説明

撮像装置および撮像装置の制御プログラム

【課題】連続撮影時においては、途中で被写体環境の明るさが暗くなった場合に、測光素子が必要とする電荷蓄積時間が長くなり、撮影継続中に連写速度が急激に低下する場合があった。
【解決手段】撮像装置は、撮像素子と、測光素子と、測光信号に基づいて被写体の明るさを算出する算出部と、撮像素子が連続的に画像信号を出力する場合に、撮像素子による撮像受光動作の間に割り当てられた、測光素子が被写体像を受光する時間である測光受光時間が、被写体環境の明るさに対応して予め設定された許容受光時間未満であるときは、算出部により事前に算出された被写体の明るさを適用して撮像受光動作を実行する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および撮像装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被写体像を受光して画像信号を出力する撮像素子と、被写体環境の明るさを検出する測光素子とを別々に備えるTTLの撮像装置は、一般的に、被写体光束を排他的にそれぞれの素子へ導く可動ミラー構造を有する。したがって、撮像素子が連続的に画像信号を出力する連続撮影時においては、撮像素子による撮像受光動作の合間に、可動ミラーを駆動して、測光素子による被写体環境の明るさ検出が実行される。撮像受光動作は、検出された被写体環境の明るさに基づいて決定される露出値に従って制御される。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2005−6217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、連続撮影時においては、途中で被写体環境の明るさが暗くなった場合に、測光素子が必要とする電荷蓄積時間が長くなり、撮影継続中に連写速度が急激に低下する場合があった。連写速度を優先して電荷蓄積時間を制限すると、測光素子の読み出しゲインが大きくなり、正確な露出値が算出できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様における撮像装置は、被写体像を受光して画像信号を出力する撮像素子と、被写体像を受光して測光信号を出力する測光素子と、測光信号に基づいて被写体の明るさを算出する算出部と、撮像素子が連続的に画像信号を出力する場合に、撮像素子による撮像受光動作の間に割り当てられた、測光素子が被写体像を受光する時間である測光受光時間が、被写体環境の明るさに対応して予め設定された許容受光時間未満であるときは、算出部により事前に算出された被写体の明るさを適用して撮像受光動作を実行する制御部とを備える。
【0005】
本発明の第2の態様における撮像装置の制御プログラムは、被写体像を受光して画像信号を出力する撮像素子と、被写体像を受光して測光信号を出力する測光素子とを備える撮像装置の制御プログラムであって、撮像素子が画像信号を連続的に出力する場合に、被写体環境の明るさに対応して予め設定された許容受光時間を参照する参照ステップと、参照ステップによる参照の結果、撮像素子による撮像受光動作の間に割り当てられる、測光素子が被写体像を受光する時間である測光受光時間が、許容時間未満である場合に、事前に算出された被写体の明るさを適用して撮像受光動作を実行する撮像ステップとをコンピュータに実行させる。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る一眼レフカメラの要部断面図である。
【図2】一眼レフカメラのシステム構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】測光素子の電荷蓄積時間と出力値の関係を示す図である。
【図4】EV値と電荷蓄積時間の関係を示す図である。
【図5】測光受光時間と算出されるEV値の関係を示す図である。
【図6】EV値と測光充足条件によって区分されるAEロック領域と測光追従領域を示す図である。
【図7】メインミラー、測光素子および撮像素子の動作遷移を示すタイミングチャートである。
【図8】連写時における主に測光動作の処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本実施形態に係る一眼レフカメラ10の要部断面図である。一眼レフカメラ10は、レンズユニット20とカメラユニット30が組み合わされて撮像装置として機能する。
【0010】
レンズユニット20は、光軸11に沿って配列されたレンズ群21を備える。レンズ群21は、入射される被写体光束をカメラユニット30へ導く。レンズ群21には、フォーカスレンズ、ズームレンズ等が含まれ、焦点調整、画角調整の指示に応じて光軸方向に移動できるように構成されている。レンズユニット20は、カメラユニット30との接続部にレンズマウント22を備え、カメラユニット30が備えるカメラマウント54と係合して、カメラユニット30と一体化する。
【0011】
レンズユニット20は、レンズユニット20の動作等を制御するレンズシステム制御部23を備える。レンズシステム制御部23は、レンズマウント22およびカメラマウント54に設けられた通信端子を介して、カメラユニット30と相互に通信を行う。
【0012】
カメラユニット30は、レンズユニット20から入射される被写体光束を反射するメインミラー31と、メインミラー31で反射された被写体光束が結像するピント板35を備える。メインミラー31は、メインミラー保持枠32に保持されてメインミラー回転軸33周りに回動して、光軸11を中心とする被写体光束中に斜設される斜設状態と、被写体光束から退避する退避状態を取り得る。
【0013】
ピント板35側へ被写体像を導く場合は、メインミラー31は被写体光束中に斜設される。このとき、メインミラー保持枠32の裏面がメインミラー偏心ピン34と当接して、メインミラー31の斜設角度が規定される。メインミラー偏心ピン34は、回転することでメインミラー保持枠32と当接する箇所を調整することができ、メインミラー31の斜設角度を精確に設定できる。また、ピント板35は、撮像素子48の受光面と共役の位置に配置されている。ピント板35で結像した被写体像は、ペンタプリズム36で正立像に変換され、接眼光学系37を介してユーザに観察される。
