説明

撮影用照明装置、撮影装置

【課題】撮影時における調光可能距離を詳細に求めることができる撮影用照明装置等を提供する
【解決手段】撮影用照明装置(200)を、撮影装置(100)を用いて撮影を行う際に撮影用の照明光を発光する発光部(10)と、前記撮影を行う際に前記撮影装置に備えられた撮像部(110)の撮像範囲の全面に対して同時に被写体光を露光させるシャッタ全開時間に関する情報を取得するシャッタ情報取得部(41)と、前記照明光の発光を行う際に前記発光部が発光可能な総発光量に対する前記シャッタ全開時間中の露光に寄与する有効発光量の割合を示す発光効率を求める発光効率決定部(42)と、前記発光効率決定部が求めた前記発光効率に基づいて撮影時の調光可能距離を演算する演算部(43)とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影用照明装置及び撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮影装置を用いて撮影を行う際に撮影用の照明光を発光する照明装置としては、ガイドナンバー情報、絞り値情報、撮像感度等の各種情報に基づいて撮影時における調光可能距離を演算するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭60−165627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の撮影用照明装置は、撮影時における調光可能距離をより詳細に演算できるものが望まれている。
本発明の課題は、撮影時における調光可能距離を詳細に求めることができる撮影用照明装置及び撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、撮影装置(100)を用いて撮影を行う際に撮影用の照明光を発光する発光部(10)と、前記撮影を行う際に前記撮影装置に備えられた撮像部(110)の撮像範囲の全面に対して同時に被写体光を露光させるシャッタ全開時間に関する情報を取得するシャッタ情報取得部(41)と、前記照明光の発光を行う際に前記発光部が発光可能な総発光量に対する前記シャッタ全開時間中の露光に寄与する有効発光量の割合を示す発光効率を求める発光効率決定部(42)と、前記発光効率決定部が求めた前記発光効率に基づいて前記撮影時の調光可能距離を演算する演算部(43)とを備える撮影用照明装置(200)である。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載の撮影用照明装置において、前記演算部(43)は、前記発光効率に加えて、前記照明光を発光する際の前記発光部(10)のガイドナンバー、及び、前記撮影装置(100)に備えられた絞り部(180)の絞り値に基づいて前記調光可能距離を演算することを特徴とする撮影用照明装置(200)である。
請求項3の発明は、請求項2に記載の撮影用照明装置において、前記演算部(43)は、撮影時における前記撮像部(110)の撮像感度に関する情報を取得し、前記ガイドナンバー、前記絞り値、前記発光効率、及び、前記撮像感度に基づいて前記調光可能距離を演算することを特徴とする撮影用照明装置(200)である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の撮影用照明装置において、前記演算部(43)によって求めた前記調光可能距離を表示する表示部(30)を備えることを特徴とする撮影用照明装置(200)である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の撮影用照明装置において、前記発光効率に関する発光効率データが、互いに異なる前記シャッタ全開時間ごとに予め用意され、前記発光効率決定部(42)は、前記発光効率データを参照することによって前記発光効率を求めることを特徴とする撮影用照明装置(200)である。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の撮影用照明装置において、前記シャッタ情報取得部(41)は、シャッタ幕(131、132)の走行時間及び予め設定された撮影時のシャッタ秒時に関する情報を取得し、当該シャッタ幕の走行時間及びシャッタ秒時から前記シャッタ全開時間を演算することを特徴とする撮影用照明装置(200)である。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の撮影用照明装置(200)を備えることを特徴とする撮影装置(1)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、撮影時における調光可能距離を詳細に求めることができる撮影用照明装置及び撮影装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面等を参照して、本発明を適用した撮影用照明装置の実施形態を含むカメラシステムについて説明する。
