮合反応によってアクリルプレポリマーの自己架橋が発生し、その結果として非常に高い耐水性が得られる。
【0058】
以下の処方に従って仕上げ処理された織物は非常に良好な撥水性を、フッ素化された撥水剤でのみ達成される様な高い耐洗濯性を示す。
───────────┬─────────┬──────────────
│ 最初 │ 3回洗濯後
───────────┼─────────┼──────────────
噴霧試験 │ 100 % │ 100 %
水吸収性 │ 5 % │ 7 %
撥水性評点 │1'/5、5'/5、10'/5 │ 1'/5、5'/5、10'/5
───────────┴─────────┴──────────────
文献名:
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの撥水性成分または撥油性成分を有する分散物から造られた撥水または撥油性仕上げ処理層において、第一の成分が少なくとも1種類の分散剤を含みそして第二成分が少なくとも1種類の、分散された相またはコロイドを含みそして分散剤および分散された相がゲル状態で存在しそして分散された相のコロイドが分散剤中に異方性に分布しており、その結果コロイドが仕上げ処理層の表面の領域に濃縮されて存在して、仕上げ処理層と周囲雰囲気との間に仕上げ処理層の面を形成することを特徴とする、上記撥水または撥油性仕上げ処理層。
【請求項2】
仕上げ処理層表面が分散剤に比較して同等のまたは高められた撥水および撥油性を有する、請求項1に記載の撥水または撥油性仕上げ処理層。
【請求項3】
分散された相が疎水性または疎油性コロイドを含み、これらが仕上げ処理層表面で撥水効果に有利な空間配列で濃厚に存在する、請求項1に記載の仕上げ処理層。
【請求項4】
以下のグループの1つのうちの少なくとも1種類の非極性の撥水性化合物またはこれら化合物の組合せを含有する請求項3に記載の仕上げ処理層:
− 高沸点の非極性液体としてのシリコーン油、脂肪変性されたエステルおよび
エーテル、
− 固体物質としての脂肪酸エステル、C12〜C25−アルキルエーテルおよび重縮合した脂肪酸アミド。
【請求項5】
高沸点で非極性の液体がグリセリンエステルまたはグリセリンエーテルまたはソルビタンエステルまたはソルビタンエーテルを含む、請求項4に従う仕上げ処理層。
【請求項6】
分散された相が、仕上げ処理層表面である方向に配向した柱状構造を形成し、その結果表面の微小粗面性が”ロータス(Lotus) ”- 効果を発生する、請求項1に記載の仕上げ処理層。
【請求項7】
分散された層が以下のグループの1つからの少なくとも1種類の化合物またはこれら化合物の組合せを含有する請求項6に記載の仕上げ処理層:
− 0.1〜50μmの粒度を有する微小化ワックス、
− 脂肪変性されたアミノアルキル化−またはポリアミド生成物としてのワックス
− 5〜50nmの粒度を有する疎水性二酸化珪素ナノ粒子。
【請求項8】
ポリオレフィン−および脂肪酸アミドワックスのグループから選択された微小化ワックスおよび疎水性化二酸化珪素を含有する、請求項7に記載の分散された相。
【請求項9】
分散剤が少なくとも1種類の撥水剤または撥水剤の組合せを含有する、請求項1に従う仕上げ処理層。
【請求項10】
脂肪変性された非極性のアクリレート、メタクリレート、イソシアネート、エポキシ誘導体および尿素誘導体よりなるグループから選択された、請求項9の仕上げ処理層。
【請求項11】
モノマー、プレポリマーであるかまたは予備重縮合されている、請求項10に記載の仕上げ処理層。
【請求項12】
分散剤がポリマーバインダーを含む、請求項1に記載の仕上げ処理層。
【請求項13】
バインダーが架橋され予備縮合されたホルムアルデヒド樹脂またはそれの個々の成分または、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、イソシアネート、ポリウレタンよりなるプレポリマー化合物またはそれの個々の成分を含有する、請求項12に記載の仕上げ処理層。
【請求項14】
変性されたアクリル酸−およびメタクリル酸モノマーよりなるグループから選択される、請求項13に記載のプレポリマー。
【請求項15】
ランダムに変性された、溶融性で架橋性のプレポリマーに乳化重合によって転化できるアクリル酸ドデシルエステル、メタクリル酸ドデシルエステル、末端に第三ブチル基を有するアクリル酸−およびメタクリル酸エステル、トリメチルシラン基を持つアクリル酸−およびメタクリル酸エステルよりなるグループから選択される化合物を含有する、請求項14のプレポリマー。
【請求項16】
バインダーが多重反応性基を持つ化合物を含む、請求項13〜15のいずれか一つに記載の仕上げ処理層。
【請求項17】
多重反応性基を持つ化合物が多糖類、グリセリンおよびゼラチンよりなるグループから選ばれる個々の化合物またはそれらの組合せである、請求項16に記載の仕上げ処理層。
【請求項18】
分散剤および分散された相のゲル状態がエネルギーの供給によって少なくとも部分的に可逆的にゾル状態に変換できる、請求項1に記載の仕上げ処理層。

【公開番号】特開2008−69507(P2008−69507A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260218(P2007−260218)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【分割の表示】特願2001−573085(P2001−573085)の分割
【原出願日】平成13年4月2日(2001.4.2)
【出願人】(500117381)シェーラー・テクスタイル・アクチエンゲゼルシヤフト (1)
【Fターム(参考)】