説明

撮像レンズおよび撮像装置

【課題】撮像レンズにおいて、全長の短縮化を図りつつ、明るく周辺画角まで高解像とする。
【解決手段】物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズL1、正の屈折力を有する第2レンズL2、負の屈折力を有する第3レンズL3、正の屈折力を有する第4レンズL4、負の屈折力を有する第5レンズL5を配置し、第1レンズL1を、近軸領域において、両凹レンズとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子上に被写体の光学像を結像させる撮像レンズ、およびその撮像レンズを搭載して撮影を行うデジタルスチルカメラやカメラ付き携帯電話機および情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistance)等の撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮影した風景や人物像等の画像情報をパーソナルコンピュータに入力することができるデジタルスチルカメラが急速に普及している。また、携帯電話機に画像入力用のカメラモジュールが搭載されることが一般的になっている。このような撮像機能を有する機器には、CCDやCMOSなどの撮像素子が用いられている。近年、これらの撮像素子のコンパクト化が進み、撮像機器全体ならびにそれに搭載される撮像レンズにも、コンパクト性が要求されている。また同時に、撮像素子の高画素化も進んでおり、撮像レンズの高解像、高性能化が要求されている。
【0003】
このような撮像レンズとして、レンズ枚数を少なくすることにより、例えばレンズ枚数を4枚、さらに3枚にすることにより小型化したものが知られている。また、より高い解像力が求められるときに用いる撮像レンズとして、使用するレンズ枚数を増加させたもの、例えば5枚のレンズを用いて光学性能を向上させようとするものが知られている。
【0004】
上記のように5枚のレンズを用いて光学性能を向上させようとするものとして、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ、正の屈折力を有する第2レンズ、負の屈折力を有する第3レンズ、正の屈折力を有する第4レンズ、正の屈折力を有する第5レンズを配置してなるものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−142730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように5枚のレンズを用いた撮像レンズは(例えば特許文献1の撮像レンズ等はFナンバーを2.8程度にすることを前提としており)、開口を大きくして明るくしようとすると解像力が低下してしまい十分な明るさを得ることが難しくなる。
【0007】
また、上記5枚構成の撮像レンズにおいて、厚みを薄く(光学全長を短く)しようとすると諸収差(例えば、色収差や歪曲収差)の発生を抑えることが難しくなり所望の解像力が得られなくなるという問題が生じる。
【0008】
さらに、注目する被写体の写る中央領域の範囲と背景の写る周辺領域の範囲とのバランスを保ちつつ、背景の画像品質をも向上させたいという要請もあり、対角での画角が50°以上となる領域についても良好な解像が得られる撮像レンズが求められている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、全長の短縮化を図りつつ、明るく周辺画角まで高解像とすることができる撮像レンズおよびこの撮像レンズを搭載した撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撮像レンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ、正の屈折力を有する第2レンズ、負の屈折力を有する第3レンズ、正の屈折力を有する第4レンズ、負の屈折力を有する第5レンズからなり、第1レンズは、近軸領域において、両凹レンズであることを特徴とするものである。
【0011】
前記第5レンズの像側面は、1つ以上の変曲点を有する非球面形状をなすとともに、近軸領域において像側に凹形状をなすものであり、第3レンズ、第4レンズ、第5レンズのいずれかが、近軸領域においてメニスカス形状をなすものであり、fをレンズ全系の焦点距離、f1を第1レンズの焦点距離としたときに、条件式(Fa):−35≦f1/f≦−2.3を満足するものとすることができる。
