説明

撮像装置

【課題】主要被写体だけでなく背景の閃光発光に対する反射率や位置、距離を含んだ詳細なシーン判別が可能で、主要被写体への適切な本発光量を精度よく決定することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮影に先立ち発光を行う閃光手段と、閃光手段の発光を制御し、プリ発光と本発光とを行わせる発光制御手段と、複数の分割測光領域を有する測光センサと、撮影領域からの入射光の複数の分割測光領域における強さを検出する測光手段と、撮影領域のシーン判別を行うシーン判別手段と、本発光の光量を決定する調光手段と、を有し、発光制御手段はプリ発光として、発光量の異なる1回目のプリ発光と2回目のプリ発光とを行い、シーン判別手段は、測光手段が検出したプリ発光の測光結果を利用してシーン判別を行い、調光手段は、シーン判別の結果を利用して本発光の光量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
本発光に先立ってプリ発光を行う撮像装置に関し、特に、プリ発光の測光結果に基づいてより高い精度で調光を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、夜景等の光量の少ないシーンや逆光シーンの撮影において、光量の不足を補うため閃光装置を使った撮影方法が用いられていた。この閃光装置は一般に、キセノンガスが充填された放電管を有しており、コンデンサからの放電により瞬間的にキセノンガスを発光させる仕組みとなっている。
【0003】
このような閃光装置においては、本発光の前にプリ発光を行うものがあった。このプリ発光とは、従来、暗所での撮影時に発生する赤目現象を抑えるため、本発光前にあらかじめ発光を行う機能のことである。
【0004】
赤目現象とは、暗い場所で閃光撮影を行った場合に、広がっている瞳孔にフラッシュの光が入り、網膜内の毛細血管に強い光が当ることで瞳が赤く写るという現象である。プリ発光は、撮影の直前に強い光を発し、瞳孔を収縮させることにより、これを防ぐものである。
【0005】
ところで、近年では、上述のプリ発光を赤目軽減のためではなく、測光のために行う撮像装置が広く知られている。
【0006】
例えば、特許文献1に記載の発明のように、プリ発光を複数回に分けて適正な本発光量を決定する方法が知られている。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明のように、撮影画面を複数領域に分割し、各分割領域において、環境光とプリ発光を用いた測光値をそれぞれ算出し、その差に基づいて本発光量を制御するという方法が知られている。この発明によれば、被写体と背景輝度を判断してより適正な露出を得ることができる。
【0008】
また、特許文献3に記載の発明では、プリ発光の測光結果を用いて撮影領域を判別し、これに基づいて撮影情報が決定されるので、失敗撮影を減らせるとしている。
【0009】
また、本出願人によりなされた特許文献4に記載の発明では、測光のためのプリ発光は用いていないものの、シーン判別と逆光判別とを組み合わせることで、より高精度な露出演算が可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−338563号公報
【特許文献2】特許第3098048号公報
【特許文献3】特開平08−262528号公報
【特許文献4】特開2010−268253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、プリ発光による反射光の光量が本発光量の計算に使用できる量になるまで、光量を徐々に上げながらプリ発光を繰り返すことになる。このため、プリ発光を繰り返すことで閃光装置の電力消費が増加し、本発光に用いるべき電力の確保が困難になるという問題があった。さらに、最後の1回のプリ発光のみ本発光量の演算に用いるので、演算の精度については従来のものと何ら変わるものではない。
【0012】
また、特許文献2に記載の発明では、環境光とプリ発光との差分を取得することでプリ発光によって変化した環境光成分を取得するとしているが、実際には、プリ発光による反射光データは環境光の波長の種類、強さによってその中に埋没してしまうことがあり、また、環境光の光源が複数ある場合にはその波長の種類により部分的に強く出たり、弱く出たりしてしまうことがある。このため、環境光とプリ発光との差分を取ることのみでは、本発光量演算の精度としては依然課題がある。
【0013】
