説明

撮像レンズ

【課題】諸収差が良好に補正された高解像度・高品位の画像が得られ、小型で低コストの固体撮像素子用撮像レンズを提供する。
【解決手段】物体側から像面側に向かって順に、開口絞りと、物体側と像面側に凸面を向けた両凸形状の第1レンズと、光軸近傍で物体側に凸面を向けた負の屈折力を有する第2レンズと、光軸近傍で物体側と像面側に凸面を向けた両凸形状の第3レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けた正の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍で物体側に凸面を向けた負の屈折力を有する第5レンズを配置し、第1レンズの焦点距離をf1、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに、以下の条件式(1)を満足するよう構成した。
0.50<f1/f<0.76 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機や携帯ゲーム機等の携帯端末、PDA(Personal Digital Assistants)等の小型で薄型の電子機器に用いられる小型撮像装置に使用される固体撮像素子用撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置を備えた携帯端末の市場の拡大に伴い、この撮像装置には高画素数で小型の固体撮像素子が搭載されるようになった。
【0003】
このような撮像素子の小型化・高画素化に対応し、撮像レンズについても解像度と画像品位の面でより高い性能が求められ、且つその普及とともに、低コスト化も要求されている。
【0004】
高性能化への要求に応えるため、複数枚のレンズで構成された撮像レンズが一般化しており、3枚〜4枚のレンズ構成に比べ、より高性能化が可能な5枚のレンズ構成の撮像レンズも提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、物体側から順に、物体側の面が凸形状の正の屈折力を有する第1レンズと、像面側に凹面を向けた負の屈折力を有するメニスカス形状の第2レンズと、像面側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカス形状の第3レンズと、両面が非球面形状で光軸近傍において像面側の面が凹形状の負の屈折力を有する第4レンズと、両面が非球面形状の正または負の屈折力を有する第5レンズとの構成をとり、高性能化を目指した撮像レンズが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、物体側より順に、開口絞りと、正の屈折力を有する第1レンズと、第1レンズと接合された負の屈折力を有する第2レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第3レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の第4レンズと、少なくとも1面が非球面とされた物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第5レンズとを配置することで、高性能化をめざした撮像レンズが開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、像側の面が凸形状で正の屈折力を有する第3レンズと、光軸近傍において正の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍において負の屈折力を有する第5レンズとからなり、第5レンズの像側の面は、光軸近傍において凹形状であり、周辺に向かうに従い負の屈折力が光軸近傍に比べて弱くなる領域を有するよう構成することで、高性能化を目指した撮像レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−264180号公報
【特許文献2】特開2007−298572号公報
【特許文献3】特開2010−262269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1乃至特許文献3記載の撮像レンズは、5枚レンズの構成にすることによって高性能化を目指しているが、レンズ系の全長が長いため、撮像レンズの小型化と良好な収差補正との両立を図ることは困難である。また、ガラス材料を使用しているため低コスト化の実現にも課題が残る。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑み、小型且つ高性能で、低コスト化にも対応可能な固体撮像素子用撮像レンズを得ること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明による固体撮像素子用の撮像レンズは、物体側から像面側に向かって順に、開口絞りと、物体側と像面側に凸面を向けた両凸形状の第1レンズと、光軸近傍で物体側に凸面を向けた負の屈折力を有する第2レンズと、光軸近傍で物体側と像面側に凸面を向けた両凸形状の第3レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けた正の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍で物体側に凸面を向けた負の屈折力を有する第5レンズを配置し、第1レンズの焦点距離をf1、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに、以下の条件式(1)を満足するよう構成した。
