説明

撮像装置およびその制御方法

【課題】 撮影光学系の全体を動かすことなく、両眼視差画像を得る。
【解決手段】 一部401を移動又は回動することにより、合焦状態を変えずに、入射瞳1の中心位置を光軸に直角な方向に移動可能な撮影光学系101と、撮影光学系の一部を移動又は回動して、入射瞳の中心位置を第1の位置に置いて被写体を撮影させ、第1の画像を得、引き続き、撮影光学系の一部を移動又は回動して、入射瞳の中心位置を第2の位置に置いて被写体を撮影させ、第2の画像を得、第1の画像と第2の画像を用いて、両眼視差画像を取得する制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両眼視差画像を得ることができる撮像装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、映画、TVなどを始め立体映像を用いるものが普及し始めている。デジタルカメラに於いても例外ではない。
【0003】
両眼視差を得るためにカメラを2台使用するケースは古くから有るが、同様に1台のカメラ筐体に2台分のカメラを搭載したもの、特許文献1に示されるように1台のカメラを両眼視差方向に移動させて、複数回の連続撮影により得た画像より立体画像を生成するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−363758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
両眼視差立体視を得るための静止画を撮影する際に、右目用左目用の2枚の視差画像が必要である。該視差画像を得るために、従来は、(A)視差を有する2台のカメラを用いる、又は、(B)1台のカメラで視差を有するように複数の画像を撮影する、等の方法で輻輳角に相当する画角差の画像を取得していた。
【0006】
まず、Aの方法は、2台のカメラとそれを保持する専用の機材装置、又は実質的に2台のカメラをひとつの筐体に組み込んだ特殊なカメラが必要である。
【0007】
一方、Bの方法は少なくとも2回に分けて撮影するので、三脚などを用いて正確なアライメントが必要となり、これも三脚などの機材が必要となる。また、左右画像を撮影する間に少なからず時間差が生ずるため、動いている被写体には適さない。また、風景などであっても、その間被写体に変化(太陽の位置など)が生ずると好ましくない。
【0008】
それ以外に、Bの方法では1台のカメラを手持ちで水平方向に振り動かしながら高速撮影を行い、これらの撮影画像から画像処理により左右視差画像を生成するものが製品などで提案されている。この場合は、そのための専用機材は他に必要ないが、手持ちでカメラを振るときの水平精度、走査方向と垂直のカメラ振れ、走査範囲、走査速度などの影響を受け易い問題があり、失敗する確率が高くなる。
【0009】
また、従来2枚の画像を両眼視差画像として用いる場合、それらの画像には所定の両眼輻湊角に対応した視差角度がつけられていることが必要といわれてきた。
【0010】
通常、両眼間隔を60〜70mm程度として、被写体との距離との関係で輻湊角が決まるので、従来、両眼視差画像を撮影する場合は、それに合わせた撮影条件が選ばれてきた。例えば、2台のカメラを用いる場合、レンズの間隔が60〜70mmになるように並べて配置する。1台のカメラで2回撮影する場合も、該レンズ間隔に該当するように、適宜カメラを移動して撮影する。
【0011】
このように、撮影機器が大型化せざるを得なかったり、カメラを水平方向に正確に振り動かす必要範囲があったりするなど、種々の制約があった。
【0012】
(発明の目的)
本発明の目的は、撮影光学系の全体を動かすことなく、両眼視差画像を得ることができる撮像装置およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、一部を移動又は回動することにより、合焦状態を変えずに、入射瞳の中心位置を光軸に直角な方向に移動可能な撮影光学系と、前記撮影光学系の一部を移動又は回動して、前記入射瞳の中心位置を第1の位置に置いて被写体を撮影させ、第1の画像を得、引き続き、前記撮影光学系の一部を移動又は回動して、前記入射瞳の中心位置を第2の位置に置いて被写体を撮影させ、第2の画像を得、前記第1の画像と前記第2の画像を用いて、両眼視差画像を取得する制御手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、撮影光学系の全体を動かすことなく、両眼視差画像を得ることができる撮像装置およびその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例である撮像装置としてのデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】実施例の全体的な動作を示すフローチャートである。