また、特許文献3に記載の発明では、プリ発光の測光結果を利用して主要被写体の大きさを判断しているのみで、判別可能なシーンの数が不十分であり、その結果の露出演算の精度も低い。また、環境光と一回のプリ発光を比べているだけであるため、被写体の反射率のみによって被写体までの距離の遠近を判断することが難しい。
【0014】
また、特許文献4に記載の発明では、シーン判別と逆光判別とを組み合わせることで数多くのシーンを判別できるものの、強い逆光シーンであった場合でも閃光装置を利用することが想定されておらず、発明の適用範囲が狭い。
【0015】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、発光強度が異なる2度のプリ発光により撮影領域を測光することで、主要被写体だけでなく背景の閃光発光に対する反射率や位置、距離を含んだ詳細なシーン判別が可能で、主要被写体への適切な本発光量を精度よく決定することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明を実施の撮像装置は、撮影に先立ち発光を行う閃光手段と、閃光手段の発光を制御し、プリ発光と本発光とを行わせる発光制御手段と、複数の分割測光領域を有する測光センサと、撮影領域からの入射光の複数の分割測光領域における強さを検出する測光手段と、撮影領域のシーン判別を行うシーン判別手段と、本発光の光量を決定する調光手段と、を有し、発光制御手段はプリ発光として、発光量の異なる1回目のプリ発光と2回目のプリ発光とを行い、シーン判別手段は、測光手段が検出したプリ発光の測光結果を利用してシーン判別を行い、調光手段は、シーン判別の結果を利用して本発光の光量を決定することを特徴とする。
【0017】
さらに本発明を実施の撮像装置は、上記発明において、シーン判別手段は1回目のプリ発光の測光結果と2回目のプリ発光の測光結果の差分を利用してシーン判別を行うことを特徴とする。
【0018】
さらに本発明を実施の撮像装置は、上記発明において、シーン判別手段は差分を利用して本発光が必要であるかどうかを判断することを特徴とする。
【0019】
さらに本発明を実施の撮像装置は、上記発明において、シーン判別手段は差分を利用して主要被写体と背景との判別を行うことを特徴とする。
【0020】
さらに本発明を実施の撮像装置は、上記発明において、シーン判別手段は背景と判別された領域の中に第2の被写体が存在するかどうかを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明を実施の撮像装置によれば、発光強度が異なる2度のプリ発光により撮影領域を測光することで、主要被写体だけでなく背景の閃光発光に対する反射率や位置、距離を含んだ詳細なシーン判別が可能で、主要被写体への適切な本発光量を精度よく決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態であるデジタル一眼レフカメラの主要な構成を示したブロック図である。
【図2】測光センサの分割測光領域と焦点検出回路の測距点との位置関係を説明する図である。
【図3】プリ発光を伴う撮影ルーチンを説明するフローチャートの一例である。
【図4】調光演算サブルーチンを説明するフローチャートの一例である。
【図5】シーン判別の一例を示すために、フローチャートの一部を抜粋した図である。
【図6】シーン判別の一例を示すために、フローチャートの一部を抜粋した図である。
【図7】シーン判別の一例を示すために、フローチャートの一部を抜粋した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明に係る撮像装置の一実施形態であるレンズ交換式デジタル一眼レフカメラの主要な構成を示したブロック図である。
【0025】
このデジタル一眼レフカメラは、図1に示すようにカメラ本体100及び交換レンズ200から構成されている。交換レンズ200は概ね円筒形状を有しており、内部に結像光学系201を備えている。
【0026】
交換レンズ200の後端部には不図示のレンズ側マウントが設けられている。また、カメラ本体100の前面には不図示のカメラ側マウントが設けられており、双方のマウントが結合することで交換レンズ200とカメラ本体100とが着脱可能に固定される。これにより、結像光学系201により集光された撮影領域からの入射光がカメラ本体100側に導かれる。
【0027】
交換レンズ200内には結像光学系201の他に、結像光学系201の開口量を調節するための絞り羽根を駆動制御する絞り駆動回路202と、レンズCPU203が設けられている。このレンズCPU203は、交換レンズ200に関するレンズデータを格納する不図示のメモリ領域を有している。
【0028】