0.50<f1/f<0.76 (1)
【0012】
上記の構成において、第1レンズ及び第2レンズは必要なパワーの発生と色収差の補正を大局的に実施し、第3〜第5レンズは、主としてコマ収差、非点収差及び像面湾曲の補正を実施している。第2レンズの形状を光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状にすることによって、球面収差を良好に補正している。また、第3レンズを光軸近傍で物体側と像面側に凸面を向けた弱いパワーの両凸形状として全系のパワーに対する影響を抑えながら、軸外の収差(特にコマ収差および像面湾曲)を良好に補正している。また、開口絞りを第1レンズの物体側に配置することにより、CRA(Chief Ray Angle)の制御を容易にしている。即ち、テレセントリック性が要求される撮像素子に対して光線入射角度の制御を容易にするとともに、光量が低下する周辺部分の光量確保を実現している。また、それぞれのレンズ形状、及びそれぞれのレンズの屈折力を最適にバランスさせることによって、小型で高性能な撮像レンズを実現している。
【0013】
条件式(1)は第1レンズの焦点距離をレンズ全系の焦点距離に対して規定するものである。第1レンズの焦点距離を条件式(1)の範囲内に規定することによって、光学全長の短縮を図りながら、球面収差やコマ収差を良好に補正することが出来る。
【0014】
条件式(1)の上限値「0.76」を超えると、第1レンズのパワーが弱くなり過ぎ、光学全長が長くなるため小型化が困難になる。一方、下限値「0.50」を下回ると、第1レンズのパワーが強くなり過ぎ、小型化には有利になるが、球面収差やコマ収差の補正が困難になる。
【0015】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第3レンズは両面が非球面で形成され、物体側の面の曲率半径をr5、像側の面の曲率半径をr6としたときに、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
−0.80<(r5+r6)/(r5−r6)<0.55 (2)
【0016】
上記条件式(2)は、第3レンズの物体側、及び像側の面の曲率半径の関係を規定するものである。物体側の面の曲率半径に比較して、像側の面の曲率半径を大きく、又は反対に像側の面の曲率半径に比較して物体側の面の曲率半径を大きくすることで第3レンズに弱い正のパワーを持たせ、小型化を図りながら、収差を良好に補正することができる。また、第3レンズは両面を非球面で形成し、光軸近傍よりも外側はサグ量の変化が少ない非球面にすることが望ましい。そうすることによって、第3レンズの光軸方向に占める体積が減少し、小型化が可能になる。
【0017】
条件式(2)の上限値「0.55」を超えたり、下限値「−0.80」を下回ると、周辺部におけるコマ収差や像面湾曲の補正が困難になるとともに、非点隔差が増大するため、好ましくない。さらに、条件式(2)の範囲を外れると、第3レンズの製造誤差に対する感度が上昇するため好ましくない。
【0018】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第5レンズの物体側の面の曲率半径をr9、像側の面の曲率半径をr10としたときに、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
8.5<r9/r10<85.0 (3)
【0019】
条件式(3)は第5レンズの物体側、及び像側の面の曲率半径の関係を規定するものであり、球面収差補正を図りながら、光学全長短縮を行うための条件である。条件式(3)の上限値「85.0」を超えると、第5レンズの負のパワーが強くなり過ぎ、小型化に不利になる。一方、下限値「8.5」を下回ると、第5レンズの負のパワーが弱くなり過ぎ、球面収差の補正が困難になる。
【0020】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第1レンズと第2レンズとの合成焦点距離をf12、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
1.20<f12/f<1.95 (4)
【0021】
条件式(4)は撮像レンズの光学全長を短く維持しながら、像面湾曲補正や球面収差補正を良好に保つための条件である。条件式(4)の上限値「1.95」と超えると、第1レンズと第2レンズとの合成のパワーが弱くなるため光学全長が長くなり過ぎ、小型化が困難になる。一方、下限値「1.20」を下回ると、第1レンズと第2レンズとの合成のパワーが強くなり過ぎ、小型化には有利になるが、像面湾曲や球面収差を良好に保つことが困難になる。