【0014】
ペンタプリズム36の射出面上方には測光素子39が配置されており、測光素子39の受光面には、ピント板35に結像した被写体像が、ペンタプリズム36および測光光学系38を介して二次結像される。測光素子39は、被写体環境の輝度分布を検出するAEセンサの役割を担う素子であり、二次元配列された光電変換素子により構成される。
【0015】
ピント板35とペンタプリズム36の間には、液晶素子から構成されるファインダ表示部40が配置されている。ファインダ表示部40は、格子線、焦点調節領域等を表示することができ、ユーザはこれらを、接眼光学系37を介して、ピント板35に結像する被写体像に重ねて観察することができる。
【0016】
斜設状態におけるメインミラー31の光軸11の近傍領域は、ハーフミラーとして形成されており、入射される被写体光束の一部が透過する。透過した被写体光束は、メインミラー31と連動して回動するサブミラー保持枠42に保持されたサブミラー41で反射されて、AF光学系45へ導かれる。AF光学系45を通過した被写体光束は、AFセンサ46へ入射される。
【0017】
なお、サブミラー保持枠42は、メインミラー保持枠32に設けられるサブミラー回転軸43周りに回動する。そして、斜設状態においては、サブミラー保持枠42の裏面がサブミラー偏心ピン44と当接して、サブミラー41の斜設角度が規定される。サブミラー偏心ピン44は、回転することでサブミラー保持枠42と当接する箇所を調整することができ、サブミラー41の斜設角度を精確に設定できる。
【0018】
AFセンサ46は、例えば、受光した被写体光束から位相差信号を出力する複数の光電変換素子列である。具体的には、被写体像の特定の領域に対応して設けられる複数の焦点調整領域のそれぞれにおいて、合焦状態、前ピン状態、後ピン状態を検出でき、前ピン状態、後ピン状態の場合には、合焦状態からのずれ量も検出することができるように構成されている。なお、サブミラー41は、メインミラー31が被写体光束から退避する場合は、メインミラー31に連動して被写体光束から退避する。
【0019】
斜設されたメインミラー31の後方には、光軸11に沿って、フォーカルプレーンシャッタ47、撮像素子48が配列されている。フォーカルプレーンシャッタ47は、撮像素子48へ被写体光束を導くときに開放状態を取り、その他のときに遮蔽状態を取る。そして、撮像素子48は、例えばCMOSセンサなどの光電変換素子であり、受光面で結像した被写体像を電気信号に変換する。
【0020】
撮像素子48で光電変換された電気信号は、メイン基板49に搭載されたDSPである画像処理部55で画像データに処理される。メイン基板49には、画像処理部55の他に、カメラユニット30のシステムを統合的に制御するMPUであるカメラシステム制御部51が搭載されている。カメラシステム制御部51は、カメラシーケンスを管理すると共に、各構成要素の入出力処理等を行う。例えば、測光素子39から出力される被写体像の輝度分布から被写体環境の明るさを算出する。そして算出された明るさとプログラム線図から露出値を決定する。また、AFセンサ46から出力される位相差信号を用いて合焦制御を行う。
【0021】
カメラユニット30の背面には液晶モニタ等による背面表示部52が配設されており、画像処理部55で処理された被写体画像が表示される。背面表示部52は、撮影後の静止画像に限らず、各種メニュー情報、撮影情報等を表示する。また、カメラユニット30には、着脱可能な二次電池53が収容され、カメラユニット30に限らず、レンズユニット20にも電力を供給する。
【0022】
図2は、一眼レフカメラ10のシステム構成を概略的に示すブロック図である。一眼レフカメラ10のシステムは、レンズユニット20とカメラユニット30のそれぞれに対応して、レンズシステム制御部23を中心とするレンズ制御系と、カメラシステム制御部51を中心とするカメラ制御系により構成される。そして、レンズ制御系とカメラ制御系は、レンズマウント22とカメラマウント54によって接続される通信端子を介して、相互に各種データ、制御信号の授受を行う。
【0023】
カメラ制御系に含まれる画像処理部55は、カメラシステム制御部51からの指令に従って、撮像素子48で光電変換された撮像信号を画像データに処理する。処理された画像データは、表示制御部59へ送られて、例えば撮影後の一定時間の間、背面表示部52に表示される。これに並行して、処理された画像データは、予め定められた画像フォーマットに加工され、外部接続IF56を介して外部メモリに記録される。
【0024】
カメラメモリ57は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性メモリであり、一眼レフカメラ10を制御するプログラム、各種パラメータなどを記憶する役割を担う。ワークメモリ58は、例えばRAMなどの高速アクセスできるメモリであり、処理中の画像データを一時的に保管する役割などを担う。
【0025】
カメラ駆動部60は、カメラシステム制御部51からの指令に従ってメインミラー31、サブミラー41、フォーカルプレーンシャッタ47等を駆動する。操作入力部61は、レリーズボタン、撮影モードダイヤル、測光モードダイヤル等の操作部材がユーザに操作されたことを検出して、カメラシステム制御部51へ出力する。なお、上述のように、カメラシステム制御部51は、測光素子39の出力を受けて被写体環境の明るさを算出する。
【0026】
レンズシステム制御部23は、カメラシステム制御部51からの制御信号を受けて各種動作を制御する。レンズメモリ24は、レンズ固有の情報およびレンズシステム制御部23が実行するプログラム等を記憶している。
【0027】
