説明

撮像装置及びその制御方法、並びにプログラム

【課題】低輝度限界以下の被写体輝度となる測光領域が存在する場合でも適正な露出となるように制御可能な撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供する。
【解決手段】撮像装置1は、輝度限界値に応じた補正を行わない測光値に対する重み付け係数を輝度限界値に応じた補正を行う測光値に対する重み付け係数よりも大きくして、測光されることで得られた複数の測光値の重み付け演算を行い、演算結果に基づいて露出値を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被写界を複数の測光領域に分割しそれぞれの測光領域毎の輝度を測定する測光センサを有し、分割した測光領域毎の測光値から撮像に適正な露出となるように自動露出制御を行う撮像装置が広く普及している。
【0003】
例えば、複数の焦点検出領域を有する撮像装置において、焦点検出領域毎に各測光領域の重み付けを変化させることで、撮像に適正な露出を得る手段が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、撮像装置においては、レンズなどの光学系の影響で、均一輝度面を測光しても周辺部の測光領域の測光値が暗くなる事が知られている。そこで、均一輝度面を測光した場合に同一の測光値になるように測光した値を補正する方法が周知されている。
【0005】
また、近年では、撮像素子の感度向上や画像処理の高度化により、ISO感度が数万といった高感度なデジタルカメラが登場しており、低輝度な被写体を撮像した場合でも適正な露出となる撮像装置が望まれている。
【0006】
一方、一眼レフカメラ等の撮像装置においては、被写体の輝度を、フォトダイオードの光電流をダイオード等のLOG特性を利用して、被写体の輝度を、広ダイナミックレンジで測光する測光センサが広く利用されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−223825号公報
【特許文献2】特開2005−077938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載されているようなフォトダイオードの光電流を利用した測光回路においては、フォトダイオードの漏れ電流が光電流との比率が大きくなる低輝度時には正確な測光が出来なくなる低輝度限界が存在する。
【0009】
図9は被写体輝度と測光値の関係を示した図である。図9において、実線901はある測光回路の被写体輝度と測光値の関係を示し、破線902は理想的な被写体輝度と測光値の関係を示し、破線902は被写体輝度と測光値が線形の関係を示している。
【0010】
図9において、実線901の線形性が保たれていない境界を示す測光値903が低輝度限界値である。低輝度限界値は、製造ばらつきにより、個体毎に異なり、同一測光センサの測光領域毎にも異なり、低輝度限界以下の被写体輝度を測光すると適正よりも明るい測光値となってしまう。
【0011】
特許文献1に開示された従来技術を用いた場合、選択された焦点検出領域に対応する測光領域が低輝度限界以下の被写体輝度であれば選択された焦点検出領域に対応する測光領域の重み付けを大きくすると適正露出よりも暗くなってしまう。
【0012】
本発明の目的は、低輝度限界以下の被写体輝度となる測光領域が存在する場合でも適正な露出となるように制御可能な撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の撮像装置は、撮影画面を分割した複数の測光領域ごとに測光を行う測光手段と、前記測光手段により測光されることで得られた複数の測光値を、前記複数の測光領域ごとの測光可能な輝度限界値に応じて補正する補正手段と、前記補正手段により補正を行わない測光値に対する重み付け係数を前記補正手段により補正を行う測光値に対する重み付け係数よりも大きくして、前記測光手段により測光されることで得られた複数の測光値の重み付け演算を行い、演算結果に基づいて露出値を決定する決定手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低輝度限界以下の被写体輝度となる測光領域が存在する場合でも適正な露出となるように制御可能な撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るデジタルカメラの機械的構成を示す図である。
