説明

撮像装置

【課題】 パララックスの発生を抑制して、広い範囲の画像を得ると共に、全体の容積を低減することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】 複数のn個の撮像手段11A,11Bに対して、(n−1)個の光路変更手段13を備え、1個の撮像手段11Aは直接被写体を撮影し、他の(n−1)個の撮像手段11Bは、光路変更手段13を経て間接的に被写体を撮影し、各撮像手段11A,11Bの仮想光学中心が略一致する撮像装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全周等の広い範囲を撮像することができる撮像装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
広い範囲を撮影する場合に、1個のカメラのみで撮影しようとすると、広い画角が必要となるが、カメラのレンズの特性により、画角を広く取ろうとするほど、画面周辺部において歪や収差、減光が大きくなってしまう。また、画角の外にある光の影響によるフレアも出やすくなる。
【0003】
その他にも、1個のカメラを、軸の周囲に回転させて撮影する方法が考えられる。
この場合には、回転にある程度の時間を要するため、撮影開始点と終点との時間差により、動いている被写体が変形したり、不連続になったりして、正しく写らない。
【0004】
これに対して、多数のビデオカメラを使用して、広い範囲を同時に撮影するカメラの構成が種々提案されている。
【0005】
例えば、複数のカメラを使用して、各カメラの光軸の延長部が略一致する交点で交わるように配置した構成(特許文献1参照)が提案されている。
【0006】
しかしながら、このようなカメラの構成では、各ビデオカメラの光学中心(視点中心等とも呼ばれる)が一致していないと、パララックス(視差)が生じて、高品質に複数の画像をつなぎ合わせることができない、という問題を生じる。
具体的には、例えば、隣接する2つのカメラのそれぞれで撮影した画像同士のつなぎ目部分に、距離の違う複数の被写体が存在していると、その全ての被写体が正しく写るように画像をつなげることができない。
【0007】
そこで、パララックスの問題を解決するために、例えば、ミラーを用いることにより、複数のカメラの視点中心を仮想的に略一致させた構成(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−67020号公報
【特許文献2】特開平10−145656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えば、上記特許文献2に記載された構成では、2組のカメラと2組のミラーとを用いていることにより、カメラ及びミラーが占める容積が大きくなり、撮像装置の筐体が大型化することになる。
【0010】
上述した問題の解決のために、本発明においては、パララックスの発生を抑制して、広い範囲の画像を得ると共に、全体の容積を低減することができる撮像装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の撮像装置は、複数の撮像手段から成り、n個(nは2以上の自然数)の撮像手段に対して(n−1)個の光路変更手段を備え、n個の撮像手段のうち1個の撮像手段は、光路変更手段を経ないで直接被写体を撮像し、他の(n−1)個の撮像手段は、光路変更手段を経る光路で被写体を撮像し、複数の撮像手段の各撮像手段の仮想光学中心が略一致するものである。
【0012】
上述の本発明の撮像装置の構成によれば、複数の撮像手段から成ることにより、各撮像手段で撮影した画像をつなぎ合わせて、広い範囲の画像を得ることができる。
そして、複数の撮像手段の各撮像手段の仮想光学中心が略一致することにより、パララックス(視差)の発生を抑制することができる。
また、n個の撮像手段に対して、光路変更手段を(n−1)個としているため、上記特許文献2に記載されているような、撮像手段と光路変更手段を同じ個数(n個)備えた撮像装置と比較して、光路変更手段の個数が1個少なくなることから、光路変更手段が占める容積を低減して、全体の容積を低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
上述の本発明の撮像装置によれば、複数の撮像手段において、パララックス(視差)の発生を抑制することができるため、画像間のつなぎ目部分にさまざまな距離の被写体が写っている場合であっても、滑らかに画像をつなぐことができる。
