説明

撮像装置およびその制御方法

【課題】 作例となる写真の撮影構図や設定パラメータで容易に撮像可能となる技術を提供する。
【解決手段】 ディスプレイ上に、撮影構図をガイドするオブジェクトを表示し、前記ディスプレイの表示領域と前記オブジェクトが一致したかを判定する。表示領域と前記オブジェクトが一致したと判定された場合、撮影時に利用する設定パラメータを、前記オブジェクトに関連つけられた情報に基づいて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影構図をガイドする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、位置情報が取得可能な撮像装置において、撮影対象に関する情報を利用者に提示するシステムが知られている。
【0003】
例えば、複数の撮像装置によって撮影された撮影対象、および、その撮影対象が撮影されたポイントに関する情報を、撮像装置がサーバと通信して取得しておく。その上で、利用者に対し、現在地付近から撮影可能な撮影対象、および、それを撮影するための好適な撮影ポイントを、文字、地図、音声などを用いて簡易に提示することが可能な技術がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、他の例では、画像処理システムが、現在位置データを取得したタイミングデータと、撮影画像の付随データから取得した撮影日時データとを対比させ、近似するものを自動的に関連付けを行っておく。そして、システムが撮影ポイントに到達する毎に、そのポイントに関連付けられた撮影画像データを、地図データと共にディスプレイ表示領域に表示する技術がある(例えば、特許文献2)。
【0005】
さらに、撮影対象の緯度、経度を含むGPS情報を取得し、撮影地点、および、撮影対象を含む電子地図上に、撮影対象の撮影方向を示す矢印線を表示させる技術がある(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−45398号公報
【特許文献2】特開2006−178856号公報
【特許文献3】特開2005−352659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術で開示される技術によれば、作例の撮影地点、および、撮像装置を構えるべき方角を電子地図上に表示することが可能である。しかしながら、実際に作例と同じ構図で写真を撮影するためには、撮影地点から撮像装置を一定の方角に向けた後に、撮像装置を構える高さや仰俯角を決定したり、ズーム倍率などの設定パラメータを決定したりする必要がある。従来技術では、こうした情報が一切提示されないため、ユーザ自身が作例の構図や設定パラメータを事前に調査した上で、適切な調整を行う必要がある。
【0008】
また、従来技術では、作例の撮影地点に関する情報が、2次元の電子地図上にマッピングされて提示される。このため、ユーザは現実の視界と電子地図を対比しながら、好適な撮影構図を捉える位置に移動する必要がある。こうした作業は、日常的に地図を読み慣れていないユーザには難しい作業となることがあり、探索に要する手間や精度的に改善の余地がある。
【0009】
本発明は、以上のような事情を鑑みてなされたものであり、作例となる写真の撮影構図や設定パラメータで容易に撮像可能となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、ディスプレイ上に、撮影構図をガイドするオブジェクトを表示する表示制御手段と、前記ディスプレイの表示領域と前記オブジェクトが一致したかを判定する判定手段と、前記判定手段で、表示領域と前記オブジェクトが一致したと判定された場合、撮影時に利用する設定パラメータを、前記オブジェクトに関連つけられた情報に基づいて設定する設定手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作例となる写真の撮影構図や設定パラメータで容易に撮像可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)撮像装置のハードウェア構成図、(b)撮像装置の機能ブロック図。
【図2】ディスプレイ0200上に提示される画面表示の一例を示す図。
【図3】表示領域と矩形0201が一致した場合の画面表示の一例を示す図。
