説明

撮像装置、及び電子内視鏡システム

【課題】固体撮像素子で発生する漏れ込みによる画質の劣化を改善するのに好適な撮像装置を提供すること。
【解決手段】撮像装置を、カラーフィルタを持ち、被写体のカラー画像を撮像する固体撮像素子と、該固体撮像素子が出力する撮像信号を処理してモニタ表示可能なカラー画像を生成する画像生成部であって、該固体撮像素子の各画素が周辺画素に及ぼす光学的な又は電気的な混色による画素値変動を除去する画素値変動除去演算を所定の視感度補正処理前に行う画像生成部と、から構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被写体のカラー画像を撮像する撮像装置、及び該撮像装置を有する電子内視鏡システムに関連し、詳しくは、固体撮像素子の各画素が周辺画素に及ぼす光学的な又は電気的な原因で画質が劣化するという不具合を改善するのに好適な撮像装置、及び電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像素子を搭載した撮像装置が広く普及している。この種の撮像装置の具体的構成例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の撮像装置は、色差順次方式のカラーフィルタを有する単板式CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを備えている。当該撮像装置は、Mg信号の分光感度補正を行うことによって色再現性の改善を試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−336684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、固体撮像素子には、受光面に対して垂直な光だけが入射するとは限らない。受光面に対して角度をもって入射する光も存在する。その中でも入射角が特に大きい光は、カラーフィルタを斜めに透過して周辺画素に入射する虞がある。この場合、混色が生じるという不具合が指摘される。また、波長が長い光ほど受光素子の深い位置まで進達する。固体撮像素子においては、深い位置に進達して発生した電荷ほど周辺画素に漏れやすいという特性がある。このように、周辺画素に電荷が漏れた場合も混色が生じるという不具合が指摘される。
【0005】
以降の本明細書中では、ここで説明した光学的な又は電気的な原因で周辺画素に悪影響を及ぼして混色を生じさせる現象を「漏れ込み」と記す。漏れ込みは、固体撮像素子の小型化や多画素化に伴って画素配置が高密度化するほど生じやすくなり、無視できない問題となっている。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、固体撮像素子で発生する漏れ込みによる画質の劣化を改善するのに好適な撮像装置、及び該撮像装置を有する一形態としての電子内視鏡システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る撮像装置は、カラーフィルタを持ち、被写体のカラー画像を撮像する固体撮像素子と、該固体撮像素子が出力する撮像信号を処理してモニタ表示可能なカラー画像を生成する画像生成部とを有する。画像生成部は、固体撮像素子の各画素が周辺画素に及ぼす光学的な又は電気的な混色による画素値変動を、つまり、漏れ込みの影響を除去する画素値変動除去演算を所定の視感度補正処理前に行うことを特徴とする。
【0008】
上記の画素値変動除去演算を行って理想的な画素値を推定した上で画像を生成することで、漏れ込みによる画質劣化、例えば色再現性の劣化や、被写体の色に応じた色ずれ量の変動、解像度の低下等が効果的に抑えられる。また、ホワイトバランスの調整が困難になるという弊害も有効に避けられる。
【0009】
画像生成部は、視感度補正処理前の所定の色補間処理前に画素値変動除去演算を行う構成としてもよい。このように、色補間処理に先立って画素値変動除去演算を行う構成を採用した場合、色補間処理以降を既存と同一のプロセスとすることができ、回路設計が容易になる。
【0010】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る電子内視鏡システムは、カラーフィルタを持ち、被写体のカラー画像を撮像する固体撮像素子を備える電子スコープと、該固体撮像素子が出力する撮像信号を処理してモニタ表示可能なカラー画像を生成する画像生成部を備えるプロセッサとを有する。画像生成部は、固体撮像素子の各画素が周辺画素に及ぼす光学的な又は電気的な混色による画素値変動を、つまり、漏れ込みの影響を除去する画素値変動除去演算を所定の視感度補正処理前に行うことを特徴とする。画像生成部は、例えば、視感度補正処理前の所定の色補間処理前に画素値変動除去演算を行う構成としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固体撮像素子で発生する漏れ込みによる画質の劣化を改善するのに好適な撮像装置、及び該撮像装置を有する一形態としての電子内視鏡システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の電子内視鏡システムの外観図である。
