説明

撮像装置

【課題】 ノイズおよび白傷の発生を少なくした良好な画像が得られる撮像装置を提供する。
【解決手段】 レンズ2と、レンズ2を通過した光のうち特定の光をカットするフィルタ4と、複数の光電変換素子が縦横の並びに配設されてなる、フィルタ4を通過した光を電気信号に変換する撮像素子3とを具備し、フィルタ4は、偏光性を有する透光樹脂板4aと透光樹脂板4aを挟んで配置された2枚のガラス板4b,4cとからなり、2枚のガラス板4b,4cのうちレンズ2側に位置する一方のガラス板4bが紫外線カット機能を有している撮像装置10である。偏光した光の撮像素子3への入射を低減して画像のノイズを少なくし、撮像素子3および透光樹脂板4aの紫外線の入射による劣化を防いで画像における白傷の発生を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車内に設置するドライブレコーダ用前方カメラ等の撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ドライブレコーダ用前方カメラ等の撮像装置が車内に設置された車両が増えてきている。例えば、ドライブレコーダ用前方カメラは、車両のフロントガラスの上部付近に設置して自車の前方周囲の状況を画像として記録するものであり、自動車交通事故の原因究明に役立てられている。
【0003】
このような撮像装置は、レンズ、および複数の光電変換素子が形成された撮像素子をパッケージに収めたものであり、被写体側からの光をレンズにより集光し、レンズを通過して撮像素子に入射した光を複数の光電変換素子で電気信号に変換するものである。なお、得られた電気信号は別途設置される信号処理手段によって画像信号へと変換され、さらに別途設置される記憶手段に記憶される(例えば特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2007−028430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ドライブレコーダ用前方カメラ等のように車内に設置されて車外を撮像するものであれば、下側からフロントガラスに当たり反射した光もレンズにより集光されてしまうので、得られた画像は、本来の撮像の対象である車外の像に車内の像がノイズとして入りやすく、不鮮明になりやすいという問題点があった。
【0005】
また、上述したドライブレコーダ用前方カメラは、車を運転している時間において連続して撮像し続けるものであるため、通常の撮像装置よりも撮像素子に入射する光の量が多く、さらに、逆光であっても撮像し続けるものであるため、太陽光が撮像素子に入射する量が多いという特徴も有している。このため、ドライブレコーダ用前方カメラは、一般的な撮像装置に比べると入射する紫外線の量が格段に多いものである。
【0006】
一方、CMOSセンサ素子やCCDセンサ素子等の半導体イメージセンサ素子にはSiO2やSiNX等の絶縁層が用いられているが、この絶縁層は紫外線の入射が多くなると欠陥が増大しやすいものであり、絶縁層に欠陥が増大すると、電荷の漏れが多くなって暗電流が増大し、画像に白傷と呼ばれる不具合が発生してしまう。
【0007】
以上のことから、ドライブレコーダ用前方カメラは、通常のカメラよりも紫外線の入射が多いので、絶縁層に欠陥が増大しやすく、白傷を発生させやすいという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、ノイズおよび白傷の発生を少なくした良好な画像が得られる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の撮像装置は、レンズと、該レンズを通過した光のうち特定の光をカットするフィルタと、複数の光電変換素子が縦横の並びに配設されてなる、前記フィルタを通過した光を電気信号に変換する撮像素子とを具備する撮像装置において、前記フィルタは、偏光性を有する透光樹脂板と該透光樹脂板を挟んで配置された2枚のガラス板とからなり、該2枚のガラス板のうち前記レンズ側に位置する一方のガラス板が紫外線カット機能を有していることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の撮像装置は、上記構成において、前記一方のガラス板は、透光性ガラス板の前記レンズ側の主面に紫外線カット膜が形成されたものであることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の撮像装置は、上記構成において、前記2枚のガラス板のいずれかは、赤外線カット機能を有していることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の撮像装置は、上記構成において、前記透光樹脂板は、偏光軸が前記光電変換素子の垂直走査方向と平行であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の撮像装置によれば、レンズと撮像素子との間に、偏光性を有する透光樹脂板とこの透光樹脂板を挟んで配置された2枚のガラス板とからなるフィルタが配置されていることから、レンズの前にあるフロントガラス等で反射した光がレンズを通過したとしても、反射することによって偏光した光を低減することができるので、本来の撮像の対象である車外の像をノイズが少なく鮮明な画像として得ることができる。