撮像装置、その画素出力レベル補正方法、赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステム
【課題】補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる撮像装置及びその画素出力レベル補正方法の提供。
【解決手段】本発明は、受光面11上で像位置を移動させる像シフト手段22を備え、像位置の移動の前後に受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部131と、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部132と、画素列の画素のオフセット量に基づいて、画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部133とを有する。
【解決手段】本発明は、受光面11上で像位置を移動させる像シフト手段22を備え、像位置の移動の前後に受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部131と、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部132と、画素列の画素のオフセット量に基づいて、画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部133とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、その画素出力レベル補正方法、赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステムに関し、より詳細には、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる撮像装置、その画素出力レベル補正方法、赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像装置の例が下記の特許文献1〜3に記載されている。これら特許文献1〜3に記載の赤外線撮像装置では、補正用シャッターを閉じることによって基準画像を得て、この基準画像から個々の画素の出力レベルのシフト量を求め、画素間の出力レベルのばらつきを補正していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−310804号公報
【特許文献2】特開2008−111754号公報
【特許文献3】特開2008−203054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら従来の撮像装置ではいずれも、頻繁に補正用シャッターを閉じる必要がある。撮像装置は、補正用シャッターを閉じている間、被写体を撮像することができない。このため、これらの従来の撮像装置を防犯カメラ等の監視カメラとして使用した場合、たとえ短時間であっても補正用シャッターを閉じている間に発生した事象を監視することができないという問題が生じる。また、従来の撮像装置は、補正用シャッターを閉じている間、新たに撮像した動画フレームを出力することができないため、動画が途切れてしまうことになる。
【0005】
そこで、本発明は、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる撮像装置、その画素出力レベル補正方法、赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明の撮像装置によれば、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、前記画像処理手段は、像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、を有する、ことを特徴としている。
【0007】
本発明の撮像装置では、受光面に対して像位置を移動させる。そして、像位置の移動前に像の或る部分を受光した第1画素の出力レベルと、移動後にその同一部分を受光した第2画素の出力レベルとの差分Δ1を算出する。ここで重要なことは、この差分Δ1は、均一な輝度(又は温度)の補正用シャッターを閉じてこれを撮像した場合の第1画素と第2画素の出力レベルの差分と等価であるということである。したがって、本発明では、補正用シャッターを閉じることなく、第1画素と第2画素の出力レベルの差分Δ1を取得することができる。
【0008】
また、像の同一部分を受光する画素どうしの出力レベルの差分として、像の移動方向に沿った画素列について、第1画素と第2画素の出力レベルの差分Δ1と同様に、それぞれ像の同一部分を受光した、第2画素と第3画素との出力レベルの差分Δ2、第3画素と第4画素との出力レベルの差分Δ3、・・・第n画素と第(n+1)画素との出力レベルの差分Δnも算出される。なお、「n」は正の整数である。
【0009】
さらに、画素の差分Δ1、Δ2、Δ3、・・・Δnを像位置の移動方向に沿って順次に積算することによって、その画素列の画素の出力レベルのシフト量が算出される。すなわち、第1画素のシフト量を例えば0とすれば、第2画素のシフト量はΔ1、第3画素シフト量は(Δ1+Δ2)、同様に、第n+1画素のシフト量は(Δ1+Δ2+Δ3+・・・+Δn)と算出される。このように、本発明では、補正用シャッターを閉じることなく、個々の画素の出力レベルのシフト量を算出することができる。したがって、本発明では、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、前記像シフト手段は、画素の配列方向に、前記受光面の画素間隔のN倍(Nは正の整数)の距離だけ像位置を移動させ、前記差分算出部は、像位置の移動方向に配列された画素列のN画素ずれた位置との差分をそれぞれ1画素ごとに算出し、前記オフセット量算出部は、前記画素列の第1画素から第N画素の各画素を起点として、それぞれN画素ごとの差分を順次に積算し、前記画素列の画素ごとの出力レベルのオフセット量を算出する。
【0011】
N=1として、1画素間隔(画素ピッチ)だけ像位置を移動させた場合、像位置の移動方向沿った画素列において、隣接した画素どうしの差分が算出される。そして、隣接した画素の差分を順次に積算して、画素列の各画素の出力レベルのオフセット量が算出される。また、N=2として、2画素ピッチだけ像位置を移動させた場合は、像位置の移動方向に沿った画素列において、一つおきの画素どうしの差分が算出される。そして、一つおきに画素の差分を順次に積算して、画素列の一つおきの画素の出力レベルのオフセット量が算出される。この場合、画素列の偶数番目の画素群の出力レベルのオフセット量と、画素列の奇数番目の画素群の出力レベルのオフセット量とをそれぞれ算出するとよい。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記画像処理手段は、前記撮像装置のシェーディングの影響を相殺するように、前記受光面の画素の位置に応じて、画素ごとの出力レベルを補正する。
【0013】
シェーディングとは、赤外線用の撮像装置において、被写体とは関係なく撮像装置内の内面放射及び迷光に起因して、受光面の撮像素子が受光する赤外線量が、環境温度が高い場合、受光面の中心部から周辺部へ行くに従って増加し、環境温度が低い場合、受光面の中心部から周辺部へ行くに従って減少する現象をいう。像移動の前後に像の同一部分を受光した2つの画素のうち、一方が光学系の光軸付近に配置され、他方が光学系の光軸から離れた周辺部に配置されていた場合、これら2つの画素の受光強度は、シェーディングの影響により等しくない。このため、これら2つの画素それぞれの出力レベルも、シェーディングの影響を含むもとなる。その結果、これら2つの画素の出力レベルの差分もシェーディングの影響を含むもとなる。そこで、シェーディング特性を相殺するように、画素毎の出力レベルを補正することにより、画素どうしの出力レベルのより正確な差分が得られる。その結果、シェーディング特性の影響を排除して、画素出力レベルのばらつきをより均一化する補正の実現を図ることができる。なお、このシェーディングはバックグランドとも呼ばれる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記像シフト手段は、像位置の移動の後、再び像位置の移動前の位置へ像位置を戻し、前記撮像手段は、像位置を戻した後に、再度受光面上の像を撮像し、前記画像処理手段は、同一画素について、像位置の移動前と像位置を戻した後との出力レベルの変動量を算出し、前記オフセット量算出部は、所定の基準値以上の変動量を有する画素の差分を除外してオフセット量を算出する。
【0015】
被写体が動いた場合、算出された画素の出力レベルの差分は、画素自体の出力特性のばらつきに基づく出力レベルの差を正確には反映しないことがある。したがって、被写体の動いた部分に対応する像部分を受光した画素の差分は、オフセット量の算出から除外されることが望ましい。そこで、像位置の移動前と像位置を戻した後との出力レベルの変動量が大きい像部分を、被写体が動いた部分として除外する。これにより、オフセット量が不正確になることの防止を図ることができる。
なお、オフセット量の算出から除外された画素に対しては、前回有効であった差分値を適用して積算を行いオフセット量を算出してもよい。あるいは、積算によってオフセット量を算出する代わりに、前回有効であったオフセット量を置き換えてもよい。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記撮像手段は、画素が2次元のマトリクス状に配列された受光面を有し、前記像シフト手段は、前記受光面の画素の第1の配列方向と、前記第1の配列方向に直交する第2の配列方向にそれぞれ像位置を移動させ、前記差分算出部は、前記第1の配列方向への像位置の移動の前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を第1の差分として算出し、かつ、前記第2の配列方向への像位置の移動の前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を第2の差分として算出し、前記オフセット量算出部は、前記第1の配列方向に配列された第1の画素列について、出力レベルの第1の差分を順次に積算して、前記第1の画素列の画素の第1のオフセット量を算出し、かつ、前記第2の配列方向に配列された第2の画素列について、出力レベルの第2の差分を順次に積算して、前記第2の画素列の画素の第2のオフセット量を算出し、前記補正部は、前記第1及び第2のオフセット量に基づいて、画素の出力レベルを補正する。
【0017】
このように、第1及び第2の配列方向についてそれぞれ算出された第1及び第2のオフセット量に基づいて、画素の出力レベルを補正するので、より正確な補正の実現を図ることができる。
また、前記、オフセット量の算出から除外された画素に対しては、第1あるいは第2の配列方向の何れか有効な方向のみの積算によってオフセット量を算出することもできる。
【0018】
なお、第1及び第2の配列方向にそれぞれ像位置を移動するにあたっては、移動前の像位置から移動後の像位置へ移動経路は問わない。例えば、移動前の位置から、一旦、第三の位置へ移動し、次いで、移動後の位置へ移動するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明において好ましくは、前記像シフト手段は、前記受光面上の像の任意の点の軌跡が前記受光面上で円軌道を描くように、前記像位置を並進移動させ、前記撮像手段は、前記像の任意の点が前記円軌道上の所定部分を移動する前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、前記差分算出部は、前記像の任意の点が前記円軌道上の所定部分を移動する前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出し、前記オフセット量算出部は、前記像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしを結ぶ直線方向を像位置の移動方向として、オフセット量を算出する。
【0020】
このように、軌跡が円軌道を描くように像位置を移動させることによって、像位置を連続的に移動させることができる。その結果、像位置の位置精度の位置が容易となる。
【0021】
また、本発明において好ましくは、前記像シフト手段は、前記受光面上の像の任意の点が継続的に等速円運動を行うように、前記像位置を移動させる。
【0022】
このように、継続的に等速直線運動を行うように像位置を移動させることによって、像位置を安定的に移動させることができる。また、像位置の円運動の1周期ごとに、容易に補正を行うことができる。
【0023】
また、本発明において好ましくは、前記撮像手段及び前記画像処理手段は撮像装置本体を構成し、前記光学系及び前記像シフト手段は、前記撮像装置本体から着脱自在なレンズユニットを構成し、前記撮像装置本体は、前記受光面の画素間隔を含むデータを前記レンズユニットへ出力し、前記像シフト手段は、前記データに基づいて像位置を移動させる。
【0024】
受光面の画素間隔は、通常、撮像装置本体の種類によって異なる。交換レンズのようなレンズユニットに組み込まれた像シフト手段は、撮像装置本体から送られてきた画素間隔を含むデータに基づいて、像位置の移動量を撮像装置本体の受光面の画素間隔に適合させることができる。
【0025】
また、本発明において好ましくは、前記撮像手段は、受光面上の像を撮像するタイミングに同期した同期信号を出力し、前記像シフト手段は、前記同期信号に基づいて像位置を移動させる。
これにより、像位置の移動と撮像のタイミングを合わせて、正確な補正の実現を図ることができる。
【0026】
また、本発明において好ましくは、前記像シフト手段は、像位置を移動させるタイミングに同期した同期信号を出力し、前記撮像手段は、前記同期信号に基づいて受光面上の像を撮像する。
これにより、像位置の移動と撮像のタイミングを合わせて、正確な補正の実現を図ることができる。
【0027】
また、本発明において好ましくは、前記撮像素子はボロメータあるいはマイクロボロメータである。
撮像素子をボロメータあるいはマイクロボロメータで構成することにより、本発明の撮像装置を、赤外線画像を撮像可能なものとすることができる。
【0028】
また、本発明の撮像装置の画素出力レベル補正方法は、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系とを備えた撮像装置の画素出力レベルの補正方法であって、前記受光面上で像位置を移動させ、像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出し、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出し、オフセット量に基づいて、前記画素列の画素の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する、ことを特徴としている。
【0029】
本発明の撮像装置の画素出力レベル補正方法によれば、本発明の撮像装置について上述したように、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。また、温度補正用シャッターを用いて温度測定ができるように構成した場合においても、温度補正用シャッターを閉じて温度較正を行う頻度を少なくすることができる。
【0030】
また、本発明の赤外線カメラシステムは、赤外線の受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、前記画像処理手段は、像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、を有する、ことを特徴としている。
これにより、補正用シャッターを閉じることなく、赤外線を検出する画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。
【0031】
