撮像フィルタ
【課題】イメージセンサへの光の入射角度を制限し、撮像時のノイズを低減するとともに、安価で製造が容易な撮像フィルタを提供する。
【解決手段】角度制限フィルタ15は、イメージセンサの前面に配置され、イメージセンサへの光の入射角を制限するものであり、透明で板状のガラス基板26と、第1遮光膜27、第2遮光膜28、入射角依存性反射膜29から構成される。第1遮光膜27は、ガラス基板26の入射側表面に設けられており、イメージセンサの画素配列に応じて設けられた入射開口31に、入射光を通す部分を制限する。第2遮光膜28は、ガラス基板26の出射側表面に設けられており、入射開口31と中心位置が一致するように設けられた出射開口32に、入射光を通す部分を制限する。入射角依存性反射膜は、略垂直に入射する入射光を透過し、傾斜して入射する入射光を反射する。
【解決手段】角度制限フィルタ15は、イメージセンサの前面に配置され、イメージセンサへの光の入射角を制限するものであり、透明で板状のガラス基板26と、第1遮光膜27、第2遮光膜28、入射角依存性反射膜29から構成される。第1遮光膜27は、ガラス基板26の入射側表面に設けられており、イメージセンサの画素配列に応じて設けられた入射開口31に、入射光を通す部分を制限する。第2遮光膜28は、ガラス基板26の出射側表面に設けられており、入射開口31と中心位置が一致するように設けられた出射開口32に、入射光を通す部分を制限する。入射角依存性反射膜は、略垂直に入射する入射光を透過し、傾斜して入射する入射光を反射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体にイメージセンサを密着させて撮像を行う密着型の撮像装置に用いられる撮像フィルタに関し、さらに詳しくは、この撮像装置のイメージセンサへの光の入射角度を制限する撮像フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
画像や文書等の原稿を撮像し、そのデジタルな画像データを得るイメージスキャナが普及している。イメージスキャナには、読み取る原稿と同じ幅のラインイメージセンサを、原稿に略密着させて撮像する密着型のイメージスキャナが知られている。密着型のイメージスキャナは、原稿からイメージセンサまでの距離が短く、縮小光学系を用いる他のタイプのイメージスキャナよりもコンパクトに構成される。
【0003】
原稿の像を結像させるレンズ等を用いずに、単にイメージセンサを原稿に密着させて配置すれば、原稿のある一点からの光は、一つの画素に到達するのではなく、本来入射すべき画素とともに、周辺の複数の画素にも入射してしまう。このため、密着型のイメージスキャナであっても、屈折率を中心から周辺にかけて減少するように分布させた円柱状のロッドレンズをイメージセンサと原稿の間に配置することによって、原稿のある一点からの光が、イメージセンサのある一つの撮像エリアに略一対一に到達するように、イメージセンサへの光の入射を制限している。
【0004】
また、イメージセンサへの光の入射を制限する撮像装置としては、イメージセンサの受光エリアを複数に区画して用いるために、イメージセンサへの光の入射角度を制限する撮像フィルタを用いた撮像装置が知られている。例えば、区画する受光エリアに合わせて遮光ブロックを配置したイメージセンサや(特許文献1)、スリットのあいた格子板を設けることで長方形状に受光エリアを区画する撮像装置が知られている(特許文献2)。さらに、多数の貫通孔があいた多孔板を設けることで、受光エリアに対して垂直に入射する平行光だけがフィルムに入射するように、受光エリアへの光の入射角度を制限したフィルムカメラが知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2007−121631号公報
【特許文献2】特開2007−299085号公報
【特許文献3】特開2004−151124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
密着型のイメージスキャナであっても、撮像対象とイメージセンサとの間に隙間ができることは避けられない。また、フォトダイオードは、イメージセンサの表面よりも深い位置にある。これらのために、撮像対象の一点からの光は隣り合うフォトダイオードの双方に斜めに入射してしまい、ノイズや偽信号の原因になる。したがって、精細な撮像のためには、一点からの光が一つのフォトダイオードだけに入射するように、イメージセンサへの光の入射角度を制限する必要がある。
【0006】
一点からの光が隣接する複数のフォトダイオードや隣接する受光エリアに入射することを防ぐには、密着型イメージスキャナで使われているようなロッドレンズを用いるか、あるいは特許文献1や特許文献2の撮像フィルタのように、貫通孔で受光エリアを区画する撮像フィルタを用いて、イメージセンサに入射する光の入射角を制限する必要がある。
【0007】
しかし、ロッドレンズを用いる場合は、厚み方向に比較的大きな組み込みスペースを必要とするために、さらに薄型化することは難しい。
【0008】
また、スリット等の貫通孔のあいた撮像フィルタは、金属製の板等からつくられるが、貫通孔の径が小さいほど、また、貫通孔同士の間隔が狭いほど、貫通孔を設ける加工が困難なものとなる。また、こうした微小な貫通孔を機械的な加工で設けることができたとしても、高コストな撮像フィルタとなってしまう。さらに、貫通孔の内壁で入射光の一部が反射(または透過)されると、貫通孔の径で定めた領域外に出射する光が生じてしまうので、貫通孔の内壁は反射防止加工等を施す必要があるが、貫通孔を設けること自体が困難な微小な貫通孔の場合には、内壁に特殊加工を施すことは困難である。
【0009】
また、径の小さい貫通孔が設けられた撮像フィルタは、製造過程やイメージスキャナへの組み込み時などに、ゴミや埃等により目詰まりが生じやすく、一旦貫通孔に入り込んでしまったゴミ等を除去することは難しい。このため、径の小さな貫通孔が設けられた撮像フィルタは、取り扱い時の周囲環境等に配慮しなければならず、また、貫通孔が設けられた撮像フィルタやこれを用いるイメージスキャナの歩留まりは悪く、安定した量産が難しい。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、量産適正に優れ、製造コストが低く抑えられ、厚み方向の組み込みスペースも小さく、かつ、イメージセンサへの光の入射角度を制限する撮像フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の撮像フィルタは、透明な基板と、前記基板の表面に設けられ、一定の大きさを有する複数の開口が一定の間隔で形成され、前記開口以外の部分に入射する光を遮光する遮光膜と、前記基板の表面に設けられ、多層の誘電体薄膜からなり、垂直に入射する所定波長の光を透過し、斜めに入射する前記所定波長の光を反射する反射膜と、を備え、イメージセンサへの光の入射角度を制限することを特徴とする。
【0012】
また、前記遮光膜は、前記基板の被写体側表面または前記基板の前記イメージセンサ側表面のいずれか一方に設けられていることを特徴とする。
【0013】
この場合、前記反射膜は、前記開口を全て覆うように、前記遮光膜上に設けられていることが好ましい。
【0014】
また、前記遮光膜が前記基板の一方の表面に設けられ、前記反射膜が前記基板の他方の表面に設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、前記遮光膜は、各々の前記遮光膜の前記開口の中心位置が前記基板の表裏で一致するように、前記基板の両面にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0016】
このように前記基板の両面にそれぞれ前記遮光膜を設ける場合には、前記基板の前記イメージセンサ側表面に設けられた開口の径は、前記基板の被写体側に設けられた前記遮光膜の開口の径よりも小さいことが好ましい。
【0017】
また、こうして前記基板の両面にそれぞれ前記遮光膜を設ける場合には、前記反射膜は、前記イメージセンサ側表面に設けられた前記遮光膜の前記開口を全て覆うように、前記イメージセンサ側表面に設けられた前記遮光膜上に設けられていることが好ましい。
【0018】
さらに、前記基板の両面にそれぞれ前記遮光膜を設ける場合には、前記反射膜は、前記被写体側表面に設けられた前記遮光膜の前記開口を全て覆うように、前記被写体側表面に設けられた前記遮光膜上に設けられていることが好ましい。
【0019】
また、前記遮光膜は、前記所定波長の光を吸収する吸収膜であることを特徴とする。
【0020】
また、前記反射膜は、略垂直に入射する赤外線を透過し、斜めに入射する赤外線を反射する赤外線カットフィルタ膜であることを特徴とする。
【0021】
また、前記基板が非研磨ガラス基板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、イメージセンサを撮像対象に密着させて、1個〜数個程度の画素からなるような極めて小さな領域に受光エリアを区画してイメージセンサを用いる場合に、イメージセンサへの光の入射角度を容易に制限するとともに、量産適正に優れ、製造コストが低く抑えられ、厚み方向の組み込みスペースが小さい撮像フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】密着型スキャナの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】角度制限フィルタを用いる撮像装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】角度制限フィルタの断面図である。
【図4】入射角依存性反射膜の特性を示すグラフである。
【図5】角度制限フィルタの作用を示す説明図である。
【図6】両面に入射角依存性反射膜を設けた角度制限フィルタの断面図である。
【図7】第1実施形態の角度制限フィルタの変形例を示す断面図である。
【図8】第1実施形態の角度制限フィルタの変形例を示す断面図である。
【図9】第2実施形態の角度制限フィルタを示す断面図である。
【図10】第2実施形態の角度制限フィルタの変形例を示す断面図である。
【図11】第2実施形態の角度制限フィルタの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1実施形態]
図1に示すように、密着型スキャナ10は、イメージセンサ16に略密着された被写体11を撮像する撮像装置であり、保護カバー12、LED13、バンドパスフィルタ14、角度制限フィルタ15、イメージセンサ16等から構成される。保護カバー12は、透明なガラス板であり、下方に配置される角度制限フィルタ15やイメージセンサ16を傷や埃から保護する。また、撮像される被写体11は、保護カバー12上に直接載置される。
【0025】
LED13は、波長850nmの赤外線を発し、保護カバー12上に載置された被写体11を一様に照明する。LED13から発せられた赤外線は、被写体11の箇所によって異なる赤外線の吸収率及び反射率を反映して散乱され、その一部が、保護カバー12下に設けられた角度制限フィルタ15の方向に入射する。このとき、角度制限フィルタ15に入射する被写体11からの入射光は、角度制限フィルタ15に対して垂直なものだけでなく、斜めに入射する成分も含まれている。
