説明

撥水撥油防汚性表面を有する着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子とその製造方法。

【課題】表面エネルギーが2mN/m以下の表面を実現し、厳冬期の着氷着雪防止効果が極めて高いアンテナ及び電線を提供することより、着氷着雪によるアンテナの破壊や電線の破断事故を防止する。
【解決手段】基材表面が大きな凸凹と小さな凸凹に複合加工されており、それぞれの表面が撥水撥油防汚性薄膜で被われていることを特徴とする超撥水撥油表面を有する着氷着雪防止アンテナ及び電線とその製造方法。大きな凸凹が500〜10ミクロンの大きさであり、小さな凸凹が10ミクロン未満から10ナノメートル以上の大きさであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が、シリコーンオイルをはじくほどの極低表面エネルギーな着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子に関するものである。また、着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、表面に10ミクロン程度の凸凹があり、さらにその凸凹表面が脂肪酸の被膜で被われた表面は、蓮の葉で見られるように水滴撥水角度が140度程度の超撥水であることが知られている。本発明は、この原理を模倣し、改良したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、豪雪地帯でも、ライフラインとしてのアンテナや電線、碍子は、生活を維持していく上で必須の設備であるが、厳冬期には、着氷着雪によるアンテナや碍子の破壊、電線の破断事故が絶えないのが現状である。そこで、一部のアンテナ等には、フッ素塗料を塗布して着氷着雪を防止しているが、フッ素樹脂の表面エネルギーは、せいぜい15mN/m程度であり、着氷着雪効果として満足できるものではなかった。
【0004】
本発明は、前記現状に鑑み、表面エネルギーが2mN/m以下の表面を実現し、厳冬期の着氷着雪防止効果が極めて高いアンテナ及び電線、碍子を提供することより、着氷着雪によるアンテナや碍子の破壊や電線の破断事故を防止することを目的とする。
なお、このような物性値を実現できれば、雨量計を含む各種気象観測機器の着氷着雪防止、液体窒素タンクや液体酸素タンクの取り出しの部の着氷防止、あるいはスペースシャトルの外部燃料タンクの着氷防止等にも適用可能となり、着氷が原因で起こる事項の防止には効果絶大である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段として提供される第1の発明は、表面が大きな凸凹と小さな凸凹に複合加工されており、それぞれの凸凹の表面が撥水撥油防汚性薄膜で被われていることを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子である。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、大きな凸凹が500〜10ミクロンの大きさであり、小さな凸凹が10ミクロン未満から10ナノメート以上の大きさであることを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子である。
【0007】
第3の発明は、第1の発明において、大きな凸凹の凸部面積が凹部面積より小さく、且つ小さな凸凹の凸部間隔が凹部深さより小さなことを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子である。
【0008】
第4の発明は、第1〜3の発明において、撥水撥油防汚性薄膜が両凸凹表面に共有結合していることを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子である。
【0009】
第5の発明は、第4の発明において、撥水撥油防汚性薄膜が−CF基を含むことを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子である。
【0010】
第6の発明は、第1〜5の発明において、撥水撥油防汚性薄膜が単分子膜であることを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子である。
【0011】
第7の発明は、第1〜6の発明において、表面の臨界表面エネルギーが2mN/m以下であるあることを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子である。
【0012】
第8の発明は、少なくとも表面をブラスト加工あるいはディンプル加工する工程と、化学エッチングあるいは電解エッチングする工程と、撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程を含むことを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造方法である。
【0013】
第9の発明は、第8の発明の撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程において、フッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン系化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した反応液、あるいはフッ化炭素基とトリクロロシリル基を含むクロロシラン系化合物と非水系の有機溶媒を混合して作成した反応液か、フッ化炭素基とイソシアネート基を含むイソシアネート系化合物と非水系の有機溶媒を混合して作成した反応液を用いて撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むことを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造方法である。
【0014】
第10の発明は、第8および9の発明の撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程において、接触後、余分な反応液を洗浄除去する工程を含むことを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造方法である。
【0015】
第11の発明は、第9〜10の発明において、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造方法である。
【0016】
さらに詳しくは、本発明は、少なくとも表面をブラスト加工あるいはディンプル加工する工程と、化学エッチングあるいは電解エッチングする工程と、撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程により、 表面が大きな凸凹と小さな凸凹に複合加工されており、それぞれの表面が撥水撥油防汚性薄膜で被われていることを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子を提供するものである。