【図2】本発明の実施形態の電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態のプロセッサが有する信号処理回路及びその周辺の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態の逆漏れ込みマトリクス回路による逆マトリクス処理を説明するための漏れ込みモデルである。
【図5】漏れ込みの影響を除去しない場合と除去する場合との固体撮像素子の分光特性を比較検討するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の撮像装置を搭載した電子内視鏡システムについて説明する。なお、本実施形態の電子内視鏡システムは、当該撮像装置を搭載する具体的構成の一例に過ぎない。本発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやカムコーダ等の固体撮像素子を有する各種機器に搭載することができる。
【0014】
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の外観図である。図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、被写体を撮影するための電子スコープ100を有している。電子スコープ100は、可撓性を有するシース(外皮)11aによって外装された可撓管11を備えている。可撓管11の先端には、硬質性を有する樹脂製筐体によって外装された先端部12が連結されている。可撓管11と先端部12との連結箇所にある湾曲部14は、可撓管11の基端に連結された手元操作部13からの遠隔操作(具体的には、湾曲操作ノブ13aの回転操作)によって屈曲自在に構成されている。この屈曲機構は、一般的な電子スコープに組み込まれている周知の機構であり、湾曲操作ノブ13aの回転操作に連動した操作ワイヤの牽引によって湾曲部14を屈曲させるように構成されている。先端部12の方向が上記操作による屈曲動作に応じて変わることにより、電子スコープ100による撮影領域が移動する。
【0015】
図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、プロセッサ200を有している。プロセッサ200は、電子スコープ100からの信号を処理する信号処理装置と、自然光の届かない体腔内を電子スコープ100を介して照明する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施形態では、信号処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。
【0016】
プロセッサ200には、電子スコープ100の基端に設けられたコネクタ部10に対応するコネクタ部20が設けられている。コネクタ部20は、コネクタ部10に対応する連結構造を有し、電子スコープ100とプロセッサ200とを電気的にかつ光学的に接続するように構成されている。
【0017】
図2は、電子内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、電子内視鏡システム1は、所定のケーブルを介してプロセッサ200に接続されたモニタ300を有している。なお、図1においては、図面を簡略化するため、モニタ300を図示省略している。
【0018】
図2に示されるように、プロセッサ200は、システムコントローラ202、タイミングコントローラ204を有している。システムコントローラ202は、電子内視鏡システム1を構成する各要素を制御する。タイミングコントローラ204は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各種回路に出力する。
【0019】
ランプ208は、ランプ電源イグナイタ206による始動後、白色光を放射する。ランプ208には、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプが適している。ランプ208から放射された照明光は、集光レンズ210によって集光されつつ絞り212を介して適正な光量に制限されて、LCB(light carrying bundle)102の入射端に入射する。
【0020】
絞り212には、図示省略されたアームやギヤ等の伝達機構を介してモータ214が機械的に連結している。モータ214は例えばDCモータであり、ドライバ216のドライブ制御下で駆動する。絞り212は、モニタ300に表示される映像を適正な明るさにするため、モータ214によって動作して開度が変化して、ランプ208から放射された照明光の光量を開度に応じて制限する。適正とされる映像の明るさの基準は、術者によるフロントパネル218の輝度調節操作に応じて設定変更される。なお、ドライバ216を制御して輝度調整を行う調光回路は周知の回路であり、本明細書においては省略することとする。
【0021】
LCB102の入射端に入射した照明光は、LCB102内を全反射を繰り返すことによって伝播する。LCB102内を伝播した照明光は、電子スコープ100の先端に配されたLCB102の射出端から射出する。LCB102の射出端から射出した照明光は、配光レンズ104を介して被写体を照明する。被写体からの反射光は、対物レンズ106を介して固体撮像素子108の受光面上の各画素で光学像を結ぶ。
【0022】
