説明

撮像装置

【課題】間引き読み出しによるフォーカス制御の高速化を享受しつつ、
【解決手段】光学系の変調伝達関数に応じた補正データを補正データ保持部に予め保持させておく。間引き読み出しによる間引き画像に基づきフォーカスピーク位置(第1合焦レンズ位置)を求めた後、全画素読み出しによる全画素画像を用いて被写体像の空間周波数成分を解析することで、被写体像を代表する対象空間周波数(F)を決定する。対象空間周波数に対応する補正量を補正データから抽出し、該補正量だけフォーカスレンズ位置をフォーカスピーク位置から補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置において、設計上、低周波から高周波までの全域に対してレンズの球面収差を良好に除去することは難しいことが多く、低コストレンズの採用や光学ズームの高倍率化は、その除去の困難性に拍車をかける。
【0003】
一方、撮像素子の高解像度化が進んでいる。撮像素子の受光画素からの画像信号を全て読み出すことで、即ち全画素読み出しモードで撮像素子から画像信号を読み出すことで、高解像度の被写体画像を取得することができる。但し、全画素読み出しモードにおける読み出しは、相応の時間を要すると共に電力消費も大きい。そこで、オートフォーカスの実行時には、画像信号を間引いて読み出す間引き読み出しモードが利用されることも多い。
【0004】
間引き読み出しによって得た間引き画像には、比較的高域の空間周波数成分が欠落しているため、間引き画像に基づくオートフォーカス制御は、比較的低域の空間周波数成分に基づいて成されることになる。つまり、比較的低域の像へのピント合わせを最適化するフォーカスレンズ位置が合焦レンズ位置として検出される。この検出後、ユーザのシャッタ操作に従い全画素読み出しモードにて目標画像を撮影することができるが、この撮影を、間引き画像に基づく合焦レンズ位置にフォーカスレンズ位置を配置した状態で行うと、比較的高域の空間周波数成分が目標画像において良好に再現されないことがある。比較的低域の像にとって最適なフォーカスレンズ位置と、比較的高域の像にとって最適なフォーカスレンズ位置は、上述の球面収差の影響から、互いに異なりうるからである(尚、この内容については、後に詳説される)。
【0005】
例えば、撮像素子上で高域の空間周波数成分を有する遠方の草木などを被写体に含めた場合、間引き画像には該高域の空間周波数成分が欠落しているため、間引き画像に基づくオートフォーカス制御では、草木の高域周波数成分を無視した合焦レンズ位置が検出される。この後、合焦レンズ位置にフォーカスレンズを配置した状態で、目標画像を取得するべく全画素読み出しを行っても、合焦レンズ位置が高域の空間周波数成分にとって最適でないため、得られた目標画像では、草木の微細なエッジが再現できないことがある。
【0006】
尚、ユーザ指示に基づくフォーカスレンズ位置に関する情報を記憶しておき、記憶情報を後に利用できるようにしておくことで、ユーザが所望するフォーカス位置を容易に再現しようとする方法も提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−48341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
間引き読み出しの利用によりオートフォーカスの高速化及び低消費電力化が得られた場合においても、被写体の空間周波数成分の良好なる再現が求められることは言うまでも無い。
【0009】
そこで本発明は、フォーカス制御の高速化と適正化の共存に寄与する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る撮像装置は、フォーカスレンズを含む光学系と、前記光学系を介して入射した被写体像を光電変換して画像信号を生成する複数の受光画素から成る撮像素子と、前記画像信号を間引き読み出しする読出制御部と、前記間引き読み出しによって得られた間引き画像に基づき、前記被写体像を前記撮像素子上で結像させるための前記フォーカスレンズの位置を第1合焦レンズ位置として特定する合焦レンズ位置特定部を有するフォーカス制御部と、前記フォーカス制御部の制御の下、前記フォーカスレンズを駆動するレンズ駆動部と、を備えた撮像装置において、前記フォーカス制御部は、前記被写体像の空間周波数成分に基づき前記第1合焦レンズ位置を補正し、補正後の第1合焦レンズ位置である第2合焦レンズ位置に前記フォーカスレンズを移動させることを特徴とする。
【0011】
間引き読み出しの利用によりフォーカス制御の高速化及び低消費電力化を図ることができる。この際、間引き画像に基づくフォーカスレンズ位置(第1合焦レンズ位置)を被写体像の空間周波数成分に基づき補正することで、実際の被写体像の空間周波数成分に適応したフォーカス制御(即ち例えば、実際の被写体像の空間周波数成分にとって最適なピント合わせ)を実現することができる
【0012】
具体的は例えば、前記読出制御部は、前記複数の受光画素の全てから前記画像信号を読み出す全画素読み出しと、前記間引き読み出しと、を切り替えて実行し、当該撮像装置は、前記全画素読み出しによって得られた全画素画像に基づき前記被写体像の空間周波数成分を求める空間周波数解析部を更に有していてもよい。
【0013】
全画素画像を利用することで被写体像の空間周波数成分を正確に求めることができる。
【0014】
また例えば、当該撮像装置は、前記光学系の特性に応じた補正データを保持する補正データ保持部を更に備え、前記フォーカス制御部は、前記被写体像の空間周波数成分と前記補正データとに基づき、前記第1合焦レンズ位置に対する補正量を決定してもよい。
【0015】
より具体的には例えば、前記補正データは、前記フォーカスレンズの位置と前記光学系の変調伝達関数との関係に基づき設定されてもよい。
【0016】
このような補正データを利用することにより、光学系の特性に応じた適切な補正量を決定することができる。
【0017】
また例えば、前記光学系は、前記撮像素子による撮影画角を調整するためのズームレンズを更に含み、前記補正量は、前記ズームレンズの位置又は前記第1合焦レンズ位置に依存しうる。
【0018】
また例えば、当該撮像装置は、複数の撮影モードの中から対象撮影モードを選択する撮影モード選択部を更に備え、前記補正量は、前記対象撮影モードに依存しうる。
【0019】
これらにより、ズームレンズの位置、第1合焦レンズ位置又は対象撮影モードに応じた適切な補正量を決定することができる。
【0020】
また例えば、前記合焦レンズ位置特定部は、前記間引き画像に対して所定の評価処理を施すことで得た評価値に基づき前記第1合焦レンズ位置を求め、前記空間周波数解析部は、前記全画素画像に対して前記評価処理を施すことで得た評価値に基づき前記被写体像の空間周波数成分を求めてもよい。
