説明

撮像装置、撮像方法、およびプログラム

【課題】復元アーチファクトを低減することができる撮像装置を提供すること。
【解決手段】撮像装置は、光学系と、光学系を通過した光をそれぞれ受光する複数の撮像素子を有する撮像部とを備え、光学系による点像強度分布は光軸に対して回転非対称であり、複数の撮像素子は、特定の方向に周期的に配列されており、点像強度分布の主成分方向は、複数の撮像素子が周期的に配列された方向と異なる。複数の撮像素子は、異なる複数の方向に周期的に配列されており、点像強度分布の主成分方向は、複数の撮像素子が周期的に配列された複数の方向のいずれとも異なってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
3次曲面を有する位相板を使用することによって光学システムの光伝達関数を焦点位置から或るレンジ内で実質的に一定に留めるとする技術が知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【特許文献1】特開2006−94469号公報
【特許文献2】特表平11−500235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献に記載の光学系によると、点像が特定の方向に広がる。点像が広がる方向に撮像素子が規則的に並んでいると、アーチファクトが発生し易くなる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様によると、撮像装置であって、光学系と、光学系を通過した光をそれぞれ受光する複数の撮像素子を有する撮像部とを備え、光学系による点像強度分布は光軸に対して回転非対称であり、複数の撮像素子は、特定の方向に周期的に配列されており、点像強度分布の主成分方向は、複数の撮像素子が周期的に配列された方向と異なる。
【0005】
複数の撮像素子は、異なる複数の方向に周期的に配列されており、点像強度分布の主成分方向は、複数の撮像素子が周期的に配列された複数の方向のいずれとも異なってよい。
【0006】
点像強度分布の複数の主成分方向のそれぞれは、複数の撮像素子が周期的に配列された複数の方向のいずれとも異なってよい。
【0007】
点像強度分布の複数の主成分方向は、それぞれ複数の撮像素子が周期的に配列された方向と異なってよい。
【0008】
複数の撮像素子は格子状に配列され、点像強度分布の複数の主成分方向は、格子配列における行方向および列方向のいずれとも異なってよい。
【0009】
複数の撮像素子は格子状に配列され、点像強度分布の複数の主成分方向は、格子配列における行方向および列方向、ならびに、当該行方向と略45度の角度差を持つ方向のいずれとも異なってよい。
【0010】
撮像部は、複数の撮像素子に対応する位置に配列され、それぞれ通過波長域が異なる複数のフィルタ素子を有するカラーフィルタ部をさらに備え、複数の撮像素子は、複数のフィルタ素子を通過した光を受光し、通過波長域が同じ複数のフィルタ素子は、特定の方向に周期的に配列されており、点像強度分布の主成分方向は、通過波長域が同じ複数のフィルタ素子が周期的に配列された方向と異なってよい。
【0011】
点像強度分布に基づいて、複数の撮像素子により撮像された画像における光学系による点像の広がりが補正された補正画像を生成する画像処理部をさらに備えてよい。
【0012】
光学系は、結像レンズと、物点からの光に回転非対称な位相差分布を与える光変調部とを有し、複数の撮像素子は、結像レンズおよび光変調部を通過した光を受光し、光変調部が与える位相差分布の主成分方向は、複数の撮像素子が周期的に配列された方向と異なってよい。
【0013】
光学系は、光変調部による光の波面変調により、物点からの光の広がりを物点までの距離に対して略一定にしてよい。
【0014】
光変調部は、光軸を原点とする座標に関する3次の位相差分布を物点からの光に与えてよい。
【0015】
本発明の第2の態様によると、撮像方法であって、光軸に対して回転非対称な点像強度分布を持つ光学系を通過した光をそれぞれ受光する複数の撮像素子であり、点像強度分布の主成分方向と異なる特定の方向に周期的に配列された複数の撮像素子により、画像を撮像する撮像段階と、光学系による点像強度分布に基づいて、複数の撮像素子により撮像された画像における光学系による点像の広がりが補正された補正画像を生成する画像処理段階と、を備える。
【0016】
