説明

撮像装置

【課題】複数色の画素値を重み付け加算して得られた撮像画像のホワイトバランスを調整可能な撮像装置等を提供すること。
【解決手段】撮像装置は、読み出し制御部131と、混色除去処理部120と、色温度検出部121と、色温度調整部122と、推定演算部を含む。読み出し制御部131は、重畳しながらシフトされた加算単位を設定することにより、複数色の各色と重み付け係数の対応が異なる複数の低解像画像を取得する。混色除去処理部120は、その複数の低解像画像に対して、重み付け加算による混色を除去する処理を行い、各色に対応する画素値を求める。色温度検出部は、混色が除去された低解像画像に基づいて色温度を検出する。色温度調整部122は、検出された色温度に基づいて、低解像画像の色温度を調整する。推定演算部は、色温度補正された低解像画像に基づいて高解像画像を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等に代表される撮像装置の多くは、単板の固体撮像素子を用いて撮像を行っている。カラー撮影を行うため、複数色のカラーフィルターを有する固体撮像素子により撮像するものが殆どである。このような撮像装置を用いて撮影された画像では、固体撮像素子の特性や、光源又は被写体の条件等により、一般にホワイトバランスが崩れている。このホワイトバランスの崩れにより色調ずれや偽色が発生するため、ホワイトバランスの調整を行って色調ずれや偽色を抑制する。
【0003】
例えば特許文献1には、撮像された画像を複数のブロックに分割し、そのブロックにおいて灰色の可能性があるか否かを判断し、灰色の可能性があると判断されたブロックの色平均値を灰色にするように各色のゲインを決定し、そのゲインを用いて画像のホワイトバランスを調整する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−506700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、従来の手法では、本来白色であるべき被写体が画像上において白色となるようにホワイトバランス調整を行う。
【0006】
しかしながら、従来の手法では、固体撮像素子により撮像される画像が意図的に色調のずれを伴っている場合には適応できないという課題がある。例えば、複数色の画素値を、各画素に任意の重み付けを施して加算読み出しする場合、加算読み出しされた画素値は、複数色が混合された画素値となっている。この場合、仮にホワイトバランスが整っていたとしても、加算読み出しにより得られる画像では、白色の被写体が白色とはならない。そのため、従来の手法を適用して白色に調整すると、逆にホワイトバランスを崩してしまうことになる。
【0007】
本発明の幾つかの態様によれば、複数色の画素値を重み付け加算して得られた撮像画像のホワイトバランスを調整可能な撮像装置等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、撮像素子に複数色の画素が配列される場合に、前記複数色の画素を有する加算単位を前記撮像素子の複数の画素毎に設定し、前記加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して低解像画像を取得する読み出し制御部と、取得された前記低解像画像に対して、前記複数色の画素が重み付け加算されたことによる混色を除去する処理を行う混色除去処理部と、混色が除去された前記低解像画像に基づいて色温度を検出する色温度検出部と、検出された前記色温度に基づいて、前記低解像画像の色温度を調整する色温度調整部と、色温度調整された前記低解像画像に基づいて、前記撮像素子の画素数に相当する解像度の高解像画像を推定する推定演算部と、を含み、前記読み出し制御部は、重畳しながらシフトされた前記加算単位を設定することにより、前記複数色の各色と重み付け係数との対応が異なる複数の低解像画像を取得し、前記混色除去処理部は、前記複数の低解像画像に対して前記混色を除去する処理を行い、前記各色に対応する画素値を求める撮像装置に関係する。
【0009】
本発明の一態様によれば、重畳しながらシフトされた加算単位が設定され、各色と重み付け係数の対応が異なる複数の低解像画像が取得される。取得された低解像画像に対して混色を除去する処理が行われ、各色に対応する画素値が求められる。その混色除去後の画素値に基づいて色温度が検出され、低解像画像の色温度調整が行われる。そして、調整後の低解像画像から高解像画像が推定される。これにより、複数色の画素値を重み付け加算して得られた撮像画像のホワイトバランスを調整することが可能になる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記混色除去処理部は、前記各色と重み付け係数の対応を規定する係数行列の逆行列に基づいて、前記混色を除去する混色除去フィルターを構成し、構成した前記混色除去フィルターにより前記混色を除去する処理を行ってもよい。
【0011】
また本発明の一態様では、前記撮像素子の前記複数色の画素が、ベイヤー配列である場合に、前記読み出し制御部は、前記各色と第1〜第4の重み付け係数とが第1〜第4の組み合わせで対応する第1〜第4の低解像画像を、前記複数の低解像画像として取得し、前記第1〜第4の低解像画像の画素値は、前記重畳シフトにおける前記加算単位の設定位置に応じて1つの画像に再配列され、前記混色除去処理部は、前記第1〜第4の組み合わせを第1〜第4行に配列した行列を前記係数行列とし、前記係数行列の逆行列の成分を前記再配列に応じて配列することにより前記混色除去フィルターを構成し、構成した前記混色除去フィルターと前記再配列された画像とのコンボリューション演算を行ってもよい。
【0012】
これらの態様によれば、各色と重み付け係数の対応に基づいて混色除去フィルターを構成できる。これにより、重み付け加算により混色される前の画像の色情報を得ることが可能になり、その色情報に基づいて色温度検出を行うことができる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記色温度調整部は、前記検出された前記色温度に基づいて前記各色の調整ゲインを求め、各色と重み付け係数との対応を規定する係数行列と、前記調整ゲインとに基づいて、調整フィルターを構成し、構成した前記調整フィルターにより前記色温度の調整を行ってもよい。