さらに、この偏光性を有する透光樹脂板を2枚のガラス板で挟んでいるので、薄くした場合等のように可撓性が低いものとなっても偏光性を有する透光樹脂板を安定して固定することができる。加えて、偏光性を有する透光樹脂板は、2枚のガラス板によって両主面からの水分の浸入が防がれるので、耐水性が向上して信頼性が向上する。そして、この2枚のガラス板のうちレンズ側に位置する一方のガラス板が紫外線カット機能を有していることから、透光樹脂板への紫外線の入射をカットすることができるので、透光樹脂板の劣化を防ぐこともできる。このように、本発明の撮像装置によれば、車内に設置されてガラスの外を長時間にわたって撮像し続けるドライブレコーダ用前方カメラ等のような、入射する紫外線の量が格段に多い用途においても、前方に配置されたガラス等で反射した光を低減して画像のノイズを少なくするとともに、画像における白傷の発生を少なくした鮮明で良好な画像を持続的に得ることができる。
【0014】
また、本発明の撮像装置によれば、紫外線カット機能を有する一方のガラス板が、透光性ガラス板のレンズ側の主面に紫外線カット膜が形成されたものであるときには、偏光性を有する透光樹脂板に入射する紫外線が効率よく低減されるので、信頼性をさらに高めることができる。
【0015】
また、本発明の撮像装置によれば、2枚のガラス板のいずれかが赤外線カット機能を有しているときには、屋外での被写体の撮像に当たってよく併用される赤外線カットフィルタを別途準備しなくてもよいので、撮像装置の構成部品を少なくすることができ、撮像装置の小型化等を図ることが可能になる。
【0016】
また、本発明の撮像装置によれば、透光樹脂板の偏光軸が光電変換素子の垂直走査方向と平行であるときには、光電変換素子の水平走査方向に偏光された光をカットすることができるので、撮像の際に前方に配置されたガラスで反射される光の偏光方向がほとんど水平走査方向となる、車のフロントガラス越しに前方を撮像するドライブレコーダ用前方カメラ等のような場合に特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の撮像装置について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の撮像装置の実施の形態の一例を示す、撮像装置の内部および入射する光の経路を説明する断面図である。これらの図に示す撮像装置10は、基本的な構成として、ケース1の内部にレンズ2、撮像素子3、およびフィルタ4が収納されたものとなっている。なお、図1において先端が矢印の直線X,Yは光の経路を示している。
【0019】
本例においては、撮像装置10としてドライブレコーダ用前方カメラの例で説明する。
【0020】
ケース1は、本実施例では、被写体側に配置されレンズ2を保持する鏡筒部1aと、この鏡筒部1aを保持するとともに撮像素子3およびフィルタ4を保持する本体部1bと、撮像素子3等の部品を保護するように本体部1bに取り付けられる背面部1cとから成る。
【0021】
ケース1の鏡筒部1aおよび本体部1bは、例えばポリカーボネイト(PC)やポリフタルアミド(PPA)等の非導電性の樹脂により構成されており、材料として樹脂を用いることにより軽量化を図ったものとなっている。なお通常は、両ケースの熱収縮を合わせる必要があるため、ケース1の鏡筒部1aおよび本体部1bには同一の材料を用いることが好ましい。また、ケース1の鏡筒部1aを雄ねじ、ケース1の本体部1bを雌ねじとし、ケース1の鏡筒部1aがケース1の本体部1bに対して画像のピントが良好な位置でネジ止め固定されたものとなっている。
【0022】
ケース1の鏡筒部1aおよび本体部1bは、例えば射出成形法を用いることにより製作される。また、この方法であればケースの本体部1bの外周に電磁輻射ノイズを遮断する金属部材が埋設された構成とすることも可能である。
【0023】
ケース1の背面部1cは、銅・アルミニウム等の金属性導電材料により形成され、撮像素子3付近に異物が入り込むのを防ぐとともに、背面からの電磁輻射ノイズを良好に遮断する役目を有するものである。
【0024】