格納されるレンズデータとしては、例えば、交換レンズ200の焦点距離、開放F値、射出瞳位置、ズーミング及びフォーカシングに関する光学データ等がある。レンズCPU203は必要に応じてこのメモリ領域にアクセスし、必要な情報の読み出し及び書き換えを行う。
【0029】
レンズCPU203はレンズ側マウント及びカメラ側マウントに設けられた電気接点部を介してカメラ本体100内のカメラCPU101と電気的に接続されており、上述したレンズデータをカメラ本体100に送信したり、カメラ本体100から送られる各種命令を受信し実行する。このカメラCPU101は不図示のメモリ領域を有しており、後述するシーン判別に必要な種々のパラメータが保存される。また、シーン判別の結果から本発光量を決定するための補正係数が記憶されている。
【0030】
カメラ本体100内の光軸上にはクイックリターンミラー102が設けられており、その上方には撮影者が撮影領域を確認するためのファインダ光学系が設けられている。また、クイックリターンミラー102後方の光軸上には、撮影領域からの入射光を光電変換するCCD、CMOS等からなる撮像素子103が設けられている。撮像素子103の前面には、撮像素子103の露光時間を調節するためのシャッタ駆動回路104が設けられており、カメラCPU101により制御される。
【0031】
ファインダ光学系は、クイックリターンミラー102側から、入射光の結像面に位置するピント板105、入射面、射出面及び複数の反射面を有するペンタプリズム106、撮影者がファインダ像を観察するための接眼レンズ107、の順番に配置されている。
【0032】
クイックリターンミラー102は、デジタル一眼レフカメラが非撮影状態にあるときは図1に示すような観察位置に位置している。結像光学系201を透過してカメラ本体100内に入射した入射光は、観察位置にあるクイックリターンミラー102によって上方に反射され、ピント板105で一次結像する。
【0033】
ピント板105は、一方の面には所定の拡散特性を有するマット面が形成されており、他方の面にはフレネル面が形成されている。ピント板105のフレネル面を透過した入射光は、マット面に結像した後ペンタプリズム106に入射する。
【0034】
撮影領域からの入射光はペンタプリズム106内で反射を繰り返すことで倒立像から正立像に変換された後、ペンタプリズム106後方の射出面より射出される。撮影者は、この射出面に対向するように配置された接眼レンズ107を介して入射光を観察することで、撮影領域の確認等を行うことができる。
【0035】
接眼レンズ107の上方には、接眼レンズ107の光軸から偏心した位置に測光光学系108が設けられている。ピント板105で拡散された入射光の一部が、この測光光学系108を介して測光センサ109に導かれている。測光センサ109は、公知の分割測光を行うために複数の測光領域を有しており、各分割測光領域に導かれる入射光の照度に応じた測光データを出力する。
【0036】
本実施例のカメラ本体100では、図2に示すような7行×11列に分割された測光領域に対応する合計77個のセグメントを有する測光センサ109を用いている。
【0037】
測光演算回路110では、測光センサ109から出力された測光データに基づいて公知の測光演算が行われる。
【0038】
また、クイックリターンミラー102はその一部がハーフミラーで構成されており、その後方にサブミラー111が設けられている。クイックリターンミラー102が観察位置にあるときは、撮影領域からの入射光の一部がこのサブミラー111により下方に反射され、焦点検出回路112に導かれる。
【0039】
本実施例の焦点検出回路112は5つのクロスセンサ型測距センサを有しており、これらの測距センサの位置に対応する各測距点と上述した分割測光領域とは図2に示すような位置関係となっている。
【0040】
撮影者によりレリーズボタンが半押しされると、公知の位相差検出方式により各測距点におけるデフォーカス量が焦点検出回路112により算出され、カメラCPU101に送られる。
【0041】
カメラCPU101は、レンズCPU203を介して合焦位置にフォーカスレンズを駆動するよう指示を出す。レンズCPU203は、不図示のレンズ駆動機構を介してフォーカスレンズを合焦位置に駆動させることでAF処理が完了する。
【0042】
カメラ本体100の上部には不図示の接点を備えたいわゆるホットシューが設けられており、そのホットシューには閃光装置300が着脱可能に取り付けられている。閃光装置300は不図示の接点を介してカメラ本体100から発光指示を受けると閃光発光を行う。
【0043】
閃光装置300は、閃光を発生させる放電管310と、発生した閃光を被写体側に効率よく反射させる反射鏡320と、閃光装置300の発光を制御する発光制御回路330を有している。また、その他の制御や通信一般を行う不図示の回路も備えている。