【0014】
また本発明の一態様では、前記撮像素子の前記複数色の画素が、ベイヤー配列である場合に、前記読み出し制御部は、前記各色と第1〜第4の重み付け係数とが第1〜第4の組み合わせで対応する第1〜第4の低解像画像を、前記複数の低解像画像として取得し、前記第1〜第4の低解像画像の画素値は、前記重畳シフトにおける前記加算単位の設定位置に応じて1つの画像に再配列され、前記色温度調整部は、前記第1〜第4の組み合わせを第1〜第4行に配列した行列を前記係数行列とし、前記係数行列と、前記各色の調整ゲインを対角に配列した行列と、前記係数行列の逆行列との積の成分を、前記再配列に応じて配列することにより前記調整フィルターを構成し、構成した前記調整フィルターと前記再配列された画像とのコンボリューション演算を行ってもよい。
【0015】
これらの態様によれば、各色と重み付け係数の対応に基づいて調整フィルターを構成できる。これにより、重み付け加算により混色した低解像画像に対して、ホワイトバランス調整処理を行うことが可能になる。
【0016】
また本発明の一態様では、第1のポジションに設定された第1の加算単位と、前記第1のポジションがシフトされた第2のポジションに設定された第2の加算単位とが、重畳する場合に、前記推定演算部は、前記第1の加算単位の画素値が重み付け加算された第1の加算画素値と、前記第2の加算単位の画素値が重み付け加算された第2の加算画素値との差分値を求め、前記第1の加算単位から重畳領域を除いた第1の領域の加算画素値である第1の中間画素値と、前記第2の加算単位から前記重畳領域を除いた第2の領域の加算画素値である第2の中間画素値との関係式を、前記差分値を用いて表し、前記関係式を用いて前記第1、第2の中間画素値を推定し、推定した前記第1の中間画素値を用いて前記加算単位に含まれる各画素の画素値を求めてもよい。
【0017】
このようにすれば、重畳しながら画素シフトされた加算単位の加算画素値から中間画素値を推定し、推定した中間画素値から最終的な推定画素値を求めることができる。これにより、簡素な処理で撮像画像を推定できる。
【0018】
また本発明の一態様では、前記推定演算部は、前記第1、第2の中間画素値を含む連続する中間画素値を中間画素値パターンとする場合に、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値間の関係式を前記第1、第2の加算画素値を用いて表し、前記中間画素値間の関係式で表された前記中間画素値パターンと前記第1、第2の加算画素値とを比較して類似性を評価し、前記類似性の評価結果に基づいて、前記類似性が最も高くなるように、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値を決定してもよい。
【0019】
このようにすれば、重畳しながら画素シフトされた加算単位により取得された複数の加算画素値に基づいて、中間画素値を推定により求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の撮像装置の構成例。
【図2】撮像装置の変形構成例。
【図3】画素アレイ部の画素配列の例。
【図4】重畳シフト加算における重み付けについての説明図。
【図5】重畳シフト加算についての説明図。
【図6】第1〜第4の低解像画像を再配列した画像の例。
【図7】ホワイトバランス調整処理のフローチャート。
【図8】混色除去処理についての詳細な説明図。
【図9】混色除去処理についての詳細な説明図。
【図10】混色除去処理についての詳細な説明図。
【図11】図11(A)、図11(B)は、推定画素値と中間画素値の説明図。
【図12】復元推定処理についての説明図。
【図13】復元推定処理についての説明図。
【図14】復元推定処理についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0022】
1.本実施形態の概要
まず、本実施形態の概要について説明する。本実施形態では、図5等で後述するように、重畳シフトされた加算単位を設定し、その加算単位に含まれる画素値を重み付け加算することにより低解像動画を取得する。そして、図11(A)〜図14で後述するように、その低解像動画から、撮像素子の解像度に相当する高解像静止画や高解像動画を復元する。
【0023】
このようにすれば、事後的に高解像画像が得られるため、ユーザが好きなタイミングを指定することができ、決定的瞬間の画像を容易に得ることが可能である。また、加算単位が重畳シフトされていることで、簡素な処理で復元を行うことが可能である。
【0024】
さて本実施形態では、撮像素子はベイヤー(Bayer)配列等のカラー単板撮像素子であり、加算単位には複数の色の画素が含まれている。本実施形態では、この複数の色の画素値が加算された低解像画像から高解像画像を復元するが、低解像画像のホワイトバランスが適切でないと、復元画像が劣化する(例えば偽色が生じる)可能性がある。そのため、低解像画像のホワイトバランスを調整する必要がある。
【0025】
しかしながら、低解像画像では、重み付け加算により複数の色が混ざった画素値となっている。そのため、低解像画像からそのまま色温度を検出しようとしても、加算前の画像の色情報がわからないため正しい色温度を検出することができず、ホワイトバランスを調整できないという課題がある。
【0026】
そこで本実施形態では、図7等で後述するように、低解像画像を混色除去フィルターで処理することにより、加算前の色情報が反映された画像を取得し、その画像に基づいて色温度を検出する。そして、その色温度に基づいて低解像画像のホワイトバランス調整(狭義には色温度調整)を行う。これにより、重み付け加算により混色した画像であっても、ホワイトバランスを調整することができる。
【0027】
2.撮像装置
次に、本実施形態について詳細に説明する。まず図1に、上記の混色除去処理とホワイトバランス調整処理を行う本実施形態の撮像装置の構成例を示す。
【0028】