【0022】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第3レンズと第4レンズと第5レンズとの合成焦点距離をf345、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
1.50<f345/f<9.00 (5)
【0023】
上記条件式(5)は、レンズ全系の焦点距離に対して第3レンズ乃至第5レンズの合成焦点距離を規定するものであり、コマ収差補正、及び像面湾曲補正を良好に行う為の条件である。条件式(5)の上限値「9.00」を超えるとコマ収差が増大し、撮像面の周辺部に良好な像を結像させることが困難になる。一方、下限値「1.50」を下回ると像面湾曲が増大するため、この場合も撮像面の周辺部に良好な像を結像させることが困難になる。
【0024】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第1レンズの焦点距離をf1、第3レンズの焦点距離をf3、第4レンズの焦点距離をf4としたときに以下の条件式(6)、(7)を同時に満足することが望ましい。
2.10<f3/f1<8.50 (6)
0.65<f4/f1<1.40 (7)
【0025】
条件式(6)、(7)は第1レンズに対する第3レンズと第4レンズのパワーを規定するものである。本発明の撮像レンズは第3レンズの正のパワーを第1レンズの正のパワーに比較して弱く設定することで第3レンズに像面湾曲の補正効果を持たせている。そして同時に、第4レンズの正のパワーを第1レンズの正のパワーに比較してほぼ同程度に設定することによって、光学全長を抑えながら、第1レンズと第4レンズの製造公差に対する感度上昇を抑えている。
【0026】
条件式(6)の上限値「8.50」、及び条件式(7)の上限値「1.40」を超えると、撮像レンズ全系に占める正のパワーが弱くなり過ぎ、像面湾曲補正や球面収差補正には有利になるものの、小型化が困難になる。一方、条件式(6)の下限値「2.10」、及び条件式(7)の下限値「0.65」を下回ると、小型化には有利になるが、像面湾曲や非点収差の補正が困難になるため好ましくない。このように、3枚の正レンズのパワー配分を、条件式(6)、(7)の範囲にすることによって、小型化と収差補正、さらには製造公差に対する感度上昇を抑制する効果を得ることができる。
【0027】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第2レンズの物体側の面の曲率半径をr3、像側の面の曲率半径をr4、焦点距離をf2、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに、以下の条件式(8)、(9)を同時に満足することが望ましい。
3.10<r3/r4<6.80 (8)
−1.40<f2/f<−0.70 (9)
【0028】
条件式(8)は第2レンズの物体側、及び像側の面の中心曲率半径の関係を規定するものであり、小型化と非点収差を良好に補正するための条件である。条件式(8)の上限値「6.80」を超えると、第2レンズの像側の面の曲率半径が物体側の面の曲率半径に対して相対的に小さくなり、きつい曲率となるため、第3レンズとの間隔が長くなり小型化が困難になる。一方下限値「3.10」を下回ると第2レンズの物体側の面のパワーが像側の面のパワーに対して相対的に強くなり過ぎ、非点収差の補正が困難になるため好ましくない。また、条件式(9)はレンズ全系のパワーに対する第2レンズのパワーを規定し、色収差補正を良好に行う為の条件である。条件式(9)の上限値「−0.70」を超えると、第2レンズの負のパワーが強くなりすぎ、小型化に不利になる。一方、下限値「−1.40」を下回ると、第2レンズの負のパワーが弱くなりすぎて、軸上色収差の補正が不十分となる。
【0029】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、開口絞りの直径をEPD、レンズ全系の焦点距離をfとしたときに、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
2.0≦f/EPD≦2.8 (10)
【0030】
上記条件式(10)は、撮像レンズの小型化を図りつつ、Fナンバーを小さくするための条件である。上限値の「2.8」を超えると、レンズ系全体の焦点距離に対して開口径が小さくなるため、小型化には有利になるが、撮像素子に対する明るさが不十分となる。一方、下限値「2.0」を下回ると、レンズ全系の焦点距離に対して開口径が大きくなるため、Fナンバーが小さくなり明るい撮像レンズを構成することができるものの、小型化が困難になる。
【0031】
また、上記構成の撮像レンズにおいては以下の条件式(10a)を満足することがさらに望ましい。
2.0≦f/EPD≦2.6 (10a)
【0032】
なお、上述した条件式を全て満足する必要はなく、それぞれ単独、または組み合わせによっても効果を得ることができる。
【0033】