【0044】
次に、本発明に係る撮像装置の一般的な撮像処理を簡単に説明する。
【0045】
撮影者により不図示のレリーズボタンが半押し(1stレリーズON)されると、測光センサ109は撮影領域からの入射光を受光し、環境光に基づいた各測光領域の測光データを出力する。測光データを取得した測光演算回路110は測光演算を行い、各測光領域毎の輝度値を算出する。この輝度値は、0〜255の256段階で表される。
【0046】
続いて、閃光装置300は所定の強度でプリ発光を行う。本発明に係る撮像装置では、このプリ発光を異なる発光強度で2度行うこととする。詳細については後述する。
【0047】
測光センサ109はプリ発光により生じた反射光を含んだ入射光を受光し、2度のプリ発光に基づいた各測光領域の測光データをそれぞれ出力する。測光データを取得した測光演算回路110は測光演算を行い、各測光領域毎の輝度値を算出する。
【0048】
さらに本発明に係る撮像装置では、2度のプリ発光の測光結果を利用して、撮影領域を詳細に判別可能となっている。そして、シーン判別の結果に応じて、本発光の光量を精度よく決定することができる。シーン判別及び本発光量の決定については後述する。
【0049】
カメラCPU101は、シーン判別の過程で、撮影領域における主要被写体を決定する。またカメラCPU101は、シーン判別の過程で、閃光装置300による本発光が必要であるかどうかを判断する。
【0050】
本発光量が決定されると、各測光領域毎の輝度値に基づきカメラCPU101において、主要被写体が適正露出となるように公知の露出演算が行われ、シャッタスピードや絞り値等の撮影条件が決定される。また、焦点検出回路112による焦点演算に基づいて交換レンズ200内のフォーカスレンズの合焦駆動が行われ、撮影準備が整う。
【0051】
撮影者によりレリーズボタンが全押し(2ndレリーズON)されると、クイックリターンミラー102は観察位置からミラーアップされて退避位置に移動される。また、カメラCPU101は、レンズCPU203を介して交換レンズ200内の絞り駆動回路202を露出演算により決定されたステップ数だけ絞り羽根を絞るよう制御し、さらに、シャッタ駆動回路104を露出演算により決定されたシャッタスピードに対応する露光量だけ撮像素子103が露光するように制御する。
【0052】
シャッタ幕の走査により所定の時間だけ露光された撮像素子103は、撮影領域からの入射光を撮影画像信号に変換し取得することで撮像処理が完了する。
【0053】
閃光装置300による発光を用いた撮影である場合には、レリーズボタンの全押しに伴い、カメラCPU101から発光制御回路330に対して発光指示がなされ、発光制御回路330は調光により決定された発光量で閃光装置300を発光させる。詳しくは、放電管310にトリガ電圧が印加された後、不図示のメインコンデンサに蓄えられた電気エネルギが放電管310に放電され、閃光装置300の発光が行われる。
【0054】
撮像素子103で取得された撮影画像信号は、不図示の信号処理回路において所定の画像処理及び記録フォーマットの変換処理等が施され、画像データとしてメモリーカード等の不図示の外部メモリ装置に記録される。また画像データは、カメラ本体100の背面に設けられたLCDや有機EL等からなる不図示の表示部に送られ、これにより撮影者は自分が撮影した画像を確認することができる。カメラ本体100がいわゆるライブビュー対応のカメラであった場合には、この表示部に撮像素子103で得られた撮影領域のライブビュー画像を表示することも可能である。
【0055】
次に、本願発明に係るプリ発光を用いた調光について、フローチャートを用いて説明する。図3は、プリ発光を伴う撮影ルーチンを説明するフローチャートの一例である。
【0056】
まずステップS101において撮影者により不図示のレリーズボタンが半押しされると、ステップS102において各測距点のデフォーカス量の検出が行われる。
【0057】
次にカメラCPU101はステップS103において、不図示の接点を介して閃光装置300内の発光制御回路330に対し、所定の発光強度でプリ発光を行うよう指示を出す。なお、本プリ発光は1回目のプリ発光(以後、Pre1とも表記する)となる。
【0058】
このときの発光強度は、例えば、測光センサ109により常時行われている通常測光の結果に応じて、カメラCPU101により決定される。また、装着された交換レンズ200からカメラCPU101に送られるレンズIDに基づき、カメラCPUに予め記憶されたテーブルを参照して1回目のプリ発光Pre1の強度を設定するようにしてもよい。
【0059】