【0021】
また例えば、当該撮像装置は、前記全画素画像の一部である部分領域を指定する操作を受ける操作部を更に備え、前記フォーカス制御部は、前記部分画領域の画像信号の空間周波数成分を前記被写体像の空間周波数成分として用いて前記第1合焦レンズ位置を補正してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フォーカス制御の高速化と適正化の共存に寄与する撮像装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概略全体ブロック図である。
【図2】図1の撮像部の内部構成図である。
【図3】全画素読み出しによって得られる全画素画像と、間引き読み出しによって得られる間引き画像と、を示す図である。
【図4】p枚のAF評価画像を示す図(a)と、1枚のAF評価画像が複数の小領域に分割される様子を示す図(b)と、AF評価画像内にAF評価領域が設定される様子を示す図(c)である。
【図5】本発明の実施形態に係る高域評価部の内部ブロック図である。
【図6】フォーカスレンズ位置とAF評価値との関係を示す図である。
【図7】MTF(modulation transfer function)のフォーカスレンズ位置依存性を示す図である。
【図8】或る1つの空間周波数におけるMTF値とフォーカスレンズ位置との関係を示す図である。
【図9】様々な空間周波数におけるMTF値とフォーカスレンズ位置との関係を示す図である。
【図10】図1の補正データ保持部に保持される補正データを示す図である。
【図11】本発明の第1実施例に係る撮像装置の動作フローチャートである。
【図12】本発明の第1実施例に係る全画素画像を示す図である。
【図13】図12の全画素画像が複数の小領域に分割される様子を示す図である。
【図14】小領域ごとに領域評価値及び推定空間周波数が対応付けられる様子を示す図である。
【図15】或る1つの小領域における、領域評価値及び推定空間周波数間の関係を示す図である。
【図16】空間方向における推定空間周波数の分布を示す図である。
【図17】本発明の第2実施例に係る補正データを示す図である。
【図18】本発明の第3実施例に係る補正データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、物理量、状態量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって該記号又は符号に対応する情報、物理量、状態量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置1の概略全体ブロック図である。撮像装置1は、静止画像及び動画像を撮影及び記録可能なデジタルビデオカメラである。但し、撮像装置1は、静止画像のみを撮影及び記録可能なデジタルスチルカメラであっても良い。撮像装置1は、携帯電話機などの携帯端末に搭載されるものであっても良い。
【0026】
撮像装置1は、撮像部11と、AFE(Analog Front End)12と、主制御部13と、内部メモリ14と、表示画面(表示部)15と、記録媒体16と、操作部17と、読み出し制御部18と、撮影モード選択部19と、フォーカスピーク解析部20と、補正データ保持部21と、空間周波数解析部22と、フォーカス制御部23と、を備えている。図1では、フォーカス制御部23内にフォーカスピーク解析部20が設けられているが、フォーカスピーク解析部20は、フォーカス制御部23の外に設けられていても良い。尚、本明細書において、表示とは表示画面15における表示を指す。
【0027】
図2は、撮像部11の内部構成図である。撮像部11は、ズームレンズ30及びフォーカスレンズ31を含む複数枚のレンズから成る光学系35と、絞り32と、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどから成る撮像素子(固体撮像素子)33と、光学系35や絞り32を駆動制御するためのドライバ34と、を有している。撮像素子33は、光学系35及び絞り32を介して入射した撮影領域内の被写体の光学像を光電変換し、該光電変換により得られた電気信号である画像信号を出力する。撮影領域とは、撮像装置1の撮影領域(視野)を指す。AFE12は、撮像部11の出力信号である撮像素子33の出力信号のデジタル化及び増幅を行ってデジタル化及び増幅後の撮像素子33の出力信号を出力する。
【0028】
ドライバ34は、レンズ駆動部としての機能を備え、主制御部13からのズームレンズ駆動制御信号に従う位置にズームレンズ30を移動させると共に、主制御部13からのフォーカスレンズ駆動制御信号に従う位置にフォーカスレンズ31を移動させる。フォーカス制御部23にてフォーカスレンズ駆動制御信号を生成することができる。更に、ドライバ34は、主制御部13からの絞り駆動制御信号に従って絞り32の開度を調整する。以下、光学系35内におけるズームレンズ30の位置及びフォーカスレンズ31の位置を、夫々、ズームレンズ位置及びフォーカスレンズ位置とも呼ぶ。ズームレンズ位置及びフォーカスレンズ位置を検出する位置センサ(不図示)を撮像部11に設けておき、位置センサの検出結果を主制御部13に伝達するようにしてもよい。
【0029】
主制御部13は、AFE12の出力信号に対して必要な信号処理を施す。また、主制御部13は、撮像装置1内の各部位の動作を統括的に制御する。内部メモリ14は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等にて形成され、撮像装置1内で生成された各種信号(データ)を一時的に記憶する。表示画面15は、液晶ディスプレイパネル等から成り、主制御部13による制御の下、撮影画像や記録媒体16に記録されている画像などを表示する。記録媒体16は、カード状半導体メモリや磁気ディスク等の不揮発性メモリであり、主制御部13による制御の下、撮影画像等を記録する。撮影画像とは、撮像素子33の出力信号に基づく画像である。
【0030】
操作部17は、複数のボタンを備え、ユーザからの各種操作を受け付ける。タッチパネルを用いて操作部17を形成してもよい。操作部17に対するユーザの操作内容は、主制御部13に伝達され、主制御部13の制御の下、撮像装置1内の各部位は操作内容に応じた動作を行う。
【0031】
撮像素子33の出力信号は、読出制御部18による読出制御の下で撮像素子33から読み出され、AFE12を介して主制御部13に送出される。撮像素子33は、光学系35及び絞り32を介して入射した被写体像(被写体の光学像)の光電変換を行う複数の受光画素を備え、各受光画素は、自身に入射した光の強度に応じた信号値を有する受光画素信号を光電変換によって生成する。
【0032】