次に、測光素子39の電荷蓄積時間と出力の関係について説明する。図3は、同一強度の光を受光した場合の測光素子39の電荷蓄積時間と出力値の関係を示す図である。横軸は電荷蓄積時間の経過を表し、縦軸は測光素子39の出力信号を10bitの分解能でAD変換した後の出力値を表す。電荷蓄積時間は、測光素子39の各光電変換素子がリセットされた後に被写体像の受光を継続している時間である。
【0028】
同一の明るさの被写体像を受光し続ける場合、電荷蓄積時間が長くなるほど、出力される電圧は大きくなる。ただし、各光電変換素子には受容できる光量の上限があるので、やがて飽和する。出力信号を1倍のゲインでAD変換する場合、この飽和電荷量近傍に相当するアナログ電圧のAD変換値をAD変換器の上限値と設定すると良い。図3に示すように、ゲイン1倍で時間Tまで電荷蓄積を継続した場合、飽和出力値であるKに到達する。より大きなEV値である場合、すなわち被写体環境がより明るい場合は、時間Tが短くなり、逆により小さなEV値である場合、すなわち被写体環境がより暗い場合は、時間Tが長くなる。したがって、飽和出力値よりもやや小さな値であるKに目標レベルを定め、この目標レベルに到達するまでの時間Tを計測すれば、被写体環境の明るさとしてのEV値を検出することができる。
【0029】
同じ明るさの被写体像を受光した場合、増幅率であるゲインを2倍にすれば、ゲインを1倍にしたときに比べておよそ半分の電荷蓄積時間で目標レベルに到達する。図3においては、2T≒Tの関係が成り立つ。同様に、ゲインを4倍にすれば、ゲインを1倍にしたときに比べておよそ1/4の電荷蓄積時間で目標レベルに到達する。図3においては、4T≒Tの関係が成り立つ。
【0030】
したがって、半分の強度の被写体像を受光する場合にゲインを2倍にすれば、電荷蓄積時間はTとなる。同様に、1/4の強度の被写体像を受光する場合にゲインを4倍にすれば、電荷蓄積時間はやはりTとなる。したがって、被写体環境が暗い場合には、ゲインを大きくすることにより、電荷蓄積時間を短くすることができる。換言すれば、ある程度の電荷蓄積時間が確保できるのであれば、大きなゲインを採用することにより、被写体環境としては暗い、すなわち小さなEVまで検出することができる。ただし、ゲインを大きくし過ぎるとSN比が悪くなるので、例えば事前の実験等により採用できるゲインの上限を定めておくことが肝要である。本実施例においては、最大ゲインを4倍とする。
【0031】
図4は、検出されるEV値と電荷蓄積時間の関係を示す図である。横軸はEV値を表し、縦軸は電荷蓄積時間を表す。ここでは、測光素子39の検出能力の例としてEV0から20である場合について説明する。
【0032】
被写体環境が比較的明るいAの領域においては、測光素子39の出力が目標レベルとなるように電荷蓄積時間とゲインを調整しながら電荷蓄積を実行する。図において被写体輝度の高い側(明るい側)から低い側(暗い側)へ実線を辿ると、まず、ゲインが1倍に設定された状態であって、電荷蓄積時間として最小蓄積時間であるTminとEV20が対応することがわかる。そして、ゲイン1倍のラインに沿って進むと、目標レベルに到達する電荷蓄積時間が長くなるに従い、対応するEV値が小さくなることがわかる。
【0033】
ゲインが1倍に設定されている状態においてゲイン切替上限時間Tguに到達したら、次の測光時にはゲインが2倍に切り替えられる。このとき、電荷蓄積時間は約半分になる。そして、今度はゲイン2倍のラインに沿って進むと、やはり目標レベルに到達する電荷蓄積時間が長くなるに従い、対応するEV値が小さくなることがわかる。再びゲイン切替上限時間Tguに到達したら、次の測光時にはゲインが4倍に切り替えられる。このとき、やはり電荷蓄積時間は約半分になる。同様に、今度はゲイン4倍のラインに沿って進むと、最大電荷蓄積時間Tmaxまでは、やはり目標レベルに到達する電荷蓄積時間が長くなるに従い、対応するEV値が小さくなることがわかる。
【0034】
最大電荷蓄積時間Tmaxは、カメラシステム制御部51が電荷蓄積時間として割り当て可能な上限時間を表す。一眼レフカメラ10が連写撮影を実行する場合、測光素子39の測光受光時間である電荷蓄積時間を長く設定すると、その分だけ単位時間当たりの撮影枚数である駒速が低下する。しかも、測光サイクルが長くなり、被写体の輝度変化に対する追従性も低下する。さらに、電荷蓄積時間を長くし過ぎると出力信号のSN比も悪化する。そこで、駒速および測光サイクルの確保、出力信号の信頼性の観点から、電荷蓄積時間の上限時間として最大電荷蓄積時間Tmaxが予め設定されている。
【0035】
被写体環境が比較的暗いBの領域において、ゲイン4倍のラインがやがてTmaxに到達し、その後の電荷蓄積時間はTmaxで頭打ちとなる。電荷蓄積時間がTmaxで一定に制限される場合は、カメラシステム制御部51は、この一定時間の間に蓄積された電荷量、すなわちこれに対応するAD変換値からEV値を算出する。
【0036】
なお、図4において一転鎖線で示すラインは、被写体輝度の低い側から高い側へ変化する場合の電荷蓄積時間とEV値の関係を示す。ゲインが4倍に設定されている状態においてゲイン切替下限時間Tglに到達したら、ゲインが2倍に切り替えられる。このとき、電荷蓄積時間は約2倍になる。そしてゲインが2倍に設定されている状態において再びゲイン切替下限時間Tglに到達したら、ゲインが1倍に切り替えられる。このときも、電荷蓄積時間は約2倍になる。このように、被写体輝度の高い側から低い側へ変化する場合と、低い側から高い側へ変化する場合でヒステリシスを持たせることにより、ゲイン切替のばたつきを回避している。
【0037】
図4で示す実線において、Tmaxで制限されない斜線部分は、目標レベルに到達するまでの電荷蓄積時間を表し、Tmaxで制限される水平部分は、対応するEV値を精度よく検出する場合に必要な電荷蓄積時間を表している。つまり、図4で示す実線は、EV値を算出する場合の理想的な電荷蓄積時間を表す。光電変換素子のリセットタイミング等による誤差を無視して電荷蓄積時間と測光素子39が被写体像を受光する測光受光時間とが等しいとするなら、図4の実線で表される電荷蓄積時間は目標受光時間であると捉えることができる。