さらに、カメラCPU101側で発光強度が設定できない閃光装置300の場合には、閃光装置300側に固定値として記憶させておくことも考えられる。
【0060】
1回目のプリ発光Pre1が行われると、ステップS104においてプリ発光により生じた反射光を含む入射光を測光装置109で受光し、測光演算回路110において測光演算が行われる。この測光演算により、Pre1における各分割測光領域の輝度値が算出される。
【0061】
続けて、ステップS105において2回目のプリ発光(以後、Pre2とも表記する)が行われる。本プリ発光は、ステップS103で行われた1回目のプリ発光Pre1よりも強い発光強度で行われる。このときの発光強度も、Pre1と同様に種々の方法により決定される。
【0062】
2回目のプリ発光Pre2が行われると、ステップS106においてPre2についての測光が行われ、各分割測光領域の輝度値が算出される。
【0063】
2度のプリ発光における測光が終了するとステップS107に進み、カメラCPU101は2度の測光結果に基づいて調光演算を行い、閃光装置300の本発光量を決定する。調光演算について、詳しくは後述する。
【0064】
本発光量が決定されると、カメラCPU101はステップS108において、本発光を加味した露出演算を行い、シャッタスピードや絞り値等の撮影条件を決定する。この露出演算については、公知の技術を用いることができる。以上により、撮影準備が整う。
【0065】
撮影準備が整った後、ステップS109において撮影者によりレリーズボタンが全押しされると、ステップS110においてカメラCPU101は、ステップS107において決定された発光量で閃光発光するように発光制御回路330に指示を出し、これを受けて閃光装置300が本発光を行う。
【0066】
続けてステップS111においてカメラCPU101は、ステップS108において決定された撮影条件の下で撮像を行う。撮像により得られた画像データは、不図示のメモリーカードに記録され、本フローチャートが終了する。
【0067】
図4に示すフローチャートは、図3のステップS107に記載の調光演算サブルーチンを説明するフローチャートの一例である。
【0068】
まずステップS201においてカメラCPU101は、1回目のプリ発光Pre1における測光で得られた各被写体の輝度値と、通常測光で得られた画面全体での平均輝度値との差分、及び、2回目のプリ発光Pre2における測光で得られた各被写体の輝度値と、通常測光で得られた画面全体での平均輝度値との差分、を算出する。これにより得られた各差分輝度値ΔBv1及びΔBv2は、それぞれ不図示のメモリ領域に保存される。
【0069】
次にステップS202においてカメラCPU101は、同一被写体における1回目のプリ発光Pre1における輝度値と2回目のプリ発光Pre2における輝度値との差分を算出する。これにより得られた差分輝度値ΔBvも、不図示のメモリ領域に保存される。
【0070】
次にステップS203においてカメラCPU101は、本発光の基準となる基準光量を算出し、不図示のメモリ領域に保存する。この基準光量とは、開口絞りがF1.0で2度のプリ発光で得た距離情報を基にした光量であり、環境光による影響を反映されていない。
【0071】
上述したステップS201とステップS202とで得られた各差分輝度値を用いて、次にステップS204においてカメラCPU101は撮影領域のシーン判別を行う。このシーン判別の過程で、本撮影の主要被写体が決定され、また、閃光装置300による本発光が必要であるかどうかが判断される。
シーン判別について、詳しくは後述する。
【0072】
撮影領域のシーン判別が終了すると、ステップS205においてカメラCPU101は、不図示のメモリ領域に記録されているテーブルから、判別されたシーンに該当する光量補正係数を決定する。
【0073】
続いてカメラCPU101は、ステップS206において決定された光量補正係数を用いて基準光量を補正し、本発光量を決定する。その後、図3に示す撮影ルーチンに戻る。
【0074】
ここで、上述したステップS204に記載のシーン判別について詳しく説明する。
【0075】
まず、上述した調光演算サブルーチンにより、カメラCPU101の不図示のメモリ領域には以下の3つの差分輝度値が保存されている。
・ΔBv=Pre1時の輝度値−Pre2時の輝度値
・ΔBv1=Pre1時の輝度値−通常測光時の輝度値
・ΔBv2=Pre2時の輝度値−通常測光時の輝度値
【0076】
これらの差分輝度値をパラメータとして従来からシーン判別に用いられているパラメータに追加し、より詳細なシーン判別を行う。従来から用いられてきたパラメータとしては、例えば以下のものがある。
・レンズ固有の情報
・レンズからの距離情報