【図3】実施例における防振光学系の構成を示す図である。
【図4】実施例における両眼視差画像取得の様子を示す図である。
【図5】実施例において二つの画像を重ね合わせる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に記載される通りである。
【実施例】
【0017】
〈デジタルカメラの構成〉
本発明の詳細な説明に入る前に、本発明の全ての本実施例に係る撮像装置としてのデジタルカメラの構成について説明する。
【0018】
図1に、デジタルカメラのブロック図を示す。
【0019】
撮像光学系101は、レンズおよび絞りからなる。102は、メカニカルシャッタ(メカシャッタと図示する)である。撮像素子103は、CCDやCMOSなどのイメージセンサである。CDS回路104は、アナログ信号処理を行うCDS回路などである。A/D変換器105は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。タイミング信号発生回路106は、撮像素子103、CDS回路104およびA/D変換器105を動作させるタイミング信号を発生する。駆動回路107は、撮影光学系101、メカニカルシャッタ102および撮像素子103の駆動回路である。
【0020】
信号処理回路108は、撮影した画像データに必要な信号処理を行う。画像メモリ109は、信号処理された画像データを記憶する画像メモリである。画像記録媒体110は、デジタルカメラから取り外し可能な画像記録媒体である。記録回路111は、信号処理された画像データを画像記録媒体110に記録する。画像表示部112は、信号処理された画像データを表示する。表示回路113は、画像表示部112に画像を表示する。システム制御部114は、デジタルカメラ全体を制御するシステム制御部である。ROM115は、システム制御部114で実行される制御方法を記載したプログラム、プログラムを実行する際に使用されるパラメータやテーブル等の制御データ、および、キズアドレス等の補正データを記憶しておく不揮発性メモリ(ROM)である。RAM116は、ROM115に記憶されたプログラム、制御データおよび補正データを転送して記憶しておき、システム制御部114がデジタルカメラを制御する際に使用する揮発性メモリ(RAM)となっている。
【0021】
以下、上述のように構成されたデジタルカメラを用いてメカニカルシャッタ102を使用した撮影動作について説明する。撮影動作に先立ち、デジタルカメラの電源投入時等のシステム制御部114の動作開始時において、ROM115から必要なプログラム、制御データおよび補正データをRAM116に転送して記憶しておくものとする。また、これらのプログラムやデータは、システム制御部114がデジタルカメラを制御する際に使用するとともに、必要に応じて、追加のプログラムやデータをROM115からRAM116に転送したり、システム制御部114が直接ROM115内のデータを読み出して使用したりするものとする。
【0022】
まず、撮影光学系101は、システム制御部114からの制御信号により、絞りとレンズを駆動して、適切な明るさに設定された被写体像を撮像素子103上に結像させる。
【0023】
次に、メカニカルシャッタ102は、システム制御部114からの制御信号により、必要な露光時間となるように撮像素子103の動作に合わせて撮像素子103を遮光するように駆動される。この時、撮像素子103が電子シャッタ機能を有する場合は、メカニカルシャッタ102と併用して、必要な露光時間を確保してもよい。撮像素子103は、システム制御部114により制御されるタイミング信号発生回路106が発生する動作パルスをもとにした駆動パルスで駆動され、被写体像を光電変換により電気信号に変換してアナログ画像信号として出力する。撮像素子103から出力されたアナログの画像信号は、システム制御部114により制御されるタイミング信号発生回路106が発生する動作パルスにより、CDS回路104でクロック同期性ノイズを除去され、A/D変換器105でデジタル画像信号に変換される。次に、システム制御部114により制御される信号処理回路108において、デジタル画像信号に対して、色変換、ホワイトバランス、ガンマ補正等の画像処理、解像度変換処理、画像圧縮処理等が行われる。画像メモリ109は、信号処理中のデジタル画像信号を一時的に記憶したり、信号処理されたデジタル画像信号である画像データを記憶したりするために用いられる。信号処理回路108で信号処理された画像データや画像メモリ109に記憶されている画像データは、記録回路111において画像記録媒体110に適したデータ(例えば階層構造を持つファイルシステムデータ)に変換されて画像記録媒体110に記録される。また、信号処理回路108で解像度変換処理を実施された後、表示回路113に於いて画像表示部112に適した信号(例えばNTSC方式のアナログ信号等)に変換されて画像表示部112に表示される。