また、本発明の交換可能なレンズシステムは、撮像装置本体と、前記撮像装置本体に着脱自在なレンズユニットとを備える交換可能なレンズシステムであって、前記撮像装置本体は、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、前記レンズユニットは、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、を備え、前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、前記画像処理手段は、像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、を有する、ことを特徴とする交換可能なレンズシステム。
これにより、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。
【発明の効果】
【0032】
このように、本発明の撮像装置、その画素出力レベル補正方法、赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステムによれば、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態の撮像装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の撮像装置の第1動作例を説明するフローチャートである。
【図3】(a)は、像位置の移動前後の受光面と像との位置関係を示す図であり、(b)は、受光面を示す図である。
【図4】像位置を1画素ピッチ分移動させる前後の画素列上の画素と像の受光部分との関係を示す図である。
【図5】画素列上の画素の出力レベルのシフト量を示す図である。
【図6】像位置を2画素ピッチ分移動させる前後の画素列上の画素と増の受光部分との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態の撮像装置の第3動作例を説明するフローチャートである。
【図8】(a)は、シェーディング特性を含む画像信号を示すグラフであり、(b)は、シェーディング特性を示すグラフであり、(c)は、シェーディング特性を補正した画像信号を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態の撮像装置の第4動作例を説明するフローチャートである。
【図10】像位置の移動前、移動後、及び、像位置を戻した後の画面と像との位置関係を示す図である。
【図11】本発明の実施形態の撮像装置の第5動作例を説明するフローチャートである。
【図12】受光面上の画素の配列と、像位置の移動方向との関係を示す図である。
【図13】カメラ本体10とレンズユニット20との間のデータ伝送の説明図である。
【図14】カメラ本体10とレンズユニット20との間のデータ伝送の説明図である。
【図15】(a)及び(b)は、像を受光面上で等速円運動させた場合の軌跡を示す図である。
【図16】(a)及び(b)は、同期信号と露光時間との関係を示すタイミングチャートである。
【図17】同期信号と像位置との関係を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照して、本発明の撮像装置及びその画素出力レベル補正方法の実施形態を説明する。なお、撮像装置の実施形態は、本発明の赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステムの実施形態も兼ねる。まず、図1のブロック図を参照して、実施形態の撮像装置の構成を説明する。図1に示す撮像装置1は、カメラ本体10と、レンズユニット20とから構成されている。レンズユニット20は、カメラ本体10に着脱自在な交換レンズとすることもできる。
【0035】
カメラ本体10は、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面11を有する撮像手段12と、撮像手段11が撮像した画像を処理する画像処理手段13とを備えている。撮像手段12の受光面は、赤外線を検出するボロメータアレイ又はマイクロボロメータアレイで構成してもよいし、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサのような固体撮像素子アレイで構成してもよい。
【0036】
レンズユニット20は、受光面11に被写体の像を結像させることができる光学系21と、受光面11上で像位置を移動させる像シフト手段22とを備えている。像シフト手段22は、像ぶれ防止機構で構成することができる。図1に示す例では、像シフト手段22は、光学系21を構成する1つのレンズ22aを光学系21の光軸Oに直交する方向に並進移動させることによって、受光面11に対して相対的に像位置を移動させる。
なお、被写体には、撮像視野内の全画像が含まれる。
【0037】
なお、像シフト手段22は、光学系21全体を、光軸Oに直交する方向に並進移動させる構成としてもよいし、受光面11を、光軸Oに直交する平面内で並進移動させる構成としてもよい。
【0038】
カメラ本体10の画像処理手段13は、像シフト手段22による像位置の移動の前後に、受光面11上の像をそれぞれ撮像する。また、画像処理手段13は、像位置の移動の前後に受光面11上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部131と、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部132と、画素列の画素のオフセット量に基づいて、画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部133とを有する。
【0039】
(第1動作例)
図2のフローチャートを参照して、本実施形態の撮像装置1の第1動作例を説明する。
まず、像シフト手段22による像位置の移動前に、撮像手段12が受光面11上の像を撮像する(S201)。ここで、図3(a)の上段に、像移動前の受光面11上の像の例を示す。図3(a)に示す受光面は、2次元のマトリクス状に配列された画素によって構成されている。この受光面11上に結像した像の右側部分に、ハッチングを付して示す。
【0040】
次いで、像移動前に撮像した像の各画素の出力レベルを第1画像メモリに保存する(S202)。第1画像メモリは、カメラ本体10に設けられている。
【0041】
次いで、像シフト手段22は、画素の配列方向に、受光面11の画素間隔(1画素ピッチ)の距離だけ像位置を移動させる(S203)。図3(a)の下段に、像移動後の受光面11上の像の例を示す。図3(a)では、像に対して、光軸Oに直交する受光面11を右方向に1画素ピッチだけ相対的に移動させた様子を示す。この移動は、受光面11に対して、像位置を左方向に1画素ピッチだけ移動させたものに相当する。
【0042】
次いで、像シフト手段22による像位置の移動後に、撮像手段12が受光面11上の像を撮像する(S204)。図3(a)の上段と下段を比較すると、像位置に対して受光面11を1画素ピッチ移動させた結果、像位置の移動の前に、受光面11の画素P5が受光した像の部分と同一部分を、像位置の移動後に、受光面の画素P4が受光する。同様に、受光面11の全面で、像位置の移動前に、各画素がそれぞれ受光した像の部分と同一部分を、像の移動後に、各画素の左隣りの画素がそれぞれ受光する。
【0043】
次いで、撮像した像の各画素の出力レベルを第2画像メモリに保存する。第2画像メモリは、カメラ本体10に設けられている(S205)。
【0044】
次いで、画像処理部13の差分算出部131が、像位置の移動の前後に受光面11上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する。例えば、第1画素メモリに記憶された像移動前の画素P5の出力レベルp5と、第2画素メモリに記憶された像移動後の画素P4の出力レベルp’4との差分Δ(p’4−p5))を算出する(S206)。
【0045】
この差分Δ(p’4−p5)は、図3(b)に示すような均一な輝度(又は温度)の補正用シャッターを閉じてこれを撮像した場合の画素P4と画素P5の出力レベルの差分と等価である。したがって、本発明では、補正用シャッターを閉じることなく、第1画素と第2画素の出力レベルの差分Δ(p’4−p5)を取得することができる。
【0046】
さらに、図4を参照して、出力レベルの差分の算出についてより詳細に説明する。図4は、受光面11の一つの画素列Lを模式的に示す。この画素列Lは、左から右へ向かって順次に配列した第1画素〜第(n+1)画素によって構成されている。図4の上段は、画素列Lの各画素が、像位置の移動前に受光した像の部分を模式的に示す。図4の上段に示すように、画素列Lの第1画素は「○」の像部分を受光し、第2画素は「△」の像部分を受光し、第3画素は「□」の像部分を受光し、同様に、第n画素は「◎」の像部分を受光している。
【0047】
また、図4の下段は、像位置を画素列Lの画素の配列方向に沿って図4の矢印Aの方向へ1画素ピッチだけ移動させた後に、画素列Lの各画素が受光した像の部分を示す。図4の下段に示すように、画素列Lの第2画素が「○」の像部分を受光し、第3画素が「△」の像部分を受光し、第4画素が「□」の像部分を受光し、同様に、第n+1画素が「◎」の像部分を受光している。
【0048】
図4から分かるように、像位置の移動前後で、第1及び第2画素が「○」の像部分を受光し、第2及び第3画素が「△」の像部分を受光し、第3及び第4画素が「□」の像部分を受光し、同様に、第n及び第(n+1)画素が「◎」の像部分を受光している。
【0049】
そこで、像位置の移動後の画素の出力レベルから移動前の画素の出力レベルを減算したものを差分とする。具体的には、移動後の第2画素の出力レベルから移動前の第1画素の出力レベルを減算して差分Δ1を算出し、移動後の第3画素の出力レベルから移動前の第2画素の出力レベルを減算して差分Δ2を算出し、移動後の第4画素の出力レベルから移動前の第3画素の出力レベルを減算して差分Δ3を算出し、同様に、移動後の第(n+1)画素の出力レベルから移動前の第n画素の出力レベルを減算して差分Δnを算出する。
【0050】
次いで、画像処理部13のオフセット量算出部132が、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出する(S207)。ここでは、像位置の移動後の画素の出力レベルから移動前の画素の出力レベルを減算したものを差分とする。その場合、像位置の移動方向に沿って配列された画素列について、受光面に対する像位置の移動方向に向かって、差分を順次に積算する。そして、画素列中の個々の画素のシフト量を、積算の最初から当該画素までの差分の合計として算出する。
【0051】
なお、像位置の移動前の出力レベルから移動後の画素の出力レベルを減算したものを差分としてもよい。その場合、像位置の移動方向に沿って配列された画素列について、受光面に対する像位置の移動方向とは逆方向に向かって、差分を順次に積算するとよい。そして、画素列中の個々の画素のシフト量は、積算の最初から当該画素までの差分の合計として算出される。
【0052】
図4に示す例では、画素列Lの各画素について、画素列の左端からその画素までの各画素の差分Δ1、Δ2、Δ3・・・Δnを矢印Aで示す像位置の移動方向に沿って順次に積算して、その画素の出力レベルのシフト量を算出する。すなわち、第1画素のシフト量を0とすれば、第2画素のシフト量はΔ1、第3画素シフト量は(Δ1+Δ2)、同様に、第n+1画素のシフト量は(Δ1+Δ2+Δ3+・・・+Δn)と算出される。ここで、図5に、各画素のシフト量を示す。図5の横軸は画素を表し、縦軸はシフト量を表す。図5では、各画素のシフト量は、第1画素の出力レベルを基準としたシフト量として表されている。
【0053】
なお、画素列の画素ごとに差分を積算したシフト量は、その画素列の差分の積算の始点となった画素の出力レベルに対するシフト量を表すものであって、各画素の絶対的な出力レベルを表すものではない。しかし、画素列の画素間の出力レベルのばらつきは、画素間の相対的な出力レベルのシフト量に起因するものである。したがって、算出された各画素のシフト量が絶対的な出力レベルを表すものでなくても、画素列の画素間の出力レベルを均一化する上で大きな問題とはならない。
【0054】
次いで、画像処理部13の補正部133が、画素列の画素のオフセット量に基づいて、画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、各画素の出力レベルを補正する(S208)。補正にあたっては、図5に示した各画素のシフト量を、そのまま、各画素の出力レベルから減算して、画素間の出力レベルのばらつきを均一化するとよい。この場合、各画素の出力レベルは、第1画素の出力レベルに統一される。また、画素列の各画素のシフト量の平均値を算出し、この平均値と各画素のシフト量との差分を、各画素の出力レベルから減算してもよい。その場合、各画素の出力レベルは、画素列の平均値に統一される。
【0055】
また、補正に当たっては、例えば、受光面11のうちの一部分の領域の画素の出力レベルのばらつきだけを局所的に均一化するように補正してもよい。また、画素出力レベルの最大値が所定値となるように、受光面11の全体の画素の出力レベルを加減してもよい。
なお、補正部133が画素間の出力レベルのばらつきを均一化する方法は、上記方法に限定されず、補正部133は様々な方法を用いることができる。
【0056】
このようにして、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。画素間の出力レベルのばらつきが小さくなることによって、輝度差の小さい被写体の認識や輪郭抽出精度の改善が図られる。
【0057】
(第2動作例)
次に、実施形態の撮像装置の第2動作例について説明する。第2動作例、基本的に図2に示した第1動作例のフローチャートで表される。ただし、第2動作例では、像位置が受光面11の画素の配列方向に2画素ピッチ分だけ移動する。
【0058】
ここで、図6に、受光面11の一つの画素列Lを模式的に示す。この画素列Lは、左から右へ向かって順次に配列した第1画素〜第(n+2)画素によって構成されている。図6の上段は、画素列Lの各画素が、像位置の移動前に受光した像の部分を模式的に示す。図6の上段に示すように、画素列Lの第1画素は「○」の像部分を受光し、第2画素は「△」の像部分を受光し、第3画素は「□」の像部分を受光し、同様に、第n画素は「◎」の像部分を受光している。
【0059】
また、図6の下段は、像位置を画素列Lの画素の配列方向に沿って図6の矢印Aの方向へ2画素ピッチだけ移動させた後に、画素列Lの各画素が受光した像の部分を示す。図6の下段に示すように、画素列Lの第3画素が「○」の像部分を受光し、第4画素が「△」の像部分を受光し、第5画素が「□」の像部分を受光し、同様に、第(n+2)画素が「◎」の像部分を受光している。
【0060】
図6の上段及び下段から分かるように、像位置の移動前後で、第1及び第3画素が「○」の像部分を受光し、第3及び第5画素が「△」の像部分を受光し、第5及び第7画素が「□」の像部分を受光し、同様に、第n及び第(n+2)画素が「◎」の像部分を受光している。
【0061】
そこで、像位置の移動後の画素の出力レベルから移動前の画素の出力レベルを減算したものを差分とする。具体的には、移動後の第3画素の出力レベルから移動前の第1画素の出力レベルを減算して差分Δ1を算出し、移動後の第4画素の出力レベルから移動前の第2画素の出力レベルを減算して差分Δ2を算出し、移動後の第5画素の出力レベルから移動前の第3画素の出力レベルを減算して差分Δ3を算出し、同様に、移動後の第(n+2)画素の出力レベルから移動前の第n画素の出力レベルを減算して差分Δnを算出する。
【0062】
次いで、画像処理部13のオフセット量算出部132が、像位置の移動方向に配列された画素列ついて、出力レベルの差分を第1画素から順次2画素ごとに積算して、画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出し、さらに第2画素から順次2画素ごとに積算して、残った画素の出力レベルのオフセット量を算出する(S207)。ここでは、像位置の移動後の画素の出力レベルから移動前の画素の出力レベルを減算したものを差分とする。その場合、像位置の移動方向に沿って配列された画素列について、受光面に対する像位置の移動方向に向かって、差分を順次に積算する。そして、画素列中の個々の画素のシフト量を、積算の最小から当該画素までの差分の合計として算出する。