固体撮像素子108は、IR(InfraRed)カットフィルタ108a、ベイヤ配列カラーフィルタ108bの各種フィルタが受光面前面に配置された単板式カラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであり、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの各色に応じた撮像信号に変換する。変換された撮像信号は、ドライバ信号処理回路112に入力してAD変換、信号増幅等の処理後、信号処理回路(画像生成部)220に出力される。なお、別の実施形態では、固体撮像素子108は、CMOSイメージセンサに限らず、CCDイメージセンサであってもよい。
【0023】
ドライバ信号処理回路112は、メモリ114にアクセスして電子スコープ100の固有情報を読み出す。電子スコープ100の固有情報には、例えば固体撮像素子108の画素数や感度、対応可能なレート、型番等が含まれる。ドライバ信号処理回路112は、メモリ114から読み出した固有情報をシステムコントローラ202に出力する。
【0024】
システムコントローラ202は、電子スコープ100の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続中の電子スコープに適した処理がされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。なお、システムコントローラ202は、電子スコープの型番と、この型番の電子スコープに適した制御情報とを対応付けたテーブルを有した構成としてもよい。この場合、システムコントローラ202は、対応テーブルの制御情報を参照して、プロセッサ200に接続中の電子スコープに適した処理がされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0025】
タイミングコントローラ204は、システムコントローラ202によるタイミング制御に従って、ドライバ信号処理回路112にクロックパルスを供給する。ドライバ信号処理回路112は、タイミングコントローラ204から供給さるクロックパルスに従って、固体撮像素子108をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。
【0026】
図3は、信号処理回路220及びその周辺の構成を示すブロック図である。ドライバ信号処理回路112が出力した撮像信号は、図3に示されるように、信号処理回路220が有する逆漏れ込みマトリクス回路220aに入力する。逆漏れ込みマトリクス回路220aに入力した撮像信号は、逆漏れ込みマトリクス回路220aによる逆マトリクス処理後、色補間回路220bに入力する。
【0027】
逆漏れ込みマトリクス回路220aによる逆マトリクス処理について説明する。逆マトリクス処理は、上述した漏れ込みによる画質に対する悪影響を抑制するのに好適である。ここでいう悪影響には、例えば、色再現性の劣化や、被写体の色に応じた色ずれ量の変動、解像度の低下などが挙げられる。また、ホワイトバランスの調整が困難になるという弊害も悪影響として挙げられる。
【0028】
図4は、逆漏れ込みマトリクス回路220aによる逆マトリクス処理を説明するための漏れ込みモデルである。図4の各ブロックは、ベイヤ型画素配置を模式的に示している。逆マトリクス処理の説明は、図4に示される画素R5に着目して行う。画素R5から各周辺画素(画素B1、G4、B2、G6、G7、B3、G9、B4)への漏れ込み、又はこれら周辺画素から画素R5への漏れ込みは、図4中矢印で視覚化して模式的に表現している。なお、画素R5に着目して行う説明の中では、便宜上、画素R5とその周辺画素との間の直接的な漏れ込み(つまり、図4中矢印で表現した漏れ込み)以外の漏れ込みは考慮しない。
【0029】
漏れ込みを考慮した実測的な画素値には当該画素と同一の符号を付し、漏れ込みが無い場合の理想的な画素値には当該符号に更に0を付す。例えば画素R5の場合は、実測画素値に符号R5を付し、理想画素値に符号R50を付す。画素R5から各周辺画素への漏れ込みによる変動画素値をR5outと定義し、各周辺画素から画素R5への漏れ込みによる変動画素値をR5inと定義した場合、次の式(1)が満たされる。
R50=R5+R5out−R5in・・・(1)
【0030】
変動画素値R5outは、画素G4、G9への漏れ込み量をRα・R50と定義し、画素G6、G7への漏れ込み量をRβ・R50と定義し、画素B1、B2、B3、B4への漏れ込み量をRγ・R50と定義した場合に、次の式(2)で表される。
R5out=(2Rα+2Rβ+4Rγ)R50・・・(2)
なお、固体撮像素子108の各画素の配置は、上下、左右、斜めの各々で空間的に均一である。上記の漏れ込み量は、着目画素から等距離に位置する各隣接画素では着目画素からの漏れ込み量が同一であるという仮定に基づいて定義されている。
【0031】
変動画素値R5inは、画素G4、G9からの漏れ込み量をG’α(G40+G90)と定義し、画素G6、G7からの漏れ込み量をGβ(G60+G70)と定義し、画素B1、B2、B3、B4からの漏れ込み量をBγ(B10+B20+B30+B40)と定義した場合に、次の式(3)で表される。なお、R画素を持つ水平ラインに含まれるGの画素値に関する係数をGで表現し、B画素を持つ水平ラインに含まれるGの画素値に関する係数をG’で表現している。
R5in=G’α(G40+G90)+Gβ(G60+G70)+Bγ(B10+B20+B30+B40)・・・(3)
なお、各隣接画素からの漏れ込み量を規定する係数(つまり、隣接画素の画素値に基づく漏れ込み量の程度)は、着目画素から等距離に位置する各隣接画素では同一であるという仮定に基づいて定められている。