撮像素子33から受光画素信号を読み出すモードとして、撮像素子33の有効画素領域内に位置する全ての受光画素からの受光画素信号を個別に読み出す全画素読み出しモードと、幾つかの受光画素信号を間引いて読み出す間引き読み出しモードと、がある。全画素読み出しモードにおける読み出し及び間引き読み出しモードにおける読み出しを、夫々、全画素読み出し及び間引き読み出しとも言う。読み出し制御部18は、全画素読み出し及び間引き読み出しを切り替え実行することができる。
【0033】
全画素読み出しモードにて撮像素子33から受光画素信号を読み出す場合、撮像素子33の有効画素領域内に位置する全ての受光画素からの受光画素信号が個別にAFE12を介して主制御部13に与えられる。間引き読み出しモードにて撮像素子33から受光画素信号を読み出す場合、幾つかの受光画素信号が間引かれる。即ち、撮像素子33の有効画素領域内の全受光画素の内、一部の受光画素についての受光画素信号のみが撮像素子33からAFE12を介して主制御部13に与えられる。尚、以下では、説明の簡略化上、特に必要の無い限りAFE12の存在を無視する。
【0034】
従って例えば、撮像素子33の有効画素領域が(X×Y)個の受光画素から成る場合、全画素読み出しを用いれば、1フレーム当たり(X×Y)個の受光画素信号が主制御部13に与えられる一方、間引き読み出しを用いれば、1フレーム当たり(X’×Y’)個の受光画素信号が主制御部13に与えられる。X、Y、X’及びY’は2以上の整数であり、X>X’且つY>Y’である。全画素読み出しを用いて得た(X×Y)個の受光画素信号から成る二次元画像を、全画素画像と呼ぶ(図3(a)参照)。間引き読み出しを用いて得た(X’×Y’)個の受光画素信号から成る二次元画像を、間引き画像と呼ぶ(図3(b)参照)。全画素画像は、(X×Y)個の受光画素信号に基づく信号を有する(X×Y)個の画素から成り、間引き画像は、(X’×Y’)個の受光画素信号に基づく信号を有する(X’×Y’)個の画素から成る。例えば、間引き読み出しモードにおいて、4つの受光画素信号の内の3つを間引く場合、X’=X/2且つY’=Y/2である。共通の撮影条件下において、間引き画像の解像度は全画素画像のそれよりも低いが、間引き画像及び全画素画像の画角は同じである。
【0035】
全画素画像も間引き画像も撮像素子33の出力信号に基づく撮影画像の一種である。撮影画像を表す信号を画像信号と呼ぶ。受光画素信号も、画像信号の一種である。
【0036】
撮影モード選択部19は、予め設定された複数の撮影モードの中から1つの撮影モードを対象撮影モードとして選択する。撮影モード選択部19は、全画素読みだし又は間引き読み出しによって得られた画像信号に基づき対象撮影モードの選択を行うことができる。この場合、撮影モード選択部19は、任意の撮影画像に対してシーン判定処理を実行することで撮像装置1における撮影シーンを判定し、判定した撮影シーンに適した撮影モードを対象撮影モードとして選択することができる。任意の撮影画像に対するシーン判定処理は、当該撮影画像からの画像特徴量の抽出、当該撮影画像の被写体の種類の検出、当該撮影画像に現れる各被写体の被写体距離、当該撮影画像の色相の分析、当該撮影画像の撮影時における光源状態の推定等を用いて実行され、その判定に公知の任意の方法(例えば、特開2008−11289号公報又は特開2009−71666号公報に記載の方法)を用いることができる。或る被写体の被写体距離とは、当該被写体と撮像装置1との間の、実空間上における距離を指す。
【0037】
撮像装置1は、対象撮影モードに規定された撮影条件にて任意の撮影画像を取得することができる。撮影条件には、撮影画像の取得時におけるシャッタスピード(即ち、撮影画像の画像信号を撮像素子33から得るための、撮像素子33の露光期間の長さ)、撮影画像の取得時における絞り値、撮影画像の取得時におけるISO感度(即ち、AFE12における信号増幅の増幅度)、撮影画像の画像信号に対して行われるべき画像処理の内容などが含まれる。各々の撮影モードは撮影条件を規定する。撮影モード選択部19に予め設定された複数の撮影モードには、互いに撮影条件が異なる2以上の撮影モードが含まれ、例えば、人物の撮影に適したポートレートモード、風景の撮影に適した風景モード、花の撮影に適した花モード、動物の撮影に適した動物モード、夜景の撮影に適した夜景モードなどが含まれうる。
【0038】
フォーカスピーク解析部20は、p枚の撮影画像であるp枚のAF評価画像に基づき、被写体像を撮像素子33上で結像させるためのフォーカスレンズ位置をフォーカスピーク位置(第1合焦レンズ位置)として特定する。pは2以上の整数である。フォーカスピーク位置を求める際、撮像装置1は、ドライバ34を利用して、フォーカスレンズ31の可動範囲内でフォーカスレンズ位置を光軸方向に沿って所定量ずつ移動させながら、順次、第1〜第pのAF評価画像を撮影する(図4(a))。フォーカスピーク解析部20において、図4(b)に示す如く、各々のAF評価画像の全体画像領域が複数の小領域に分割される。図4(b)では、1枚のAF評価画像に設定される小領域の個数が(4×4)になっているが、その個数は任意である。
【0039】
撮像装置1内に(例えばフォーカスピーク解析部20内に)、図5に示す高域評価部60を設けておくことができる。高域評価部60は、抽出部61、HPF(ハイパスフィルタ)62及び積算部63を備える。高域評価部60では、AF評価画像ごとに且つ小領域ごとに領域評価値を算出する。
【0040】
抽出部61には、AF評価画像の画像信号が入力される。抽出部61は、入力された画像信号の中から輝度信号を抽出する。HPF62は、抽出部61によって抽出された輝度信号中から高周波成分を抽出する。HPF62にて抽出される高周波成分は、比較的高い周波数を有する特定の空間周波数成分である。特定の空間周波数成分は、所定範囲内の周波数を有する空間周波数成分であるとも言え、所定周波数以上の周波数を有する空間周波数成分であるとも言える。例えば、HPF62を所定のフィルタサイズを有するラプラシアンフィルタにて形成し、そのラプラシアンフィルタをAF評価画像の各画素に作用させる空間フィルタリングを行う。そうすると、HPF62からは、そのラプラシアンフィルタのフィルタ特性に応じた出力値が順次得られる。積算部63は、HPF62によって抽出された高周波成分の大きさ(即ち、HPF62の出力値の絶対値)を積算する。1枚のAF評価画像に対し、この積算は小領域ごとに行われ、或る小領域内における高周波成分の大きさの積算値を、その小領域の領域評価値とする。高域評価部60は、小領域ごとに領域評価値を求める演算処理をAF評価画像ごとに行う。
【0041】