【0063】
なお、像位置が画素の配列方向に受光面11の3画素ピッチ以上のN画素ピッチだけ移動した場合も、同様に、N画素分ずれた位置の画素との差分を画素列の第1画素から第N画素の各画素を起点として、それぞれN画素ごとの差分を順次に積算して、個々の画素のオフセット量を算出することができる。
【0064】
次いで、画像処理部13の補正部133が、画素列の画素のオフセット量に基づいて、画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、各画素の出力レベルを補正する。
【0065】
(第3動作例)
次に、図7のフローチャートを参照して、実施形態の撮像装置の第3動作例について説明する。第3動作例は、「シェーディング補正1」(S702)及び「シェーディング補正2」(S707)のステップが追加された他は、図2に示した第1動作例と基本的に同じである。
【0066】
一般に、赤外線用の撮像装置は、シェーディングの影響を受ける。シェーディングとは、赤外線用の撮像装置において、被写体とは関係なく撮像装置内の内面放射及び迷光に起因して、受光面の撮像素子が受光する赤外線量が、環境温度が高い場合、受光面の中心部から周辺部へ行くに従って増加し、環境温度が低い場合、受光面の中心部から周辺部へ行くに従って減少する現象をいう。
【0067】
図8(a)に、シェーディング特性を含む画像信号の出力レベルの例を示す。図8(a)のグラフの横軸は受光面の中央を横断する画素列の画素を表し、縦軸は各画素の出力レベルを表す。したがって、横軸の中央部は受光面の中央部に対応し、横軸の周辺部は受光面の周辺部に対応している。線Iで示すシェーディング特性を含む画像信号の出力レベルは、全体的に、受光面の周辺部の出力レベルが中央部の出力レベルよりも低い傾向を有する。
【0068】
図8(b)に、シェーディング特性の一例を示す。図8(b)中に曲線IIで示すように、実施形態の撮像装置1は、出力レベルが、受光面の中央部を極大とし、受光面の周辺部へ行くに従って減少する特性を有している。このようなシェーディング特性は、予め均一平面熱源を撮像して求めておくとよい。シェーディング特性は、例えば、受光面の中央部の画素の出力レベルに対する周辺部の画素ごとの出力レベルの減少量又は減少率を、不図示のメモリに受光面の画素の位置に応じて記憶しおくとよい。また、シェーディング特性を撮像装置1の温度と対応付けた参照テーブルとしてメモリに記憶しておいてもよい。
【0069】
そして、動作例3では、第1メモリに記憶された像位置の移動前の各画素の出力レベルを、メモリに記憶されていたシェーディング特性を用いて、シェーディングの影響を相殺するようにシェーディング補正する。また、第2メモリに記憶されていた像位置の移動後の各画素の出力レベルを、メモリに記憶されたシェーディング特性を用いて、シェーディングの影響を相殺するようにシェーディング補正する。具体的には、画素の出力レベルに、画素ごとに記憶されていた減少量を加算してもよいし、各画素の出力レベルを、画素ごとに記憶されていた減少率で除算してもよい。
【0070】
図8(c)に、このようにしてシェーディング補正した画像信号の出力レベルの例を示す。線IIIに示すように、シェーディング補正後の画像信号の出力レベルは、図8(a)の曲線Iと比較して、周辺部の出力レベルが上昇し、シェーディング特性の影響が除去されていることが分かる。
【0071】
なお、図7に示すフローチャートでは、第1メモリ及び第2メモリにそれぞれ一旦記憶された出力レベルについてシェーディング補正を行ったが、画素の出力レベルを直接シェーディング補正してからメモリに記憶してもよい。
【0072】
また、シェーディング特性の補正とは別に、撮像装置1の初期の画素間の出力レベルのばらつきの補正のため、光学系21の焦点及びズームをわざと結像しない領域(OverNear, OverInf)に移動した状態としてもよい。この状態では、受光面上の像は、実質的に均一な明るさ又は均一な赤外線強度を有する。そして、この均一な像を撮像することにより、受光面の画素間の出力レベルのばらつきが均一となるように、各画素の出力レベルを補正してもよい。
【0073】
(第4動作例)
次に、図9のフローチャートを参照して、実施形態の撮像装置の第4動作例について説明する。第4動作例は、像位置の移動後に受光面上の像を撮像し(S904)、各画素の出力レベルを第2メモリに記憶する(S905)ステップまでは、上述の第1動作例と同じである。
【0074】
第5動作例では、像シフト手段22は、像位置の移動の後、再び像位置の移動前の位置へ像位置を戻す(S906)。ここで、図10の上段に、像移動前の受光面11上の像を示し、図10の中段に、像移動後の受光面11上の像を示し、図10の下段に、像位置を戻した後の像を示す。図10の上段及び中段に示す図は、図3(a)の上段及び下段に示した図に相当する。
【0075】
次いで、撮像手段12は、像位置が戻された後に、再度受光面上の像を撮像し(S907)、撮像した像の各画素の出力レベルを第3画像メモリに保存する(S908)。第3画像メモリは、カメラ本体10に設けられている。
【0076】
次いで、上述の第1動作例のステップ(S206)と同様に、画像処理部13の差分算出部131が、第1画素メモリに記憶された像移動前の画素の出力レベルと、第2画素メモリに記憶された像移動後の画素の出力レベルとを読み出し、像移動の前後に受光面11上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する(S909)。
【0077】
次いで、画像処理部13は、第1画素メモリに記憶された像移動前の画素の出力レベルと、第3画素メモリに記憶された像位置を戻した後の画素の出力レベルとを読み出し、同一画素どうしで、像位置の移動前と像位置を戻した後との出力レベルの変動量を算出する(S910)。
【0078】
図10の上段と下段の受光面11上の像を比較すると、破線Bで囲んだ部分の像が変化している。このような像の変化は、例えば被写体が動いたことによって生じる。このような部分の画素の出力レベルの差分は、画素自体の出力特性のばらつきに基づく出力レベルの差を正確には反映しない。破線Bで囲んだ部分の画素では、変動量が大きな値を示す。
【0079】
そこで、第4動作例では、オフセット量算出部133は、所定の基準値以上の変動量を有する画素の差分を除外して積算し、オフセット量を算出する(S911)。例えば、画素列の途中の画素の変動量が基準値以上である場合、その画素列のうち、変動量が基準値以上の画素の手前の画素までの差分だけ積算してオフセットを求めるようにするとよい。これにより、オフセット量が不正確になることの防止を図ることができる。
なお、基準値は、撮像装置1の使用環境に応じて任意好適な値を設定することができる。
【0080】
(第5動作例)
次に、図11のフローチャートを参照して、実施形態の撮像装置の第5動作例について説明する。第5動作例は、像位置の移動後に受光面上の像を撮像し(S1104)、各画素の出力レベルを第2メモリに記憶する(S1105)までは、上述の第1動作例と実質的に同じである。
【0081】
ここで、図12を参照して、受光面11上の画素の配列と、像位置の移動方向との関係を説明する。図12に示す受光面11では、画素が、互いに直交するX方向及びY方向の2次元のマトリクス状に配列されている。像位置の移動前に、像の「○」部分は、基準位置の画素P0上に位置している。この時点で、受光面11上の移動前の像が撮像され(S1101)、受光面11を構成する各画素の出力レベルが第1メモリに記憶される(S1102)。
【0082】
次いで、像「○」部分が、基準位置の画素P0上から第1規定位置の画素P1まで、X方向に1画素ピッチだけ移動するように、1回目の像移動を行う(S1103)。その結果、像の「○」部分は、第1規定位置P1上に位置する。
【0083】
次いで、1回目の移動後に、受光面11上の移動後の像が撮像され(S1104)、受光面11を構成する各画素の出力レベルが第2メモリに記憶される(S1105)。
【0084】
次いで、像の「○」部分が、第1規定位置の画素P1上から第2規定位置の画素P2まで、図面左斜め下方向へ、1画素ピッチのルート2倍(√2倍)だけ移動するように、2回目の像移動を行う(S1106)。その結果、像の「○」部分は、第2規定位置P2上に位置する。1回目及び2回目の移動の結果、像の「○」部分は、基準位置の画素P0上から第2規定位置の画素P2まで、Y方向に1画素ピッチだけ移動したことになる。
【0085】
次いで、2回目の移動後に、受光面11上の移動後の像が撮像され(S1107)、受光面11を構成する各画素の出力レベルが第3メモリに記憶される(S1108)。
【0086】
次いで、第1及び第2メモリに記憶された出力レベルが読み出されて、受光面11のX方向に配列した画素列の、1回目の移動の前後で同一部分をそれぞれ受光した隣接する画素どうしで、1回目の移動の前後の出力レベルの差分が第1差分としてそれぞれ算出される(S1109)。なお、第1差分は、受光面11のX方向に配列した各画素列において算出される。
【0087】
次いで、第1及び第3メモリに記憶された出力レベルが読み出されて、受光面11のY方向に配列した画素列の、1回目の移動前と2回目の移動後で同一部分をそれぞれ受光した隣接する画素どうしで、1回目の移動前と2回目尾移動後の出力レベルの差分が第2差分としてそれぞれ算出される(S1110)。なお、第2差分は、受光面11のY方向に配列した各画素列において算出される。
【0088】
次いで、X方向に配列された画素列について、出力レベルの第1差分を順次に積算して、X方向に配列された画素列の各画素の第1オフセット量を算出する(S1111)。なお、第1オフセット量は、受光面11のX方向に配列した各画素列において算出される。
【0089】
次いで、Y方向に配列された画素列について、出力レベルの第2差分を順次に積算して、Y方向に配列された画素列の各画素の第2オフセット量を算出する(S1112)。なお、第2オフセット量は、受光面11のY方向に配列した各画素列において算出される。
【0090】
次いで、第1及び第2オフセット量に基づいて、受光面11の各画素の出力レベルを補正する(S1113)。各画素の出力レベルを補正するに当たっては、任意好適な方法を採用することができる。例えば、各画素について、第1オフセット量と第2オフセット量との平均値を各画素の出力レベルのオフセット量として算出した上で、出力レベルが均一化するように補正してもよい。また、例えば、各画素について、X方向の画素列の出力レベルを均一化した出力レベルと、Y方向の画素列の出力レベルを均一化された出力レベルとの平均値を、各画素の出力レベルの均一化後の出力レベルとしてもよい。
【0091】
このように、X方向及びY方向についてそれぞれ算出された第1及び第2オフセット量に基づいて、画素の出力レベルを補正するので、より正確な補正の実現を図ることができる。
画素位置(m,n)の画素の出力レベルのオフセット量、即ち(積算値m,n)の算出式は次のようになる(m及びnは、それぞれ正の整数を表す)。
(積算値m,n)={(積算値m-1,n)+(第1差分値m,n)+(積算値m,n-1)+(第2差分値m,n)}/2
なお、(第1差分値m,n)が得られなかった場合は、
(積算値m,n)=(積算値m,n-1)+(第2差分値m,n)
とすることができる。
また、(第2差分値m,n)が得られなかった場合は、
(積算値m,n)=(積算値m-1,n)+(第1差分値m,n)
とすることができる。
さらに、(第1差分値m,n)及び(第2差分値m,n)が共に得られなかった場合は、前回算出したオフセット量を採用するようにしてもよい。
【0092】
次に、図13及び図14を参照して、カメラ本体10とレンズユニット20との間のデータ伝送を説明する。
図13及び図14において、カメラ本体10の撮像ブロックが、図1の撮像手段12に相当し、画像処理のブロックが、図1の画像処理手段13に相当する。また、図13及び図14において、レンズユニット20のブレ補正制御系のブロックが、図1の像シフト手段22に相当する。なお、レンズユニット20のレンズ制御系のブロックは、レンズ系の焦点やズームを制御する機能を表す。
【0093】
実施形態の撮像装置1では、像シフト手段22として、ブレ補正制御機構を利用することができる。ただし、通常のブレ補正制御機構では、撮像装置1の動きを相殺するようにブレ補正制御されるのに対し、像シフト手段22は、受光面に対して像位置が所定の方向に所定量だけ移動するように制御される。
【0094】
また、レンズユニット20が、複数種類のカメラ本体に取り付け可能な交換レンズである場合、カメラ本体ごとに画素ピッチなどが異なることがある。このため、カメラ本体10からレンズユニット20に対して、像シフト手段22による像位置の移動量などを指示することが必要となることがある。さらに、像シフト手段22による像位置の像位置の移動前後にそれぞれ受光面上の像を撮像するため、撮像のタイミングと像位置の移動のタイミングを制御する必要もある。
【0095】
そこで、図13及び図14に示す撮像装置1では、カメラ本体10の画像処理ブロック13から、受光面の画素間隔を含むデータを、光学データ変換関数として、レンズユニット20へ出力する。レンズユニット20は、カメラ本体10から入力された光学データ変換関数に基づいて、像シフト手段22の駆動量を決定し、像位置を移動させる。
【0096】
例えば、カメラ本体10の画像ブロック12の受光面の画素ピッチが20μmである場合、カメラ本体10から画素ピッチが20μmであることを指示するデータが、レンズユニット20に送られる。レンズユニット20のブレ補正制御系(補正光学系)の駆動量に対する像位置の移動量の割合、即ち、補正光学系の効き率が0.8である場合、1画素ピッチ分のブレ補正制御系の駆動量は、20÷0.8=25(μm)と算出される。そして、ブレ補正制御系が25μm駆動されることによって、受光面上で像位置が1画素ピッチの20μmだけ移動する。これにより、カメラ本体10の画像ブロック12の受光面の画素ピッチに合わせて、画素単位の像移動を行うことができる。
【0097】
図13に示す撮像装置1では、カメラ本体10の撮像ブロック12とレンズユニット20のブレ補正制御系22とが信号線30によって接続されている。撮像ブロック12は、受光面上の像を撮像するタイミングに同期した同期信号を出力する。即ち、撮像するタイミングで信号線30がイネーブル(有効)となる。この同期信号は信号線30を通じてブレ補正制御系22へ伝送される。ブレ補正制御系22は、同期信号に基づいて像位置を移動させる。これにより、像位置の移動と撮像のタイミングを合わせることができる。
【0098】
また、図14に示す撮像装置1では、レンズユニット20のブレ補正制御系22とカメラ本体10の画像処理ブロック13とが、画像位置変換ブロック31を介して信号線30によって接続されている。ブレ補正制御系22は、像位置を移動させるタイミングに同期した同期信号を出力する。即ち、ブレ補正制御系22の駆動タイミングで信号線30がイネーブルとなる。この同期信号は、信号線30を通じて画像位置変換ブロック31を介して画像処理ブロック13へ伝送される。例えば、ブレ補正制御系22が所定の駆動量だけ駆動して像位置を所定の位置へ移動させたタイミングで、ブレ補正制御系22が同期信号を出力する。
【0099】
また、この同期信号と共に、ブレ補正制御系22の駆動量及び駆動方向も出力し、画像位置変換ブロック31よって、駆動量が像位置の移動量に相当する画素ピッチ数に変換される。そして、撮像ブロック12は、同期信号に基づいて受光面上の像を撮像する。続いて、画像処理ブロック13は、像移動方向に像移動量に相当する画素ピッチ数だけ離れた画素どうしの差分を算出するとよい。これにより、像位置の移動と撮像のタイミングを合わせて、正確な補正の実現を図ることができる。
【0100】
(第6動作例)
次に、図15を参照して、実施形態の撮像装置の第6動作例について説明する。図15(a)及び(b)は、受光面11を構成する画素のうち、隣接して2次元配列された4つの画素A〜Dの拡大図である。