【図4】作例情報のデータ構造を示す図。
【図5】撮像装置におけるフローチャート。
【図6】範囲決定処理(ステップS0504)の詳細を示すフローチャート。
【図7】作例探索処理(ステップS0505)の詳細を示すフローチャート。
【図8】矩形表示処理(ステップS0506)の詳細を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
図1(a)は、本発明のハードウェア構成の一例を示している。CPU0100は、本実施形態に係る撮像プログラムに基づいて処理を実行し、プログラムの実行に必要な情報をRAM0102などに格納する制御を行う。ROM0101には、基本I/Oプログラムなどのプログラムや各種データが格納されている。RAM0102は、CPU0100の主メモリ、ワークエリアなどとして機能する。記憶装置0103は、撮像プログラム、作例、作例に関連つけられた情報などを格納している。作例に関連つけられた情報は、図4を用いて後述する。本実施形態では、記憶装置0103は、撮像装置内にあるものとして説明するが、外部装置であってもよい。記憶装置0103が外部装置である場合は、撮像装置は、通信手段を介して、必要な情報を記憶装置0103から取得すればよい。GPS0104は、撮像装置の現在の位置情報を取得するために利用される。ディスプレイ0105は、撮像プログラムに基づいてCPU0100が出力する3次元矩形オブジェクトなどを表示する。地磁気センサ0106は、その出力値から、撮像装置の向いている方位角を計算するために利用される。加速度センサ0107は、その出力値から、撮像装置の傾きを計算するために利用される。撮像部0108は、ディスプレイ0105に表示された画像を撮像する手段である。システムバス0109は、撮像装置内のデータの流れを司る。
【0014】
図1(a)は、本発明の機能ブロック図の一例を示している。取得部0110は、GPS0104の出力から本撮像装置の現在位置を、地磁気センサ0106の出力から本撮像装置が向いている方位角を、加速度センサ0107の出力から本撮像装置の仰俯角を取得する。範囲決定部0111は、矩形として表示対象となる作例の範囲(座標範囲)を決定する。探索部0112は、範囲決定部0111で決定した範囲内に存在する作例を探索する。表示制御部0113は、撮像部0108で撮像される画像や矩形を、ディスプレイ0105に表示する表示制御を行う。判定部0114は、表示領域と矩形とが一致したかを判定する。設定部0115は、表示倍率など撮像パラメータを設定する。
【0015】
次に、上記の如く構成された撮像装置の動作を、図2から図8までを参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、ユーザが一般的なスチールカメラやデジタルカメラで写真を撮影する際、作例となる写真と同じ構図で撮影するためのガイド情報を提示する例を示す。さらに、本撮像装置は、ユーザが作例と同じ構図を撮影できる位置にカメラをセットしたことを検知すると、作例の撮影情報を基に、カメラに対して適切なパラメータを設定する。
【0016】
図2は、本撮像装置のディスプレイ0200上に提示される画面表示の一例を示す図である。ディスプレイ0200には、現在カメラが撮影することのできる画像が表示されており、ファインダの役割を担う。このとき、このディスプレイ上に表示されている画像に重畳して、作例となる写真の撮影構図を示す3次元矩形オブジェクト(以下、「矩形」と表現する)0201をガイドとして提示する。この矩形0201は、作例の撮影位置、高度、方角を表現しており、ユーザはディスプレイ0200の表示領域と矩形0201が一致するようにカメラを構えることで、作例を撮影したときと同じ位置にカメラを移動させることができる。また、3次元矩形オブジェクトだけでは、矩形の表側/裏側のどちらから撮影を行うべきなのか、ユーザが理解しにくい場合が考えられる。そのため、矩形0201と共に、方向線0202を撮影時の補助情報として表示する。
【0017】
図3は、表示領域と矩形0201が一致した場合の画面表示の一例を示す図である。本撮像装置は、作例を撮影したときと同じ位置にカメラが移動されたことを検知し、中塗り色を変更した矩形0300を表示して、ユーザにそのことを通知する。その後、矩形0300を画面上から消去し、それに伴って作例を撮影したときと同じ撮影パラメータ(例えば、ズーム倍率)をカメラに対して設定する。これにより、ユーザは作例と同じ画像がディスプレイ上に表示されている状態となり、このままシャッターを切ることで、作例と同様の写真を撮影することができる。