また、本発明によれば、撮像装置全体の容積を低減することができるため、撮像装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の具体的な実施の形態の説明に先立ち、本発明の概要について説明する。
【0015】
本発明では、複数の撮像手段(カメラ等)から成る撮像装置において、n個(nは2以上の自然数)の撮像手段に対して(n−1)個の光路変更手段を備え、n個の撮像手段のうち1個の撮像手段は、光路変更手段を経ないで直接被写体を撮像し(以下、このような撮像手段を直接撮像手段とする)、他の(n−1)個の撮像手段は、光路変更手段を経る光路で被写体を撮像し(以下、このような撮像手段を間接撮像手段とする)、複数の撮像手段の各撮像手段の仮想光学中心が略一致する構成とするものである。
【0016】
光路変更手段としては、ミラー(反射材)やプリズム、その他の導光手段(導光路等)が考えられる。
【0017】
本発明では、上述した構成とすることにより、複数の撮像手段の各撮像手段で撮影した画像をつなぎ合わせて、広い範囲の画像を得ることができ、かつ各撮像手段の仮想光学中心が略一致するため、パララックス(視差)の発生を抑制することができる。
そして、複数の撮像手段の各撮像手段で撮影した画像をつなぎ合わせるため、各撮像手段のレンズとして、周辺部の歪、収差、減光といった画質劣化の比較的少ないレンズを使用しても、広い範囲の画像を得ることができる。これにより、広角レンズを有する1個の撮像手段で撮影した画像と比較して、周辺部の画質のよいパノラマ画像が得られる。
また、複数の撮像手段で同時に広範囲を撮影できるため、撮影時間も短く、同一のパノラマ画像内での時間差がなく、動いている被写体であっても、変形したり不連続になったりすることがなく、問題なく撮影することが可能である。
【0018】
さらに、n個の撮像手段に対して、光路変更手段を(n−1)個としているため、撮像手段と光路変更手段を同じ個数(n個)備えた従来提案されている構成と比較して、光路変更手段の個数が1個少なくなることから、光路変更手段が占める容積を低減して、全体の容積を低減することが可能になる。
【0019】
本発明において、仮想光学中心(仮想視点中心)を略一致させる方法は、特に限定しないが、例えば、先に本出願人が提案した、NP点(ノンパララックス点)を略一致させる方法を適用することができる。
【0020】
このNP点(ノンパララックス点)とは、撮像手段のレンズの開口絞りの中心を通る主光線中、ガウス領域に位置する主光線を選択し、選択された主光線の物空間における直線成分を延長して光軸と交わる点をNP点(ノンパララックス点)と定義するものである。
そして、このNP点を光学中心(視点中心)として用い、さらに複数の撮像手段(カメラ)でNP点を略一致させるようにして撮像装置を構成することにより、複数の撮像手段(カメラ)で撮影した画像間で視差を生じないようにすることができる。
【0021】
ここで、NP点について、図6を参照して説明する。
図6に示すように、物体で反射した光が等価凸レンズ300を介して撮像素子301に像を結ぶ状態となっている。等価凸レンズ300は、複数のレンズ302〜308によって構成され、開口絞り309がレンズ304とレンズ305の間に設けられている。
そして、開口絞り309の中心を通る主光線のうち、光軸に最も近い領域、つまり収差が最も小さいガウス領域を通る主光線311を選択する。
この主光線311のうちの物空間312における直線成分を延長して光軸310と交わる点をNP点(ノンパララックス点)313とする。
【0022】
パララックスをなくして、各撮像手段が撮影した画像を貼り合わせるためには、少なくとも各撮像手段のNP点が半径約50mmの領域(球体)内に配置されるように構成し、より好ましくは各撮像手段のNP点が半径約20mmの領域(球体)内に配置されるように構成すればよい。
【0023】
なお、光学中心(視点中心)を、上述のNP点の他に、例えば画角端の主光線の交点として定義することも可能である。
【0024】
ところで、複数の撮像手段の仮想光学中心を完全に一致させた場合には、撮像手段によって撮影する画像に、ミラー、プリズム等の光路変更手段そのものの像が写り込むことがある。
そして、ミラーやプリズム等の光路変更手段の構成によっては、光路変更手段そのものの像の大きさが無視できない大きさになる。
【0025】
そうした場合、これらの像を画像処理により修正するか、像の写りこんでいる部分を削除しなければ、双方の撮像手段で撮影した画像のつなぎ目に、本来写ってはならない光路変更手段の像が残ってしまう。