【0017】
ここで、好ましくは、大きな凸凹が500〜10ミクロンの大きさであり、小さな凸凹が10ミクロン未満から10ナノメート以上の大きさであると、臨界表面エネルギーを2mN/m以下にできて都合がよい。
また、大きな凸凹の凸部面積が凹部面積より小さく、且つ小さな凸凹の凸部間隔が凹部深さより小さいと、臨界表面エネルギーを2mN/m以下にできて都合がよい。
また、撥水撥油防汚性薄膜が両凸凹表面に共有結合していると、撥水撥油防汚性能の耐久性を向上する上で都合がよい。
【0018】
さらに、撥水撥油防汚性薄膜が−CF基を含むと臨界表面エネルギーを2mN/m以下にできて都合がよい。
また、撥水撥油防汚性薄膜が単分子膜であると、臨界表面エネルギーを2mN/m以下にできて都合がよい。
【0019】
また、このとき、撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程において、フッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン系化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した反応液、あるいはフッ化炭素基とトリクロロシリル基を含むクロロシラン系化合物と非水系の有機溶媒を混合して作成した反応液か、フッ化炭素基とイソシアネート基を含むイソシアネート系化合物と非水系の有機溶媒を混合して作成した反応液を用いて撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むと、着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造時間を短縮できて都合がよい。
【0020】
また、撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程において、接触後、余分な反応液を洗浄除去する工程を含むと、下地凸凹を全く損なうことがないので好都合である。
さらに、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いると、着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造時間を短縮できて都合がよい。
【発明の効果】
【0021】
厳冬期の着氷着雪防止効果が極めて高いアンテナ及び電線、碍子を提供することより、着氷着雪によるアンテナの破壊や電線、碍子の破断事故を防止きる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、少なくとも表面をブラスト加工あるいはディンプル加工する工程と、化学エッチングあるいは電解エッチングする工程と、撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程により、表面が大きな凸凹と小さな凸凹に複合加工されており、それぞれの表面が撥水撥油防汚性薄膜で被われていることを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子を提供するものである。
【0023】
したがって、本発明には、水滴接触角で150度以上、表面エネルギーが20mN/m程度のシリコーンオイルの液滴でも接触角が120度程度の表面を実現できる作用がある。
【0024】
以下、本願発明の詳細を実施例を用いて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら制限されるものではない。アンテナや電線、碍子以外にも、例えば雨量計を含む各種気象観測機器の着氷着雪防止、液体窒素タンクや液体酸素タンクの取り出しの部の着氷防止、あるいはスペースシャトルの外部燃料タンクの着氷防止等にも適用可能である。
【0025】
なお、本発明に関する着氷着雪防止アンテナ及び電線には、電解エッチング可能な金属(例えばアルミニウムやその合金、銅やその合金、鉄やその合金など)ならどのようなものでも利用可能であるが、代表例として、以下、アルミニウム合金製のパラボなアンテナを取り上げて説明する。一方、碍子のようなセラミック製品の場合は、表面をブラスト処理し手凸凹にした後、同様の撥水処理を行えばよい。
【実施例1】
【0026】
あらかじめ、一端にフッ化炭素基(−CF)を含み他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、CF(CF27(CH22Si(OCH)3で示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナートを1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に1重量%程度の濃度(好ましい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)に溶かして反応液を作成した。
【0027】
一方、厚みが2mm程度のパラボなアンテナの凹面部に用いるアルミニウム板1を準備して、良く洗浄した後、30#の金剛砂を用い表面を全面ブラスト加工を行い、100〜200ミクロン粗さの大きな凸凹2を形成した。(図1)
さらに、リン酸エッチング液で表面をエッチングして2〜0.5ミクロン粗さの小さな凸凹3を形成した。(図2)
【0028】
その後、前記加工を施した、表面が大きな凸凹と小さな凸凹に複合加工されたアルミニウム板1’を前記反応液に浸漬し、空気中(相対湿度45%)で撹拌しながら1時間程度反応させた。このとき、前記アルミニウム板1’の表面には水酸基4が多数含まれているの(図3(a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基2がシラノール縮合触媒の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、アルミニウム板1’の表面全面に亘り下記式(化1)で示されるフッ化炭素基を含む化学吸着単分子膜が表面と化学結合した状態で約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。(図3(b))
【0029】
そこで、クロロホルム等の塩素系溶媒で余分な未反応の吸着液を洗浄除去すると、表面が大きな凸凹と小さな凸凹に複合加工されており、それぞれの表面が撥水撥油防汚性単分子膜5で被われている撥水撥油性に優れたアルミニウム板1”を製造できた(図4)。
なお、ここで、性能はやや劣り、単分子膜は得られなかったが、余分な未反応の吸着液を洗浄除去する工程を省き、そのまま液中から取り出したままで蒸発させても、実用レベルでは問題がない撥水撥油性に優れたアルミニウム板を製造できた。