【0101】
第6動作例では、像シフト手段22は、図15(a)に示すように、受光面11上の像の任意の点(以下、「像点」とも称する。)の軌跡が受光面11上で円軌道Rを描くように、受光面11上で像位置を並進移動させる。図15(a)に示すように、像位置は、受光面11上の像点が継続的に等速円運動を行うように移動する。この円軌道Rの半径は、例えば、画素ピッチの(1/(√2))倍とするとよい。
【0102】
なお、図15(a)では4つの画素A〜Dだけを示すが、受光面11上の像全体の各点の軌跡が同時に円軌道を描くように、受光面11全体で像位置は並進移動している。
【0103】
ここで、図16(a)のタイミングチャートを参照して、撮像タイミングを説明する。図16(a)の線Iは同期信号のタイミングを表し、線IIは画素の露光期間を表す。露光期間Ea、Eb、Ec及びEdは、それぞれ、円軌道R上を等速円運動している像点が画素A、B、C及びD上に位置する期間である。これらの露光期間Ea、Eb、Ec及びEdはまた、図15(a)において像点が円軌道Rのうち、画素A上の区間Ea、画素B上の区間Eb、画素C上の区間Ec、及び画素D上の区間Edに位置する期間に相当する。
【0104】
そして、図16(a)の露光期間Ea、Eb、Ec及びEdの中央で、像シフト手段22から、同期信号A,B,C及びDが出力される。その結果、像点が、図15(a)の区間Ea,Eb,Ec及びEdそれぞれの中央の位置Sa,Sb,Sc及びSdに位置するときに受光面上の像が撮像される。
【0105】
なお、同期信号A,B,C及びDが出力されてから、実際に撮像されるまでには、遅延時間が生じる。この遅延時間を考慮して、図16(b)の線IIIで示すように、線IVで示す露光期間Ea、Eb、Ec及びEdに対して、同期信号A,B,C及びDの出力タイミングを、それぞれの露光期間の中央よりも所定の時間だけ遅らせてもよい。
【0106】
また、像シフト手段13は、同期信号とともに、像点の位置をカメラ本体10へ出力するとよい。像点の位置は、図15(a)に示すように、4つの画素A〜Dの中央を原点としたXY座標によって表すとよい。ここで、図17のタイミングチャートに同期信号と像点の座標との関係を示す。図17の線Iは同期信号のタイミングを表し、曲線X及び曲線Yは、それぞれ、像点のX座標及びY座標を表す。線Iで示す同期信号Aの出力タイミングで、そのときの画素A上の像点の座標(xa、ya)が取得される。そして、この座標もカメラ本体10へ出力される。
なお、ブレ補正のために像位置が移動した場合には、像点の座標として、ブレ補正による像移動量を差し引いた値を出力するとよい。
【0107】
また、像点の位置を各画素上の円軌道R上の区間Ea,Eb,Ec及びEdそれぞれの平均値の座標として表してもよい。例えば、図15(b)中の画素C上の区間Ecの平均値の座標(xc,yc)は、下記の(1)式で求められる。
∫(座標)×(存在時間)dt÷(区間Edの存在時間) ・・・(1)
【0108】
上述した撮像タイミングで受光面上の像を撮像する第6動作例は、以下に説明するように、基本的に第5動作例における図11のフローチャートに対応する。
まず、撮像手段12は、像点が円軌道R上の所定部分を移動する前後に、受光面11上の像をそれぞれ撮像する。具体的には、まず、移動前の撮像として、像点が円軌道R上の画素AのSa点に位置するときに受光面11上の像が撮像される(図11のS1101)。撮像された画像は第1メモリに記憶される(S1102)。
【0109】
次いで、像点が円軌道R上を画素AのSa点から画素BのSb点へ移動する(S1103)。像点は円軌道R上で等速円運動しているが、Sa点からSb点へ向かう方向はX方向に沿っている。したがって、この移動方向はX方向となる。
【0110】
次いで、像点が円軌道R上の画素BのSb点に位置するときに受光面11上の像が撮像される(S1104)。撮像された画像は第2メモリに記憶される(S1105)。
【0111】
続いて、像点は円軌道R上を画素BのSb点から画素CのSc点へ移動する(S1106)。像点は円軌道R上で等速円運動しているが、Sb点からSc点へ向かう方向はY方向に沿っている。したがって、この移動方向はY方向となる。
【0112】
次いで、像点が円軌道R上の画素CのSc点に位置するときに受光面11上の像が撮像される(S1107)。撮像された画像は第3メモリに記憶される(S1108)。
【0113】
次いで、像点が円軌道上の所定部分を移動する前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する。X方向の移動の前後では、画素Aと画素Bとが同一の像部分を受光している。また、受光面全体では、X方向に隣接した画素どうしがそれぞれ同一の像部分を受光している。そこで、第1及び第2メモリに記憶されたX方向に隣接した画素どうしの出力レベルを読み出して、X方向の移動の前後の隣接画素の出力レベルの差分を第1差分としてそれぞれ算出する(S1109)。
【0114】
また、Y方向の移動の前後では、画素Bと画素Cとが同一の像部分を受光している。また、受光面全体では、Y方向に隣接した画素どうしがそれぞれ同一の像部分を受光している。そこで、第2及び第3メモリに記憶されたY方向に隣接した画素どうし出力レベルを読み出して、Y方向の移動の前後の隣接画素の出力レベルの差分を第2差分としてそれぞれ算出する(S1110)。
【0115】
次いで、X方向に配列された画素列について、第1差分を順次に積算して、X方向に配列された画素列の各画素の第1オフセット量を算出する(S1111)。また、Y方向に配列された画素列について、第2差分を順次に積算して、Y方向に配列された画素列の各画素の第2オフセット量を算出する(S1112)。
【0116】
次いで、第1及び第2オフセット量に基づいて、受光面11の各画素の出力レベルを補正する(S1113)。
【0117】
このように、第6動作例では、軌跡が円軌道を描くように像位置を移動させることによって、像位置を連続的に移動させることができる。その結果、像位置の位置精度の位置が容易となる。また、継続的に等速直線運動を行うように像位置を移動させることによって、像位置を安定的に移動させることができる。また、像位置の円運動の1周期ごとに、容易に補正を行うことができる。
【0118】
上述した実施形態では、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組合せを行うことができ、これに限定されるものではない。上述した実施形態では、像シフト手段が光学系に組み込まれた撮像装置の例を説明したが、本発明では、像シフト手段はこれに限定されない。像シフト手段は、光学系全体をその光軸に直交する方向に変位させるものであってもよいし、撮像手段の受光面を、光学系の光軸に直交する方向に変位させるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、赤外画像用の撮像装置にも、可視画像用の撮像装置にも適用可能である。また、本発明は、中断することなく撮像することが要請されるモニタカメラに用いて好適である。また、本発明は、1画素列で構成された受光面を有するラインセンサにも適用可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 撮像装置
10 カメラ本体
11 受光面
12 撮像手段
13 画像処理手段
20 レンズユニット
21 光学系
22 像シフト手段
22a レンズ
131 差分算出部
132 オフセット量積算部
133 補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、その画素出力レベル補正方法、赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステムに関し、より詳細には、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる撮像装置、その画素出力レベル補正方法、赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像装置の例が下記の特許文献1〜3に記載されている。これら特許文献1〜3に記載の赤外線撮像装置では、補正用シャッターを閉じることによって基準画像を得て、この基準画像から個々の画素の出力レベルのシフト量を求め、画素間の出力レベルのばらつきを補正していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−310804号公報
【特許文献2】特開2008−111754号公報
【特許文献3】特開2008−203054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら従来の撮像装置ではいずれも、頻繁に補正用シャッターを閉じる必要がある。撮像装置は、補正用シャッターを閉じている間、被写体を撮像することができない。このため、これらの従来の撮像装置を防犯カメラ等の監視カメラとして使用した場合、たとえ短時間であっても補正用シャッターを閉じている間に発生した事象を監視することができないという問題が生じる。また、従来の撮像装置は、補正用シャッターを閉じている間、新たに撮像した動画フレームを出力することができないため、動画が途切れてしまうことになる。
【0005】
そこで、本発明は、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる撮像装置、その画素出力レベル補正方法、赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明の撮像装置によれば、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、前記画像処理手段は、像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、を有する、ことを特徴としている。
【0007】
本発明の撮像装置では、受光面に対して像位置を移動させる。そして、像位置の移動前に像の或る部分を受光した第1画素の出力レベルと、移動後にその同一部分を受光した第2画素の出力レベルとの差分Δ1を算出する。ここで重要なことは、この差分Δ1は、均一な輝度(又は温度)の補正用シャッターを閉じてこれを撮像した場合の第1画素と第2画素の出力レベルの差分と等価であるということである。したがって、本発明では、補正用シャッターを閉じることなく、第1画素と第2画素の出力レベルの差分Δ1を取得することができる。
【0008】
また、像の同一部分を受光する画素どうしの出力レベルの差分として、像の移動方向に沿った画素列について、第1画素と第2画素の出力レベルの差分Δ1と同様に、それぞれ像の同一部分を受光した、第2画素と第3画素との出力レベルの差分Δ2、第3画素と第4画素との出力レベルの差分Δ3、・・・第n画素と第(n+1)画素との出力レベルの差分Δnも算出される。なお、「n」は正の整数である。
【0009】
さらに、画素の差分Δ1、Δ2、Δ3、・・・Δnを像位置の移動方向に沿って順次に積算することによって、その画素列の画素の出力レベルのシフト量が算出される。すなわち、第1画素のシフト量を例えば0とすれば、第2画素のシフト量はΔ1、第3画素シフト量は(Δ1+Δ2)、同様に、第n+1画素のシフト量は(Δ1+Δ2+Δ3+・・・+Δn)と算出される。このように、本発明では、補正用シャッターを閉じることなく、個々の画素の出力レベルのシフト量を算出することができる。したがって、本発明では、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、前記像シフト手段は、画素の配列方向に、前記受光面の画素間隔のN倍(Nは正の整数)の距離だけ像位置を移動させ、前記差分算出部は、像位置の移動方向に配列された画素列のN画素ずれた位置との差分をそれぞれ1画素ごとに算出し、前記オフセット量算出部は、前記画素列の第1画素から第N画素の各画素を起点として、それぞれN画素ごとの差分を順次に積算し、前記画素列の画素ごとの出力レベルのオフセット量を算出する。
【0011】
N=1として、1画素間隔(画素ピッチ)だけ像位置を移動させた場合、像位置の移動方向沿った画素列において、隣接した画素どうしの差分が算出される。そして、隣接した画素の差分を順次に積算して、画素列の各画素の出力レベルのオフセット量が算出される。また、N=2として、2画素ピッチだけ像位置を移動させた場合は、像位置の移動方向に沿った画素列において、一つおきの画素どうしの差分が算出される。そして、一つおきに画素の差分を順次に積算して、画素列の一つおきの画素の出力レベルのオフセット量が算出される。この場合、画素列の偶数番目の画素群の出力レベルのオフセット量と、画素列の奇数番目の画素群の出力レベルのオフセット量とをそれぞれ算出するとよい。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記画像処理手段は、前記撮像装置のシェーディングの影響を相殺するように、前記受光面の画素の位置に応じて、画素ごとの出力レベルを補正する。
【0013】
シェーディングとは、赤外線用の撮像装置において、被写体とは関係なく撮像装置内の内面放射及び迷光に起因して、受光面の撮像素子が受光する赤外線量が、環境温度が高い場合、受光面の中心部から周辺部へ行くに従って増加し、環境温度が低い場合、受光面の中心部から周辺部へ行くに従って減少する現象をいう。像移動の前後に像の同一部分を受光した2つの画素のうち、一方が光学系の光軸付近に配置され、他方が光学系の光軸から離れた周辺部に配置されていた場合、これら2つの画素の受光強度は、シェーディングの影響により等しくない。このため、これら2つの画素それぞれの出力レベルも、シェーディングの影響を含むもとなる。その結果、これら2つの画素の出力レベルの差分もシェーディングの影響を含むもとなる。そこで、シェーディング特性を相殺するように、画素毎の出力レベルを補正することにより、画素どうしの出力レベルのより正確な差分が得られる。その結果、シェーディング特性の影響を排除して、画素出力レベルのばらつきをより均一化する補正の実現を図ることができる。なお、このシェーディングはバックグランドとも呼ばれる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記像シフト手段は、像位置の移動の後、再び像位置の移動前の位置へ像位置を戻し、前記撮像手段は、像位置を戻した後に、再度受光面上の像を撮像し、前記画像処理手段は、同一画素について、像位置の移動前と像位置を戻した後との出力レベルの変動量を算出し、前記オフセット量算出部は、所定の基準値以上の変動量を有する画素の差分を除外してオフセット量を算出する。
【0015】
被写体が動いた場合、算出された画素の出力レベルの差分は、画素自体の出力特性のばらつきに基づく出力レベルの差を正確には反映しないことがある。したがって、被写体の動いた部分に対応する像部分を受光した画素の差分は、オフセット量の算出から除外されることが望ましい。そこで、像位置の移動前と像位置を戻した後との出力レベルの変動量が大きい像部分を、被写体が動いた部分として除外する。これにより、オフセット量が不正確になることの防止を図ることができる。
なお、オフセット量の算出から除外された画素に対しては、前回有効であった差分値を適用して積算を行いオフセット量を算出してもよい。あるいは、積算によってオフセット量を算出する代わりに、前回有効であったオフセット量を置き換えてもよい。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記撮像手段は、画素が2次元のマトリクス状に配列された受光面を有し、前記像シフト手段は、前記受光面の画素の第1の配列方向と、前記第1の配列方向に直交する第2の配列方向にそれぞれ像位置を移動させ、前記差分算出部は、前記第1の配列方向への像位置の移動の前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を第1の差分として算出し、かつ、前記第2の配列方向への像位置の移動の前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を第2の差分として算出し、前記オフセット量算出部は、前記第1の配列方向に配列された第1の画素列について、出力レベルの第1の差分を順次に積算して、前記第1の画素列の画素の第1のオフセット量を算出し、かつ、前記第2の配列方向に配列された第2の画素列について、出力レベルの第2の差分を順次に積算して、前記第2の画素列の画素の第2のオフセット量を算出し、前記補正部は、前記第1及び第2のオフセット量に基づいて、画素の出力レベルを補正する。