図1の撮像装置100は、撮像光学系101(レンズ)、固体撮像素子102(撮像素子)、ホワイトバランス調整部103、高解像度画像生成部104(推定演算部)、現像処理部105、制御部106、メモリー107、表示処理部108、モニター表示部109、アクセス制御部110(記録処理部)を含む。
【0029】
撮像装置100は、光学的な画像情報を電気信号に変換し、電子的に記録媒体に記録する装置である。このような撮像装置100として、例えばデジタルスチルカメラ、デジタルムービーカメラ等が想定される。
【0030】
撮像光学系101は、被写体を結像する。固体撮像素子102は、カラー単板撮像素子であり、結像された被写体像を撮像する。具体的には、固体撮像素子102は、画素アレイ部130(受光素子)と、読み出し制御部131を含む。読み出し制御部131は、画素アレイ部130の複数画素が重み付け加算された低解像画像を読み出し、その加算される画素の範囲を順次シフトすることにより複数の低解像画像を取得する。取得された画像データは、制御部106により、ホワイトバランス調整部103、又は高解像度画像生成部104、アクセス制御部110へ伝送される。
【0031】
ホワイトバランス調整部103には、固体撮像素子102又は記録媒体111からの、ホワイトバランス調整前の画像データが入力される。そして、入力された画像データに対してホワイトバランス調整を行い、ホワイトバランス調整後の画像データを出力する。具体的には、ホワイトバランス調整部103は、画像データの色温度を解析的に求め、その色温度を用いてオートホワイトバランス調整を行う。ホワイトバランス調整部103は、混色除去処理部120(混色除去フィルター演算部)と、色温度検出部121と、色温度調整部122(色温度補正部)を含む。
【0032】
混色除去処理部120は、ホワイトバランス調整前の画像データから、固体撮像素子102の重み付けにより生じた混色を除去する処理を行う。色温度検出部121は、混色除去された画像データから色温度を検出する。色温度調整部122は、検出された色温度をターゲットの色温度に調整する処理を、ホワイトバランス調整前の画像データに対して行う。これらの処理については、後で詳述する。
【0033】
高解像度画像生成部104は、ホワイトバランス調整された画像データに対して、後述する復元推定処理を行い、固体撮像素子102からの画像データよりも解像度の高い画像データを生成する。後述するように、高解像度画像生成部104は、正確な解像度情報や色情報を取得するために、連続する4フレームの画像データに基づいて1フレームの高解像度画像データを生成する。
【0034】
現像処理部105は、高解像画像データを現像処理して、最終的な画像データを出力する。例えば固体撮像素子102がベイヤー配列である場合、復元された画像はベイヤー配列となる。現像処理部105は、そのベイヤー配列の画像を補間処理し、全画素のRGB画素値を求める。
【0035】
表示処理部108は、現像された画像に対して表示用の変換処理を行い、変換後の画像をモニター表示部109に表示する処理を行う。例えば、表示用の変換処理として、モニター解像度に合致させるためのリサイズ処理や、モニターにおいて違和感のない画像に見せるためのガンマ補正処理や色補正処理を行う。
【0036】
アクセス制御部110は、現像された画像に対して記録用の変換処理を行い、変換後の画像を外部の記録媒体111に記録する制御を行う。例えば、記録用の変換処理として、データサイズを小さくするための圧縮符号化処理や、指定されたデータフォーマットへの変換処理を行う。なお、モニター表示及び記録媒体への記録は、そのいずれか一方のみが行われてもよく、その両方が行われてもよい。
【0037】
なお、本実施形態は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。例えば、上記ではホワイトバランス調整部103は固体撮像素子102の外部に設けられるが、図2に示すように、ホワイトバランス調整部103は固体撮像素子102のシリコン基板上に形成されてもよい。この場合、読み出し制御部131により画像データが取得され、その画像データに対してホワイトバランス調整が行われ、その調整後の画像データが固体撮像素子102から出力される。ホワイトバランス調整を行っていない画像データを固体撮像素子102から出力する場合には、固体撮像素子102にホワイトバランス調整部103をバイパスする回路を設け、回路をスイッチできるようにすればよい。
【0038】
また、上記ではオートホワイトバランスを行う例を説明したが、本実施形態はこれに限定されず、例えばユーザにより画像の色温度が与えられ、その色温度に対応するプリセット値を用いてホワイトバランス調整を行ってもよい。
【0039】
また、上記では4フレームの低解像画像から1フレームの高解像画像を復元する例を説明したが、本実施形態はこれに限定されず、例えば4フレームよりも多い又は少ないフレーム数の低解像画像に基づいて1フレームの高解像度画像を復元してもよい。
【0040】
また、上記では記録媒体111が外部に設けられる例を説明したが、本実施形態はこれに限定されず、記録媒体111は撮像装置100の内部に設けられてもよく、又は内部と外部の両方に設けられてもよい。
【0041】
3.重畳シフト加算
次に、本実施形態が行う重畳シフト加算について詳細に説明する。まず図3に、画素アレイ部130の画素配列の例を示す。図3において、xは画素配列の列番号を表し、yは画素配列の行番号を表す(x、yはゼロ以上の整数)。例えば、列番号は水平走査方向の座標であり、行番号は垂直走査方向の座標である。
【0042】
図3に示すように、画素アレイ部130の画素は、いわゆるベイヤー配列に配列される。即ち、2×2の4画素を1ブロックとし、そのブロックが繰り返し配列される。各ブロックには、1つのR(赤)画素、2つのG(緑)画素、1つのB(青)画素が含まれる。R画素には、R色の光を透過するカラーフィルターが設けられ、Gr画素とGb画素には、G色の光を透過するカラーフィルターが設けられ、B画素には、B色の光を透過するカラーフィルターが設けられる。
【0043】
