説明

撮像装置及びステレオカメラ

【課題】調整をした位置からずれることなく撮像センサを固定する。
【解決手段】一方の面には撮像レンズが、他方の面には撮像センサがそれぞれ対向して固定されたハウジングを含む撮像装置であって、撮像レンズを一方の面に固定する第一の固定部材と、撮像センサを他方の面に固定する第二の固定部材と、撮像センサの他方の面に対し垂直な方向以外の方向に対する遊動を規制する規制部材と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びステレオカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像センサの画素の高密度化が進む一方で、環境認識等の用途に使用される撮像装置では、撮像センサと撮像レンズとの位置調整が厳密に要求さられる場合がある。例えば、2つのカメラを用いて被写体を複数の異なる方向から同時に撮影することにより得られる画像から、その奥行き方向の情報である被写体の距離を測定記録することができるステレオカメラにおいては、2つのカメラ画像の対応する箇所を探索する。
【0003】
ところが、探索方向と垂直方向に画像がずれていると、正しい対応点が見つけられなくなる、所謂ミスマッチが発生する。垂直方向のずれ量を事前に測定し画像補正を行った場合、ずれ量が大きいと画像補正のための回路規模や必要とされるメモリサイズが大きくなってしまう。そのため、一般的に、カメラ毎の調整ばらつきが小さい方が、小型化や低コスト化がしやすいことが知られている。
【0004】
特許文献1には、撮像レンズに対して位置調整をした撮像センサの載ったセンサ基板を接着剤で固定する技術が開示されている。また、特許文献2には、ネジ留めの際のずれの影響を少なくするために、一度ネジを締め、ずれ量を測定し、得られたずれ量分を見込んで再調整を行い、ネジを締め直すことにより、撮像レンズに対して位置調整をした撮像センサの載ったセンサ基板をネジで固定する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された接着剤を用いた固定方法では、温度変化等の経時的な位置ずれが発生しやすいという問題がある。また、特許文献2に開示されたネジで固定する方法では、ネジの固定によるずれ量は毎回一定量とは限らないので、撮像センサ基板と撮像レンズの位置を調整した後、撮像センサ基板を固定するネジを締める際に、ネジ座面が回転することにより撮像センサ基板が調整位置から動いてしまい、所望の位置で撮像センサ基板を固定するいという課題は依然として解消されていない。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、ネジ留めの際に撮像センサが調整位置からずれないようにすることによって、短いリードタイムで組み付け誤差を少なくすることができる撮像装置及びステレオカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明における撮像装置は、一方の面には撮像レンズが、他方の面には撮像センサがそれぞれ対向して固定されたハウジングを含む撮像装置であって、前記撮像レンズを前記一方の面に固定する第一の固定部材と、前記撮像センサを前記他方の面に固定する第二の固定部材と、前記撮像センサの前記他方の面に対し垂直な方向以外の方向に対する遊動を規制する規制部材と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、調整をした位置からずれることなく撮像センサを固定することができる撮像装置及びステレオカメラが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る撮像装置の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る撮像装置が組み付けられ、調整が行われる構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る光学チャートの例を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る撮像装置の分解斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る撮像装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化乃至省略する。本発明は、要するに、撮像センサとセンサ固定ネジとの間に滑り止め部材を設け、滑り止め部材のセンサ固定ネジの軸心方向(撮像センサの取り付け面に対し垂直な方向)以外の方向への自由な動き(遊動)を規制することにより、固定時に撮像センサが調整位置からずれてしまうことを防ぐことが特徴になっている。
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の実施形態に係る撮像装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置の分解斜視図であり、図2は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置の断面図である。
【0012】