【0017】
このように、第1及び第2の配列方向についてそれぞれ算出された第1及び第2のオフセット量に基づいて、画素の出力レベルを補正するので、より正確な補正の実現を図ることができる。
また、前記、オフセット量の算出から除外された画素に対しては、第1あるいは第2の配列方向の何れか有効な方向のみの積算によってオフセット量を算出することもできる。
【0018】
なお、第1及び第2の配列方向にそれぞれ像位置を移動するにあたっては、移動前の像位置から移動後の像位置へ移動経路は問わない。例えば、移動前の位置から、一旦、第三の位置へ移動し、次いで、移動後の位置へ移動するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明において好ましくは、前記像シフト手段は、前記受光面上の像の任意の点の軌跡が前記受光面上で円軌道を描くように、前記像位置を並進移動させ、前記撮像手段は、前記像の任意の点が前記円軌道上の所定部分を移動する前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、前記差分算出部は、前記像の任意の点が前記円軌道上の所定部分を移動する前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出し、前記オフセット量算出部は、前記像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしを結ぶ直線方向を像位置の移動方向として、オフセット量を算出する。
【0020】
このように、軌跡が円軌道を描くように像位置を移動させることによって、像位置を連続的に移動させることができる。その結果、像位置の位置精度の位置が容易となる。
【0021】
また、本発明において好ましくは、前記像シフト手段は、前記受光面上の像の任意の点が継続的に等速円運動を行うように、前記像位置を移動させる。
【0022】
このように、継続的に等速直線運動を行うように像位置を移動させることによって、像位置を安定的に移動させることができる。また、像位置の円運動の1周期ごとに、容易に補正を行うことができる。
【0023】
また、本発明において好ましくは、前記撮像手段及び前記画像処理手段は撮像装置本体を構成し、前記光学系及び前記像シフト手段は、前記撮像装置本体から着脱自在なレンズユニットを構成し、前記撮像装置本体は、前記受光面の画素間隔を含むデータを前記レンズユニットへ出力し、前記像シフト手段は、前記データに基づいて像位置を移動させる。
【0024】
受光面の画素間隔は、通常、撮像装置本体の種類によって異なる。交換レンズのようなレンズユニットに組み込まれた像シフト手段は、撮像装置本体から送られてきた画素間隔を含むデータに基づいて、像位置の移動量を撮像装置本体の受光面の画素間隔に適合させることができる。
【0025】
また、本発明において好ましくは、前記撮像手段は、受光面上の像を撮像するタイミングに同期した同期信号を出力し、前記像シフト手段は、前記同期信号に基づいて像位置を移動させる。
これにより、像位置の移動と撮像のタイミングを合わせて、正確な補正の実現を図ることができる。
【0026】
また、本発明において好ましくは、前記像シフト手段は、像位置を移動させるタイミングに同期した同期信号を出力し、前記撮像手段は、前記同期信号に基づいて受光面上の像を撮像する。
これにより、像位置の移動と撮像のタイミングを合わせて、正確な補正の実現を図ることができる。
【0027】
また、本発明において好ましくは、前記撮像素子はボロメータあるいはマイクロボロメータである。
撮像素子をボロメータあるいはマイクロボロメータで構成することにより、本発明の撮像装置を、赤外線画像を撮像可能なものとすることができる。
【0028】
また、本発明の撮像装置の画素出力レベル補正方法は、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系とを備えた撮像装置の画素出力レベルの補正方法であって、前記受光面上で像位置を移動させ、像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出し、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出し、オフセット量に基づいて、前記画素列の画素の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する、ことを特徴としている。
【0029】
本発明の撮像装置の画素出力レベル補正方法によれば、本発明の撮像装置について上述したように、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。また、温度補正用シャッターを用いて温度測定ができるように構成した場合においても、温度補正用シャッターを閉じて温度較正を行う頻度を少なくすることができる。
【0030】
また、本発明の赤外線カメラシステムは、赤外線の受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、前記画像処理手段は、像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、を有する、ことを特徴としている。
これにより、補正用シャッターを閉じることなく、赤外線を検出する画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。
【0031】
また、本発明の交換可能なレンズシステムは、撮像装置本体と、前記撮像装置本体に着脱自在なレンズユニットとを備える交換可能なレンズシステムであって、前記撮像装置本体は、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、前記レンズユニットは、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、を備え、前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、前記画像処理手段は、像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、を有する、ことを特徴とする交換可能なレンズシステム。
これにより、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。
【発明の効果】
【0032】
このように、本発明の撮像装置、その画素出力レベル補正方法、赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステムによれば、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態の撮像装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の撮像装置の第1動作例を説明するフローチャートである。
【図3】(a)は、像位置の移動前後の受光面と像との位置関係を示す図であり、(b)は、受光面を示す図である。
【図4】像位置を1画素ピッチ分移動させる前後の画素列上の画素と像の受光部分との関係を示す図である。
【図5】画素列上の画素の出力レベルのシフト量を示す図である。
【図6】像位置を2画素ピッチ分移動させる前後の画素列上の画素と増の受光部分との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態の撮像装置の第3動作例を説明するフローチャートである。
【図8】(a)は、シェーディング特性を含む画像信号を示すグラフであり、(b)は、シェーディング特性を示すグラフであり、(c)は、シェーディング特性を補正した画像信号を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態の撮像装置の第4動作例を説明するフローチャートである。
【図10】像位置の移動前、移動後、及び、像位置を戻した後の画面と像との位置関係を示す図である。
【図11】本発明の実施形態の撮像装置の第5動作例を説明するフローチャートである。
【図12】受光面上の画素の配列と、像位置の移動方向との関係を示す図である。
【図13】カメラ本体10とレンズユニット20との間のデータ伝送の説明図である。
【図14】カメラ本体10とレンズユニット20との間のデータ伝送の説明図である。
【図15】(a)及び(b)は、像を受光面上で等速円運動させた場合の軌跡を示す図である。
【図16】(a)及び(b)は、同期信号と露光時間との関係を示すタイミングチャートである。
【図17】同期信号と像位置との関係を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照して、本発明の撮像装置及びその画素出力レベル補正方法の実施形態を説明する。なお、撮像装置の実施形態は、本発明の赤外線カメラシステム及び交換可能なレンズシステムの実施形態も兼ねる。まず、図1のブロック図を参照して、実施形態の撮像装置の構成を説明する。図1に示す撮像装置1は、カメラ本体10と、レンズユニット20とから構成されている。レンズユニット20は、カメラ本体10に着脱自在な交換レンズとすることもできる。
【0035】
カメラ本体10は、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面11を有する撮像手段12と、撮像手段11が撮像した画像を処理する画像処理手段13とを備えている。撮像手段12の受光面は、赤外線を検出するボロメータアレイ又はマイクロボロメータアレイで構成してもよいし、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサのような固体撮像素子アレイで構成してもよい。
【0036】
レンズユニット20は、受光面11に被写体の像を結像させることができる光学系21と、受光面11上で像位置を移動させる像シフト手段22とを備えている。像シフト手段22は、像ぶれ防止機構で構成することができる。図1に示す例では、像シフト手段22は、光学系21を構成する1つのレンズ22aを光学系21の光軸Oに直交する方向に並進移動させることによって、受光面11に対して相対的に像位置を移動させる。
なお、被写体には、撮像視野内の全画像が含まれる。
【0037】
なお、像シフト手段22は、光学系21全体を、光軸Oに直交する方向に並進移動させる構成としてもよいし、受光面11を、光軸Oに直交する平面内で並進移動させる構成としてもよい。
【0038】
カメラ本体10の画像処理手段13は、像シフト手段22による像位置の移動の前後に、受光面11上の像をそれぞれ撮像する。また、画像処理手段13は、像位置の移動の前後に受光面11上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部131と、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部132と、画素列の画素のオフセット量に基づいて、画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部133とを有する。
【0039】
(第1動作例)
図2のフローチャートを参照して、本実施形態の撮像装置1の第1動作例を説明する。
まず、像シフト手段22による像位置の移動前に、撮像手段12が受光面11上の像を撮像する(S201)。ここで、図3(a)の上段に、像移動前の受光面11上の像の例を示す。図3(a)に示す受光面は、2次元のマトリクス状に配列された画素によって構成されている。この受光面11上に結像した像の右側部分に、ハッチングを付して示す。
【0040】
次いで、像移動前に撮像した像の各画素の出力レベルを第1画像メモリに保存する(S202)。第1画像メモリは、カメラ本体10に設けられている。
【0041】
次いで、像シフト手段22は、画素の配列方向に、受光面11の画素間隔(1画素ピッチ)の距離だけ像位置を移動させる(S203)。図3(a)の下段に、像移動後の受光面11上の像の例を示す。図3(a)では、像に対して、光軸Oに直交する受光面11を右方向に1画素ピッチだけ相対的に移動させた様子を示す。この移動は、受光面11に対して、像位置を左方向に1画素ピッチだけ移動させたものに相当する。
【0042】
次いで、像シフト手段22による像位置の移動後に、撮像手段12が受光面11上の像を撮像する(S204)。図3(a)の上段と下段を比較すると、像位置に対して受光面11を1画素ピッチ移動させた結果、像位置の移動の前に、受光面11の画素P5が受光した像の部分と同一部分を、像位置の移動後に、受光面の画素P4が受光する。同様に、受光面11の全面で、像位置の移動前に、各画素がそれぞれ受光した像の部分と同一部分を、像の移動後に、各画素の左隣りの画素がそれぞれ受光する。
【0043】
次いで、撮像した像の各画素の出力レベルを第2画像メモリに保存する。第2画像メモリは、カメラ本体10に設けられている(S205)。
【0044】
次いで、画像処理部13の差分算出部131が、像位置の移動の前後に受光面11上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する。例えば、第1画素メモリに記憶された像移動前の画素P5の出力レベルp5と、第2画素メモリに記憶された像移動後の画素P4の出力レベルp’4との差分Δ(p’4−p5))を算出する(S206)。
【0045】
この差分Δ(p’4−p5)は、図3(b)に示すような均一な輝度(又は温度)の補正用シャッターを閉じてこれを撮像した場合の画素P4と画素P5の出力レベルの差分と等価である。したがって、本発明では、補正用シャッターを閉じることなく、第1画素と第2画素の出力レベルの差分Δ(p’4−p5)を取得することができる。
【0046】
さらに、図4を参照して、出力レベルの差分の算出についてより詳細に説明する。図4は、受光面11の一つの画素列Lを模式的に示す。この画素列Lは、左から右へ向かって順次に配列した第1画素〜第(n+1)画素によって構成されている。図4の上段は、画素列Lの各画素が、像位置の移動前に受光した像の部分を模式的に示す。図4の上段に示すように、画素列Lの第1画素は「○」の像部分を受光し、第2画素は「△」の像部分を受光し、第3画素は「□」の像部分を受光し、同様に、第n画素は「◎」の像部分を受光している。
【0047】
また、図4の下段は、像位置を画素列Lの画素の配列方向に沿って図4の矢印Aの方向へ1画素ピッチだけ移動させた後に、画素列Lの各画素が受光した像の部分を示す。図4の下段に示すように、画素列Lの第2画素が「○」の像部分を受光し、第3画素が「△」の像部分を受光し、第4画素が「□」の像部分を受光し、同様に、第n+1画素が「◎」の像部分を受光している。
【0048】
図4から分かるように、像位置の移動前後で、第1及び第2画素が「○」の像部分を受光し、第2及び第3画素が「△」の像部分を受光し、第3及び第4画素が「□」の像部分を受光し、同様に、第n及び第(n+1)画素が「◎」の像部分を受光している。
【0049】
そこで、像位置の移動後の画素の出力レベルから移動前の画素の出力レベルを減算したものを差分とする。具体的には、移動後の第2画素の出力レベルから移動前の第1画素の出力レベルを減算して差分Δ1を算出し、移動後の第3画素の出力レベルから移動前の第2画素の出力レベルを減算して差分Δ2を算出し、移動後の第4画素の出力レベルから移動前の第3画素の出力レベルを減算して差分Δ3を算出し、同様に、移動後の第(n+1)画素の出力レベルから移動前の第n画素の出力レベルを減算して差分Δnを算出する。
【0050】