なお本実施形態では、画素アレイ部130のカラーフィルターはRGBに限定されず、例えばCMY等であってもよい。また、カラーフィルターの配列はベイヤー配列に限定されず、他の配列であってもよい。
【0044】
次に、図4を用いて重畳シフト加算における重み付けについて説明する。図4に示すように、読み出し制御部131は、2×2の4画素を1ユニット(加算単位)とし、そのユニット内の画素値を重み付け加算し、加算した画素値を1画素信号として出力する。ユニットの左上画素P1には重み係数“1”、右上画素P2には重み係数“1/2”、左下画素P3には重み係数“1/2”、右下画素P4には重み係数“1/4”で重み付けする。得られる加算画素値GPを下式(1)に示す。
GP=P1+(1/2)*P2+(1/2)*P3+(1/4)*P4 (1)
【0045】
ユニットは、上述のベイヤー配列におけるブロックと同じ又は異なる4画素である。読み出し制御部131は、1回(1フレーム)の読み出しにおいて、画素アレイ部130の全領域又は一部の領域の加算画素値を読み出し、その加算画素値が配列された1フレームの画像データを取得する。
【0046】
具体的には、図5に示すように、ユニットはフレーム毎に位置が変化する。図5において、小四角形は画素を表し、その小四角形に施されたハッチングはカラーフィルターの色を表す。ハッチングと色の対応は、上述の図3と同一である。また、角が丸い四角形は、加算を行うユニットを表す。
【0047】
第fフレーム(fは自然数)では、カラーフィルターのブロックと同じ4画素をユニットとする。次に第f+1フレームでは、第fフレームのユニットに対して1画素右にずれた4画素をユニットとする。第f+2フレームでは第fフレームのユニットに対して1画素下にずれた4画素をユニットとする。第f+3フレームでは、第f+2フレームのユニットに対して1画素右にずれた4画素をユニットとする。このようにして、第f〜第f+3フレームにおいて、それぞれ第1〜第4の低解像画像を取得する。
【0048】
図6に、取得された第1〜第4の低解像画像を再配列した画像Xを示す。ホワイトバランス調整部103は、この再配列された画像Xを用いてホワイトバランス調整処理を行う。図6に示すように、第f〜第f+3フレームの加算画素を、それぞれ左上、右上、左下、右下となるように1画素ずつ交互に配列し、1フレームの画像Xを生成する。例えば、図5に示す加算画素GP00、GP01、GP10、GP11を、図6に示すように、それぞれ画像Xの座標xy=00、01、10、11に配置する。
【0049】
なお、上記では1ユニットが2×2の4画素である例を説明したが、本実施形態はこれに限定されず、M×N画素(M、Nは2以上の整数)を1ユニットとしてもよい。また、上記では重み係数を“1”、“1/2”、“1/4”としたが、本実施形態はこれに限定されず、例えば下式(2)に示すように重み付けしてもよい(rはr≧1の実数)。
GP=P1+(1/r)*P2+(1/r)*P3+(1/r)*P4 (2)
【0050】
また、上記では重み係数を固定としたが、本実施形態はこれに限定されず、例えば各フレームで重み係数を変更してもよい。また、上記では第1〜第4の低解像画像をそれぞれ第f〜第f+3フレームにおいて読み出したが、本実施形態はこれに限定されず、例えば第3、第4の低解像画像をそれぞれ第f+3、第f+2フレームにおいて読み出してもよい。また、上記では1回の読み出し動作(1フレーム)において1つの低解像画像を読み出す例を説明したが、本実施形態はこれに限定されず、1回の読み出し動作において複数の低解像画像を読み出してもよい。例えば、第fフレームにおいて第1、第4の低解像画像を読み出し、第f+1フレームにおいて第2、第3の低解像画像を読み出してもよい。
【0051】
ここで、フレームとは、例えば撮像素子により1つの低解像画像が撮影されるタイミングや、画像処理において1つの画像(例えば1つの低解像画像や画像X)が処理されるタイミングである。あるいは、画像データにおける1つの低解像画像や高解像画像も適宜フレームと呼ぶ。
【0052】
4.ホワイトバランス調整処理
次に、本実施形態が行うホワイトバランス調整処理について詳細に説明する。図7に、ホワイトバランス調整処理のフローチャートを示す。
【0053】
例えば、フローチャートのステップS4は、混色除去処理部120が実行する。ステップS5は、色温度検出部121が実行する。ステップS6、S7、S12、S13は、色温度調整部122が実行する。他のステップS1〜S3、S8〜S11は、制御部106が実行する。なお、本実施形態の各部はハードウェアとして構成されてもよいし、ソフトウェアにより構成されてもよい。ソフトウェアにより構成される場合、本実施形態の各部を記述したプログラムがCPU等の情報処理装置により実行されることで、各部の処理が実現される。
【0054】
図7に示すように、ホワイトバランス調整処理が開始されると、固体撮像素子102又は記録媒体111からの画像データを読み込む(S1)。後段の高解像度画像生成では連続する4フレームの画像が必要となるため、連続する4フレームの画像データを読み込み、画素の配列を行い、1フレームの画像Xを生成する。
【0055】
次に、オートホワイトバランス調整を行うか否かの判断を行う(S2)。例えば、撮像装置100に対するユーザの指示に基づいて判断する。なお、ユーザの指示は撮像時よりも前に行われていてもよいし、ステップS2を処理するタイミングでユーザに対し要求してもよい。
【0056】
オートホワイトバランス調整を行うと判断した場合(S2、YES)、ステップS1で得られた画像Xをメモリー107に一時的に保存する(S3)。ステップS5の色温度検出において、画像Xに対して変更を加えた画像を用い、ステップS12のホワイトバランス調整において、元の画像を用いるためである。
【0057】
次に、画像Xに対して混色除去フィルターを演算し、画像Xから意図的な混色を排除した新たな画像X’を得る(S4)。この混色除去フィルターは、以下のようにして求められる。まず下式(3)に示すように、画像XにおけるR、Gr、Gb、Bの混色を表す行列Aを求める。下式(3)では、1ブロック内の2画素のGを異なる画素Gr、Gbとして扱うものとする。
【数1】