【0030】
【化1】

【0031】
なお、ここで、粗面化条件を変えてみて、同様の実験を繰り返すことにより、大きな凸凹が500〜10ミクロンの大きさであり、小さな凸凹が10ミクロン未満から10ナノメート以上の大きさであると、臨界表面エネルギーを2mN/m以下にできることが判明した。
また、このときの表面粗さを調べてみると、大きな凸凹の凸部面積が凹部面積より小さく、且つ小さな凸凹の凸部間隔が凹部深さより小さなことが判明した。
【0032】
さらにまた、化学エッチングの代わりに電解エッチングを行うと、さらに性能を向上でき、1mN/m以下を容易に実現できた。
特に、表面粗さが表1の場合、見かけ上の臨界表面エネルギーは、1以下となり、表面エネルギーが19.7mN/mのシリコーンオイルでも、液滴接触角を117.6度に制御できた。この条件での、基板表面のSEM観察写真を図5に示す。また、シリコーンオイル(表面エネルギーは19.7mN/m)液滴の撥油状態の断面写真を図6に示す。
【表1】

【0033】
なお、上記実施例1では、撥油性の単分子膜形成用の薬剤として、フッ化炭素系化学吸着剤であるCF3(CF(CHSi(OCHを用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)〜(12)に示した物質が利用できた。
【0034】
(1) CF3CH2O(CH2)15Si(OCH)3
(2) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH)3
(3) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH)3
(4) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH)3
(5) CF3COO(CH2)15Si(OCH)3
(6) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH)3
(7) CF3CH2O(CH2)15Si(OC)3
(8) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(OC)3
(9) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC)3
(10) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC)3
(11) CF3COO(CH2)15Si(OC)3
(12) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC)3
【0035】
なお、ここで、基材が金の場合には、末端がチオール系あるいはトリアジンチオール系の薬剤、例えばCF(CF27(CH22SHを使用できた。この場合は、SH基が金と結合して同様の撥水撥油膜を製造できた。
【0036】
また、実施例1および2に置いて、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。さらに具体的には、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチル錫ビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチル錫マレイン酸エステル塩、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジメチル錫メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチル錫ビスアセチルアセテート、ジオクチル錫ビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジープロピルチタネートを用いることが可能であった。
【0037】
なお、実施例1に於いて、シラノール縮合触媒を用いない場合には、下記(41)〜(52)に示した物質が利用できた。
【0038】
(41) CF3CH2O(CH2)15SiCl3
(42) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15SiCl3
(43) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(44) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(45) CF3COO(CH2)15SiCl3
(46) CF3(CF2)5(CH2)2Si(NCO)3
(47) CF3CH2O(CH2)15Si(NCO)3
(48) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(NCO)3
(49) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(NCO)3
(50) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(NCO)3
(51) CF3COO(CH2)15Si(NCO)3
(52) CF3(CF2)5(CH2)2Si(NCO)3
【0039】
また、膜形成用反応液の溶媒としては、化学吸着剤がアルコキシシラン系、クロロシラン系何れの場合も、水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やシリコーン系溶媒、あるいはそれら混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50〜250℃程度がよかった。
【0040】
具体的に使用可能な溶媒は、クロロシラン系の場合は、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0041】
さらに、吸着剤がアルコキシシラン系の場合で且つ溶媒を蒸発させて有機被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0042】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0043】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物又は有機酸、TiO等の金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を半分〜2/3程度まで短縮できた。
【0044】
さらに、シラノール縮合触媒とケチミン化合物、又は有機酸、TiO等の金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を混合(1:9〜9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間をさらに数倍早くでき、製膜時間を数分の一まで短縮できた。