本発明の第3の態様によると、撮像装置用のプログラムであって、コンピュータを、光軸に対して回転非対称な点像強度分布を持つ光学系を通過した光をそれぞれ受光する複数の撮像素子であり、点像強度分布の主成分方向と異なる特定の方向に周期的に配列された複数の撮像素子により、画像を撮像する撮像部、光学系による点像強度分布に基づいて、複数の撮像素子により撮像された画像における光学系による点像の広がりが補正された補正画像を生成する画像処理段階として機能させる。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、一実施形態に係わる撮像装置110のブロック構成の一例を示す。撮像装置110は、アーチファクトを低減することができる撮像装置を提供する。なお、撮像装置110としては、デジタルスチルカメラの他、撮像機能付きの携帯電話端末、監視カメラ、内視鏡などの、撮像機能を有する撮像機器を例示することができる。
【0020】
撮像装置110は、光学系100、カラーフィルタ168、受光部170、撮像画像生成部172、画像記憶部174、画像取得部130、画像処理部180、画像処理パラメータ格納部188、出力部190、および、制御部120を備える。光学系100は、複数の結像レンズ102aおよびb、光変調部104、ならびに、絞り部106を備える。なお、以後の説明においては、結像レンズ102aおよびbを、結像レンズ102と総称する場合がある。
【0021】
絞り部106は、光学系100を通過する光を絞る。本図の例では、絞り部106は、結像レンズ102および光変調部104の少なくともいずれかの光学素子の間に設けられている。他の構成では、絞り部106は、結像レンズ102および光変調部104のいずれの光学素子より物体側に設けられてもよく、結像レンズ102および光変調部104のいずれの光学素子より受光部170側に設けられてもよい。
【0022】
光学系100は、光変調部104による光の波面変調により、物点からの光の広がりを物点までの距離に対して略一定にする。なお、光変調部104の光学特性については、図2などに関連して後述する。
【0023】
カラーフィルタ168は、光学系100の光軸に垂直な面上に2次元的に配置された複数のフィルタ素子を有する。各フィルタ素子は、特定の波長域の光を選択的に透過する。
【0024】
受光部170は、光学系100を通過した被写体光を受光する。具体的には、受光部170は、光学系100およびカラーフィルタ168を通過した被写体光を受光する。受光部170は、光学系100の光軸に垂直な面上に2次元的に配置された複数の撮像素子を有する。複数の撮像素子は、光学系100を通過した光をそれぞれ受光する。具体的には、複数の撮像素子は、光学系100およびカラーフィルタ168を通過した光をそれぞれ受光する。
【0025】
なお、受光部170が有する撮像素子は、CCD型の撮像素子であってよく、CMOS型の撮像素子であってもよい。各撮像素子の受光量を示す撮像信号は、撮像画像生成部172に供給される。
【0026】
撮像画像生成部172は、撮像信号に基づき画像を生成する。撮像画像生成部172は、各撮像素子からの撮像信号をそれぞれA/D変換することにより、デジタルの画像を生成する。なお、受光部170、および撮像画像生成部172は、この発明における撮像部として機能する。
【0027】
画像記憶部174は、撮像画像生成部172が生成した画像を記憶する。画像記憶部174は、半導体メモリ、磁気メモリなどの記憶素子を有してよい。なお、画像記憶部174は、揮発性の記憶素子を有してよく、不揮発性の記憶素子を有してもよい。画像記憶部174は、撮像画像生成部172が生成した画像を記憶素子に記憶してよい。
【0028】
画像取得部130は、画像記憶部174が記憶している画像を取得する。このように、画像取得部130は、光学系100を通じて撮像された画像を取得することができる。なお、以後の説明において単に"画像"と記されたものは、撮像装置110により撮像された画像であり、画像取得部130により取得された画像を指すものとする。
【0029】
画像処理部180は、光学系100による点像強度分布に基づいて、複数の撮像素子により撮像された画像における光学系100による点像の広がりが補正された補正画像を生成する。例えば、画像処理部180は、光学系100の光学伝達関数に基づく逆フィルタを画像に施すことにより、補正画像を生成してよい。このように、画像処理部180は、撮像された画像に、光学系100の光学伝達関数に基づく補正処理を施すことができる。
【0030】
出力部190は、画像処理部180により生成された補正画像を出力する。例えば、出力部190は、画像を記録する記録媒体に補正画像を出力してよい。出力部190は、撮像装置110の外部に補正画像を出力してよい。例えば、出力部190は、パーソナルコンピュータ、プリンタ、ディスプレイなどの出力機器に、補正画像を出力してよい。