図1は、実施形態のカメラシステムを示すブロック図である。
カメラシステム1は、カメラ100と撮影用照明装置200(以下、照明装置200と称する)とを備えている。
【0008】
カメラ100は、カメラボディ101と、このカメラボディ101に着脱可能に装着された交換レンズ鏡筒102とを備えている。
カメラボディ101は、撮像素子110、信号処理回路120、シャッタユニット130、ミラーユニット140、測光センサ150、AE(Auto Exposure)制御部160、通信部170等を備えている。
撮像素子110は、被写体光を電気的なアナログ信号に変換して出力する光−電気変換素子を含むイメージセンサである。撮像素子110には、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)等を使用することができる。
【0009】
信号処理回路120は、撮像素子110から出力されたアナログ信号の増幅を行う増幅回路や、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ等を備えている(増幅回路、A/Dコンバータは、図示を省略する)。信号処理回路120によって生成された画像データは、フラッシュメモリ等の記憶媒体121に記録される。
【0010】
シャッタユニット130は、撮像素子110に対する被写体光の露光時間を調節するものである。シャッタユニット130は、撮像素子110の撮像面に対して被写体光の入射方向手前側に配置された公知のフォーカルプレンシャッタである。
シャッタユニット130は、先幕131と称される遮光部材を走行させた後、後幕132と称される同様の遮光部材を走行させ、これらの遮光部材の走行開始のタイミングの差によって、撮像素子110に対する露光時間の調整を行うようになっている。
【0011】
シャッタユニット130は、閉状態の先幕131が走行を開始して開状態に移行することによって撮像素子110の撮像面を露出させ、これによって、撮像面に被写体光を露光させる。また、シャッタユニット130は、先幕131が走行を開始してから、シャッタ秒時(又はシャッタスピード)と称される設定時間の経過後、開状態の後幕が走行を開始して閉状態に移行し、これによって撮像素子110に向けて進行する被写体光を遮断する。
先幕131及び後幕132は、走行を開始してから終了するまでの時間(以下、幕走行時間と称する)が、設定されたシャッタ秒時に関わらず概ね一定となっている。幕走行時間は、カメラボディ101の種類(シャッタユニット130の種類や撮像素子110の大きさ)によって異なるものであるが、本実施形態のシャッタユニット130の幕走行時間は、例えば、2000μsec(2.0msec)程度になっている。
【0012】
ミラーユニット140は、被写体光を後述する測光センサ150や図示しない光学ファインダ装置に導くものである。ミラーユニット140は、フレーミング時には被写体光の光路上に配置されたメインミラーによって被写体光を測光センサ150等に導き、撮影時には、被写体光の光路から退避する。
測光センサ150は、交換レンズ鏡筒102の撮影レンズLを通過(Through The
Lens)し、かつ、ミラーユニット140によって反射された被写体光を受光するイメージセンサである。
【0013】
AE制御部160は、測光センサ150の出力に基づいて撮影時のシャッタ秒時、絞り値、撮像素子110の撮像感度、撮影時の照明装置200の発光量等を自動的に決定する部分である。前述の信号処理回路120は、AE制御部160が決定した撮像感度に応じて撮像素子110の出力を増幅する。ただし、カメラシステム1は、撮影者等が手動でこれらのパラメータを設定することもできるようになっている。
