説明

撮像装置及び撮像方法

【課題】 複数の測定光を用いて被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置に関して、使用者の利便性の観点から、測定光ごと(あるいは光干渉断層画像ごと)に制御性を良くすることが望まれる。
【解決手段】 本発明に係る撮像装置は、複数の参照光と複数の戻り光とのそれぞれの光路長差の変更量を指示する指示手段(指示部12)を有する。また、本発明に係る撮像装置は、指示手段により指示された上記変更量に基づいて上記光路長差を変更する変更手段(変更部11)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像方法に関し、特に、複数の測定光を用いて被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低コヒーレンス光による干渉を利用した光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)を用いて被検査物の断層画像(以下、光干渉断層画像とも呼ぶ。)を撮る撮像装置(以下、OCT装置とも呼ぶ。)が、医療分野、特に眼科領域で用いられている。OCT装置は、光の性質を利用するため、光の波長のオーダーであるマイクロメートル程度の高分解能で断層画像を取得することができる。
【0003】
ここで、測定光の光路長と参照光の光路長との差がゼロとなる位置は、コヒーレンスゲートと呼ばれている。高SNの断層画像を取得し、モニタの適切な位置に断層画像を表示するために、コヒーレンスゲートを被検眼の適切な位置に指定することが重要である。使用者がコヒーレンスゲートの位置を簡便に指定するために、コヒーレンスゲートの位置をモニタに表示されたカーソルの移動で指定できるOCT装置が、特許文献1に開示されている。
【0004】
ところで、眼底などの被検眼を測定する場合、測定中に被験者の動きや瞬き、あるいはランダムに微動(固視微動)することがある。このため、OCT装置で取得した被検眼の断層画像が歪んでしまうという課題がある。
【0005】
ここで、瞳の3次元構造を高速に取得するために、複数の測定光を瞳(前眼部)に照射するOCTが、特許文献2に開示されている。測定光1つあたりの照射領域を狭くすることができるため、3次元構造を高速に撮像することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−160190号公報
【特許文献2】特表2008−508068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の測定光を用いて被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置に関して、使用者の利便性の観点から、測定光ごと(あるいは光干渉断層画像ごと)に制御性を良くすることが望まれる。上記先行文献には、使用者の利便性を良くすることに関して、また、測定光ごとに制御性を良くすることに関して、開示がない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る撮像装置は、
複数の測定光を照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置であって、
前記複数の参照光と前記複数の戻り光とのそれぞれの光路長差の変更量を指示する指示手段と、
前記指示手段により指示された前記変更量に基づいて前記光路長差を変更する変更手段と、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、別の本発明に係る撮像装置は、
複数の測定光を照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置であって、
前記複数の参照光と前記複数の戻り光との光路長差の変更量をそれぞれ指示する第1の指示手段と、
前記変更量を関連付けて指示する第2の指示手段と、
前記第1の指示手段の機能を有する画像と前記第2の指示手段の機能を有する画像とを表示手段に表示させる指示表示制御手段と、
を有することを特徴とする。
【0010】
また、別の本発明に係る撮像装置は、
複数の測定光に照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置であって、
前記複数の合成光に基づく前記被検査物の光干渉断層画像それぞれを表示手段に表示させる断層画像表示制御手段と、
前記干渉断層画像に対応する画像情報を示す画像それぞれを前記表示手段に表示させる画像情報表示制御手段と、
を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る撮像方法は、
撮像装置を用いて前記被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像方法であって、
前記表示手段に表示させる信号を入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された信号に基づく情報を前記表示手段に表示する表示工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