また、全てのレンズはプラスチック材料で構成することが望ましい。全てのレンズをプラスチック材料で構成することによって、安定した非球面形状を形成したレンズの大量生産が可能となり、低コスト化が望める。また、本発明では、主な色収差補正を第2レンズで実施しており、第2レンズには例えば、ポリカーボネートのようなアッべ数の小さな高分散の材料を採用し、その他の第1レンズ、第3レンズ、第4レンズ、第5レンズは例えば、すべて同一のシクレオレフィンポリマー系のプラスチック材料を採用している。撮像レンズを構成するプラスチックレンズに、出来る限り同一のプラスチック材料を採用することで、製造工程が容易になる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の撮像レンズによれば、撮像レンズの小型化と良好な収差補正との両立が図られ、各種の収差が良好に補正された小型の撮像レンズを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1を示す撮像レンズの断面図である。
【図2】同上、諸収差図である。
【図3】本発明の実施例2を示す撮像レンズの断面図である。
【図4】同上、諸収差図である。
【図5】本発明の実施例3を示す撮像レンズの断面図である。
【図6】同上、諸収差図である。
【図7】本発明の実施例4を示す撮像レンズの断面図である。
【図8】同上、諸収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
図1、図3、図5、図7、はそれぞれ、本発明の実施形態の実施例1、2、3、4に対応するレンズ断面図を示したものである。いずれの実施例も基本的なレンズ構成は同一であるため、ここでは実施例1のレンズ断面図を参照しながら、本実施の形態に係る撮像レンズのレンズ構成について説明する。
【0038】
図1に示すように、本発明の撮像レンズは、物体側から像面側に向かって順に、開口絞りS、第1レンズL1と、第2レンズL2と、第3レンズL3と、第4レンズL4と、第5レンズL5とが配列されて構成されている。第5レンズL5と像面との間には、カバーガラスIRが配置されている。なお、このカバーガラスは、省略することも可能である。また、本実施形態では開口絞りSは第1レンズL1の物体側の面r1の頂点と第1レンズL1の物体側の面r1の有効径終端部との間に配置しているが、開口絞りSの位置はこの位置に限定するものではない。第1レンズL1の物体側の面r1の頂点よりも物体側から第1レンズL1の物体側の面r1の終端部までの間であれば良い。
【0039】
上記構成の撮像レンズにおいて、第1レンズL1は物体側と像側に凸面を向けた両凸形状のレンズであり、第2レンズL2は光軸近傍で物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカス形状のレンズである。第3レンズL3は光軸近傍で物体側と像側に凸面を向けた両凸形状のレンズであり、第4レンズL4は光軸近傍で物体側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカス形状のレンズであり、第5レンズL5は光軸近傍で物体側に緩い凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカス形状のレンズで構成している。
【0040】
本発明による各レンズの形状は、撮像レンズの小型化に向けて最適な形状を選定しているが、特に第3レンズL3は小型化へ大きく寄与している。第3レンズL3は両面が非球面で形成され、両面ともに光軸近傍から周辺に至るまでサグ量の変化が少ない非球面である。従って、第3レンズL3が光軸方向に占める体積は小さなものとなり、第3レンズL3の物体側に位置する第2レンズL2と像側に位置する第4レンズL4との空気間隔も狭く設定できるから、撮像レンズ全体の小型化が実現されている。
【0041】
第5レンズL5は光軸近傍では物体側に緩い凸面を向けたメニスカス形状だが、物体側の面r9は光軸近傍から離れるに従って、周辺部は大きく物体側に曲がる非球面である。このような形状にすることによって、第5レンズL5と第4レンズL4との距離を短く設定することが出来るから、更なる小型化を実現している。
本実施の形態に係る撮像レンズは、以下に示す条件式(1)〜(10)を満足するように構成されている。
0.50<f1/f<0.76 (1)
−0.80<(r5+r6)/(r5−r6)<0.55 (2)
15.0<r9/r10<85.0 (3)
1.20<f12/f<1.95 (4)
1.50<f345/f<9.00 (5)
2.10<f3/f1<8.50 (6)
0.65<f4/f1<1.40 (7)
3.10<r3/r4<6.80 (8)
−1.40<f2/f<−0.70 (9)
2.0≦f/EPD≦2.8 (10)
但し、
f:レンズ系全体の焦点距離
f1:第1レンズL1の焦点距離
f2:第2レンズL2の焦点距離
f3:第3レンズL3の焦点距離
f4:第4レンズL4の焦点距離
f12:第1レンズL1と第2レンズL2の合成焦点距離
f345:第3レンズL3と第4レンズL4と第5レンズL5の合成焦点距離
r3:第2レンズL2の物体側の面の曲率半径
r4:第2レンズL2の像側の面の曲率半径
r5:第3レンズL3の物体側の面の曲率半径
r6:第3レンズL3の像側の面の曲率半径
r9:第5レンズL5の物体側の面の曲率半径
r10:第5レンズL5の像側の面の曲率半径
EPD:開口絞りの直径
【0042】