次いで、画像処理部13のオフセット量算出部132が、像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出する(S207)。ここでは、像位置の移動後の画素の出力レベルから移動前の画素の出力レベルを減算したものを差分とする。その場合、像位置の移動方向に沿って配列された画素列について、受光面に対する像位置の移動方向に向かって、差分を順次に積算する。そして、画素列中の個々の画素のシフト量を、積算の最初から当該画素までの差分の合計として算出する。
【0051】
なお、像位置の移動前の出力レベルから移動後の画素の出力レベルを減算したものを差分としてもよい。その場合、像位置の移動方向に沿って配列された画素列について、受光面に対する像位置の移動方向とは逆方向に向かって、差分を順次に積算するとよい。そして、画素列中の個々の画素のシフト量は、積算の最初から当該画素までの差分の合計として算出される。
【0052】
図4に示す例では、画素列Lの各画素について、画素列の左端からその画素までの各画素の差分Δ1、Δ2、Δ3・・・Δnを矢印Aで示す像位置の移動方向に沿って順次に積算して、その画素の出力レベルのシフト量を算出する。すなわち、第1画素のシフト量を0とすれば、第2画素のシフト量はΔ1、第3画素シフト量は(Δ1+Δ2)、同様に、第n+1画素のシフト量は(Δ1+Δ2+Δ3+・・・+Δn)と算出される。ここで、図5に、各画素のシフト量を示す。図5の横軸は画素を表し、縦軸はシフト量を表す。図5では、各画素のシフト量は、第1画素の出力レベルを基準としたシフト量として表されている。
【0053】
なお、画素列の画素ごとに差分を積算したシフト量は、その画素列の差分の積算の始点となった画素の出力レベルに対するシフト量を表すものであって、各画素の絶対的な出力レベルを表すものではない。しかし、画素列の画素間の出力レベルのばらつきは、画素間の相対的な出力レベルのシフト量に起因するものである。したがって、算出された各画素のシフト量が絶対的な出力レベルを表すものでなくても、画素列の画素間の出力レベルを均一化する上で大きな問題とはならない。
【0054】
次いで、画像処理部13の補正部133が、画素列の画素のオフセット量に基づいて、画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、各画素の出力レベルを補正する(S208)。補正にあたっては、図5に示した各画素のシフト量を、そのまま、各画素の出力レベルから減算して、画素間の出力レベルのばらつきを均一化するとよい。この場合、各画素の出力レベルは、第1画素の出力レベルに統一される。また、画素列の各画素のシフト量の平均値を算出し、この平均値と各画素のシフト量との差分を、各画素の出力レベルから減算してもよい。その場合、各画素の出力レベルは、画素列の平均値に統一される。
【0055】
また、補正に当たっては、例えば、受光面11のうちの一部分の領域の画素の出力レベルのばらつきだけを局所的に均一化するように補正してもよい。また、画素出力レベルの最大値が所定値となるように、受光面11の全体の画素の出力レベルを加減してもよい。
なお、補正部133が画素間の出力レベルのばらつきを均一化する方法は、上記方法に限定されず、補正部133は様々な方法を用いることができる。
【0056】
このようにして、補正用シャッターを閉じることなく、画素間の出力レベルのばらつきを均一化することができる。画素間の出力レベルのばらつきが小さくなることによって、輝度差の小さい被写体の認識や輪郭抽出精度の改善が図られる。
【0057】
(第2動作例)
次に、実施形態の撮像装置の第2動作例について説明する。第2動作例、基本的に図2に示した第1動作例のフローチャートで表される。ただし、第2動作例では、像位置が受光面11の画素の配列方向に2画素ピッチ分だけ移動する。
【0058】
ここで、図6に、受光面11の一つの画素列Lを模式的に示す。この画素列Lは、左から右へ向かって順次に配列した第1画素〜第(n+2)画素によって構成されている。図6の上段は、画素列Lの各画素が、像位置の移動前に受光した像の部分を模式的に示す。図6の上段に示すように、画素列Lの第1画素は「○」の像部分を受光し、第2画素は「△」の像部分を受光し、第3画素は「□」の像部分を受光し、同様に、第n画素は「◎」の像部分を受光している。
【0059】
また、図6の下段は、像位置を画素列Lの画素の配列方向に沿って図6の矢印Aの方向へ2画素ピッチだけ移動させた後に、画素列Lの各画素が受光した像の部分を示す。図6の下段に示すように、画素列Lの第3画素が「○」の像部分を受光し、第4画素が「△」の像部分を受光し、第5画素が「□」の像部分を受光し、同様に、第(n+2)画素が「◎」の像部分を受光している。
【0060】
図6の上段及び下段から分かるように、像位置の移動前後で、第1及び第3画素が「○」の像部分を受光し、第3及び第5画素が「△」の像部分を受光し、第5及び第7画素が「□」の像部分を受光し、同様に、第n及び第(n+2)画素が「◎」の像部分を受光している。
【0061】
そこで、像位置の移動後の画素の出力レベルから移動前の画素の出力レベルを減算したものを差分とする。具体的には、移動後の第3画素の出力レベルから移動前の第1画素の出力レベルを減算して差分Δ1を算出し、移動後の第4画素の出力レベルから移動前の第2画素の出力レベルを減算して差分Δ2を算出し、移動後の第5画素の出力レベルから移動前の第3画素の出力レベルを減算して差分Δ3を算出し、同様に、移動後の第(n+2)画素の出力レベルから移動前の第n画素の出力レベルを減算して差分Δnを算出する。
【0062】
次いで、画像処理部13のオフセット量算出部132が、像位置の移動方向に配列された画素列ついて、出力レベルの差分を第1画素から順次2画素ごとに積算して、画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出し、さらに第2画素から順次2画素ごとに積算して、残った画素の出力レベルのオフセット量を算出する(S207)。ここでは、像位置の移動後の画素の出力レベルから移動前の画素の出力レベルを減算したものを差分とする。その場合、像位置の移動方向に沿って配列された画素列について、受光面に対する像位置の移動方向に向かって、差分を順次に積算する。そして、画素列中の個々の画素のシフト量を、積算の最小から当該画素までの差分の合計として算出する。
【0063】
なお、像位置が画素の配列方向に受光面11の3画素ピッチ以上のN画素ピッチだけ移動した場合も、同様に、N画素分ずれた位置の画素との差分を画素列の第1画素から第N画素の各画素を起点として、それぞれN画素ごとの差分を順次に積算して、個々の画素のオフセット量を算出することができる。
【0064】
次いで、画像処理部13の補正部133が、画素列の画素のオフセット量に基づいて、画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、各画素の出力レベルを補正する。
【0065】
(第3動作例)
次に、図7のフローチャートを参照して、実施形態の撮像装置の第3動作例について説明する。第3動作例は、「シェーディング補正1」(S702)及び「シェーディング補正2」(S707)のステップが追加された他は、図2に示した第1動作例と基本的に同じである。
【0066】
一般に、赤外線用の撮像装置は、シェーディングの影響を受ける。シェーディングとは、赤外線用の撮像装置において、被写体とは関係なく撮像装置内の内面放射及び迷光に起因して、受光面の撮像素子が受光する赤外線量が、環境温度が高い場合、受光面の中心部から周辺部へ行くに従って増加し、環境温度が低い場合、受光面の中心部から周辺部へ行くに従って減少する現象をいう。
【0067】
図8(a)に、シェーディング特性を含む画像信号の出力レベルの例を示す。図8(a)のグラフの横軸は受光面の中央を横断する画素列の画素を表し、縦軸は各画素の出力レベルを表す。したがって、横軸の中央部は受光面の中央部に対応し、横軸の周辺部は受光面の周辺部に対応している。線Iで示すシェーディング特性を含む画像信号の出力レベルは、全体的に、受光面の周辺部の出力レベルが中央部の出力レベルよりも低い傾向を有する。
【0068】
図8(b)に、シェーディング特性の一例を示す。図8(b)中に曲線IIで示すように、実施形態の撮像装置1は、出力レベルが、受光面の中央部を極大とし、受光面の周辺部へ行くに従って減少する特性を有している。このようなシェーディング特性は、予め均一平面熱源を撮像して求めておくとよい。シェーディング特性は、例えば、受光面の中央部の画素の出力レベルに対する周辺部の画素ごとの出力レベルの減少量又は減少率を、不図示のメモリに受光面の画素の位置に応じて記憶しおくとよい。また、シェーディング特性を撮像装置1の温度と対応付けた参照テーブルとしてメモリに記憶しておいてもよい。
【0069】
そして、動作例3では、第1メモリに記憶された像位置の移動前の各画素の出力レベルを、メモリに記憶されていたシェーディング特性を用いて、シェーディングの影響を相殺するようにシェーディング補正する。また、第2メモリに記憶されていた像位置の移動後の各画素の出力レベルを、メモリに記憶されたシェーディング特性を用いて、シェーディングの影響を相殺するようにシェーディング補正する。具体的には、画素の出力レベルに、画素ごとに記憶されていた減少量を加算してもよいし、各画素の出力レベルを、画素ごとに記憶されていた減少率で除算してもよい。
【0070】
図8(c)に、このようにしてシェーディング補正した画像信号の出力レベルの例を示す。線IIIに示すように、シェーディング補正後の画像信号の出力レベルは、図8(a)の曲線Iと比較して、周辺部の出力レベルが上昇し、シェーディング特性の影響が除去されていることが分かる。
【0071】
なお、図7に示すフローチャートでは、第1メモリ及び第2メモリにそれぞれ一旦記憶された出力レベルについてシェーディング補正を行ったが、画素の出力レベルを直接シェーディング補正してからメモリに記憶してもよい。
【0072】
また、シェーディング特性の補正とは別に、撮像装置1の初期の画素間の出力レベルのばらつきの補正のため、光学系21の焦点及びズームをわざと結像しない領域(OverNear, OverInf)に移動した状態としてもよい。この状態では、受光面上の像は、実質的に均一な明るさ又は均一な赤外線強度を有する。そして、この均一な像を撮像することにより、受光面の画素間の出力レベルのばらつきが均一となるように、各画素の出力レベルを補正してもよい。
【0073】
(第4動作例)
次に、図9のフローチャートを参照して、実施形態の撮像装置の第4動作例について説明する。第4動作例は、像位置の移動後に受光面上の像を撮像し(S904)、各画素の出力レベルを第2メモリに記憶する(S905)ステップまでは、上述の第1動作例と同じである。
【0074】
第5動作例では、像シフト手段22は、像位置の移動の後、再び像位置の移動前の位置へ像位置を戻す(S906)。ここで、図10の上段に、像移動前の受光面11上の像を示し、図10の中段に、像移動後の受光面11上の像を示し、図10の下段に、像位置を戻した後の像を示す。図10の上段及び中段に示す図は、図3(a)の上段及び下段に示した図に相当する。
【0075】
次いで、撮像手段12は、像位置が戻された後に、再度受光面上の像を撮像し(S907)、撮像した像の各画素の出力レベルを第3画像メモリに保存する(S908)。第3画像メモリは、カメラ本体10に設けられている。
【0076】
次いで、上述の第1動作例のステップ(S206)と同様に、画像処理部13の差分算出部131が、第1画素メモリに記憶された像移動前の画素の出力レベルと、第2画素メモリに記憶された像移動後の画素の出力レベルとを読み出し、像移動の前後に受光面11上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する(S909)。
【0077】
次いで、画像処理部13は、第1画素メモリに記憶された像移動前の画素の出力レベルと、第3画素メモリに記憶された像位置を戻した後の画素の出力レベルとを読み出し、同一画素どうしで、像位置の移動前と像位置を戻した後との出力レベルの変動量を算出する(S910)。
【0078】
図10の上段と下段の受光面11上の像を比較すると、破線Bで囲んだ部分の像が変化している。このような像の変化は、例えば被写体が動いたことによって生じる。このような部分の画素の出力レベルの差分は、画素自体の出力特性のばらつきに基づく出力レベルの差を正確には反映しない。破線Bで囲んだ部分の画素では、変動量が大きな値を示す。
【0079】
そこで、第4動作例では、オフセット量算出部133は、所定の基準値以上の変動量を有する画素の差分を除外して積算し、オフセット量を算出する(S911)。例えば、画素列の途中の画素の変動量が基準値以上である場合、その画素列のうち、変動量が基準値以上の画素の手前の画素までの差分だけ積算してオフセットを求めるようにするとよい。これにより、オフセット量が不正確になることの防止を図ることができる。
なお、基準値は、撮像装置1の使用環境に応じて任意好適な値を設定することができる。
【0080】
(第5動作例)
次に、図11のフローチャートを参照して、実施形態の撮像装置の第5動作例について説明する。第5動作例は、像位置の移動後に受光面上の像を撮像し(S1104)、各画素の出力レベルを第2メモリに記憶する(S1105)までは、上述の第1動作例と実質的に同じである。
【0081】
ここで、図12を参照して、受光面11上の画素の配列と、像位置の移動方向との関係を説明する。図12に示す受光面11では、画素が、互いに直交するX方向及びY方向の2次元のマトリクス状に配列されている。像位置の移動前に、像の「○」部分は、基準位置の画素P0上に位置している。この時点で、受光面11上の移動前の像が撮像され(S1101)、受光面11を構成する各画素の出力レベルが第1メモリに記憶される(S1102)。
【0082】
次いで、像「○」部分が、基準位置の画素P0上から第1規定位置の画素P1まで、X方向に1画素ピッチだけ移動するように、1回目の像移動を行う(S1103)。その結果、像の「○」部分は、第1規定位置P1上に位置する。
【0083】
次いで、1回目の移動後に、受光面11上の移動後の像が撮像され(S1104)、受光面11を構成する各画素の出力レベルが第2メモリに記憶される(S1105)。
【0084】
次いで、像の「○」部分が、第1規定位置の画素P1上から第2規定位置の画素P2まで、図面左斜め下方向へ、1画素ピッチのルート2倍(√2倍)だけ移動するように、2回目の像移動を行う(S1106)。その結果、像の「○」部分は、第2規定位置P2上に位置する。1回目及び2回目の移動の結果、像の「○」部分は、基準位置の画素P0上から第2規定位置の画素P2まで、Y方向に1画素ピッチだけ移動したことになる。
【0085】
次いで、2回目の移動後に、受光面11上の移動後の像が撮像され(S1107)、受光面11を構成する各画素の出力レベルが第3メモリに記憶される(S1108)。
【0086】
次いで、第1及び第2メモリに記憶された出力レベルが読み出されて、受光面11のX方向に配列した画素列の、1回目の移動の前後で同一部分をそれぞれ受光した隣接する画素どうしで、1回目の移動の前後の出力レベルの差分が第1差分としてそれぞれ算出される(S1109)。なお、第1差分は、受光面11のX方向に配列した各画素列において算出される。
【0087】
次いで、第1及び第3メモリに記憶された出力レベルが読み出されて、受光面11のY方向に配列した画素列の、1回目の移動前と2回目の移動後で同一部分をそれぞれ受光した隣接する画素どうしで、1回目の移動前と2回目尾移動後の出力レベルの差分が第2差分としてそれぞれ算出される(S1110)。なお、第2差分は、受光面11のY方向に配列した各画素列において算出される。
【0088】
次いで、X方向に配列された画素列について、出力レベルの第1差分を順次に積算して、X方向に配列された画素列の各画素の第1オフセット量を算出する(S1111)。なお、第1オフセット量は、受光面11のX方向に配列した各画素列において算出される。
【0089】
次いで、Y方向に配列された画素列について、出力レベルの第2差分を順次に積算して、Y方向に配列された画素列の各画素の第2オフセット量を算出する(S1112)。なお、第2オフセット量は、受光面11のY方向に配列した各画素列において算出される。
【0090】