・測距点情報
・人物判定
【0077】
これらの差分輝度値をパラメータとして用いることで、例えば以下のような分岐を設定することができる。

【0078】
これらの分岐によれば、閃光装置300によるプリ発光の影響度が高い領域が連続してなるブロックが複数存在し、且つ、その他の影響度が低い領域が連続で存在していれば、影響度が高いブロックの範囲が被写体となり得る領域であり、それ以外が背景となり得る領域であると判別することができる。
【0079】
また、プリ発光の影響度を段階的に分けることで、被写体の中から主要被写体を決定することができる。即ち、連続した影響度のブロックが複数存在する場合には、それらのブロックの中で、ある一定以上の影響度であり、且つ、そのブロック内に異なる影響度のブロックが内包されていない場合に、そのブロックが被写体であると判別することができる。被写体と判断されたこれらのブロックにおいて、交換レンズ200からのエンコーダ距離情報と合致したものが主要被写体であると決定することができる。
【0080】
また、Pre1時の輝度値とPre2時の輝度値の差分輝度値であるΔBvが0であった場合は、撮影領域は閃光装置300の発光による影響を受けていないので本発光を行う必要がないと判断する。ΔBv=0となる例としては、撮影シーンが風景のような遠距離のためにストロボ光が届かない場合と、被写体までの距離が近すぎてプリ発光時に被写体が白飛びしている場合が考えられる。
【0081】
また、背景であると判別された連続した大きなブロックがプリ発光の影響を主要被写体よりも受けており、
且つ、その背景ブロック内に影響度が僅かに異なるブロックが内包されている場合には、
その背景ブロックは単一の壁ではなく、絵画や写真等の第2の被写体が壁に掛けられているようなシーンであると判別できる。
【0082】
また、背景ブロックが主要被写体よりも影響を強く受けておらず、
且つ、その背景ブロック内に影響度が僅かに異なるブロックが単数または複数内包されている場合には、
その背景ブロックは単一の壁ではなく、紅葉やお花畑等の第2の被写体が背景に存在しているシーンであると判別できる。
【0083】
第2の被写体が存在する場合には、これらについても情景描写として考慮した本発光量と露出の決定をすべきである。
基本的には、既に決定されている主要被写体がメインであるので、主要被写体に露出が最適化されるように本発光量等を決定し、第2の被写体は環境光で合わせる、またはその逆のように決定する。
【0084】
この時、例えば手振れを抑えるためにシャッタ速度を制限する必要がある等により、主要被写体と第2の被写体の両方が適正露出となるようなストロボ光と環境光の組み合わせが存在せず、主要被写体と第2の被写体を同時に適正露光にすることができない場合が考えられる。
【0085】
この場合には、カメラ本体100内の不図示のメモリに予め記録された撮像素子103のラチチュード内に2つの被写体のデータが欠落なく収まるように、即ち、適正露光でなくとも主要被写体及び第2の被写体が白とび及び/又は黒潰れしないように、本発光量と露出を決定する。
【0086】
また、ラチチュードの幅よりも主要被写体と第2の被写体との露出差が大きい場合には、主要被写体のデータが欠落しないラチチュード端となるように本発光量及び露出を決定し、データの欠落が最も少なく主要被写体がラチチュード範囲内となるようにする。
【0087】
このような分岐を設定することで、多岐にわたるシーン判別を行うことが可能となる。以下に3つのシーンを代表例として、シーン判別に至るまでの流れを説明する。なお、簡単のために、シーン判別の流れを説明する分岐においては一方のみを記載し、他方は省略している。
【0088】
図5は、本発明に係るシーン判別の一例を示すために、フローチャートの一部を抜粋した図である。
【0089】
シーン判別が開始されると、まずステップS1001においてカメラCPU101は、メモリ領域に保存しておいた差分輝度値ΔBvが全測光領域で0(ゼロ)であるかどうかの判断を行う。そして、0(ゼロ)でなかった場合にはステップS1002に進み、カメラCPU101は、撮影領域が全領域でストロボの影響を受けていると判断する。
【0090】
次にステップS1003においてカメラCPU101は、差分輝度値ΔBvが0(ゼロ)である領域が存在しているかどうかの判断を行う。そして、0(ゼロ)である領域が全く存在しなかった場合にはステップS1004に進み、カメラCPU101は、撮影対象が近距離撮影であり、さらに、全撮影領域がストロボの影響を受けていると判断する。
【0091】
