説明

撮像装置、撮像装置の絞り制御方法及びプログラム

【課題】リセットセンサが経年変化等によって劣化した場合であっても、絞り制御の精度を保てるようにする。
【解決手段】システム制御部101は、絞りのリセット動作の開始位置に対応する所定の励磁位相にステッピングモータを励磁し、絞りの位置カウンタをクリアした後、絞りのリセット駆動を開始し、リセット位置が検出されたか否かを判定する。リセット位置が検出されると、リセット動作の開始位置からリセット検出位置までのステッピングモータの駆動パルス量と、記憶部112に記憶されている調整時のリセット駆動量との差から絞り駆動補正量を算出し、記憶部112に記憶する。絞り駆動の際には、AE処理等で決定された目標絞り値を取得して目標パルス位置に変換し、その目標パルス位置と記憶部112に記憶した絞り駆動補正量とから、駆動パルス位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り羽根を開閉駆動することにより絞りを通過する光量を制御する撮像装置、撮像装置の絞りの制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータ等により絞り羽根を開閉駆動することにより絞りを通過する光量の制御を行う撮像装置の絞り制御においては、電源投入時に絞りのリセット動作を行って絞りの初期基準位置(リセット位置)を決定した後に、絞り制御を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、出荷時に絞りの調整を行って、各絞り値とリセット位置を基準とするステッピングモータ等の駆動パルス量を対応付けて記憶しておくことが行われている。そして、使用時に電源投入に伴って絞りのリセット動作を行った後に、所望の絞り値に対応付けられた駆動パルス量を読み出して絞りを駆動することで、絞り制御の精度を保っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−111617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図5を参照して、絞りのリセット位置を検出するリセットセンサが経年変化等によって劣化した場合の課題について説明する。図5は、出荷調整時及び使用時(リセットセンサ劣化時)の絞り駆動量に対するリセットセンサの出力を示すグラフと、各絞り値に対応する絞り駆動量のリセットセンサの劣化による変化を示す図である。グラフの横軸は絞り駆動量、縦軸はリセットセンサの出力である。
【0006】
出荷調整時は、リセットセンサの出力がグラフの破線aで示すようになっており、出荷調整時のリセット位置は破線aとリセット検出スレッショルドレベルとの交点となる。このリセット位置を基準として、各絞り値に対応する絞り駆動量を各々対応付けて記憶しておくことで、出荷時の絞り調整が行われている。
【0007】
リセットセンサが経年変化等によって劣化した状態での撮像装置の使用時には、リセットセンサの出力がグラフの実線bで示されるようになっており、その際のリセット位置は実線bとリセット検出スレッショルドレベルとの交点となる。リセットセンサの劣化によりリセットセンサの出力レベルが下がっているため、矢印500で示すように、出荷調整時のリセット位置と使用時のリセット位置との間にずれが生じてしまう。各絞り値に対応する絞り駆動量はリセット位置を基準としているため、リセット位置に生じたずれによって、矢印501で示すように、各絞り値に対応する絞り駆動量にもずれが生じてしまう。
【0008】
このように、リセットセンサの劣化によって、各絞り値に対応する絞り駆動量、すなわち絞りの開口径が出荷調整時と使用時とで異なってしまうことで、絞り制御の精度を保つことができなくなるという課題がある。
【0009】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、リセットセンサが経年変化等によって劣化した場合であっても、絞り制御の精度を保てるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撮像装置は、絞り羽根を開閉駆動することにより絞りを通過する光量を制御する絞り制御手段と、前記絞りのリセット位置を検出するリセット位置検出手段と、前記絞りのリセット動作の開始位置から前記リセット位置検出手段によるリセット検出位置までのリセット駆動量を計測する駆動量計測手段と、前記駆動量計測手段による調整時のリセット駆動量を記憶する記憶手段と、前記駆動量計測手段により計測したリセット駆動量と、前記記憶手段に記憶された調整時のリセット駆動量との差に基づいて、光量を制御する際の前記絞りの駆動量を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リセットセンサが経年変化等によって劣化した場合であっても、絞り制御の精度を保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る撮像装置の絞りのリセット動作を示すフローチャートである。
【図3】実施形態に係る撮像装置のリセットセンサの劣化による絞り駆動量の補正の概要を説明するための図である。
【図4】実施形態に係る撮像装置の絞り駆動の動作を示すフローチャートである。
【図5】出荷調整時及び使用時(リセットセンサ劣化時)の絞り駆動量に対するリセットセンサの出力を示すグラフと、各絞り値に対応する絞り駆動量のリセットセンサの劣化による変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係る撮像装置100の構成を示すブロック図である。図1において、100はデジタルカメラ等に代表される撮像装置である。101はシステム制御部であり、撮像装置100全体を制御する。
【0014】