【図2】図1におけるデジタルカメラの電気的構成を示す図である。
【図3】測光値例及び補正値を示す図である。
【図4】測光領域と被写体の対応、測光値、及び補正値を示す図である。
【図5】各測光領域と測光値演算用の重み付け例の関係を示す図である。
【図6】図1におけるカメラ制御部により実行される撮像処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】測距点情報を用いた重み付けについて説明するための図である。
【図8】図1におけるカメラ制御部により実行される撮像処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】被写体輝度と測光値の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係るデジタルカメラ(撮像装置)1の機械的構成を示す図である。
【0018】
図1において、デジタルカメラ1にレンズユニット150は不図示のマウント機構を介し着脱可能に取り付けられる。マウント部には不図示の電気的接点部を有しており、デジタルカメラ1とレンズユニット150間で制御信号、状態信号、データ信号の通信や電源供給が可能となっている。
【0019】
次に、被写体像からの撮像光束について説明する。この撮像光束は、撮像レンズ152及び絞り153を介してクイックリターンミラー110に導かれる。クイックリターンミラー110の中央部はハーフミラーになっており、該クイックリターンミラー110がダウンした際に一部の光束が透過する。
【0020】
そして、この透過した光束は、クイックリターンミラー110に設置されたサブミラー111によって、フィールドレンズ112、2次結像レンズ113、オートフォーカスセンサ114からなる公知の位相差方式焦点検出ユニットに導かれる。オートフォーカスセンサ114は複数の焦点検出位置を持っている。
【0021】
一方、クイックリターンミラー110で反射された撮像光束は、焦点検出板(以下、「ピント板」という)115、ペンタプリズム116、接眼レンズ117を介して撮像者の目に至る。
【0022】
なお、ピント板115はCMOS等に代表される撮像素子118結像面と等価の結像面に配され、上記クイックリターンミラー110で反射された被写体像はピント板115で1次結像する。
【0023】
また、上記接眼レンズ117の近傍に配置された測光回路119は、測光プリズム120、測光レンズ121によってピント板115に結像した被写体像を測光回路119のチップ上に2次結像させることで被写体像の輝度を検出している。
【0024】
測光回路温度計122は測光回路の温度測定を行う。測定された温度に応じて、測光値或いは、測光値の低輝度限界値を補正する。すなわち、輝度限界値は、測光回路温度計122により測定された温度に応じて定まるようにしてもよい。
【0025】
また、撮像者がレリーズボタン(不図示)を押すと、クイックリターンミラー110は撮像レンズ152の光路外に退避する。
【0026】
一方、撮像レンズ152によって集光された撮像光束はフォーカルプレーンシャッタ123にてその光量制御がなされ、撮像素子118によって被写体像として光電変換処理された後、撮像済み画像として不図示の記録メディアに記録される。表示装置124は液晶装置等であり、撮像画像、各種撮像情報、設定情報等を表示する。
【0027】
さらに、図1において、カメラ制御部100は、デジタルカメラ1の全体制御、レンズ制御部151は、レンズユニット150の全体制御を行う。
【0028】
また、姿勢検出部125がカメラ制御部100に接続されており、デジタルカメラ1の姿勢(光学ファインダが撮影光軸の上に位置する姿勢か撮影光軸の横に位置する姿勢か)を検出する。
【0029】
さらに、カメラ制御部100には操作部材126が接続されており、撮像モードや設定情報或いは、前述のオートフォーカスセンサ114の複数の焦点検出位置から使用する焦点検出位置を選択するために用いられる。
【0030】
また、レンズ制御部151には、撮像レンズ駆動制御部154が接続されている。この撮像レンズ駆動制御部154は、撮像レンズ152の駆動に関する制御を行う。
【0031】
図2は、図1におけるデジタルカメラ1の電気的構成を示す図である。