次にステップS1005においてカメラCPU101は、撮影領域の中心部よりも周辺部に、プリ発光の有無による輝度変動が大きな領域があるかどうかの判断を行う。そして、中心部よりも周辺部にそのような領域があった場合にはステップS1006に進み、カメラCPU101は、主要被写体の後ろに白壁などの反射率の高い背景が存在していると判断する。
【0092】
次にステップS1007においてカメラCPU101は、周辺部におけるΔBv1、ΔBv2の値、即ち輝度変動の幅が一定であるか、またΔBvについても輝度変動がないかどうかの判断を行う。そして、輝度変動の幅が一定ではなかった場合には、カメラCPU101は、反射率の高い背景が一様な面ではないと判断する。
【0093】
そしてステップS1008に進み、カメラCPU101はさらに、撮影領域の中心部が環境光により明るくなっているかどうかの判断を行う。中心部が環境光により明るくなっていた場合にはステップS1009に進み、カメラCPU101は続けて、撮影領域の周辺部が環境光により明るくなっているかどうかの判断を行う。そして、周辺部も環境光により明るくなっていた場合にはステップS1010に進み、カメラCPU101は、撮影領域の背景が壁紙などであり、背景の反射光量を反映した撮影が必要であると判断する。
【0094】
以上のシーン判別により、カメラCPU101はこのときの撮影対象を、撮影領域の中心部に主要被写体が存在し、且つ、背景に壁紙などの模様を有する壁が存在するシーンだと判別することができる。
【0095】
図6は、上述した判別フローとは異なるシーン判別の一例を示すために、フローチャートの一部を抜粋した図である。
【0096】
シーン判別が開始されると、まずステップS2001においてカメラCPU101は、メモリ領域に保存しておいた差分輝度値ΔBvが全測光領域で0(ゼロ)であるかどうかの判断を行う。そして、0(ゼロ)でなかった場合にはステップS2002に進み、カメラCPU101は、撮影領域が全領域でストロボの影響を受けていると判断する。
【0097】
次にステップS2003においてカメラCPU101は、差分輝度値ΔBvが0(ゼロ)である領域が存在しているかどうかの判断を行う。そして、0(ゼロ)である領域が存在していた場合にはステップS2004に進み、カメラCPU101は、撮影対象が遠距離背景又は黒い背景であり、さらに、シーン内に逆光ポイントが存在すると判断する。
【0098】
次にステップS2005においてカメラCPU101は、差分輝度値ΔBvが0(ゼロ)である領域が撮影領域の周辺部に連続範囲で存在しているかどうかの判断を行う。そして、周辺部にそのような領域がなかった場合にはステップS2006に進み、カメラCPU101は、主要被写体が撮影領域の周辺部に存在していると判断する。
【0099】
次にステップS2007においてカメラCPU101は、撮影領域の中心部が環境光により明るくなっているかどうかの判断を行う。そして、中心部が環境光により明るくなっていた場合にはステップS2008に進み、カメラCPU101は、主要被写体が中心部には存在せず、その領域が逆光になっていると判断する。
【0100】
次にステップS2009においてカメラCPU101は、撮影領域の周辺部が環境光により明るくなっているかどうかの判断を行う。そして、周辺部が環境光により明るくなっていなかった場合にはステップS2010に進み、カメラCPU101は、周辺部に存在する主要被写体が逆光状態であると判断する。
【0101】
以上のシーン判別により、カメラCPU101はこのときの撮影対象を、撮影領域の周辺部に主要被写体が存在し、且つ、背景が逆光となっているシーンだと判別することができる。
【0102】
図7は、上述した判別フローとは異なるシーン判別の一例を示すために、フローチャートの一部を抜粋した図である。
【0103】
シーン判別が開始されると、まずステップS3001においてカメラCPU101は、メモリ領域に保存しておいた差分輝度値ΔBvが全測光領域で0(ゼロ)であるかどうかの判断を行う。そして、0(ゼロ)でなかった場合にはステップS3002に進み、カメラCPU101は、撮影領域が全領域でストロボの影響を受けていると判断する。
【0104】
次にステップS3003においてカメラCPU101は、差分輝度値ΔBvが0(ゼロ)である領域が存在しているかどうかの判断を行う。そして、0(ゼロ)である領域が存在していた場合にはステップS3004に進み、カメラCPU101は、撮影対象が遠距離背景又は黒い背景であり、さらに、シーン内に逆光ポイントが存在すると判断する。
【0105】
次にステップS3005においてカメラCPU101は、差分輝度値ΔBvが0(ゼロ)である領域が撮影領域の周辺部に連続範囲で存在しているかどうかの判断を行う。そして、周辺部にそのような領域があった場合にはステップS3006に進み、カメラCPU101は、撮影領域の周辺部が遠距離の背景であると判断する。