【0026】
バンドパスフィルタ14は、撮像に用いられる赤外線を透過し、保護カバー12を通って外部から入射する可視光や紫外線を遮光する。これにより、角度制限フィルタ15やイメージセンサ16に入射する光は、撮像に利用する赤外線だけに制限される。また、角度制限フィルタ15(撮像フィルタ)は、後述するように、被写体11側から様々な角度で入射する光のうち、斜めに入射する光を遮光し、イメージセンサ16に略垂直に入射する光だけをイメージセンサ16側に通す。イメージセンサ16は、波長850nm近傍の赤外線に感度を持つCCD型のエリアイメージセンサであり、角度制限フィルタ15によって表面に対して略垂直な角度に入射角度が制限された光で、被写体11を撮像する。
【0027】
図2に示すように、角度制限フィルタ15は、被写体11側から様々な角度で入射する入射光18のうち、表面に対して略垂直に入射した垂直入射光19をイメージセンサ16側に通し、斜めに入射した入射光18は遮光する。角度制限フィルタ15の表面は、入射光18を遮光する遮光エリア21と入射光18を通す通光エリア22が設けられている。遮光エリア21は、角度制限フィルタ15の略全面を覆うように設けられており、この遮光エリア21内に複数の通光エリア22が配列されている。遮光エリア21に入射した光は反射,透過されることなく吸収される。また、各々の通光エリア22は、イメージセンサ16の一つの画素17の大きさと略同程度の大きさで、円形に設けられているとともに、各画素17に一つの通光エリア22が対応するように配列されている。また、角度制限フィルタ15は、各々の通光エリア22が対応する画素17の直上に位置するように、位置合わせして配置される。なお、図2では説明のために、角度制限フィルタ15をイメージセンサ16から離してあるが、角度制限フィルタ15は、図示しない他の光学フィルタ等を介してイメージセンサ16に密着して配置される。
【0028】
図3に示すように、角度制限フィルタ15は、透明な板状のガラス基板26、第1遮光膜27、第2遮光膜28、入射角依存性反射膜29とから構成される。ガラス基板26は、0.15mmの厚さとなっており、イメージセンサ16で撮像に利用する波長850nm近傍の赤外線だけでなく、可視光や紫外線といった種々の波長域の光を略全て透過する。
【0029】
第1遮光膜27は、吸収係数の大きな金属薄膜と透明な誘電体薄膜を交互に多層積層してつくられ、ガラス基板26の被写体11側表面(表面)に設けられる。第1遮光膜27は、イメージセンサ16で撮像に利用される波長850nm近傍の赤外線だけでなく、イメージセンサ16に感度のある波長域の光を略全て吸収する吸収膜となっている。また、第1遮光膜27には入射開口31が複数形成されており、入射光を通す部分はこの入射開口31に制限される。各々の入射開口31の形状は円形であり、中心位置が画素17の中心と一致するように一定の間隔で配列されている。また、角度制限フィルタ15を入射側の正面からみたときには、この入射開口31の周縁が通光エリア22と遮光エリア21の境界となる。
【0030】
第2遮光膜28は、光が出射するガラス基板26のイメージセンサ16側表面(裏面)に設けられ、第1遮光膜27と同様に、吸収係数の大きな金属薄膜と透明な誘電体薄膜とを交互に多層積層した遮光膜であり、イメージセンサ16に感度のある波長域の光を略全て吸収する吸収膜となっている。また、第2遮光膜28には出射開口32が複数形成されており、入射光を通す部分はこの出射開口32に制限される。各々の出射開口32の形状は円形であり、出射開口32の径D2は入射開口31の径D1よりも小さく、中心位置が各画素17の中心及び各入射開口31の中心の位置と一致するように配列されている。
【0031】
入射角依存性反射膜29は、ガラス基板26のイメージセンサ16側に、第2遮光膜28と出射開口32と全てを覆うように設けられる。また、入射角依存性反射膜29は、屈折率の異なる誘電体薄膜を複数積層したものであり、入射角度に応じて、赤外線を透過または反射する赤外線カットフィルタ膜となっている。
【0032】
図4に示すように、入射角依存性反射膜29は、波長850nmの赤外線が入射するときに、入射角度が約18度よりも小さく、入射角依存性反射膜29に略垂直に入射するものを透過し、入射角度が約18度よりも大きく、入射角依存性反射膜29に対して傾斜して入射するものを反射するように、層構造が定められている。また、このような入射角依存性反射膜29を構成する材料,層構造,特性は、使用する光の波長、ガラス基板26の厚さ、入射開口31(出射開口32)の配列間隔、入射開口31と出射開口32の相対的な大きさに応じて定められる。
【0033】
このように構成される角度制限フィルタ15には、図5に示すように、様々な入射角度で、様々な入射位置に、波長850nmの赤外線A〜赤外線Dが入射する。
【0034】
赤外線Aのように、入射位置が第1遮光膜27に覆われた位置であると、入射角度によらず、第1遮光膜27によって吸収されるために、イメージセンサ16側には透過しない。一方、赤外線B〜赤外線Dのように、入射開口31に入射する赤外線は、第1遮光膜27によって吸収されることなく、ガラス基板26内に進入する。
【0035】
入射開口31に入射した赤外線の中でも、入射角依存性反射膜29によって定まる所定角度θ(約18度)よりも入射角度が小さく、角度制限フィルタ15に略垂直に入射する赤外線Bは、ガラス基板26を透過して、出射開口32に達する。このとき、入射角依存性反射膜29への赤外線Bの入射角度は、角度制限フィルタ15への入射角度と略等しく、約18度よりも小さいために、入射角依存性反射膜29を透過して、イメージセンサ16側に出射される。
【0036】
しかし、赤外線Cのように、入射位置が入射開口31であり、かつ、入射角度が約18度以内であっても、ガラス基板26を透過して達する位置が第2遮光膜28に覆われた位置であると、吸収されるため、イメージセンサ16側には出射されない。また、赤外線Dのように、入射開口31内に入射角度が約18度を超えるような傾斜して入射すると、出射開口32に達したとしても、入射角依存性反射膜29によってガラス基板26の内部へと反射され、イメージセンサ16側へは出射されない。
【0037】
このように、角度制限フィルタ15は、様々な入射角度で入射する赤外線のうち、イメージセンサ16側に出射する赤外線を、約18度という入射角依存性反射膜29によって決まる角度よりも小さく、略垂直に入射した赤外線に制限する。
【0038】
このとき、ある出射開口32に対して、隣接する出射開口32に対応する入射開口31のような、対応しない位置に設けられた入射開口31から入射する赤外線は、入射角依存性反射膜29によって反射され、イメージセンサ16側には出射しない。このため、角度制限フィルタ15を用いることで、各画素17に入射する赤外線は、周辺の画素17への入射光と重畳することなく、被写体11の一つの箇所と略一対一に対応し、ぼやけやにじみといった解像度を低下させるノイズを軽減して撮像することができる。
【0039】
また、出射開口32の径を入射開口31の径よりも小さく設けることで、垂直入射光19を集光してイメージセンサ16へ入射させることができる。
【0040】
また、角度制限フィルタ15は、貫通孔や研磨といった機械的加工を必要としないから、ガラス基板26上に薄膜をパターニングすることで容易に、かつ安価に製造される。さらに、角度制限フィルタ15には貫通孔のような深い孔はなく、略平坦な表面となっているため、ゴミや埃が付着したとしても、エアを吹き付けたり、超音波洗浄などにより容易にこれらを除去することができる。このため、角度制限フィルタ15は、歩留まりも良く量産に適している。
【0041】
なお、上述の第1実施形態では、入射角依存性反射膜29を、ガラス基板26のイメージセンサ16側表面(裏面)に設けるが、これに限らず、被写体11側表面(表面)にだけ入射角依存性反射膜29を設けても良く、イメージセンサ16側表面と被写体11側表面の両方に入射角依存性反射膜29を設けても良い。この場合にも、上述の実施形態と同様の効果が得られる。特に、ガラス基板26が薄く、一方の表面にだけ入射角依存性反射膜29を設けると角度制限フィルタ15に反りを生じてしまう場合には、図6に示す角度制限フィルタ35のように、イメージセンサ16側表面と被写体11側表面の両面に入射角依存性反射膜29を設けることが好ましい。
【0042】
また、角度制限フィルタ15の反りを防止する等のために、ガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29等の誘電体薄膜を積層する場合には、ガラス基板26の一方の面に入射角依存性反射膜29を設け、他方の面上には可視光カットフィルタやバンドバスフィルタといった他の光学的作用を持った誘電体の多層膜を設けることが好ましい。例えば、上述の第1実施形態で説明したように、ガラス基板26のイメージセンサ16側表面に入射角依存性反射膜29を設けるとともに、ガラス基板26の被写体11側表面に、バンドパスフィルタ14を角度制限フィルタ15と一体的に設ける。このように、ガラス基板26の面上に、入射角依存性反射膜29の他に、他の光学的作用を持った誘電体多層膜を設けることで、密着型スキャナ10の部品点数を削減することができ、密着型スキャナ10をよりコンパクトにすることができる。
【0043】
なお、上述の第1実施形態では、ガラス基板26のイメージセンサ16側表面に第2遮光膜28を設け、さらに第2遮光膜28を覆うように入射角依存性反射膜29を設けた例を説明したが、入射角依存性反射膜29を設ける位置はこれに限らない。例えば、図7に示す角度制限フィルタ36のように、ガラス基板26の表面に入射角依存性反射膜29を設け、さらにこの上に第2遮光膜28を設けるようにすることで、入射角依存性反射膜29と第2遮光膜28の積層順序を入れ替えても良い。また、ここではイメージセンサ16側に入射角依存性反射膜29を設ける例で説明したが、被写体11側に入射角依存性反射膜29を設ける場合も同様である。したがって、被写体11側に入射角依存性反射膜29を設けるときには、ガラス基板26の被写体11側表面ではガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,第1遮光膜27の順に配置し、イメージセンサ16側表面に第2遮光膜28を配置するようにしても良い。
【0044】
また、前述のようにガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29を設ける場合には、図8(A)に示す角度制限フィルタ37のように、ガラス基板26の表面に入射角依存性反射膜29を設け、その上に第1遮光膜27,第2遮光膜28を設けるようにしても良い。さらに、こうしてガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29を設けるときには、ガラス基板26の両面で、ガラス基板26に対する入射角依存性反射膜29と遮光膜の配置順序が異なっていても良い。例えば、図8(B)に示す角度制限フィルタ38のように、ガラス基板26の被写体11側表面ではガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,第1遮光膜27の順に配置し、イメージセンサ16側表面ではガラス基板26側から第2遮光膜28,入射角依存性反射膜29の順に配置しても良い。同様に、ガラス基板26の被写体11側表面ではガラス基板26側から第1遮光膜27,入射角依存性反射膜29の順に配置し、イメージセンサ16側表面ではガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,第2遮光膜28の順となるように配置しても良い。