しかし、画像処理により修正すると、その部分だけ画質が劣化し、像の写りこんだ部分を削除してしまうと、画像のつなぎ目部分の情報が欠落してしまい、滑らかにつながらない可能性がある。
【0026】
そこで、光路変更手段そのものの像の大きさが無視できない大きさになるような構成の場合には、仮想光学中心を一部ずらせばよい。
即ち、ミラー、プリズム等の光路変更手段が、どの撮像手段の画角内にも入らない死角の位置となるように、仮想光学中心を一部ずらす。
そのために、少なくとも、間接撮像手段の仮想光学中心を、その撮像手段に対応する光路変更手段を挟んで隣接する撮像手段の光学中心とは異なる点とする。
【0027】
あまり大幅に光学中心をずらすと、画像がつなげにくくなるため、ミラーやレンズ等の製造ばらつきに対するマージン等を確保でき、かつ光路変更手段がどの撮像手段の画角内にも入らない範囲内で、ずらすようにする。
【0028】
なお、撮像手段が3個以上ある場合、隣接していない撮像手段同士の仮想光学中心は、一致していても、異なる点であっても構わない。
【0029】
このように仮想光学中心を一部ずらすことにより、画像処理をしなくても、光路変更手段の像の写りこみを防止することができる。
また、隣接する撮像手段が撮像する領域を一部重ねることが可能になり、この重なった領域の被写体が、両方の撮像手段の画像に写り、その被写体情報を画像間の位置合わせや色合わせに利用することが可能になる。これにより、隣接する撮像手段の画像をつなぎ合わせた後の画像のつなぎ目を目立たなくすることが可能になる。
【0030】
上述したように、間接撮像手段の仮想光学中心を、対応する光路変更手段を挟んで隣接する撮像手段の光学中心からずらした場合において、隣接する撮像手段同士の撮影領域が常に適切な量だけ重なるためには、ミラー等の光路変更手段と、それにより反射させた像を結像させるレンズとの位置関係、撮像手段のレンズの光軸の向き、レンズの画角等の各要素を考慮して、精度よく各部品の設定や配置を精度よく行う必要がある。
【0031】
しかしながら、レンズの画角は、ピントの合う被写体距離、絞りの大きさ、レンズ歪といった条件により、同様の構成のレンズ群であってもひとつに決まらない。またレンズの組み立て精度のばらつきにより、必ずしも設計通りになるとは限らない。
そのため、最も画角が狭いときでも隣接する撮像手段と撮影領域の重なりを確保しようと設計すると、設計条件よりも画角が広くなったときに、間接撮像手段に対して、光路変更手段で反射しない直接光が入射して、間接撮像手段から見て光路変更手段の外側にある被写体の像が結像することがある。
【0032】
この場合においても、この像を画像処理により修正するか、像の写りこんでいる部分を削除しなければ、双方の撮像手段で撮影した画像のつなぎ目に、本来写ってはならない全く違う方向の像が残ってしまう。
しかし、画像処理により修正すると、その部分だけ画質が劣化し、像の写りこんだ部分を削除してしまうと、画像のつなぎ目部分の情報が欠落してしまい、滑らかにつながらない可能性がある。
【0033】
そこで、間接撮像手段に対して、光路変更手段で反射しない直接光が入射するような場合には、光路変更手段にさらに遮光材を設けて、間接撮像手段に光路変更手段を経ないで直接入射する光を抑制する。
例えば、ミラー等の光路変更手段の先端部に、庇状に遮光材を設ける。
【0034】
遮光材は、光路変更手段による反射光への影響を避けるために、光をほとんど反射しない構成であることが望ましい。
また、遮光材は、光を全く通さない構成であることが望ましいが、遮光材を透過した光による画像への影響が少ない場合には、光の大部分を吸収して透過量の少ない構成としても構わない。
【0035】
このように遮光材を設けることにより、光路変更手段の外側から漏れた光によって画像のつなぎ目付近に意図しない方向の被写体が写り込むことを防止して、不要な画像を分離するための処理の負荷を低減すると同時に、貼り合せた後の画像の画質劣化を防止することができる。
また、画角の外の強い光の影響によるフレアを低減する効果がある。
【0036】
続いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
【0037】
本発明の撮像装置の一実施の形態の概略構成図を図1に示す。
この撮像装置10は、撮像手段として、2つのカメラ11A,11Bを備えて構成されている。また、2つのカメラ11A,11Bの間に、光路変更手段としてミラー13が設けられている。
