説明

撮像装置及び撮像方法

【課題】 複数の測定光を用いて被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置に関して、使用者の利便性の観点から、測定光ごと(あるいは光干渉断層画像ごと)に制御性を良くすることが望まれる。
【解決手段】 本発明に係る撮像装置は、被検査物の交差画像(複数の測定光を被検査物に照射する方向に対して交差する方向の画像のこと。)における複数の測定光の走査範囲をそれぞれ示すように表示手段に表示させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像方法に関し、特に、複数の測定光を用いて被検査物を撮像する撮像装置及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低コヒーレンス光による干渉を利用した光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)を用いて被検査物の断層画像(以下、光干渉断層画像とも呼ぶ。)を撮る撮像装置(以下、OCT装置とも呼ぶ。)が、医療分野、特に眼科領域で用いられている。OCT装置は、光の性質を利用するため、光の波長のオーダーであるマイクロメートル程度の高分解能で断層画像を取得することができる。
【0003】
眼底などの被検眼を測定する場合、測定中に被験者の動きや瞬き、あるいはランダムに微動(固視微動)することがある。このため、OCT装置で取得した被検眼の断層画像が歪んでしまうという課題がある。
【0004】
ここで、瞳の3次元構造を高速に取得するために、複数の測定光を瞳(前眼部)に照射するOCTが、特許文献1に開示されている。測定光1つあたりの照射領域を狭くすることができるため、3次元構造を高速に撮像することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−508068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の測定光を用いて被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置に関して、使用者の利便性の観点から、測定光ごと(あるいは光干渉断層画像ごと)に制御性を良くすることが望まれる。上記先行文献には、使用者の利便性を良くすることに関して、また、測定光ごとに制御性を良くすることに関して、開示がない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像装置は、
複数の測定光を被検査物に照射する照射手段と、
前記複数の測定光を前記被検査物に照射する方向に対して交差する方向の該被検査物の交差画像を取得する交差画像取得手段と、
前記交差画像を表示手段に表示させる交差画像表示制御手段と、
前記複数の測定光の走査範囲を前記交差画像に対応付けて前記表示手段に表示させる走査範囲表示制御手段と、
を有することを特徴とする。
【0008】
また、別の本発明に係る撮像装置は、
複数の測定光に照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置であって、
撮像条件の異なる複数の撮像モードのうち少なくとも1つを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された撮像モードに応じて前記光干渉断層画像を取得する取得手段と、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る撮像方法は、
複数の測定光に照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像方法であって、
前記複数の測定光を前記被検査物に照射する方向に対して交差する方向の該被検査物の交差画像を表示手段に表示する工程と、
前記複数の測定光の走査範囲を前記交差画像に対応付けて前記表示手段に表示する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
また、別の本発明に係る撮像方法は、
複数の測定光に照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像方法であって、
撮像条件の異なる複数の撮像モードのうち少なくとも1つを選択する工程と、
前記選択された撮像モードに応じて前記光干渉断層画像を取得する工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る撮像装置は、複数の測定光の走査範囲を被検査物の交差画像に対応付けて表示手段に表示させることができる。これにより、測定光ごと(あるいは光干渉断層画像ごと)に制御性を良くすることができるので、使用者の利便性の良い撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態の撮像装置について説明するための図。
【図2】第1の実施形態の画面表示について説明するための図。