【0045】
なお、上述の第1実施形態では、入射開口31の径D1よりも出射開口32の径D2を小さく設けているが、これに限らず、出射させる光の用途に応じて、入射開口31の径と出射開口32の径を等しく設けたり、入射開口31の径D1よりも出射開口32の径D2を大きく設けても良い。
【0046】
[第2実施形態]
なお、上述の第1実施形態では、ガラス基板26の表裏に、第1遮光膜27,第2遮光膜28をそれぞれ設ける例を説明したが、これに限らず、遮光膜をガラス基板26の一方の面にだけ設けるようにしても良い。こうして、ガラス基板26の一方の面にだけ遮光膜を設ける例を、以下に第2実施形態として説明する。例えば、図9に示すように、角度制限フィルタ41は、ガラス基板26の被写体11側の表面にだけ遮光膜42を設けたものであり、前述の角度制限フィルタ15,35とは異なり、イメージセンサ16側の表面には遮光膜は設けられていない。また、入射角依存性反射膜29は、遮光膜42の全体を覆うように、ガラス基板26の被写体11側表面に、遮光膜42の全体を覆うように設けられている。
【0047】
角度制限フィルタ41に設けられた遮光膜42は、前述の第1遮光膜27や第2遮光膜28と同様に、吸収係数の大きな金属薄膜と透明な誘電体薄膜とを交互に多層積層したものであり、イメージセンサ16に感度のある波長域の光を略全て吸収する吸収膜として機能する。また、遮光膜42には、中心位置が画素17の中心位置と一致するように一定の間隔で、円形状の開口43が複数設けられている。ここで遮光膜42に設けられた開口43の径D3は、前述の第1遮光膜27に設けられた入射開口31の径D1よりも小さく、第2遮光膜28に設けられた出射開口32の径D2よりも大きい。
【0048】
また、角度制限フィルタ41に設けられた入射角依存性反射膜29は、前述の角度制限フィルタ15,35に設けられたものと同様に、屈折率の異なる誘電体薄膜を複数積層したものであり、入射した赤外線を、その入射角度に応じて透過または反射する赤外線カットフィルタ膜として機能する。
【0049】
このように構成される角度制限フィルタ41は、遮光膜42及び入射角依存性反射膜29が設けられた表面を被写体11側に向けて、イメージセンサ16の前面に配置される。角度制限フィルタ41には、被写体11から様々な角度で赤外線が入射する。このとき、入射角依存性反射膜29に所定角度よりも傾斜して入射した赤外光は、入射角依存性反射膜29で反射され、遮光膜42には到達しない。一方、入射角依存性反射膜29に所定角度以内で略垂直に入射した赤外光は、入射角依存性反射膜29を透過する。こうして入射角依存性反射膜29を透過した赤外光のうち、遮光膜42に入射した赤外光は遮光膜42に吸収される。一方、入射角依存性反射膜29を透過した赤外光のうち、開口43に入射した光は、開口43を通過してイメージセンサ16に到達する。このとき、開口43を通過した赤外光は、通過した開口43の直下に設けられた画素17に入射する。
【0050】
こうして被写体11から入射する赤外線は、角度制限フィルタ41によってイメージセンサ16への入射角度を略垂直な方向に制限される。同時に、角度制限フィルタ41を搭載する密着型スキャナは、角度制限フィルタ41により、被写体11から入射する赤外線が被写体11の一つの箇所とイメージセンサ16の各画素17と略一対一に対応してイメージセンサ16に入射するので、ぼやけやにじみといった解像度を低下させるノイズを軽減して撮像することができる。
【0051】
また、上述の角度制限フィルタ41の製造には、貫通孔や研磨といった機械的な加工を必要としないから、第1実施形態の角度制限フィルタ15,35の製造と同様に、安価に安定して製造することができる。
【0052】
一方、第1実施形態の角度制限フィルタ15,35では、ガラス基板26の両面に第1遮光膜27,第2遮光膜28がそれぞれ設けられているのに対し、角度制限フィルタ41では、被写体11側に配置されるガラス基板26の一方の面にのみ遮光膜42を設ける。このため、被写体11からイメージセンサ16への赤外線の入射角度選択性は、角度制限フィルタ41よりも第1実施形態の角度制限フィルタ15の方が優れる。しかし、角度制限フィルタ15,35は、対応する入射開口31と出射開口32の位置が揃うように、ガラス基板26の両面に第1遮光膜27,第2遮光膜28をそれぞれ設けなければならないが、遮光膜42は被写体11側の1つであり、角度制限フィルタ41ではこうした遮光膜同士の位置合わせが不要となっている。このため、角度制限フィルタ41は、第1実施形態の角度制限フィルタ15,35よりも、低いコストで、容易に安定して製造することができる。したがって、角度制限フィルタ41は、イメージセンサ16への赤外線の入射角度を、実用的な解像度で撮像できる範囲に制限することができる上に、低コストで容易に安定して製造できる。
【0053】
なお、上述の第2実施形態では、遮光膜42に設ける開口43の大きさを、第1実施形態の2つの遮光膜27,28に設ける開口31,32の大きさの中間の大きさとしたが、開口43の大きさはこれに限らない。開口43の大きさは、撮像に必要な解像度や光量、イメージセンサ16の感度等に応じて定めることが好ましく、第1実施形態の密着型スキャナ10と同じイメージセンサ16を同じ条件で用いる場合には、上述のように開口31,32の大きさの中間の大きさとすることが好ましい。
【0054】
なお、上述の第2実施形態では、ガラス基板26の被写体11表面に遮光膜42及び入射角依存性反射膜29を設け、他方のイメージセンサ16側表面には遮光膜等を設けない例を説明したが、遮光膜42や入射角依存性反射膜29を設ける表面は被写体11側に限らず、遮光膜42及び入射角依存性反射膜29をイメージセンサ16表面に設け、被写体11側表面に遮光膜等を設けない構成としても良い。但し、ガラス基板26のイメージセンサ16側表面にだけ遮光膜42及び入射角依存性反射膜29を設ける場合よりも、ガラス基板26の被写体11側表面にだけ遮光膜42及び入射角依存性反射膜29を設ける場合の方が、被写体11からイメージセンサ16への赤外線の入射角度を良好に制限することができる。このため、ガラス基板26の一方の面にだけ遮光膜を設ける場合には、上述の第2実施形態の角度制限フィルタ41のように被写体11側に遮光膜42及入射角依存性反射膜29を設けることが好ましい。
【0055】
なお、上述の第2実施形態では、被写体11側の表面に遮光膜42及び入射角依存性反射膜29を設け、他方のイメージセンサ16側表面には遮光膜等を設けない例を説明したが、このようにガラス基板26の一方の面にだけ遮光膜42等を設けると、角度制限フィルタ41に反りが生じてしまうことがある。このため、ガラス基板26の一方の表面に遮光膜42を設け、他方の表面に入射角依存性反射膜29を設ける等、ガラス基板26の両面に光学的な機能を持つ薄膜等を設けることにより角度制限フィルタ41の反りを防止することが好ましい。
【0056】
例えば、図10(A)に示す角度制限フィルタ46のように、ガラス基板26の被写体11側表面には遮光膜42だけを設け、イメージセンサ16側表面に入射角依存性反射膜29を設けるようにすることで、角度制限フィルタの反りを低減させるようにしても良い。また、このようにガラス基板26の両面に、入射角依存性反射膜29と遮光膜42を分けて設けるときには、角度制限フィルタ46とは逆に、ガラス基板26の被写体11側表面に入射角依存性反射膜29を設け、イメージセンサ16側表面に遮光膜42を設けるようにしても良い。
【0057】
また、例えば、図10(B)に示す角度制限フィルタ47のように、ガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29を設けることで、角度制限フィルタの反りを低減させても良い。さらに、ここでは被写体11側に遮光膜42が設けられた角度制限フィルタ47を例にしたが、イメージセンサ16側に遮光膜42を設ける場合にも同様に、ガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29を設けることにより、角度制限フィルタの反りを低減させても良い。
【0058】
さらに、例えば、上述の第2実施形態の角度制限フィルタ41のように、ガラス基板26の一方の表面に、遮光膜42と入射角依存性反射膜29を設けておき、他方の表面に、バンドパスフィルタ14として機能する光学薄膜を設けることによって、角度制限フィルタの反りを低減させるようにしても良い。こうして、バンドパスフィルタ14として機能する光学薄膜を、角度制限フィルタ41と一体に設ける場合には、角度制限フィルタの反りが低減されるだけでなく、密着型スキャナの部品点数を削減することができる。これにより、密着型スキャナは、さらに薄型にかつ安価に構成することができる。
【0059】
なお、前述の第1実施形態の角度制限フィルタ15,35,36,37,38についても、角度制限フィルタの反りを抑えるために、上述のように入射角依存性反射膜29をガラス基板26の両面にそれぞれ設けたり、部品点数の削減や低コスト化のために、バンドパスフィルタ14として機能する光学薄膜57を設けて角度制限フィルタ15,35とバンドパスフィルタ14を一体化しても良い。
【0060】
なお、上述の第2実施形態では、ガラス基板26上に遮光膜42を設け、その上に入射角依存性反射膜29を設ける例を説明したが、遮光膜42と入射角依存性反射膜29の配置順序はこれに限らない。ガラス基板26の一方の表面に遮光膜42と入射角依存性反射膜29をともに設けるときには、例えば、図11に示す角度制限フィルタ48のように、ガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,遮光膜42の順に配置されるようにしても良い。また、ここでは被写体11側表面に入射角依存性反射膜29,遮光膜42が設けられた角度制限フィルタ48を例に説明したが、イメージセンサ16側に入射角依存性反射膜29,遮光膜42を設ける場合にも同様に、ガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,遮光膜42の順に配置しても良い。さらに、前述の角度制限フィルタ47(図10B)のように、ガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29を設ける場合にも、ガラス基板26側から遮光膜42,入射角依存性反射膜29の順に配置されている必要はなく、ガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,遮光膜42の順に配置されるようにしても良い。