【0058】
ここで、行列Aのi行j列の成分Aijは、第iフレームにおける第jの色の混色比である(i、j=1、2、3、4)。即ち、行列Aの第1〜第4列は、それぞれ第1〜第4の色R、Gr、Gb、Bに対応する。また、行列Aの第1〜第4行は、それぞれ第1〜第4フレームに対応する。例えば、図5においてf=1とする場合、第1フレームにおいて、R、Gr、Gb、Bの画素がそれぞれ重み係数1、1/2、1/2、1/4で混色する。この重み係数に対応して、行列Aの第1行の成分は1、1/2、1/2、1/4である。
【0059】
次に下式(4)に示すように、行列Aの逆行列A−1を求め、その逆行列A−1の成分(A−1nmを用いて、混色除去フィルターαを求める。このαは画像によって変化しないため、予めヒープメモリー(heap memory)にαを格納しておき、演算の度にその格納領域を参照する。
【数2】

【0060】
次に、混色除去フィルターαと画像Xの各画素とのコンボリューションを画像Xの全領域について行い、画像Xから意図的な混色を除去した画像X’を求める。この画像X’はベイヤー配列の画像となる。図8〜図10で後述するように、画像X’では加算前の画素値が復元されるわけではないが、ホワイトバランス調整は全領域(又は所定の領域毎)に対して行われるため、色が分離されていれば画像X’から色温度を検出することが可能である。
【0061】
次に、混色除去された画像X’から色温度を検出する処理を行う(S5)。次に、検出された色温度に基づいて、白色物体が白色となるように、各色についてのホワイトバランス調整ゲインg、gGr、gGb、gを求める(S6)。画像X’では、画像Xとは異なり、意図的な混色が排除されているため、一般的な色温度検出手法を適用できる。例えば、上述の特許文献1に開示された手法により、色温度を検出し、ホワイトバランス調整ゲインを求めてもよい。
【0062】
次に、得られたホワイトバランス調整ゲインに基づいて、ホワイトバランス調整フィルターを生成する(S7)。このホワイトバランス調整フィルターは、以下のようにして求められる。まず、下式(5)に示すように、行列Wを求める。
【数3】