【0012】
前記撮像レンズは、TLを光学全長、f123を第1レンズと第2レンズと第3レンズの合成焦点距離としたときに、条件式(Ea):1.0≦TL/f≦1.8、条件式(Ja):1.2≦f123/f≦5.0を同時に満足するものとすることができる。
【0013】
前記撮像レンズは、第2レンズと第3レンズとの間に絞りが配置されたものとすることができる。
【0014】
前記第5レンズの像側面は、1つ以上の変曲点を有する非球面形状をなすとともに、近軸領域において像側に凹形状をなすものであり、条件式(Ea):1.0≦TL/f≦1.8を満足するものとすることができる。
【0015】
前記撮像レンズは、第5レンズの像側面が、1つ以上の変曲点を有する非球面形状をなすとともに、近軸領域において像側に凹形状をなすものであり、さらに、第3レンズおよび第4レンズが、近軸領域においてメニスカス形状をなすものとすることができる。
【0016】
前記撮像レンズは、ν1を第1レンズのアッベ数、ν2を第2レンズのアッベ数、ν3を第3レンズのアッベ数としたときに、条件式(Ba):18<ν1<65、条件式(Ca):50<ν2<80、条件式(Da):20<ν3<35を同時に満足するものとすることができる。
【0017】
前記第5レンズの像側面は、極点を1つのみ有するものとすることができる。
【0018】
本発明の撮像装置は、前記撮像レンズと、この撮像レンズによって形成された光学像を撮像して得た撮像信号を出力する撮像素子とを備えたことを特徴とするものである。
【0019】
なお、本件での極点とは、所定の有効領域内の極点について限定し、光軸からの距離r、rでの深さをf(r)として、f(r)関数の局所的な最大値または最小値のことを極値といいその点を極点とする。極値は局所的な概念であるため、ある点で極値をとってもその点が全域的な最大・最小値を取るとは限らないが、極値自体が適当な区間における最大・最小値の候補と考えることができる。
【0020】
また、本件での変曲点とは、所定の有効領域内の曲線上で、接円の曲率の符号(プラス、マイナス)が変化する点(この点では0となる)をいう。
【0021】
また、曲率とは、近軸曲率の事である。
【0022】
なお、像側面は像側のレンズ面を意味する。また、物体側面は物体側のレンズ面を意味する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の撮像レンズによれば、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ、正の屈折力を有する第2レンズ、負の屈折力を有する第3レンズ、正の屈折力を有する第4レンズ、負の屈折力を有する第5レンズを配置し、第1レンズを、近軸領域において、両凹レンズとしたので、全長の短縮化を図りつつ、明るく周辺画角まで高解像とすることができる。
【0024】
すなわち、特に、第5レンズを負の屈折力を有するレンズとしたので、撮像レンズを構成する各レンズの屈折力が像側と物体側とで対称とすることができ、光学系全体を像側と物体側とで対称な光学系に近づけることができる。これにより、ペッツバール和(Petzval sum)、歪曲収差、非点収差等を良好な状態に保つことができる。さらに、光学系全体を像側と物体側とで対称な光学系に近づけるようにしつつ、第1レンズを、近軸領域において、両凹レンズとすれば、ペッツバール和(Petzval sum)、歪曲収差、非点収差等をさらに良好な状態に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態による撮像レンズを搭載した撮像装置の概略構成を示す断面図
【図2】サンプルレンズ1の断面を示す断面図
【図3】サンプルレンズ2の断面を示す断面図
【図4】サンプルレンズ3の断面を示す断面図
【図5】サンプルレンズ4の断面を示す断面図
【図6】サンプルレンズ5の断面を示す断面図
【図7】サンプルレンズ6の断面を示す断面図
【図8】サンプルレンズ7の断面を示す断面図
【図9】サンプルレンズ8の断面を示す断面図
【図10】サンプルレンズ9の断面を示す断面図
【図11】サンプルレンズ10の断面を示す断面図
【図12】サンプルレンズ11の断面を示す断面図
【図13】サンプルレンズ12の断面を示す断面図
【図14】サンプルレンズ13の断面を示す断面図
【図15】サンプルレンズ14の断面を示す断面図