また、別の本発明に係る撮像方法は、
複数の測定光に照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像方法であって、
前記複数の参照光と前記複数の戻り光とのそれぞれの光路長差の変更量を指示する指示工程と、
前記指示工程で指示された前記変更量に基づいて前記光路長差を変更する変更工程と、
含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る撮像装置は、複数の測定光に対応するコヒーレンスゲートの位置を指定することや、複数の測定光を用いて被検査物の光干渉断層画像それぞれを表示手段に表示することができる。これにより、測定光ごと(あるいは光干渉断層画像ごと)に制御性を良くすることができるので、使用者の利便性の良い撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る撮像装置を説明するためのブロック図
【図2】第1の実施形態に係る撮像装置の全体構成図
【図3】第1の実施形態に係る撮像装置による被検眼の撮像領域を説明する図
【図4】第2の実施形態に係る撮像方法を説明するためのフローチャート
【図5】第1の実施形態に係る撮像装置の表示制御を説明する図
【図6】第1の実施形態に係る撮像装置の表示制御を説明する図
【図7】第3の実施形態に係るコヒーレンスゲートの位置の設定を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る撮像装置について、図1(a)と図1(b)を用いて説明する。図1(a)と図1(b)は、本実施形態に係る撮像装置を説明するためのブロック図である。
【0016】
まず、本実施形態に係る撮像装置は、複数の測定光を用いて被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置である。これは、複数の測定光を照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置と換言できる。また、これは、複数の低コヒーレンス光による干渉を利用した光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)を用いて被検査物の断層画像(以下、光干渉断層画像とも呼ぶ。)を撮る撮像装置(以下、OCT装置とも呼ぶ。)と換言できる。
【0017】
まず、本実施形態に係る撮像装置は、複数の参照光と複数の戻り光とのそれぞれの光路長差の変更量を指示する指示部12を有する。また、指示部12は、コヒーレンスゲートの位置を指示するものであると換言できる。ここで、コヒーレンスゲートの位置とは、上記光路長差がゼロになる位置のことである。
【0018】
そして、本実施形態に係る撮像装置は、指示部12により指示された上記変更量に基づいて上記光路長差を変更する変更部11を有する。変更部11が、複数の参照光の光路長をそれぞれ変更することが好ましい。また、変更部11が、複数の参照光の光路それぞれに設けられた参照ミラーを光軸方向にそれぞれ移動する移動部17(例えば可動ステージ117)を有することが好ましい。なお、移動部17は、変更部11が有する制御部16で制御されても良い。このとき、制御部11は、コンピュータ125に設けられても良い。
【0019】
これにより、複数の測定光に対応する上記光路長差の変更量(あるいはコヒーレンスゲートの位置)を容易に指示することができる。これにより、測定光ごと(あるいは光干渉断層画像ごと)に制御性を良くすることができるので、使用者の利便性を良くすることができる。
【0020】
ここで、指示部12は、上記変更量をそれぞれ指示する第1の指示部13と、上記変更量を関連付けて指示する第2の指示部14を有することが好ましい。これにより、コヒーレンスゲートの位置を別々に指定できるし、同時に指定することもできるので、使用者の利便性をさらに良くすることができる。
【0021】
(被検査物が被検眼である場合)
次に、本実施形態に係る撮像装置が、被検眼の眼底の断層画像を撮る場合を考える。このとき、複数の測定光を被検眼の前眼部で交差するように(交差状態で前眼部に)照射する照射部を有することが好ましい。これにより、被検眼の眼底における広範囲(広画角)の領域に複数の測定光を照射することができる。このとき、指示部12が、被検眼の特性(形状や収差など)に基づいて上記変更量を指示する手段を有することが好ましい。これは、被検眼の特性によっては、複数の測定光の光路長がそれぞれ異なる場合があるからである。これにより、複数の測定光に対応するコヒーレンスゲートの位置を別々に変更できるので、使用者の利便性を良くすることができる。なお、照射部は、複数の測定光を走査する走査部(例えばXYスキャナ119)や眼底の深さ方向に集光位置を変更する集光位置変更部(例えばレンズ120−2)を有することが好ましい。
【0022】
(表示部に表示させる表示制御部)