図1、図2において、本発明の実施形態に係る撮像装置1は、ハウジング11と、撮像レンズ12と、レンズ固定ネジ13(図2)と、撮像センサ14と、滑り止め部材15と、センサ固定ネジ16とから構成される。撮像センサ14は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)のような固体撮像素子を具備している。撮像レンズ12は複数の光学レンズから構成される。
【0013】
撮像レンズ12はレンズ固定ネジ13(図2)によって、撮像センサ14は、センサ固定ネジ16によって、それぞれハウジング11の対向する面に固定されており、撮像レンズ12によって結像された像を、撮像センサ14が撮像する。ハウジング11は、第一の位置決めピン17と第二の位置決めピン18との2本の位置決めピンを備える。
【0014】
また、滑り止め部材15は、第一の位置決めピン17と精密に嵌め合う位置決め穴19と、第二の位置決めピン18と嵌め合う位置決め長穴20と、センサ固定ネジ16の外径に対して十分大きな穴とを備えている。
【0015】
次に、本発明の実施形態に係る撮像装置1が組み付けられ、調整が行われる構成について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る撮像装置が組み付けられ、調整が行われる構成を示す図である。本発明の実施形態に係る撮像装置1の組み付け調整は、ピント調整と、画像中心調整と、画像回転調整と、が行われる。
【0016】
撮像装置1は撮像装置治具4に組み付けられ、この組み付けられた撮像装置1に正対する位置に光学チャート2が配置される。ここで、光学チャート2の例を図4に示す。図4は、本発明の実施形態に係る光学チャートの例を示す図である。
【0017】
本発明の実施形態に係る光学チャート2は、図4に示すように、四隅には、平行線が規則正しく配列され、その線幅と空間の幅は等しく1mm当たりの空間周波数を示すロンキールーリング21が、光学チャート2の中央部には、中央を示す十字線22が、光学チャート2の中央部を横方向に通る水平ライン23が、光学チャート2の中央部を縦方向に通る垂直ライン24が、それぞれ描かれている。
【0018】
光学チャート2は、撮像装置1(ハウジング11)を支持する撮像装置治具4(又は図示しないハウジング支持部)に対して、調整が行われる度毎に毎回同じ位置に配置されるように校正が取られている。また、光学チャート2の後方には照明装置3が配置されており、光学チャート2を均一に照らす。
【0019】
撮像装置1の調整は、光学チャート2を撮像し、撮像された光学チャート2の画像によって撮像レンズ12(図2)と撮像センサ14(図2)との位置を調整する。まず、撮影した画像のロンキールーリング21のMTF値(Modulation Transfer Function:レンズ性能を評価する尺度のひとつで、被写体の持つコントラストを像面上でどれだけ忠実に再現できるかを空間周波数特性として表したもの。)が所定の範囲内に入るように、撮像レンズ12を光軸方向に位置調整する。これは、レンズ固定ネジ13(図2)を調節することにより撮像レンズ12を固定する。
【0020】
次に、光学チャート2の中心点が撮像センサ14の画像の中心になり、かつ、光学チャート2の水平ライン23及び垂直ライン24が、撮像センサ14の画像上で水平及び垂直になるように撮像センサ14の位置を、センサ固定ネジ16(図2)を調節することにより固定する。
【0021】
ここで、滑り止め部材15は、ハウジング11に具備された第一の位置決めピン17及び第二の位置決めピン18により、光軸方向(センサ固定ネジ16の軸心方向、ハウジング11の撮像センサ14が固定される面に対し垂直な方向)以外の方向への自由な動き(遊動)が規制されている。そのため、センサ固定ネジ16を締める際に、センサ固定ネジ16の座面の回転による位置ずれを起こすことなく、撮像センサ14を固定することができるのである。
【0022】
次に、本発明の他の実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の他の実施形態に係る撮像装置の構成について説明する。図5は、本発明の他の実施形態に係る撮像装置の分解斜視図であり、図6は、本発明の他の実施形態に係る撮像装置の正面図である。
【0023】
図5において、撮像装置10は、ハウジング110と、撮像レンズ120と、レンズ固定ネジ(図示せず)と、撮像センサ140と、滑り止め部材150と、センサ固定ネジ160と、から構成される。
【0024】
ここで、ハウジング110は、複数の突出部170を備えている。本発明の他の実施形態においては、本発明の実施形態において説明した、光学チャート2を撮像し、撮像された光学チャート2の画像によって図示しないレンズ固定ネジ13を調節することにより、撮像レンズ120の位置を調整した後に行う。
【0025】
すなわち、図6に示すように、滑り止め部材150の長手方向のハウジング110に対向する側面部を、この複数の突出部170に突き当てた状態に接するように配置すると共に、板バネ等の弾性部材を用いることにより、滑り止め部材150の長手方向の上面部50及び左面部60から圧力を加える。なお、この圧力は、滑り止め部材150の長手方向の上面部50及び左面部60から圧力を加えることが可能なものであれば、弾性部材に限定されることなく、如何なる部材を用いても良い。
【0026】