【0014】
通信部170は、後述する照明装置200に備えられた通信部20と電気通信を行う部分であり、照明装置200に対してAE制御部160が決定した(又は撮影者等が手動で入力した)撮影時のシャッタ秒時(SS値)、絞り値(F値)、撮像素子110の撮像感度(ISO値)、露出補正量(ΔEv)等の各種パラメータに関する情報を照明装置200に提供する。
また、通信部170は、シャッタユニット130に備えられた先幕131及び後幕132の幕走行時間に関する情報を照明装置200に伝達する。
【0015】
交換レンズ鏡筒102は、被写体光をカメラボディ101に備えられた撮像素子110に導く撮影レンズL、及び、複数の絞り羽根によって撮影レンズLを通過する被写体光の光量を調節する絞り装置180を備えている。
カメラボディ101(又は交換レンズ鏡筒102)は、絞り装置180を駆動する図示しないアクチュエータを備えており、AE制御部160によって求められた(又は撮影者等によって手動で設定された)撮影時の絞り値に基づいて、撮影時に絞り装置180を駆動する。
【0016】
照明装置200は、撮影時に被写体等に向けて撮影用の照明光を照射するものであり、カメラボディ101に着脱可能に装着される。カメラボディ101は、照明装置200が装着された状態で図示しない電気接点を介して照明装置200と電気通信が可能になっている。
照明装置200は、発光部10、通信部20、表示部30、制御部40等を備えている。
【0017】
発光部10は、撮影用の照明光として閃光を発光するキセノンランプ、キセノンランプが発光した閃光を拡散させる拡散板、撮影レンズLの焦点距離に連動して照明光の照射角を変更するズーム機構等を備えている(拡散板、ズーム機構は、図示を省略する)。なお、照明光を発光する発光素子としては、キセノンランプに限らず、例えば、発光ダイオード等を用いることもできる。
【0018】
通信部20は、カメラボディ101に備えられた通信部170と電気通信を行う部分であり、カメラボディ101から撮影時のシャッタ秒時、絞り値、撮像素子110の撮像感度等の各種パラメータに関する情報を取得する。
表示部30は、例えば、液晶パネルを含み、撮影時に撮影者に対向する面部に表示面が設けられている。表示部30の表示画面には、カメラボディ103から取得した撮影時の撮像感度、絞り値、撮影レンズLの焦点距離等が表示される。
【0019】
制御部40は、上述した通信部20や表示部30等を統括的に制御する部分であり、シャッタ全開時間演算部41、発光効率決定部42、及び、演算部43を備えている。
シャッタ全開時間演算部41は、撮影時のシャッタ秒時に関する情報、及び、シャッタユニット130に備えられた先幕131、後幕132の幕走行時間に関する情報を通信部20を介して取得し、これらからシャッタ全開時間を演算する。
【0020】
ここで、シャッタ全開時間とは、撮影を行う際にカメラボディ101に備えられた撮像素子110の撮像範囲の全面に対して同時に被写体光を露光させる時間を意味する。撮像範囲の全面とは、撮像素子110の撮像面の全体を用いて撮影を行う場合には、当該撮像面の全体を意味し、撮像面の一部(例えば、撮像面の中央部)のみを使用して撮影を行う場合には、当該撮像面の一部を意味する。
一例をあげて具体的に説明すると、例えば、撮影時のシャッタ秒時が1/200秒(5000μsec)に設定された場合、前述のように幕走行時間が2000μsecなので、シャッタ全開時間は、3000μsecとなる。
【0021】
発光効率決定部42は、照明光の発光を行う際に発光部10が発光可能な総発光量に対して、実際に露光に寄与する光量(有効発光量)の割合を示す発光効率を決定する部分である。
以下、有効発光量について説明する。
【0022】
図2は、図1に示す照明装置が発光した照明光(閃光)の発光量の変化を示す図である。
この図2において、(a)、(b)は、それぞれシャッタ秒時の異なる場合を示しており、(a)は、(b)よりもシャッタ秒時が長い場合を示している。ただし、(a)、(b)の両方とも、照明光の発光量の変化自体は同じである。
図2の各図に示すように、閃光発光を行う場合、キセノンランプから照射される閃光は、発光開始の後、時間の経過に応じて発光量が増加し、発光量がピークに達した後、時間の経過に応じて発光量が減少していく。
【0023】