【0032】
図2において、デジタルカメラ1は、カメラ制御部100、測光回路119、測光回路温度計122、姿勢検出部125、オートフォーカスセンサ114、クイックターンミラー110、及びフォーカルプレーンシャッタ123で構成される。
【0033】
また、カメラ制御部100は、測光制御部201、メモリー202、低輝度限界判別部203、露出演算部204、露出制御部206、及び焦点検出制御部205で構成される。
【0034】
この構成において、撮像時はオートフォーカスセンサ114の出力に基づいて、カメラ制御部100がレンズ制御部151に撮像レンズ152の駆動量を送信する。
【0035】
レンズ制御部151は撮像レンズ駆動制御部154に撮像レンズを駆動させるための駆動量パルスを送る。撮像レンズ駆動制御部154は送られてきたパルスに応じてパルスモータを駆動させ、撮像レンズ152を合焦位置に駆動させることで自動焦点調節を行う。
【0036】
撮像者によりレリーズボタンの半押しなど、撮像の準備動作がなされた場合、測光制御部201は測光回路119へ駆動信号を出力する。
【0037】
測光回路119は、撮影画面を複数の測光領域に分割して測光領域ごとに測光し、それぞれの測光データを出力する。
【0038】
測光回路119から出力された測光データはメモリー202に記憶される。メモリー202に記憶された測光データは、測光制御部201、低輝度限界判別部203、及び露出演算部204へ出力される。
【0039】
低輝度限界判別部203は、測光回路119から読み出した測光領域毎における測光データが低輝度限界値以下か否かを、メモリー202に保持された閾値に基づいて判定する。
【0040】
測光制御部201は、過渡的な測光データから測光値を予測する際の測光回路の蓄積および読み出しを行うタイミングを制御する機能も有する。
【0041】
測光回路温度計122は低輝度限界判別部203、露出演算部204に接続されており、出力結果に応じて、メモリー202に記憶されている各測光領域の低輝度限界値及び測光データの補正を行う。
【0042】
露出演算部204にはレンズ制御部151が接続されており、レンズユニット150の撮像レンズの焦点距離、開放絞り値、射出瞳位置、ケラレ情報などの露出演算に必要なレンズ情報を取得する。
【0043】
また、露出演算部204には姿勢検出部125が接続されており、姿勢検出部125により検出された姿勢検出結果に応じて、露出演算部204が露出演算を行う。例えば、検出された姿勢に応じて、被写界領域の上方の測光領域の重み付けを被写界領域の下方の測光領域の重み付けよりも小さくする。
【0044】
焦点検出制御部205はオートフォーカスセンサ114、及びレンズ制御部151が接続されており、オートフォーカスセンサ114で選択された焦点検出位置における出力に応じて、レンズ制御部151へレンズ駆動量を送信する。
【0045】
また、焦点検出制御部205は選択された焦点検出位置、各焦点検出位置のデフォーカス情報等を露出演算部204へ出力する。また、焦点検出制御部205は、測光領域に含まれる範囲内の被写体像が合焦していることを検出することも可能である。
【0046】
露出演算部204は各部より得られた情報から最適な露出を演算する。この露出制御部206はレリーズボタンが押されると露出演算部204により算出された適正な露出値に基づいてクイックリターンミラー110、フォーカルプレーンシャッタ123、及びレンズ制御部151を通じて絞り153を制御することで露光を制御する。
【0047】
図3は、測光値例及び補正値を示す図であり、図3(a)は所定のレンズを装着し、均一輝度面を測光した場合の各測光領域の測光値例を示し、図3(b)は各測光領域における補正値を示している。
【0048】
図3では、測光回路119に含まれる測光センサにおける各測光領域の配置図を用いている。そして、この配置図によれば、一例として被写界を縦7分割、横9分割の63分割した場合を示しているが、これに限るものではない。
【0049】
また、配置図では、被写界領域301を縦にAからGの7分割、横にaからiの9分割している。なお、図3(a)における測光値は数値が大きいほど明るいことを示している。また、測光値の取得方法は、測光出力を所定時間内に複数回取得し、複数回の測光値の変化量を利用して、適正と思われる測光値を算出して求めてもよい。すなわち、補正される測光値は、複数回の測光を行い得られた複数の測光値の変化量から定められた測光値であってもよい。この場合、複数の測光領域のうち、複数回の測光を行い得られた複数の測光値の変化量から定められた測光値が低輝度限界値以下の測光領域の測光値に対して補正を行うことになる。