また、本実施の形態では、全てのレンズ面を非球面で形成している。これらレンズ面に採用する非球面形状は、光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、円錐係数をk、非球面係数をA、A、A、A10、A12、A14としたとき、次式により表される。
【0043】
【数1】

【0044】
次に、本実施の形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fはレンズ系全体の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角をそれぞれ示す。また、iは物体側より数えた面番号を示し、Rは曲率半径を示し、dは光軸に沿ったレンズ面間の距離(面間隔)を示し、Ndはd線に対する屈折率を、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面の面には、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示すこととする。
【実施例1】
【0045】
実施例1の撮像レンズについて、基本的なレンズデータを表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1における各条件式の値を以下に示す。
f1/f=0.56
(r5+r6)/(r5−r6)=−0.71
r9/r10=8.61
f12/f=1.33
f345/f=3.40
f3/f1=5.03
f4/f1=1.21
r3/r4=4.34
f2/f=−0.73
f/EPD=2.40
このように、本実施例1による撮像レンズは条件式(1)〜(10)を満たしている。
【0048】
図2は実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(像面湾曲)(mm)、および歪曲収差(%)をそれぞれ示したものである。これら収差図には、587.56nm、656.27nm、486.13nmの各波長に対する収差量を示す。非点収差図には、サジタル像面Sにおける収差量とタンジェンシャル像面Tにおける収差量とをそれぞれ示す(図4、図6、図8において同じ)。
【0049】
図2に示されるように、実施例1に係る撮像レンズによれば、各種の収差が良好に補正される。しかも、第1レンズL1の物体側の面から像面までの空気換算距離をTLとすればTL=5.49mmと短くなっている。また、撮像領域の最大像高をhとすれば、TL/2h=0.95となり、撮像レンズの小型化も好適に図られている。
【実施例2】
【0050】
実施例2の撮像レンズについて、基本的なレンズデータを表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例2における各条件式の値を以下に示す。
f1/f=0.613
(r5+r6)/(r5−r6)=0.53
r9/r10=45.732
f12/f=1.25
f345/f=8.64
f3/f1=8.33
f4/f1=1.37
r3/r4=6.75
f2/f=−0.90
f/EPD=2.80
このように、本実施例2による撮像レンズは条件式(1)〜(10)を満たしている。
【0053】
図4は実施例2の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(像面湾曲)(mm)、および歪曲収差(%)をそれぞれ示したものである。図4に示されるように、実施例2に係る撮像レンズによれば、各種の収差が良好に補正される。しかも、第1レンズL1の物体側の面から像面までの空気換算距離をTLとすればTL=5.31mmと短くなっている。また、撮像領域の最大像高をhとすれば、TL/2h=0.92となり、撮像レンズの小型化も好適に図られている。
【実施例3】
【0054】
実施例3の撮像レンズについて、基本的なレンズデータを表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
実施例3における各条件式の値を以下に示す。
f1/f=0.708
(r5+r6)/(r5−r6)=−0.78
r9/r10=21.739
f12/f=1.47
f345/f=4.14
f3/f1=5.76
f4/f1=1.11
r3/r4=5.03
f2/f=−1.06
f/EPD=2.55
このように、本実施例3による撮像レンズは条件式(1)〜(10)を満たしている。
【0057】
図6は実施例3の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(像面湾曲)(mm)、および歪曲収差(%)をそれぞれ示したものである。図6に示されるように、実施例3に係る撮像レンズによれば、各種の収差が良好に補正される。しかも、第1レンズL1の物体側の面から像面までの空気換算距離をTLとすればTL=4.096mmと短くなっている。また、撮像領域の最大像高をhとすれば、TL/2h=0.71となり、撮像レンズの小型化も好適に図られている。
【実施例4】
【0058】
実施例4の撮像レンズについて、基本的なレンズデータを表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
実施例4における各条件式の値を以下に示す。
f1/f=0.743