【図16】サンプルレンズ15の断面を示す断面図
【図17】サンプルレンズ16の断面を示す断面図
【図18】サンプルレンズ1の収差図
【図19】サンプルレンズ2の収差図
【図20】サンプルレンズ3の収差図
【図21】サンプルレンズ4の収差図
【図22】サンプルレンズ5の収差図
【図23】サンプルレンズ6の収差図
【図24】サンプルレンズ7の収差図
【図25】サンプルレンズ8の収差図
【図26】サンプルレンズ9の収差図
【図27】サンプルレンズ10の収差図
【図28】サンプルレンズ11の収差図
【図29】サンプルレンズ12の収差図
【図30】サンプルレンズ13の収差図
【図31】サンプルレンズ14の収差図
【図32】サンプルレンズ15の収差図
【図33】サンプルレンズ16の収差図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態による撮像レンズ100を備えた撮像装置200の概略構成を示す図である。
【0028】
図1に示す撮像レンズ100は、CCDやCMOS等の撮像素子を用いた各種撮像機器、特に、比較的小型の携帯端末機器、例えばデジタルスチルカメラ、カメラ付き携帯電話機、およびPDA等に用いて好適なものである。
【0029】
また、図1に示す撮像装置200は、上記撮像レンズ100と、この撮像レンズ100によって形成された被写体Hを表す光学像Hkに応じた撮像信号Pkを出力するCCDやCMOS等などからなる撮像素子210とを備えている。撮像素子210の撮像面211は、この撮像レンズ100の結像面Mkに配置されている。
【0030】
撮像レンズ100を構成する最も像側のレンズである第5レンズL5と撮像素子210との間には、撮像レンズ100を装着する撮像装置200の構成に応じて、種々の光学部材Cgを配置することができる。例えば、光学部材Cgとして、撮像面保護用のカバーガラス、赤外線カットフィルタ、NDフィルタなどの光学部材等を配置することができる。なお、光学部材Cgは平行平面板からなるものとすることができる。
【0031】
撮像レンズ100は、5枚のレンズで構成された結像用の撮像レンズである。
【0032】
この撮像レンズ100は、光軸Z1に沿って、物体側(図中矢印-Z方向の側)から順に、負の屈折力を有する第1レンズL1、正の屈折力を有する第2レンズL2、負の屈折力を有する第3レンズL3、正の屈折力を有する第4レンズL4、負の屈折力を有する第5レンズL5を配置して構成したものである。
【0033】
第1レンズL1は、近軸領域において、物体側のレンズ面S1が物体側に凹形状をなし、像側のレンズ面S2が像側に凹形状をなすものである。すなわち、第1レンズL1は、近軸領域において両凹レンズである。
【0034】
後述の表17等に示す実施例1〜3、すなわちサンプルレンズ10〜12は、上記本発明の実施形態による撮像レンズの1例を示すものである。なお、表17等に示すサンプルレンズのうち、サンプルレンズ1〜9、およびサンプルレンズ13〜16の撮像レンズは、参考例(参考例1〜13)として示すものである。
【0035】
上記撮像レンズ100は、第5レンズL5の像側面S11を、1つ以上の変曲点を有する非球面形状をなすとともに、近軸領域において像側に凹形状をなすものとし、さらに、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5のうちのいずれか1枚を、近軸領域においてメニスカス形状をなすものとし、後述の条件式(Fa):−35≦f1/f≦−2.3を満足するものとすることが望ましい。
【0036】
さらに、この撮像レンズ100は、後述の条件式(Ea):1.0≦TL/f≦1.8、条件式(Ja):1.2≦f123/f≦5.0を同時に満足するものとすることができる。
【0037】
また、第2レンズL2と第3レンズL3との間に開口絞りStを配置することもできる。
【0038】
第2レンズと第3レンズとの間に開口絞りが配置されるように撮像レンズを構成すれば、ペッツバール和(Petzval sum)を小さくすることができるので像面湾曲をより良好に補正することができる。また、第2レンズより物体側に開口絞りが配置される場合に比して、より確実に、球面収差、軸上の色収差、およびコマ収差の発生を抑制しつつ、明るく(Fナンバーを小さく)することができる。
【0039】
また、第2レンズL2の物体側に開口絞りStを配置することもできる。
【0040】