フォーカスピーク解析部20は、1枚のAF評価画像に対して求められた複数の領域評価値の内、AF評価領域に属する小領域の領域評価値を抽出し、抽出した領域評価値を平均化又は加重平均化することでAF評価値を求める。AF評価領域は、AF評価画像の全体であっても良いし、図4(c)に示す如くAF評価画像の一部であっても良い。領域評価値及びAF評価値を求める処理をAF評価処理と呼ぶ。フォーカスピーク解析部20は、AF評価処理をAF評価画像ごとに行い、これによって第1〜第pのAF評価画像に対応する第1〜第pのAF評価値を求める。第1〜第pのAF評価画像の撮影時におけるフォーカスレンズ位置を横軸にとって、フォーカスレンズ位置とAF評価値との関係をグラフ化すると図6が得られる。フォーカスピーク解析部20は、第1〜第pのAF評価値の内、最大のAF評価値を特定し、最大のAF評価値に対応するフォーカスレンズ位置をフォーカスピーク位置として特定する(即ち、AF評価値を最大化させるフォーカスレンズ位置をフォーカスピーク位置として特定する)。
【0042】
補正データ保持部21は、予め設定された補正データを保持する。補正データを、実験を介して求めることができる或いは光学系35の設計値から求めることができる。図7〜図9を参照し、実験を介して補正データを求める方法を説明する。
【0043】
フォーカスレンズ31は、光学系35内に設定された至近端から無限遠端までの可動範囲内で移動可能である。フォーカスレンズ31の可動範囲内に、互いに異なる複数の位置FLP[1]〜FLP[m]を設定する(mは2以上の整数)。ここでは、変数iが小さいほど位置FLP[i]が至近端に近く、変数iが大きいほど位置FLP[i]が無限遠端に近いものとする。撮像装置1の撮影領域内に、空間周波数f〜fの成分を含む基本パターンを配置し(nは2以上の整数)、フォーカスレンズ位置を位置FLP[1]から、FLP[2]、FLP[3]、・・・へと次々と変化させながら、変化のたびに、撮像装置1に全画素読み出しモードにて全画素画像を取得させる。そして、全画素画像の画像信号を解析することにより撮像素子33の変調伝達関数(modulation transfer function;以下、MTFともいう)を求める。実空間上における基本パターンのコントラストは、f〜f間で互いに同じであり、それを1にて正規化する。フォーカスレンズ位置を位置FLP[i]に配置したときに求められたMTFを、特にMTF[i]にて表す。fは、撮像素子33のナイキスト周波数であり、任意の整数iに対して“f<fi+1”が成立する。
【0044】
任意の空間周波数fに注目した場合(jは整数)、全画素画像にて観測されるコントラストは、フォーカスレンズ位置に依存する(図7参照)。任意の空間周波数fに関し、全画素画像にて観測されるコントラストのフォーカスレンズ位置依存性を、図8に示す。全画素画像にて観測されるコントラストは、変調伝達関数がとる値に相当するため、それをMTF値とも呼ぶ。
【0045】
更に、全画素画像にて観測されるコントラストのフォーカスレンズ位置依存性の内、空間周波数fについてのそれを、記号310[j]にて表す。図9に、フォーカスレンズ位置依存性310[1]〜310[n]を1つのグラフにまとめて示す。任意の空間周波数fに関し、MTF値は、フォーカスレンズ位置が或る位置(以下、理想合焦位置と呼ぶ)と一致する場合に最大となり、フォーカスレンズ位置が理想合焦位置からずれるにつれて減少する。但し、フォーカスレンズ位置が理想合焦位置からずれることによるMTF値の減少は、空間周波数fが高いほど急峻である。空間周波数fについての理想合焦位置を記号I[j]にて表す。
【0046】
変数i及びjが互いに異なる整数である場合、理想合焦位置I[i]及びI[j]は互いに異なりうる。特に低コストレンズを光学系35に採用した場合、設計上、低周波から高周波までの全域に対してレンズの球面収差を良好に除去することが困難であり、理想合焦位置は空間周波数に依存して変化するようになる。本実施形態では、理想合焦位置I[1]〜I[n]が互いに異なっているものとする。更に、任意の整数iに対して、理想合焦位置I[i]は理想合焦位置I[i+1]よりも至近端に近いものとする(但し、光学系35のレンズによっては、理想合焦位置I[i]は理想合焦位置I[i+1]よりも無限遠端に近い場合もある)。
【0047】
理想合焦位置I[1]及びI[j]間の差を記号dにて表す。図10は、補正データ保持部21に保持される補正データを表にして示したものである。補正データは、補正量d〜dを含み、補正量dは空間周波数fに対応付けられている。理想合焦位置I[1]及びI[1]間の差は当然ゼロであるため、補正量dはゼロである。補正データは、光学系35の特性に依存するデータであり、上述の如く、フォーカスレンズ位置と光学系35の変調伝達関数との関係に基づき設定される。
【0048】
尚、上述の説明では、空間周波数f〜fの成分を含む基本パターンを用いて、依存性310[1]〜310[n]の全てを求めるようにしているが、空間周波数fの成分のみを含む第1基本パターン、空間周波数fの成分のみを含む第2基本パターン、・・・、空間周波数fの成分のみを含む第n基本パターンを個別に用いることで、依存性310[1]〜310[n]を個別に求めるようにしてもよい。
【0049】
例えば、空間周波数f及びfの成分を含む被写体を間引き読み出しを用いて撮影した場合、間引き画像の画像信号には空間周波数fの成分が欠落している。従って、オートフォーカス制御の高速化等を狙って、フォーカスピーク解析部20が間引き画像の画像信号に基づきフォーカスピーク位置を求めた場合、位置I[1]がフォーカスピーク位置として求められることになる。このフォーカスピーク位置にフォーカスレンズ31を配置した状態で目標画像を取得するべく全画素読み出しを行うと、目標画像としての全画素画像での空間周波数fの成分は随分と小さくなる。位置I[1]は、空間周波数fのコントラスト再現にとって最適ではないからである(図9参照)。そこで、間引き画像に基づき位置I[1]がフォーカスピーク位置として求められた後、図1のフォーカス制御部23は、被写体像の空間周波数fの成分に対応する補正量dを補正データ保持部21から読み出し、フォーカスピーク位置を補正量dだけ無限遠端方向に移動させた位置にフォーカスレンズ31を移動させる。この移動後、目標画像としての全画素画像を撮影するようにすれば、高域まで高い再現性を有する目標画像を取得することができる。低域側の空間周波数fの成分に関しては、フォーカスレンズ位置の変化に伴うMTF値の変化が緩やかであるため(図9参照)、フォーカスピーク位置を補正量dだけ無限遠端方向に移動させたとしても高い再現性を維持できる。補正量の決定に利用すべく、図1の空間周波数解析部22は、被写体像が有する空間周波数成分を解析する(詳細は後述)。
【0050】