【0038】
上述の通り、最大電荷蓄積時間Tmaxは、駒速確保等の観点から電荷蓄積時間の上限時間として設定されているが、実際の連写撮影においては、より高速な撮影シーケンスが実行される場合がある。したがって、撮像素子48が連続的に画像信号を出力するときに、カメラシステム制御部51が撮像受光動作の間に割り当てる測光受光時間は、Tmaxよりも短くなることがある。つまり、カメラシステム制御部51は、駒間の測光受光時間としてTmaxの時間を割くことができない場合がある。その場合には、目標受光時間よりも短い測光受光時間で電荷蓄積された出力信号からEV値を算出しなければならない。しかし、測光受光時間があまりにも短いと蓄積される電荷が少なく、算出結果が安定しない。つまり、算出されたEV値の信頼性が低く、露出値の演算に用いることができない。そこで、本実施形態においては、算出されたEV値が正しいと判断され得る測光受光時間として、許容受光時間を導入する。
【0039】
図5は、測光受光時間と算出されるEV値の関係を示す図である。特に、図4のBの領域に対応する領域を示す。横軸に測光受光時間を対数目盛りで表し、縦軸に算出されたEV値を表す。この図は、各EV値に相当する輝度に調整された被写体環境を、測光受光時間を変化させつつ実際に測光素子39で測光した実験結果を模式的に示す。
【0040】
各ラインは、下から順にEV0、EV1、…EV9の実験結果を表す。いずれのラインも測光受光時間が短い領域で曲線となり、長い領域で水平な直線となる。しかも、曲線部と水平直線部の接続点は、EV値が大きいラインほど、測光受光時間に対してより短い時点に現れる。そして、各ラインの水平直線部は、縦軸の算出されたEV値を参照すると、実際に調整した被写体環境の輝度に対応するEV値と良く一致する。例えば、EV6に相当する輝度に調整された被写体環境に対して得られたラインの水平直線部は、算出結果としてもEV6を示している。しかし、曲線部では、実際に調整した被写体環境の輝度に対して、算出されるEV値が大きな値を示している。すなわち、測光受光時間が短いと、算出されるEV値は実際の被写体環境の輝度に対するEV値よりも大きな値となる。
【0041】
つまり、算出されるEV値と実際の被写体環境の輝度に対するEV値が一致するのは、各ラインの接続点に対応する測光受光時間よりも長時間側の領域であると言える。換言すれば、算出されたEV値が正しいと判断されるのは、測光受光時間が、各ラインの接続点付近を結んで規定される許容受光時間よりも長時間の領域に存在する場合である。
【0042】
したがって、図4を用いて説明した目標受光時間(図5においてはTmaxが100msecに相当する)のラインと許容受光時間のラインで挟まれる、図5の網掛け領域に測光受光時間が存在するのであれば、算出されたEV値は正確であると判断できる。逆に、この領域以外の領域に測光受光時間が存在するのであれば、算出されたEV値は信用できないと判断できる。この意味において図5の網掛け領域は、測光可能領域と定義できる。
【0043】
カメラシステム制御部51は、割り当てた測光受光時間で測光素子39が測光した出力信号を受け取り、EV値を算出する。そして、割り当てた測光受光時間と算出したEV値を図5のグラフに当てはめ、適応するラインを選択する。この選択されたラインは、特定のEV値に対する実験結果であるので、上述のように、曲線部と水平直線部との接続点付近に許容受光時間が規定されている。カメラシステム制御部51は、割り当てた測光受光時間が許容受光時間よりも右側の水平直線部である測光可能領域に属するか否かを判断する。測光可能領域に属すると判断すれば、その算出したEV値は正確な値として採用し、属しないと判断すれば、信頼できない値として破棄する。別言すれば、カメラシステム制御部51は、算出したEV値と選択したラインのEV値とが一致していれば正確な値として採用し、一致していなければ信頼できない値として破棄する。ただし、後述するように、ここで選択されたラインから定められる許容受光時間と目標受光時間は、次回の測光動作における測光受光時間の決定時に参照される。
【0044】
図5では、EV値で1刻みの実験結果を示すラインを描いているが、もちろんより細かく実験データを取得しても良い。そして、このように実験あるいはシミュレーションなどによって取得されたデータから、各EV値に対する測光可能領域を示すルックアップテーブルを作成し、カメラメモリ57に記憶させておく。カメラシステム制御部51は、連写時など割り当てた測光時間が短い場合等において、このルックアップテーブルを参照して、算出したEV値を採用するか否かを判断する。
【0045】
上述のように、連写時においては特に測光受光時間が短くなる。その短くなった測光受光時間であっても被写体が明るければ、カメラシステム制御部51は、測光素子39の出力から正確なEV値を算出することができる。一方、被写体が暗ければ正確なEV値を算出できない。そこで、カメラシステム制御部51は、正確なEV値が算出できた場合には、連写中であっても各駒間で当該EV値から露出値を演算し、その露出値に従って次の駒の撮像制御に反映させる。つまり測光追従を実行する。正確なEV値が算出できなかった場合には、当該EV値を破棄して、前駒で適用された露出値を次の駒の撮影制御にも適用する。つまりAEロックを実行する。AEロックでは、事前に算出された、例えば先頭駒の撮像動作に先立って算出された正確なEV値を用いて演算された露出値が、継続して適用される。
【0046】
上述のように、測光受光時間が測光可能領域に存在するか否かにより、測光追従するかAEロックするかを決定しても良いが、測光受光時間/目標受光時間で定義される測光充足条件に則してルックアップテーブルを生成することもできる。図6は、この観点において生成されたルックアップテーブルを図示したものである。より具体的には、図6は、EV値と測光充足条件によって区分されるAEロック領域と測光追従領域を示す。横軸に算出されたEV値を表し、縦軸に測光充足条件を表す。
