説明

撮像装置

【課題】フィルムカメラやデジタルカメラなどの撮像装置で、広角レンズあるいは回転体ミラーを用いて撮影した場合に無駄になっていた、フィルムや撮像センサの四隅の領域を、有用な情報を記録するための領域として利用する。
【解決手段】撮像装置の筐体101に、光を内部に導くための導光窓105を設け、撮像センサ103までの光路として導光路107を設け、導光路107の途中に、光を透過する材質で作成された環境センサ106を配置する。魚眼レンズ102からの光が結像しない撮像センサの領域104に、環境センサが表示している環境情報を画像108として結像させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像センサの領域を有効に利用する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムカメラやデジタルカメラなどの撮像装置を用いて、水平方向360°や半天球あるいは全天球の画像を撮影する場合に、一般的な画角のレンズを使い多数の画像を撮影した後、撮影画像を画像合成する方法と、より広範囲を一回で撮影出来るような広角レンズを用いて撮影することで、画像合成に必要な画像枚数を減らす方法がある。また、水平方向360°撮影の画像に、撮影時の方角の情報を付加するため、回転体ミラーの中心部分に方位磁針を組み込むことにより、回転体ミラーを用いた水平方向360°撮影では死角になる天頂部分の領域を有効に利用する方法もある(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、フィルムカメラやデジタルカメラなどの撮像装置で、広角レンズを用いて撮影した場合に、フィルム面あるいは撮像センサの受光面の一部分に、広角レンズを通した光が当たらない領域が生じる。これは、フィルム面あるいは撮像センサの受光面の形状が四角形であるのに対して、広角レンズを通した光が円形状であるので、四角形の受光面の四隅の部分には光が当たらないからである。
【0004】
このような現象は広角レンズの撮影画角が大きくなるほど顕著になるため、フィルムや撮像センサの面積を有効に利用できず、デジタルカメラの場合には撮像センサの解像度を上げても、無駄になる領域が増えてしまうという問題があった。上記した回転体ミラーを用いた撮影方式においても、同様の問題があった。
【0005】
本発明は上記した課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、フィルムカメラやデジタルカメラなどの撮像装置で、広角レンズあるいは回転体ミラーを用いて撮影した場合に無駄になっていた、フィルムや撮像センサの四隅の領域を、有用な情報を記録するための領域として利用する撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、撮像用レンズを通過した光が結像しない撮像センサの領域(以下、領域)が存在する撮像装置において、環境情報を表示する一または複数の環境センサを有し、前記環境センサに表示された環境情報を前記領域に光学的に記録することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィルムや撮像センサの四隅の領域を、有用な情報を記録するための領域として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】レンズと撮像領域の関係を説明する図である。
【図2】環境センサの例を示す。
【図3】従来の撮像装置の構成を示す。
【図4】本発明の実施例1に係る撮像装置の構成を示す。
【図5】本発明の実施例2、3に係る撮像装置の構成を示す。
【図6】本発明の実施例4、5に係る撮像装置の構成を示す。
【図7】本発明の実施例6に係る撮像装置の構成を示す。
【図8】本発明の実施例7に係る撮像装置の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。本発明は、広角レンズあるいは回転体ミラーを用いた撮像装置による撮影に際して、電気信号を用いず物理的な現象のみによって撮影時点の環境を測定し表示する環境センサを用いて、広角レンズあるいは回転体ミラーでは結像されない撮像センサ領域に、環境センサの表示を光学的に写し込むことにより、撮像センサから出力される画像データの一部として、撮影時点の環境情報を取得する。
【0010】
本発明で適用可能な環境センサの例として、液体式や機械式の温度計あるいは湿度計、液体封入式や錘式の傾斜系や水準器などが挙げられる。これらの環境センサによって表示される、撮影時の温度や湿度、撮像装置の傾きや方向などの環境情報を、広角レンズあるいは回転体ミラーからの画像とともに撮像センサで撮影する。
【実施例1】
【0011】