以下、上述の構成を基本とする撮像装置1の動作等の更なる具体例を、第1〜第4実施例として説明する。矛盾なき限り、第1〜第4実施例の内、或る実施例に記載した事項を他の実施例に適用することもできる。
【0051】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。図11は、第1実施例に係る撮像装置1の動作手順を表すフローチャートである。図11に沿って、撮像装置1の動作手順を説明する。
【0052】
撮像装置1に電源が投入されることによって撮像装置1が起動すると、まずステップS11において、読出制御部18は受光画素信号の読み出しモードを間引き読み出しモードに設定する。その後、フォーカス制御部23は、間引き画像を利用したコンティニュアスAF制御を実行開始する。コンティニュアスAF制御は、ステップS12及びS13の処理(更にはステップS14〜S20及びS23の処理も含みうる)を繰り返すことで実現され、後述のシャッタ操作(ステップS21参照)が成されるまで継続実行される。間引き画像を利用したコンティニュアスAF制御では、所定のフレーム周期にて順次撮影される間引き画像に基づき、フォーカスピーク解析部20が間引き画像のAF評価値を順次算出し、AF評価値が最大化されるように所謂山登り法などを用いて、フォーカス制御部23がフォーカスレンズ位置を制御する。
【0053】
即ち、ステップS12において、フォーカスピーク解析部20が、順次撮影される間引き画像をAF評価画像として捉えた上で、AF評価値を最大化させるフォーカスレンズ位置をフォーカスピーク位置として求める。続くステップS13において、フォーカス制御部23が、ドライバ34を用いてフォーカスピーク位置にフォーカスレンズ31を移動させる。フォーカスピーク位置は刻々と変化しうる。従って、コンティニュアスAF制御では、フォーカスピーク位置の変化に伴って、フォーカス制御部23が、継続的にフォーカスレンズ位置をフォーカスピーク位置に追従させる。
【0054】
順次撮影される間引き画像は、スルー画像として表示画面15に表示される。間引き読み出しにおける間引き量は、例えば、受光画素信号の読み出し速度、スルー画像に必要な画質、コンティニュアスAF制御の特性などを考慮して設定される。間引き画像には、比較的低域の空間周波数成分(少なくとも空間周波数fの成分を含む)は残存しているが、比較的高域の空間周波数成分(少なくとも空間周波数fを含む)は欠落している。間引き画像をAF評価画像として用いたAF評価処理において、少なくとも空間周波数fの成分がAF評価値に反映されるように、少なくとも空間周波数fをHPF62(図5参照)の通過帯域に含めておくべきである。
【0055】
ステップS13にて移動せしめられたフォーカスレンズ31の位置は、後述のステップS19又はS23にて補正されうる。この補正をレンズ位置補正と呼ぶ。補正量とも呼ばれる、理想合焦位置I[1]及びI[j]間の差dは、ズームレンズ30がテレ端側に位置していた方が小さくなるため、ズームレンズ位置によってはレンズ位置補正が不要になる場合もある。ステップS13に続くステップS14では、フォーカス制御部23が、現在のズームレンズ位置に基づきレンズ位置補正が必要であるか否かを判断する。ズームレンズ30は、撮像素子33の撮影画角(即ち撮影画像の画角)を調整するためのレンズであり、テレ端からワイド端までの可動範囲内において移動可能である。ズームレンズ位置がテレ端に近いほど撮影画角は小さくなり(従って光学ズーム倍率が大きくなり)、ズームレンズ位置がワイド端に近いほど撮影画角は大きくなる(従って光学ズーム倍率が小さくなる)。フォーカス制御部23は、例えば、ズームレンズ位置がズームレンズ30の可動範囲内の所定位置よりもテレ端に近ければレンズ位置補正が不要であると判断し、そうでなければレンズ位置補正が必要であると判断する。
【0056】
ステップS14において、レンズ位置補正が不要と判断した場合には、後述のステップS15〜S20の処理を行うことなくステップS14からステップS21へ直接移行する。一方、ステップS14において、レンズ位置補正が必要と判断した場合には、ステップS14からステップS15への遷移が発生する。撮像装置1の起動後、図1の撮影モード選択部19は、間引き画像の画像信号に基づき対象撮影モードの選択を行っている。尚、ユーザが操作部17に対して所定操作を行うことで対象撮影モードを指定することもできる。
【0057】
ステップS15において、フォーカス制御部23は、選択又は指定された対象撮影モードが特定の撮影モードであるか否かを判断する。対象撮影モードが特定の撮影モードでない場合にはステップS15からステップS16への遷移が発生してステップS16〜S21の処理が順次実行される。特定の撮影モードの意義、及び、対象撮影モードが特定の撮影モードである場合の処理内容については後述する。
【0058】
ステップS16において、読出制御部18は、受光画素信号の読み出しモードを全画素読み出しモードに設定し、その設定後の撮像素子33の出力信号から全画素画像が取得される。図12に、ここで取得される全画素画像の例である全画素画像330を示す。ステップS16に続くステップS17において、空間周波数解析部22は、全画素画像330に基づき被写体像が有する空間周波数成分(全画素画像330が有する空間周波数成分)を解析し、これによって被写体像が有する空間周波数成分の分布を算出する。
【0059】
図13を参照して、この分布の算出方法を説明する。図4(b)に示す如くAF評価画像の全体画像領域を複数の小領域に分割したのと同様に、空間周波数解析部22は、図13に示す如く全画素画像330の全体画像領域を複数の小領域に分割する。ここでは、全画素画像330が(4×4)個の小領域に分割されるものとする(勿論、小領域の個数は(4×4)以外でも良い)。そして、全画素画像330における(4×4)個の小領域を記号DR[1,1]〜DR[4,4]にて表す(図14も参照)。
【0060】
空間周波数解析部22は、図5の高域評価部60に対し、全画素画像330の小領域ごとに、小領域内の画像信号を入力することで領域評価値を求める。小領域DR[i,j]に対して求められた領域評価値を記号EV[i,j]にて表す(図14参照)。図6に示す如くAF評価値はフォーカスレンズ位置に依存して変化し、同様に、領域評価値EV[i,j]もフォーカスレンズ位置に依存して変化する。但し、全画素画像330はフォーカスレンズ位置をフォーカスピーク位置に配置した状態で取得されたものであるため(ステップS13参照)、全画素画像330の小領域DR[i,j]に対して求められた領域評価値EV[i,j]は、小領域DR[i,j]の領域評価値がとり得る最大値と一致する或いは略一致するとみなすことができる。一方で、高域評価部60の演算アルゴリズムから理解されるように、小領域DR[i,j]内の被写体像が含む空間周波数が高いほど領域評価値EV[i,j]は増大する。故に、領域評価値EV[i,j]から、小領域DR[i,j]内の被写体像の空間周波数F[i,j]を推定することが可能である(図14参照)。