【0018】
なお、ここまでに示した図中には、一般的なスチールカメラを表す図形が描かれているが、本撮像装置は必ずしもこの形状に限定されない。また、本実施形態では、作例の撮影構図を示すために、3次元矩形オブジェクトをユーザに提示しているが、この形状にも限定されず、ユーザが空間的位置を認識可能なオブジェクトであればよく、例えば、2次元矩形オブジェクトであってもよい。同様に、方向線の形状も図中で示したものに限定されない。また、ユーザがカメラを構えた位置に複数の作例の撮影地点がある場合には、それに対応して、複数の矩形をディスプレイ0200上に表示しても良い。さらに、本実施形態では、ファインダの役割をディスプレイ0200が担っていたが、通常の光学ファインダ上に矩形0201を重畳表示しても良い。これらの事項は、この後の説明においても同様である。
【0019】
次に、ここで説明した撮像装置の動作を実現する処理の一例を、データ構造図やフローチャートを用いて詳細に説明する。
図4は、記憶装置0103に記憶されている作例情報のデータ構造を示す図である。インデックス0400は、主に作例情報の探索時に利用され、ディスプレイ0200上に表示する作例の候補を記憶するためにインデックススタック上に積まれていくデータである。次に、作例が撮影された地点に関する情報を格納する領域がある。ここで、X座標0401とY座標0402は、それぞれ、撮影地点の経度と緯度に基づいた値であり、北緯/東経方向を正、南緯/西経方向を負の数で表すものとする。Z座標0403は、平均海水面からの高度に基づいた値であり、高方向を正の数で表すものとする。方位角0404は、作例の撮影時に撮像装置が向いていた向きの情報であり、北を基準として時計周りを正とした角度に基づいた値である。仰俯角0405は、作例が撮影された際に、撮像装置の傾きに基づいた値であり、水平を基準として上向きの角度を正の数、下向きの角度を負の数で表すものとする。倍率0406は、作例が撮影された際のズーム倍率である。本実施形態では、撮影パラメータとして、ズーム倍率を用いるが、ホワイトバランスや、絞り、シャッタースピードなど撮影時に用いるパラメータを用いてもよい。
【0020】
これらの作例に関する情報は、ユーザが作例情報をディスプレイ0200上に表示させる前に格納されていればよく、その手段は特に限定されない。例えば、作例の画像ファイルに付与されているメタデータ(Exifなど)から本撮像装置自身が抽出しても良いし、ネットワーク上のサーバからこれらの情報をダウンロードしてもよい。
【0021】
図5は、本撮像装置におけるフローチャートである。はじめに、設定部0115が、撮影パラメータ(撮影時に利用する設定パラメータ)をリセットする(ステップS0500)。本実施形態では、ディスプレイの表示倍率をリセットする。次に、取得部0110が、GPS0104の出力から、本撮像装置の現在位置を計算する(ステップS0501)。GPSの出力フォーマットはいくつかの種類があるが、緯度と経度、および、平均海水面からの高度に関する情報が含まれていればよい。図4で説明した作例情報のデータと整合させるため、北緯/東経方向を正、南緯/西経方向を負の数に変換し、必要であれば正規化などの前処理を行った上で、RAM0102上に格納する。続いて、取得部0110が、地磁気センサ0106の出力から、本撮像装置が向いている方位角を計算する(ステップS0502)。具体的な計算式は使用するセンサによって異なるが、一般に、2軸の地磁気センサの場合、
【0022】
【数1】

【0023】
で求めることができる。さらに、取得部0110が、加速度センサ0107の出力から、本撮像装置の仰俯角を計算する(ステップS0503)。具体的な計算式は使用するセンサによって異なるが、一般的な3軸の加速度センサの場合、Z軸方向の出力値(加速度)に対してアークサイン関数を適用することで仰俯角を求めることができる。ここで得られた方位各、仰俯角に関しても、必要であれば正規化などの前処理を行ってからRAM0102上に格納しても良い。
【0024】