【0031】
なお、制御部120は、光学系100により結像位置および絞り部106の絞り開度など、光学系100の結像特性を制御する。例えば、制御部120は、結像レンズ102の位置、絞り部106の絞り値を制御することにより、光学系100による結像位置および絞り部106の絞り開度を制御してよい。結像特性としては、結像位置および絞り開度の他にも、光学系100の焦点距離を例示することができる。
【0032】
画像処理パラメータ格納部188は、光学系100の結像特性に対応づけて、画像に適用すべき補正処理に用いる画像処理パラメータを格納している。画像処理パラメータとしては、上述した逆フィルタを例示することができる。画像処理部180は、制御部120により制御された結像特性に適合する結像特性に対応づけて画像処理パラメータ格納部188が格納している画像処理パラメータを用いて、画像に補正処理を施してよい。
【0033】
なお、光学系100は、像高に応じて結像特性も変わる。このため、画像処理パラメータ格納部188は、画像エリアに対応づけて画像処理パラメータを格納してよい。画像処理部180は、画像処理パラメータ格納部188が格納している画像処理パラメータを用いて、当該画像処理パラメータに対応づけられた画像エリアの画像に補正処理を施してよい。
【0034】
なお、画像取得部130、画像処理部180、画像処理パラメータ格納部188、および出力部190は、撮像装置110とは別の画像処理装置が備えてよい。画像処理装置は、撮像装置110から、撮像された画像を取得することにより、上述の補正処理を施すことができる。このような画像処理装置としては、パーソナルコンピュータなどの電子情報処理装置を例示することができる。
【0035】
図2は、光変調部104が与える位相差分布の一例を示す。本図では、光変調部104が与える位相差分布を等高線表示したものが示されている。本図の位相差分布は、光軸を原点とする直交座標の各座標値に関して、3次式で表される曲面形状を有する光変調部104による位相差分布を示す。光学系100の光軸に直交する2軸をx、yとして、αを定数としたとき、光変調部104による波面収差はα(x+y)で表される。
【0036】
なお、このような光変調部104を含む光学系100によると、光変調部104による光の波面変調により、物点からの光の広がりが物点までの距離に対して略一定になる。例えば、光変調部104による光の波面変調により、受光部170の受光面における物点からの光の広がりが、物点までの距離に対して略一定になる。
【0037】
このような光変調部104により、光軸を原点とする座標に関する3次の位相差分布が物点からの光に与えられる。これにより、光学系100を通過した光は、物点の位置によらず、受光部170の受光面において略一様なぼけを伴って結像する。ぼけた被写体像は、画像処理部180における逆フィルタ等を用いた補正処理により、比較的に鮮明な被写体像に復元され得る。
【0038】
図3は、受光部170およびカラーフィルタ168の素子配列の一例を示す。受光部170は、撮像素子311、撮像素子312−1、撮像素子312−2、および撮像素子313を有する撮像素子ユニット310が2次元的に配列されて形成される。このように、受光部170は、格子状に配列された複数の撮像素子を有する。
【0039】
カラーフィルタ168は、フィルタ素子321、フィルタ素子322−1、フィルタ素子322−2、フィルタ素子323などが、撮像素子と同様の配置で格子状に配列されて形成される。フィルタ素子321は、赤色の波長域の光を選択的に透過する。フィルタ素子322−1およびフィルタ素子322−2は、緑色の波長域の光を選択的に透過する。フィルタ素子323は、青色の波長域の光を選択的に透過する。本図において、赤色の波長域を示すR、緑色の波長域を示すG、青色の波長域を示すBのいずれかの文字が、フィルタ素子の配列を示す格子内に付されている。各フィルタ素子は、当該文字が示す波長域の光を選択的に透過する。
【0040】
受光部170およびカラーフィルタ168は、複数の撮像素子が配列された格子と、複数のフィルタ素子の格子とが、それぞれ光軸に沿って対応する位置に位置するよう、光軸方向に軸合わせして並べられる。これにより、撮像素子311、撮像素子312−1、撮像素子312−2、撮像素子313は、それぞれフィルタ素子321、フィルタ素子322−1、フィルタ素子322−2、およびフィルタ素子323が透過した光を受光する。
【0041】