また、本実施形態に係る撮像装置は、使用者の利便性の観点から、指示部12の機能を有する画像22(アイコンや図5のスライダ604−1〜4など。表示部に表示されているカーソルによりクリックやドラッグされると、予め設定されている機能を動作させることが可能な形態であれば何でも良い。)を表示部(例えばモニタ130)に表示する指示表示制御部15を有することが好ましい。この場合、使用者がマウスなどのポインティングデバイスを操作することにより、指示部12の機能を有する画像22から上記変更量を変更部11に指示することができる。また、指示表示制御部15は、第1の指示部13の機能を有する画像23と第2の指示部14の機能を有する画像24とを表示部に表示させることが好ましい。ここで、表示部は、モニタに限らず、入力された信号に基づく情報を表示することのできるものであれば何でも良い。また、表示部は、装置と一体型である必要はなく、装置に着脱可能な形態でも良いし、有線や無線により装置と通信可能な形態でも良い。
【0023】
また、本実施形態に係る撮像装置は、複数の合成光に基づく被検査物の断層画像それぞれを表示部に表示させる断層画像表示制御部(不図示)を有することが好ましい。これにより、指示表示制御部15が、上記断層画像それぞれに対応付けて(例えば、図5のように上記断層画像それぞれと並べて)上記指示部の機能を有する画像それぞれを表示部に表示させることができる。
【0024】
また、本実施形態に係る撮像装置は、複数の測定光を被検査物に照射する方向に対して交差する方向の該被検査物の交差画像を表示部に表示させる交差画像表示制御部(不図示)を有することが好ましい。なお、上記交差画像とは、眼底の表面の2次元画像(眼底画像とも呼ぶ。)、少なくとも一部の断層画像を眼底の深さ方向に積算した積算画像、眼底の深さ方向に対して略垂直方向の断層画像(Cスキャン画像とも呼ぶ。)のうち少なくとも1つのことである。このとき、上記交差画像における断層画像それぞれの位置(例えば、図5の走査位置606−1〜3)を上記交差画像に対応付けて表示部に表示させる位置表示制御部(不図示)を有することも好ましい。これにより、使用者が、断層画像それぞれの位置関係を容易に識別できる。また、複数の測定光の走査範囲(図3の第1から第3の走査範囲505〜507や、図5の走査位置606−1〜3など。)を上記交差画像に対応付けて表示部に表示させる走査範囲表示制御部(不図示)を有することが好ましい。なお、上記走査範囲は、走査位置、走査領域、照射位置、撮像領域などと換言することができる。
【0025】
さらに、上記光干渉断層画像に対応する画像情報(例えばSN比)を示す画像(例えば、図5のバー605−1〜3)それぞれを表示部に表示させる画像情報表示制御部(不図示)を有することが好ましい。
【0026】
(撮像装置の種類)
次に、本実施形態に適用し得るOCTの種類について説明する。OCTには、主に、次の2つの種類がある。一つは、参照光の光路長を制御することで断層の取得位置を変更するタイムドメイン型のOCT(TD−OCT)である。もう一つは、眼の深さ方向(光学系の光軸方向)のデータを一括で取得できるフーリエドメイン型のOCT(FD−OCT)である。
【0027】
さらに、フーリエドメイン型のOCTには、2つのタイプがある。一つは、干渉した光を回折格子により分光し、該分光した光をラインセンサで検出するスペクトラルドメイン型のOCT(SD−OCT)である。もう一つは、波長掃引可能な光源を用いるスエプトソース型のOCT(SS−OCT)である。現在、眼の深さ方向のデータを取得する時間がタイムドメイン型のOCTよりも短いことから、スペクトラルドメイン型のOCTが主に用いられている。 また、本実施形態に係る撮像装置は、光源からの光を測定光と参照光とに分割する分割部と、被検眼からの戻り光と参照光とを合成する合成部とを同一として構成(マイケルソン干渉計)されても良い。また、本実施形態に係る撮像装置は、上記分割部と合成部とを別々として構成(マッハツェンダー干渉計)としても良い。
【0028】
(撮像装置)
次に、本実施形態に係る撮像装置(以下OCT装置とも呼ぶ。)の基本構成について、図2を用いて説明する。OCT装置100は、全体としてマイケルソン干渉計を構成している。さらにスペクトラルドメイン方式のOCT(以下SD−OCTと称する)である。ただしSD−OCTであることは本発明において必須要件ではなく他の方式、例えばタイムドメイン方式のOCTであってもよい。まず以下にOCT装置全体の構成と機能を説明する。
【0029】
光源101から出射した光である出射光104はシングルモードファイバ110に導かれて光カプラ156に入射し、光カプラ156にて第1の光路と第2の光路と第3の光路の3つの光路を通る出射光104−1〜3に分割される。さらに、この3つの出射光104−1〜3のそれぞれは、偏光コントローラ153−1を通過し、光カプラ131−1〜3にて参照光105−1〜3と測定光106−1〜3とに分割される。このように分割された3つの測定光106−1〜3は、観察対象である被検眼107における網膜127等のそれぞれの測定個所によって反射あるいは散乱された戻り光108−1〜3となって戻される。そして、光カプラ131−1〜3によって、参照光路を経由してきた参照光105−1〜3と合波され合成光142−1〜3となる。合成光142−1〜3は、透過型回折格子141によって波長毎に分光され、ラインセンサ139に入射される。ラインセンサ139はセンサ素子毎に各波長の光強度を電圧に変換し、その信号を用いて、被検眼107の断層像が構成される。