レンズ2は、1つのレンズ部材または複数のレンズ部材の群からなり、被写体側からの光を集光する機能を有するものである。ドライブレコーダ用前方カメラとして用いられる場合には、レンズ2は、光を広角度で集光するために被写体側を凸形状としたレンズが用いられ、さらに、レンズ2を通過した光を光線として平行に近づけるために複数のレンズ部材を組み合わせた構成としている。また、レンズ2は、複数のレンズ部材の群からなる場合は、例えば露出する被写体側に配置されるレンズ部材にはガラスレンズを用いて傷が付きにくいものとし、露出しないその他のレンズ部材には樹脂レンズが用いられる。また、ケース1の鏡筒部1aに段差1e,1fが設けられており、レンズ2は、その外周部が被写体側の段差1eと撮像素子3側の段差1fとで挟まれることにより固定されている。
【0025】
撮像素子3は、表面に複数の光電変換素子が縦横の並びに配設されてなる、CCDセンサ素子やCMOSセンサ素子等の半導体イメージセンサ素子が気密封止可能なパッケージに収納されたものであり、レンズ2を通過した光を電気信号に変換する機能を有するものである。気密封止可能なパッケージは、例えば、被写体側に半導体イメージセンサ素子を収納するキャビティが形成されたアルミナを主成分とするセラミック配線基板と、このキャビティを塞ぐようにキャビティの周囲で接着されたガラス等の透光性のリッドとから構成されるものである。また、撮像素子3は、半導体イメージセンサ素子を気密封止しているセラミック配線基板の実装面側に設けられた複数の端子が、半田等の接合材を用いて回路基板6の主面に設けられた電極パッドと接続されることにより、ケース1の本体部1b内に固定されている。
【0026】
また、本発明の撮像装置10では、ケース1の本体部1bの内側で内側に張り出した支持部1dの背面側に埋め込まれるように複数の支持ピン7が固定されており、この複数の支持ピン7に回路基板6が取り付けられている。なお、回路基板6には、撮像素子3以外にも撮像素子3の動作を制御する制御回路素子5等の電子部品が搭載されており、このような電子部品が搭載されることにより、被写体側の光を電気信号に変換して外部へ出力するという機能が撮像装置10に備えられることになる。
【0027】
ところで、本実施例のようなドライブレコーダ用前方カメラの場合は、撮像装置10は車内に設置されて車外の被写体を撮像するものであるため、図1に示す光の経路Xのように、被写体側の光はフロントガラス11越しにレンズ2へと入射することになるが、この際に車内にも光が散乱しており、図1に示す光の経路Yのように、撮像装置10の下側からフロントガラス11に当たって反射してレンズ2へと入射する光も存在している。このため、得られた画像は、本来の撮像の対象である車外の像に車内の散乱光による像がノイズとして入りやすく、不鮮明なものになりやすいという問題点を抱えている。
【0028】
また、ドライブレコーダ用前方カメラの場合は、車を運転している時間において連続して撮像し続けるものであるため、通常の撮像装置よりも撮像素子3に入射する光の量が多く、さらに、逆光であっても撮像し続けるものであるため、撮像素子3に入射する光のうち太陽光の割合が多いという特徴を有している。
【0029】
一方、CMOSセンサ素子やCCDセンサ素子等の半導体イメージセンサ素子は、SiO2やSiNX等の絶縁層が用いられており、この絶縁層は紫外線の入射が多くなると欠陥が増大しやすいという問題を抱えている。絶縁層に欠陥が増大すると、電荷の漏れが多くなって暗電流が増大し、画像に白傷と呼ばれる不具合が発生してしまう。
【0030】
以上のことから、ドライブレコーダ用前方カメラは、通常のカメラよりも紫外線の入射が多いので、絶縁層に欠陥が増大しやすく、白傷を発生させやすいという問題点を抱えている。
【0031】
このために、本発明の撮像装置10では、ケース1の本体部1bの内側に設けられた支持部1dの被写体側に、レンズ2を通過した光のうち特定の光をカットするフィルタ4が取り付けられたものとした。
【0032】
図2にフィルタ4の詳細な断面図を示す。フィルタ4は、偏光性を有する透光樹脂板4aとこの透光樹脂板4aを挟んで配置された2枚のガラス板4b,4cとからなり、この2枚のガラス板4b,4cのうちレンズ2側に位置するガラス板4bが紫外線カットガラス板となっている。
【0033】
本発明の撮像装置10によれば、レンズ2と撮像素子3との間に、偏光性を有する透光樹脂板4aとこの透光樹脂板4aを挟んで配置された2枚のガラス板4b,4cとからなるフィルタ4が配置されていることから、レンズ2の前にあるフロントガラス11等で反射した光がレンズを通過したとしても、反射することによって偏光した光を低減することができるので、本来の撮像の対象である車外の被写体の画像を、ノイズが少なく鮮明な画像として得ることができる。さらに、この偏光性を有する透光樹脂板4aを2枚のガラス板4b,4cで挟んでいるので、薄くした場合等のように可撓性が低いものになっても偏光性を有する透光樹脂板4aを安定して固定することができる。加えて、偏光性を有する透光樹脂板4aは、2枚のガラス板4b,4cによって両主面からの水分の浸入が防がれるので、耐水性が向上して信頼性が向上する。そして、この2枚のガラス板4b,4cのうちレンズ2側に位置する一方のガラス板4bが紫外線カット機能を有していることから、透光樹脂板4aへの紫外線の入射をカットすることができるので、透光樹脂板4aの劣化を防ぐこともできる。このように、本発明の撮像装置10によれば、車内に設置されてガラスの外を長時間にわたって撮像し続けるドライブレコーダ用前方カメラ等のような入射する紫外線の量が格段に多い用途においても、前方に配置されたフロントガラス11等で反射した光を低減して画像のノイズを少なくするとともに、画像における白傷の発生を少なくした鮮明で良好な画像を持続的に得ることができる。