このように、カラーフィルタ168は、複数の撮像素子に対応する位置に配列され、それぞれ通過波長域が異なる複数のフィルタ素子を有する。そして、受光部170が有する複数の撮像素子は、それぞれが対応する複数のフィルタ素子を通過した光を受光する。具体的には、複数の撮像素子は、結像レンズ102、絞り部106、光変調部104、および、対応する複数のフィルタ素子を通過した光を受光する。
【0042】
図4は、光学系100による点像強度分布の一例を示す。本図で示される点像強度分布は、上述した3次式で表される曲面形状の光変調部104を有する光学系100により得られたものとする。ここでは、紙面に向かって横方向がx軸の向きであり、縦方向がy軸の向きであるとする。
【0043】
本点像強度分布が示すように、光学系100による点像強度分布は、光軸に対して回転非対称になっている。また、x軸方向およびy軸方向に点像強度分布の主成分方向があることがわかる。これは、光変調部104がx軸方向、y軸方向にそれぞれ位相差分布を与えることに対応している。光変調部104が物点からの光に回転非対称な位相差分布を与えることにより、光学系100による点像強度分布が回転非対称になっている。
【0044】
図5は、フィルタ素子の周期的な配列方向の一例を示す。以下に、緑色の波長域の光を通過するフィルタ素子を例に挙げて、フィルタ素子の周期的な配列方向について説明する。ここでも、紙面に向かって横方向がx軸の向きであり、縦方向がy軸の向きであるとする。
【0045】
緑色の波長域を通過するフィルタ素子は、方向530および方向540に、最も短いピッチで規則的に配列されている。また、緑色の波長域を通過するフィルタ素子は、方向510および方向520にも、2素子分のピッチで規則的に配列されている。このように、緑色の波長域を通過するフィルタ素子は、主として方向510、方向520、方向530、方向540に、所定のピッチで規則的に配列されていることがわかる。
【0046】
ここで、光学系100が図4で説明した点像を与える場合、光学系100を通過した光は、方向510および方向520が示す方向に広がることがわかる。つまり、撮像素子によって規則的にサンプリングされる空間的なサンプリング方向と、点像の広がり方向とが略一致している。このように撮像素子による空間サンプリング周期と、点像における主要な強度変化周期とが近い場合、撮像素子で離散的にサンプリングされた測定値からは、点像強度分布をきちんと再現することができない場合がある。
【0047】
このようなことを防ぐためには、光学系100による点像が、方向510および方向520と異なる方向に広がっていることが好ましい。より好ましくは、光学系100による点像が、方向510、方向520、方向530、方向540のいずれとも異なる方向に広がっていることが好ましい。
【0048】
図6は、周期的な配列方向と異なる方向に広がる点像の一例を示す。ここでも、紙面に向かって横方向がx軸の向きであり、縦方向がy軸の向きであるとする。
【0049】
光学系100による点像が本図に示される向きに広がっている場合には、点像強度分布の複数の主成分方向は、撮像素子の格子配列における行方向および列方向のいずれとも異なっている。また、点像強度分布の複数の主成分方向は、格子配列における行方向および列方向、ならびに、当該行方向と略45度の角度差を持つ方向のいずれとも異なっている。光変調部104が与える位相差分布の主成分方向を、当該周期的な配列方向と異ならせることにより、点像強度分布の複数の主成分方向のそれぞれを、複数の撮像素子が周期的に配列された方向と異ならせることができる。
【0050】
なお、光学系100による点像強度分布における複数の主成分方向のいずれの主成分方向も、複数の撮像素子が周期的に配列された複数の方向のいずれとも異なっていることがわかる。これにより、点像の広がり方向に撮像素子が規則的にサンプリングすることを実質的に防ぐことができる。
【0051】
なお、ここまでの説明では、緑色の波長域の光に対する空間的サンプリング方向を例に挙げて説明した。赤色の波長域の光に対する空間的サンプリング方向、および、緑色の波長域の光に対する空間的サンプリング方向についても、同様のことがいえる。すなわち、光学系100による点像強度分布の主成分方向は、通過波長域が同じ複数のフィルタ素子が周期的に配列された方向と異なっていることが好ましい。なお、主成分方向とは、点像の広がりの主要方向であってよい。主成分方向は、例えば点像強度を主成分分析することによって特定され得る。
【0052】