【0061】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態の角度制限フィルタでは、出射させる光の入射角度を約18度以内の角度に制限する入射角依存性反射膜29を備えるが、角度制限フィルタから出射させる光の入射角度は入射角依存性反射膜29の材料や層構造を調節することで任意に調節することができる。また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、波長850nmの赤外線に対して機能する角度制限フィルタを例に説明するが、入射角依存性反射膜29の材料と層構造を調節することで、他の任意の波長に対して機能する角度制限フィルタとすることができる。また、上述の実施形態では、波長850nmの単一の波長について機能するように入射角依存性反射膜29は構成されるが、これに限らず、層構造や材料を調節することで、複数の波長の光に対して、所定の幅を持った波長域の光に対して、略垂直に入射する光を透過し、斜めに入射する光を反射するように入射角依存性反射膜29を構成しても良い。
【0062】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、入射開口31,出射開口32,開口43は、個々の画素17に対応して設けられているが、これに限らず、撮像領域を複数の画素からなる領域に区画してイメージセンサ16を用いる場合には、こうした区画に対応させて、入射開口31,出射開口32,開口43を設けるようにしても良い。また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、入射開口31,出射開口32,開口43の形状を円形とするが、これに限らず、正方形等の他の形状としても良い。さらに、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、入射開口31,出射開口32,開口43は2次元に配列されているが、これに限らず、長方形を1次元的に配列したスリット状に入射開口31,出射開口32,開口43を設けても良い。
【0063】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、イメージセンサ16への入射光18を垂直入射光19に制限するために、入射開口31と出射開口32の中心位置を一致させるように設けるが、これに限らず、入射開口31と出射開口32の中心位置をずらして設け、斜めに入射する入射光18を角度制限フィルタ15から出射するようにしても良い。この場合には、入射角依存性反射膜29の特性を、角度制限フィルタ15から出射させる光の角度に応じて、層構造や材料を調節する必要がある。
【0064】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、イメージセンサ16をCCDとするが、これに限らず、CMOS等の他のイメージセンサに対しても角度制限フィルタを好適に用いることができる。
【0065】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、角度制限フィルタの基板としてガラス基板26を用いるが、薄いガラス基板26を用いる場合には、光学的な機能に影響を与えないような微細な研磨痕が原因となり、割れやすくなってしまう。このため、角度制限フィルタの厚みを抑えるために薄いガラス基板26を用いるときには、表面を研磨していない非研磨ガラス基板を用いることが好ましい。角度制限フィルタに用いる薄い非研磨ガラス基板は、熔解した硝材を熔融金属上に流し浮かべるフロート式の製板方法で製造されたものであることが特に好ましく、プレス成形によって製造されたものであっても良い。また、研磨痕を原因とする割れが生じない程度の厚みを持ったガラス基板26を用いて角度制限フィルタを製造するときには、非研磨ガラス基板だけでなく、表面を研磨したガラス基板を用いても良い。
【0066】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態の角度制限フィルタで、迷光を防止するためには、第1遮光膜27,第2遮光膜28,遮光膜42の特性が、角度制限フィルタに入射される全ての波長の光に対して、反射率及び透過率が5%以下となっていることが好ましい。
【0067】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、第1遮光膜27,第2遮光膜28,遮光膜42は、赤外線を含め入射した光を全て吸収し、反射及び透過しないが、これに限らず、第1遮光膜27,第2遮光膜28,遮光膜42は、少なくとも撮像に利用する波長の光を透過させない膜質であれば良い。例えば、第1遮光膜27,第2遮光膜28,遮光膜42を、入射する全ての波長の光を反射する反射膜としても良い。また、上述の第1実施形態では、第1遮光膜27と第2遮光膜28はともに吸収膜であるが、第1遮光膜27と第2遮光膜28を同じ膜質とする必要はなく、一方を吸収膜、他方を反射膜としても良い。このように、第1遮光膜27や第2遮光膜28を反射膜とする場合には、入射開口31を通ってガラス基板26に進入した光のうち、ガラス基板26の内面で反射された光をも再度反射して、迷光が生じるので、上述の実施形態のように第1遮光膜27及び第2遮光膜28は吸収膜となっていることが好ましい。
【0068】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、入射角依存性反射膜29は、約18度よりも大きな入射角度に対して略0%の透過率となっているが、これに限らず、入射光が全反射されるようになる臨界角よりも大きな入射角を考慮せずに、入射角依存性反射膜29の材料や層構造を調節して良い。
【0069】
なお、本明細書中で、略垂直及び垂直とは、単に角度制限フィルタ15,35,36,37,38,41,46,47,48の表面に垂直な角度に近いことを意味するのではなく、入射開口31と出射開口32の径の比率(第1実施形態の角度制限フィルタ15,35の場合)、ガラス基板26の厚さ、入射開口31,出射開口32,開口43,画素17の大きさや配列間隔、入射角依存性反射膜29の透過率が急峻に変化する入射角度等に基づいて定まる角度範囲を意味するものである。特に、第1実施形態の角度制限フィルタ15,35では隣接する入射開口31からの光が出射開口32を透過しない入射角度の範囲を意味する。したがって、第1実施形態の角度制限フィルタ15,35では、隣接する入射開口31からの光が出射開口32を透過しない角度、第2実施形態の角度制限フィルタ41では必要な解像度で撮像することができる角度であれば、入射角度の絶対値によらず、略垂直(垂直)に含まれるものとする。
【0070】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態実施形態では、第2遮光膜28,遮光膜42のうえに、第2遮光膜28,遮光膜42の全体を覆うように入射角依存性反射膜29を設けるが、これに限らず、入射角依存性反射膜29は、第2遮光膜28,遮光膜42の全面を覆うように設けられている必要はなく、少なくとも出射開口32,開口43を覆うように設けられていれば良い。また、このことは、第1実施形態の角度制限フィルタ35のように、第1遮光膜27上に入射角依存性反射膜29を設ける場合も同様である。
【0071】
なお、上述の第1実施形態では、ガラス基板26上に設けられた第2遮光膜28のうえに、さらに入射角依存性反射膜29を設けるが、第2遮光膜28と入射角依存性反射膜29の順序はこれに限らず、ガラス基板26側から、入射角依存性反射膜29、第2遮光膜28の順に設けても良い。但し、このように入射角依存性反射膜29と第2遮光膜28との積層順序を入れ替え、第2遮光膜28よりもガラス基板26側に入射角依存性反射膜29を設ける場合には、ガラス基板26内面で反射された光が、第2遮光膜28に到達し難く、第2遮光膜28に吸収され難くなる。このためガラス基板26内面で反射された光が迷光となってしまうおそれがある。したがって、上述の実施形態のように、ガラス基板26側から、第2遮光膜28、入射角依存性反射膜29の順に設けられていることが特に好ましい。このことは、第1遮光膜27上に入射角依存性反射膜29を設ける場合や、第2実施形態の角度制限フィルタ41の場合も同様である。
【0072】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、被写体11からの反射光で撮像する密着型スキャナ10を例に説明するが、これに限らず、被写体11を外部から照明し、被写体11を透過した光で撮像する密着型スキャナに対しても本発明を好適に用いることができる。
【0073】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、イメージセンサ16がCCD型のエリアイメージセンサを例として説明するが、これに限らず、ラインイメージセンサであっても良く、また、CMOS等の他の周知の機構の撮像素子を用いても良い。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体にイメージセンサを密着させて撮像を行う密着型の撮像装置に用いられる撮像フィルタに関し、さらに詳しくは、この撮像装置のイメージセンサへの光の入射角度を制限する撮像フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
画像や文書等の原稿を撮像し、そのデジタルな画像データを得るイメージスキャナが普及している。イメージスキャナには、読み取る原稿と同じ幅のラインイメージセンサを、原稿に略密着させて撮像する密着型のイメージスキャナが知られている。密着型のイメージスキャナは、原稿からイメージセンサまでの距離が短く、縮小光学系を用いる他のタイプのイメージスキャナよりもコンパクトに構成される。
【0003】
原稿の像を結像させるレンズ等を用いずに、単にイメージセンサを原稿に密着させて配置すれば、原稿のある一点からの光は、一つの画素に到達するのではなく、本来入射すべき画素とともに、周辺の複数の画素にも入射してしまう。このため、密着型のイメージスキャナであっても、屈折率を中心から周辺にかけて減少するように分布させた円柱状のロッドレンズをイメージセンサと原稿の間に配置することによって、原稿のある一点からの光が、イメージセンサのある一つの撮像エリアに略一対一に到達するように、イメージセンサへの光の入射を制限している。
【0004】
また、イメージセンサへの光の入射を制限する撮像装置としては、イメージセンサの受光エリアを複数に区画して用いるために、イメージセンサへの光の入射角度を制限する撮像フィルタを用いた撮像装置が知られている。例えば、区画する受光エリアに合わせて遮光ブロックを配置したイメージセンサや(特許文献1)、スリットのあいた格子板を設けることで長方形状に受光エリアを区画する撮像装置が知られている(特許文献2)。さらに、多数の貫通孔があいた多孔板を設けることで、受光エリアに対して垂直に入射する平行光だけがフィルムに入射するように、受光エリアへの光の入射角度を制限したフィルムカメラが知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2007−121631号公報
【特許文献2】特開2007−299085号公報
【特許文献3】特開2004−151124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