閃光発光を行う場合、カメラボディ101は、シャッタユニット130の先幕131の走行が終了し、シャッタユニットが全開の状態となった時点で、通信部170を介して照明装置200に発光開始信号を出力する。照明装置200は、これに応じて閃光の発光を開始する。
そして、カメラボディ101は、先幕の走行を開始させてから、予め設定されたシャッタ秒時が経過した後に後幕の走行を開始させる。カメラボディ101は、後幕の走行開始と併せて、通信部170を介して照明装置200に発光停止信号を出力する。照明装置200は、これに応じて発光を停止する。なお、本実施形態の照明装置200は、仮に発光停止信号が入力されないとすると、発光開始から、例えば、8msec程度が経過した後に発光が完了(光量=0)するようになっている。
【0024】
したがって、シャッタ全開時間が8msec未満の場合、実際に露光に寄与する発光量(図2に示すグラフの領域A)は、発光可能な総発光量(図2に示すグラフの領域A+領域B)のうちの一部のみとなる。
発光効率とは、上述した総発光量に対する有効発光量の割合(A/(A+B))を意味し、設定されたシャッタ秒時(すなわち、シャッタ全開時間)によって異なる。
本実施形態の照明装置200は、発光効率に関する発光効率データが、互いに異なるシャッタ全開時間ごとに予めメモリ50に記録され、発光効率決定部42は、シャッタ全開時間演算部41が演算したシャッタ全開時間に基づき、この発光効率データを参照することによって発光効率を決定する。
【0025】
表1は、照明光の発光効率を互いに異なるシャッタ全開時間ごとに示す表である。
この表1に示すデータは、照明装置200に固有のものであり、試験によって予めデータ採りを行って作成され、メモリ50に保存される。
【0026】
【表1】

【0027】
表1を用いて一例を説明すると、シャッタ全開時間が、例えば、8000μsec以上(低速シャッタ秒時)であれば、発光した照明光の全てが露光に寄与する。このような場合を、発光効率が100%であると称する。
また、シャッタ全開時間が、例えば、2600μsecである場合、発光効率は、80%程度となることがわかる。
これに対し、シャッタ全開時間が、例えば、300μsec(高速シャッタ秒時)の場合、発光直後に発光を停止するため、発光効率は、15%程度に低下する。
【0028】
演算部43は、発光効率決定部42が求めた発光効率、照明光を発光する際の発光部10のガイドナンバー(GN)、絞り装置180の絞り値(F値)、及び、撮像素子110の撮像感度(ISO値)に基づいて、撮影時の調光可能距離を演算する部分である。調光可能距離とは、カメラ1を用いて撮影を行う際、照明装置200が照射した照明光の効果が及ぶ距離の上限を意味し、この調光可能距離以下で撮影を行えば、撮影画像が光量不足によって不鮮明になることを防止できる。
以下、撮像感度をISO100、最大ガイドナンバーを40(GN40)と仮定して、具体的に説明する。
例えば、シャッタ全開時間が8000μsec以上であれば、表1より、発光可能な総発光量の全て(100%)が露光に寄与するので、発光部10は、最大ガイドナンバーでの発光が可能にとなる。この場合、例えば、撮影時の絞り値が4(F4)の場合であれば、調光可能距離(実質的な最長撮影可能距離)は、10m(40÷4)となる。
【0029】
これに対し、例えば、シャッタ秒時が2500μsecのときは、シャッタ全開時間が500μsecとなるので、表1より発光効率は、0.255となる。すなわち、発光可能な総発光量のうち、実際に露光に寄与するのは、25〜26%程度である。
発光部10の発光量は、ガイドナンバーの自乗に比例するので、最大ガイドナンバー(GN40)に、この発光効率を乗じて平方すれば、該当するシャッタ秒時でのガイドナンバー(有効ガイドナンバー)を求めることができる。
上記の例では、最大ガイドナンバーがGN40、発光効率が0.255なので、ガイドナンバー(有効ガイドナンバー)は、約20となる。したがって、絞りがF4の場合には、調光可能距離は、約5m(20÷4)となる。
【0030】
ここで、カメラ100は、シャッタ全開時間や絞り値が固定の場合であっても撮像素子110の撮像感度を上げれば、より少ない光量で撮影を行うことができる。したがって、同じ発光効率であっても、撮像感度を上げれば調光可能範囲の上限が変化する。上述の例で、例えば、撮像感度がISO400であれば、シャッタ全開時間が500μsecであっても有効ガイドナンバーが約40となるので、調光可能距離は、10mとなる。