また、以上の説明は、カラー値の空間的サンプリング方向を例に挙げて説明したが、輝度値に対する空間的サンプリング方向についても同様のことがいえる。つまり、図3に示されるように、複数の撮像素子が特定の方向に周期的に配列されている場合に、点像強度分布の主成分方向が、当該周期的に配列された方向と異なることが好ましい。当該主成分方向が、当該周期的に配列された複数の方向のいずれとも異なることがより好ましい。なお、複数の撮像素子が周期的に配列された複数の方向としても、方向510、方向520、方向530、および方向540などの複数の方向を例示することができる。
【0053】
シミュレーション、高精度撮影などによって理想的な点像が得られている場合は、光変調部104などの位相板とセンサーとが直交して配置してあってよい。しかしながら、現実には理想的な点像を得ることはコスト等の点からも難しい場合が多い。また図3で説明したようなカラーフィルタを使用してカラー撮影する場合、RBのフィルタ素子は正方配列なのに対してGが斜めに配置されるなど、全てのカラーセンサーと位相板を直交させること自身が不可能となる。このような場合には、上述したように所定の角度傾けて位相板を配置することでアーチファクトを許容可能な範囲に低減することができる。アーチファクトは位相板と同方向に発生し易いので、所定角度傾けることにより、アーチファクト、さらには画素、モニタなどで発生するモアレも抑制することができる。
【0054】
図7は、光変調部104が与える位相差分布の他の一例を示す。本図では、図2で等高表示した位相差レベルと同じ位相差レベルに対して等高線表示されている。
【0055】
上段の図は、光軸を原点とする直交座標の各座標値に関して、3次の項と5次の項の和で表される曲面形状を有する光変調部104による位相差分布を示す。具体的には、この光変調部104による波面収差は、α(x+y)/2+α(x+y)/2で表される。本図の上段の図と図2とを比較すると、光変調部104が3次式の曲面形状を持つ場合と比べて、予め定められた値より低い位相差を与える領域が、光軸まわりに広くなっていることがわかる。
【0056】
下段の図は、光軸を原点とする直交座標の各座標値に関して、3.4次の項で表される曲面形状を有する光変調部104による位相差分布を示す。具体的には、この光変調部104による波面収差は、α(sign(x)|x|3.4+sign(y)|y|3.4)で表される。なお、sign(z)は、z<0のときに−1の値を持ち、それ以外の場合は+1の値を持つとする。
【0057】
下段の図においても、図2とを比較すると、光変調部104が3次式の曲面形状を持つ場合と比べて、予め定められた値より低い位相差を与える領域が、光軸まわりに広くなっていることがわかる。このように、光変調部104は、指数が3より大きい実数である項を含む累乗和で表される分布の位相差を、物点からの光に与えてよい。具体的には、光変調部104は、3より大きく4より小さい指数の項を含む累乗和で表される分布の位相差を物点からの光に与えてよい。
【0058】
本図で示されるように光変調部104が低位相差を与える領域を広げることで、デフォーカスに対する依存性を低減することができる。なお、光変調部104の曲面形状は、5次、および、3.4次以外の次数の式で表されてよいことは言うまでもない。例えば、光変調部104の曲面形状を表す式が、7次など、3次より大きい奇数次の項を含んでよい。また、光変調部104の曲面形状が、3次より大きい次数の式で表されてよい。また、光変調部104の曲面形状が、3次より大きい次数の項を含む累乗和で表されてよい。
【0059】
このように、光変調部104は、光軸を原点とする座標について3より大きい指数の項を含む累乗和で表される分布の位相差を物点からの光に与えてよい。具体的には、光変調部104は、光軸を原点とする直交座標系における座標について3より大きい指数の項を含む累乗和で表される分布の位相差を、物点からの光に与えてよい。また、光変調部104は、指数が奇数の項を含む累乗和で表される分布の位相差を、物点からの光に与えてよい。
【0060】
また、光変調部104は、指数が3の項をさらに含む累乗和で表される分布の位相差を、物点からの光に与えてよい。また、光変調部104は、指数が3の項および指数が3より大きい奇数次の項を含む累乗和で表される分布の位相差を物点からの光に与えてよい。光変調部104は、指数がそれぞれ3以上の奇数である複数の項を含む累乗和で表される分布の位相差を、物点からの光に与えてよい。なお、光変調部104は、上述した累乗和で近似的に表される分布の位相差を、物点からの光に与えてよい。
【0061】
図8は、画像処理パラメータ格納部188が格納しているデータの一例をテーブル形式で示す。画像処理パラメータ格納部188は、複数の画像エリアに対応づけて、異なる補正処理用の複数の復元フィルタを格納している。復元フィルタとしては、上述した逆フィルタを例示することができる。