【0045】
例えば、シラノール触媒であるジブチル錫オキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0046】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチル錫ビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を20分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0047】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0048】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認された。
【0049】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等がある。
【0050】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1において、アルミニウム表面に100〜200ミクロン粗さの大きな凸凹2を形成した状態を示す断面概念図。
【図2】本発明の実施例1において、アルミニウム表面に100〜200ミクロン粗さの大きな凸凹2を形成した後、さらにリン酸エッチング液で表面をエッチングして2〜0.5ミクロン粗さの小さな凸凹2を複合して形成した状態を示す断面概念図。
【図3】図2の○A部を分子レベルまで拡大した断面概念図であり、(a)は、単分子膜形成前、(b)は、単分子膜形成後の表面近傍の断面概念図。
【図4】粗化処理後、表面に撥水撥油防汚性単分子膜を形成した後の断面概念図。、
【図5】実際に試作した表面が大きな凸凹と小さな凸凹に複合加工されており、且つ表面が撥水撥油防汚性薄膜で被われている着氷着雪防止アンテナの表面SEM写真。
【図6】図5で示された着氷着雪防止アンテナ表面にシリコーンオイルを滴下した場合の液滴断面写真。
【符号の説明】
【0052】
1 アルミニウム板
1’ 表面が大きな凸凹と小さな凸凹に複合加工されアルミニウム板
1” 表面が大きな凸凹と小さな凸凹に複合加工され、さらに撥水撥油防汚性単分子膜が形成されたアルミニウム板
2 大きな凸凹
3 小さな凸凹
4 水酸基
撥水撥油防汚性単分子膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が大きな凸凹と小さな凸凹に複合加工されており、それぞれの凸凹の表面が撥水撥油防汚性薄膜で被われていることを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子。
【請求項2】
大きな凸凹が500〜10ミクロンの大きさであり、小さな凸凹が10ミクロン未満から10ナノメート以上の大きさであることを特徴とする請求項1記載の着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子。
【請求項3】
大きな凸凹の凸部面積が凹部面積より小さく、且つ小さな凸凹の凸部間隔が凹部深さより小さなことを特徴とする請求項1記載の着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子。
【請求項4】
撥水撥油防汚性薄膜が両凸凹表面に共有結合していることを特徴とする請求項1〜3記載の着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子。
【請求項5】
撥水撥油防汚性薄膜が−CF基を含むことを特徴とする請求項4記載の着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子。
【請求項6】
撥水撥油防汚性薄膜が単分子膜であることを特徴とする請求項1〜5記載の着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子。
【請求項7】
表面の臨界表面エネルギーが2mN/m以下であるあることを特徴とする請求項1〜6記載の着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子。
【請求項8】
少なくとも表面をブラスト加工あるいはディンプル加工する工程と、化学エッチングあるいは電解エッチングする工程と、撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程を含むことを特徴とする着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造方法。
【請求項9】
撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程において、フッ化炭素基とアルコキシシリルキを含むアルコキシシラン系化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した反応液、あるいはフッ化炭素基とトリクロロシリル基を含むクロロシラン系化合物と非水系の有機溶媒を混合して作成した反応液か、フッ化炭素基とイソシアネート基を含むイソシアネート系化合物と非水系の有機溶媒を混合して作成した反応液を用いて撥水撥油防汚性被膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項8記載の着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造方法。
【請求項10】
撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程において、接触後、余分な反応液を洗浄除去する工程を含むことを特徴とする請求項8および9記載の着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造方法。
【請求項11】
シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、金属酸化物、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする請求項9〜10に記載の着氷着雪防止アンテナ及び電線、碍子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−282750(P2008−282750A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127572(P2007−127572)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(307011015)有限会社かがわ学生ベンチャー (7)
【Fターム(参考)】