【0061】
実際には、図15に示すような、領域評価値EV[i,j]及び空間周波数F[i,j]間の関係を規定するテーブルデータ又は数式を空間周波数解析部22に与えておき、空間周波数解析部22が、そのテーブルデータ又は数式を用いて、全画素画像330の小領域ごとに領域評価値EV[i,j]から空間周波数F[i,j]を求める。結果、全画素画像330に対して、図16に示すような、空間周波数F[1,1]〜F[4,4]を空間方向に書き並べた空間周波数分布350が求まる。空間周波数分布350は、図11のステップS17にて求められるべき、全画素画像330に基づく被写体像の空間周波数成分の分布に相当する。
【0062】
ステップS17に続くステップS18において、空間周波数解析部22は、空間周波数分布350に対して重み付け平均等を適用することで対象空間周波数Fを決定する。具体的には、空間周波数解析部22は、下記式(1)に従って対象空間周波数Fを求めることができる。
【0063】
【数1】

【0064】
空間周波数解析部22は、重み付け係数k[1,1]〜k[4,4]の値を様々な重み付けアルゴリズムに従って決定することができる。重み付け係数k[1,1]〜k[4,4]の全て又は一部は互いに同じ値を有していても良いし、重み付け係数k[1,1]〜k[4,4]の全て又は一部は互いに異なる値を有していても良い。
単純には例えば、重み付け係数k[1,1]〜k[4,4]の値を予め定めておくことができる。この際、全画素画像330の中央付近の領域に対応する重み付け係数(例えば、k[2,2]、k[2,3]、k[3,2]及びk[3,3])に正の第1の値を代入し、それ以外の重み付け係数に第1の値よりも小さな第2の値を代入するようにしても良い。
或いは例えば、人物の顔が存在している領域に対応する重み付け係数を、他の重み付け係数よりも大きくしてもよい。
【0065】
更に或いは例えば、重み付け係数k[1,1]〜k[4,4]の内、ユーザ注目領域に対する重み付け係数にのみ正の値を与え、それ以外の重み付け係数にゼロを代入するようにしてもよい。ユーザは、操作部17に対する所定操作により、全画素画像330の全体画像領域の内の一部の領域(部分領域)を、ユーザ注目領域に指定することができる。例えば、小領域DR[1,1]〜DR[4,4]の内、小領域DR[1,1]及びDR[1,2]のみを含む領域がユーザ注目領域に指定されたのならば、重み付け係数k[1,1]〜k[4,4]の内、重み付け係数k[1,1]及びk[1,2]のみに正の値(例えば1)が設定され且つ他の重み付け係数の全てにゼロが設定される。この際、操作部17に対する所定操作により、ユーザが、重み付け係数k[1,1]及びk[1,2]の値を個別に指定できるようにしておいてもよい。
【0066】
更に或いは例えば、空間周波数解析部22は、空間周波数F[1,1]〜F[4,4]の内の、最大の空間周波数を対象空間周波数Fに設定してもよい(即ち、最大の空間周波数に対応する重み付け係数にのみ1を設定し、他の重み付け係数にゼロを設定しても良い)。
更に或いは例えば、空間周波数解析部22は、空間周波数F[1,1]〜F[4,4]のヒストグラムにおいて、最も頻度が高い空間周波数を対象空間周波数Fに設定してもよい。つまり例えば、空間周波数F[1,1]〜F[4,4]の内、4つが空間周波数fであって、且つ、3つが空間周波数fであって、且つ、8つが空間周波数fであって、且つ、1つが空間周波数fである場合、最も頻度が高い空間周波数はfであるため、fを対象空間周波数Fに設定してもよい。
【0067】
対象空間周波数Fの成分は、被写体像に含まれる主要な又は平均的な空間周波数の成分であると言え、対象空間周波数Fによって、全画素画像330に含まれる主要な又は平均的な空間周波数の成分が特定される。
【0068】
対象空間周波数Fが比較的高い周波数(例えばf)である場合、間引き画像に基づくフォーカスピーク位置にフォーカスレンズ31を配置したままでは、撮像素子33上において被写体像の高域周波数成分を十分に再現できない。そこで、ステップS18に続くステップS19において、フォーカス制御部23は、対象空間周波数Fに対応する補正量を補正データ保持部21内の補正データから取得し、取得した補正量にてフォーカスレンズ位置を補正する。即ち、フォーカス制御部23は、被写体像の空間周波数として求められた対象空間周波数Fと補正データとに基づき、ステップS12のフォーカスピーク位置に対する補正量を決定し、ステップS12のフォーカスピーク位置(第1合焦レンズ位置)を補正量だけずらした位置(第2合焦レンズ位置)にフォーカスレンズ31を移動させる。尚、上述したように、フォーカスレンズ31の移動はドライバ34を利用して実現される。
【0069】
従って、対象空間周波数Fが空間周波数fと一致する場合、或いは、対象空間周波数Fが、空間周波数f〜fの内、空間周波数fに最も近い場合、フォーカス制御部23は、補正データから補正量dを取得し、ステップS12のフォーカスピーク位置に配置されていたフォーカスレンズ31を補正量dだけ無限遠端方向に移動させる。ステップS19に続くステップS20において、フォーカス制御部23は、ステップS19にて取得した補正量dを内部メモリ14等に一時的に記録させる。内部メモリ14等に一時的に記録される補正量の値は、ステップS11〜S21の処理の繰り返しの中で順次更新される。
【0070】
ステップS20に続くステップS21において、主制御部13は、ステップS11〜S20の処理の実行中に所定のシャッタ操作(例えば、操作部17に設けられた特定ボタンを押す操作)が操作部17に成されたか否かを確認し、シャッタ操作が成されていた場合にのみステップS22への移行を許可する。シャッタ操作が成されていない場合には、ステップS21からステップS11に戻って、上述のステップS11〜S20の処理が繰り返し実行される。
【0071】
ステップS22では、主制御部13により目標画像が取得される。目標画像は、シャッタ操作後に、全画素読み出しモードを用いて撮影される全画素画像である。主制御部13は、目標画像の画像信号を記録媒体16に記録すると共に目標画像を表示画面15に表示させる。ステップS19によるレンズ位置補正後にステップS22に至った場合、フォーカスレンズ位置をステップS19による補正後の位置に配置した状態で目標画像が撮影される。
【0072】