【0030】
次に、参照光105の参照光路について説明する。光カプラ131−1〜3によって分割された3つの参照光105−1〜3のそれぞれは、偏光コントローラ153−2を通過し、レンズ135−1にて略平行光となって、出射される。次に、参照光105−1〜3は分散補償用ガラス115を通過し、レンズ135−2にて、ミラー114−1〜3に集光される。次に、参照光105−1〜3はミラー114−1〜3にて方向を変え、再び光カプラ131−1〜3に向かう。そして、参照光105−1〜3は光カプラ131−1〜3を通過し、ラインセンサ139に導かれる。なお、分散補償用ガラス115は被検眼107および走査光学系を測定光106が往復した時の分散を、参照光105に対して補償するものである。
【0031】
さらに、117−1〜3は電動ステージであり、矢印で図示している方向に移動することで、参照光105の光路長を変更することができる。この電動ステージ117−1〜3はコンピュータ125により制御され、参照光105−1〜3の光路長を各々独立に、あるいは同時に変更することが可能である。
【0032】
次に、測定光106の測定光路について説明する。光カプラ131−1〜3によって分割された測定光106−1〜3のそれぞれは、偏光コントローラ153−4を通過し、レンズ120−3にて、略平行光となって出射され、走査光学系を構成するXYスキャナ119のミラーに入射される。ここでは、簡単のため、XYスキャナ119は一つのミラーとして記したが、実際にはXスキャン用ミラーとYスキャン用ミラーとの2枚のミラーが近接して配置され、網膜127上を光軸に垂直な方向にラスタースキャンするものである。また、測定光106−1〜3のそれぞれの中心はXYスキャナ119のミラーの回転中心とほぼ一致するようにレンズ120−1、3等が調整されている。レンズ120−1、120−2は測定光106−1〜3が網膜127を走査するための光学系であり、測定光106を角膜126の付近を支点として、網膜127をスキャンする役割がある。測定光106−1〜3はそれぞれ網膜上の任意の位置に結像するように構成されている。
【0033】
また、117−4は電動ステージであり、矢印で図示している方向に移動することができ、付随するレンズ120−2の位置を、調整・制御することができる。レンズ120−2の位置を調整することで、被検眼107の網膜127の所望の層に測定光106−1〜3のそれぞれを集光し、観察することができる。測定光106−1〜3は被検眼107に入射すると、網膜127からの反射や散乱により戻り光108−1〜3となり、光カプラ131−1〜3を通過し、ラインセンサ139に導かれる。なお、電動ステージ117−4はコンピュータ125により制御される。以上の構成により3つの測定光を同時にスキャンすることができる。
【0034】
次に、検出系の構成について説明する。網膜127にて反射や散乱された戻り光108−1〜3と参照光105−1〜3とは光カプラ131−1〜3により合波される。そして、合波された合成光142−1〜3は分光器に入射し、スペクトルが得られる。これらのスペクトルに対し、コンピュータ125が断層像の再構成処理を行うことで断層像を得ることができる。
【0035】
再構成処理は一般的なOCT像の生成工程を用いればよく、固定ノイズ除去、波長波数変換、フーリエ変換を行うことで断層像を生成することができる。図3(a)から図3(d)は、上述したOCT装置により撮影される眼底網膜上の領域と断層像の例を図示したものである。
【0036】
同図において眼底501には、黄斑502、視神経乳頭503および血管504などがある。3本の測定光は、それぞれに対応して第1の走査範囲505、第2の走査範囲506、第3の走査範囲507を走査する。それぞれの領域は、第1の走査範囲−第2の走査範囲間の重なり508、第2の走査範囲−第3の走査範囲間の重なり509のように20%程度重なっている。座標軸は図に示したように設定され、x方向の走査をFast−Scan、y方向をSlow−Scanと呼び、z方向は、紙面の裏から表に向かっているとする。
【0037】
ここでは、一本の測定光あたりx方向には例えば512ライン、y方向には例えば200ライン走査するものとする。ただしy方向は重なり部分を除けば3本の測定光で512ラインを走査しており、最終的には図3(a)に示す一点鎖線の矩形領域が眼底上での撮像範囲となり、この領域において断層画像が取得されることになる。
【0038】
一方、近赤外光源180から照射された近赤外光190はハーフミラー200、照明光学系150、測定光路内に挿入されたダイクロイックミラー190を介して眼底127に照射される。眼底で反射した近赤外光は再び同一の光路を戻り、ハーフミラー200、結像光学計160を介して2次元のエリアセンサ170上で結像する。このようにして撮像された眼底の2次元画像はコンピュータ125に入力される。この2次元画像はOCT装置による眼底の撮像領域を観察するために用いられる。
