説明

撮像システム、階調補正方法、及び電子情報機器

【課題】表示画面を分割して得られる複数の分割領域の各々に対して、入出力特性(補正強度)を適切に設定することができ、これにより、広ダイナミックレンジの画像での白飛びや黒潰れを回避しつつ、隣接する分割領域の境界で補正強度が不連続になるのを防止する。
【解決手段】イメージセンサから出力される出力信号のダイナミックレンジを調整するダイナミックレンジ調整部100aを、表示画面を分割して得られる複数の分割領域毎に画像の特徴を抽出する領域特徴抽出部130と、抽出された各分割領域の画像の特徴に基づいて、該分割領域の各画素毎に入出力特性を設定する入出力特性設定部140と、設定された入出力特性に基づいて該出力信号の階調レベルを各画素毎に補正する階調補正部150とを備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システム、階調補正方法、及び電子情報機器に関し、特に、被写体の撮像画像のダイナミックレンジに応じて画像信号に対する階調補正を行う階調補正処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどの固体撮像素子を搭載したカメラシステム(撮像システム)では、撮像信号のダイナミックレンジを広げるための対策がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カメラシステムとして、被写体の明るさに応じて固体撮像素子の入出力特性を調整するものが開示されている。
【0004】
図5は、この特許文献1に開示のカメラシステムを説明するブロック図である。
【0005】
このカメラシステム10は、被写体の撮像を行うCMOSイメージャ4と、該CMOSイメージャ4に被写体からの光を集光するレンズ1と、該レンズ1とCMOSイメージャ4との間に配置され、レンズ1からの光量を調整するアイリス2と、該CMOSイメージャ4を制御するセンサコントローラ5と、アイリス2を駆動するアイリス駆動部3とを有している。
【0006】
ここで、CMOSイメージャ4は、カラー撮影可能なもので、またダイナミックレンジを変更可能に構成されており、アイリス2を介して入力された入力光を、RGB(赤、緑・青)データに変換し、画像データとして出力するものである。
【0007】
上記カメラシステム10は、CMOSイメージャ4を制御するカメラコントローラ6を有しており、このカメラコントローラ6は、CMOSイメージャ4が生成するRGBデータに対して、カラー補間、カラー調整、カラーマトリックス調整、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、ニー補正、黒レベル調整、カラー彩度調整等の色処理を施して、16ビットYCrCb(輝度・色相)データに変換して出力する構成となっている。
【0008】
また、カメラコントローラ6は、アイリス修正部61とレンジ修正部62とを有しており、アイリス修正部61は、RGBデータの輝度平均を求める輝度平均演算部611及び輝度平均部611の輝度平均を所望の輝度平均にするアイリス値を演算するアイリス演算部612を有し、CMOSイメージャ4のRGBデータに基づいてアイリス値を判断し、アイリス駆動部3に修正させる構成となっている。
【0009】
また、レンジ修正部62は、CMOSイメージャ4のRGBデータに基づいて、入出力特性としての対数圧縮カーブを修正するものであり、ここで、対数圧縮カーブは、例えば29通り用意されている。
【0010】
次に動作について説明する。
【0011】
図6は、このカメラシステムの動作を説明する図であり、2種類の対数圧縮カーブを示している。
【0012】
センサコントローラ5がCMOSイメージャ4に撮像動作を開始させると、CMOSイメージャ4がRGBデータをセンサコントローラ5に出力し、センサコントローラ5はカメラコントローラ6にRGBデータを出力する。
【0013】
例えば、図6に示すように、入出力特性は、対数圧縮カーブaとなり、入力輝度範囲Xに対して、出力輝度範囲Y1を得る。
【0014】
アイリス修正部61では、センサコントローラ5からのRGBデータにより、黒レベルを調整し、アイリス2の修正をする。つまり、輝度平均演算部611がRGBデータの輝度平均を求め、この輝度平均により、アイリス演算部612は所望の輝度平均になるように、アイリス値の演算を行い、アイリス値により、アイリス駆動部3にアイリス2を修正させる。このアイリス調整により、図6に示すように、CMOSイメージャ4の入出力特性は、対数圧縮カーブaが示すものから対数圧縮カーブbが示すものとなり、入力輝度範囲Xに対する出力輝度範囲は範囲Y2となる。