【0062】
画像処理部180は、画像における画像エリア毎に復元フィルタを選択して、選択した復元フィルタを用いて、各画像エリアの画像に補正処理を施してよい。画像処理部180は、画像の画像エリアのそれぞれに対して補正処理を施す場合に、それぞれの画像エリアに対応づけて画像処理パラメータ格納部188が格納している復元フィルタを選択して、選択した復元フィルタを用いてそれぞれの画像エリアに補正処理を施すことができる。
【0063】
なお、画像処理パラメータ格納部188は、光学系100の位置、絞り部106の絞り開度、および光学系100の焦点距離にさらに対応づけて、復元フィルタを格納してもよい。これにより、画像処理部180は、補正処理対象となる画像が撮像されたときの光学系100の位置、絞り開度、および光学系100の焦点距離に対応づけて画像処理パラメータ格納部188が格納している復元フィルタの中から、各画像エリアに対応づけられた適切な復元フィルタを選択することができる。
【0064】
なお、上記において光変調部104の一例として種々の曲面形状の位相板を示したが、光変調部104は、他の種々の手段で波面を変形させることができる。例えば、光変調部104としては、屈折率が変化する光学素子(例えば、屈折率分布型の波面変調光学素子)、レンズ表面へのコーディングにより厚み、屈折率が変化する光学素子(例えば、波面変調ハイブリッドレンズ)、光の位相分布を変調可能な液晶素子(例えば、液晶空間位相変調素子)などを例示することができる。
【0065】
また、本実施形態における画像は、動画に含まれる複数の動画構成画像であってよい。動画構成画像としては、フレーム画像を例示することができる。撮像装置110は、動画に含まれる複数の動画構成画像のそれぞれ対して、上述の補正処理を施すことができる。
【0066】
図9は、撮像装置110として機能するコンピュータ1500のハードウェア構成の一例を示す。本図に関連して説明するコンピュータ1500などの電子情報処理装置が、撮像装置110が備える各構成要素として機能することができる。
【0067】
コンピュータ1500は、CPU周辺部と、入出力部と、レガシー入出力部とを備える。CPU周辺部は、ホスト・コントローラ1582により相互に接続されるCPU1505、RAM1520、グラフィック・コントローラ1575、及び表示デバイス1580を有する。入出力部は、入出力コントローラ1584によりホスト・コントローラ1582に接続される通信インターフェイス1530、ハードディスクドライブ1540、及びCD−ROMドライブ1560を有する。レガシー入出力部は、入出力コントローラ1584に接続されるROM1510、フレキシブルディスク・ドライブ1550、及び入出力チップ1570を有する。
【0068】
ホスト・コントローラ1582は、RAM1520と、より高い転送レートでRAM1520をアクセスするCPU1505、及びグラフィック・コントローラ1575とを接続する。CPU1505は、ROM1510、及びRAM1520に格納されたプログラムの内容に応じて動作して、各部の制御をする。グラフィック・コントローラ1575は、CPU1505等がRAM1520内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得して、表示デバイス1580上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ1575は、CPU1505等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0069】
入出力コントローラ1584は、ホスト・コントローラ1582と、比較的高速な入出力装置であるハードディスクドライブ1540、通信インターフェイス1530、CD−ROMドライブ1560を接続する。ハードディスクドライブ1540は、CPU1505が使用するプログラム、及びデータを格納する。通信インターフェイス1530は、ネットワーク通信装置1598に接続してプログラムまたはデータを送受信する。CD−ROMドライブ1560は、CD−ROM1595からプログラムまたはデータを読み取り、RAM1520を介してハードディスクドライブ1540、及び通信インターフェイス1530に提供する。
【0070】