【0032】
理想画素値と実測画素値との差は微差であるため、近似することができる。式(2)、(3)は、近似により次の式(4)、(5)で表される。
R5out≒(2Rα+2Rβ+4Rγ)R5・・・(4)
R5in≒G’α(G4+G9)+Gβ(G6+G7)+Bγ(B1+B2+B3+B4)・・・(5)
【0033】
式(1)に式(4)、(5)を代入すると、次の式(6)が満たされる。
【数1】

【0034】
式(6)右辺の実測画素値は既知であるため、式(6)右辺の各係数を求めることにより、漏れ込みが発生する前の理想画素値R50を推定することができる。説明の便宜上、この係数項を「逆漏れ込みマトリクス」と記す。
【0035】
固体撮像素子108の全ての画素の理想画素値を推定するためには、一のR、B画素、二のG画素を持つ2×2の正方行列(つまり、ベイヤ配列の一単位)の逆漏れ込みマトリクスを求める必要がある。ここでは、画素R5と一単位を構成する画素G7、G9、B4の逆漏れ込みマトリクスを、画素R5の場合と同様の方法で求める。
【0036】
画素G7から画素B2、B4への漏れ込み量をGα・G70と定義し、画素G7から画素R5、R6への漏れ込み量をGβ・G70と定義し、画素G7から画素G4、G5、G9、G10への漏れ込み量をGγ・G70と定義し、画素B2、B4から画素G7への漏れ込み量をBα(B20+B40)と定義し、画素R5、R6から画素G7への漏れ込み量をRβ(R50+R60)と定義し、画素G4、G5、G9、G10から画素G7への漏れ込み量をG’γ(G40+G50+G90+G100)と定義した場合に、次の式(7)が満たされる。
【数2】

【0037】
画素G9から画素R5、R8への漏れ込み量をG’α・G90と定義し、画素G9から画素B3、B4への漏れ込み量をG’β・G90と定義し、画素G9から画素G6、G7、G11、G12への漏れ込み量をG’γ・G90と定義し、画素R5、R8から画素G9への漏れ込み量をRα(R50+R80)と定義し、画素B3、B4から画素G9への漏れ込み量をBβ(B30+B40)と定義し、画素G6、G7、G11、G12から画素G9への漏れ込み量をGγ(G60+G70+G110+G120)と定義した場合に、次の式(8)が満たされる。
【数3】

【0038】
画素B4から画素G7、G12への漏れ込み量をBα・B40と定義し、画素B4から画素G9、G10への漏れ込み量をBβ・B40と定義し、画素B4から画素R5、R6、R8、R9への漏れ込み量をBγ・B40と定義し、画素G7、G12から画素B4への漏れ込み量をGα(G70+G120)と定義し、画素G9、G10から画素B4への漏れ込み量をG’β(G90+G100)と定義し、画素R5、R6、R8、R9から画素B4への漏れ込み量をRγ(R50+R60+R80+R90)と定義した場合に、次の式(9)が満たされる。
【数4】

【0039】
式(6)〜(9)を一式にまとめると、次の式(10)が導かれる。
【数5】

【0040】
式(10)の符号Cは、ベイヤ配列の一単位の逆漏れ込みマトリクスを示している。逆漏れ込みマトリクスCに含まれる未知の係数(具体的には、Rα、Rβ、Rγ、Gα、Gβ、Gγ、G’α、G’β、G’γ、Bα、Bβ、Bγの12の係数)を求めることにより、固体撮像素子108の全ての画素の理想画素値の推定値を算出することができる。これらの未知の係数は、例えば製造段階で試験や計測等を重ねることによって予め求められる。
【0041】
逆漏れ込みマトリクス回路220aは、ドライバ信号処理回路112からの撮像信号(つまり、実測画素値)に対して逆漏れ込みマトリクスCによるマトリクス変換を行い、漏れ込みが発生していない状態の撮像信号の推定値(つまり、理想画素値)を算出して色補間回路220bに出力する。
【0042】
色補間回路220bは、各画素につき周辺画素の情報を用いて補間演算を行い、各画素の撮像信号にRGBの3つの色情報を持たせる。色補間処理後の撮像信号は、マトリクス回路220cに入力してマトリクス演算(RGBの各色に対する視感度補正処理)が施された後、RGBの色信号別にフレームメモリ220R、220G、220Bにフレーム単位でバッファリングされる。バッファリングされた各色信号は、タイミングコントローラ204によって制御されたタイミングで各フレームメモリから掃き出されて、DAコンバータ220dによるDA変換後、エンコーダ220eによってNTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換される。変換された映像信号がモニタ300に順次入力することにより、被写体のカラー画像がモニタ300の表示画面上に表示される。
【0043】
マトリクス回路220cによるマトリクス演算後のRGBの色信号は、Y/C分離回路220fにも入力する。Y/C分離回路220fは、入力したRGBの色信号を輝度信号Y、色差信号Cb、Crに変換して画像圧縮回路220gに出力する。画像圧縮回路220gは、入力した輝度信号Y、色差信号Cb、CrをJPEG(Joint Photographic Experts Group)等のフォーマットで圧縮して、プロセッサ200のカードスロット222に差し込まれたメモリカード400に保存する。
【0044】