範囲決定部0111が、本撮像装置の現在位置、方位角、仰俯角を基に、表示対象となる作例の範囲を決定する(ステップS0504)。次に、探索部0112が、求めた範囲内に含まれる作例を探索する(ステップS0505)。続いて、表示制御部0113が、範囲内に存在する作例について、撮影構図を表現する3次元矩形オブジェクトをディスプレイ上に表示する(ステップS0506)。ここで、ステップS0504からステップS0506の処理については、後に詳しい説明を述べる。判定部0114が、ディスプレイ上に表示したいずれの矩形とも、ディスプレイの表示領域と一致しなかった場合(ステップS0507でNO)、プログラムは再び現在位置の取得処理(ステップS0501)に戻る。尚、ファインダである場合は、ファインダを通して見える範囲が表示領域となる。また、矩形と表示領域の一致は、完全に一致しなくても、矩形と表示領域の大部分が重なれば、一致と判定してもよい。
【0025】
いずれかの矩形と表示領域と一致した場合(ステップS0507でYES)、表示制御部0113が、その矩形の色を変更することでユーザにその旨を伝え(ステップS0508)、その後、すべての矩形を非表示とする(ステップS0509)。このとき、方向線もともに非表示とする。尚、ステップS0508は、ユーザに矩形と表示領域が一致したことを通知すればよく、矩形の色を変更することは一手段であって、他に、画面を点滅させたり、「一致した」と文字で表示しても構わない。
【0026】
そして、設定部0115が、一致した矩形に対応する作例と同じ撮影パラメータ(本実施形態では、倍率)を設定して(ステップS0510)、撮像部0108が、設定された撮影パラメータを用いて、撮像し(ステップS0511)、処理を終了する。
【0027】
図6は、図5における範囲決定処理(ステップS0504)の詳細を示すフローチャートである。ここでは、本撮像装置の現在位置、方位角、仰俯角を基に、矩形として表示対象となる作例の範囲(座標範囲)を決定する。例えば、カメラの向いている方向に作例の撮影地点が存在しても、一定以上離れた位置にある場合、ユーザが容易にその地点に到達することができないため、矩形をユーザに提示すべきではない。また、表示する矩形を限定することで、本撮像装置内のリソースの節約(ROM/RAM使用量の削減など)や処理速度(パフォーマンス)の向上が期待できる。
【0028】
まず、あらかじめ計算しておいた現在位置の座標、方位角、仰俯角の値をもとに、投影面の4頂点の座標を計算する(ステップS0600)。投影面とは、現在位置から、一定距離だけ撮像装置の前方方向に離れた場所に置く、仮想的なスクリーンである。本実施形態では、この投影面に透視投影した矩形0201の像をディスプレイ上に表示する。投影面の頂点の座標を計算するには、現在地点を中心として上下左右の斜め方向に一定距離だけ離れた4点を仮に求め、(ステップS0502で求めた)撮像装置の現在の方位角と(ステップS0503で求めた)仰俯角を表す回転行列を掛ける。さらに、方位角と仰俯角で決定される方向ベクトルを基にし、既定の距離だけ離れた位置に、各座標を平行移動すれば良い。ここで、投影面と現在地点の距離に応じて、スクリーンに投影される矩形0201の像の大きさが変わるため、ディスプレイ上に表示されている画像のスケールと矩形の像の大きさが一致するような距離として決定しておく。本実施形態では、ディスプレイ上に表示されている画像は倍率がリセットされているため、本撮像装置の実行前に規定値として決定しておくことができる。投影面の各頂点の座標が求められたら、それらの値を基に、X、Y、Z成分の最小・最大値を求める(ステップS0601)。次に、それぞれの頂点方向について、距離Dmだけ離れた位置の座標を計算する(ステップS0602)。このDmは表示領域の大きさを決定付ける任意の定数であるが、大きな値をとりすぎると、矩形0201を投影面に投影した際に、矩形が小さすぎてユーザが視認できないため、矩形が視認可能な大きさ以上となるようにDmの値を定める。距離Dmだけ離れた位置の座標が求められたら、それらの値を基に、X、Y、Z成分の最小・最大値を更新する(ステップS0603)。この処理を4頂点すべてについて行った後に求められている各成分の最小・最大値が、矩形表示を行う作例を限定するための座標範囲となる。
【0029】
ここで示した範囲決定処理は一例であり、必ずしもこの方法で範囲を決定する必要はない。また、矩形表示を行う作例を限定しなくても良い。その場合、範囲は座標系全体として、以降の処理に進む。
【0030】