【図3】第1及び第2の実施形態の撮像モードについて説明するための図。
【図4】第1の実施形態の光源の周波数特性とセンサの出力信号について説明するための図。
【図5】第1の実施形態の撮像方法について説明するためのフロー図。
【図6】第1の実施形態の測定光の数に応じた光干渉断層画像の表示について説明するための図。
【図7】第1及び第2の実施形態の画面表示について説明するための図。
【図8】第2の実施形態の撮像方法について説明するためのフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る撮像装置は、被検査物の交差画像(複数の測定光を被検査物に照射する方向に対して交差する方向の画像のこと。)における複数の測定光の走査範囲をそれぞれ示すように表示手段に表示させることができる。これにより、測定光ごと(あるいは光干渉断層画像ごと)に制御性を良くすることができるので、使用者の利便性の良い撮像装置を提供することができる。
【0014】
ここで、交差画像とは、眼底の表面の2次元画像(眼底画像とも呼ぶ。)、少なくとも1部の光干渉断層画像を眼底の深さ方向に積算した積算画像、眼底の深さ方向に対して略垂直方向の光干渉断層画像(Cスキャン画像とも呼ぶ。)のうち少なくとも1つのことである。なお、本発明に係る撮像装置は、上記交差画像を取得する交差画像取得手段や、上記交差画像を表示手段に表示させる交差画像表示制御手段を有する。
【0015】
また、本発明に係る装置は、複数の測定光の走査範囲を上記交差画像に対応付けて表示手段に表示させる走査範囲表示制御手段を有する。これは、複数の測定光の走査範囲をそれぞれ異なる色あるいは形状で表示手段に表示させることが好ましい。これにより、複数の測定光それぞれとの対応が分かるように走査範囲をそれぞれ示すことができる。なお、上記走査範囲は、走査位置、走査領域、照射位置、撮像領域などと換言することができる。
【0016】
また、本発明に係る撮像装置は、光干渉断層画像それぞれを表示手段に表示させる断層画像表示制御手段を有することが好ましい。また、本発明に係る撮像装置は、光干渉断層画像それぞれの位置を上記交差画像に対応付けて表示手段に表示させる位置表示制御手段を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る撮像装置は、撮像条件の異なる複数の撮像モードのうち少なくとも1つを選択する選択手段を有することが好ましい。これにより、上記選択手段により選択された撮像モードに応じて光干渉断層画像を取得することができる。また、上記複数の撮像モードの一覧と上記選択手段の機能を有する画像(アイコンや図2などの表示部に表示される領域202など。表示部に表示されているカーソルによりクリックやドラッグされると、予め設定されている機能を動作させることが可能な形態であれば何でも良い。)とを表示手段に表示させる撮像条件表示制御手段を有することが、使用者の利便性の観点から好ましい。なお、表示手段は、装置と一体型の形態でも良いし、装置と着脱可能な形態でも良いし、装置と有線や無線で通信可能な形態でも良い。
【0018】
ここで、上記複数の撮像モードのうち少なくとも1つの撮像モードは、被検査物に照射する測定光の数を、他の撮像モードに対して異なる数になるように設定されていることが好ましい。また、上記複数の撮像モードのうち少なくとも1つの撮像モードは、走査範囲の大きさ、撮像回数、撮像時間のうち少なくとも1つの値を、他の撮像モードに対して異なる値になるように設定されていることが好ましい。
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
本実施形態の撮像装置について図1(a)を用いて説明する。図1(a)は、本実施形態のOCT装置について説明するためのブロック図である。ここでは、被検眼などの被検査物に照射する複数の測定光として、3つの測定光を用いるOCT装置について説明する。なお、図を簡略化するため、3つの測定光はまとめて1本の光線として描いている。また、本実施形態は、複数の測定光を伝送する際に、光ファイバを用いているが、本発明はこれに限らない。また、本実施形態は、SD−OCTであるが、本発明は他の種類のOCT(TD−OCTやSS−OCT)やSLOなども適用することができる。
【0021】