【0024】
ここで、信号処理回路108においては、システム制御部114からの制御信号により信号処理をせずにデジタル画像信号をそのまま画像データとして、画像メモリ109や記録回路111に出力してもよい。また、信号処理回路108は、システム制御部114から要求があった場合に、信号処理の過程で生じたデジタル画像信号や画像データの情報、例えば、画像の空間周波数、指定領域の平均値、圧縮画像のデータ量等の情報、あるいは、それらから抽出された情報をシステム制御部114に出力する。さらに、記録回路111は、システム制御部114から要求があった場合に、画像記録媒体110の種類や空き容量等の情報をシステム制御部114に出力する。
【0025】
さらに、画像記録媒体110に画像データが記録されている場合の再生動作について説明する。システム制御部114からの制御信号により記録回路111は、画像記録媒体110から画像データを読み出し、同じくシステム制御部114からの制御信号により信号処理回路108は、画像データが圧縮画像であった場合には、画像伸長処理を行い、画像メモリ9に記憶する。画像メモリ9に記憶されている画像データは、信号処理回路108で解像度変換処理を実施された後、表示回路113に於いて画像表示部112に適した信号に変換されて画像表示部112に表示される。
【0026】
撮影時の処理の全体的な流れについて、図2に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明において特に記載がない場合、動作の主体はシステム制御部114である。
【0027】
まず、ステップS301で、システム制御部114は、操作部(不図示)に含まれる図示しないメインスイッチ(電源スイッチ)の状態を検出し、オン状態であればステップS302へ進む。ステップS302で、システム制御部114は、記録回路111に装着された画像記録媒体110の残容量を調べ、残容量が例えば画質設定などから定まる撮影画像データサイズよりも多ければステップS305へ進み、そうでなければステップS303へ進む。
【0028】
ステップS303でシステム制御部114は、画像記録媒体110の残容量が不充分であることを警告してステップS301に戻る。警告は、画像表示部112にメッセージを表示するか、図示しない音声出力部から音声を出力するか、又はその両方により行うことができる。
【0029】
ステップS305でシステム制御部114は、画像表示部112にフォーカス領域を表示する。すなわち、撮影した画像を一時記憶部である画像メモリ109へ保存し、表示回路113により表示画像を生成して画像表示部112に表示する処理を連続的に行う表示処理において、通常撮影時に設定されたフォーカス領域を併せて表示する。
【0030】
ステップS306でシステム制御部114は、レリーズの状態を調べ、半押し状態であればステップS308へ進み、そうでなければステップS307へ進む。ここで、レリーズの半押し状態により、自動合焦動作(AF)や自動露出制御動作(AE)など、本撮影に先立つ撮影準備処理を開始する。ステップS307ではメインスイッチの状態を調べ、オン状態であればステップS305へ戻り、そうでなければステップS301へ戻る。
【0031】
ステップS308でシステム制御部114は、A/Dコンバータ105の出力から被写体輝度を検出する。つまり、測光処理を行う。
【0032】
その後、ステップS310で自動合焦処理(AF処理)を行う。ステップS308の検出結果から被写体輝度が所定値より低い場合には、図示しない光源によりAF補助光を被写体に向けて所定時間投光してAF処理を行う。
【0033】
そして、合焦すると、ステップS311では、レリーズ(不図示)が全押し状態であるかどうかを調べ、全押し状態であればステップS313へ進み、そうでなければステップS312へ進む。ここで、レリーズの全押しにより撮影処理を開始する。
【0034】