図7は、図5における作例探索処理(ステップS0505)の詳細を示すフローチャートである。ここでは、範囲決定処理(ステップS0504)で求めた範囲内に存在する作例を探索する。ここでは、インデックス0400の値が小さい順に逐次探索を行う。インデックスiの作例情報を参照し(ステップS0701)、作例のX座標0401、Y座標0402、Z座標0403を取得する。これらすべての成分が、範囲決定処理で求めた範囲内に含まれている場合(ステップS0702でYES)、当該インデックスをインデックススタックにプッシュする(つまり、インデックスを不示図の記憶部に格納する)(ステップS0703)。全作例情報を調べたかを判定し(ステップS0704)、YESであれば処理を終了する。ステップS0704でNOである場合は、次のインデックに更新し(つまり、i をi+1とする)(ステップS0704)、次のインデックスに対して、ステップS0701〜ステップS0703の処理を行う。
【0031】
なお、作例情報が多い場合には、逐次処理で全作例の情報を調べるのは得策ではない。例えば、作例情報を、現在地点から近い順にソートし、一定数の作例のインデックスをインデックススタックにプッシュした時点で、処理を打ち切るなどの工夫を行うと良い。
【0032】
図8は、図5における矩形表示処理(ステップS0506)の詳細を示すフローチャートである。ここでは、作例探索処理(ステップS0505)でインデックススタックに積まれたインデックスを持つ作例について、実際に矩形を表示する処理を行う。まず、インデックススタックが空かどうかを判定し、空であった場合(ステップS0800でYES)は、表示すべき矩形が存在しないので、そのまま処理を終了する。インデックススタックに1つ以上のスタックが積まれている場合は(ステップS0800でNO)、トップのインデックスを取り出し(ステップS0801)、対応する作例情報を参照する(ステップS0802)。次に、表示する矩形の4頂点の座標を計算する(ステップS0803)。この頂点の座標は、作例の撮影地点の座標を中心として上下左右の斜め方向に一定距離だけ離れた4点を仮に求め、その後、方位角0404と仰俯角0405を表す回転行列を掛けることで求められる。次に、矩形の表側/裏側のどちらから撮影すべきなのかを示す方向線0202を表示するために、方向線の始点の座標を求める(ステップS0804)。この始点の座標は、方位角0404と仰俯角0405で決定される方向ベクトルを基にし、現在位置の座標から既定の距離だけ離れた点として計算すれば良い。この距離は、ユーザがディスプレイ上で確認した際に、方向線であることを確認できるだけの長さを持っている必要がある。なお、方向線の終点の座標は矩形の面の中心であり、ここでは、作例の撮影地点の座標に等しい。次に、座標系の原点から現在位置までの距離を計算する(ステップS0805)。これは、後のステップで矩形の頂点を透視投影する際のパラメータとして用いる。続いて、先ほど求めた矩形の4頂点の座標に対して透視投影を行い、実際にディスプレイ上に表示する際の座標値を求める(ステップS0806)。透視投影の座標変換式は一般に知られているが、ここでは次のように求めるものとする。矩形の頂点の座標を(x0, y0, z0)、X軸の回転角度をRx、Y軸の回転角度をRy、Z軸の回転角度をRzとする。また、現在地点から投影面までの距離をDs、現在地点から原点までの距離をDoとする。ここで、DoはステップS0805で求めた値である。このとき、透視投影後の座標(x1, y1)は、
【0033】
【数2】

【0034】
【数3】

【0035】
で求められる。この計算を、矩形の4頂点について行い、すべての頂点の透視投影が完了したら、変換後の各頂点の座標を結ぶパスをディスプレイ上に描画する(ステップS0807)。同様に、ステップS0804で求めた方向線の始点と終点も透視変換を行い(ステップS0808)、変換後の点を結ぶアローを描画することで(ステップS0809)、方向線0202をユーザに提示する。以上で、ある1つの作例について、撮影構図を示す矩形と方向線の描画が完了するので、再びステップS0800に戻り、インデックススタックの空かどうかの判定を行う。
【0036】
撮像装置が、以上で示した一連の処理を実行することによって、作例の撮影構図を示す3次元矩形オブジェクトをディスプレイ上に表示することができる。これにより、ユーザは、表示されたいずれか1つの矩形と表示領域が一致するように撮像装置を移動させるだけで、作例と同様の構図で撮影を行うことができる。