まず、光源101から出射した3本の光は、ビームスプリッタ102によって参照光112と測定光111とにそれぞれ分割される。3本の測定光111は、ファイバ端の位置調整器115で3本の光線を伝送する光ファイバ端の位置を調整された後、レンズ116を介してXYミラー103に入射される。XYミラー103は、本装置全体の制御を司る不図示のコントローラからの命令に応じて測定光111を観察対象である眼の眼底をラスタースキャンするように往復回動する。XYミラー103で反射された3本の測定光111は、観察対象である眼105にそれぞれ照射される。眼105に照射された測定光111は、眼底での反射や散乱により戻り光113となって戻された後、レンズ116を介してビームスプリッタ102に照射され、ビームスプリッタ102によって、参照光112と合波され3本の干渉光114(合成光とも呼ぶ。)となる。3本の干渉光114は、レンズ118を介して回折格子107に入射され、回折格子107によりそれぞれ分光され、レンズ108によりラインセンサ109上にそれぞれ結像される。ここでは、3本の光電変換素子列を有する3ラインセンサを用いるが、エリアセンサを用いても良い。ラインセンサ109で光電変換された3本の干渉光に対する3つの画像情報は、画像情報処理部110において、それぞれA/D変換された後、フーリエ変換される。更には、3つの画像情報を合成することにより、眼105の眼底の断層画像(光干渉断層画像とも呼ぶ。)を取得する。
【0022】
次に、光源101の周辺について説明する。光源101は代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)である。波長は840nm、バンド幅50nmである。ここで、バンド幅は、得られる断層画像の光軸方向の分解能に影響するため、重要なパラメータである。また、光源の種類は、ここではSLDを選択したが、低コヒーレント光が出射できればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。また、光源の波長は眼を測定することを鑑みると、近赤外光が適している。更には、得られる断層画像の横方向の分解能に影響するため、なるべく短波長であることが望ましい。そこで、ここでは、840nmの波長を有する光源を使用する。観察対象の測定部位によっては、他の波長を選んでももちろん構わない。
【0023】
また、ビームスプリッタ102によって分割された参照光112は、ミラー106により反射され、ビームスプリッタ102に戻る。この光路長を測定光111と同じ長さにすることにより、参照光と測定光を干渉させることができる。ミラー106は、3本の参照光112にそれぞれ対応して3個用意され、それぞれが独立してミラー位置を調整できる構成になっているが、ここでは図を簡略化するために1つのミラーとして図示している。
【0024】
また、ビームスプリッタ102によって分割された測定光111は、XYミラー103に入射される。ここでは、図を簡略化するため、XYミラー103は一つのミラーとして記したが、実際にはXスキャン用ミラーとYスキャン用ミラーとの2枚のミラーが近接して配置されている。測定光111は、レンズ104を介して眼105の網膜上を光軸に垂直な方向にラスタースキャンされる。レンズ104は網膜上に測定光111を集光するものである。レンズ104には、焦点距離を調整できるズームレンズを用いても良い。これらの光学系により、測定光111は眼105に入射すると、眼105の網膜からの反射や散乱により戻り光113となる。
【0025】
また、干渉光114は、回折格子107により分光されるが、この分光は光源の中心波長、バンド幅と同じ波長条件で分光を行う。即ち、図4(a)に示したような周波数特性の光を、回折格子107、レンズ108を介してラインセンサ109の光電変換素子列109−1〜3(後述)に照射することになる。すると、図4(b)に示すように、図4(a)の横軸である光波長がそのままラインセンサ109の光電変換素子列109−1〜3の0〜1023の画素位置(図4(b)の横軸)となる。なお、117は3本の干渉光114を回折格子107に入射する位置を固定するためのファイバ端固定部である。
【0026】
図1(b)は、ラインセンサ109に結像される3本の干渉光114の様子を説明する図である。ファイバ端固定部117には、3本の干渉光114をそれぞれ伝送するための3本の光ファイバが固定されている。ラインセンサ109は3本の光電変換素子列109−1〜3を有している。ファイバ端固定部117に固定された光ファイバ117−1〜3から照射される干渉光114は、レンズ118、回折格子107、レンズ108を介し、それぞれ光電変換素子列109−1〜3上に結像される。
【0027】
また、119は、レンズとラインセンサとA/D変換器等で構成されたラインカメラである。図示しない赤外光源から照射される光線で照射された網膜の反射光は、ミラー120で反射されラインカメラ119に導かれ、ライン毎に読み取られる。ミラー120を、ラインカメラ119のライン方向に対して平行な軸を中心として回転させることにより、網膜の2次元画像を読み取ることが可能となる。不図示のコントローラでは、ライン毎の画像をつなぎ合わせ、一枚の2次元画像を生成する。2次元画像が生成されるたびに、ミラー120を繰り返し走査し続けることにより、連続した網膜の2次元画像を取得することが可能となる。
【0028】
上記各ユニット等の動作はコントローラ(不図示)で制御されている。また、上記コントローラは、PCに接続されており、測定者はPCに接続されたモニタ、マウス、キーボード等の入出力機器を用いてOCT装置を操作する。
【0029】