【0106】
次にステップS3007においてカメラCPU101は、撮影領域の周辺部が環境光により明るくなっているかどうかの判断を行う。そして、周辺部が環境光により明るくなっていなかった場合にはステップS3008に進み、カメラCPU101は、撮影領域の背景は遠距離であり、さらに夜間の撮影であると判断する。
【0107】
次にステップS3009においてカメラCPU101は、撮影領域の中心部が環境光により明るくなっているかどうかの判断を行う。そして、中心部が環境光により明るくなっていた場合にはステップS3010に進み、カメラCPU101は、撮影領域の中心部に位置する主要被写体にはすでに環境光が当たっていると判断する。
【0108】
以上のシーン判別により、カメラCPU101はこのときの撮影対象を、撮影領域の中心部に主要被写体が存在し、且つ、スポット光などの光で照らされており、さらに背景が夜景となっているシーンだと判別することができる。
【0109】
カメラCPU101内の不図示のメモリ領域には、上で例示した3つの判別結果を含む複数のシーン判別とそれらに対応した光量補正係数のテーブルが記憶されている。
撮影領域のシーン判別が終了すると、カメラCPU101はこのテーブルを参照して、判別結果のシーンに対応する光量補正係数を読み出す。
【0110】
その後カメラCPU101は、図4のステップS203において算出しておいた基準光量と読み出した光量補正係数とから、主要被写体を適正露出とするために必要な閃光装置300の本発光量を算出する。
【0111】
以上で説明したように、本発明に記載の撮像装置によれば、発光強度が異なる2度のプリ発光により撮影領域を測光することで、主要被写体だけでなく背景の閃光発光に対する反射率や位置、距離を含んだ詳細なシーン判別が可能で、主要被写体への適切な本発光量を精度よく決定することが可能となる。
【0112】
なお、上述した実施例では、カメラ本体に着脱可能な閃光装置を用いて説明したが、本発明はそれ以外の形態の閃光装置、例えばカメラ本体に内蔵された閃光装置にも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0113】
100 カメラ本体
101 カメラCPU
108 測光光学系
109 測光センサ
110 測光演算回路
200 交換レンズ
203 レンズCPU
300 閃光装置
330 発光制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影に先立ち発光を行う閃光手段と、
前記閃光手段の発光を制御し、プリ発光と本発光とを行わせる発光制御手段と、
複数の分割測光領域を有する測光センサと、
撮影領域からの入射光の前記複数の分割測光領域における強さを検出する測光手段と、
前記撮影領域のシーン判別を行うシーン判別手段と、
前記本発光の光量を決定する調光手段と、
を有する撮像装置において、
前記発光制御手段は前記プリ発光として、発光量の異なる1回目のプリ発光と2回目のプリ発光とを行い、
前記シーン判別手段は、前記測光手段が検出した前記プリ発光の測光結果を利用してシーン判別を行い、
前記調光手段は、前記シーン判別の結果を利用して前記本発光の光量を決定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記シーン判別手段は、前記1回目のプリ発光の測光結果と前記2回目のプリ発光の測光結果の差分を利用して前記シーン判別を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記シーン判別手段は、前記差分を利用して前記本発光が必要であるかどうかを判断することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記シーン判別手段は、前記差分を利用して主要被写体と背景との判別を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記シーン判別手段は、前記背景と判別された領域の中に第2の被写体が存在するかどうかを判断することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97153(P2013−97153A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239356(P2011−239356)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000131326)株式会社シグマ (167)
【Fターム(参考)】