入出力コントローラ1584には、ROM1510と、フレキシブルディスク・ドライブ1550、及び入出力チップ1570の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM1510は、コンピュータ1500が起動するときに実行するブート・プログラム、あるいはコンピュータ1500のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ1550は、フレキシブルディスク1590からプログラムまたはデータを読み取り、RAM1520を介してハードディスクドライブ1540、及び通信インターフェイス1530に提供する。入出力チップ1570は、フレキシブルディスク・ドライブ1550、あるいはパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
【0071】
CPU1505が実行するプログラムは、フレキシブルディスク1590、CD−ROM1595、またはICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。記録媒体に格納されたプログラムは圧縮されていても非圧縮であってもよい。プログラムは、記録媒体からハードディスクドライブ1540にインストールされ、RAM1520に読み出されてCPU1505により実行される。CPU1505により実行されるプログラムは、コンピュータ1500を、図1から図8に関連して説明した撮像画像生成部172、画像記憶部174、画像取得部130、画像処理部180、画像処理パラメータ格納部188、出力部190、および制御部120などとして機能させる。
【0072】
以上に示したプログラムは、外部の記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体としては、フレキシブルディスク1590、CD−ROM1595の他に、DVDまたはPD等の光学記録媒体、MD等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークあるいはインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスクまたはRAM等の記憶装置を記録媒体として使用して、ネットワークを介したプログラムとしてコンピュータ1500に提供してもよい。
【0073】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】一実施形態に係わる撮像装置110のブロック構成の一例を示す図である。
【図2】光変調部104が与える位相差分布の一例を示す図である。
【図3】受光部170およびカラーフィルタ168の構成の一例を示す図である。
【図4】光学系100による点像強度分布の一例を示す図である。
【図5】フィルタ素子の周期的な配列方向の一例を示す図である。
【図6】周期的な配列方向と異なる方向に広がる点像の一例を示す図である。
【図7】光変調部104が与える位相差分布の他の一例を示す図である。
【図8】画像処理パラメータ格納部188が格納するデータの一例を示す図である。
【図9】撮像装置110として機能するコンピュータ1500のハードウェア構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
100 光学系
102 結像レンズ
104 光変調部
106 絞り部
110 撮像装置
120 制御部
130 画像取得部
168 カラーフィルタ
170 受光部
172 撮像画像生成部
174 画像記憶部
180 画像処理部
188 画像処理パラメータ格納部
190 出力部
310 撮像素子ユニット
311、312、313 撮像素子
321 フィルタ素子
322 フィルタ素子
323 フィルタ素子
510、520、530、540 方向
1500 コンピュータ
1505 CPU
1510 ROM
1520 RAM
1530 通信インターフェイス
1540 ハードディスクドライブ
1550 フレキシブルディスク・ドライブ
1560 CD−ROMドライブ
1570 入出力チップ
1575 グラフィック・コントローラ
1580 表示デバイス
1582 ホスト・コントローラ
1584 入出力コントローラ
1590 フレキシブルディスク
1595 CD−ROM
1598 ネットワーク通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系と、
前記光学系を通過した光をそれぞれ受光する複数の撮像素子を有する撮像部と
を備え、
前記光学系による点像強度分布は光軸に対して回転非対称であり、
前記複数の撮像素子は、特定の方向に周期的に配列されており、
前記点像強度分布の主成分方向は、前記複数の撮像素子が周期的に配列された方向と異なる
撮像装置。
【請求項2】
前記複数の撮像素子は、異なる複数の方向に周期的に配列されており、