【0047】
図6における測光追従領域とAEロック領域の境界線は、図5の測光可能領域から導出される。図5において、EV8よりも大きな輝度の領域では、許容受光時間と目標受光時間が平行線で表されるので、図6におけるRはこの一定の比率によって定められる。EV8未満の領域では、目標受光時間が一定(=Tmax)であるのに対し、許容受光時間はEV値が小さくなるに従って一定の割合で増加する。したがって、図6のこの領域における境界線は、EV値が小さくなるにしたがって測光充足条件が増加する関係を示す。さらに、EV1未満の領域では、許容受光時間と目標受光時間が平行線で表されるので、図6におけるRもこの一定の比率によって定められる。このように、測光追従領域とAEロック領域の境界線を、測光充足条件により区分しておけば、ルックアップテーブルとしての管理が容易となる。
【0048】
以上のような本実施形態に係る一眼レフカメラ10において連写撮影を実行する場合、カメラシステム制御部51は、撮像素子48による撮像受光動作の間に割り当てられる、測光素子39が被写体像を受光する時間である測光受光時間を漸増させる。以下に具体的に説明する。
【0049】
従来の一眼レフカメラにおいて連写撮影を行う場合、システム制御部は、撮像素子による撮像受光動作の合間にメインミラーを斜設状態にして被写体光束を測光素子へ導き、測光素子に十分な電荷蓄積時間を与えて測光を行っていた。このように制御すれば、連写撮影中に発生する被写体環境の明るさの変化に追従でき、より適切な露出値をもって一枚一枚の撮像受光動作を実行することができる。しかし、例えば、被写体が日なたから日陰へ移動した場合など、被写体環境の明るさが急激に暗くなると、測光素子が必要とする電荷蓄積時間が急激に増大する。この場合、明るさの変化の前後において駒速が急激に低下することになる。つまり、連写撮影の測光制御において明るさの変化への追従を重視しすぎると、ユーザは、駒速の急激な低下に違和感を覚える。
【0050】
あるいは、従来の一眼レフカメラにおいて連写撮影を行う場合、システム制御部は、1枚目の撮影に用いた露出値を固定して、後の連続する撮像受光動作に適用するAEロックを行っていた。この場合は、駒速が優先されるので、急激な駒速低下は発生しないが、連写撮影中に発生する被写体環境の明るさの変化には追従できない。したがって、被写体環境が暗くなった後に撮影された画像データは、すべてアンダーとなる場合があった。
【0051】
そこで、本実施形態においては、カメラシステム制御部51は、駒速の連続性と、明るさの変化に対する追従性のバランスを考慮して、以下に説明するように測光素子39に割り当てる測光受光時間を、連写撮影中に漸増させる。図7は、メインミラー31、測光素子39および撮像素子48の動作遷移を示すタイミングチャートである。図において、横軸は、時間の経過を表す。図の例は、特徴的な変化を示すべく、連写撮影動作開始後のn枚目から連続する3枚の撮影動作についての遷移を表している。
【0052】
図において、縦軸方向には、上から順にメインミラー31の状態、測光素子39の電荷蓄積状態および撮像素子48の電荷蓄積状態を整列させている。メインミラー31は、上述のように、UP状態である待避状態と、DOWN状態である斜設状態を取る。カメラシステム制御部51がレリーズ制御信号をカメラ駆動部60へ送出すると、カメラ駆動部60は、メインミラー31をDOWN状態からUP状態へ駆動し始める。このとき、サブミラー41も、メインミラー31の変位に連動してUP状態へ変位する。メインミラー31とサブミラー41を含むミラー部は、カメラ駆動部60により高速に変位されるので、UP状態に到達しても、静止するまでの間にバウンスが減衰する時間を要する。
【0053】
そして、後述するように撮像素子48の電荷蓄積が完了したら、カメラシステム制御部51は、カメラ駆動部60へミラー部をDOWN状態へ駆動させる制御信号を送出する。ミラー部は、カメラ駆動部60に駆動されて、UP状態からDOWN状態へ変位する。この場合も、ミラー部がDOWN状態で静止するまでに、ミラー部のバウンスが減衰する時間を要する。ミラー部は、連続撮影が行われている間は、このようにして、UP状態とDOWN状態を繰り返す。
【0054】
測光素子39は、ピント板35に結像した被写体像を受光する。したがって、測光素子39が被写体光束を受光して電荷を蓄積できる期間は、メインミラー31がピント板35へ被写体光束を安定的に導く、DOWNN状態の静止期間である。カメラシステム制御部51は、この期間の長さを調整する制御を行う。
【0055】
図7の中段で示すように、測光素子39は、メインミラー31のDOWN状態の静止期間に電荷蓄積を実行するように、カメラシステム制御部51によって制御される。この実際に被写体光束を受光して電荷蓄積を行える期間を、測光受光時間とする。なお、カメラシステム制御部51は、ミラー部の静止時点を、他のセンサにより検出しても良いし、カメラ駆動部60がDOWN状態へ駆動し始めてからバウンスが減衰するまでの時間を予め計測しておくことにより予測しても良い。
【0056】
カメラシステム制御部51は、一旦開始した連続撮影の駒速の連続性を考慮して、測光受光時間を急激には変化させない。したがって、被写体環境が連写撮影中に暗くなって、目標受光時間が延びたとしても、カメラシステム制御部51は、測光受光時間として目標受光時間を直ちには割り当てない。具体的には、カメラシステム制御部51は、明るい被写体環境下において測光動作が正しく実行できていた前回の測光受光時間をそのまま割り当てる。そして、カメラシステム制御部51は、測光素子39が当該測光受光時間で測光した出力信号を受け取り、EV値を算出する。この場合、実際には被写体環境が暗くなっているので、図5を用いて説明したように、割り当てられた測光受光時間は、選択されたラインによって定められる許容受光時間に到達せず、算出されたEV値は破棄される。この場合、カメラシステム制御部51は、被写体環境の正確なEV値を算出できないので、連続する撮像受光動作に対しては、前回(n−1枚目)の撮像受光動作で用いた露出値をそのまま用いる。つまり、カメラシステム制御部51は、AEロックにより撮像受光動作を実行する。なお、カメラシステム制御部51は、次回(n+1枚目)の撮像受光動作に備えて、今回の測光受光時間と選択されたラインによって定められる目標受光時間とを記憶しておく。