【0015】
さらに、CMOSイメージャ4は、センサコントローラ5の制御によりRGBデータをセンサコントローラ5に出力し、このRGBデータがカメラコントローラ6に入力されると、このRGBデータにより、レンジ修正部62はCMOSイメージャ4の圧縮カーブを修正する。つまり、レンジ修正部62は、RGBデータから明度閾値以上の画素数の計数を行う。この計数した画素数に基づき、レンジ修正部62はセンサコントローラ5に対して圧縮カーブを指定する。この結果、CMOSイメージャ4の入出力特性は、図6に示すように、対数圧縮カーブbから対数圧縮カーブcになり、入力輝度範囲Xに対する出力輝度範囲は範囲Y3となる。
【0016】
このように、アイリス修正部61がRGBデータに基づいてアイリス値を判断し、アイリス駆動部3に修正させ、アイリス2を調整し、暗部レベルの分布を確保し、レンジ修正部62により圧縮カーブを修正するので、広ダイナミックレンジで最適な画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−282282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来のカメラシステムでは、逆光で撮影した場合など、平均的な輝度が高い画像の一部に、輝度の低い暗い部分がある場合、図6に示すような対数圧縮カーブbあるいは対数圧縮カーブcによる入出力特性では、暗い部分では黒つぶれが生じて、逆光で撮像したような広ダイナミックレンジの画像として適切な画像が得られないという問題がある。
【0019】
そこで、従来は、図7(a)に示すように、表示画面Fを複数に分割して得られる分割領域Rij毎にヒストグラム情報を求め、各分割領域Rijのヒストグラム情報に対応する入出力特性を選択し、それぞれの分割領域Rijでは、選択した入出力特性を用いて入力輝度に対する出力輝度を決定するようにしている。
【0020】
ここで、入出力特性の選択は、複数用意されている対数圧縮カーブのうちから、各分割領域に対してヒストグラム情報に応じた対数圧縮カーブを選択することにより行う。
【0021】
ところが、このように分割領域毎に入出力特性を設定すると、隣接する分割領域の境界で入力輝度に対する出力輝度が大きく変化するという問題が生ずる。
【0022】
具体的には、図7(b)は、各分割領域Rijに設定されている入出力特性を高さレベルで模式的に示しており、各分割領域における高さレベルが1つの対数圧縮カーブに対応している。
【0023】
つまり、図7(b)では、表示画面Fをx−y平面に対応付け、表示画面上での画素の位置での補正強度αをz軸方向に取っている。ここで、補正強度αは、入力値に対する出力値のゲインを決定する入出力特性に対応する。
【0024】
図7(a)で説明したように、各分割領域で得られるヒストグラム情報に基づいて対数圧縮カーブを決定すると、隣接する分割領域の境界に隣接する画素では、入力値(入力光の強度)が同一でも、異なった入出力特性によりゲインが補正されることとなり、出力値が不連続になってしまうという問題がある。
【0025】
例えば、図7(b)では、分割領域Rijに対してその上下左右に隣接して位置する分割領域Ri−1j、Ri+1j、Rij−1、Rij+1には、それぞれ補正強度αi−1j、αi+1j、αij−1、αij+1が設定されており、図7(b)に示す例では、分割領域Ri−1j、Rij+1、Ri+1jの補正強度αi−1j、αij+1、αi+1jは同一であるが、これらの補正強度に比べて、分割領域Rij−1の補正強度αij−1は小さく、分割領域Rijの補正強度αijは大きい。このため、分割領域Rijと分割領域Rij−1との境界に隣接する画素のうち、分割領域Rij内の画素と分割領域Rij−1内の画素とでは、補正強度に対応する入出力特性により補正されたゲインが大きく異なることとなり、これらの隣接する2つの画素では、入力輝度がほとんど同一でも、出力輝度が大きくことなるという問題がある。