図1(a)は、一般的なレンズと、フィルムあるいは撮像センサの撮像領域との関係を説明する図である。通常の画角のレンズの場合、レンズを通過した光は、フィルムあるいは撮像センサの撮像領域1よりも大きな範囲2に投射される。したがって、フィルムあるいは撮像センサの撮像領域全体に、レンズからの画像が写ることになる。
【0012】
図1(b)は、広角レンズと、フィルムあるいは撮像センサの撮像領域との関係を説明する図である。広角レンズの場合、より広い範囲を撮像領域に写し込む必要があるので、レンズを通過した光のより多くの領域を、撮像領域1に投射する。そのため一般的な縦横比のフィルムあるいは撮像センサを用いる撮像装置では、図1(b)に示すように、横方向の画像を撮像領域1に収めると、撮像領域1の左右に、レンズからの光が投射されない領域3が生じる。
【0013】
図1(c)は、魚眼レンズと、フィルムあるいは撮像センサの撮像領域との関係を説明する図である。魚眼レンズの場合、レンズを通過した画像の全てを、撮像領域1に投射する。そのため一般的な縦横比のフィルムあるいは撮像センサを用いる撮像装置では、図1(c)に示すように、撮像領域1の左右に、レンズからの光が投射されない広い領域3が生じる。
【0014】
図2(a)は、環境センサの例として液体封入式の一方向水準器を示す。この水準器は、光を透過する材質の楕円球状のカプセルに、液体と小さな気泡4を閉じ込めた構造である。水準器の外殻には2本の基準線5が設けられ、気泡4の位置が2本の基準線5の間にあれば、水準器6の長手方向に対して水平であることが判別できるようになっている。
【0015】
図2(b)は、環境センサの例として液体封入式の二方向水準器を示す。この水準器は、光を透過する材質の円盤状のカプセルに、液体と小さな気泡4が閉じ込めた構造である。水準器6の外殻には円形の基準線5が設けられ、水準器6の上面から見たとき、気泡4の位置が円形の基準線5の内側にあれば、水準器6の水平方向に対して水平であることが判別できるようになっている。
【0016】
図2(c)は、環境センサの例として錘式の傾斜計を示す。支点7から支持腕8が延びており、その先端には錘と指針9がある。支持腕8は支点7を介して数値板10に接続され、錘と指針9は重力により常に下を指す。数値板10は半円状に形成され、外周部11に沿って角度の目盛りが付けられ、指針が指す目盛りを読むことにより、数値板10に対する錘9の角度が分かる。
【0017】
図2(d)は、環境センサの例として液体式の温度計を示す。ガラス細管12に液体13が封入され、周囲の温度により液体が膨張あるいは縮小して、液体面の位置が変化し、その位置を数値板14に記載された値として読み取る。数値板14は光を透過する材質、光を透過しない材質、あるいは光を反射する材質の何れでもよい。
【0018】
図2(e)は、環境センサの例として機械式の温度計を示す。この温度計では、渦巻き状に巻いた板バネ15を中心に、板バネ15が周囲の温度により伸縮する量を、板バネに装着した指針16の移動量に変換する。指針16の位置を数値板17の値として読み取る。数値板17は光を透過する材質、光を透過しない材質、あるいは光を反射する材質の何れでもよい。
【0019】
図2(f)は、環境センサの例として球体の傾斜計を示す。この傾斜計は、光を透過する材質の球状のカプセル18に、球体の錘19が封入されている構造である。球体のカプセル18の傾き量を、球体のカプセル18に設けた測定線20と、内部の錘19との位置関係を上面から目視することで、値として読み取る。傾きの方向は、上面から目視した際の内部の錘の位置で判断する。測定線20は同心円に限定されず、球体のカプセルの極点を結ぶ子午線方向に線を設けることにより、球体のカプセルの傾き方向も数値として読み取ることが可能になる。
【0020】
この他、内部に液体が封入されている球体の傾斜計や、球体の錘ではなく液体に浮かぶ浮きを封入する構造もある。内部に液体を封入する例では、錘や浮きではなく気泡を使うものもある。
【0021】
図3は、本発明を適用する撮像装置の構成例を示す。撮像装置の筐体101は遮光され、前面に魚眼レンズ102が組み込まれ、レンズ102の反対側の内部には撮像センサ103が配置されている。魚眼レンズ102は3枚のレンズで構成され、レンズを通過した光が撮像センサ103上に結像する。このとき、図1(c)で説明したように、撮像センサ103の左右には、魚眼レンズ102からの光が結像しない領域104が存在する。
【0022】
図3において、3枚のレンズの端を結び、撮像センサ103まで達している線は、魚眼レンズ102から撮像センサ103に至るまでの光線の通過範囲を示す。図3では、魚眼レンズ数が3枚で構成されているが、レンズの枚数に関わらず本発明は適用可能である。また、撮像センサではなくフィルムの撮像装置でも、本発明は適用可能である。撮像装置の構成によっては、レンズからの光が結像しない領域が左右の何れか一方にしか存在しない場合でも、本発明は適用可能である。撮像装置の一例であるフィルムカメラやデジタルカメラでは、図3に示す機能部品以外の多くの機能部品が内蔵されているが、それらは本発明には関係しないので省略する。