なお、上述した有効ガイドナンバー演算(乗除算)は、当該演算を行うマイコンに対する負荷を考慮して、底を2とする対数演算(加減算)で行われる。
【0031】
演算部43が演算した調光可能距離は、表示部30に表示される。
図3は、図1に示す照明装置に備えられた表示部の表示画面の一例を示す図である。
図3に示すように、表示部30の表示画面には、撮影時の調光可能範囲30a(0.6−5.0m)、撮像感度30b(ISO400)、撮影レンズLの焦点距離30c(24mm)、絞り値30d(F4.0)等が表示される。なお、調光可能範囲の下限は、照明光の照射角が一定であれば、シャッタ秒時に関わらず一定である。
【0032】
次に、照明装置200に備えられた制御部40が行う制御について、フローチャートを用いてステップごとに説明する。
図4は、照明装置に備えられた制御部が行う制御を示すフローチャートである。
【0033】
(ステップS01:先幕及び後幕の走行時間情報取得)
シャッタユニット130の先幕131及び後幕132の走行時間は、カメラボディ101の種類によって異なるので、制御部40は、まずカメラボディ101からこれらの情報を取得してステップS02に進む。
(ステップS02:シャッタ秒時、絞り値、撮像感度情報取得)
カメラボディ101は、測光センサ150の出力又は撮影者の入力操作に基づいて撮影時のシャッタ秒時、絞り値、撮像感度等を決定する。
制御部40は、通信部20を介してこれらの情報をカメラボディ101から取得してステップS03に進む。
【0034】
(ステップS03:最大GN情報取得)
制御部40は、ズーム機構によって規定される照明光の照射角に基づいて、最大ガイドナンバー情報を発光部10から取得し、ステップS04に進む。
(ステップS04:シャッタ全開時間演算)
制御部40は、ステップS01で取得したシャッタ幕の走行時間、及び、ステップS02で取得したシャッタ秒時に基づいて、シャッタ全開時間演算部41がシャッタ全開時間を演算してステップS05に進む。
【0035】
(ステップS05:発光効率決定)
制御部40は、ステップS04で求めたシャッタ全開時間に対応する発光効率を、発光効率決定部42がメモリ50に保存されたデータ(表1)を参照して決定し、ステップS06に進む。
(ステップS06: 有効GN演算)
制御部40は、ステップS03で求めた最大ガイドナンバー、及び、ステップS04で求めた発光効率に基づいて、演算部43が有効ガイドナンバーを演算してステップS07に進む。
【0036】
(ステップS07:調光可能距離演算)
制御部40は、ステップS02で求めた絞り値及び撮像感度、及び、ステップS06で求めた有効ガイドナンバーに基づいて調光可能距離を演算し、ステップS08に進む。
(ステップS08:調光可能範囲表示)
制御部40は、ステップS07で求めた調光可能距離を含む調光可能範囲を表示部30に表示して処理を終了する。
【0037】
以上説明した実施形態の照明装置によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)調光可能距離を演算する際に、シャッタ秒時(シャッタ全開時間)によって変化する発光部10の発光効率を考慮するので、より正確な調光可能距離を演算することができる。したがって、撮影者が表示部30の表示に従って撮影したにも関わらず、光量不足の画像が撮影されるといったことが防止される。
(2)表示部30に調光可能距離を含む調光可能範囲を表示するので、撮影者は、光量不足のおそれがある場合に撮像素子110の撮像感度を上げたり、より発光量の大きな照明装置に交換する等の対応をとることができる。
(3)発光効率データを、互いに異なるシャッタ全開時間ごとに予め用意したので、調光可能距離を求める際の演算処理を高速化できる。
【0038】
[変形形態]
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であって、これらも本発明の技術的範囲内に含まれる。
(1)照明装置は、実施形態ではカメラボディに着脱可能に装着される、いわゆるクリップオン式のものであったが、これに限らず、カメラボディに内蔵されていてもよい。
(2)撮影装置は、実施形態では撮像素子を備えたデジタルカメラであったが、これに限らず、銀塩フィルムが撮像部として設けられたフィルムカメラであってもよい。