第2レンズの物体側に開口絞りが配置されるように撮像レンズを構成すれば、第2レンズより像側に開口絞りが配置される場合に比して、結像面への光束の入射角を小さくすることができ、この結像面上での像高に応じた入射光量および歪曲収差の急激な変化を抑制することができる。これとともに、より確実に光学全長を短縮することができる。
【0041】
第5レンズL5の像側面S11は、1つ以上の変曲点を有する非球面形状をなすとともに、近軸領域において像側に凹形状をなすものとし、さらに、後述の条件式(Ea):1.0≦TL/f≦1.8を満足するものとすることができる。
【0042】
この撮像レンズ100は、第5レンズL5の像側面を、1つ以上の変曲点を有する非球面形状をなすとともに、近軸領域において像側に凹形状をなすものとし、さらに、第3レンズL3および第4レンズL4を、近軸領域においてメニスカス形状をなすものとするように構成することができる。
【0043】
撮像レンズ100は、後述の条件式(Ba):18<ν1<65、条件式(Ca):50<ν2<80、条件式(Da):20<ν3<35を同時に満足するものとすることができる。
【0044】
また、第5レンズL5の像側面S11は、極点を1つのみ有するものとすることができる。
【0045】
上記撮像レンズ100は、以下の各条件式を適宜選択的に満足するものとすることができる。
【0046】
条件式(Aa):−12<(R1+R2)/(R1−R2)<−0.21
条件式(Ba):18<ν1<65
条件式(Bb):50<ν1<65
条件式(Ca):50<ν2<80
条件式(Da):20<ν3<35
条件式(Ea):1.0≦TL/f≦1.8
条件式(Fa):−35≦f1/f≦−2.3
条件式(Fb):−30≦f1/f≦−4.0
条件式(Gb):0.65≦f12/f≦1.30
条件式(Gf):0.60≦f12/f≦1.30
条件式(Ib):0.7≦f4/f≦2.1
条件式(Ja):1.2≦f123/f≦5.0
条件式(Ma):0.25<(Dg2+Dg3)/f<0.7
条件式(Mb):0.45<(Dg2+Dg3)/f<0.6
条件式(Nb):50<ν4<65
条件式(Oa):50<ν5<65
条件式(Pa):−4<Σ(fi/νi)/f<4
条件式(Pb):−2<Σ(fi/νi)/f<0.5
条件式(Qa)0.8≦|f1/f5|≦50
<各パラメータの意味>
f:レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
f4:第4レンズの焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
fi:第iレンズの焦点距離(ただし、i=1〜5)
f12:第1レンズと第2レンズの合成焦点距離
f123:第1レンズと第2レンズと第3レンズの合成焦点距離
Bf:バックフォーカス(空気換算距離)
TL:光学全長
ν1:第1レンズのアッベ数
ν2:第2レンズのアッベ数
ν3:第3レンズのアッベ数
ν4:第4レンズのアッベ数
ν5:第5レンズのアッベ数
νi:第iレンズを形成する光学部材のアッベ数(ただし、i=1〜5)
Dg2:第2レンズの中心厚(第2レンズの物体側面と像側面との光軸上での間隔;実長)
Dg3:第3レンズの中心厚(第3レンズの物体側面と像側面との光軸上での間隔;実長)
R1:第1レンズの物体側面(第1番目のレンズ面)の曲率半径
R2:第1レンズの像側面(第2番目のレンズ面)の曲率半径
R4:第2レンズの像側面(第4番目のレンズ面)の曲率半径
N2:第2レンズを形成している光学部材の屈折率
N3:第3レンズを形成している光学部材の屈折率
なお、式:Σ(fj/νj)/fは、式:[(f1/ν1)+(f2/ν2)+(f3/ν3)+(f4/ν4)+(f5/ν5)]/fを意味する。
【0047】
また、物体側面は物体側のレンズ面を意味する。像側面は像側のレンズ面を意味する。
【0048】
なお、焦点距離は値に正負を持たせて定められたものであり、光学要素(レンズ等)に対してこの光学要素の像側に焦点が定められる場合を正、この光学要素の物体側に焦点が定められる場合を負とする。
【0049】
また、曲率半径は値に正負を持たせて定められたものであり、物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負とする。なお、この曲率半径の値は、レンズ面が非球面の場合には、その非球面における近軸領域の曲率半径の値を用いる。
【0050】