【0034】
偏光性を有する透光樹脂板4aは、例えば、染料やヨウ素化合物を添加し延伸することによって異方性を持たせることにより一定の振動方向の光のみを通過させるようにしたポリビニルアルコール樹脂層と、このポリビニルアルコール樹脂層を、延伸状態を保持するようにトリエステルセルロース樹脂層で挟んだ構成のものである。それぞれの樹脂層の厚みは、例えば、ポリビニルアルコール樹脂層は0.01〜0.1mm、トリエステルセルロース樹脂層は0.02〜0.2mmに設定される。
【0035】
なお、延伸方向と平行に構成される通過可能な光の一定の振動方向、すなわち偏光軸は、調整可能なものとしても構わないものであるが、透光樹脂板4aの偏光軸が撮像素子3における光電変換素子の垂直走査方向と平行になるように設定しておけば、撮像素子3における光電変換素子の水平走査方向に偏光された光をカットすることができるので、撮像の際に前方に配置されたフロントガラス11等で反射される光の偏光方向がほとんど水平方向となる、本実施例のドライブレコーダ用前方カメラ等のような車のフロントガラス11越しに前方を撮像する場合に特に好適に用いることができる。
【0036】
ガラス板4b,4cは、例えば、0.1〜0.6mmの厚みに設定された硼珪酸ガラス等の透光性ガラス板であり、その一方のガラス板4bはレンズ2側の主面に紫外線カット膜(図示せず)が形成されたものである。紫外線カット膜は、例えば、透光性ガラス板のレンズ2側の主面に10〜200nmの酸化チタンの層およびシリカの層を交互に8〜13層ずつ積層することにより構成され、400nm以下の波長の光を95%以上低減することができるように設計される。
【0037】
特に、このように、紫外線カット機能を有する一方のガラス板4bが、透光性ガラス板のレンズ2側の主面に紫外線カット膜が形成されたものであるときには、偏光性を有する透光樹脂板4aに入射する紫外線が効率よく低減されるので、信頼性をさらに高めることができる。
【0038】
また、本発明の撮像装置10において、他方のガラス板4cは赤外線カット機能を有したものとしており、人間が認識できない赤外線領域の光をカットして、得られる画像を人間の目に見える画像に近づけるようにしている。赤外線カット機能を有する他方のガラス板4cは、例えば、透光性ガラス板の撮像素子3側の主面に50〜200nmのシリカの層と五酸化ニオブの層とを交互に10〜15層ずつ積層することにより構成される赤外線カット膜(図示せず)を形成したものであり、例えば、650nm以上の波長の光を95%以上低減することができるように設計されたものである。なお、このような赤外線カット膜は、他方のガラス板4cのレンズ2側の主面に形成してもよく、さらに、一方のガラス板4bのどちらか一方の主面に形成してもよい。
【0039】
このように、2枚のガラス板4b,4cのいずれかが赤外線カット機能を有しているときには、屋外での被写体の撮像に当たってよく併用される赤外線カットフィルタを別途準備しなくてもよいので、撮像装置10の構成部品を少なくすることができ、撮像装置10の小型化等を図ることが可能になる。
【0040】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良等が可能である。
【0041】
例えば、前述の本発明の撮像装置10は、ドライブレコーダ用前方カメラの一例で説明しているが、例えば、家屋内に設置される室外監視用カメラに用いることも有効である。
【0042】
また、本発明の撮像装置10によれば、ケース1の鏡筒部1aと本体部1bとを予め別々に準備しておいてから互いに固定するようにしているが、ケース1の鏡筒部1aおよび本体部1bを予め一体物として作製しても良い。この場合には、レンズ2とフィルタ4との距離を調整することは困難になるが、支持ピン7を3本以上取り付けておいて、3本の支持ピン7のうち少なくとも1本の支持ピン7と回路基板6との取り付け位置を自在に調整可能にしておけば、撮像装置10のピントを容易に微調整することができる。
【実施例】
【0043】
本発明の撮像装置10のサンプルを以下の仕様で作製した。
【0044】