各カメラ11A,11Bは、それぞれ1つ又は複数のレンズと、撮像素子(例えばCCD固体撮像素子)等を備えて構成される。
【0038】
図中左の第1のカメラ11Aは、ミラー13を経由せず、画角θaで直接被写体を撮影する。即ち、前述した直接撮像手段を構成する。
一方、図中右の第2のカメラ11Bは、ミラー13を経て、画角θbで被写体を撮影する。即ち、前述した間接撮像手段を構成する。
第1のカメラ11Aの撮影領域(画角θa)と、第2のカメラ11Bの撮影領域(画角θb)とは、重なりをもたずに接している。
【0039】
そして、第1のカメラ11Aの光学中心12Aと、第2のカメラ11Bの光学中心12Bとは、ミラー13の反射面に対して対称の位置にある。
これにより、第2のカメラ11Bの光学中心12Bの虚像(仮想光学中心)は、第1のカメラ11Aの光学中心12Aと一致する位置となる。
そのため、第2のカメラ11Bは、あたかも第1のカメラ11Aと同一の位置から画角θbで撮影しているのと等価となっている。
【0040】
また、仮想光学中心が一致するため、第1のカメラ11Aと第2のカメラ11Bとの間に視差を生じない。
このことから、これら2つのカメラ11A,11Bでそれぞれ撮影した画像は、画像のつなぎ目の部分に距離の異なる被写体が複数存在していたとしても、それら全ての被写体が滑らかに、違和感がないように、画像をつなげることが可能である。
【0041】
従って、このような光学系を用いて撮影することにより、θ=θa+θbの広い画角の画像を写す能力がありながら、1個の画角θのカメラを使用した場合と比較して、周辺の歪、収差、減光特性、フレア等を大幅に改善することができる。
【0042】
上述の本実施の形態の撮像装置10の構成によれば、2つのカメラ11A,11B及びミラー13を備え、第1のカメラ11Aではミラー13を経ないで直接被写体を撮影し、第2のカメラ11Bではミラー13を経て反射させて被写体を撮影するので、広い画角(θ=θa+θb)で撮影することができる。
また、1個の広角カメラを使用した場合と比較して、周辺の歪、収差、減光特性、フレア等を大幅に改善することができる。
【0043】
さらに、第1のカメラ11Aの光学中心12Aと、第2のカメラ11Bの光学中心12Bとがミラー13に対して対称であり、第2のカメラ11Bの仮想光学中心(光学中心12Bの虚像)が第1のカメラ11Aの光学中心12Aと一致するため、2つのカメラ11A,11Bで視差を生じないようにすることができ、2つのカメラ11A,11Bでそれぞれ撮影した画像を、違和感なくつなげることができる。
【0044】
なお、光路変更手段としては、図1に示したミラー13に限定されるものではなく、プリズム等の他の光路変更手段であっても構わない。
また、撮像手段としては、カメラ11A,11Bに限定されるものではなく、各撮像手段のレンズの枚数等も任意である。
【0045】
次に、本発明の撮像装置の他の実施の形態の概略構成図を図2に示す。
この撮像装置20は、3つのカメラ21A,21B,21Cを備え、それぞれのカメラの間にミラー23,24が配置されている。なお、個々のカメラやミラーの構成は、先の実施の形態の撮像装置10と同様にすることができる。
【0046】
図中中央の第1のカメラ21Aは、画角θaで直接被写体を撮影するものであり、直接撮像手段を構成する。
図中右の第2のカメラ21Bは、右のミラー23を経て、画角θbで被写体を撮影するものであり、間接撮像手段を構成する。
図中左の第3のカメラ21Cは、左のミラー24を経て、画角θcで被写体を撮影するものであり、間接撮像手段を構成する。
第2のカメラ21Bの撮影領域(画角θb)は、第1のカメラ21Aの撮影領域(画角θa)と重なりをもたずに接している。第3のカメラ21Cの撮影領域(画角θc)は、第1のカメラ21Aの撮影領域(画角θa)と重なりをもたずに接している。
【0047】
第1のカメラ21Aの光学中心22Aと、第2のカメラ21Bの光学中心22Bとは、ミラー23の反射面に対して対称の位置にある。第1のカメラ21Aの光学中心22Aと、第3のカメラ21Cの光学中心22Cとは、ミラー24の反射面に対して対称の位置にある。
これにより、第2のカメラ21Bの光学中心22B及び第3のカメラ21Cの光学中心22Cの虚像(仮想光学中心)は、いずれも第1のカメラ21Aの光学中心22Aと一致する位置となる。
【0048】
このように仮想光学中心が一致するため、第1のカメラ21A・第2のカメラ21B・第3のカメラ21Cの間で視差を生じない。
これにより、それぞれのカメラ21A,21B,21Cで撮影した画像を、違和感がないようにつなげることが可能である。