【0063】
次に下式(6)に示すように、行列Wの成分を用いてホワイトバランス調整フィルターω〜ωを求める。
【数4】

【0064】
次に、ステップS3において一時記憶された画像Xを読み出す(S8)。次に、読み出された画像Xと、ホワイトバランス調整フィルターω〜ωとのコンボリューションを行い、ホワイトバランスが調整された画像Yを生成する(S9)。コンボリューションにおいてω〜ωのいずれを用いるかは、画像Xの画素位置に応じて決まる。即ち、図6において例えばf=1とすると、画像Xの中の第iフレームの画素を中心とする3×3画素にホワイトバランス調整フィルターを演算する場合に、ωを用いる(i=1、2、3、4)。
【0065】
次に、画像Yを出力し(S10)、オートホワイトバランス調整処理を終了する。
【0066】
ステップS2において、オートホワイトバランス調整を行わないと判断した場合(S2、NO)、まずユーザによって予め指定された色温度を読み込む(S11)。次に、読み込まれた色温度に対応するホワイトバランスゲインg,gGr,gGb,gを参照し、決定する(S12)。ホワイトバランスゲインは、各色温度に対応して予め設定されている(例えばルックアップテーブル)。次に、ステップS7と同様の手法によりホワイトバランス調整フィルターω〜ωを求める(S13)。次に、ステップS8〜S10を実行し、ホワイトバランス調整処理を終了する。
【0067】
なお、上記では行列Aを上式(3)としたが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、下式(7)に示すように、行列Aの各行の成分の和が1となるように規格化してもよい。即ち、行列Aの成分は各色の混色比であるため、その比が保たれていればよい。
【数5】

【0068】
また、上式(3)ではカラーフィルターをR、Gr、Gb、Bの4色として行列Aを構成したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、下式(8)に示すように、カラーフィルターをR、G、Bの3色として行列Aを構成してもよい。
【数6】

【0069】
また、上記では2×2画素が画素配列の1ブロックであり、1ブロックに4色のカラーフィルターを有する例を説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、m×n
画素(m、nは自然数であり、m×n≧2)を1ブロックとし、1ブロックにk=m×n色のカラーフィルターを有してもよい。この場合、行列Aは一般に下式(9)によって表される。
【数7】

【0070】
ここで、行列Aのi行j列の成分Aijは、第iフレームにおける第jの色の混色比である(i、jはk以下の自然数)。
【0071】
また、上式(4)では、コンボリューションにおける中央の成分((A−111)について対称に混色除去フィルターαを構成したが、本実施形態はこれに限定されず、逆行列A−1の1行分の成分を用いてαが構成されていればよい。例えば上式(9)に示す行列Aを用いる場合、下式(10)に示すように、m×n行列として混色除去フィルターα(iはk以下の自然数)を構成してもよい。
【数8】

【0072】
ここで、混色除去フィルターのコンボリューションにおいてα〜αのいずれを用いるかは、画像Xの画素位置に応じて決まる。即ち、図6において例えばf=1とすると、画像Xの中の第iフレームの画素を中心とするm×n画素に混色除去フィルターを演算する場合に、αを用いる(iはk以下の自然数)。
【0073】
また、上記では混色除去フィルターαが変化せず、αを予めヒープメモリーに格納しておき演算時に参照したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、αが変化する(例えば画像に応じて、又は時間的に変化する)場合、行列Aからαを随時求め、そのαを演算に使用してもよい。
【0074】
また、上記では混色除去フィルターαにより混色除去したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、画像Xの各画素について、第f〜第f+3フレームの各フレームに対応する画素値を補間により求め、求めた画像Xの各画素の成分と逆行列A−1との積をとることにより、混色除去を行ってもよい。
【0075】
また、上式(5)では、ホワイトバランス調整ゲインは、各色について絶対値として設定されるが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、所定の色に対する相対ゲインとして設定してもよい。例えば下式(11)に示すように、Grの画素値を基準とし、そのGrに対するR,Gb,Bの相対ゲインをγ、γGb、γとしてもよい。
【数9】

【0076】
また、上式(5)ではカラーフィルターを4色として行列Wを構成したが、本実施形態はこれに限定されず、例えばカラーフィルターがk色の場合、一般に下式(12)に示すように行列Wが構成される。
【数10】

【0077】
また、上式(6)では、コンボリューションにおける中央の成分(Wii)について対称にホワイトバランス調整フィルターωを構成したが、本実施形態はこれに限定されず、行列Wの1行分の成分を用いてωが構成されていればよい。例えば上式(12)に示す行列Wを用いる場合、下式(13)に示すように、m×n行列としてω(iはk以下の自然数)を構成してもよい。
【数11】

【0078】
5.混色除去処理
次に、上述した混色除去フィルターαの詳細な導出例について説明する。また、そのαをコンボリューションすることにより、色温度検出可能な画像X’が復元されることについて説明する。
【0079】
図8に示すように、第f〜第f+3フレームにおいて、重み付けを変化させながら画素加算を行い、それぞれ加算画素値C〜Cf+3を求める。色に着目すると、この操作は下式(14)に示す操作と同等である。下式(15)に示すように、下式(14)の右辺の4×4行列が行列Aに対応する。
【数12】

【数13】

【0080】
得られた4フレーム分の加算画素値C〜Cf+3を再配置し、画像Xを生成する。この画像Xの色を加算前の状態に戻すためには、下式(16)に示す逆行列A−1を画像Xに作用させればよい。即ち、下式(17)に示す操作を行えばよい。下式(17)は、上式(14)〜(16)と逆行列の定義から当然に成り立つ。
【数14】

【数15】

【0081】
図9に示すように、上式(17)の操作は、実際には画像Xと混色除去フィルターαのコンボリューションを画像Xの全画素について行うことで実現される。下式(18)に示すように、αは、逆行列A−1の成分を、カラーフィルターの色配列に対応して並べ替えたものである。このαは、左上(1行1列)の成分を基準位置とするフィルターである。
【数16】

【0082】
下式(19)に示すように、αの基準位置と画像Xの画素との対応に依って、コンボリューションには4つのパターンが存在する。下式(19)の右等号は、上式(17)より成り立つ。
【数17】

【0083】
図9に示すように、このコンボリューションにより生成される画像X’はベイヤー配列であり、確かに色が戻っていることがわかる。
【0084】
なお、コンボリューションにおいて上式(19)と同一の演算がなされればよいので、下式(20)に示すように、混色除去フィルターαを拡張してもよい。この拡張されたαは、上式(4)のαに対応する詳細例である。基準位置は中央(2行2列)の成分である。例えば、下式(21)に示すように、基準位置が画素Cに対応する場合、上式(19)と同様にRの色が戻る。
【数18】