(r5+r6)/(r5−r6)=−0.75
r9/r10=83.359
f12/f=1.91
f345/f=1.85
f3/f1=2.93
f4/f1=0.89
r3/r4=3.25
f2/f=−0.93
f/EPD=2.00
このように、本実施例4による撮像レンズは条件式(1)〜(10)を満たしている。
【0061】
図8は実施例4の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(像面湾曲)(mm)、および歪曲収差(%)をそれぞれ示したものである。図8に示されるように、実施例4に係る撮像レンズによれば、各種の収差が良好に補正される。しかも、第1レンズL1の物体側の面から像面までの空気換算距離をTLとすればTL=4.78mmと短くなっている。また、撮像領域の最大像高をhとすれば、TL/2h=0.83となり、撮像レンズの小型化も好適に図られている。
【0062】
したがって、本実施の形態に係る撮像レンズを、携帯電話機、デジタルスティルカメラ、携帯情報端末、セキュリティカメラ、車載カメラ、ネットワークカメラ等の撮像光学系に適用した場合、当該カメラ等の高機能化と小型化の両立を図ることができる。
【符号の説明】
【0063】
S 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
IR カバーガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像素子用の撮像レンズであって、物体側から像面側に向かって順に、開口絞りと、物体側と像面側に凸面を向けた両凸形状の第1レンズと、光軸近傍で物体側に凸面を向けた負の屈折力を有する第2レンズと、光軸近傍で物体側と像面側に凸面を向けた両凸形状の第3レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けた正の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍で物体側に凸面を向けた負の屈折力を有する第5レンズを配置し、第1レンズの焦点距離をf1、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
0.50<f1/f<0.76 (1)
【請求項2】
前記第3レンズの物体側の面の曲率半径をr5、像側の面の曲率半径をr6としたときに、以下の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
−0.80<(r5+r6)/(r5−r6)<0.55 (2)
【請求項3】
前記第5レンズの物体側の面の曲率半径をr9、像側の面の曲率半径をr10としたときに、以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
8.5<r9/r10<85.0 (3)
【請求項4】
前記第1レンズと前記第2レンズとの合成焦点距離をf12、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
1.20<f12/f<1.95 (4)
【請求項5】
前記第3レンズと前記第4レンズと前記第5レンズの合成焦点距離をf345、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項4記載の撮像レンズ。
1.50<f345/f<9.00 (5)
【請求項6】
前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第3レンズの焦点距離をf3、第4レンズの焦点距離をf4としたときに以下の条件式(6)、(7)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
2.10<f3/f1<8.50 (6)
0.65<f4/f1<1.40 (7)
【請求項7】
前記第2レンズの物体側の面の曲率半径をr3、像側の面の曲率半径をr4、焦点距離をf2、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに、以下の条件式(8)、(9)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
3.10<r3/r4<6.80 (8)
−1.40<f2/f<0.70 (9)
【請求項8】
前記開口絞りの直径をEPD、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに以下の条件式(10)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ。
2.0≦f/EPD≦2.8 (10)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−208326(P2012−208326A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74109(P2011−74109)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(391014055)カンタツ株式会社 (84)
【Fターム(参考)】