これにより、滑り止め部材150が突出部170に突き当てられた状態で、滑り止め部材150は、センサ固定ネジ160の軸心方向(ハウジング110の撮像センサ140が固定される面に対し垂直な方向)以外の方向への自由な動き(遊動)が規制された状態でセンサ固定ネジ160を調節することにより固定される。
【0027】
なお、図6においては、滑り止め部材150の長手方向の上面部50及び左面部60から圧力を加えるようにしているが、滑り止め部材150の長手方向の図示しない下面部及び右面部から圧力を加えるようにしても良い。すなわち、ハウジング110の撮像センサ140が固定される面に対し水平な複数の方向から滑り止め部材150に圧力が加えられるようにすれば良い。
【0028】
本発明の他の実施形態における突出部170は、本発明の実施形態において説明した第一の位置決めピン17、第二の位置決めピン18と比較すると、それほど高い精度が要求されない構造の下で、滑り止め部材150の自由な動きを規制することができる。これにより、低コストで組み付け精度の高い撮像装置10を得ることができるのである。
【0029】
このように、本発明によれば、撮像センサとセンサ固定ネジとの間に滑り止め部材を設けることにより、滑り止め部材は、センサ固定ネジの軸心方向(撮像センサの取り付け面に対し垂直な方向)以外の方向には自由に動かないよう規制されている。
【0030】
したがって、センサ固定ネジを締めた際に、滑り止め部材を通じてセンサ固定ネジの軸芯方向(撮像センサの取り付け面に対し垂直な方向)の力のみが働くことにより、調整位置からずれることなく撮像センサを固定することができる撮像装置及びステレオカメラを得ることができる。
【0031】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨及び範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1、10 撮像装置
11、110 ハウジング
12、120 撮像レンズ
13 レンズ固定ネジ
14、140 撮像センサ
15、150 滑り止め部材
16、160 センサ固定ネジ
17 第一の位置決めピン
18 第二の位置決めピン
19 位置決め穴
170 突出部
2 光学チャート
20 位置決め長穴
21 ロンキールーリング
22 十字線
23 水平ライン
24 垂直ライン
3 照明装置
4 撮像装置治具
50 上面部
60 左面部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開2003−324633号公報
【特許文献2】特開平06−004136号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面には撮像レンズが、他方の面には撮像センサがそれぞれ対向して固定されたハウジングを含む撮像装置であって、
前記撮像レンズを前記一方の面に固定する第一の固定部材と、
前記撮像センサを前記他方の面に固定する第二の固定部材と、
前記撮像センサの前記他方の面に対し垂直な方向以外の方向に対する遊動を規制する規制部材と、
を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記規制部材は、前記撮像センサと前記第一の固定部材との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記他方の面には複数の突起部が、前記規制部材には複数の穿孔部がそれぞれ設けられており、前記複数の突起部が前記複数の穿孔部にそれぞれ挿入されることにより、前記他方の面に対し垂直な方向以外の方向に対する遊動が規制されることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記他方の面には複数の突起部が設けられており、前記複数の突起部に対して前記規制部材が当接されると共に、前記他方の面に対し水平な複数の方向から前記規制部材に対して圧力が加えられることにより、前記他方の面に対し垂直な方向以外の方向に対する遊動が規制されることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記ハウジングを支持する支持部材と光源との間に光学チャートが配置され、前記第一の固定部材は、前記光源から発せられる光により照射された前記光学チャートを撮像した画像から得られるレンズ特性が所定の値となる位置に固定されることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第二の固定部材は、前記光源から発せられる光により照射された前記光学チャートを撮像した画像と、前記光学チャートに描かれている画像とが一致する位置に固定されることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の撮像装置を含むことを特徴とするステレオカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−37214(P2013−37214A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173689(P2011−173689)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】