<各条件式の効果の説明>
条件式(Aa):−12<(R1+R2)/(R1−R2)<−0.21は、第1レンズにおける物体側面の曲率半径と像側面の曲率半径との関係に関し、主にコマ収差と他の収差とをバランスさせて両収差の発生を抑えるための望ましい範囲を規定するためのものである。
【0051】
条件式(Aa)の下限を下回るように撮像レンズを構成すると、コマ収差が悪化し、倍率色収差の悪化をもまねくという問題が生じる。
【0052】
一方、条件式(Aa)の上限を上回るように撮像レンズを構成すると、コマ収差が悪化し、非点収差の悪化をもまねくという問題が生じる。
【0053】
条件式(Ba):18<ν1<65は、第1レンズに使用する光学部材のアッベ数に関し、軸上色収差を適切に補正するための望ましい範囲を規定するものである。
【0054】
条件式(Ba)の下限を下回るように撮像レンズを構成すると、軸上色収差が補正不足になるという問題が生じる。
【0055】
一方、条件式(Ba)の上限を上回るように撮像レンズを構成すると、軸上色収差が補正過剰になるという問題が生じる。
【0056】
条件式(Bb):50<ν1<65を満足するように撮像レンズを構成すれば、条件式(Ba)を満足する場合よりも軸上色収差の補正過剰をより確実に補正することができる。
【0057】
条件式(Ca):50<ν2<80は、第2レンズに使用する光学部材のアッベ数に関し、コマ収差を抑制しつつ、軸上色収差と倍率色収差とをバランスさせて諸収差の発生を抑制するための望ましい範囲を規定するものである。
【0058】
条件式(Ca)の下限を下回るように撮像レンズを構成すると、軸上色収差と倍率色収差とのバランスが崩れてしまという問題が生じる。
【0059】
一方、条件式(Ca)の上限を上回るように撮像レンズを構成すると、採用できる光学材料が限られてしまい、屈折率の小さい光学材料を第2レンズに適用することになるためコマ収差が発生しやすくなるという問題が生じる。
【0060】
条件式(Da):20<ν3<35は、第3レンズに使用する光学部材のアッベ数に関し、倍率色収差の発生を抑えつつ、軸上色収差と倍率色収差とをバランスさせて諸収差の発生を抑制するための望ましい範囲を規定するものである。
【0061】
条件式(Da)の下限を下回るように撮像レンズを構成すると、軸上色収差と倍率色収差のバランスが崩れてしまい、短波長光によって形成される光学像の大きさが長波長光によって形成される光学像よりも大きくなってしまうという問題が生じる。
【0062】
一方、条件式(Da)の上限を上回るように撮像レンズを構成すると、倍率色収差が発生しやすくなるという問題が生じる。
【0063】
条件式(Ea):1.0≦TL/f≦1.8は、光学全長とレンズ全系の焦点距離との比率の範囲を規定するものである。
【0064】
条件式(Ea)の下限を下回るように撮像レンズを構成すると、各レンズのパワーを大きくしなければならないので諸収差が悪化し、光学性能が低下するという問題が生じる。また、第1レンズの物体側面において軸上光束と軸外光束とが接近しすぎるので、これらの軸上光束と軸外光束の双方について同時に収差バランスを取ることが難しくなるという問題が生じる。
【0065】
一方、条件式(Ea)の上限を上回るように撮像レンズを構成すると、光学系の小型化が難しくなるため、小型であることが要求される撮像装置への適用が困難になる。
【0066】
条件式(Fa):−35≦f1/f≦−2.3は、第1レンズの焦点距離とレンズ全系の焦点距離との比率に関し、諸収差の発生を抑制するための望ましい範囲を規定するものである。
【0067】
条件式(Fa)の下限を下回るように撮像レンズを構成すると、コマ収差と球面収差が発生し、良好な収差補正を行うことが困難になる。
【0068】
一方、条件式(Fa)の上限を上回るように撮像レンズを構成すると、非点収差とコマ数差が発生し、良好な収差補正を行うことが困難になる。
【0069】
条件式(Gf):0.60≦f12/f≦1.30は、第1レンズと第2レンズの合成焦点距離とレンズ全系の焦点距離との比率に関し、歪曲収差の発生を抑えつつ、適正なバックフォーカスを確保するための望ましい範囲を規定するものである。
【0070】
条件式(Gf)の下限を下回るように撮像レンズを構成すると、第1レンズおよび第2レンズの合成焦点距離が短くなりすぎて、バックフォーカスの確保が難しくなるとともに、大きな歪曲収差が発生するため、実用に耐えられなくなるという問題が生じる。