【0050】
図3(a)において、例えば、測光領域(D,h)の測光値S(D,h)=10である。また、被写界の中央(D,e)の測光値S(D,e)から同心円状に周辺部の測光値が暗くなっている。これは光学系の影響であり、装着するレンズや同一レンズであっても焦点距離の違いによって変化する。
【0051】
均一輝度面を測光した場合に各測光領域の測光値に差がある場合、適正な露出演算が出来ない。従って、露出演算部204では、基準の輝度を測光した場合の基準輝度測光値と基準輝度を測光した各測光領域の測光値との差分を補正し、光学系のばらつき、測光回路の個体ばらつきがあっても適正な測光を可能としている。
【0052】
例えば、図3(a)の被写体輝度を基準輝度Srefとすると、測光領域(D,h)の測光値は、その補正値S’(D,h)としたとき、以下の式1で補正される。
S’(D,h)=Sref−S(D,h)…(式1)
以下の説明では、Sref=30とする。この補正値S’(D,h)を用いて、(S’+測光値)を補正された測光値(補正測光値)とする。
【0053】
図3(b)は、図3(a)の光学系における基準輝度Srefに基づく補正値であって、各測光領域の低輝度限界値を示す図である。
【0054】
具体的には、測光センサによる測光値が0となる輝度を示している。例えば、測光領域(A,a)では、輝度値30で測光値が0になることを示している。すなわち、輝度値30以下の輝度値は、測光値が0になる。
【0055】
この低輝度限界値を測光センサによる測光値に加えることで、補正された測光値とするので、低輝度限界値は補正値でもある。
【0056】
そこで、図3(b)において、例えば、測光領域(D,h)の低輝度限界値S(D,h)min=20となっている。この場合、輝度値が20未満の輝度の被写体を測光したときは、適正な測光値が得られない。
【0057】
例えば、被写体輝度が理想的には測光値S(D,h)=10であった場合、10は20未満であることから、測光センサによる測光値が0となる。従って、図3(b)に示される補正値20を加えて、補正された測光値は20となり、適正な測光値である10より明るい測光値となってしまう。
【0058】
すなわち、低輝度限界値Sminとは、それ以下の輝度を測光した場合に適正な測光値を得る事が出来ないという輝度の閾値である。
【0059】
従って、図3(b)において、測光領域(D,h)の測光値S(D,h)が中央部の測光値S(D,e)と比較して明るい輝度でも適正な測光が出来ないという事を意味している。
【0060】
なお、本実施例では簡略化の為、光学系のばらつきのみにて説明をしているが、実際には、同一の測光回路119の測光センサの各測光領域の低輝度限界値は異なる。
【0061】
図4は、測光領域と被写体の対応、測光値、及び補正値を示す図である。具体的には、図4(a)は測光領域と被写体の対応を示す図である。図4(b)は、図4(a)における各測光領域の補正された測光値を示している。図4(c)は、図4(b)の測光回路による低輝度限界が無かった場合の理想的な各測光領域の測光値を示している。
【0062】
図4(b)において、図4(c)の各測光領域の測光値との比較より、測光領域401以外の測光領域は低輝度限界以下の測光値であり、適正な測光値が得られていない。なお、測光領域401は、((C,d)、(C,e)、(C,f)、(D,d)、(D,e)、(D,f)、(E,d)、(E,e)、(E,f)、(F,d)、(F,e)、(F,f))である。
【0063】
例えば、測光領域(C,d)の測光値S(C,d)=5で、理想値と一致しているが、測光領域(A,a)の測光値S(A,a)=30で理想値「2」とは一致しておらず、適正な測光値が得られていない。
【0064】
図5は、各測光領域と測光値演算用の重み付け例の関係を示す図である。
【0065】
図5において、図4(b)の各測光領域の測光値と図3(b)の低輝度限界値を比較し、低輝度限界値以下に対応する測光領域の重み付け係数W(x,y)を1としている。また、低輝度限界値以下ではない適正な測光値が得られている測光領域401の重み付け係数W(x,y)を10としている。