ステップS312ではレリーズが半押し状態かどうかを調べ、半押し状態であればステップS311へ戻り、そうでなければステップS305へ戻る。ステップS314ではステップS302と同様に画像記録媒体110の残容量を調べ、次の撮影に必要な残容量があればステップS315へ進み、そうでなければステップS303へ進む。ステップS315ではレリーズが全押し状態であるかどうかを調べ、全押し状態でなければステップS312へ進む。
【0035】
図3に、撮影光学系101に於ける防振光学系の構成のブロック図を示す。
【0036】
撮影光学系101の一部である、防振レンズ群401は光軸に直角な方向405に移動制御される。デジタルカメラの姿勢を検出する姿勢検出部404からの情報に基づき、防振レンズ群401に対して防振レンズ駆動回路403を介して駆動制御が行われる。このとき防振レンズ群401は絞り402を含み、共に移動制御されるため、防振レンズ群401の移動制御に伴い、合焦状態を変えずに、入射瞳の中心位置は光軸に直角な方向405に移動する。
【0037】
(両眼視差画像取得の構成)
本実施例は、光学的な像振れ撮影防止機構による防振レンズ群401の可動機能を使用して、両眼視差画像を得る例である。
【0038】
防振レンズ群401の本来の機能は、撮像素子103に結像した画像の、デジタルカメラの手振れに伴う露光時間中の移動を相殺することである。
【0039】
防振レンズ群401の特性上、デジタルカメラを固定したまま、これを偏芯すると、被写体に対して見込む角度が変わり、撮像素子103の撮像面上で画像が移動するが、同時に入射瞳の移動が発生し、この移動分が視差角として作用する。この様子を図4(a)、図4(b)に示す。
【0040】
被写体2に対して、図4(a)(b)はそれぞれ防振レンズ群401の位置を変えて撮影している状態を示している。
【0041】
防振レンズ群401を、両眼視差方向に離れた2カ所、つまり第1の位置と第2の位置に移動、固定し、それぞれの位置で第1の画像と第2の画像を撮影し、その2枚の画像を両眼視差画像とする方法である。防振レンズ群401の移動は、光軸中心位置を基準として対称に2箇所に移動させ、それぞれを右目用、左目用に撮影を行う。
【0042】
尚、防振レンズ群401を光軸に対する垂直方向に平行偏芯させる以外に、光軸に垂直な回転軸の周りに回動させる場合もある。この場合は、防振レンズ群401を回動軸周りに逆方向に回動させた2箇所に於いて撮影を行うことで同様の効果を得ることができる。
【0043】
防振レンズ群401は、光軸に対し垂直な方向に平行移動、若しくは、光軸に対し垂直な方向である回動軸の周りに回動する。これは、防振レンズ群401の鏡筒を、レールガイドやボールベアリング機構などで移動又は回動可能な状態に保持し、磁気回路などの駆動力を利用して所望の状態へ移動することにより行われる。また、所望の位置では、例えば相互に逆方向に駆動する複数の磁気回路の駆動力をバランス制御することにより加減速、停止位置保持を行うことができる。
【0044】
図4(a)(b)それぞれは防振レンズ群401を光軸に関して対称な位置の第1の位置と第2の位置に保持している状態を示している。
【0045】
このとき、防振レンズ群401の移動方向を、デジタルカメラを構えた状態に対して水平方向、即ちそのときの両眼視差方向に動かすことが必要である。図4では、紙面内が水平方向に対応している。図4の符号1にて示すのは、撮影光学系101の入射瞳であり、絞り402の虚像である。入射瞳1の中心位置は光軸に直角な方向に移動可能である。防振レンズ群401の偏芯移動に伴い、入射瞳1の位置も偏芯移動するため、被写体2を見込む角度が変わり、図4(a)(b)の入射瞳1の位置の間隔(第1の位置と第2の位置の間隔)が輻湊角を決める、両眼の視点の間隔に対応する。
【0046】
上記入射瞳1の移動は、撮影光学系101の大きさ、イメージサークルサイズ、防振レンズ群401の偏芯量、その他設計内容にも依存するが、焦点距離40〜50mm程度のレンズの場合、数mm程度である。これは視差としては、視覚上好適な立体画像としての認識が可能な量である。
【0047】
尚、防振レンズ群を使用して視差画像を撮影するため、光学防振機能を使用することはできなくなる。但し、本実施例の使用方法は水平方向に限定されるので、水平方向の防振動作を行わせないが、鉛直方向に関しては従来通り防振動作を独立して行わせることが可能である。撮影時の手振れの方向は鉛直方向だけとは限らないが、鉛直方向の振れが支配的である場合も多いため、ある程度の防振効果は得られる。
【0048】