【0039】
(第2の実施形態:撮像方法)
次に、上述の撮像を行う際に必要となる測定光のアライメントおよびコヒーレンスゲート位置の設定について図4などを用いて説明する。図4は、本実施形態に係る撮像方法を説明するためのフローチャートである。なお、以下のフローについて、OCT装置のオペレータは、コンピュータ125内に記憶された不図示の制御プログラム(以下、単に制御プログラムと呼ぶ)がモニタ130に表示するユーザインタフェースを通して撮像操作を行う。
【0040】
[S100]
オペレータはコンピュータ125に対して被検者を特定する患者名や患者IDなどの情報を入力する。入力された情報はコンピュータ125内部のハードディスク等の記憶装置に記録される。入力完了後、制御プログラムは撮影に先立ち撮像領域を設定するための操作を行う画面を表示する。
【0041】
[S200]
制御プログラムは撮像領域設定のためのユーザインタフェースをモニタ130に表示する。図5は、モニタ130に表示されるユーザインタフェースを図示したものである。同図においてウィンドウ601内にはエリアセンサ170で撮像された眼底の2次元像が表示され、異なるウィンドウ603−1〜3には前述した3つの測定光による断層画像が連続的に表示される。
【0042】
また、ウィンドウ601内に表示される眼底501の2次元画像には各測定光の走査位置606−1〜3が重畳されて表示される。OCT装置のオペレータはコンピュータ125に接続されたマウス等のポインティングデバイスを用い、カーソル607を走査位置606−1〜3の上で移動することで、眼底501に対する測定位置を指定することができる。これは、コンピュータ125がXYスキャナ119の回転範囲を制御することで実現できる。
【0043】
次に、OCT装置のオペレータはスライダ604−1〜4を操作することでコヒーレンスゲートの位置を調整することができる。すなわち、スライダ604−1〜3の操作により、電動ステージ117−1〜3を移動することができるようになっており、これによって各々の測定光のコヒーレンスゲート位置が調整できる。例えば、ウィンドウ603−2に表示された中央の測定光のコヒーレンスゲートはスライダ604−2を操作することで調整でき、図5においてスライダ604−2に重ねて表示した矢印の方向にスライダを動かすことで、ウィンドウ603−2に表示される断層画像も上に移動して表示されるようになる。
【0044】
また、スライダ604−4は他の3つのスライダを制御しており、これを操作することで他の3つのスライダが連動する。したがって、スライダ604−4を操作することで電動ステージ117−1〜3全てを移動させ、各測定光のコヒーレンスゲートの位置を同時に調整することができる。
【0045】
一方、ウィンドウ603−1〜3には各測定光により得られる断層画像が連続的に表示され、プログレスバー605−1〜3には各断層画像から計算されるSN比の大きさに比例した長さのバーが表示され、右に延びるほどSN比が高いことを表している。これらのバーは断層画像が取得、表示される度に更新されるようになっており、オペレータはウィンドウ603−1〜3に表示される各断層画像の位置と、画質の指標となるバーの長さからコヒーレンスゲート位置を調整することができる。
【0046】
[S300]
コヒーレンスゲート調整が終了したら、オペレータは撮像開始ボタン602を操作することで断層画像の撮像が開始され、これが終了すると確認のために断層画像が画面上に表示される。
【0047】
[S400]
図6は、撮像後、モニタ130に表示されるユーザインタフェースを例示したものであり、3つのウィンドウ701、704および706に3種類の画像が表示されている。
【0048】
まず、ウィンドウ701には、断層画像の画素値を被検眼のz方向(深さ方向)に積算した積算画像702が表示される。OCTによる網膜の断層画像の画素値は、網膜の各層の境界等における反射率(各層の屈折率差)に略比例する。このため、これをz方向に積算した積算画像は眼底の2次元画像と極めて類似した画像となる。したがって、撮像後にこの積算画像を表示することで、測定光の前眼部(角膜など)におけるケラレ等による不具合がないかどうかを確認することができる。
【0049】
また、本実施形態においては3つの測定光を用いているため、図3(a)に示す重複領域508および509については投影画像から除いて表示されている。重複領域の除去はどのような方法を用いてもよい。例えば中央の領域はそのまま残し、上下の領域については重複領域を除いて積算画像を作成し、3つの領域の積算画像をつなぎ合わせて1つの積算画像とすればよい。このとき、図6の積算画像702に示すように、各領域の境界となる部分を破線等で示すようにすることが好ましい。これにより、使用者が、3つの測定光で眼底のどの部分を撮像したかを確認できる。
【0050】
一方、ウィンドウ704には積算画像702上に表示されたカーソル703が示す位置の断層画像705を表示する。表示位置はカーソル703をマウス等のポインティングデバイスで操作して変更することができる。これにより、積算画像702で全体を観察しつつ、各々の断層画像の確認を行うことができるようになる。