【0026】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、表示画面を分割して得られる複数の分割領域の各々に対して、入出力特性(補正強度)を適切に設定することができ、これにより、広ダイナミックレンジの画像での白飛びや黒潰れを回避しつつ、隣接する分割領域の境界で補正強度が不連続になるのを防止することができる撮像システム及び階調調整方法、並びにこのような撮像システムを搭載した電子情報機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に係る撮像システムは、被写体の撮像を行うイメージセンサと、該イメージセンサの出力信号のダイナミックレンジを調整するダイナミックレンジ調整部とを有する撮像システムであって、該ダイナミックレンジ調整部は、表示画面を分割して得られる複数の分割領域毎に画像の特徴を抽出する特徴抽出部と、抽出された各分割領域の画像の特徴に基づいて、該分割領域の各画素毎に入出力特性を設定する入出力特性設定部と、設定された入出力特性に基づいて該出力信号の階調レベルを各画素毎に補正する階調補正部とを備えたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0028】
本発明は、上記撮像システムにおいて、前記入出力特性設定部は、異なる入出力特性に関する情報をガンマ補正曲線として複数格納した特性格納部と、前記各分割領域の画像の特徴に基づいて、前記出力信号の階調レベルを補正する補正強度を、各画素毎に演算する補正強度演算部と、該補正強度演算部で得られた補正強度に基づいて、該特性格納部に格納されている複数のガンマ補正曲線から、該分割領域における各画素に対応したガンマ補正曲線を選択する特性選択部とを備え、前記階調補正部は、該特性選択部で選択された、各画素に対応するガンマ補正曲線に基づいて、該出力信号における各画素に対応する階調レベルを補正することが好ましい。
【0029】
本発明は、上記撮像システムにおいて、前記分割領域は矩形形状を有し、前記補正強度演算部は、前記各分割領域の画像特徴に基づいて該各分割領域に補正強度を割り当て、該各分割領域の頂点に位置する画素に対応する補正強度を、該各分割領域とこれに隣接する分割領域との間での、割り当てられている補正強度の加重平均により設定することが好ましい。
【0030】
本発明は、上記撮像システムにおいて、前記補正強度演算部は、前記矩形形状の分割領域を1つの対角線により2つの三角形領域に分離し、各三角形領域の画素に対する補正強度を、対応する三角形領域の頂点に対応する補正強度を定数とし、該三角形領域内での画素の位置を変数とする方程式を用いて算出することが好ましい。
【0031】
本発明は、上記撮像システムにおいて、前記特性格納部に格納されている複数のガンマ補正曲線の各々は、前記補正強度のレンジに対応付けられており、前記特性選択部では、対象画素に対応する補正強度が、該ガンマ補正曲線に割当てられている補正強度のレンジに含まれるときに、このガンマ補正曲線を該対象画素に対するガンマ補正曲線として選択することが好ましい。
【0032】
本発明は、上記撮像システムにおいて、前記イメージセンサから出力されるRGB信号をYUV信号に変換する信号処理部を有することが好ましい。
【0033】
本発明は、上記撮像システムにおいて、前記YUV信号を、表示画面を区分する複数の分割領域の各々に対応付けて前記特徴抽出部に出力する領域分割部を有することが好ましい。
【0034】
本発明は、上記撮像システムにおいて、前記イメージセンサは、CMOSイメージセンサであることが好ましい。
【0035】
本発明は、上記撮像システムにおいて、前記イメージセンサは、CCDイメージセンサであることが好ましい。
【0036】
本発明に係る階調補正方法は、被写体の撮像を行うイメージセンサの出力信号を階調補正する方法であって、表示画面を分割して得られる複数の分割領域毎に画像の特徴を抽出するステップと、抽出された各分割領域の画像の特徴に基づいて、該分割領域の各画素毎に入出力特性を設定するステップと、設定された入出力特性に基づいて該出力信号の階調レベルを各画素毎に補正するステップとを含むものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0037】
本発明に係る電子情報機器は、被写体の撮像を行う撮像部を備えた電子情報機器であって、該撮像部は、上述した本発明に係る撮像システムを含むものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0038】
次に作用について説明する。
【0039】