【0023】
図4は、本発明の実施例1に係る撮像装置の構成を示す。撮像装置の筐体101に、光を内部に導くための導光窓105を設け、導光窓105から撮像センサ103までを導光路107とする。そして、導光路107の途中に、光を透過する材質で作成された環境センサ106を配置する。実施例1の構成によれば、魚眼レンズ102からの光が結像しない撮像センサ領域104に、環境センサ106が表示している環境情報を、画像108として結像させることが出来る。
【0024】
導光路107の途中や環境センサ106の前後に集光用レンズを配置して、環境センサ106の表示を拡大あるいは縮小して撮像センサ103に結像させても良い。環境センサ106の表示を結像させる撮像センサ103の領域に対して、環境センサ106の表示が大きい場合には縮小して結像させ、逆に環境センサ106の表示が小さい場合には拡大して結像させればよい。一般的には、環境センサ106の物理的な大きさに対して、撮像センサ103の領域サイズの方が小さい場合が多いので、導光路の途中にレンズを配置して、環境センサ106の表示を縮小して結像させるのがよい。また、導光窓は単なる穴でも構わないが、撮像装置内部に異物が侵入しないように、ガラス等の光を透過する材質で密閉する方がよい。また、環境センサ106の表示の拡大、縮小のレンズを導光窓の密閉に兼用しても良い。
【0025】
さらに、上記した実施例では環境センサ106が1個であるが、複数の環境センサ106を配置することも可能である。例えば、2つの一方向水準器を互いに直行する向きに配置することにより、二方向水準器と同様の効果が得られる。温度計と二方向水準器を配置することにより、傾きと温度の2種類の情報を画像に写し込む(記録する)ことが可能になる。
【実施例2】
【0026】
図5(a)は、本発明の実施例2に係る撮像装置の構成を示す。実施例2では、導光窓105と導光路107の途中に、鏡108を配置することにより、導光窓105、環境センサ106の配置の自由度を高めた実施例である。この他、導光窓105と導光路107の途中に、複数の鏡やレンズを配置することも可能である。
【実施例3】
【0027】
図5(b)は、本発明の実施例3に係る撮像装置の構成を示す。実施例3は、光を透過しない材質の環境センサを用いた実施例である。光を透過しない材質の環境センサ106でも、図5(b)に示すように環境センサ106、導光窓105、導光路107を配置することにより、環境センサ106の表示を撮像センサ103に結像させることが可能である。また、導光窓と導光路の途中に、鏡やレンズを配置することにより、導光窓、環境センサの配置の自由度を高めることができる。
【実施例4】
【0028】
図6(a)は、本発明の実施例4に係る撮像装置の構成を示す。実施例4では、魚眼レンズ102からの光が結像しない撮像センサ103上のセンサ領域が広い場合に、撮像装置の筐体101の上部と下部に、それぞれ導光窓105a、105bと導光路107a、107bを設け、複数の環境センサ106a、106bを配置する。実施例4では、導光窓105a、105bからの光をプリズム109a、109bにより撮像センサ103に照射している。他の構成例として、一つの導光窓からプリズムあるいは鏡を用いて複数の導光路に光を分配し、それぞれの導光路中の環境センサの表示を、別々の撮像センサ領域に結像させる構成でもよい。
【0029】
広い画角を持つ魚眼レンズでは、レンズからの光が結像されない撮像センサ領域が広くなるが、本実施例によれば、無駄になる撮像センサの領域を環境情報の記録領域として有効に利用できる
【実施例5】
【0030】
図6(b)は、本発明の実施例5に係る撮像装置の構成を示す。実施例5では、環境センサ106を導光路107中に配置するのではなく、撮像装置の筐体101の導光窓に配置する実施例である。実施例5によれば、特に環境センサが温度計である場合に、撮像装置の筐体内部の温度ではなく、撮像装置の筐体の外部気温を表示させることができる。本実施例によれば、撮影時の温度を画像データの一部として記録することができる。
【実施例6】
【0031】
図7は、本発明の実施例6に係る撮像装置の構成を示す。実施例6は、二方向水準器を内蔵した実施例であり、図7(a)は上面、(b)は側面を示す。
【0032】