【0066】
露出演算部204では、下記式2に示されるように、各測光領域の補正値S’(x,y)と重み付け係数W(x,y)を乗算し、重み付け係数の総和で除算することで、露出値Xを算出する。
X=Σ(S’(x,y)×W(x,y))/ΣW(x,y)…(式2)
(Σは、x=A,B…G、y=a,b…iでの和)
式2から算出された露出値Xに基づいて、露出制御部206は露出制御を行う。このように、低輝度限界以下ではない測光領域の重み付けを上げることで、適切な露出値を得ることができる。なお、重み付けを上げずに単純に加重平均を取ると、図4の場合、本来中央の被写体に輝度に合わせたいにも関わらず、(A,a)など周辺の補正後の値に引っ張られて、低輝度限界以下ではない測光領域の重み付けを上げた加重平均よりも露出値は高い値となる。
【0067】
図6は、図1におけるカメラ制御部100により実行される撮像処理の手順を示すフローチャートである。
【0068】
図6において、撮像指示により、測光制御部201は測光回路119を制御し、各測光領域の測光値Sを取得する(ステップS601)。
【0069】
次いで、低輝度限界判別部203は取得した測光値Sと低輝度限界値をメモリー202から読み出し、各測光領域の測光値と低輝度限界値とを比較することで(ステップS602)、測光値が低輝度限界以下か否かを判別し、判別結果を露出演算部204へ出力する。
【0070】
露出演算部204は各測光領域の測光値と低輝度限界判別結果から露出演算のための各測光領域の重み付け係数W(x,y)を算出する(ステップS603)。このステップS603は、補正を行わない測光値に対する重み付け係数を補正を行う測光値に対する重み付け係数よりも大きくして、複数の測光値の重み付け演算を行う処理に対応する。
【0071】
そして、露出演算部204は取得した各測光領域の測光値S(x,y)を補正することで(ステップS604)、補正値S’(x,y)を得る。このステップS604は、測光されることで得られた複数の測光値を、複数の測光領域ごとの測光可能な輝度限界値に応じて補正する処理に対応する。
【0072】
次いで、露出演算部204は算出した各測光領域の測光値S’(x,y)と重み付け係数Wから、式2により露出値Xを算出する(ステップS605)。このステップS605は、重み付け演算の演算結果に基づいて露出値を決定する処理に対応する。そして、露出制御部206は算出された露出値Xに基づいて、露出制御を行い、シャッタ、レンズ駆動を行うことで撮像を実行し(ステップS606)、本処理を終了する。
【0073】
この撮像処理により、被写体輝度が低輝度限界以下ではない測光領域の測光値の重み付けが低輝度限界以下の測光領域と比較して大きくなるので、適正な露出演算が可能となる。
【0074】
なお、本実施の形態では重み付けの係数を1または10としたが、これに限るものではない。係数の比率は変えてもよいし、測光領域毎に変えてもよい。低輝度限界以下の測光領域は演算から除外する様にしてもよい。
【0075】
また、低輝度限界値か否かのみを重み付け係数の算出に用いなくてもよい。低輝度限界値の情報と合わせて、測光値の分布を用いて重み付けを決定してもよいし、被写界に対する測光領域の位置やデジタルカメラ1の姿勢を用いて重み付けを決定してもよい。
【0076】
さらに、各測光領域の測光値の補正は光学系の補正のみとしているが、これに限るものではない。温度に応じて補正してもよいし、固定ではなくレンズ情報に応じて変更するようにしてもよい。
【0077】
図6の撮像処理によれば、各々の測光領域における測光値の加重平均を算出するための重み係数を、補正されなかった測光値に対する重み係数を補正測光値に対する重み係数よりも大きくするように算出する。そして、算出された重み係数を用いた加重平均を用いて露出を制御するので、低輝度限界以下の被写体輝度となる測光領域が存在する場合でも適正な露出となるように制御可能となる。
【0078】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態として、測距点情報を用いた場合の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態におけるデジタルカメラの機械的及び電気的構成は第1の実施の形態と同じである。
【0079】