次に、本実施形態のOCT装置の撮像モードの選択方法について、図2(a)を用いて説明する。図2(a)は、OCT装置に付随するモニタ(表示手段とも呼ぶ。)に表示された撮像モードの選択画面である。201は、ラインカメラ119で撮像された眼底の2次元画像である。図中215は黄斑、214は視神経乳頭である。203〜206は、眼底の断層像を撮像する前に、ピント調整、参照光112を反射するミラー106の位置調整、いわゆるコヒーレントゲート調整等を行うために、それぞれのビームで眼底を走査したBスキャン画像をリアルタイムに表示したものである。ここでは、203〜206の画像をライブBスキャン画像と呼ぶことにする。眼底の2次元画像201上には、3本のレーザビームがそれぞれ走査する走査領域、ライブBスキャン画像を得るために各レーザビームが走査しているBスキャンラインを示した四角や線が3本のレーザビーム毎に表示されている(詳細は後述する)。
【0030】
202は、撮像モードのパラメータを設定・表示する領域である。ここでは、8種類の撮像モードを表示している。表示する撮像モードは、予め測定者が設定したものでも良いし、過去の撮像履歴から、撮像頻度の高いモードを順番に表示しても良い。また、撮像モードのパラメータはマウスなどの入力手段によりモニタ画面上で選択し、随時変更することができる。撮像モードのパラメータとして、ここではAスキャン本数、Bスキャン枚数、x範囲、y範囲、ビーム本数、撮像回数の設定が可能となっている。x範囲とは眼底のx方向、即ち被測定者の頭に対して水平方向の撮像領域幅、y範囲とは眼底のy方向、即ち被測定者の頭に対して垂直方向の撮像領域幅をそれぞれ表わしている。Aスキャン本数は眼底のx方向の解像度、Bスキャン枚数はy方向の解像度を表している。例えば、x範囲=10mm、y範囲=5mm、Aスキャン本数=500、Bスキャン枚数=100と設定した場合、x方向に20μmピッチで500個のAスキャンデータを組み合わせて1枚のBスキャン画像を生成し、前記Bスキャン画像をy方向に50μmピッチで100枚撮像することになる。
【0031】
ビーム本数は、眼底を撮像するレーザビームの本数で、本装置では1本と3本が選択できる。撮像回数は、眼底の同じ位置のBスキャンラインを何回撮像するかの繰り返しスキャン回数を表わしている。SD−OCT装置では、微小な画像信号(干渉信号)を用いて眼底の断層像を作成することになるため、撮像回数を増やし、微小な画像信号を平均化等の処理を施すことによりノイズの影響を削減する方法を採用することが多い。但し、撮像回数を増加させることにより、撮像時間が長くなってしまうというデメリットもある。この他に、領域202には設定されたパラメータで眼底画像の断層像を撮像するのに要する時間を表示するようになっている。
【0032】
以上のような構成のSD−OCT装置において本実施形態の動作を図5のフローチャートを用いて説明する。被測定者が測定可能になった状態で、最初に、測定者の操作に基づいて、撮像モードを設定する(ステップ801、以下S801)。ここでは、例としてAスキャン本数300、Bスキャン枚数300、x範囲10mm、y範囲10mm、レーザビーム本数3、撮像回数1である撮像モード2を選択する。この撮像モードに要する撮像時間は、0.75秒である。すると、操作画面には、図2(a)に示されるような画像が表示される。ここでは、測定光111の3本のレーザビームが、それぞれ眼底をどのように分割して走査するかを説明に不要な情報を削除した図2(b)と図6(a)を用いて説明する。図2(b)に示すように、3本のレーザビームの走査領域は、それぞれ上から207、208、209で表示される。眼底の上部の走査領域207と中部の走査領域208、更には眼底の下部の走査領域209と中部の走査領域208はそれぞれがy方向に対して10%づつ重なるようになっている。
【0033】
また、図6(a)は、S801で選択されたモードにおけるライブBスキャン画像を示した図である。図中、210はライブBスキャン画像203の撮像位置を示すBスキャンラインを示している。同様に、211はライブBスキャン画像204、212はライブBスキャン画像205、212はライブBスキャン画像206の撮像位置を示すBスキャンラインをそれぞれ示している。
【0034】
図2(b)と図6(a)に示すように上部の領域207の枠と、上部の領域207を走査するレーザビームを用いて撮像したライブBスキャン画像203の枠、及びそのBスキャンライン210はそれぞれ同じ点線で示されている。また、中部の領域208の枠と、中部の領域208を走査するレーザビームを用いて撮像したライブBスキャン画像204の枠、及びそのBスキャンライン211は実線で示されている。同様に、下部の領域209の枠と、下部の領域209を走査するレーザビームを用いて撮像したライブBスキャン画像205の枠、及びそのBスキャンライン212は一点鎖線で示されている。更に、眼底のy方向のライブBスキャン画像206の枠と、そのBスキャンライン213は細かい点線で表わされている。これらの方法により、どのレーザビームがどの領域を走査し、現在の表示されているライブBスキャン画像がどのBスキャンラインを撮像したものかが簡単に判別できるようになっている。ここでは、実線や点線を用いて区別をしたが、赤枠、赤線のようにレーザビーム毎に色等で区別しても構わない。