【数19】

【0085】
次に、上記のようにして復元されるRGBの色成分について、更に詳細に説明する。以下では、図10に示す画像X’のR成分r11を例にとり説明する。図10では、位置(x,y)における画素をRxy、Cxy、rxy等と表す。
【0086】
下式(22)に示すように、画素加算により画像Xの画素値が求められる。また、下式(23)に示すように、混色除去処理により画像X’のR成分r11が求められる。下式(23)では、上式(18)のαを用いている。
【数20】

【数21】

【0087】
上式(22)、(23)を用いて整理すると、下式(24)が成り立つ。下式(24)より、R成分r11は、加算前の画像のある範囲の同色画素が演算された結果となっていることがわかる。即ち、R成分r11は、元の画素値R11そのものが復元されているわけではないが、加算前のR画素値が反映されたものである。
【数22】

【0088】
以上より、画像X’では、加算前の同色画素値が反映された色成分R、Gr、Gb、Bが復元され、画像X’から色温度の検出が可能であることがわかる。
【0089】
以上の実施形態によれば、図1に示すように、撮像装置100は、読み出し制御部131と混色除去処理部120と色温度検出部121と色温度調整部122と推定演算部(高解像度画像生成部104)を含む。
【0090】
図3に示すように、撮像素子(固体撮像素子102)には複数色の画素が配列される。図5に示すように、読み出し制御部131は、その複数色の画素を有する加算単位(ユニットGP00等)を撮像素子の複数の画素毎に設定し、その加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して低解像画像を取得する。図1、図7等で説明したように、混色除去処理部120は、取得された低解像画像に対して、複数色の画素が重み付け加算されたことによる混色を除去する処理を行う。色温度検出部121は、混色が除去された低解像画像に基づいて色温度を検出する。色温度調整部122は、検出された色温度に基づいて、低解像画像の色温度を調整する。図11(A)〜図14で後述するように、推定演算部は、色温度補正された低解像画像に基づいて、撮像素子の画素数に相当する解像度の高解像画像を推定する。
【0091】
この場合に、図5に示すように、読み出し制御部131は、重畳しながらシフトされた加算単位を設定することにより、複数色の各色と重み付け係数の対応が異なる複数の低解像画像(第1〜第4の低解像画像)を取得する。図1、図7等で説明したように、混色除去処理部120は、その複数の低解像画像に対して混色を除去する処理を行い、各色に対応する画素値(色成分。例えば図10に示す画像X’の画素値)を求める。
【0092】
このようにすれば、混色が除去されることにより色温度が検出可能となり、その色温度を用いてホワイトバランスを調整できる。これにより、複数の色信号が任意の割合で混合された画像のホワイトバランスを調整できる。また本実施形態によれば、重畳シフト加算により低解像画像が取得されることで、その低解像画像から高解像画像を復元できる。これにより、任意タイミングの高解像画像を、簡素な復元処理で取得可能になる。
【0093】
ここで、低解像画像のホワイトバランス(色温度)を調整するとは、加算前の画像においてホワイトバランスが調整された状態の低解像画像を得ることである。即ち、ホワイトバランスが調整された加算前の画像を重み付け加算して得たものと同等の低解像画像を、低解像画像を処理することにより得るということである。
【0094】
また本実施形態では、図7で説明したように、混色除去処理部120は、各色と重み付け係数の対応(混色比)を規定する係数行列A(上式(3))の逆行列に基づいて、混色を除去する混色除去フィルターα(上式(4))を構成し、構成した混色除去フィルターαにより混色を除去する処理を行う。
【0095】
より具体的には、図3に示すように、撮像素子の複数色(R、Gr、Gb、B)の画素はベイヤー配列である。図8に示すように、読み出し制御部131は、各色と第1〜第4の重み付け係数(1、1/2、1/2、1/4)が第1〜第4の組み合わせで対応する第1〜第4の低解像画像(画素値C〜Cf+3)を取得する。この第1〜第4の低解像画像の画素値C〜Cf+3は、重畳シフトにおける加算単位の設定位置に応じて1つの画像Xに再配列される。上式(3)や(14)で説明したように、混色除去処理部120は、第1〜第4の組み合わせを第1〜第4行に配列した行列を係数行列Aとする。上式(17)〜(19)で説明したように、混色除去処理部120は、その係数行列Aの逆行列A−1の成分を、再配列(画像Xの画素配列)に応じて配列することにより混色除去フィルターαを構成する。図9で説明したように、混色除去処理部120は、構成した混色除去フィルターαと再配列された画像Xとのコンボリューション演算を行う。
【0096】
なお本実施形態では、第1〜第4の低解像画像を画像Xに再配列する処理は、例えば図1の制御部106が行う。あるいは、図2の読み出し制御部131又は混色除去処理部120が行う。ここで、重畳シフトにおける加算単位の設定値に応じて再配列されるとは、例えば図5の位置(x,y)の加算画素値GPxyが、図6の画像Xにおいて同一位置(x,y)に配列されるということである。
【0097】
このようにすれば、各色と重み付け係数の対応に基づいて混色除去フィルターαを構成できる。これにより、重み付け加算により混色される前の画像の色情報を得ることが可能になり、その色情報に基づいて色温度検出を行うことができる。
【0098】
また本実施形態では、図7で説明したように、色温度調整部122は、検出された色温度に基づいて各色の調整ゲイン(上式(5)のg等)を求め、係数行列Aと調整ゲインとに基づいて調整フィルターω〜ω(上式(6))を構成し、構成した調整フィルターω〜ωにより色温度の調整を行う。
【0099】
より具体的には、上式(5)で説明したように、色温度調整部122は、係数行列Aと、各色の調整ゲインg、gGr、gGb、gを対角に配列した行列と、係数行列の逆行列A−1との積Wの成分を求める。上式(6)で説明したように、色温度調整部122は、再配列(画像Xの画素配列)に応じて配列することにより調整フィルターω〜ωを構成する。色温度調整部122は、構成した調整フィルターω〜ωと再配列された画像Xとのコンボリューション演算を行う。
【0100】
このようにすれば、各色と重み付け係数の対応に基づいて調整フィルターω〜ωを構成できる。これにより、重み付け加算により混色した低解像画像に対して、ホワイトバランス調整処理を行うことが可能になる。即ち、逆行列A−1により加算前の色情報が再現され、その色情報に対して調整ゲインによりホワイトバランス調整が行われ、係数行列Aにより再び加算後の画像に戻される。
【0101】
6.復元推定処理
次に、重畳シフト加算により取得した加算画素値から高解像画像を復元する処理について詳細に説明する。なお以下では、加算画素値{a00、a10、a11、a01}を例に説明するが、他の加算画素値についても同様である。また、加算単位が2×2画素である場合を例に説明するが、これに限定されず、例えば3×3画素であってもよい。
【0102】
図11(A)、図11(B)に、推定画素値と中間画素値の説明図を示す。推定処理では、加算画素値a00〜a11から中間画素値b00〜b21を推定し、その中間画素値b00〜b21から最終的な推定画素値v00〜v22を推定する。axy等のサフィックスは画素位置(x,y)に対応し、x、yはゼロ以上の整数である。なお、加算画素値{a00、a10、a11、a01}は、図5で説明した加算単位GP00、GP10、GP11、GP01に対応する。
【0103】
まず、中間画素値を推定する処理について、水平方向の最初の行の中間画素値b00〜b20を例に説明する。図12に示すように、中間画素値b00〜b20は、加算画素値a00、a10に基づいて推定される。説明を簡単にするために、例えば重み係数r=2とすると、加算画素値a00、a10は下式(25)で表される。
00=v00+(1/2)v01+(1/2)v10+(1/4)v11
10=v10+(1/2)v11+(1/2)v20+(1/4)v21 (25)
【0104】
下式(26)に示すようにb00、b10、b20を定義する。
00=v00+(1/r)v01=v00+(1/2)v01
10=v10+(1/r)v11=v10+(1/2)v11
20=v20+(1/r)v21=v20+(1/2)v21 (26)
【0105】
次に、上式(26)を用いて上式(25)を変形すると、下式(27)が成り立つ。
00=b00+(1/2)b10
10=b10+(1/2)b20 (27)
【0106】
上式(27)において、a00、a10に所定の重み係数を掛けて差分δiを取り、整理すると、下式(28)が成り立つ。
δi=a10−2a00
=(1/2)b20−2b00 (28)
【0107】
00を未知数(初期変数)とすると、下式(29)に示すように、中間画素値b10、b20がb00の関数として求められる。
00=(未知数),
10=2(a00−b00),
20=4b00+2δi=4b00+2(a10−2a00) (29)
【0108】
次に、図13に示すように、加算画素値パターン{a00,a10}と中間画素値パターン{b00,b10,b20}を比較し、その誤差が最小になる未知数b00を導出する。そして、導出した値を中間画素値b00として設定する。
【0109】
具体的には、加算画素値{axy}と中間画素値{bxy,b(x+1)y}には、下式(30)の関係が成り立つ。この下式(30)による重み付けを考慮すると、下式(31)に示す評価関数Eyが求められる。
xy=bxy+(1/2)b(x+1)y (30)
【数23】