【0057】
カメラシステム制御部51は、n枚目の撮像受光動作として、n−1枚目の撮像受光動作で適用した絞り値でレンズユニット20の絞りを駆動し、シャッタ速度でフォーカルプレーンシャッタ47を駆動し、ISO感度で撮像素子48の出力信号を増幅する。図7の下段で示すように、撮像素子48は、ミラー部のUP状態の静止期間において電荷蓄積状態となる。カメラシステム制御部51は、この期間内にフォーカルプレーンシャッタ47の先幕と後幕を走行させて、被写体光束が撮像素子48へ到達する期間(シャッタ速度)を調整する。
【0058】
電荷蓄積時間として許容受光時間を確保できれば、測光素子39が正確な輝度分布を出力することができるのは上述の通りである。本実施形態においては、カメラシステム制御部51は、測光受光時間を漸増させていき、測光受光時間が許容受光時間を超えたら、AEロックを解除して、新たな露出値を算出する。
【0059】
カメラシステム制御部51は、記憶しておいたn枚目の測光受光時間と目標受光時間とを用いて延長時間を算出し、これを参照してn+1枚目の測光受光時間を定める。具体的には、n枚目の測光受光時間に、n枚目における目標受光時間と測光受光時間との差分である不足時間に予め定められた割合をかけた延長時間を加算して、n+1枚目の測光受光時間を定める。図7の中段に示すように、n+1枚目の測光受光時間は、延長時間が加算された分だけn枚目の測光受光時間よりは長い。カメラシステム制御部51は、n枚目の処理と同様に、測光素子39が当該測光受光時間で測光した出力信号を受け取り、EV値を算出する。そして、当該測光受光時間と算出したEV値とから図5におけるラインを選択し、n+1枚目における許容受光時間を定める。図の例では、n+1枚目においても、測光受光時間は、新たに定められた許容受光時間を下回っている。したがって、カメラシステム制御部51は、正確なEV値を算出できないので、連続する撮像受光動作に対しては、前回(n枚目)の撮像受光動作で用いた露出値をそのまま用いる。つまり、カメラシステム制御部51は、n枚目の撮像受光動作と同様に、AEロックにより撮像受光動作を実行する。
【0060】
カメラシステム制御部51は、続くn+2枚目における測光受光時間も同様に漸増させる。すなわち、n+1枚目の測光受光時間に、n+1枚目における目標受光時間と測光受光時間との差である不足時間に予め定められた割合をかけた延長時間を加算して、n+2枚目の測光受光時間を定める。図の例では、n+2枚目の測光受光時間は、延長時間が加算された分だけn+1枚目の測光受光時間より長くなり、その結果、n+2枚目に対して定められた許容受光時間を上回っている。そこで、カメラシステム制御部51は、測光素子39の出力からEV値を算出し、選択されている撮影モードに従って露出値を決定する、AE演算を実行する。そして、カメラシステム制御部51は、連続する撮像受光動作に対して、AE演算により決定された露出値を適用する。なお、更に連続してn+3枚目、n+4枚目…と連写撮影が継続される場合も、カメラシステム制御部51は、前回の不足時間に予め定められた割合をかけた延長時間を前回の測光受光時間に加算して、今回の測光受光時間を定める。この場合、測光受光時間は、目標受光時間に到達するまで漸増され、目標受光時間を超えた場合は、それ以上延長されない。なお、測光受光時間を漸増させた結果、測光受光時間が許容受光時間を超えた場合は、目標受光時間に到達していなくても、それ以上延長しないように構成しても良い。
【0061】
次に、一連の処理の流れについて説明する。図8は、連写時における主に測光動作の処理を示すフロー図である。フローは、一眼レフカメラ10の電源がオンにされ、ユーザから撮影準備の指示を受け付けられる状態になった時点から開始する。
【0062】
カメラシステム制御部51は、ステップS101で、操作入力部61の一つであるレリーズボタンがユーザによって半押しされた場合にオンとなる、SW1がオンとなったか否かを検出する。カメラシステム制御部51は、オンを検出したら、ステップS102へ進み、撮影準備動作を開始する。
【0063】
ステップS102において、カメラシステム制御部51は、目標受光時間を測光受光時間として、測光素子39の電荷蓄積を実行する。そして、カメラシステム制御部51は、ステップS103で、測光演算を行って被写体の輝度情報としてのEV値を算出し、このEV値と設定された撮影モード等により、露出値を算出する。なお、カメラシステム制御部51は、撮影準備段階における電荷蓄積動作を、一回に限らず、数回行っても良い。
【0064】
カメラシステム制御部51は、ステップS104で、予め設定されたタイマー時間が経過するまで、撮影指示であるSW2がオンにされるのを待つ。SW2は、レリーズボタンがユーザによって全押しされた場合にオンとなる。
【0065】
カメラシステム制御部51は、ステップS104でSW2がオンにされたと判断したら、ステップS105へ進み、撮影動作を開始する。具体的には、カメラシステム制御部51は、カメラ駆動部60を介してミラー部をUP状態へ移行させ、撮像素子48を電荷蓄積状態にする。並行して、レンズシステム制御部23を介して、ステップS103で算出した絞り値に従ってレンズユニット20の絞りを駆動する。さらに、カメラシステム制御部51は、カメラ駆動部60を介して、ステップS103で算出したシャッタ速度に従ってフォーカルプレーンシャッタ47を走行させる。カメラシステム制御部51は、被写体像が光電変換された画像信号を、ステップS103で算出したISO感度に従って撮像素子48から読み出し、AD変換を行った後にワークメモリ58へ送出する。