次いで、第1及び第2オフセット量に基づいて、受光面11の各画素の出力レベルを補正する(S1113)。各画素の出力レベルを補正するに当たっては、任意好適な方法を採用することができる。例えば、各画素について、第1オフセット量と第2オフセット量との平均値を各画素の出力レベルのオフセット量として算出した上で、出力レベルが均一化するように補正してもよい。また、例えば、各画素について、X方向の画素列の出力レベルを均一化した出力レベルと、Y方向の画素列の出力レベルを均一化された出力レベルとの平均値を、各画素の出力レベルの均一化後の出力レベルとしてもよい。
【0091】
このように、X方向及びY方向についてそれぞれ算出された第1及び第2オフセット量に基づいて、画素の出力レベルを補正するので、より正確な補正の実現を図ることができる。
画素位置(m,n)の画素の出力レベルのオフセット量、即ち(積算値m,n)の算出式は次のようになる(m及びnは、それぞれ正の整数を表す)。
(積算値m,n)={(積算値m-1,n)+(第1差分値m,n)+(積算値m,n-1)+(第2差分値m,n)}/2
なお、(第1差分値m,n)が得られなかった場合は、
(積算値m,n)=(積算値m,n-1)+(第2差分値m,n)
とすることができる。
また、(第2差分値m,n)が得られなかった場合は、
(積算値m,n)=(積算値m-1,n)+(第1差分値m,n)
とすることができる。
さらに、(第1差分値m,n)及び(第2差分値m,n)が共に得られなかった場合は、前回算出したオフセット量を採用するようにしてもよい。
【0092】
次に、図13及び図14を参照して、カメラ本体10とレンズユニット20との間のデータ伝送を説明する。
図13及び図14において、カメラ本体10の撮像ブロックが、図1の撮像手段12に相当し、画像処理のブロックが、図1の画像処理手段13に相当する。また、図13及び図14において、レンズユニット20のブレ補正制御系のブロックが、図1の像シフト手段22に相当する。なお、レンズユニット20のレンズ制御系のブロックは、レンズ系の焦点やズームを制御する機能を表す。
【0093】
実施形態の撮像装置1では、像シフト手段22として、ブレ補正制御機構を利用することができる。ただし、通常のブレ補正制御機構では、撮像装置1の動きを相殺するようにブレ補正制御されるのに対し、像シフト手段22は、受光面に対して像位置が所定の方向に所定量だけ移動するように制御される。
【0094】
また、レンズユニット20が、複数種類のカメラ本体に取り付け可能な交換レンズである場合、カメラ本体ごとに画素ピッチなどが異なることがある。このため、カメラ本体10からレンズユニット20に対して、像シフト手段22による像位置の移動量などを指示することが必要となることがある。さらに、像シフト手段22による像位置の像位置の移動前後にそれぞれ受光面上の像を撮像するため、撮像のタイミングと像位置の移動のタイミングを制御する必要もある。
【0095】
そこで、図13及び図14に示す撮像装置1では、カメラ本体10の画像処理ブロック13から、受光面の画素間隔を含むデータを、光学データ変換関数として、レンズユニット20へ出力する。レンズユニット20は、カメラ本体10から入力された光学データ変換関数に基づいて、像シフト手段22の駆動量を決定し、像位置を移動させる。
【0096】
例えば、カメラ本体10の画像ブロック12の受光面の画素ピッチが20μmである場合、カメラ本体10から画素ピッチが20μmであることを指示するデータが、レンズユニット20に送られる。レンズユニット20のブレ補正制御系(補正光学系)の駆動量に対する像位置の移動量の割合、即ち、補正光学系の効き率が0.8である場合、1画素ピッチ分のブレ補正制御系の駆動量は、20÷0.8=25(μm)と算出される。そして、ブレ補正制御系が25μm駆動されることによって、受光面上で像位置が1画素ピッチの20μmだけ移動する。これにより、カメラ本体10の画像ブロック12の受光面の画素ピッチに合わせて、画素単位の像移動を行うことができる。
【0097】
図13に示す撮像装置1では、カメラ本体10の撮像ブロック12とレンズユニット20のブレ補正制御系22とが信号線30によって接続されている。撮像ブロック12は、受光面上の像を撮像するタイミングに同期した同期信号を出力する。即ち、撮像するタイミングで信号線30がイネーブル(有効)となる。この同期信号は信号線30を通じてブレ補正制御系22へ伝送される。ブレ補正制御系22は、同期信号に基づいて像位置を移動させる。これにより、像位置の移動と撮像のタイミングを合わせることができる。
【0098】
また、図14に示す撮像装置1では、レンズユニット20のブレ補正制御系22とカメラ本体10の画像処理ブロック13とが、画像位置変換ブロック31を介して信号線30によって接続されている。ブレ補正制御系22は、像位置を移動させるタイミングに同期した同期信号を出力する。即ち、ブレ補正制御系22の駆動タイミングで信号線30がイネーブルとなる。この同期信号は、信号線30を通じて画像位置変換ブロック31を介して画像処理ブロック13へ伝送される。例えば、ブレ補正制御系22が所定の駆動量だけ駆動して像位置を所定の位置へ移動させたタイミングで、ブレ補正制御系22が同期信号を出力する。
【0099】
また、この同期信号と共に、ブレ補正制御系22の駆動量及び駆動方向も出力し、画像位置変換ブロック31よって、駆動量が像位置の移動量に相当する画素ピッチ数に変換される。そして、撮像ブロック12は、同期信号に基づいて受光面上の像を撮像する。続いて、画像処理ブロック13は、像移動方向に像移動量に相当する画素ピッチ数だけ離れた画素どうしの差分を算出するとよい。これにより、像位置の移動と撮像のタイミングを合わせて、正確な補正の実現を図ることができる。
【0100】
(第6動作例)
次に、図15を参照して、実施形態の撮像装置の第6動作例について説明する。図15(a)及び(b)は、受光面11を構成する画素のうち、隣接して2次元配列された4つの画素A〜Dの拡大図である。
【0101】
第6動作例では、像シフト手段22は、図15(a)に示すように、受光面11上の像の任意の点(以下、「像点」とも称する。)の軌跡が受光面11上で円軌道Rを描くように、受光面11上で像位置を並進移動させる。図15(a)に示すように、像位置は、受光面11上の像点が継続的に等速円運動を行うように移動する。この円軌道Rの半径は、例えば、画素ピッチの(1/(√2))倍とするとよい。
【0102】
なお、図15(a)では4つの画素A〜Dだけを示すが、受光面11上の像全体の各点の軌跡が同時に円軌道を描くように、受光面11全体で像位置は並進移動している。
【0103】
ここで、図16(a)のタイミングチャートを参照して、撮像タイミングを説明する。図16(a)の線Iは同期信号のタイミングを表し、線IIは画素の露光期間を表す。露光期間Ea、Eb、Ec及びEdは、それぞれ、円軌道R上を等速円運動している像点が画素A、B、C及びD上に位置する期間である。これらの露光期間Ea、Eb、Ec及びEdはまた、図15(a)において像点が円軌道Rのうち、画素A上の区間Ea、画素B上の区間Eb、画素C上の区間Ec、及び画素D上の区間Edに位置する期間に相当する。
【0104】
そして、図16(a)の露光期間Ea、Eb、Ec及びEdの中央で、像シフト手段22から、同期信号A,B,C及びDが出力される。その結果、像点が、図15(a)の区間Ea,Eb,Ec及びEdそれぞれの中央の位置Sa,Sb,Sc及びSdに位置するときに受光面上の像が撮像される。
【0105】
なお、同期信号A,B,C及びDが出力されてから、実際に撮像されるまでには、遅延時間が生じる。この遅延時間を考慮して、図16(b)の線IIIで示すように、線IVで示す露光期間Ea、Eb、Ec及びEdに対して、同期信号A,B,C及びDの出力タイミングを、それぞれの露光期間の中央よりも所定の時間だけ遅らせてもよい。
【0106】
また、像シフト手段13は、同期信号とともに、像点の位置をカメラ本体10へ出力するとよい。像点の位置は、図15(a)に示すように、4つの画素A〜Dの中央を原点としたXY座標によって表すとよい。ここで、図17のタイミングチャートに同期信号と像点の座標との関係を示す。図17の線Iは同期信号のタイミングを表し、曲線X及び曲線Yは、それぞれ、像点のX座標及びY座標を表す。線Iで示す同期信号Aの出力タイミングで、そのときの画素A上の像点の座標(xa、ya)が取得される。そして、この座標もカメラ本体10へ出力される。
なお、ブレ補正のために像位置が移動した場合には、像点の座標として、ブレ補正による像移動量を差し引いた値を出力するとよい。
【0107】
また、像点の位置を各画素上の円軌道R上の区間Ea,Eb,Ec及びEdそれぞれの平均値の座標として表してもよい。例えば、図15(b)中の画素C上の区間Ecの平均値の座標(xc,yc)は、下記の(1)式で求められる。
∫(座標)×(存在時間)dt÷(区間Edの存在時間) ・・・(1)
【0108】
上述した撮像タイミングで受光面上の像を撮像する第6動作例は、以下に説明するように、基本的に第5動作例における図11のフローチャートに対応する。
まず、撮像手段12は、像点が円軌道R上の所定部分を移動する前後に、受光面11上の像をそれぞれ撮像する。具体的には、まず、移動前の撮像として、像点が円軌道R上の画素AのSa点に位置するときに受光面11上の像が撮像される(図11のS1101)。撮像された画像は第1メモリに記憶される(S1102)。
【0109】
次いで、像点が円軌道R上を画素AのSa点から画素BのSb点へ移動する(S1103)。像点は円軌道R上で等速円運動しているが、Sa点からSb点へ向かう方向はX方向に沿っている。したがって、この移動方向はX方向となる。
【0110】
次いで、像点が円軌道R上の画素BのSb点に位置するときに受光面11上の像が撮像される(S1104)。撮像された画像は第2メモリに記憶される(S1105)。
【0111】
続いて、像点は円軌道R上を画素BのSb点から画素CのSc点へ移動する(S1106)。像点は円軌道R上で等速円運動しているが、Sb点からSc点へ向かう方向はY方向に沿っている。したがって、この移動方向はY方向となる。
【0112】
次いで、像点が円軌道R上の画素CのSc点に位置するときに受光面11上の像が撮像される(S1107)。撮像された画像は第3メモリに記憶される(S1108)。
【0113】
次いで、像点が円軌道上の所定部分を移動する前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する。X方向の移動の前後では、画素Aと画素Bとが同一の像部分を受光している。また、受光面全体では、X方向に隣接した画素どうしがそれぞれ同一の像部分を受光している。そこで、第1及び第2メモリに記憶されたX方向に隣接した画素どうしの出力レベルを読み出して、X方向の移動の前後の隣接画素の出力レベルの差分を第1差分としてそれぞれ算出する(S1109)。
【0114】
また、Y方向の移動の前後では、画素Bと画素Cとが同一の像部分を受光している。また、受光面全体では、Y方向に隣接した画素どうしがそれぞれ同一の像部分を受光している。そこで、第2及び第3メモリに記憶されたY方向に隣接した画素どうし出力レベルを読み出して、Y方向の移動の前後の隣接画素の出力レベルの差分を第2差分としてそれぞれ算出する(S1110)。
【0115】
次いで、X方向に配列された画素列について、第1差分を順次に積算して、X方向に配列された画素列の各画素の第1オフセット量を算出する(S1111)。また、Y方向に配列された画素列について、第2差分を順次に積算して、Y方向に配列された画素列の各画素の第2オフセット量を算出する(S1112)。
【0116】
次いで、第1及び第2オフセット量に基づいて、受光面11の各画素の出力レベルを補正する(S1113)。
【0117】
このように、第6動作例では、軌跡が円軌道を描くように像位置を移動させることによって、像位置を連続的に移動させることができる。その結果、像位置の位置精度の位置が容易となる。また、継続的に等速直線運動を行うように像位置を移動させることによって、像位置を安定的に移動させることができる。また、像位置の円運動の1周期ごとに、容易に補正を行うことができる。
【0118】
上述した実施形態では、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組合せを行うことができ、これに限定されるものではない。上述した実施形態では、像シフト手段が光学系に組み込まれた撮像装置の例を説明したが、本発明では、像シフト手段はこれに限定されない。像シフト手段は、光学系全体をその光軸に直交する方向に変位させるものであってもよいし、撮像手段の受光面を、光学系の光軸に直交する方向に変位させるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、赤外画像用の撮像装置にも、可視画像用の撮像装置にも適用可能である。また、本発明は、中断することなく撮像することが要請されるモニタカメラに用いて好適である。また、本発明は、1画素列で構成された受光面を有するラインセンサにも適用可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 撮像装置
10 カメラ本体
11 受光面
12 撮像手段
13 画像処理手段
20 レンズユニット
21 光学系
22 像シフト手段
22a レンズ
131 差分算出部
132 オフセット量積算部
133 補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、
前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、
前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、
前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、
前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、
前記画像処理手段は、
像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、
像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、
前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、を有する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記像シフト手段は、画素の配列方向に、前記受光面の画素間隔のN倍(Nは正の整数)の距離だけ像位置を移動させ、
前記差分算出部は、像位置の移動方向に配列された画素列のN画素ずれた位置との差分をそれぞれ1画素ごとに算出し、
前記オフセット量算出部は、前記画素列の第1画素から第N画素の各画素を起点として、それぞれN画素ごとの差分を順次に積算し、前記画素列の画素ごとの出力レベルのオフセット量を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、撮像装置のシェーディングの影響を相殺するように、前記受光面の画素の位置に応じて、画素ごとの出力レベルを補正する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記像シフト手段は、像位置の移動の後、再び像位置の移動前の位置へ像位置を戻し、
前記撮像手段は、像位置を戻した後に、再度受光面上の像を撮像し、
前記画像処理手段は、同一画素について、像位置の移動前と像位置を戻した後との出力レベルの変動量を算出し、
前記オフセット量算出部は、所定の基準値以上の変動量を有する画素の差分を除外してオフセット量を算出する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、画素が2次元のマトリクス状に配列された受光面を有し、
前記像シフト手段は、前記受光面の画素の第1の配列方向と、前記第1の配列方向に直交する第2の配列方向にそれぞれ像位置を移動させ、
前記差分算出部は、