密着型のイメージスキャナであっても、撮像対象とイメージセンサとの間に隙間ができることは避けられない。また、フォトダイオードは、イメージセンサの表面よりも深い位置にある。これらのために、撮像対象の一点からの光は隣り合うフォトダイオードの双方に斜めに入射してしまい、ノイズや偽信号の原因になる。したがって、精細な撮像のためには、一点からの光が一つのフォトダイオードだけに入射するように、イメージセンサへの光の入射角度を制限する必要がある。
【0006】
一点からの光が隣接する複数のフォトダイオードや隣接する受光エリアに入射することを防ぐには、密着型イメージスキャナで使われているようなロッドレンズを用いるか、あるいは特許文献1や特許文献2の撮像フィルタのように、貫通孔で受光エリアを区画する撮像フィルタを用いて、イメージセンサに入射する光の入射角を制限する必要がある。
【0007】
しかし、ロッドレンズを用いる場合は、厚み方向に比較的大きな組み込みスペースを必要とするために、さらに薄型化することは難しい。
【0008】
また、スリット等の貫通孔のあいた撮像フィルタは、金属製の板等からつくられるが、貫通孔の径が小さいほど、また、貫通孔同士の間隔が狭いほど、貫通孔を設ける加工が困難なものとなる。また、こうした微小な貫通孔を機械的な加工で設けることができたとしても、高コストな撮像フィルタとなってしまう。さらに、貫通孔の内壁で入射光の一部が反射(または透過)されると、貫通孔の径で定めた領域外に出射する光が生じてしまうので、貫通孔の内壁は反射防止加工等を施す必要があるが、貫通孔を設けること自体が困難な微小な貫通孔の場合には、内壁に特殊加工を施すことは困難である。
【0009】
また、径の小さい貫通孔が設けられた撮像フィルタは、製造過程やイメージスキャナへの組み込み時などに、ゴミや埃等により目詰まりが生じやすく、一旦貫通孔に入り込んでしまったゴミ等を除去することは難しい。このため、径の小さな貫通孔が設けられた撮像フィルタは、取り扱い時の周囲環境等に配慮しなければならず、また、貫通孔が設けられた撮像フィルタやこれを用いるイメージスキャナの歩留まりは悪く、安定した量産が難しい。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、量産適正に優れ、製造コストが低く抑えられ、厚み方向の組み込みスペースも小さく、かつ、イメージセンサへの光の入射角度を制限する撮像フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の撮像フィルタは、透明な基板と、前記基板の表面に設けられ、一定の大きさを有する複数の開口が一定の間隔で形成され、前記開口以外の部分に入射する光を遮光する遮光膜と、前記基板の表面に設けられ、多層の誘電体薄膜からなり、垂直に入射する所定波長の光を透過し、斜めに入射する前記所定波長の光を反射する反射膜と、を備え、イメージセンサへの光の入射角度を制限することを特徴とする。
【0012】
また、前記遮光膜は、前記基板の被写体側表面または前記基板の前記イメージセンサ側表面のいずれか一方に設けられていることを特徴とする。
【0013】
この場合、前記反射膜は、前記開口を全て覆うように、前記遮光膜上に設けられていることが好ましい。
【0014】
また、前記遮光膜が前記基板の一方の表面に設けられ、前記反射膜が前記基板の他方の表面に設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、前記遮光膜は、各々の前記遮光膜の前記開口の中心位置が前記基板の表裏で一致するように、前記基板の両面にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0016】
このように前記基板の両面にそれぞれ前記遮光膜を設ける場合には、前記基板の前記イメージセンサ側表面に設けられた開口の径は、前記基板の被写体側に設けられた前記遮光膜の開口の径よりも小さいことが好ましい。
【0017】
また、こうして前記基板の両面にそれぞれ前記遮光膜を設ける場合には、前記反射膜は、前記イメージセンサ側表面に設けられた前記遮光膜の前記開口を全て覆うように、前記イメージセンサ側表面に設けられた前記遮光膜上に設けられていることが好ましい。
【0018】
さらに、前記基板の両面にそれぞれ前記遮光膜を設ける場合には、前記反射膜は、前記被写体側表面に設けられた前記遮光膜の前記開口を全て覆うように、前記被写体側表面に設けられた前記遮光膜上に設けられていることが好ましい。
【0019】
また、前記遮光膜は、前記所定波長の光を吸収する吸収膜であることを特徴とする。
【0020】
また、前記反射膜は、略垂直に入射する赤外線を透過し、斜めに入射する赤外線を反射する赤外線カットフィルタ膜であることを特徴とする。
【0021】
また、前記基板が非研磨ガラス基板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、イメージセンサを撮像対象に密着させて、1個〜数個程度の画素からなるような極めて小さな領域に受光エリアを区画してイメージセンサを用いる場合に、イメージセンサへの光の入射角度を容易に制限するとともに、量産適正に優れ、製造コストが低く抑えられ、厚み方向の組み込みスペースが小さい撮像フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】密着型スキャナの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】角度制限フィルタを用いる撮像装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】角度制限フィルタの断面図である。
【図4】入射角依存性反射膜の特性を示すグラフである。
【図5】角度制限フィルタの作用を示す説明図である。
【図6】両面に入射角依存性反射膜を設けた角度制限フィルタの断面図である。
【図7】第1実施形態の角度制限フィルタの変形例を示す断面図である。
【図8】第1実施形態の角度制限フィルタの変形例を示す断面図である。
【図9】第2実施形態の角度制限フィルタを示す断面図である。
【図10】第2実施形態の角度制限フィルタの変形例を示す断面図である。
【図11】第2実施形態の角度制限フィルタの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1実施形態]
図1に示すように、密着型スキャナ10は、イメージセンサ16に略密着された被写体11を撮像する撮像装置であり、保護カバー12、LED13、バンドパスフィルタ14、角度制限フィルタ15、イメージセンサ16等から構成される。保護カバー12は、透明なガラス板であり、下方に配置される角度制限フィルタ15やイメージセンサ16を傷や埃から保護する。また、撮像される被写体11は、保護カバー12上に直接載置される。
【0025】
LED13は、波長850nmの赤外線を発し、保護カバー12上に載置された被写体11を一様に照明する。LED13から発せられた赤外線は、被写体11の箇所によって異なる赤外線の吸収率及び反射率を反映して散乱され、その一部が、保護カバー12下に設けられた角度制限フィルタ15の方向に入射する。このとき、角度制限フィルタ15に入射する被写体11からの入射光は、角度制限フィルタ15に対して垂直なものだけでなく、斜めに入射する成分も含まれている。
【0026】
バンドパスフィルタ14は、撮像に用いられる赤外線を透過し、保護カバー12を通って外部から入射する可視光や紫外線を遮光する。これにより、角度制限フィルタ15やイメージセンサ16に入射する光は、撮像に利用する赤外線だけに制限される。また、角度制限フィルタ15(撮像フィルタ)は、後述するように、被写体11側から様々な角度で入射する光のうち、斜めに入射する光を遮光し、イメージセンサ16に略垂直に入射する光だけをイメージセンサ16側に通す。イメージセンサ16は、波長850nm近傍の赤外線に感度を持つCCD型のエリアイメージセンサであり、角度制限フィルタ15によって表面に対して略垂直な角度に入射角度が制限された光で、被写体11を撮像する。
【0027】
図2に示すように、角度制限フィルタ15は、被写体11側から様々な角度で入射する入射光18のうち、表面に対して略垂直に入射した垂直入射光19をイメージセンサ16側に通し、斜めに入射した入射光18は遮光する。角度制限フィルタ15の表面は、入射光18を遮光する遮光エリア21と入射光18を通す通光エリア22が設けられている。遮光エリア21は、角度制限フィルタ15の略全面を覆うように設けられており、この遮光エリア21内に複数の通光エリア22が配列されている。遮光エリア21に入射した光は反射,透過されることなく吸収される。また、各々の通光エリア22は、イメージセンサ16の一つの画素17の大きさと略同程度の大きさで、円形に設けられているとともに、各画素17に一つの通光エリア22が対応するように配列されている。また、角度制限フィルタ15は、各々の通光エリア22が対応する画素17の直上に位置するように、位置合わせして配置される。なお、図2では説明のために、角度制限フィルタ15をイメージセンサ16から離してあるが、角度制限フィルタ15は、図示しない他の光学フィルタ等を介してイメージセンサ16に密着して配置される。
【0028】
図3に示すように、角度制限フィルタ15は、透明な板状のガラス基板26、第1遮光膜27、第2遮光膜28、入射角依存性反射膜29とから構成される。ガラス基板26は、0.15mmの厚さとなっており、イメージセンサ16で撮像に利用する波長850nm近傍の赤外線だけでなく、可視光や紫外線といった種々の波長域の光を略全て透過する。
【0029】
第1遮光膜27は、吸収係数の大きな金属薄膜と透明な誘電体薄膜を交互に多層積層してつくられ、ガラス基板26の被写体11側表面(表面)に設けられる。第1遮光膜27は、イメージセンサ16で撮像に利用される波長850nm近傍の赤外線だけでなく、イメージセンサ16に感度のある波長域の光を略全て吸収する吸収膜となっている。また、第1遮光膜27には入射開口31が複数形成されており、入射光を通す部分はこの入射開口31に制限される。各々の入射開口31の形状は円形であり、中心位置が画素17の中心と一致するように一定の間隔で配列されている。また、角度制限フィルタ15を入射側の正面からみたときには、この入射開口31の周縁が通光エリア22と遮光エリア21の境界となる。
【0030】
第2遮光膜28は、光が出射するガラス基板26のイメージセンサ16側表面(裏面)に設けられ、第1遮光膜27と同様に、吸収係数の大きな金属薄膜と透明な誘電体薄膜とを交互に多層積層した遮光膜であり、イメージセンサ16に感度のある波長域の光を略全て吸収する吸収膜となっている。また、第2遮光膜28には出射開口32が複数形成されており、入射光を通す部分はこの出射開口32に制限される。各々の出射開口32の形状は円形であり、出射開口32の径D2は入射開口31の径D1よりも小さく、中心位置が各画素17の中心及び各入射開口31の中心の位置と一致するように配列されている。
【0031】
入射角依存性反射膜29は、ガラス基板26のイメージセンサ16側に、第2遮光膜28と出射開口32と全てを覆うように設けられる。また、入射角依存性反射膜29は、屈折率の異なる誘電体薄膜を複数積層したものであり、入射角度に応じて、赤外線を透過または反射する赤外線カットフィルタ膜となっている。