尚、本実施例の場合、光学防振レンズ群を順次2つの位置に置いて、それぞれの位置で第1の画像と第2の画像の撮影を行うが、これを高速に切り替えて行うため、2枚の画像を撮影する時間間隔は十分に短い。そのため、従来1台のカメラで2枚の両眼視差画像を撮影する場合のように、カメラを設定し直したり、手持ちで水平方向に振り動かしたりするのに比較して、短時間での撮影が可能である。
【0049】
このため、2台のカメラで同時に撮影するのには及ばないまでも、撮影中の被写体の位置振れなどの変化による影響は少なくて済む。
【0050】
更に、防振レンズ群を2点切り替える位置は、元々狭い範囲ではあるが、任意に設定可能である。そのため、撮影する被写体距離に応じて防振レンズ群の移動間隔を決定することが可能である。
【0051】
例えば、撮影に先立って自動焦点調節(オートフォーカス:AF)を実行するが、一般にそのとき焦点調節のためのフォーカスレンズ群を至近〜無限遠の所定の範囲で、繰り出し又は繰り込み方向に走査する。合焦検出の方法がコントラスト法であるか位相差法であるかに依存して画面内の検出可能範囲や、繰り出し/繰り込み方向の走査範囲が異なるが、この走査を行うことにより画面内の各位置それぞれの被写体の距離の情報を取得することが可能である。この手段と、被写体検出技術を用いることにより、画面内の被写体毎の距離情報を取得することが可能である。ここで顔認証技術など被写体認証手段を併用することで、例えば登録した顔の人物を主被写体として、この人物の撮影距離を把握することが出来る。
【0052】
また、撮影者が主被写体を、液晶ファインダ画面にタッチするなどの手段で選択指定することもできる。そこで、立体視を最も強調したい被写体、(例えば主被写体など)の距離に対応して、防振レンズ群の2点切り替えの位置(移動間隔)を変更することが可能である。
【0053】
具体的には、例えば一般に遠い物体は輻湊角が小さく、近い物体は輻湊角が大きくなる。比較的遠くの主被写体に対して、立体感、遠近感を強調したい場合、輻輳角がやや大きくなるように2点切り替えの位置の差を大きくするなどである。
【0054】
言い換えれば、実際の被写体の距離と異なる立体感を得られるように、防振レンズ群の2点切り替え位置を変更することが可能である。
【0055】
更に、立体画像を観察する環境も近年は様々であり、比較的離れた距離では大画面では3DTVがあり、近距離小画面では携帯電話の画面、携帯ゲーム機などもある。これらの各観察条件は、夫々大きく異なっており、また、元の画像を撮影したときの条件とも必ずしも一致しない。
【0056】
このような場合、立体画像として観察する条件にて、立体視効果が好適に発揮されるように撮影時の、防振レンズ群の2点切り替えの位置の差を調整することができる。これは、観察する機器の条件を幾つか予めデジタルカメラ内に保持しておき、撮影前に撮影者が観賞する予定の機器を指定することで、その条件に適合するように撮影することが可能である。
【0057】
光学防振レンズ群の移動に伴い、撮像素子上では画像の移動も発生する。2枚の両眼視差画像として使用するために位置を合わせる処理を行う必要がある。
【0058】
この様子を図5に示す。図4(a)にて撮影された第1の画像を図5(a)として、図4(b)にて撮影された第2の画像を図5(b)として、模式的に示している。図5(a)、図5(b)はそれぞれ被写体2を左右の視差をもって撮影された画像である。上記のように入射瞳1の位置を移動させて撮影するのに伴い、視差をもって撮影されると同時に、撮像素子103の撮像面上での画像も移動する。両眼視差画像として用いる際に、画面枠内に於ける被写体の位置がずれているので、主な被写体の位置を合わせて画像の周囲を切り出したものが図5(c)である。
【0059】
両眼視差画像として用いる際には、元々視差を有する被写体の位置は完全に重ならないのと、観察時に視覚的に融合認識されるため、厳密な位置の合わせは必要ない。
【0060】
両眼視差をもたらす方向は、観察時の両眼の並ぶ方向であるが、これは必ずしもデジタルカメラの画面の長辺方向と一致するとは限らない。水平方向に、即ち、地平に対して平行に撮影する場合でも、カメラを縦位置で構えたり、画面内に於いて斜めに構えたりする場合もある。その場合、両眼視差方向は、一般に水平方向であるため、防振レンズ群の2点切り替え方向は、これを考慮して、カメラ本体の向きとは独立に水平方向に設定する必要がある。水平方向の検出は、カメラ本体に組み込まれたジャイロセンサにより判定したり、画面に映し込まれた人物の顔の並びや、地平線と思しき直線を検出したりして、判定することができる。
【0061】