ステップS15において、対象撮影モードが特定の撮影モードである場合、撮像装置1は、ステップS16〜S20の処理の代わりにステップS23を実行してから、ステップS21の処理を実行する。ステップS23において、フォーカス制御部23は、ナイキスト周波数fに対応する補正量dを補正データ保持部21内の補正データから取得し、取得した補正量dにてフォーカスレンズ位置を補正する。この補正は、対象空間周波数Fにナイキスト周波数fを代入した上で実行されるステップS19のレンズ位置補正と等価である。ステップS23におけるレンズ位置補正の実行後、ステップS23からステップS21に移行する。従って、ステップS23によるレンズ位置補正後にステップS22に至った場合、フォーカスレンズ位置をステップS23による補正後の位置に配置した状態で目標画像が撮影される。
【0073】
特定の撮影モードは、撮影モード選択部19に予め設定された複数の撮影モードの内の一部の撮影モードであり、例えば、風景モードを含む。撮像装置1の撮影領域内に被写体距離が比較的長い被写体が多く含まれている場合、撮影モード選択部19は、風景モードを対象撮影モードとして選択することができる。従って例えば、撮像装置1の撮影領域内に被写体距離が比較的長い被写体が多く含まれている場合には、対象撮影モードが特定の撮影モードであると判断されて、補正量dによるレンズ位置補正が成される(ステップS23)。風景モードが対象撮影モードとして選択されている場合には、撮影領域内の被写体(遠方の木や草など)の被写体距離が大きいことに起因して撮像素子33上の被写体像は比較的高い空間周波数を含むと推測されるため、補正量dによるレンズ位置補正を行うことが妥当であると考えられると共に補正量dによるレンズ位置補正によって風景における高域周波数成分を撮像素子33上で良好に再現できると考えられる。また、ステップS15からステップS23への移行は、ステップS17及びS18の演算を省略することによる演算負荷軽減効果も奏する。
【0074】
上述の方法によれば、間引き読み出しモードにてオートフォーカスを行うため、オートフォーカスを高速且つ低消費電力にて実現できる。間引き読み出しモードにてオートフォーカスを行うと、フォーカスレンズ位置が被写体像の空間周波数成分(高域成分でありうる)にとって最適化されないことがあるが、被写体像の空間周波数成分と補正データとに基づく補正量dにてフォーカスレンズ位置を補正することで、実際の被写体像の空間周波数成分にとって最適なピント合わせを実現することができる(被写体像が高域周波数成分を多く含む場合には、高域周波数成分に良好に適応したピント合わせを実現することができる)。
【0075】
尚、図11の動作において、少なくとも1回ステップS10にて補正量が記録されている状態で、ユーザがシャッタ操作を成した場合にはステップS14〜S18の処理の実行を省略してもよい(この場合、記録された補正量を用いてステップS19におけるレンズ位置補正が成される)。この省略によって、目標画像の撮影完了までの処理時間を短縮することができる。また、ステップS12の中で、ステップS16〜S18の処理を複数回実行し、それらの処理の複数回の実行結果から対象空間周波数Fを決定しても良い。これにより、被写体像の空間周波数(対象空間周波数F)の算出精度が向上する。
【0076】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第2実施例並びに後述の第3及び第4実施例にて述べる事項は、第1実施例に適用される。
【0077】
補正データを得るために基本パターンを撮像装置1の撮影領域内に配置することを上述した。上述の説明では特に議論しなかったが、ズームレンズ位置が変化すれば、理想合焦位置I[1]〜I[n]が変化すると共に理想合焦位置I[1]及びI[j]間の差も変化する。故に、補正データ保持部21に保持される補正量d〜dの夫々はズームレンズ位置の関数となるべきであり、従って補正量d〜dはズームレンズ位置に依存すると共に、図11のステップS19又はS23のレンズ位置補正に使用される補正量もズームレンズ位置に依存する。つまり、フォーカス制御部23は、ステップS19又はS23にて補正データから補正量を取得する際、ステップS19又はS23の処理実行時のズームレンズ位置にも依存した補正量を取得する。
【0078】
典型的には例えば、図17に示す如く、ズームレンズ位置を位置ZPに配置した状態で得た補正量d〜dを補正量d[ZP]〜d[ZP]として補正データ保持部21に保持させ、このような保持動作を、ズームレンズ位置を様々に変化させながら行う。結果、L通りのズームレンズ位置ZP〜ZPに対して個別に補正量d〜dが求められ、計(L×n)個の補正量が補正データ保持部21に保持される(Lは2以上に整数)。即ち、ズームレンズ30を位置ZPに配置した状態で得た補正量d〜dが補正量d[ZP]〜d[ZP]として補正データ保持部21に保持される(ここで、iは1以上且つL以下の整数)。位置ZP〜ZPは互いに異なる位置である。d[ZP]〜d[ZP]はゼロである。
【0079】
図11のステップS19又はS23において、ズームレンズ位置が位置ZPであって且つ対象空間周波数Fが空間周波数fである場合(ステップS23においてはF=f)、フォーカス制御部23は、補正量d[ZP]を補正データから取得して補正量d[ZP]を用いてフォーカスレンズ位置を補正すればよい。
【0080】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。実空間上における基本パターン及び撮像装置1間の距離が変化すれば、当然に、図9の理想合焦位置I[1]〜I[n]の夫々は変化する。故に、補正データ保持部21に保持される補正量d〜dの夫々はフォーカスレンズ位置の関数となるべきであり、従って補正量d〜dはフォーカスレンズ位置に依存すると共に、図11のステップS19又はS23のレンズ位置補正に使用される補正量もフォーカスレンズ位置に依存する。ここにおけるフォーカスレンズ位置は、図11のステップS12にて求められたフォーカスピーク位置に相当する。つまり、フォーカス制御部23は、図11のステップS19又はS23にて補正データから補正量を取得する際、ステップS12にて求められたフォーカスピーク位置(換言すれば、ステップS19又はS23の処理実行時のフォーカスレンズ位置)にも依存した補正量を取得する。
【0081】
典型的には例えば、図18に示す如く、理想合焦位置I[1]が位置FPである状態で得た補正量d〜dを補正量d[FP]〜d[FP]として補正データ保持部21に保持させる。このような保持動作を、実空間上における基本パターン及び撮像装置1間の距離を様々に変化させながら(即ち、理想合焦位置I[1]を様々に変化させながら)行う。結果、M通りのフォーカスレンズ位置(フォーカスピーク位置)FP〜FPに対して個別に補正量d〜dが求められ、計(M×n)個の補正量が補正データ保持部21に保持される(Mは2以上に整数)。即ち、理想合焦位置I[1]が位置FPである状態で得た補正量d〜dが補正量d[FP]〜d[FP]として補正データ保持部21に保持される(ここで、iは1以上且つM以下の整数)。位置FP〜FPは互いに異なる位置である。d[FP]〜d[FP]はゼロである。