【0032】
図4に示すように、入射角依存性反射膜29は、波長850nmの赤外線が入射するときに、入射角度が約18度よりも小さく、入射角依存性反射膜29に略垂直に入射するものを透過し、入射角度が約18度よりも大きく、入射角依存性反射膜29に対して傾斜して入射するものを反射するように、層構造が定められている。また、このような入射角依存性反射膜29を構成する材料,層構造,特性は、使用する光の波長、ガラス基板26の厚さ、入射開口31(出射開口32)の配列間隔、入射開口31と出射開口32の相対的な大きさに応じて定められる。
【0033】
このように構成される角度制限フィルタ15には、図5に示すように、様々な入射角度で、様々な入射位置に、波長850nmの赤外線A〜赤外線Dが入射する。
【0034】
赤外線Aのように、入射位置が第1遮光膜27に覆われた位置であると、入射角度によらず、第1遮光膜27によって吸収されるために、イメージセンサ16側には透過しない。一方、赤外線B〜赤外線Dのように、入射開口31に入射する赤外線は、第1遮光膜27によって吸収されることなく、ガラス基板26内に進入する。
【0035】
入射開口31に入射した赤外線の中でも、入射角依存性反射膜29によって定まる所定角度θ(約18度)よりも入射角度が小さく、角度制限フィルタ15に略垂直に入射する赤外線Bは、ガラス基板26を透過して、出射開口32に達する。このとき、入射角依存性反射膜29への赤外線Bの入射角度は、角度制限フィルタ15への入射角度と略等しく、約18度よりも小さいために、入射角依存性反射膜29を透過して、イメージセンサ16側に出射される。
【0036】
しかし、赤外線Cのように、入射位置が入射開口31であり、かつ、入射角度が約18度以内であっても、ガラス基板26を透過して達する位置が第2遮光膜28に覆われた位置であると、吸収されるため、イメージセンサ16側には出射されない。また、赤外線Dのように、入射開口31内に入射角度が約18度を超えるような傾斜して入射すると、出射開口32に達したとしても、入射角依存性反射膜29によってガラス基板26の内部へと反射され、イメージセンサ16側へは出射されない。
【0037】
このように、角度制限フィルタ15は、様々な入射角度で入射する赤外線のうち、イメージセンサ16側に出射する赤外線を、約18度という入射角依存性反射膜29によって決まる角度よりも小さく、略垂直に入射した赤外線に制限する。
【0038】
このとき、ある出射開口32に対して、隣接する出射開口32に対応する入射開口31のような、対応しない位置に設けられた入射開口31から入射する赤外線は、入射角依存性反射膜29によって反射され、イメージセンサ16側には出射しない。このため、角度制限フィルタ15を用いることで、各画素17に入射する赤外線は、周辺の画素17への入射光と重畳することなく、被写体11の一つの箇所と略一対一に対応し、ぼやけやにじみといった解像度を低下させるノイズを軽減して撮像することができる。
【0039】
また、出射開口32の径を入射開口31の径よりも小さく設けることで、垂直入射光19を集光してイメージセンサ16へ入射させることができる。
【0040】
また、角度制限フィルタ15は、貫通孔や研磨といった機械的加工を必要としないから、ガラス基板26上に薄膜をパターニングすることで容易に、かつ安価に製造される。さらに、角度制限フィルタ15には貫通孔のような深い孔はなく、略平坦な表面となっているため、ゴミや埃が付着したとしても、エアを吹き付けたり、超音波洗浄などにより容易にこれらを除去することができる。このため、角度制限フィルタ15は、歩留まりも良く量産に適している。
【0041】
なお、上述の第1実施形態では、入射角依存性反射膜29を、ガラス基板26のイメージセンサ16側表面(裏面)に設けるが、これに限らず、被写体11側表面(表面)にだけ入射角依存性反射膜29を設けても良く、イメージセンサ16側表面と被写体11側表面の両方に入射角依存性反射膜29を設けても良い。この場合にも、上述の実施形態と同様の効果が得られる。特に、ガラス基板26が薄く、一方の表面にだけ入射角依存性反射膜29を設けると角度制限フィルタ15に反りを生じてしまう場合には、図6に示す角度制限フィルタ35のように、イメージセンサ16側表面と被写体11側表面の両面に入射角依存性反射膜29を設けることが好ましい。
【0042】
また、角度制限フィルタ15の反りを防止する等のために、ガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29等の誘電体薄膜を積層する場合には、ガラス基板26の一方の面に入射角依存性反射膜29を設け、他方の面上には可視光カットフィルタやバンドバスフィルタといった他の光学的作用を持った誘電体の多層膜を設けることが好ましい。例えば、上述の第1実施形態で説明したように、ガラス基板26のイメージセンサ16側表面に入射角依存性反射膜29を設けるとともに、ガラス基板26の被写体11側表面に、バンドパスフィルタ14を角度制限フィルタ15と一体的に設ける。このように、ガラス基板26の面上に、入射角依存性反射膜29の他に、他の光学的作用を持った誘電体多層膜を設けることで、密着型スキャナ10の部品点数を削減することができ、密着型スキャナ10をよりコンパクトにすることができる。
【0043】
なお、上述の第1実施形態では、ガラス基板26のイメージセンサ16側表面に第2遮光膜28を設け、さらに第2遮光膜28を覆うように入射角依存性反射膜29を設けた例を説明したが、入射角依存性反射膜29を設ける位置はこれに限らない。例えば、図7に示す角度制限フィルタ36のように、ガラス基板26の表面に入射角依存性反射膜29を設け、さらにこの上に第2遮光膜28を設けるようにすることで、入射角依存性反射膜29と第2遮光膜28の積層順序を入れ替えても良い。また、ここではイメージセンサ16側に入射角依存性反射膜29を設ける例で説明したが、被写体11側に入射角依存性反射膜29を設ける場合も同様である。したがって、被写体11側に入射角依存性反射膜29を設けるときには、ガラス基板26の被写体11側表面ではガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,第1遮光膜27の順に配置し、イメージセンサ16側表面に第2遮光膜28を配置するようにしても良い。
【0044】
また、前述のようにガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29を設ける場合には、図8(A)に示す角度制限フィルタ37のように、ガラス基板26の表面に入射角依存性反射膜29を設け、その上に第1遮光膜27,第2遮光膜28を設けるようにしても良い。さらに、こうしてガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29を設けるときには、ガラス基板26の両面で、ガラス基板26に対する入射角依存性反射膜29と遮光膜の配置順序が異なっていても良い。例えば、図8(B)に示す角度制限フィルタ38のように、ガラス基板26の被写体11側表面ではガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,第1遮光膜27の順に配置し、イメージセンサ16側表面ではガラス基板26側から第2遮光膜28,入射角依存性反射膜29の順に配置しても良い。同様に、ガラス基板26の被写体11側表面ではガラス基板26側から第1遮光膜27,入射角依存性反射膜29の順に配置し、イメージセンサ16側表面ではガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,第2遮光膜28の順となるように配置しても良い。
【0045】
なお、上述の第1実施形態では、入射開口31の径D1よりも出射開口32の径D2を小さく設けているが、これに限らず、出射させる光の用途に応じて、入射開口31の径と出射開口32の径を等しく設けたり、入射開口31の径D1よりも出射開口32の径D2を大きく設けても良い。
【0046】
[第2実施形態]
なお、上述の第1実施形態では、ガラス基板26の表裏に、第1遮光膜27,第2遮光膜28をそれぞれ設ける例を説明したが、これに限らず、遮光膜をガラス基板26の一方の面にだけ設けるようにしても良い。こうして、ガラス基板26の一方の面にだけ遮光膜を設ける例を、以下に第2実施形態として説明する。例えば、図9に示すように、角度制限フィルタ41は、ガラス基板26の被写体11側の表面にだけ遮光膜42を設けたものであり、前述の角度制限フィルタ15,35とは異なり、イメージセンサ16側の表面には遮光膜は設けられていない。また、入射角依存性反射膜29は、遮光膜42の全体を覆うように、ガラス基板26の被写体11側表面に、遮光膜42の全体を覆うように設けられている。
【0047】
角度制限フィルタ41に設けられた遮光膜42は、前述の第1遮光膜27や第2遮光膜28と同様に、吸収係数の大きな金属薄膜と透明な誘電体薄膜とを交互に多層積層したものであり、イメージセンサ16に感度のある波長域の光を略全て吸収する吸収膜として機能する。また、遮光膜42には、中心位置が画素17の中心位置と一致するように一定の間隔で、円形状の開口43が複数設けられている。ここで遮光膜42に設けられた開口43の径D3は、前述の第1遮光膜27に設けられた入射開口31の径D1よりも小さく、第2遮光膜28に設けられた出射開口32の径D2よりも大きい。
【0048】
また、角度制限フィルタ41に設けられた入射角依存性反射膜29は、前述の角度制限フィルタ15,35に設けられたものと同様に、屈折率の異なる誘電体薄膜を複数積層したものであり、入射した赤外線を、その入射角度に応じて透過または反射する赤外線カットフィルタ膜として機能する。
【0049】
このように構成される角度制限フィルタ41は、遮光膜42及び入射角依存性反射膜29が設けられた表面を被写体11側に向けて、イメージセンサ16の前面に配置される。角度制限フィルタ41には、被写体11から様々な角度で赤外線が入射する。このとき、入射角依存性反射膜29に所定角度よりも傾斜して入射した赤外光は、入射角依存性反射膜29で反射され、遮光膜42には到達しない。一方、入射角依存性反射膜29に所定角度以内で略垂直に入射した赤外光は、入射角依存性反射膜29を透過する。こうして入射角依存性反射膜29を透過した赤外光のうち、遮光膜42に入射した赤外光は遮光膜42に吸収される。一方、入射角依存性反射膜29を透過した赤外光のうち、開口43に入射した光は、開口43を通過してイメージセンサ16に到達する。このとき、開口43を通過した赤外光は、通過した開口43の直下に設けられた画素17に入射する。
【0050】
こうして被写体11から入射する赤外線は、角度制限フィルタ41によってイメージセンサ16への入射角度を略垂直な方向に制限される。同時に、角度制限フィルタ41を搭載する密着型スキャナは、角度制限フィルタ41により、被写体11から入射する赤外線が被写体11の一つの箇所とイメージセンサ16の各画素17と略一対一に対応してイメージセンサ16に入射するので、ぼやけやにじみといった解像度を低下させるノイズを軽減して撮像することができる。
【0051】