【0066】
カメラシステム制御部51は、ワークメモリ58で一旦保管された画像データを順次画像処理部55へ転送して、画像処理を開始させる。画像処理部55は、指定された画像フォーマットにしたがって、画像処理、ファイル化処理等を施し、生成した画像ファイルを外部メモリへ送出する。
【0067】
カメラシステム制御部51は、ステップS105で撮影動作を完了したら、連続して次の撮影動作へ移行することができる。カメラシステム制御部51は、1枚目の撮影動作が完了したら、ステップS106で、オフにされたか否かを判断する。SW2がオフにされていると判断したら、撮影指示が終了したと判断する。SW2がオンのままであると判断したら、ユーザがレリーズボタンを継続して全押ししていることを意味するので、カメラシステム制御部51は、ユーザが連写撮影を指示していると判断する。
【0068】
カメラシステム制御部51は、ステップS106でSW2が継続してオン状態であると判断したらステップS107へ進み、測光受光時間Tを割り当て、測光素子39に電荷蓄積を実行させる。そして、ステップS108で、カメラシステム制御部51は、図5を用いて説明したように、測光素子39の出力から一旦EV値を算出し、測光受光時間Tが、算出したEV値に基づいて定められる許容受光時間Tを下回っているか否かを判断する。測光受光時間Tが許容受光時間T以上であれば、ステップS109へ進み、カメラシステム制御部51は、ステップS107による測光素子39の電荷蓄積結果から算出したEV値を用いて、ステップS103と同様に、測光演算および露出値算出を行う。ただし、連写撮影継続中においては、駒速を高速に維持する要請から、割り当てられる測光受光時間Tは必要十分の短時間に限られるので、測光素子39によって実行される電荷蓄積は複数回では無く、原則的には1回である。カメラシステム制御部51は、算出した露出値を、ステップS110で実行する撮影動作に適用する露出値として設定する。
【0069】
ステップS108で、測光受光時間Tが許容受光時間Tを下回っていると判断した場合は、カメラシステム制御部51は、測光素子39の電荷蓄積結果を反映させない。すなわち、ステップS110で実行する撮影動作に適用する露出値として、前回の露出値をそのまま設定する。例えば、2枚目の撮影動作の準備段階であれば、ステップS103で算出した露出値を設定する。
【0070】
ステップS110では、カメラシステム制御部51は、設定された露出値に従って、ステップS105と同様に、撮影動作を実行する。さらには、画像処理部55に画像処理を実行させる。そして、カメラシステム制御部51は、ステップS111へ進み、図7を用いて説明したように延長時間を算出し、測光受光時間Tに当該延長時間を加算することにより、測光受光時間Tを更新する。測光受光時間Tを更新したら再びステップS106へ戻る。ステップS106でSW2のオンが継続されていれば、連写撮影が継続される。このとき、ステップS107では、更新された測光受光時間Tが割り当てられる。
【0071】
ステップS101でSW1がオンにされなかった場合、ステップS104でSW2がオンにされなかった場合、ステップS106でSW2がオフにされた場合には、ステップS112へ進み、カメラシステム制御部51は、電源がオフにされたか否かを判断する。電源がオフにされていないと判断した場合には、ステップS101へ戻る。オフにされたと判断した場合には、一連の処理を終了する。
【0072】
また、上記の処理においては、ステップS108で、カメラシステム制御部51は、測光受光時間Tが許容受光時間Tを下回っていると判断した場合は、測光演算および露出値算出を行わない。しかし、測光演算自体さらには露出値の算出自体は一律に行い、その結果を使わないとすることもできる。
【0073】
以上の実施形態においては、被写体環境が暗くなる場合を想定して、測光受光時間Tを漸増させる場合の処理について説明した。しかし、被写体環境が連写撮影中に暗くなる場合があるのと同様に、明るくなる場合もある。明るくなる場合には、それまで漸増させた測光受光時間Tに対して、目標受光時間が突然短くなることが想定される。この場合、明るさの変化に対する追従性が犠牲になることはないが、駒速の連続性の観点においては突然高速になることがあり、ユーザが覚える違和感と共に、予想外にメモリを消費してしまうという問題がある。そこで、カメラシステム制御部51は、測光受光時間Tから、目標受光時間Tとの差である余剰時間に、予め定められる短縮割合を掛けた短縮時間を減算して、測光受光時間Tを漸減させる。このような処理を実行すれば、駒速が徐々に速くなるので、ユーザの違和感が緩和されると共に、急激なメモリ消費を防ぐことができる。測光受光時間Tを漸減させた結果、目標受光時間Tを下回った場合には、カメラシステム制御部51は、測光受光時間Tをそれ以上短縮させない。また、短縮させ過ぎた場合には、目標受光時間Tあるいは許容受光時間Tに到達するまで、漸増させるように構成しても良い。
【0074】
以上の実施形態においては、測光素子39がステップS107で被写体像を受光して出力した、つまり割り当てられた測光受光時間で受光して出力した測光信号からEV値を算出し、そのEV値に対応する許容時間を決定した。しかし、一眼レフカメラ10に周辺環境の輝度を検出するセンサを設けて、当該センサの出力からEV値を算出しても良い。測光受光時間が非常に短い場合には、その蓄積電荷からEV値を算出すると実際のEV値とはかけ離れる場合があるので、他のセンサを補助的に用いることにより、許容受光時間が正確に決定されることが期待できる。
【0075】
なお、以上の実施形態においては、最大の増幅率として4倍を採用した。もちろん、SN比との兼ね合いにより、これより高い増幅率を採用することもできる。その場合、測光信号が予め定められた最大の増幅率により出力されている場合に、上記実施形態の通り、許容受光時間に基づいて撮像受光動作を実行する。このとき、測光信号が最大の増幅率よりも小さな増幅率で出力されている場合に測光受光時間が不足すれば、増幅率を大きくして測光追従すれば良い。