【0049】
従って、このような光学系を用いて撮影することにより、θ=θa+θb+θcの広い画角の画像を写す能力がありながら、1個の画角θのカメラを使用した場合と比較して、周辺の歪、収差、減光特性、フレア等を大幅に改善することができる。
【0050】
上述の本実施の形態の撮像装置20の構成によれば、3つのカメラ21A,21B,21C及びミラー23,24を備え、第1のカメラ21Aでは直接被写体を撮影し、第2のカメラ21Bではミラー23を経て反射させて被写体を撮影し、第3のカメラ21Cではミラー24を経て反射させて被写体を撮影するので、広い画角(θ=θa+θb+θc)で撮影することができる。
また、1個の広角カメラを使用した場合と比較して、周辺の歪、収差、減光特性、フレア等を大幅に改善することができる。
【0051】
さらに、第2のカメラ21Bの仮想光学中心(光学中心22Bの虚像)及び第3のカメラ21Cの仮想光学中心(光学中心22Cの虚像)が第1のカメラ21Aの光学中心22Aと一致するため、3つのカメラ21A,21B,21Cで視差を生じないようにすることができ、3つのカメラ21A,21B,21Cでそれぞれ撮影した画像を、違和感なくつなげることができる。
【0052】
なお、光路変更手段としては、図2に示したミラー23,24に限定されるものではなく、プリズム等の他の光路変更手段であっても構わない。
また、撮像手段としては、カメラ21A,21B,21Cに限定されるものではなく、各撮像手段のレンズの枚数等も任意である。
【0053】
なお、3個のカメラと2つのレンズとを備えた構成としては、図2に示した以外の構成も可能である。その場合を次に示す。
【0054】
本発明の撮像装置のさらに他の実施の形態の概略構成図を図3に示す。
この撮像装置30は、3つのカメラ31A,31B,31Cを備え、それぞれのカメラの間にミラー33,34が配置されている。なお、個々のカメラやミラーの構成は、先の実施の形態の撮像装置10,20と同様にすることができる。
【0055】
図中左の第1のカメラ31Aは、画角θaで直接被写体を撮影するものであり、直接撮像手段を構成する。
図中右下の第2のカメラ31Bは、ミラー33を経て、画角θbで被写体を撮影するものであり、間接撮像手段を構成する。
図中右上の第3のカメラ31Cは、ミラー33及びミラー34を経て、画角θcで被写体を撮影するものであり、間接撮像手段を構成する。即ち、第3のカメラ31Cには、2つのミラー33,34によって2回反射された光が入射する。
第2のカメラ31Bの撮影領域(画角θb)は、第1のカメラ31Aの撮影領域(画角θa)と重なりをもたずに接している。第3のカメラ31Cの撮影領域(画角θc)は、第1のカメラ31Aの撮影領域(画角θa)と重なりをもたずに接している。
【0056】
第1のカメラ31Aの光学中心32Aと、第2のカメラ31Bの光学中心32Bとは、ミラー33の反射面に対して対称の位置にある。第2のカメラ31Bの光学中心32Bと、第3のカメラ31Cの光学中心32Cとは、ミラー34の反射面に対して対称の位置にある。
これにより、第2のカメラ31Bの光学中心32B及び第3のカメラ31Cの光学中心32Cの虚像(仮想光学中心)は、いずれも第1のカメラ31Aの光学中心32Aと一致する位置となる。
【0057】
このように仮想光学中心が一致するため、第1のカメラ31A・第2のカメラ31B・第3のカメラ31Cの間で視差を生じない。
これにより、それぞれのカメラ31A,31B,31Cで撮影した画像を、違和感がないようにつなげることが可能である。
【0058】
上述の本実施の形態の撮像装置30の構成によれば、図2に示した先の実施の形態の撮像装置20と同様に、広い画角(θ=θa+θb+θc)で撮影することができ、また、1個の広角カメラを使用した場合と比較して、周辺の歪、収差、減光特性、フレア等を大幅に改善することができる。
さらに、3つのカメラ31A,31B,31Cで視差を生じないようにすることができ、3つのカメラ31A,31B,31Cでそれぞれ撮影した画像を、違和感なくつなげることができる。
【0059】
同様にして、撮像手段の個数nを増やして、4個以上にした場合でも、全ての撮像手段で視差が生じないように配置することが可能となる。
【0060】
なお、従来提案されている構成と比較して、撮像装置を小型化することができる効果は、nが小さい方が大きく、特に前述した各実施の形態のように、nが2又は3であり撮像手段を平面的に配置した場合に大きい効果を有する。
【0061】