また、上述の角度制限フィルタ41の製造には、貫通孔や研磨といった機械的な加工を必要としないから、第1実施形態の角度制限フィルタ15,35の製造と同様に、安価に安定して製造することができる。
【0052】
一方、第1実施形態の角度制限フィルタ15,35では、ガラス基板26の両面に第1遮光膜27,第2遮光膜28がそれぞれ設けられているのに対し、角度制限フィルタ41では、被写体11側に配置されるガラス基板26の一方の面にのみ遮光膜42を設ける。このため、被写体11からイメージセンサ16への赤外線の入射角度選択性は、角度制限フィルタ41よりも第1実施形態の角度制限フィルタ15の方が優れる。しかし、角度制限フィルタ15,35は、対応する入射開口31と出射開口32の位置が揃うように、ガラス基板26の両面に第1遮光膜27,第2遮光膜28をそれぞれ設けなければならないが、遮光膜42は被写体11側の1つであり、角度制限フィルタ41ではこうした遮光膜同士の位置合わせが不要となっている。このため、角度制限フィルタ41は、第1実施形態の角度制限フィルタ15,35よりも、低いコストで、容易に安定して製造することができる。したがって、角度制限フィルタ41は、イメージセンサ16への赤外線の入射角度を、実用的な解像度で撮像できる範囲に制限することができる上に、低コストで容易に安定して製造できる。
【0053】
なお、上述の第2実施形態では、遮光膜42に設ける開口43の大きさを、第1実施形態の2つの遮光膜27,28に設ける開口31,32の大きさの中間の大きさとしたが、開口43の大きさはこれに限らない。開口43の大きさは、撮像に必要な解像度や光量、イメージセンサ16の感度等に応じて定めることが好ましく、第1実施形態の密着型スキャナ10と同じイメージセンサ16を同じ条件で用いる場合には、上述のように開口31,32の大きさの中間の大きさとすることが好ましい。
【0054】
なお、上述の第2実施形態では、ガラス基板26の被写体11表面に遮光膜42及び入射角依存性反射膜29を設け、他方のイメージセンサ16側表面には遮光膜等を設けない例を説明したが、遮光膜42や入射角依存性反射膜29を設ける表面は被写体11側に限らず、遮光膜42及び入射角依存性反射膜29をイメージセンサ16表面に設け、被写体11側表面に遮光膜等を設けない構成としても良い。但し、ガラス基板26のイメージセンサ16側表面にだけ遮光膜42及び入射角依存性反射膜29を設ける場合よりも、ガラス基板26の被写体11側表面にだけ遮光膜42及び入射角依存性反射膜29を設ける場合の方が、被写体11からイメージセンサ16への赤外線の入射角度を良好に制限することができる。このため、ガラス基板26の一方の面にだけ遮光膜を設ける場合には、上述の第2実施形態の角度制限フィルタ41のように被写体11側に遮光膜42及入射角依存性反射膜29を設けることが好ましい。
【0055】
なお、上述の第2実施形態では、被写体11側の表面に遮光膜42及び入射角依存性反射膜29を設け、他方のイメージセンサ16側表面には遮光膜等を設けない例を説明したが、このようにガラス基板26の一方の面にだけ遮光膜42等を設けると、角度制限フィルタ41に反りが生じてしまうことがある。このため、ガラス基板26の一方の表面に遮光膜42を設け、他方の表面に入射角依存性反射膜29を設ける等、ガラス基板26の両面に光学的な機能を持つ薄膜等を設けることにより角度制限フィルタ41の反りを防止することが好ましい。
【0056】
例えば、図10(A)に示す角度制限フィルタ46のように、ガラス基板26の被写体11側表面には遮光膜42だけを設け、イメージセンサ16側表面に入射角依存性反射膜29を設けるようにすることで、角度制限フィルタの反りを低減させるようにしても良い。また、このようにガラス基板26の両面に、入射角依存性反射膜29と遮光膜42を分けて設けるときには、角度制限フィルタ46とは逆に、ガラス基板26の被写体11側表面に入射角依存性反射膜29を設け、イメージセンサ16側表面に遮光膜42を設けるようにしても良い。
【0057】
また、例えば、図10(B)に示す角度制限フィルタ47のように、ガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29を設けることで、角度制限フィルタの反りを低減させても良い。さらに、ここでは被写体11側に遮光膜42が設けられた角度制限フィルタ47を例にしたが、イメージセンサ16側に遮光膜42を設ける場合にも同様に、ガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29を設けることにより、角度制限フィルタの反りを低減させても良い。
【0058】
さらに、例えば、上述の第2実施形態の角度制限フィルタ41のように、ガラス基板26の一方の表面に、遮光膜42と入射角依存性反射膜29を設けておき、他方の表面に、バンドパスフィルタ14として機能する光学薄膜を設けることによって、角度制限フィルタの反りを低減させるようにしても良い。こうして、バンドパスフィルタ14として機能する光学薄膜を、角度制限フィルタ41と一体に設ける場合には、角度制限フィルタの反りが低減されるだけでなく、密着型スキャナの部品点数を削減することができる。これにより、密着型スキャナは、さらに薄型にかつ安価に構成することができる。
【0059】
なお、前述の第1実施形態の角度制限フィルタ15,35,36,37,38についても、角度制限フィルタの反りを抑えるために、上述のように入射角依存性反射膜29をガラス基板26の両面にそれぞれ設けたり、部品点数の削減や低コスト化のために、バンドパスフィルタ14として機能する光学薄膜57を設けて角度制限フィルタ15,35とバンドパスフィルタ14を一体化しても良い。
【0060】
なお、上述の第2実施形態では、ガラス基板26上に遮光膜42を設け、その上に入射角依存性反射膜29を設ける例を説明したが、遮光膜42と入射角依存性反射膜29の配置順序はこれに限らない。ガラス基板26の一方の表面に遮光膜42と入射角依存性反射膜29をともに設けるときには、例えば、図11に示す角度制限フィルタ48のように、ガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,遮光膜42の順に配置されるようにしても良い。また、ここでは被写体11側表面に入射角依存性反射膜29,遮光膜42が設けられた角度制限フィルタ48を例に説明したが、イメージセンサ16側に入射角依存性反射膜29,遮光膜42を設ける場合にも同様に、ガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,遮光膜42の順に配置しても良い。さらに、前述の角度制限フィルタ47(図10B)のように、ガラス基板26の両面に入射角依存性反射膜29を設ける場合にも、ガラス基板26側から遮光膜42,入射角依存性反射膜29の順に配置されている必要はなく、ガラス基板26側から入射角依存性反射膜29,遮光膜42の順に配置されるようにしても良い。
【0061】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態の角度制限フィルタでは、出射させる光の入射角度を約18度以内の角度に制限する入射角依存性反射膜29を備えるが、角度制限フィルタから出射させる光の入射角度は入射角依存性反射膜29の材料や層構造を調節することで任意に調節することができる。また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、波長850nmの赤外線に対して機能する角度制限フィルタを例に説明するが、入射角依存性反射膜29の材料と層構造を調節することで、他の任意の波長に対して機能する角度制限フィルタとすることができる。また、上述の実施形態では、波長850nmの単一の波長について機能するように入射角依存性反射膜29は構成されるが、これに限らず、層構造や材料を調節することで、複数の波長の光に対して、所定の幅を持った波長域の光に対して、略垂直に入射する光を透過し、斜めに入射する光を反射するように入射角依存性反射膜29を構成しても良い。
【0062】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、入射開口31,出射開口32,開口43は、個々の画素17に対応して設けられているが、これに限らず、撮像領域を複数の画素からなる領域に区画してイメージセンサ16を用いる場合には、こうした区画に対応させて、入射開口31,出射開口32,開口43を設けるようにしても良い。また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、入射開口31,出射開口32,開口43の形状を円形とするが、これに限らず、正方形等の他の形状としても良い。さらに、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、入射開口31,出射開口32,開口43は2次元に配列されているが、これに限らず、長方形を1次元的に配列したスリット状に入射開口31,出射開口32,開口43を設けても良い。
【0063】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、イメージセンサ16への入射光18を垂直入射光19に制限するために、入射開口31と出射開口32の中心位置を一致させるように設けるが、これに限らず、入射開口31と出射開口32の中心位置をずらして設け、斜めに入射する入射光18を角度制限フィルタ15から出射するようにしても良い。この場合には、入射角依存性反射膜29の特性を、角度制限フィルタ15から出射させる光の角度に応じて、層構造や材料を調節する必要がある。
【0064】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、イメージセンサ16をCCDとするが、これに限らず、CMOS等の他のイメージセンサに対しても角度制限フィルタを好適に用いることができる。
【0065】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、角度制限フィルタの基板としてガラス基板26を用いるが、薄いガラス基板26を用いる場合には、光学的な機能に影響を与えないような微細な研磨痕が原因となり、割れやすくなってしまう。このため、角度制限フィルタの厚みを抑えるために薄いガラス基板26を用いるときには、表面を研磨していない非研磨ガラス基板を用いることが好ましい。角度制限フィルタに用いる薄い非研磨ガラス基板は、熔解した硝材を熔融金属上に流し浮かべるフロート式の製板方法で製造されたものであることが特に好ましく、プレス成形によって製造されたものであっても良い。また、研磨痕を原因とする割れが生じない程度の厚みを持ったガラス基板26を用いて角度制限フィルタを製造するときには、非研磨ガラス基板だけでなく、表面を研磨したガラス基板を用いても良い。
【0066】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態の角度制限フィルタで、迷光を防止するためには、第1遮光膜27,第2遮光膜28,遮光膜42の特性が、角度制限フィルタに入射される全ての波長の光に対して、反射率及び透過率が5%以下となっていることが好ましい。