【0076】
したがって、許容受光時間に基づいて撮像受光動作を実行するのは、被写体の明るさが予め定められた明るさよりも暗い場合である。別言すれば、測光受光時間が、被写体の明るさおよび撮像素子が画像信号を出力する撮像周期の少なくともいずれかに基づいて決定される目標受光時間未満である場合に、許容受光時間に基づいて撮像受光動作が実行される。
【0077】
以上の実施形態においては、被写体環境の明るさを輝度として一律にEV値に対応させて説明した。Apex演算においては、EV値は露出値であり、絞り値に対応する開口値(AV値)とシャッタ速度に対応する露光時間(TV値)の和で表される制御値である。測光素子39が直接的に算出するのは輝度値(BV値)であり、この輝度値にISO感度に対応する感度値(SV値)を加えた値が光値(LV値)となる。EV値とLV値が等しくなるように露出演算をした場合に適正露出となる。つまり、以上の実施形態においては、適正露出を前提に説明した。したがって、測光素子39の出力から算出される値としてBV値を適用し、LV値を基準として図5に対応するルックアップテーブルを生成しても良い。もちろん、適正露出を前提としないのであれば、適正露出との差分によりEV値とLV値の間で調整を行えば良い。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0079】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0080】
10 一眼レフカメラ、11 光軸、20 レンズユニット、21 レンズ群、22 レンズマウント、23 レンズシステム制御部、24 レンズメモリ、30 カメラユニット、31 メインミラー、32 メインミラー保持枠、33 メインミラー回転軸、34 メインミラー偏心ピン、35 ピント板、36 ペンタプリズム、37 接眼光学系、38 測光光学系、39 測光素子、40 ファインダ表示部、41 サブミラー、42 サブミラー保持枠、43 サブミラー回転軸、44 サブミラー偏心ピン、45 AF光学系、46 AFセンサ、47 フォーカルプレーンシャッタ、48 撮像素子、49 メイン基板、51 カメラシステム制御部、52 背面表示部、53 二次電池、54 カメラマウント、55 画像処理部、56 外部接続IF、57 カメラメモリ、58 ワークメモリ、59 表示制御部、60 カメラ駆動部、61 操作入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を受光して画像信号を出力する撮像素子と、
前記被写体像を受光して測光信号を出力する測光素子と、
前記測光信号に基づいて被写体の明るさを算出する算出部と、
前記撮像素子が連続的に前記画像信号を出力する場合に、前記撮像素子による撮像受光動作の間に割り当てられた、前記測光素子が前記被写体像を受光する時間である測光受光時間が、被写体環境の明るさに対応して予め設定された許容受光時間未満であるときは、前記算出部により事前に算出された前記被写体の明るさを適用して前記撮像受光動作を実行する制御部と
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記測光受光時間が前記許容受光時間以上であるときは、前記測光素子が前記被写体像を前記測光受光時間の間受光して出力した前記測光信号に基づいて前記算出部が算出した前記被写体の明るさを適用して前記撮像受光動作を実行する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記測光素子が前記被写体像を前記測光受光時間の間受光して出力した前記測光信号に基づいて前記算出部が算出した前記被写体の明るさから前記許容時間を決定する請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記測光信号が予め定められた最大の増幅率により出力されている場合に、前記許容受光時間に基づいて前記撮像受光動作を実行する請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記被写体の明るさが予め定められた明るさよりも暗い場合に、前記許容受光時間に基づいて前記撮像受光動作を実行する請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記測光受光時間が、前記被写体の明るさおよび前記撮像素子が前記画像信号を出力する撮像周期の少なくともいずれかに基づいて決定される、前記測光素子が前記被写体像を受光すべき目標受光時間未満である場合に、前記許容受光時間に基づいて前記撮像受光動作を実行する請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
被写体像を受光して画像信号を出力する撮像素子と、前記被写体像を受光して測光信号を出力する測光素子とを備える撮像装置の制御プログラムであって、
前記撮像素子が前記画像信号を連続的に出力する場合に、被写体環境の明るさに対応して予め設定された許容受光時間を参照する参照ステップと、
前記参照ステップによる参照の結果、前記撮像素子による撮像受光動作の間に割り当てられる、前記測光素子が前記被写体像を受光する時間である測光受光時間が、前記許容時間未満である場合に、事前に算出された前記被写体の明るさを適用して前記撮像受光動作を実行する撮像ステップと
をコンピュータに実行させる撮像装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88759(P2013−88759A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231666(P2011−231666)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】