【0035】
撮像モードを選択した後、最初に表示されるライブBスキャン画像203〜206は、x方向に関しては各レーザビームの走査領域の中央部、y方向に関しては、全体の撮像領域の中央部の断層像となる。ここで、図7(a)に示すように、不図示のマウスでBスキャンライン210をクリックし、図中の矢印で示すように上下に動かすと、移動後のBスキャンライン210の位置に応じたライブBスキャン画像203が表示される。同様に、Bスキャンライン213をクリックし、図中の矢印で示すように左右下に動かすと、移動後のBスキャンライン213の位置に応じたライブBスキャン画像206が表示される。
【0036】
ここで、使用者は、図2(b)に示された眼底上の撮像領域を確認し、被測定者である患者の撮像領域が現在選択されている撮像モードのまま断層像を撮像しても良いか否かを判断する(S803)。例えば、3本のレーザビームで眼底画像を撮像し、3つのBスキャン画像を合成すると、分割された領域の境目に不連続性が発生してしまう。そのため、分割された領域の境目が黄斑周辺や患部等の注目領域と重なってしまう場合には、1本のレーザビームでの撮像を選択したほうが良い。更には、ライブBスキャンラインを撮像領域の周辺端部に移動させ、眼底端部の撮像は不要なことが確認できた場合には、1本のレーザビームで注目領域周辺のみを撮像するモードに切り替えても良い。ここでは、患者の眼底端部の撮像が必要ないと判断されたため、撮像領域の小さい撮像モード4を選択する場合について説明する(S804)。
【0037】
図3(a)は、撮像モード4、即ち、Aスキャン本数300、Bスキャン枚数300、x範囲6mm、y範囲6mm、レーザビーム本数1、撮像回数1の設定時における、走査領域208を示している。
【0038】
撮像モード4のようにレーザビーム数を1と設定した場合には、3本あるレーザビームの内、中央部の領域208を走査する2番目のレーザビームが選択される。これは、中央部の領域208を走査する3つのうちの2番目のレーザビームはレンズ108、118の中心部を透過することになり、レンズにおける光学的な歪等の影響を一番受けないからである。また、図6(b)は、S804で選択された撮像モード4におけるライブBスキャン画像を示した図である。図中、211はライブBスキャン画像204の撮像位置を示すBスキャンラインを示している。
【0039】
また、マウス(不図示)で走査領域208をクリックし、図中の矢印で示すように上下に動かすと、走査領域208の位置を眼底上で移動させることができる。なお、実際の移動は、XYスキャナ103より被測定側の光学系の位置をコントローラの制御の下に調整することにより走査領域が変更されている。ここでは、黄斑215を中心とした領域が撮像するように、走査領域208の位置を設定する。更に、移動後のBスキャンライン210の位置に応じたライブBスキャン画像203が表示される。ここで、図7(b)に示すように、不図示のマウスでBスキャンライン211をクリックし、図中の矢印で示すように上下に動かすと、移動後のBスキャンライン211の位置に応じたライブBスキャン画像204が表示される。同様に、Bスキャンライン213をクリックし、図中の矢印で示すように左右下に動かすと、移動後のBスキャンライン213の位置に応じたライブBスキャン画像206が表示される。
【0040】
上記のように、撮像モードを選択し、その度、撮像領域、ライブBスキャン画像を確認し、被測定者である患者の症状や測定の目的に応じた撮像モードか否かを判断し、目的に適合した撮像モードであると確認できたならば、実際に被測定物である眼底の断層像を測定する(S805)。
【0041】
以上説明のように本実施形態によれば、被測定物の2次元画像に、撮像に使用するビームん本数に対応した撮像領域を識別可能に表示することができる。それにより、撮像の目的に合った撮像モードであるかを容易に確認することができる。また、撮像の目的に合った撮像モードの変更が容易にできる。
【0042】
被測定者の眼底画像を撮像する場合には、被測定者の眼軸長、水晶体の屈折率等の個人差、更にはレンズ104における焦点距離調整等により、図2(b)に示した操作画面上のレーザビームの走査領域207、208、209と、実際に眼底上に走査させるレーザビームの走査領域が異なる場合がある。このような差異を解消するために、レーザビームの走査領域を校正するステップを上記実施形態の中に取り入れてもよい。具体的には、上記実施形態のS801とS802の動作の間で、S801で設定されたx範囲、y範囲に応じたレーザビームを眼底上に走査し、ラインカメラ119において眼底上に走査されたレーザビームの走査範囲を測定する。実際に測定したレーザビームの走査範囲と操作画面上のレーザビームの走査領域207、208、209が異なる場合には、操作画面上に表示するレーザビームの走査領域を、測定したレーザビームの走査領域に合わせればよい。