前記第1の配列方向への像位置の移動の前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を第1の差分として算出し、かつ、
前記第2の配列方向への像位置の移動の前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を第2の差分として算出し、
前記オフセット量算出部は、
前記第1の配列方向に配列された第1の画素列について、出力レベルの第1の差分を順次に積算して、前記第1の画素列の画素の第1のオフセット量を算出し、かつ、
前記第2の配列方向に配列された第2の画素列について、出力レベルの第2の差分を順次に積算して、前記第2の画素列の画素の第2のオフセット量を算出し、
前記補正部は、前記第1及び第2のオフセット量に基づいて、画素の出力レベルを補正する、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記像シフト手段は、前記受光面上の像の任意の点の軌跡が前記受光面上で円軌道を描くように、前記像位置を並進移動させ、
前記撮像手段は、前記像の任意の点が前記円軌道上の所定部分を移動する前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、
前記差分算出部は、前記像の任意の点が前記円軌道上の所定部分を移動する前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出し、
前記オフセット量算出部は、前記像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしを結ぶ直線方向を像位置の移動方向として、オフセット量を算出する、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記像シフト手段は、前記受光面上の像の任意の点が継続的に等速円運動を行うように、前記像位置を移動させる、
ことを特徴とする請求項6記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像手段及び前記画像処理手段は撮像装置本体を構成し、
前記光学系及び前記像シフト手段は、前記撮像装置本体から着脱自在なレンズユニットを構成し、
前記撮像装置本体は、前記受光面の画素間隔を含むデータを前記レンズユニットへ出力し、
前記像シフト手段は、前記データに基づいて像位置を移動させる、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像手段は、受光面上の像を撮像するタイミングに同期した同期信号を出力し、
前記像シフト手段は、前記同期信号に基づいて像位置を移動させる、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記像シフト手段は、像位置を移動させるタイミングに同期した同期信号を出力し、
前記撮像手段は、前記同期信号に基づいて受光面上の像を撮像する、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記撮像素子はボロメータあるいはマイクロボロメータである、
ことを特徴とする請求項1〜10記載の撮像装置。
【請求項12】
受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系とを備えた撮像装置の画素出力レベルの補正方法であって、
前記受光面上で像位置を移動させ、
像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、
像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出し、
像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出し、
オフセット量に基づいて、前記画素列の画素の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する、
ことを特徴とする撮像装置の画素出力レベル補正方法。
【請求項13】
赤外線の受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、
前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、
前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、
前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、
前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、
前記画像処理手段は、
像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、
像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、
前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、
を有する、ことを特徴とする赤外線カメラシステム。
【請求項14】
撮像装置本体と、前記撮像装置本体に着脱自在なレンズユニットとを備える交換可能なレンズシステムであって、
前記撮像装置本体は、
受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、
前記レンズユニットは、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、
前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、
前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、を備え、
前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、
前記画像処理手段は、
像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、
像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、
前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、を有する、
ことを特徴とする交換可能なレンズシステム。
【請求項1】
受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、
前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、
前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、
前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、
前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、
前記画像処理手段は、
像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、
像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、
前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、を有する、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記像シフト手段は、画素の配列方向に、前記受光面の画素間隔のN倍(Nは正の整数)の距離だけ像位置を移動させ、
前記差分算出部は、像位置の移動方向に配列された画素列のN画素ずれた位置との差分をそれぞれ1画素ごとに算出し、
前記オフセット量算出部は、前記画素列の第1画素から第N画素の各画素を起点として、それぞれN画素ごとの差分を順次に積算し、前記画素列の画素ごとの出力レベルのオフセット量を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、撮像装置のシェーディングの影響を相殺するように、前記受光面の画素の位置に応じて、画素ごとの出力レベルを補正する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記像シフト手段は、像位置の移動の後、再び像位置の移動前の位置へ像位置を戻し、
前記撮像手段は、像位置を戻した後に、再度受光面上の像を撮像し、
前記画像処理手段は、同一画素について、像位置の移動前と像位置を戻した後との出力レベルの変動量を算出し、
前記オフセット量算出部は、所定の基準値以上の変動量を有する画素の差分を除外してオフセット量を算出する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、画素が2次元のマトリクス状に配列された受光面を有し、
前記像シフト手段は、前記受光面の画素の第1の配列方向と、前記第1の配列方向に直交する第2の配列方向にそれぞれ像位置を移動させ、
前記差分算出部は、
前記第1の配列方向への像位置の移動の前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を第1の差分として算出し、かつ、
前記第2の配列方向への像位置の移動の前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を第2の差分として算出し、
前記オフセット量算出部は、
前記第1の配列方向に配列された第1の画素列について、出力レベルの第1の差分を順次に積算して、前記第1の画素列の画素の第1のオフセット量を算出し、かつ、
前記第2の配列方向に配列された第2の画素列について、出力レベルの第2の差分を順次に積算して、前記第2の画素列の画素の第2のオフセット量を算出し、
前記補正部は、前記第1及び第2のオフセット量に基づいて、画素の出力レベルを補正する、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記像シフト手段は、前記受光面上の像の任意の点の軌跡が前記受光面上で円軌道を描くように、前記像位置を並進移動させ、
前記撮像手段は、前記像の任意の点が前記円軌道上の所定部分を移動する前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、
前記差分算出部は、前記像の任意の点が前記円軌道上の所定部分を移動する前後に像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出し、
前記オフセット量算出部は、前記像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしを結ぶ直線方向を像位置の移動方向として、オフセット量を算出する、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記像シフト手段は、前記受光面上の像の任意の点が継続的に等速円運動を行うように、前記像位置を移動させる、
ことを特徴とする請求項6記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像手段及び前記画像処理手段は撮像装置本体を構成し、
前記光学系及び前記像シフト手段は、前記撮像装置本体から着脱自在なレンズユニットを構成し、
前記撮像装置本体は、前記受光面の画素間隔を含むデータを前記レンズユニットへ出力し、
前記像シフト手段は、前記データに基づいて像位置を移動させる、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像手段は、受光面上の像を撮像するタイミングに同期した同期信号を出力し、
前記像シフト手段は、前記同期信号に基づいて像位置を移動させる、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記像シフト手段は、像位置を移動させるタイミングに同期した同期信号を出力し、
前記撮像手段は、前記同期信号に基づいて受光面上の像を撮像する、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記撮像素子はボロメータあるいはマイクロボロメータである、
ことを特徴とする請求項1〜10記載の撮像装置。
【請求項12】
受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系とを備えた撮像装置の画素出力レベルの補正方法であって、
前記受光面上で像位置を移動させ、
像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、
像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出し、
像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出し、
オフセット量に基づいて、前記画素列の画素の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する、
ことを特徴とする撮像装置の画素出力レベル補正方法。
【請求項13】
赤外線の受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、
前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、
前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、
前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、
前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、
前記画像処理手段は、
像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、
像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、
前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、
を有する、ことを特徴とする赤外線カメラシステム。
【請求項14】
撮像装置本体と、前記撮像装置本体に着脱自在なレンズユニットとを備える交換可能なレンズシステムであって、
前記撮像装置本体は、
受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像を処理する画像処理手段と、を備え、
前記レンズユニットは、受光強度に応じた出力レベルの電気信号を出力する撮像素子で構成された画素を配列した受光面を有する撮像手段と、
前記受光面に被写体の像を結像させることができる光学系と、
前記受光面上で像位置を移動させる像シフト手段と、を備え、
前記撮像手段は、前記像シフト手段による像位置の移動の前後に、前記受光面上の像をそれぞれ撮像し、
前記画像処理手段は、
像位置の移動の前後に前記受光面上の像の同一部分をそれぞれ受光した画素どうしの出力レベルの差分を算出する差分算出部と、
像位置の移動方向に配列された画素列について、出力レベルの差分を順次に積算して、前記画素列の画素の出力レベルのオフセット量を算出するオフセット量算出部と、
前記画素列の画素のオフセット量に基づいて、前記画素列の画素間の出力レベルのばらつきを均一化するように、画素の出力レベルを補正する補正部と、を有する、
ことを特徴とする交換可能なレンズシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−209848(P2012−209848A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75285(P2011−75285)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】
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