【0082】
図11のステップS19又はS23において、フォーカスレンズ位置が位置FPであって且つ対象空間周波数Fが空間周波数fである場合(ステップS23においてはF=f)、フォーカス制御部23は、補正量d[FP]を補正データから取得して補正量d[FP]を用いてフォーカスレンズ位置を補正すればよい。上述の説明から明らかであるが、ステップS19又はS23におけるフォーカスレンズ位置は、ステップS12にて求められたフォーカスピーク位置(第1合焦レンズ位置)と一致する。
【0083】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。第1実施例で述べた内容と重複するが、図11の動作において対象撮影モードが特定の撮影モード(例えば、風景モード)である場合、レンズ位置補正に使用される補正量が補正量dに決定される(ステップS15及びS23)。従って、レンズ位置補正に使用される補正量は対象撮影モードに依存する、と言える。
【0084】
第2〜第4実施例で述べた内容を組み合わせて第1実施例に適用することができ、この場合、フォーカス制御部23は、レンズ位置補正に用いる補正量を、ステップS19又はS23の処理実行時におけるズームレンズ位置及びフォーカスレンズ位置に依存させると共に、ステップS15の処理実行時における対象撮影モードに依存させることになるが、レンズ位置補正に用いる補正量を、ズームレンズ位置、フォーカスレンズ位置及び対象撮影モードの内の1つのみ又は2つのみに依存させるようにしてもよい。
【0085】
<<変形等>>
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。上述の実施形態に適用可能な注釈事項として、以下に、注釈1及び注釈2を記す。各注釈に記載した内容は、矛盾なき限り、任意に組み合わせることが可能である。
【0086】
[注釈1]
図1の撮像装置1を、ハードウェア、或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって構成することができる。ソフトウェアを用いて撮像装置1を構成する場合、ソフトウェアにて実現される部位についてのブロック図は、その部位の機能ブロック図を表すことになる。ソフトウェアを用いて実現される機能をプログラムとして記述し、該プログラムをプログラム実行装置(例えばコンピュータ)上で実行することによって、その機能を実現するようにしてもよい。
【0087】
[注釈2]
例えば、以下のように考えることができる。図1のフォーカスピーク解析部20は、間引き画像に基づき、被写体像を撮像素子33上で結像させるためのフォーカスレンズ位置をフォーカスピーク位置(第1合焦レンズ位置)として特定する合焦レンズ位置特定部として機能しうる。
【符号の説明】
【0088】
1 撮像装置
11 撮像部
18 読出制御部
19 撮影モード選択部
20 フォーカスピーク解析部
21 補正データ保持部
22 空間周波数解析部
23 フォーカス制御部
30 ズームレンズ
31 フォーカスレンズ
32 絞り
33 撮像素子
35 光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスレンズを含む光学系と、
前記光学系を介して入射した被写体像を光電変換して画像信号を生成する複数の受光画素から成る撮像素子と、
前記画像信号を間引き読み出しする読出制御部と、
前記間引き読み出しによって得られた間引き画像に基づき、前記被写体像を前記撮像素子上で結像させるための前記フォーカスレンズの位置を第1合焦レンズ位置として特定する合焦レンズ位置特定部を有するフォーカス制御部と、
前記フォーカス制御部の制御の下、前記フォーカスレンズを駆動するレンズ駆動部と、を備えた撮像装置において、
前記フォーカス制御部は、前記被写体像の空間周波数成分に基づき前記第1合焦レンズ位置を補正し、補正後の第1合焦レンズ位置である第2合焦レンズ位置に前記フォーカスレンズを移動させる
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記読出制御部は、前記複数の受光画素の全てから前記画像信号を読み出す全画素読み出しと、前記間引き読み出しと、を切り替えて実行し、
当該撮像装置は、前記全画素読み出しによって得られた全画素画像に基づき前記被写体像の空間周波数成分を求める空間周波数解析部を更に備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
当該撮像装置は、前記光学系の特性に応じた補正データを保持する補正データ保持部を更に備え、
前記フォーカス制御部は、前記被写体像の空間周波数成分と前記補正データとに基づき、前記第1合焦レンズ位置に対する補正量を決定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記補正データは、前記フォーカスレンズの位置と前記光学系の変調伝達関数との関係に基づき設定される
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光学系は、前記撮像素子による撮影画角を調整するためのズームレンズを更に含み、
前記補正量は、前記ズームレンズの位置又は前記第1合焦レンズ位置に依存する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記合焦レンズ位置特定部は、前記間引き画像に対して所定の評価処理を施すことで得た評価値に基づき前記第1合焦レンズ位置を求め、
前記空間周波数解析部は、前記全画素画像に対して前記評価処理を施すことで得た評価値に基づき前記被写体像の空間周波数成分を求める
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項7】
当該撮像装置は、前記全画素画像の一部である部分領域を指定する操作を受ける操作部を更に備え、
前記フォーカス制御部は、前記部分画領域の画像信号の空間周波数成分を前記被写体像の空間周波数成分として用いて前記第1合焦レンズ位置を補正する
ことを特徴とする請求項2又は請求項6に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−29656(P2013−29656A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165415(P2011−165415)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】