【0071】
一方、条件式(Gf)の上限を上回るように撮像レンズを構成すると、バックフォーカスが長くなり光学全長を短かくすることが困難になるという問題が生じる。
【0072】
条件式(Gb):0.65≦f12/f≦1.30を満足するように撮像レンズを構成すれば、上記下限、上限で発生する問題をより確実に改善することができる。
【0073】
条件式(Ib):0.7≦f4/f≦2.1は、第4レンズの焦点距離とレンズ全系の焦点距離との比率に関し、テレセントリック性を確保しつつ、適切なバックフォーカスを得るための望ましい範囲を規定するものである。
【0074】
条件式(Ib)の下限を下回るように撮像レンズを構成すると、バックフォーカスが長くなりすぎるという問題が生じる。
【0075】
一方、条件式(Ib)の上限を上回るように撮像レンズを構成すると、開口絞りを通って像側へ抜ける最周辺光線が第4レンズL4の像側面から射出されるときの射出角が大きくなり、テレセントリック性の確保が困難になるという問題が生じる。
【0076】
条件式(Ja):1.2≦f123/f≦5.0は、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズの合成焦点距離とレンズ全系の焦点距離との比率の望ましい範囲を規定するものである。
【0077】
条件式(Ja)の下限を下回るように撮像レンズを構成すると、画角が狭くなるとともにバックフォーカスや光学全長が長くなりやすくなり、画角を拡げて光学全長を短くしようとすると、解像性能が低下するという問題が生じる
一方、条件式(Ja)の上限を上回るように撮像レンズを構成すると、画角を拡げることはできるが、歪曲収差、コマ収差、倍率色収差が著しく大きくなって光学性能が低下するという問題が生じる。
【0078】
条件式(Ma):0.25<(Dg2+Dg3)/f<0.7は、第2レンズの中心厚と第3レンズの中心厚とを合わせた厚みに関し、明るいレンズにする(FNo.を小さくする)ための望ましい範囲を規定するものである。すなわち、明るいレンズにするためには、第2レンズ、第3レンズの中心厚を適切な厚さに定める必要がある。
【0079】
条件式(Ma)を満足するように上記撮像レンズを構成すれば、この撮像レンズをより確実に明るいレンズとすることができる。
【0080】
条件式(Mb):0.45<(Dg2+Dg3)/f<0.6を満足するように上記撮像レンズを構成すれば、この撮像レンズをさらに確実に明るいレンズとすることができる。
【0081】
条件式(Nb):50<ν4<65は、第4レンズに使用する光学部材のアッベ数に関し、軸上色収差よりも倍率色収差を重視して改善するための望ましい範囲を規定するものである。条件式(Nb)を満足するように撮像レンズを構成すれば、軸上色収差の劣化を抑制しつつ倍率色収差をより確実に改善することができる。
【0082】
ここで、条件式(Nb)の下限を下回るように撮像レンズを構成すると、軸上色収差の補正が難しくなるという問題が生じる。一方、条件式(Nb)の上限を上回るように撮像レンズを構成すると、軸上色収差の補正が難しくなるという問題が生じる。
【0083】
条件式(Oa):50<ν5<65は、第5レンズに使用する光学部材のアッベ数の範囲を規定するものであり、第4レンズでの倍率色収差の補正に比べ補正量が少ないものの、主に倍率色収差を改善するための望ましい範囲を規定するものである。条件式(Oa)の上限下限のいずれか一方を超えると倍率色収差の改善が難しくなる。
【0084】
条件式(Pa):−4<Σ(fi/νi)/f<4は、第1レンズ〜第4レンズの各レンズの焦点距離と、各レンズを形成している光学部材のアッベ数と、レンズ全系の焦点距離との関係の望ましい範囲を規定するものである。
【0085】
条件式(Pa)の上限を上回ると軸上色収差が補正不足となり、この軸上色収差が大きくなりすぎてしまう。一方、条件式(Pa)の下限を下回ると軸上色収差が補正過剰となってしまい、再びこの軸上色収差が大きくなりすぎてしまう。
【0086】
さらに、条件式(Pb):−2<Σ(fi/νi)/f<0.5を満足するように撮像レンズを構成すれば、上記下限、上限で発生する問題をより確実に改善することができる。
【0087】
条件式(Qa):0.8≦|f1/f5|≦50は、第1レンズの焦点距離と第5レンズの焦点距離との比率に関し、光学系の対称性を確保して諸収差の補正をより確実に行うための望ましい範囲を規定するものである。