環境センサ106の配置に制約がある場合に、鏡により導光窓と環境センサの位置関係を適切に設計できる。二方向水準器は、円盤状の環境センサを水平に配置する必要があるので、実施例6では、導光窓105を撮像装置の筐体101の上部に配置し、導光窓105の直下に二方向水準器110を配置し、二方向水準器110の下側に鏡108を配置する。この鏡108によって二方向水準器110を通過した光を撮像センサ103の方向に曲げる。図7(b)では、撮像センサ103に魚眼レンズ102からの光が結像しない領域が図示されていないが、その理由は、一般的な撮像センサは横長であるので、撮像センサの上下方向には無駄になるセンサ領域がないか、あるいは非常に少なくなるように設計されているからである。
【0033】
図7(c)は、実施例6の撮像装置の構成例で取得される画像データを説明する図である。実施例6の撮像装置で得られる画像データの撮像領域202中には、魚眼レンズ102からの画像が投射されている領域201と、二方向水準器110の表示204が投射されている領域がある。
【0034】
図7(c)の画像データでは、二方向水準器110の内部の気泡が、右下方向に少しずれている。図7(a)、(b)に示す撮像装置では、二方向水準器110の表示を鏡108で後方に90°曲げているので、二方向水準器110を上から覗いたとすると、気泡は左下方向にずれていることになる。したがって、図7(c)の画像データを撮影したときの撮像装置は、水平よりも少し前かがみで、かつ左肩が少し上がった状態であったことが分かる。
【0035】
このように、環境センサとして二方向水準器110を内蔵した撮像装置であれば、撮影した画像データの一部に写し込まれている環境センサの表示を利用して、撮影時の撮像装置の傾きを知ることが可能になる。また、近年のデジタルカメラでは、撮影前あるいは撮影中の画像を撮像装置の筐体に設置された画像表示部に表示する機能があるので、そのようなデジタルカメラに本発明を適用すれば、カメラの傾きを当該表示部に表示された、二方向水準器の表示を参照しながら、撮影前あるいは撮影中にカメラの傾きを調節することが可能となる。
【実施例7】
【0036】
図8は、本発明の実施例7に係る撮像装置の構成を示す。図8(a)は、球体の傾斜計を内蔵した撮像装置の側面を示し、図8(b)は、実施例7の撮像装置で撮影した画像データを示す。
【0037】
実施例7の構成例では、撮像装置の傾きを詳細に測定するために、球体の傾斜計111を内蔵している。図8(b)に示す画像データの撮像領域202中には、魚眼レンズ102からの画像が投射されている領域201と、球体の傾斜計111の表示205が投射されている領域がある。
球体の傾斜計111を内蔵することにより、傾斜計内部の球体の位置と、傾斜計に刻まれた複数の基準線との位置関係から、撮影時の撮像装置の傾きを画像データの一部として記録でき、撮影時点で撮像装置がどの方向にどの程度傾いていたかの詳細な情報を、撮影した画像データから取得することが可能になる。また、いずれの実施例も撮像装置を単体として用いた例を示したが、携帯電話、PDA、スマートフォン、タブレット型情報処理装置等の撮像装置として組み込んでも良い。
【符号の説明】
【0038】
101 撮像装置の筐体
102 魚眼レンズ
103 撮像センサ
104 光が結像しないセンサ領域
105 導光窓
106 環境センサ
107 導光路
108 環境センサを透過した画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開2003−029356号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用レンズを通過した光が結像しない撮像センサの領域(以下、領域)が存在する撮像装置において、環境情報を表示する一または複数の環境センサを有し、前記環境センサに表示された環境情報を前記領域に光学的に記録することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
光を撮像装置内部に導く開口部を撮像装置の筐体に設け、前記開口部から前記撮像センサまでの光路中に前記環境センサを配置したことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
光を撮像装置内部に導く開口部を撮像装置の筐体に設け、前記開口部に前記環境センサを配置したことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
前記環境センサは、温度計、水準器、傾斜計のいずれか一または複数を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像用レンズは、魚眼レンズであることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−54236(P2013−54236A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192985(P2011−192985)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】