続いて、仮想光学中心を一部ずらした場合を次に示す。
本発明の撮像装置の別の実施の形態の概略構成図を図4に示す。
この撮像装置40は、カメラの個数及びミラーの個数は、図2に示した撮像装置20と同様になっている。
即ち、3つのカメラ41A,41B,41Cを備え、それぞれのカメラの間にミラー43,44が配置され、図中中央の第1のカメラ41Aは、画角θaで直接被写体を撮影する直接撮像手段を構成し、図中右の第2のカメラ41Bは、右のミラー43を経て、画角θbで被写体を撮影する間接撮像手段を構成し、図中左の第3のカメラ41Cは、左のミラー44を経て、画角θcで被写体を撮影する間接撮像手段を構成する。
【0062】
第1のカメラ41Aの光学中心42Aと、第2のカメラ41Bの光学中心42Bとは、ミラー43の反射面に対して対称の位置ではなく、第2のカメラ41Bの光学中心42Bの虚像(仮想光学中心)42B1は、第1のカメラ41Aの光学中心42Aの右下側にある。また、第1のカメラ41Aの光学中心42Aと、第3のカメラ41Cの光学中心42Cとは、ミラー44の反射面に対して対称の位置ではなく、第3のカメラ41Cの光学中心42Cの虚像(仮想光学中心)42C1は、第1のカメラ41Aの光学中心42Aの左下側にある。
即ち、各カメラ41A,41B,41Cの仮想光学中心42A,42B1,42C1は、中心42から半径(距離)Lの円周上のそれぞれ異なる点となっている。
このように構成したことにより、ミラー43,44は完全に中央の第1のカメラ41Aの撮影範囲(画角θa)の外にあり、第1のカメラ41Aにミラー43,44の像が写りこむことはない。
【0063】
また、このように配置することにより、カメラ41A,41B,41Cからある距離以上離れれば、それぞれのカメラ41A,41B,41Cの撮影領域同士が重なる部分を形成することが可能になる。
例えば図4の場合、第1のカメラ41A及び第2のカメラ41Bでは、画角θabだけ重なっており、第1のカメラ41A及び第3のカメラ41Cでは、画角θbcだけ重なっている。
そのため、それぞれのカメラ41A,41B,41Cで撮影した画像同士をつなぐ際に、重なっている部分の画像情報を利用して、つなぎ合わせのための目標点を抽出したり、隣接する画像間の輝度差や色差を補正したりすることにより、つなぎ目の目立たない画像を得ることが可能となる。
【0064】
続いて、光路変更手段に遮光材を設けた場合を次に示す。
本発明の撮像装置のさらに別の実施の形態の概略構成図を図5に示す。
この撮像装置50は、2つのカメラ51A,51Bを備え、その間にミラー53が配置されている。
図中左の第1のカメラ51Aは、画角θaで直接被写体を撮影する直接撮像手段を構成し、図中右の第2のカメラ51Bは、ミラー53を経て、画角θbで被写体を撮影する間接撮像手段を構成する。
【0065】
第1のカメラ51Aの光学中心52Aと、第2のカメラ51Bの光学中心52Bとは、ミラー53の反射面に対して対称の位置ではなく、第2のカメラ51Bの光学中心52Bの虚像(仮想光学中心)52B1は、第1のカメラ51Aの光学中心52Aの右下側にある。
即ち、各カメラ51A,51Bの仮想光学中心52A,52B1は、中心52から半径(距離)Lの円周上のそれぞれ異なる点となっている。
このように構成したことにより、ミラー53は完全に中央の第1のカメラ51Aの撮影範囲(画角θa)の外にあり、第1のカメラ51Aにミラー53の像が写りこむことはない。
【0066】
また、このように配置することにより、カメラ51A,51Bからある距離以上離れれば、それぞれのカメラ51A,51Bの撮影領域同士が重なる部分を形成することが可能になる。
そのため、それぞれのカメラ51A,51Bで撮影した画像同士をつなぐ際に、重なっている部分の画像情報を利用して、つなぎ合わせのための目標点を抽出したり、隣接する画像間の輝度差や色差を補正したりすることにより、つなぎ目の目立たない画像を得ることが可能となる。
【0067】
しかし、図4に示した撮像装置40では、第2のカメラ41Bの撮影範囲が全てミラー43にかかっていたのに対して、本実施の形態の撮像装置50では、第2のカメラ51Bの撮影範囲のうち一部即ち図中右側の画角φの部分がミラー53にかかっていない。
本実施の形態の場合、第2のカメラ51Bの画角は(θb+φ)であるが、このうちミラー53によって反射した画角はθbであり、この画角θbの範囲内にある被写体の像は隣接する第1のカメラ51Aに結像する像とつなぎ合わせることが可能である。