【0088】
条件式(Qa)を満足するように上記撮像レンズを構成すれば、光学系の対称性を確保することができるので、諸収差の補正をより確実に行うことができる。
【0089】
条件式(Qa)の上限を上回るように、あるいは下限を下回るように上記撮像レンズを構成すると、光学系の対称性が崩れて収差の補正が難しくなるという問題が生じる。
【0090】
<具体的な実施例>
次に、本実施の形態に係る撮像レンズの具体的な実施例についてまとめて説明する。
【0091】
図2〜図17は、サンプルレンズ1〜16の断面を示す断面図である。
【0092】
サンプルレンズ10〜12は、本発明の実施形態に対応する実施例1〜3それぞれに対応する撮像レンズである。
【0093】
なお、サンプルレンズ1〜9、およびサンプルレンズ13〜16は、参考例1〜13の撮像レンズそれぞれに対応するものである。
【0094】
図2〜図17において、符号Ljは、最も物体側に配置されたレンズを1番目として、像側(結像側)に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したj番目のレンズを示す。符号Siは、最も物体側のレンズ要素の面を1番目として、像側(結像側)に向かうに従い順次増加するように符号を付したi番目の面(開口絞り等を含む)を示す。符号Diは、i番目の面とi+1番目の面との光軸Z1上の面間隔を示す。
【0095】
なお、図2〜図17に記載のサンプルレンズ1〜16に付した符号は、説明済みの図1に記載の撮像レンズ100の構成に対応するものについては同じ符号で示している。
【0096】
表1〜表16は、サンプルレンズ1〜16に対応する具体的なレンズデータを示している。表1〜表16の各表中の上部(図中符号(a)で示す)に基本レンズデータを、下部(図中符号(b)で示す)に非球面係数を示す。
【0097】
ここで用いられる非球面式を以下に示す。
【0098】
Z=C・h2/{1+(1−K・C2・h21/2}+ΣAi・hi
ただし、
Z:非球面の深さ(mm)
h:光軸からレンズ面までの距離(高さ)(mm)
K:離心率
C:近軸曲率=1/R(R:近軸曲率半径)
Ai:第i次(iは3以上の整数)の非球面係数
なお、レンズデータの面番号に付した*印は、その面が非球面であることを示している。また、符号(a)で示す基本レンズデータの下方欄外には、レンズ全系の焦点距離f(mm)の値、Fナンバー(FNo)の値、および全画角2ω(°)の値を示す。
【0099】
各表中の基本レンズデータにおける面番号Siの欄には、最も物体側のレンズ要素の面を1番目として、像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目の面の番号を示している。なお、上記レンズ要素には開口絞りSt、およびカバーガラスCgの面も含まれている。曲率半径Riの欄には、物体側からi番目の面(レンズ要素の面)の曲率半径の値(mm)を示す。なお、曲率半径の正負は、物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。面間隔Diの欄についても、同様に物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔(mm)を示す。Ndjの欄には、物体側からj番目の光学要素のd線(587.6nm)に対する屈折率の値を示す。νdjの欄には、物体側からj番目の光学要素のd線を基準にしたアッベ数の値を示す。
【0100】
なお、基本レンズデータに示す非球面の曲率半径は、その非球面における近軸領域の曲率半径の値を示している。
【0101】
また、表17は、上述の条件式中の数式により算出した値、あるいは条件式中に記載の物性値やレンズ性能を表す値等を、サンプルレンズ1〜16についてまとめて示すものである。この表17において、◆印を付して示した数値は条件式を満たす範囲から外れた値であることを示している。
【0102】
図18〜33の各図中に符号(α)、(β)、(γ)を付して示す各図は、サンプルレンズ1〜16それぞれの球面収差、像面湾曲(非点収差)、および歪曲収差(ディストーション)を示している。各収差図には、e線(波長546.07nm)を基準波長とした収差を示す。球面収差図および非点収差図には、F線(波長486.13nm)、C線(波長656.27nm)についての収差も示す。像面湾曲(非点収差)を示す図において、実線はサジタル方向(S)、破線はタンジェンシャル方向(T)の収差を示す。FNo.はF値、Yは像高を示す。