【0051】
さらに、ウィンドウ706には、眼底観察光学系のエリアセンサ170で検出された眼底画像が表示される。また、眼底画像にも各測定光による撮像領域を識別可能なように破線等の矩形で表示する。このとき、各領域を表す矩形の色を変えるようにすることが好ましい。これにより、3つの画像の対応を識別しやすくなる。
【0052】
[S500]
確認が終了したらオペレータは保存ボタン707を操作し、断層画像がコンピュータ125の記憶装置に記録される。また、確認の結果撮り直しが必要な場合は、撮り直しボタン708を操作することで、再度S200に制御が移り撮り直し操作が可能となる。
【0053】
以上説明したように、複数の測定光を有するOCT装置を操作するユーザインタフェースにおいて、コヒーレンスゲートを調整する手段を各々の測定光に対して設けるとともに、全てを一括して調整可能な手段を有することにより使い勝手を向上させ、より高SNを実現した撮像することが可能となる。
【0054】
なお、本実施形態ではコヒーレンスゲート位置の調整にスライダを用いているが、本発明はこれに限定されることなく、他の方法によることもできる。例えばスクロールバーを用いてもよいし、OCT装置本体に別の操作パネルを設け、そこにコヒーレンスゲート調整用のダイヤル等を複数設けるようにしてもよい。
【0055】
さらに、撮像後の確認画面において断層画像と、それから生成される積算画像および眼底画像を表示することで、撮像が正常に行われたかどうかを容易に確認することが可能となる。
【0056】
(第3の実施形態:被検眼に基づきコヒーレンスゲートの位置を設定)
上記実施形態において、コヒーレンスゲートの位置は各々スライダを操作することで設定したが、過去に対象となる被検眼の撮像を既に行っている場合は、それを利用してスライダの初期位置を自動的に設定してもよい。これにより、コヒーレンスゲート調整の手間を大きく省くことが可能となる。
【0057】
図7は、測定光106−1〜3の被検眼127に対する位置関係を表した図であり、各測定光に対応してコヒーレンスゲートの位置が801−1〜3で図示されている。これらのコヒーレンスゲートの位置は、実施例1で説明したように電動ステージ117−1〜3をユーザインタフェース上のスライダ604−1〜3を操作することで、変更できる。本実施例ではある被検眼に対して調整したコヒーレンスゲートの位置を被検眼に関連付けてOCT装置に保存する。
【0058】
すなわち、中央の測定光106−2のコヒーレンスゲート801−2の位置を電動ステージ117−2の位置情報として記憶すると同時に、コヒーレンスゲート801−2と801−1の差Δ1、およびコヒーレンスゲート801−2と801−3の差Δ2を、被検眼を表す識別情報と共にOCT装置に付随するコンピュータ125内の記憶装置に記憶する。これはコンピュータ125のCPUがOCT装置を制御するプログラムに基づき制御を行うことで実現する。
【0059】
次に同一被検眼を撮影する際、CPUは被検眼の識別情報と共にコヒーレンスゲート802−2の位置およびΔ1、Δ2を記憶装置から読み出し、ユーザインタフェース上のスライダ604−1〜3の初期位置に反映させると共に、電動ステージ117−1〜3を駆動して各コヒーレンスゲートの位置を自動的に設定する。
【0060】
このようにすることで、各コヒーレンスゲート間の相対的な位置関係は前回の撮影時の状態に復帰できるため、基本的にOCT装置に対する被検眼の位置を調整すればよく、オペレータに必要な操作としてはスライダ604−4の調整のみとなり、撮影操作を簡略化することが可能となる。
【0061】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0062】
11 変更部
12 指示部
13 第1の指示部
14 第2の指示部
15 指示表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定光を照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置であって、
前記複数の参照光と前記複数の戻り光とのそれぞれの光路長差の変更量を指示する指示手段と、
前記指示手段により指示された前記変更量に基づいて前記光路長差を変更する変更手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記指示手段が、
前記変更量をそれぞれ指示する第1の指示手段と、
前記変更量を関連付けて指示する第2の指示手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第2の指示手段が、前記変更量を同時に指示することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記変更手段が、前記複数の参照光の光路長をそれぞれ変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記変更手段が、前記複数の参照光の光路それぞれに設けられた参照ミラーを光軸方向それぞれに移動する移動手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記被検査物が被検眼であり、