前記点像強度分布の主成分方向は、前記複数の撮像素子が周期的に配列された複数の方向のいずれとも異なる
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記点像強度分布の複数の主成分方向のそれぞれは、前記複数の撮像素子が周期的に配列された前記複数の方向のいずれとも異なる
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記点像強度分布の複数の主成分方向は、それぞれ前記複数の撮像素子が周期的に配列された方向と異なる
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記複数の撮像素子は格子状に配列され、
前記点像強度分布の複数の主成分方向は、格子配列における行方向および列方向のいずれとも異なる
請求項1乃至4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記複数の撮像素子は格子状に配列され、
前記点像強度分布の複数の主成分方向は、格子配列における行方向および列方向、ならびに、当該行方向と略45度の角度差を持つ方向のいずれとも異なる
請求項1乃至4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像部は、
前記複数の撮像素子に対応する位置に配列され、それぞれ通過波長域が異なる複数のフィルタ素子を有するカラーフィルタ部
をさらに備え、
前記複数の撮像素子は、前記複数のフィルタ素子を通過した光を受光し、
通過波長域が同じ前記複数のフィルタ素子は、特定の方向に周期的に配列されており、
前記点像強度分布の主成分方向は、通過波長域が同じ前記複数のフィルタ素子が周期的に配列された方向と異なる
請求項1乃至6のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項8】
前記点像強度分布に基づいて、前記複数の撮像素子により撮像された画像における前記光学系による点像の広がりが補正された補正画像を生成する画像処理部
をさらに備える請求項1乃至7のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項9】
前記光学系は、
結像レンズと、
物点からの光に回転非対称な位相差分布を与える光変調部と
を有し、
前記複数の撮像素子は、前記結像レンズおよび前記光変調部を通過した光を受光し、
前記光変調部が与える位相差分布の主成分方向は、前記複数の撮像素子が周期的に配列された方向と異なる
請求項1乃至8のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項10】
前記光学系は、前記光変調部による光の波面変調により、物点からの光の広がりを物点までの距離に対して略一定にする
請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記光変調部は、光軸を原点とする座標に関する3次の位相差分布を物点からの光に与える
請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
光軸に対して回転非対称な点像強度分布を持つ光学系を通過した光をそれぞれ受光する複数の撮像素子であり、前記点像強度分布の主成分方向と異なる特定の方向に周期的に配列された前記複数の撮像素子により、画像を撮像する撮像段階と、
前記光学系による点像強度分布に基づいて、前記複数の撮像素子により撮像された画像における前記光学系による点像の広がりが補正された補正画像を生成する画像処理段階と、
を備える撮像方法。
【請求項13】
撮像装置用のプログラムであって、コンピュータを、
光軸に対して回転非対称な点像強度分布を持つ光学系を通過した光をそれぞれ受光する複数の撮像素子であり、前記点像強度分布の主成分方向と異なる特定の方向に周期的に配列された前記複数の撮像素子により、画像を撮像する撮像部、
前記光学系による点像強度分布に基づいて、前記複数の撮像素子により撮像された画像における前記光学系による点像の広がりが補正された補正画像を生成する画像処理部
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−87857(P2010−87857A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254961(P2008−254961)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】