【0067】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、第1遮光膜27,第2遮光膜28,遮光膜42は、赤外線を含め入射した光を全て吸収し、反射及び透過しないが、これに限らず、第1遮光膜27,第2遮光膜28,遮光膜42は、少なくとも撮像に利用する波長の光を透過させない膜質であれば良い。例えば、第1遮光膜27,第2遮光膜28,遮光膜42を、入射する全ての波長の光を反射する反射膜としても良い。また、上述の第1実施形態では、第1遮光膜27と第2遮光膜28はともに吸収膜であるが、第1遮光膜27と第2遮光膜28を同じ膜質とする必要はなく、一方を吸収膜、他方を反射膜としても良い。このように、第1遮光膜27や第2遮光膜28を反射膜とする場合には、入射開口31を通ってガラス基板26に進入した光のうち、ガラス基板26の内面で反射された光をも再度反射して、迷光が生じるので、上述の実施形態のように第1遮光膜27及び第2遮光膜28は吸収膜となっていることが好ましい。
【0068】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、入射角依存性反射膜29は、約18度よりも大きな入射角度に対して略0%の透過率となっているが、これに限らず、入射光が全反射されるようになる臨界角よりも大きな入射角を考慮せずに、入射角依存性反射膜29の材料や層構造を調節して良い。
【0069】
なお、本明細書中で、略垂直及び垂直とは、単に角度制限フィルタ15,35,36,37,38,41,46,47,48の表面に垂直な角度に近いことを意味するのではなく、入射開口31と出射開口32の径の比率(第1実施形態の角度制限フィルタ15,35の場合)、ガラス基板26の厚さ、入射開口31,出射開口32,開口43,画素17の大きさや配列間隔、入射角依存性反射膜29の透過率が急峻に変化する入射角度等に基づいて定まる角度範囲を意味するものである。特に、第1実施形態の角度制限フィルタ15,35では隣接する入射開口31からの光が出射開口32を透過しない入射角度の範囲を意味する。したがって、第1実施形態の角度制限フィルタ15,35では、隣接する入射開口31からの光が出射開口32を透過しない角度、第2実施形態の角度制限フィルタ41では必要な解像度で撮像することができる角度であれば、入射角度の絶対値によらず、略垂直(垂直)に含まれるものとする。
【0070】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態実施形態では、第2遮光膜28,遮光膜42のうえに、第2遮光膜28,遮光膜42の全体を覆うように入射角依存性反射膜29を設けるが、これに限らず、入射角依存性反射膜29は、第2遮光膜28,遮光膜42の全面を覆うように設けられている必要はなく、少なくとも出射開口32,開口43を覆うように設けられていれば良い。また、このことは、第1実施形態の角度制限フィルタ35のように、第1遮光膜27上に入射角依存性反射膜29を設ける場合も同様である。
【0071】
なお、上述の第1実施形態では、ガラス基板26上に設けられた第2遮光膜28のうえに、さらに入射角依存性反射膜29を設けるが、第2遮光膜28と入射角依存性反射膜29の順序はこれに限らず、ガラス基板26側から、入射角依存性反射膜29、第2遮光膜28の順に設けても良い。但し、このように入射角依存性反射膜29と第2遮光膜28との積層順序を入れ替え、第2遮光膜28よりもガラス基板26側に入射角依存性反射膜29を設ける場合には、ガラス基板26内面で反射された光が、第2遮光膜28に到達し難く、第2遮光膜28に吸収され難くなる。このためガラス基板26内面で反射された光が迷光となってしまうおそれがある。したがって、上述の実施形態のように、ガラス基板26側から、第2遮光膜28、入射角依存性反射膜29の順に設けられていることが特に好ましい。このことは、第1遮光膜27上に入射角依存性反射膜29を設ける場合や、第2実施形態の角度制限フィルタ41の場合も同様である。
【0072】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、被写体11からの反射光で撮像する密着型スキャナ10を例に説明するが、これに限らず、被写体11を外部から照明し、被写体11を透過した光で撮像する密着型スキャナに対しても本発明を好適に用いることができる。
【0073】
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、イメージセンサ16がCCD型のエリアイメージセンサを例として説明するが、これに限らず、ラインイメージセンサであっても良く、また、CMOS等の他の周知の機構の撮像素子を用いても良い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板と、
前記基板の表面に設けられ、一定の大きさを有する複数の開口が一定の間隔で形成され、前記開口以外の部分に入射する光を遮光する遮光膜と、
前記基板の表面に設けられ、多層の誘電体薄膜からなり、垂直に入射する所定波長の光を透過し、斜めに入射する前記所定波長の光を反射する反射膜と、
を備え、イメージセンサへの光の入射角度を制限することを特徴とする撮像フィルタ。
【請求項2】
前記遮光膜は、前記基板の被写体側表面または前記基板の前記イメージセンサ側表面のいずれか一方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像フィルタ。
【請求項3】
前記反射膜は、前記開口を全て覆うように、前記遮光膜上に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の撮像フィルタ。
【請求項4】
前記遮光膜が前記基板の一方の表面に設けられ、前記反射膜が前記基板の他方の表面に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像フィルタ。
【請求項5】
前記遮光膜は、各々の前記遮光膜の前記開口の中心位置が前記基板の表裏で一致するように、前記基板の両面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像フィルタ。
【請求項6】
前記基板の前記イメージセンサ側表面に設けられた開口の径は、前記基板の被写体側に設けられた前記遮光膜の開口の径よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の撮像フィルタ。
【請求項7】
前記反射膜は、前記イメージセンサ側表面に設けられた前記遮光膜の前記開口を全て覆うように、前記イメージセンサ側表面に設けられた前記遮光膜上に設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の撮像フィルタ。
【請求項8】
前記反射膜は、前記被写体側表面に設けられた前記遮光膜の前記開口を全て覆うように、前記被写体側表面に設けられた前記遮光膜上に設けられていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の撮像フィルタ。
【請求項9】
前記遮光膜は、前記所定波長の光を吸収する吸収膜であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の撮像フィルタ。
【請求項10】
前記反射膜は、略垂直に入射する赤外線を透過し、斜めに入射する赤外線を反射する赤外線カットフィルタ膜であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の撮像フィルタ。
【請求項11】
前記基板が非研磨ガラス基板であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の撮像フィルタ。
【請求項1】
透明な基板と、
前記基板の表面に設けられ、一定の大きさを有する複数の開口が一定の間隔で形成され、前記開口以外の部分に入射する光を遮光する遮光膜と、
前記基板の表面に設けられ、多層の誘電体薄膜からなり、垂直に入射する所定波長の光を透過し、斜めに入射する前記所定波長の光を反射する反射膜と、
を備え、イメージセンサへの光の入射角度を制限することを特徴とする撮像フィルタ。
【請求項2】
前記遮光膜は、前記基板の被写体側表面または前記基板の前記イメージセンサ側表面のいずれか一方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像フィルタ。
【請求項3】
前記反射膜は、前記開口を全て覆うように、前記遮光膜上に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の撮像フィルタ。
【請求項4】
前記遮光膜が前記基板の一方の表面に設けられ、前記反射膜が前記基板の他方の表面に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像フィルタ。
【請求項5】
前記遮光膜は、各々の前記遮光膜の前記開口の中心位置が前記基板の表裏で一致するように、前記基板の両面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像フィルタ。
【請求項6】
前記基板の前記イメージセンサ側表面に設けられた開口の径は、前記基板の被写体側に設けられた前記遮光膜の開口の径よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の撮像フィルタ。
【請求項7】
前記反射膜は、前記イメージセンサ側表面に設けられた前記遮光膜の前記開口を全て覆うように、前記イメージセンサ側表面に設けられた前記遮光膜上に設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の撮像フィルタ。
【請求項8】
前記反射膜は、前記被写体側表面に設けられた前記遮光膜の前記開口を全て覆うように、前記被写体側表面に設けられた前記遮光膜上に設けられていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の撮像フィルタ。
【請求項9】
前記遮光膜は、前記所定波長の光を吸収する吸収膜であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の撮像フィルタ。
【請求項10】
前記反射膜は、略垂直に入射する赤外線を透過し、斜めに入射する赤外線を反射する赤外線カットフィルタ膜であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の撮像フィルタ。
【請求項11】
前記基板が非研磨ガラス基板であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の撮像フィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−258691(P2009−258691A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65880(P2009−65880)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】
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