【0103】
以上の各数値データおよび各収差図から分かるように、本発明の実施形態における実施例1、2、3の撮像レンズ(サンプルレンズ10,11,12)は、光学系の全長の短縮化を図りつつ、明るく周辺画角まで高解像とすることができる。
【0104】
なお、本発明は、上記実施の形態および各実施例に限定されず、発明の要旨を変更しない限りにおいて種々の変形実施が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔および屈折率の値などは、上記各表中に示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【符号の説明】
【0105】
100 撮像レンズ
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
S1 第1レンズの物体側面
S2 第1レンズの像側面
S11 第5レンズの像側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ、正の屈折力を有する第2レンズ、負の屈折力を有する第3レンズ、正の屈折力を有する第4レンズ、負の屈折力を有する第5レンズからなり、
前記第1レンズは、近軸領域において、両凹レンズであることを特徴とする撮像レンズ。
【請求項2】
前記第5レンズの像側面が、1つ以上の変曲点を有する非球面形状をなすとともに、近軸領域において像側に凹形状をなすものであり、
前記第3レンズ、前記第4レンズ、前記第5レンズのいずれかが、近軸領域においてメニスカス形状をなすものであり、
以下の条件式(Fa)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
−35≦f1/f≦−2.3・・・(Fa)
ただし、
f:レンズ全系の焦点距離
f1:第1レンズの焦点距離
【請求項3】
以下の条件式(Ea)、条件式(Ja)を同時に満足するものであることを特徴とする請求項2記載の撮像レンズ。
1.0≦TL/f≦1.8・・・(Ea)
1.2≦f123/f≦5.0・・・(Ja)
ただし、
TL:光学全長
f:レンズ全系の焦点距離
f123:第1レンズと第2レンズと第3レンズの合成焦点距離
【請求項4】
前記第2レンズと前記第3レンズとの間に絞りが配置されたものであることを特徴とする請求項2または3記載の撮像レンズ。
【請求項5】
前記第5レンズの像側面が、1つ以上の変曲点を有する非球面形状をなすとともに、近軸領域において像側に凹形状をなすものであり、
以下の条件式(Ea)を満足するものであることを特徴とする1記載の撮像レンズ。
1.0≦TL/f≦1.8・・・(Ea)
ただし、
TL:光学全長
f:レンズ全系の焦点距離
【請求項6】
前記第5レンズの像側面が、1つ以上の変曲点を有する非球面形状をなすとともに、近軸領域において像側に凹形状をなすものであり、
前記第3レンズおよび前記第4レンズが、近軸領域においてメニスカス形状をなすものであることを特徴とする1記載の撮像レンズ。
【請求項7】
以下の条件式(Ba)、条件式(Ca)、条件式(Da)を同時に満足するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の撮像レンズ。
18<ν1<65・・・(Ba)
50<ν2<80・・・(Ca)
20<ν3<35・・・(Da)
ただし、
ν1:第1レンズのアッベ数
ν2:第2レンズのアッベ数
ν3:第3レンズのアッベ数
【請求項8】
前記第5レンズの像側面が、前記極点を1つのみ有するものであることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項記載の撮像レンズ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の撮像レンズと、前記撮像レンズによって形成された光学像を撮像して得た撮像信号を出力する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−211935(P2012−211935A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76177(P2011−76177)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】