本発明においては、イメージセンサから出力される出力信号のダイナミックレンジを調整するダイナミックレンジ調整部を、表示画面を分割して得られる複数の分割領域毎に画像の特徴を抽出する特徴抽出部と、抽出された各分割領域の画像の特徴に基づいて、該分割領域の各画素毎に入出力特性を設定する入出力特性設定部と、設定された入出力特性に基づいて該出力信号の階調レベルを各画素毎に補正する階調補正部とを備え、分割領域の頂点の画素の入出力特性を決定するための補正強度を、隣接する分割領域に設定されている補正強度の加重平均により決定する構成としたもので、表示画面を分割して得られる複数の分割領域の各々の画素に対して、入出力特性(補正強度)を適切に設定することができ、これにより、広ダイナミックレンジの画像での白飛びや黒潰れを回避しつつ、隣接する分割領域の境界で補正強度が不連続になるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上のように、本発明によれば、表示画面を分割して得られる複数の分割領域の各々に対して、入出力特性(補正強度)を適切に設定することができ、これにより、広ダイナミックレンジの画像での白飛びや黒潰れを回避しつつ、隣接する分割領域の境界で補正強度が不連続になるのを防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の実施形態1による撮像システムを説明するブロック図であり、図1(a)は、全体構成を示し、図1(b)は、該撮像システムを構成する入出力特性設定部の構成を示している。
【図2】図2は、本発明の実施形態1による撮像システムの動作を説明する図であり、表示画面を分割して得られる複数の分割領域を示している。
【図3】図3は、本発明の実施形態1による撮像システムの動作を説明する図であり、図3(a)は、各分割領域の頂点での補正強度を示し、図3(b)は、分割領域を2つの三角形領域に分割した状態を示し、図3(c)は、各三角形領域において補正強度を設定する方法を示している。
【図4】図4は、本発明の実施形態2として、実施形態1に記載の撮像システムを撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【図5】図5は、この特許文献1に開示のカメラシステムを説明するブロック図である。
【図6】図6は、このカメラシステムの動作を説明する図であり、2種類の対数圧縮カーブを示している。
【図7】図7は従来技術の問題点を説明する図であり、図7(a)は、表示画面を分割した状態を示し、図7(b)は、分割した領域での補正強度を概念的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0043】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による撮像システムを説明するブロック図であり、図1(a)は、全体構成を示し、図1(b)は、該撮像システムを構成する入出力特性設定部の構成を示している。
【0044】
図2は、本発明の実施形態1による撮像システムの動作を説明する図であり、表示画面を分割して得られる複数の分割領域を示している。
【0045】
図3は、本発明の実施形態1による撮像システムの動作を説明する図であり、図3(a)は、各分割領域の頂点での補正強度を示し、図3(b)は、分割領域を2つの三角形領域に分割した状態を示し、図3(c)は、各三角形領域において補正強度を設定する方法を示している。
【0046】
本実施形態1による撮像システム100は、被写体の撮像を行うイメージセンサ(固体撮像素子)101と、該イメージセンサの出力信号Psのダイナミックレンジを調整するダイナミックレンジ調整部100aとを有している。なお、上記イメージセンサは、CMOSイメージセンサであっても、CCDイメージセンサであってもよい。
【0047】
このダイナミックレンジ調整部100aは、前記イメージセンサから出力されるRGB信号PsをYUV信号Vsに変換する信号処理部110と、前記YUV信号Vsを、表示画面を区分する矩形形状の複数の分割領域Rij(図2参照)の各々に対応付けて出力する領域分割部120と、該領域分割部120からの出力信号Rsに基づいて、分割領域毎に画像の特徴、例えば各分割領域における画素の階調レベルのヒストグラムを抽出して、これを特徴情報Rcとして出力する特徴抽出部130と、抽出された各分割領域の画像の特徴に基づいて、該分割領域の各画素毎に入出力特性を設定する入出力特性設定部140と、設定された入出力特性に基づいて該出力信号の階調レベルを各画素毎に補正する階調補正部150とを有している。
【0048】
この入出力特性設定部140は、異なる入出力特性に関する情報Asをガンマ補正曲線として複数格納した特性格納部142と、前記各分割領域の画像の特徴に基づいて、前記出力信号の階調レベルを補正する補正強度を各画素毎に演算して、補正強度を示す情報Dαを出力する補正強度演算部141と、該補正強度演算部で得られた補正強度に基づいて、該特性格納部に格納されている複数のガンマ補正曲線から、該分割領域における各画素に対応したガンマ補正曲線を選択する特性選択部143とを備えている。
【0049】