前記複数の測定光を前記被検眼の前眼部で交差するように照射する照射手段を有し、
前記指示手段が、前記被検眼の特性に基づいて前記変更量を指示する手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記指示手段の機能を有する画像を表示手段に表示させる指示表示制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記複数の合成光に基づく前記被検査物の光干渉断層画像それぞれを前記表示手段に表示させる断層画像表示制御手段を有し、
前記指示表示制御手段が、前記光干渉断層画像それぞれに対応付けて前記指示手段の機能を有する画像それぞれを前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記複数の測定光を前記被検査物に照射する方向に対して交差する方向の該被検査物の交差画像を前記表示手段に表示させる交差画像表示制御手段と、
前記光干渉断層画像それぞれの位置を前記交差画像に対応付けて前記表示手段に表示させる位置表示制御手段
を有することを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記光干渉断層画像に対応する画像情報を示す画像それぞれを前記表示手段に表示させる画像情報表示制御手段を有することを特徴とする請求項8あるいは9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記複数の測定光を前記被検査物に照射する方向に対して交差する方向の該被検査物の交差画像を前記表示手段に表示させる交差画像表示制御手段と、
前記複数の測定光の走査範囲を前記交差画像に対応付けて前記表示手段に表示させる走査範囲表示制御手段と、
を有することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
複数の測定光を照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置であって、
前記複数の参照光と前記複数の戻り光との光路長差の変更量をそれぞれ指示する第1の指示手段と、
前記変更量を関連付けて指示する第2の指示手段と、
前記第1の指示手段の機能を有する画像と前記第2の指示手段の機能を有する画像とを表示手段に表示させる指示表示制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
複数の測定光に照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像装置であって、
前記複数の合成光に基づく前記被検査物の光干渉断層画像それぞれを表示手段に表示させる断層画像表示制御手段と、
前記光干渉断層画像に対応する画像情報を示す画像それぞれを前記表示手段に表示させる画像情報表示制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項14】
請求項7乃至13のいずれか1項に記載の撮像装置を用いて前記被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像方法であって、
前記表示手段に表示させる信号を入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された信号に基づく情報を前記表示手段に表示する表示工程と、
を含むことを特徴とする撮像方法。
【請求項15】
複数の測定光に照射した被検査物からの複数の戻り光と、該複数の測定光にそれぞれ対応する複数の参照光と、をそれぞれ合成した複数の合成光に基づく該被検査物の光干渉断層画像を撮る撮像方法であって、
前記複数の参照光と前記複数の戻り光とのそれぞれの光路長差の変更量を指示する指示工程と、
前記指示工程で指示された前記変更量に基づいて前記光路長差を変更する変更工程と、
を含むことを特徴とする撮像方法。
【請求項16】
前記指示工程が、前記変更量をそれぞれ指示する第1の指示工程と、前記変更量を関連付けて指示する第2の指示工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の撮像方法。
【請求項17】
前記変更工程で、前記複数の参照光の光路長をそれぞれ変更することを特徴とする請求項15あるいは16に記載の撮像方法。
【請求項18】
請求項14乃至17のいずれか1項に記載の撮像方法をコンピュータで実行するプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−214969(P2011−214969A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82814(P2010−82814)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】