また、同様に俯瞰して撮影したり、仰視して撮影したりする場合、デジタルカメラの撮影光学系の光軸周りの回転姿勢に関係なく、水平方向を該2点切り替え方向とする必要がある。但し、デジタルカメラの撮影光学系が鉛直上方又は下方を向いている場合にはこの限りではない。その場合は、無条件に画面長辺方向を防振レンズ群の2点切り替え方向に設定する。
【0062】
なお、本発明はデジタルカメラを例にとって説明したが、デジタルビデオカメラや交換レンズ式のデジタル一眼レフカメラであってもよい。また、撮像装置を搭載した携帯電話やゲーム機器のような電子機器であっても良い。
【符号の説明】
【0063】
101 撮影光学系
114 システム制御部
401 防振レンズ群
403 防振レンズ駆動回路
404 姿勢検出部
1 入射瞳

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部を移動又は回動することにより、合焦状態を変えずに、入射瞳の中心位置を光軸に直角な方向に移動可能な撮影光学系と、
前記撮影光学系の一部を移動又は回動して、前記入射瞳の中心位置を第1の位置に置いて被写体を撮影させ、第1の画像を得、引き続き、前記撮影光学系の一部を移動又は回動して、前記入射瞳の中心位置を第2の位置に置いて被写体を撮影させ、第2の画像を得、前記第1の画像と前記第2の画像を用いて、両眼視差画像を取得する制御手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮影光学系の一部は防振レンズ群であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1の位置と前記第2の位置は、光軸に関して対称で水平方向に離れた二つの位置であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記水平方向は撮像装置の姿勢に基づき検出することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記水平方向の検出は、画像から判定、若しくは、ジャイロセンサを用いて判定することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、水平方向の防振動作を行わせないが、鉛直方向の防振動作は独立して行わせることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1の位置と前記第2の位置は、任意に設定可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の画像および前記第2の画像から重なり合う主たる被写体の領域を切り出すことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記制御手段は、撮影に先立ち自動焦点調節を行うときに、画面内のそれぞれの位置に撮影される被写体までの距離の情報を取得し、該距離の情報に基づいて前記第1の位置と前記第2の位置を決定することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
距離の異なる被写体をそれぞれ認識し、主たる被写体、または遠近感を強調したい被写体の距離に基づき、前記第1の位置と前記第2の位置を変更することを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
主たる被写体、又は遠近感を強調したい被写体を、撮影時に撮影者が指定することを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
一部を移動又は回動することにより、合焦状態を変えずに、入射瞳の中心位置を光軸に直角な方向に移動可能な撮影光学系を有する撮像装置の制御方法であって、
前記撮影光学系の一部を移動又は回動して、前記入射瞳の中心位置を第1の位置に置いて被写体を撮影させ、第1の画像を得る第一の制御ステップと、
前記第一の制御ステップに引き続き、前記撮影光学系の一部を移動又は回動して、前記入射瞳の中心位置を第2の位置に置いて被写体を撮影させ、第2の画像を得る第2の制御ステップと、
前記第1の画像と前記第2の画像を用いて、両眼視差画像を取得する視差画像取得ステップとを有することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−61495(P2013−61495A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200073(P2011−200073)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】