【0110】
図14に示すように、Eyを最小にする未知数b00(=α)を求め、b00の値を決定する。そして、推定したb00の値を上式(29)に代入し、b10,b20を求める。
【0111】
最終的な推定画素値vxyは、中間画素値bxyを求めた手法と同様に求められる。垂直方向の最初の列(x=0列)を例にとると、上式(27)を下式(32)に置き換えれば、以降の処理は同様である。
00=v00+(1/2)v01
01=v01+(1/2)v02 (32)
【0112】
以上の実施形態によれば、図1に示すように、撮像装置100は、推定演算部(高解像度画像生成部104)を含む。図11(A)に示すように、第1のポジションに設定された第1の加算単位(例えばa00)と、第1のポジションがシフトされた第2のポジションに設定された第2の加算単位(例えばa10)は重畳する。
【0113】
この場合に、上式(28)に示すように、推定演算部は、第1、第2の加算単位(例えばa00、a10)の画素値が重み付け加算された第1、第2の加算画素値a00、a10の差分値δiを求める。図11(B)に示すように、第1の中間画素値b00は、加算単位a00から重畳領域(v10、v11)を除いた第1の領域(v00、v01)の加算画素値である。第2の中間画素値b20は、加算単位a10から重畳領域(v10、v11)を除いた第2の領域(v20、v21)の加算画素値である。上式(29)に示すように、第1、第2の中間画素値b00、b20の関係式を、差分値δiを用いて表す。図13等に示すように、その関係式を用いて第1、第2の中間画素値b00、b20を推定する。推定した第1の中間画素値b00を用いて加算単位に含まれる各画素の画素値{v00、v10、v11、v01}を求める。
【0114】
このようにすれば、重畳シフトされた加算画素値から中間画素値を一旦推定し、その重畳シフトされた中間画素値から推定画素値を求めることで、高解像画像の推定処理を簡素化できる。例えば、2次元フィルターの繰り返し演算(特開2009−124621号公報)や、初期値の設定に適当な部分を探索(特開2008−243037号公報)する等の複雑な処理が不要となる。
【0115】
ここで、重畳するとは、加算単位と加算単位が重なった領域を有することであり、例えば図11(A)に示すように、加算単位a00と加算単位a10が、2つの推定画素v10、v11を共有することである。
【0116】
また、加算単位のポジションとは、撮像素子の画素配列における加算単位の位置や座標のことである。あるいは、推定処理における画像データ上での加算単位の位置や座標のことである。また、シフトされたポジションとは、元のポジションから画素シフトされたポジションであり、元のポジションと位置や座標が一致しないポジションのことである。
【0117】
また本実施形態では、第1、第2の中間画素値(例えばb00、b20)を含む連続する中間画素値を中間画素値パターン{b00、b10、b20}とする。上式(29)に示すように、推定演算部は、中間画素値パターンに含まれる中間画素値の間の関係式を第1、第2の加算画素値a00、a10を用いて表す。図13に示すように、中間画素値の間の関係式で表された中間画素値パターンと第1、第2の加算画素値とを比較して類似性を評価する。その類似性の評価結果に基づいて、類似性が最も高くなるように中間画素値パターンに含まれる中間画素値{b00、b10、b20}を決定する。
【0118】
このようにすれば、重畳されながら画素シフトされた加算単位により取得された複数の加算画素値に基づいて、中間画素値を推定できる。
【0119】
ここで、中間画素値パターンとは、推定処理に用いられる範囲の中間画素値のデータ列(データの組み)である。また、加算画素値パターンとは、推定処理に用いられる範囲の加算画素値のデータ列である。
【0120】
また本実施形態では、上式(31)に示すように、推定演算部は、中間画素値の間の関係式で表された中間画素値パターン{b00、b10、b20}と加算画素値{a00、a10}との誤差を表す評価関数Eyを求める。評価関数Eyの値が最小となるように中間画素値パターンに含まれる中間画素値{b00、b10、b20}を決定する。
【0121】
このようにすれば、誤差を評価関数で表し、その評価関数の極小値に対応する中間画素値を求めることで、中間画素値の値を推定できる。例えば、上述のように最小二乗法を用いて未知数を求めることで、簡素な処理で中間画素推定の初期値を設定できる。例えば、初期値設定に適当な画像部分の探索(特開2008−243037号公報)が不要である。
【0122】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また固体撮像装置、撮像装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0123】
100 撮像装置、101 撮像光学系、102 固体撮像素子、
103 ホワイトバランス調整部、104 高解像度画像生成部、
105 現像処理部、106 制御部、107 メモリー、
108 表示処理部、109 モニター表示部、110 アクセス制御部、
111 記録媒体、120 混色除去処理部、121 色温度検出部、
122 色温度調整部、130 画素アレイ部、131 読み出し制御部、
A 行列、B 青色、C〜Cf+3 加算画素値、Ey 評価関数、
GP00,GP01,GP10,GP11 加算単位、Gr,Gb 緑色、
P1〜P4 画素、R 赤色、W 行列、X,X’ 画像、
00〜a11 加算画素値、b00 未知数、b00〜b21 中間画素値、
10 中間画素値、g,gGr,gGb,g ホワイトバランス調整ゲイン、
00〜v22 推定画素値、α 混色除去フィルター、δi 差分値、
ω〜ω ホワイトバランス調整フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子に複数色の画素が配列される場合に、前記複数色の画素を有する加算単位を前記撮像素子の複数の画素毎に設定し、前記加算単位に含まれる画素値を重み付け加算して低解像画像を取得する読み出し制御部と、
取得された前記低解像画像に対して、前記複数色の画素が重み付け加算されたことによる混色を除去する処理を行う混色除去処理部と、
混色が除去された前記低解像画像に基づいて色温度を検出する色温度検出部と、
検出された前記色温度に基づいて、前記低解像画像の色温度を調整する色温度調整部と、
色温度調整された前記低解像画像に基づいて、前記撮像素子の画素数に相当する解像度の高解像画像を推定する推定演算部と、
を含み、
前記読み出し制御部は、
重畳しながらシフトされた前記加算単位を設定することにより、前記複数色の各色と重み付け係数との対応が異なる複数の低解像画像を取得し、
前記混色除去処理部は、
前記複数の低解像画像に対して前記混色を除去する処理を行い、前記各色に対応する画素値を求めることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記混色除去処理部は、
前記各色と重み付け係数の対応を規定する係数行列の逆行列に基づいて、前記混色を除去する混色除去フィルターを構成し、構成した前記混色除去フィルターにより前記混色を除去する処理を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記撮像素子の前記複数色の画素が、ベイヤー配列である場合に、
前記読み出し制御部は、
前記各色と第1〜第4の重み付け係数とが第1〜第4の組み合わせで対応する第1〜第4の低解像画像を、前記複数の低解像画像として取得し、
前記第1〜第4の低解像画像の画素値は、
前記重畳シフトにおける前記加算単位の設定位置に応じて1つの画像に再配列され、
前記混色除去処理部は、
前記第1〜第4の組み合わせを第1〜第4行に配列した行列を前記係数行列とし、前記係数行列の逆行列の成分を前記再配列に応じて配列することにより前記混色除去フィルターを構成し、構成した前記混色除去フィルターと前記再配列された画像とのコンボリューション演算を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記色温度調整部は、
前記検出された前記色温度に基づいて前記各色の調整ゲインを求め、各色と重み付け係数との対応を規定する係数行列と、前記調整ゲインとに基づいて、調整フィルターを構成し、構成した前記調整フィルターにより前記色温度の調整を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記撮像素子の前記複数色の画素が、ベイヤー配列である場合に、
前記読み出し制御部は、
前記各色と第1〜第4の重み付け係数とが第1〜第4の組み合わせで対応する第1〜第4の低解像画像を、前記複数の低解像画像として取得し、
前記第1〜第4の低解像画像の画素値は、
前記重畳シフトにおける前記加算単位の設定位置に応じて1つの画像に再配列され、
前記色温度調整部は、
前記第1〜第4の組み合わせを第1〜第4行に配列した行列を前記係数行列とし、前記係数行列と、前記各色の調整ゲインを対角に配列した行列と、前記係数行列の逆行列との積の成分を、前記再配列に応じて配列することにより前記調整フィルターを構成し、構成した前記調整フィルターと前記再配列された画像とのコンボリューション演算を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
第1のポジションに設定された第1の加算単位と、前記第1のポジションがシフトされた第2のポジションに設定された第2の加算単位とが、重畳する場合に、
前記推定演算部は、
前記第1の加算単位の画素値が重み付け加算された第1の加算画素値と、前記第2の加算単位の画素値が重み付け加算された第2の加算画素値との差分値を求め、
前記第1の加算単位から重畳領域を除いた第1の領域の加算画素値である第1の中間画素値と、前記第2の加算単位から前記重畳領域を除いた第2の領域の加算画素値である第2の中間画素値との関係式を、前記差分値を用いて表し、
前記関係式を用いて前記第1、第2の中間画素値を推定し、推定した前記第1の中間画素値を用いて前記加算単位に含まれる各画素の画素値を求めることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記推定演算部は、
前記第1、第2の中間画素値を含む連続する中間画素値を中間画素値パターンとする場合に、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値間の関係式を前記第1、第2の加算画素値を用いて表し、
前記中間画素値間の関係式で表された前記中間画素値パターンと前記第1、第2の加算画素値とを比較して類似性を評価し、
前記類似性の評価結果に基づいて、前記類似性が最も高くなるように、前記中間画素値パターンに含まれる中間画素値を決定することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−5363(P2013−5363A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136996(P2011−136996)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】