しかし、ミラー53の上側にはみ出た部分の画角φの中にある被写体の像はつなぎ合わせには全く不要な方向にある被写体の像である。この画角φの中に明るい被写体や強い光があると、第2のカメラ51Bが撮影した画像の境界部分に、無関係な方向にある被写体の像が写りこんでしまう上、本来必要なミラー53で反射した画角θbの中の像と混ざり合ってしまい分離することが困難になる。
そのため、隣接する第1のカメラ51Aの画像と画像処理によりつなぎ合わせた後に生成される画像にも残ってしまう。
【0068】
そこで、本実施の形態では、この現象を回避するために、ミラー53の先端部に、不要な光線を遮断するための遮光材として庇54を設けている。
庇54が反射の限りなく少ない黒体であれば、その像は輝度ゼロであるため、画角θbの部分の像と画角φの部分の像との境界部分は、ミラー53により反射した像が徐々に暗くなり、最終的に輝度ゼロになるといった振る舞いの画像として出力される。
そのため、つなぎ合わせの画像処理をする際にその部分を容易に分離することが可能となる。
また、庇54は、第1のカメラ51Aの撮影範囲(画角θa)の外に配置されている。そして、第1のカメラ51Aに庇54の像が写り込んだり、第1のカメラ51Aの有効な画角θaを目減りさせたりしないように、庇54の位置や形状を設定する。
【0069】
なお、図5ではカメラが2個の場合であったが、カメラが3個以上の場合も同様にミラーに庇を設けて撮像装置を構成することができる。
図5の撮像装置50の構成は、図4の撮像装置40の構成の右半分を変形したものとも捉えることができるので、左半分にも同様に庇を設けたミラーとカメラとを配置することにより、図4の構成を変形した撮像装置を構成することができる。
【0070】
図1〜図5に示した各実施の形態は、カメラが2個又は3個であったが、本発明は、カメラの個数が4個以上の場合にも適用することが可能である。
【0071】
また、本発明は、図1〜図5の各実施の形態のように、複数の撮像手段を平面的に配置した場合に限らず、直接撮像手段の周囲に立体的に間接撮像手段を配置した場合(例えば、前後と左右等)にも適用することが可能である。
【0072】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の撮像装置の一実施の形態の概略構成図である。
【図2】本発明の撮像装置の他の実施の形態の概略構成図である。
【図3】本発明の撮像装置のさらに他の実施の形態の概略構成図である。
【図4】本発明の撮像装置の別の実施の形態の概略構成図である。
【図5】本発明の撮像装置のさらに別の実施の形態の概略構成図である。
【図6】NP点の定義を説明する図である。
【符号の説明】
【0074】
10,20,30,40,50 撮像装置、11A,11B,21A,21B,21C,31A,31B,31C,41A,41B,41C,51A,51B カメラ、12A,12B,22A,22B,22C,32A,32B,32C,42A,42B,42C,52A,52B 光学中心、13,23,24,33,34,43,44,53 ミラー、54 庇、313 NP点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像手段から成る撮像装置であって、
n個(nは2以上の自然数)の撮像手段に対して、(n−1)個の光路変更手段を備え、
n個の撮像手段のうち、1個の撮像手段は、光路変更手段を経ないで直接被写体を撮影し、
他の(n−1)個の撮像手段は、光路変更手段を経る光路で被写体を撮影し、
前記複数の撮像手段の各撮像手段の仮想光学中心が略一致する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記他の(n−1)個の撮像手段の仮想光学中心を、前記1個の撮像手段の光学中心とは異なる点として、前記1個の撮像手段に前記光路変更手段の像が写らないように配置したことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記他の撮像手段に前記光路変更手段を経ないで直接入射する光を抑制するために、前記光路変更手段に遮光材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−279538(P2006−279538A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95589(P2005−95589)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】