また、逆に、操作画面上に表示されたレーザビームの走査領域207、208、209に、実際に眼底上に走査されるレーザビームの走査範囲が合うように、XYミラー103の回動量を制御しても良い。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、撮像モードを自動的に選択する方法について、図8のフローチャートを用いて説明する。最初に、測定者は眼底の2次元画像201上の注目点を図7(c)に示すようにマウスカーソル216で指定する(S1301)。次に、撮像モードのパラメータを、設定・表示部で撮像領域サイズを指定することにより設定する(S1302)。このとき、x範囲、y範囲とも1mm当たり100、即ちx方向、y方向における解像度は100(1/mm)ととなるように予め設定しておくと、x範囲、y範囲を指定するとAスキャン本数、Bスキャン枚数は連動して設定されることになる。ここでは、解像度をx方向、y方向とも100と設定した場合について説明するが、この値は、任意に設定しても構わない。更には、撮像回数は1回が設定されているが、この値も任意に変更することも可能である。
【0044】
次に、PCでは設定されたパラメータから、レーザビームの本数が1本の場合、3本の場合の撮像時間を計算する(S1303)。被測定者である患者の目を一箇所に停止しておくことは困難であるため、ここでは撮像時間が3秒を超える撮像モードは選択しないように制限を設けることとする。また、レーザビームの本数を複数本にすると、分割した撮像領域の境目の不連続性が発生する場合があるため、短時間での撮像と不連続部の無い画像の撮像のいずれを優先するかに応じて、最適な撮像モードを選択できる。このため本実施形態では不連続部の無い画像の撮像を優先し、レーザビーム1本での撮像時間が制限時間である3秒以内となる場合は、1本のレーザビームを選択するものとする。次に、図3(b)に示すように、モード1に設定された条件を示すとともに、撮像領域及びライブBスキャン画像を表示する(S1304)。ここでは、設定された条件から、1本のレーザビームで撮像するモードが選択されたため、中央部の領域を走査する3つのうちの2番目のレーザビームで走査する撮像領域208、及び中央部の領域を走査する3つのうちの2番目のレーザビームにおけるライブBスキャン画像204、y方向のライブBスキャン画像206が表示される。次に、測定者はS1304で表示された撮像モードでの撮像が目的に合っているか否かをライブBスキャンライン211、213等を移動することにより判断する(S1305)。選択された撮像モードが目的に合っていない場合には、第1の実施形態と同様に撮像モードの再設定を行い(S1306)、撮像の目的に合ったモードを見つけるまでS1304〜1306を繰り返す。最後に、撮像の目的と合った撮像モードが設定できたら、眼底の断層像を撮像する(S1307)。
【0045】
本実施形態では、撮像領域の設定を所望の撮像領域の中心点をマウスカーソルで指定し、更にx範囲、y範囲を数値で設定する方法を説明したが、図7(d)に示すように、マウスカーソルを始点218からクリックしたまま斜め方向移動し、撮像領域217を指定する方法等でも良い。
【0046】
以上説明にように本実施形態によれば、更に、領域を設定することにより撮像モードを選択できるので、操作者が種々の撮像モードを理解していなくても適切な撮像モードを選択することができ、操作が容易となる。
【0047】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、撮像モードを選択する条件を、撮像領域、撮像時間、ビーム本数の順で優先したが、撮像領域、撮像時間、ビーム本数、撮像回数、解像度等の撮像モードを決定する全パラメータの優先順位は、測定者が任意に決められる。
【0048】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0049】
101 光源
102 ビームスプリッタ
103 XYミラー
105 眼
106 ミラー
107 回折格子
109 ラインセンサ
110 画像情報処理部
111 測定光
112 参照光
113 戻り光
114 干渉光
115 ファイバ端の位置調整器
117 ファイバ端固定部
119 ラインカメラ
120 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定光を被検査物に照射する照射手段と、
前記複数の測定光を前記被検査物に照射する方向に対して交差する方向の該被検査物の交差画像を取得する交差画像取得手段と、
前記交差画像を表示手段に表示させる交差画像表示制御手段と、
前記複数の測定光の走査範囲を前記交差画像に対応付けて前記表示手段に表示させる走査範囲表示制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記複数の測定光に照射した前記被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を取得する取得手段と、