ここでは、上記階調補正部150は、該特性選択部143で選択された、各画素に対応するガンマ補正曲線に基づいて、該出力信号における各画素に対応する階調レベルを補正する。また、上記補正強度演算部141は、各分割領域の画像特徴に基づいて該各分割領域Rijに補正強度αij(図2参照)を割り当て、該各分割領域の頂点に位置する画素に対応する補正強度を、該各分割領域とこれに隣接する分割領域との間での、割り当てられている補正強度の加重平均により設定する。
【0050】
例えば、図2に示す分割領域Rijの頂点P1の補正強度αij1(図3参照)は、分割領域Rij、分割領域Rijの上側の分割領域Ri−1j、分割領域Rijの左側の分割領域Rij−1、及び分割領域Rijの左上の分割領域の補正強度を加重平均して求められる。分割領域Rijのその他の頂点P2〜P4の補正強度も、上記分割領域Rijの頂点P1の補正強度と同様に、この分割領域とその周辺の分割領域の補正強度に基づいて求められる。
【0051】
さらに、上記補正強度演算部141は、矩形形状の分割領域を1つの対角線により2つの三角形領域に分離し、各三角形領域の画素に対する補正強度αxyを、対応する三角形領域ARij及びBRijの頂点に対応する補正強度αij1〜αij4を定数とし、該三角形領域内での画素の位置P(x,y)を変数とする平面の方程式(2)を用いて算出する。
【0052】
a(x−x0)+b(y−y0)+c(z−z0)=0 ・・・(1)
つまり、三角形領域ARij内の各画素位置での補正強度αxyを求める場合は、上記式(1)に、三角形領域ARijの頂点P1、P2、P4における、xy平面での位置を示すx、y座標と、補正強度を示すz軸方向のz座標を代入して得られる3つの連立方程式を解いて、係数a〜cを決定する。なお、x0、y0、z0については、このxyz座標系の原点の位置に応じて変わる定数である。
【0053】
上記連立方程式を解くことにより、係数a〜cを決定した平面の方程式(2)が得られる。
【0054】
αxy=z=A(x−x0)+B(y−y0)+C ・・・(2)
ここで、αxyは、画素位置P(x,y)の画素での補正強度である(図3(c))。また、方程式(2)における係数A,B,Cは、上記方程式(1)における係数a、b、cから得られるものである。
【0055】
次に動作について説明する。
【0056】
この撮像システム100では、イメージセンサ101から出力されるRGB信号Psがダイナミックレンジ調整部100aに入力されると、信号処理部110にて、RGB信号PsがYUV信号Vsに変換される。このYUV信号Vsは、領域分割部120にて、表示画面を区分する矩形形状の複数の分割領域Rij(図2参照)の各々に対応付けて、各分割領域に対応する信号Rsとして領域特徴抽出部130に出力される。
【0057】
領域特徴抽出部130は、該領域分割部120からの出力信号Rsに基づいて、分割領域毎に画像の特徴、例えば各分割領域における画素の階調レベルのヒストグラムを抽出して、これを特徴情報Rcとして出力する。入出力特性設定部140は、抽出された各分割領域の画像の特徴に基づいて、該分割領域の各画素毎に入出力特性を設定する。階調補正部150では、設定された入出力特性に基づいて該出力信号の階調レベルを各画素毎に補正する。
【0058】
以下、分割領域の各画素毎に入出力特性を設定する動作について具体的に説明する。
【0059】
入力特性設定部140の特性格納部142には、異なる入出力特性を示す情報Asとしてガンマ補正曲線が複数格納されている。
【0060】
補正強度演算部141は、各分割領域の画像特徴に基づいて該各分割領域Rij(図2参照)に補正強度αijを割り当てる。さらに、該各分割領域の頂点に位置する画素に対応する補正強度を、該各分割領域とこれに隣接する分割領域との間での、割り当てられている補正強度の加重平均により設定する。
【0061】
例えば、図2に示す分割領域Rijの頂点P1の補正強度αij1は、分割領域Rij、分割領域Rijの上側の分割領域Ri−1j、分割領域Rijの左側の分割領域Rij−1、及び分割領域Rijの左上の分割領域の補正強度を加重平均して求められる。分割領域Rijのその他の頂点P2〜P4の補正強度も、上記分割領域Rijの頂点P1の補正強度と同様に、この分割領域とその周辺の分割領域の補正強度に基づいて求められる。
【0062】
さらに、上記補正強度演算部141は、矩形形状の分割領域Rij(図3(a))を1つの対角線により2つの三角形領域ARij及びBRij(図3(b))に分離し、各三角形領域の画素に対する補正強度αxyを、対応する三角形領域ARij及びBRijの頂点に対応する補正強度αij1〜αij4を定数とし、該三角形領域内での画素の位置P(x,y)を変数とする平面の方程式(2)を用いて算出する。