図7は、測距点情報を用いた重み付けについて説明するための図であり、(a)はオートフォーカスセンサ114の焦点検出位置と各測光領域との位置関係を示した図であり、(b)は重み付け係数例を示す図である。
【0080】
図7(a)において、測距点701、702、703、704はオートフォーカスセンサ114によって、各々独立して焦点検出が可能な測距点である。これら測距点について、撮像者が任意に測距点701、702、703、704のいずれかを選択することができ、デジタルカメラ1が自動で選択することもできる。これらの測距点は、測光領域に含まれる範囲内の被写体像が合焦していることを検出するようになっている。
【0081】
なお、焦点検出の方法に関しては本実施の形態とは直接関係無いので、具体的な方法は記載しないが、焦点検出方法、及び焦点検出情報について限定するものではない。
【0082】
図7(b)は焦点検出制御部205が、測距点703、及び705が合焦した判断した場合の測光領域の重み付け係数例である。合焦した測距点に対応する測光領域の重み付け係数W’を10とし、隣接する測光領域の重み付け係数を5とする。
【0083】
例えば、図7(b)において、測距点703に対応する測光領域(D,e)の重み付け係数W’ (D,e)は10である。また、隣接する測光領域(C,e),(D,d),(D,f),(E,e)の重み付け係数W’は5である。その他、測距点を含まない測光領域に対応する重み付け係数W’は1とする。このように、合焦していることが検出された被写体像を含む測光領域、及び当該測光領域の周辺の測光領域に対応する測光値に対する重み係数を、合焦していない場合と比較して大きくするように算出する。
【0084】
露出演算部204では、式3に示されるように、各測光領域の補正値S’と低輝度限界の判別結果からの重み付け係数W及び焦点検出結果からの重み付け係数W’を乗算し、重み付け係数を乗算したものの総和で除算することで、露出値Xを算出する。
X=Σ(S’(x,y)×W(x,y)×W’(x,y))/Σ(W(x,y)×W’ (x,y))…(式3)
(Σは、x=A,B…G、y=a,b…iでの和)
図8は、図1におけるカメラ制御部100により実行される撮像処理の手順を示すフローチャートである。
【0085】
図8において、撮像指示により、焦点検出制御部205はオートフォーカスセンサ114の各焦点検出より測距情報を取得し(ステップS801)、露出演算に必要な選択した測距点の情報を露出演算部204へ出力する。
【0086】
次いで、露出演算部204は取得した測距点情報に基づき、露出演算のための各測光領域の重み付け係数W’を式3により算出する(ステップS802)。
【0087】
測光制御部201は測光回路119を制御し、各測光領域の測光値Sを取得する(ステップS803)。次いで、低輝度限界判別部203は取得した測光値Sと低輝度限界値をメモリー202から読み出し、各測光領域の測光値と低輝度限界値とを比較することで(ステップS804)、測光値が低輝度限界以下か否かを判別し、判別結果を露出演算部204へ出力する。
【0088】
露出演算部204は各測光領域の測光値と低輝度限界判別結果から露出演算のための各測光領域の重み付け係数W(x,y)を算出する(ステップS805)。そして、露出演算部204は取得した各測光領域の測光値S(x,y)を補正することで(ステップS806)、補正値S’(x,y)を得る。
【0089】
次いで、露出演算部204は算出した各測光領域の測光値S’(x,y)と重み付け係数W、及びW’から、式2により露出値Xを算出する(ステップS807)。そして、露出制御部206は算出された露出値Xに基づいて、露出制御を行い、シャッタ、レンズ駆動を行うことで撮像を実行し(ステップS808)、本処理を終了する。
【0090】
この撮像処理により、測距点に対応した測光領域の重み付けを高くすると共に、被写体輝度が低輝度限界以下ではない測光領域の測光値の重み付けが低輝度限界以下の測光領域と比較して大きくなるので、適正な露出演算が可能となる。
【0091】
なお、本実施の形態において、焦点検出制御部205は5点の独立した測距点を選択できる構成としたが、これに限るものではない。単一でもよいし、その他の測距点数でもよい。
【0092】
また、重み付け係数はあくまでも説明のための例として設定しており、これに限るものではなく、重み付けの算出方法も本実施の形態に示す算出方法に限るものではない。
【0093】