102はズームレンズであり、光軸方向に位置を変更することで焦点距離を変更する。103はズーム制御部であり、ズームレンズ102を駆動制御する。
【0015】
104はシャッタ・絞りユニットであり、絞りのリセット位置を検出するリセット位置検出手段であるリセットセンサを有する。105はシャッタ・絞り制御部であり、シャッタ・絞りユニット104を駆動制御する。シャッタ・絞り制御部105は、ステッピングモータにより絞り羽根を開閉駆動することにより絞りを通過する光量を制御する。
【0016】
106はフォーカスレンズであり、光軸方向に位置を変更することでピント調整を行う。107はフォーカス制御部であり、フォーカスレンズ106を駆動制御する。
【0017】
108は撮像素子であり、各レンズを通ってきた光像を電気信号に変換する。109は信号処理部であり、撮像素子108から出力された電気信号を画像信号に変換処理し、用途に応じて加工する。110は液晶表示装置、スピーカー等からなる表示部であり、システム制御部101でのプログラムの実行や、信号処理部109から出力された信号に基づいて、文字、画像、音声等を用いて動作状態やメッセージ等を表示する。
【0018】
111は各種ボタン等からなる操作部であり、システム制御部101へ各種の動作指示を入力する。112は記憶部であり、システム制御部101の動作用の定数、変数、プログラム、映像情報等様々なデータを記憶するメモリである。記憶部112は、出荷調整時における絞りのリセット動作の開始位置からリセットセンサによるリセット検出位置までのリセット駆動量(調整時のリセット駆動量)を記憶している。
【0019】
113は記録部であり、撮影データ等を記録する電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリである。114は電源部であり、撮像装置100全体に用途に応じて電源を供給する。
【0020】
次に、本実施形態に係る撮像装置100の動作について説明する。操作部111は、押し込み量に応じて第1スイッチ(以下SW1とする)及び第2スイッチ(以下SW2とする)が順にオンするように構成されたシャッタレリーズボタンを有する。シャッタレリーズボタンを約半分押し込んだときにSW1がオンし、シャッタレリーズボタンを最後まで押し込んだときにSW2がオンする構造となっている。
【0021】
操作部111のSW1がオンされると、システム制御部101は、AF機能に基づきフォーカス制御部107によりフォーカスレンズ106を駆動してピント調整を行う。また、システム制御部101は、AE機能に基づきシャッタ・絞り制御部105によりシャッタ・絞りユニット104を駆動して適正な露光量に設定する。
【0022】
さらに操作部111のSW2がオンされると、システム制御部101は、撮像素子108に露光された光像から得られた電気信号を信号処理部109で画像信号に変換して画像処理する。その後、画像処理した画像データを記憶部112に記憶するとともに、記録部113で記録媒体に記録する。
【0023】
次に、図2から図4を参照して、本実施形態に係る撮像装置100の絞り制御の動作を説明する。図2は、実施形態に係る撮像装置100の絞りのリセット動作を示すフローチャートである。図2のフローチャートに示す絞りのリセット動作は、撮像装置100の起動時(電源投入時)に実行される。
【0024】
ステップS201で、システム制御部101は、絞りのリセット動作の開始位置に対応する所定の励磁位相にステッピングモータを励磁した後、ステップS202で、絞りの位置カウンタをクリアする。これにより、リセット動作の開始位置からリセット検出位置までの絞りの駆動量を、ステッピングモータの駆動パルス量として計測できるようになる。なお、絞りの制御は、シャッタ・絞り制御部105を介して行われる。これは以降の絞りの制御についても同様である。
【0025】
次に、ステップS203で、システム制御部101は絞りのリセット駆動を開始し、ステップS204で、リセット位置が検出されたか否かを判定する。リセット位置が検出されたか否かは、図5に示したようにリセットセンサの出力がリセット検出スレッショルドレベルに到達したか否かによって判定する。
【0026】
リセット位置が検出されると、ステップS205で、システム制御部101は、リセット動作の開始位置からリセット検出位置までのステッピングモータの駆動パルス量を、リセット駆動量として記憶部112に記憶する。出荷調整時には、リセット駆動量を調整時のリセット駆動量として記憶部112に記憶している。
【0027】
次に、ステップS206で、システム制御部101は、ステップS205において得た使用時のリセット駆動量と調整時のリセット駆動量との差から絞り駆動補正量を算出し、絞りのリセット動作を終了する。算出した絞り駆動補正量は記憶部112に記憶する。
【0028】
ここで、図3を参照して、絞り駆動量の補正について説明する。図3は、出荷調整時及び使用時(リセットセンサ劣化時)の絞り駆動量に対するリセットセンサの出力を示すグラフと、各絞り値に対応する絞り駆動量のリセットセンサの劣化による変化の補正の概要を示す図である。グラフの横軸は絞り駆動量、縦軸はリセットセンサの出力である。
【0029】
出荷調整時は、リセットセンサの出力がグラフの破線aで示すようになっており、出荷調整時のリセット位置は破線aとリセット検出スレッショルドレベルとの交点となる。このリセット位置を基準として、各絞り値に対応する絞り駆動量を各々対応付けて記憶しておくことで、出荷時の絞り調整が行われている。
【0030】
リセットセンサが経年変化等によって劣化した状態での撮像装置100の使用時には、リセットセンサの出力がグラフの実線bで示されるようになっており、その際のリセット位置は実線bとリセット検出スレッショルドレベルとの交点となる。リセットセンサの劣化によりリセットセンサの出力レベルが下がっているため、出荷調整時のリセット位置と使用時のリセット位置との間にずれが生じてしまう。各絞り値に対応する絞り駆動量は、リセット位置を基準位置としているため、リセット位置に生じたずれによって、各絞り値に対応する駆動量にもずれが生じてしまう。