【0037】
上記実施形態では、矩形0201と共に、撮影に必要な補助情報として、撮影方向を示す方向線0202を表示する例を示したが、補助情報として他の情報を提示しても良い。例えば、矩形0201の近傍に、その作例の画像サムネイルを重畳表示しても良い。これにより、各矩形の地点で撮影を行うとどのような写真を撮影できるのか、ユーザが移動前に分かるようになる。これを実施するには、図4で示した作例情報のデータ構造に、新たに対応する画像サムネイルの情報を格納するフィールドを追加する。その上で、図8で示した方向線の描画処理(ステップS0812)の後、既定のオフセット位置に、対応する画像サムネイルを描画する処理を追加すれば良い。
【0038】
また、上記実施形態では、ディスプレイ上の画像に作例の撮影構図を示す3次元矩形オブジェクトを重畳表示する例を示したが、この矩形の代わりに、作例の画像イメージを利用しても良い。これにより、ユーザは、矩形を見ることで、どのような写真がその地点で撮影されたのかを確認することができる。これを実施するためには、図8で示した透視投影処理(ステップS0806からS0809)において、頂点の座標を投影する変わりに、対応する作例の画素値を投影すれば良い。
【0039】
(その他の実施形態)
また、本発明の構成要素は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インターフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、カメラ、複写機、ファクシミリ装置など)に適用しても良い。本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のデータ保存部、ROMなどを用いることが出来る。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部を行う。さらに、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるデータ保存部に書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ上に、撮影構図をガイドするオブジェクトを表示する表示制御手段と、
前記ディスプレイの表示領域と前記オブジェクトが一致したかを判定する判定手段と、
前記判定手段で、表示領域と前記オブジェクトが一致したと判定された場合、撮影時に利用する設定パラメータを、前記オブジェクトに関連つけられた情報に基づいて設定する設定手段を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記オブジェクトは、作例ごとに異なる3次元矩形オブジェクトであることを特徴と請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、さらに、画像の撮影方向を示す情報を表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
撮像装置の制御方法であって、
表示制御手段が、ディスプレイ上に、撮影構図をガイドするオブジェクトを表示する表示制御工程と、
判定手段が、前記ディスプレイの表示領域と前記オブジェクトが一致したかを判定する判定工程と、
設定手段が、前記判定工程で、表示領域と前記オブジェクトが一致したと判定された場合、撮影時に利用する設定パラメータを、前記オブジェクトに関連つけられた情報に基づいて設定する設定工程を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項5】
前記オブジェクトは、作例ごとに異なる3次元矩形オブジェクトであることを特徴と請求項4に記載の撮像装置の制御方法。
【請求項6】
前記表示制御工程は、ディスプレイ上に、撮影構図をガイドするオブジェクトと、画像の撮影方向を示す情報を表示することを特徴とする請求項4又は5に記載の撮像装置の制御方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−90106(P2012−90106A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235565(P2010−235565)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】