さらに、重み付け係数を、選択した測距点情報に応じて変更したが、これに限るものではなく、各測距点のデフォーカス情報などの選択していない測距点情報を使用してもよい。
【0094】
以上、本発明の好ましい2つの実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0095】
例えば、焦点検出手段の情報ではなく、測光モードや撮像モードや姿勢情報に基づいて重み付けを算出してもよいし、複数を組み合わせてもよい。
【0096】
(他の実施の形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0097】
1 デジタルカメラ
100 カメラ制御部
114 オートフォーカスセンサ
118 撮像素子
119 測光回路
122 測光回路温度計
125 姿勢検出部
150 レンズユニット
201 測光制御部
202 メモリー
203 低輝度限界判別部
204 露出演算部
205 焦点検出制御部
206 露出制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影画面を分割した複数の測光領域ごとに測光を行う測光手段と、
前記測光手段により測光されることで得られた複数の測光値を、前記複数の測光領域ごとの測光可能な輝度限界値に応じて補正する補正手段と、
前記補正手段により補正を行わない測光値に対する重み付け係数を前記補正手段により補正を行う測光値に対する重み付け係数よりも大きくして、前記測光手段により測光されることで得られた複数の測光値の重み付け演算を行い、演算結果に基づいて露出値を決定する決定手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記補正手段により補正される測光値は、前記測光手段により複数回の測光を行い得られた複数の測光値の変化量から定められた測光値であることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記複数の測光領域のうち、前記測光手段により複数回の測光を行い得られた複数の測光値の変化量から定められた測光値が前記輝度限界値以下の測光領域の測光値に対して補正を行うことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記測光手段の温度を測定する温度測定手段をさらに備え、
前記輝度限界値は、前記温度測定手段により測定された温度に応じて定まることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
撮影画面を分割した複数の測光領域ごとに測光を行う測光手段を備えた撮像装置の制御方法であって、
前記測光手段により測光されることで得られた複数の測光値を、前記複数の測光領域ごとの測光可能な輝度限界値に応じて補正する補正ステップと、
前記補正ステップにより補正を行わない測光値に対する重み付け係数を前記補正ステップにより補正を行う測光値に対する重み付け係数よりも大きくして、前記測光手段により測光されることで得られた複数の測光値の重み付け演算を行い、演算結果に基づいて露出値を決定する決定ステップと
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
撮影画面を分割した複数の測光領域ごとに測光を行う測光手段を備えた撮像装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
前記測光手段により測光されることで得られた複数の測光値を、前記複数の測光領域ごとの測光可能な輝度限界値に応じて補正する補正ステップと、
前記補正ステップにより補正を行わない測光値に対する重み付け係数を前記補正ステップにより補正を行う測光値に対する重み付け係数よりも大きくして、前記測光手段により測光されることで得られた複数の測光値の重み付け演算を行い、演算結果に基づいて露出値を決定する決定ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113967(P2013−113967A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258770(P2011−258770)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】