【0031】
そこで、絞りの駆動時に、使用時のリセット位置と出荷調整時のリセット位置との差として算出した絞り駆動補正量300を用いて、各絞り値に対する絞り駆動量を補正することで、使用時と出荷調整時とのリセット位置のずれ分を補正することができる。
【0032】
図4は、本実施形態に係る撮像装置100の絞り駆動の動作を示すフローチャートである。ステップS401で、システム制御部101は、AE処理等で決定された目標絞り値を取得し、ステップS402で、取得した目標絞り値を目標パルス位置に変換する。目標絞り値から目標パルス位置への変換は、出荷時の絞り調整時に各絞り値に対応付けて記憶されている絞り駆動量を用いる。
【0033】
次に、ステップS403で、システム制御部101は、ステップS402において求めた目標パルス位置と図2のステップS206において求めた絞り駆動補正量とから、駆動パルス位置を算出する。具体的には、ステップS402において求めた目標パルス位置から図2のステップS206において求めた絞り駆動補正量を減算して、駆動パルス位置を算出する
【0034】
そして、ステップS404で、システム制御部101は、ステップS403において算出した駆動パルス位置まで絞りを駆動し、絞りの駆動動作を終了する。
【0035】
以上に説明したように、リセットセンサが経年変化等によって劣化した場合であっても、リセットセンサの経年変化等による絞り駆動量の変化を補正することができるので、絞り制御の精度を保つことが可能となる。
【0036】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。また、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線/無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含む。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリでもよい。また、プログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバに本発明を形成するコンピュータプログラムを記憶し、接続のあったクライアントコンピュータがコンピュータプログラムをダウンロードして実行するような方法も考えられる。
【符号の説明】
【0037】
100:撮像装置、101:システム制御部、102:ズームレンズ、103:ズーム制御部、10:シャッタ・絞りユニット、105:シャッタ・絞り制御部、106:フォーカスレンズ、107:フォーカス制御部、108:撮像素子、109:信号処理部、110:表示部、111:操作部、112:記憶部、113:記録部、114:電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り羽根を開閉駆動することにより絞りを通過する光量を制御する絞り制御手段と、
前記絞りのリセット位置を検出するリセット位置検出手段と、
前記絞りのリセット動作の開始位置から前記リセット位置検出手段によるリセット検出位置までのリセット駆動量を計測する駆動量計測手段と、
前記駆動量計測手段による調整時のリセット駆動量を記憶する記憶手段と、
前記駆動量計測手段により計測したリセット駆動量と、前記記憶手段に記憶された調整時のリセット駆動量との差に基づいて、光量を制御する際の前記絞りの駆動量を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記絞り制御手段はステッピングモータにより絞りを駆動し、
前記リセット動作の開始位置はステッピングモータの所定の励磁位相に対応することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
絞り羽根を開閉駆動することにより絞りを通過する光量を制御する撮像装置の絞りの制御方法であって、
前記絞りのリセット位置を検出するリセット位置検出手段と、調整時における前記絞りのリセット動作の開始位置から前記リセット位置検出手段によるリセット検出位置までのリセット駆動量を記憶する記憶手段とを用いて、
前記絞りのリセット動作の開始位置から前記リセット位置検出手段によるリセット検出位置までのリセット駆動量を計測する処理と、
前記計測したリセット駆動量と、前記記憶手段に記憶された調整時のリセット駆動量との差に基づいて、光量を制御する際の前記絞りの駆動量を補正する処理とを有することを特徴とする撮像装置の絞り制御方法。
【請求項4】
絞り羽根を開閉駆動することにより絞りを通過する光量を制御する撮像装置を制御するためのプログラムであって、
前記絞りのリセット位置を検出するリセット位置検出手段と、調整時における前記絞りのリセット動作の開始位置から前記リセット位置検出手段によるリセット検出位置までのリセット駆動量を記憶する記憶手段とを用いて、
前記絞りのリセット動作の開始位置から前記リセット位置検出手段によるリセット検出位置までのリセット駆動量を計測する処理と、
前記計測したリセット駆動量と、前記記憶手段に記憶された調整時のリセット駆動量との差に基づいて、光量を制御する際の前記絞りの駆動量を補正する処理とをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−237533(P2011−237533A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107522(P2010−107522)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】