図5(a)は、漏れ込みの影響を除去しない場合の(つまり、図3に示す信号処理回路220から逆漏れ込みマトリクス回路220aを取り除いた構成の場合の)固体撮像素子108の分光特性を示す図である。図5(b)は、漏れ込みの影響を除去した場合の(つまり、信号処理回路220が図3に示す構成の場合の)固体撮像素子108の分光特性を示す図である。図5(a)、(b)の各図の縦軸は、正規化された強度を示し、横軸は、波長(単位:nm)を示す。
【0045】
逆漏れ込みマトリクス回路220aによる逆マトリクス処理を行わずに色補間以降の処理を行った場合は、一部の分光特性(ここではB、R)が劣化する。例えば、Bの分光特性は、図5(a)に示されるように、500nmを超えた辺りで漸進的に低下すべきところ、殆ど低下しない又は急激に低下する領域が存在する。Rの分光特性についても、図5(a)に示されるように、500nmを超えた辺りで漸進的に増加すべきところ、殆ど増加しない又は急激に増加する領域が存在する。そのため、色再現性の劣化や、被写体の色に応じた色ずれ量の変動、解像度の低下、ホワイトバランスの調整に関する弊害などの種々の悪影響が抑えられない。
【0046】
逆漏れ込みマトリクス回路220aによる逆マトリクス処理後に色補間以降の処理を行った場合は、分光特性が改善する。具体的には、RGG’Bの何れの分光特性も、図5(b)に示されるように、ピークを中心として漸進的に増加し又は低下する。そのため、色再現性の劣化や、被写体の色に応じた色ずれ量の変動、解像度の低下、ホワイトバランスの調整に関する弊害などの種々の悪影響が効果的に抑えられる。逆漏れ込みマトリクス回路220aによる逆マトリクス処理を行うことにより、漏れ込みによる画質劣化が改善された画像がモニタ300に表示されたりメモリカード400に保存されたりすることとなる。附言するに、従来であれば、カラーチャートを用いて行った色設計に適さない配色等の被写体を撮像した場合は、各画素の漏れ込みによる色変化が設計時の想定とは異なるという不具合があった。しかし、本実施形態によれば、色補間回路220b以降の回路は、逆マトリクス処理によって漏れ込みによる色変化の影響が除去されているため、色設計に適合した色を処理することができる。すなわち、本実施形態の構成を採用することで、漏れ込みによる色変化を考慮する必要が無くなり、色設計が容易になるという効果が奏される。
【0047】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば本実施形態では、色補間処理前に(つまり、各画素が複数の色情報を持つ前に)逆マトリクス処理を行うことで、逆漏れ込みマトリクス回路220aの後段を既存と同一の構成にし、設計容易性の向上を達成している。但し、マトリクス回路220cの前段であれば色補間回路220bの後段に(例えば色補間回路220bとマトリクス回路220cとの間に)逆漏れ込みマトリクス回路220aを配置しても、逆マトリクス処理による画質改善は達成することができる。
【0048】
ベイヤ配列カラーフィルタ108bは、本実施形態では原色フィルタであるが、別の実施形態では補色フィルタとしてもよい。
【0049】
逆漏れ込みマトリクス回路220aは、本実施形態ではプロセッサ200が有する信号処理回路220の一部であるが、別の実施形態では固体撮像素子108と1チップ化されて電子スコープ100の先端部12に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 電子内視鏡システム
100 電子スコープ
200 プロセッサ
220 信号処理回路
220a 逆漏れ込みマトリクス回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルタを持ち、被写体のカラー画像を撮像する固体撮像素子と、
前記固体撮像素子が出力する撮像信号を処理してモニタ表示可能なカラー画像を生成する画像生成部であって、該固体撮像素子の各画素が周辺画素に及ぼす光学的な又は電気的な混色による画素値変動を除去する画素値変動除去演算を所定の視感度補正処理前に行う画像生成部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画像生成部は、前記視感度補正処理前の所定の色補間処理前に前記画素値変動除去演算を行うことを特徴とする、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
カラーフィルタを持ち、被写体のカラー画像を撮像する固体撮像素子を備える電子スコープと、
前記固体撮像素子が出力する撮像信号を処理してモニタ表示可能なカラー画像を生成する画像生成部であって、該固体撮像素子の各画素が周辺画素に及ぼす光学的な又は電気的な混色による画素値変動を除去する画素値変動除去演算を所定の視感度補正処理前に行う画像生成部を備えるプロセッサと、
を有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記画像生成部は、前記視感度補正処理前の所定の色補間処理前に前記画素値変動除去演算を行うことを特徴とする、請求項3に記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−156214(P2011−156214A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21277(P2010−21277)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】