【0063】
補正強度演算部141で求められた各画素に対応する補正強度αxyは、補正強度情報Dαとして特性選択部143に出力される。
【0064】
この特性選択部143では、補正強度演算部141で得られた補正強度αxyに基づいて、該特性格納部142に格納されている複数のガンマ補正曲線から、該分割領域における各画素に対応したガンマ補正曲線が選択され、このガンマ補正曲線を示す情報Asが階調補正部150に出力される。
【0065】
該階調補正部150では、特性選択部143から出力されたこのガンマ補正曲線を示す情報Asに基づいて該出力信号の階調レベルが各画素毎に補正される。
【0066】
このように本実施形態1では、イメージセンサから出力される出力信号のダイナミックレンジを調整するダイナミックレンジ調整部100aにおいて、表示画面を分割して得られる複数の分割領域毎に画像の特徴を抽出する特徴抽出部130と、抽出された各分割領域の画像の特徴に基づいて、該分割領域の各画素毎に入出力特性を設定する入出力特性設定部140と、設定された入出力特性に基づいて該出力信号の階調レベルを各画素毎に補正する階調補正部150とを備え、分割領域の頂点の画素の入出力特性を決定するための補正強度を、各分割領域に設定されている補正強度の加重平均により決定するので、表示画面を分割して得られる複数の分割領域の各々の画素に対して、入出力特性(補正強度)を適切に設定することができ、これにより、広ダイナミックレンジの画像での白飛びや黒潰れを回避しつつ、隣接する分割領域の境界で補正強度が不連続になるのを防止することができる。
【0067】
なお、上記実施形態1では、デジタル値としての1つの補正強度に対して、1つの入出力特性としてのガンマ補正曲線を対応付けているが、補正強度と入出力特性としてのガンマ補正曲線との対応付けは、これに限るものではない。
【0068】
例えば、補正強度の最小値から最大値までの間に複数の範囲を設定し、補正強度のそれぞれの範囲に対して、1つの入出力特性としてのガンマ補正曲線を対応付けてもよい。
【0069】
この場合、特性格納部に格納する入出力特性としてのガンマ補正曲線の情報量を削減することができる効果がある。
【0070】
さらに、上記実施形態1では、特に説明しなかったが、上記実施形態1の撮像システムを撮像部に用いた、例えばデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、画像入力カメラ、スキャナ、ファクシミリ、カメラ付き携帯電話装置などの、画像入力デバイスを有した電子情報機器について以下簡単に説明する。
(実施形態2)
図4は、本発明の実施形態2として、実施形態1の撮像システムを撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【0071】
図4に示す本発明の実施形態2による電子情報機器90は、本発明の上記実施形態1の撮像システムを、被写体の撮影を行う撮像部91として備えたものであり、このような撮像部による撮影により得られた高品位な画像データを記録用に所定の信号処理した後にデータ記録する記録メディアなどのメモリ部92と、この画像データを表示用に所定の信号処理した後に液晶表示画面などの表示画面上に表示する液晶表示装置などの表示部93と、この画像データを通信用に所定の信号処理をした後に通信処理する送受信装置などの通信部94と、この画像データを印刷(印字)して出力(プリントアウト)する画像出力部95とのうちの少なくともいずれかを有している。
【0072】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、撮像システム、階調補正方法、及び電子情報機器の分野において、表示画面を分割して得られる複数の分割領域の各々に対して、入出力特性(補正強度)を適切に設定することができ、これにより、広ダイナミックレンジの画像での白飛びや黒潰れを回避しつつ、隣接する分割領域の境界で補正強度が不連続になるのを防止することができる撮像システム及び階調補正方法、並びにこのような撮像システムを搭載した電子情報機器を得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
90 電子情報機器
91 撮像部
92 メモリ部
93 表示手段
94 通信手段
95 画像出力手段
100 撮像システム
100a ダイナミックレンジ調整部
110 信号処理部
120 領域分割部
130 領域特徴抽出部
140 入出力特性設定部
141 補正強度演算部