撮像素子3は、半導体素子の表面に、ピクセルサイズ6μmの光電変換素子が、水平走査方向に752画素、垂直走査方向に480画素の配列で36万画素形成された構成のCMOSセンサ素子とした。
【0045】
フィルタ4は、透光樹脂板4aの両主面にアクリル系樹脂を用いてガラス板4b,4cを貼り付けた構成とした。透光樹脂板4aは、ポリビニルアルコール樹脂層の厚みが0.05mmで、これを挟むトリエステルセルロース樹脂層の厚みが0.08mmの構成とした。透光樹脂板4aを挟む2枚のガラス板4b,4cは、厚みが0.25mmの硼珪酸ガラスとした。また、ガラス板4bは、透光性ガラス板のレンズ2側の主面に、順に、シリカ(光学的厚みが195nm)を1層形成し、酸化チタン(光学的厚みが39nm)を1層形成し、シリカ(光学的厚みが130nm)および酸化チタン(光学的厚みが130nm)を交互に9層ずつ形成し、シリカ(光学的厚みが130nm)を1層形成し、酸化チタン(光学的厚みが39nm)を1層形成し、シリカ(光学的厚みが195nm)を1層形成することにより、400nm以下の波長の光を95%以上低減する紫外線カット膜を形成したものとした
図3は紫外線カット機能を有する一方のガラス板4bの波長スペクトルの例を示す線図であり、横軸は波長(単位:nm)を示し、縦軸は各波長における光の透過率の相対比率を示す。図中の特性曲線は本発明の撮像装置10のサンプルに用いた紫外線カット機能を有するガラス板4bの波長スペクトルを示す。
【0046】
また、比較例のサンプルとして、ガラス板4bが紫外線カット機能を有しないフィルタ4を用いた撮像装置を準備し、これらのサンプルに、キセノンランプ式耐光試験機で紫外線を1000時間照射した。試験条件は、照射照度を300〜400nmで150W/mm2とし、湿度を50%RH±5%RHとし、サンプルの回転速度を毎分12回とした。
【0047】
以上の試験を行なった結果、本発明の撮像装置10のサンプルについては紫外線照射1000時間後でも画像に白傷は発生しなかったが、比較例のサンプルについては白傷の発生が確認された。
【0048】
すなわち、本発明の撮像装置10のサンプルでは、偏光性を有する透光樹脂板4aとこの透光樹脂板4aを挟んで配置された2枚のガラス板4b,4cとからなり、この2枚のガラス板4b,4cのうちレンズ2側に位置する一方のガラス板4bが紫外線カット機能を有するものとしたフィルタ4を用いたことから、透光樹脂板4aへの紫外線の入射をカットすることもできるので、透光樹脂板4aの劣化を防ぐこともできるので、本発明の撮像装置10によれば、ノイズと白傷の発生が少なく鮮明で良好な画像を持続的に得られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の撮像装置の実施の形態の一例を示す、撮像装置の内部および入射する光の経路を説明する断面図である。
【図2】フィルタの詳細な断面図である。
【図3】紫外線カット機能を有する一方のガラス板の波長スペクトルの例を示す線図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・ケース
1a・・・鏡筒部
1b・・・本体部
1c・・・背面部
2・・・レンズ
3・・・撮像素子
4・・・フィルタ
4a・・・偏光性を有する透光樹脂板
4b,4c・・・ガラス板
5・・・制御回路素子
6・・・回路基板
7・・・支持ピン
10・・・撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、
該レンズを通過した光のうち特定の光をカットするフィルタと、
複数の光電変換素子が縦横の並びに配設されてなる、前記フィルタを通過した光を電気信号に変換する撮像素子と
を具備する撮像装置において、
前記フィルタは、偏光性を有する透光樹脂板と該透光樹脂板を挟んで配置された2枚のガラス板とからなり、該2枚のガラス板のうち前記レンズ側に位置する一方のガラス板が紫外線カット機能を有していることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記一方のガラス板は、透光性ガラス板の前記レンズ側の主面に紫外線カット膜が形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記2枚のガラス板のいずれかは、赤外線カット機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記透光樹脂板は、偏光軸が前記光電変換素子の垂直走査方向と平行であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−77339(P2009−77339A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246642(P2007−246642)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】