前記光干渉断層画像それぞれを前記表示手段に表示させる断層画像表示制御手段と、
前記光干渉断層画像それぞれの位置を前記交差画像に対応付けて前記表示手段に表示させる位置表示制御手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記走査範囲表示制御手段が、前記走査範囲をそれぞれ異なる色あるいは形状で前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記被検査物が被検眼の眼底であり、
前記交差画像が、前記眼底の表面の2次元画像、少なくとも1部の前記光干渉断層画像を前記眼底の深さ方向に積算した積算画像、前記眼底の深さ方向に対して略垂直方向の前記光干渉断層画像のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
撮像条件の異なる複数の撮像モードのうち少なくとも1つを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された撮像モードに応じて前記光干渉断層画像を取得する取得手段と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記複数の撮像モードの一覧と前記選択手段の機能を有する画像とを前記表示手段に表示させる撮像条件表示制御手段を有することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記複数の撮像モードのうち少なくとも1つの撮像モードは、前記被検査物に照射する測定光の数を、他の撮像モードに対して異なる数になるように設定されていることを特徴とする請求項5あるいは6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記複数の撮像モードのうち少なくとも1つの撮像モードは、前記走査範囲の大きさ、撮像回数、撮像時間のうち少なくとも1つの値を、他の撮像モードに対して異なる値になるように設定されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の撮像装置を用いて前記被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像方法であって、
前記表示手段に表示させる信号を入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された信号に基づく情報を前記表示手段に表示する表示工程と、
を含むことを特徴とする撮像方法。
【請求項10】
複数の測定光に照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像方法であって、
前記複数の測定光を前記被検査物に照射する方向に対して交差する方向の該被検査物の交差画像を表示手段に表示する工程と、
前記複数の測定光の走査範囲を前記交差画像に対応付けて前記表示手段に表示する工程と、
を含むことを特徴とする撮像方法。
【請求項11】
複数の測定光に照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像方法であって、
撮像条件の異なる複数の撮像モードのうち少なくとも1つを選択する工程と、
前記選択された撮像モードに応じて前記光干渉断層画像を取得する工程と、
を含むことを特徴とする撮像方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載の撮像方法をコンピュータで実行するプログラム。
【請求項13】
複数の測定光に照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置であって、
撮像条件の異なる複数の撮像モードのうち少なくとも1つを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された撮像モードに応じて前記光干渉断層画像を取得する取得手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
前記複数の撮像モードの一覧と前記選択手段の機能を有する画像とを表示手段に表示させる撮像条件表示制御手段を有することを特徴とする請求項13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記複数の撮像モードのうち少なくとも1つの撮像モードは、前記被検査物に照射する測定光の数を、他の撮像モードに対して異なる数になるように設定されていることを特徴とする請求項13あるいは14に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−212203(P2011−212203A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82804(P2010−82804)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】