142 特性格納部
143 特性選択部
150 階調補正部
αij 補正強度
ARij、BRij 三角形領域
F 表示画面
P1〜P4 画素位置
Rij 分割領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の撮像を行うイメージセンサと、該イメージセンサの出力信号のダイナミックレンジを調整するダイナミックレンジ調整部とを有する撮像システムであって、
該ダイナミックレンジ調整部は、
表示画面を分割して得られる複数の分割領域毎に画像の特徴を抽出する特徴抽出部と、
抽出された各分割領域の画像の特徴に基づいて、該分割領域の各画素毎に入出力特性を設定する入出力特性設定部と、
設定された入出力特性に基づいて該出力信号の階調レベルを各画素毎に補正する階調補正部とを備えた、撮像システム。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像システムにおいて、
前記入出力特性設定部は、
異なる入出力特性に関する情報をガンマ補正曲線として複数格納した特性格納部と、
前記各分割領域の画像の特徴に基づいて、前記出力信号の階調レベルを補正する補正強度を、各画素毎に演算する補正強度演算部と、
該補正強度演算部で得られた補正強度に基づいて、該特性格納部に格納されている複数のガンマ補正曲線から、該分割領域における各画素に対応したガンマ補正曲線を選択する特性選択部とを備え、
前記階調補正部は、該特性選択部で選択された、各画素に対応するガンマ補正曲線に基づいて、該出力信号における各画素に対応する階調レベルを補正する、撮像システム。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像システムにおいて、
前記分割領域は矩形形状を有し、
前記補正強度演算部は、前記各分割領域の画像特徴に基づいて該各分割領域に補正強度を割り当て、該各分割領域の頂点に位置する画素に対応する補正強度を、該各分割領域とこれに隣接する分割領域との間での、割り当てられている補正強度の加重平均により設定する、撮像システム。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像システムにおいて、
前記補正強度演算部は、
前記矩形形状の分割領域を1つの対角線により2つの三角形領域に分離し、
各三角形領域の画素に対する補正強度を、対応する三角形領域の頂点に対応する補正強度を定数とし、該三角形領域内での画素の位置を変数とする方程式を用いて算出する、撮像システム。
【請求項5】
請求項2に記載の撮像システムにおいて、
前記特性格納部に格納されている複数のガンマ補正曲線の各々は、前記補正強度のレンジに対応付けられており、
前記特性選択部では、対象画素に対応する補正強度が、該ガンマ補正曲線に割当てられている補正強度のレンジに含まれるときに、このガンマ補正曲線を該対象画素に対するガンマ補正曲線として選択する、撮像システム。
【請求項6】
請求項1に記載の撮像システムにおいて、
前記イメージセンサから出力されるRGB信号をYUV信号に変換する信号処理部を有する、撮像システム。
【請求項7】
請求項6に記載の撮像システムにおいて、
前記YUV信号を、表示画面を区分する複数の分割領域の各々に対応付けて前記特徴抽出部に出力する領域分割部を有する、撮像システム。
【請求項8】
請求項1に記載の撮像システムにおいて、
前記イメージセンサは、CMOSイメージセンサである、撮像システム。
【請求項9】
請求項1に記載の撮像システムにおいて、
前記イメージセンサは、CCDイメージセンサである、撮像システム。
【請求項10】
被写体の撮像を行うイメージセンサの出力信号を階調補正する方法であって、
表示画面を分割して得られる複数の分割領域毎に画像の特徴を抽出するステップと、
抽出された各分割領域の画像の特徴に基づいて、該分割領域の各画素毎に入出力特性を設定するステップと、
設定された入出力特性に基づいて該出力信号の階調レベルを各画素毎に補正するステップとを含む、階調補正方法。
【請求項11】
被写体の撮像を行う撮像部を備えた電子情報機器であって、
該撮像部は、請求項1に記載の撮像システムを含む電子情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−222412(P2012−222412A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83194(P2011−83194)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】