(3)実施形態の照明装置は、調光可能範囲を照明装置に備えられた表示部に表示したが、これに限らず、カメラボディの表示部(背面液晶、ファインダ内液晶等)に表示してもよい。また、調光可能範囲を表示せず、音声等によって通知してもよい。
(4)実施形態の照明装置は、最大ガイドナンバーを発光効率によって補正した実効ガイドナンバーを求めたが、発光効率に加えてさらに他のパラメータ(例えば、キセノンランプの電源であるコンデンサの電圧等)に基づいてガイドナンバーの補正を行ってもよい。
(5)実施形態は、照明装置の表示部に調光可能距離を表示して、撮影者に撮影可能か否かの情報を提供するが、例えば、照明光の影響が被写体に及ばない場合に、カメラボディ側で撮像素子の撮像感度を自動的に上げる制御や、撮影を不可とする制御等を行ってもよい。
(6)実施形態では、照明装置の制御部がシャッタ全開時間を演算したが、これに限らず、カメラボディ側でシャッタ全開時間を演算し、これを照明装置に伝達してもよい。
(7)実施形態において、発光効率は、予め用意されたデータ(表1)から求めたが、これに限らず、一例として、以下に示すような式に基づいて演算してもよい。
発光効率=at+bt+ct+d
(a、b、c、d:定数、t:時間)
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施形態のカメラシステムを示すブロック図である。
【図2】図1に示す照明装置が発光した照明光の発光量の変化を示す図である。
【図3】図1に示す照明装置に備えられた表示部の表示画面の一例を示す図である。
【図4】照明装置に備えられた制御部が行う制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
10 発光部 : 30 表示部 : 40 制御部 : 41 シャッタ全開時間演算部 : 42 発光効率決定部 : 43演算部 : 100 カメラ : 110 撮像素子 : 200 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置を用いて撮影を行う際に撮影用の照明光を発光する発光部と、
前記撮影を行う際に前記撮影装置に備えられた撮像部の撮像範囲の全面に対して同時に被写体光を露光させるシャッタ全開時間に関する情報を取得するシャッタ情報取得部と、
前記照明光の発光を行う際に前記発光部が発光可能な総発光量に対する前記シャッタ全開時間中の露光に寄与する有効発光量の割合を示す発光効率を求める発光効率決定部と、
前記発光効率決定部が求めた前記発光効率に基づいて撮影時の調光可能距離を演算する演算部と
を備える撮影用照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮影用照明装置において、
前記演算部は、前記発光効率に加えて、前記照明光を発光する際の前記発光部のガイドナンバー、及び、前記撮影装置に備えられた絞り部の絞り値に基づいて前記調光可能距離を演算すること
を特徴とする撮影用照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮影用照明装置において、
前記演算部は、撮影時における前記撮像部の撮像感度に関する情報を取得し、前記ガイドナンバー、前記絞り値、前記発光効率、及び、前記撮像感度に基づいて前記調光可能距離を演算すること
を特徴とする撮影用照明装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の撮影用照明装置において、
前記演算部によって求めた前記調光可能距離を表示する表示部を備えること
を特徴とする撮影用照明装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の撮影用照明装置において、
前記発光効率に関する発光効率データが、互いに異なる前記シャッタ全開時間ごとに予め用意され、
前記発光効率決定部は、前記発光効率データを参照することによって前記発光効率を求めること
を特徴とする撮影用照明装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の撮影用照明装置において、
前記シャッタ情報取得部は、シャッタ幕の走行時間及び予め設定された撮影時のシャッタ秒時に関する情報を取得し、当該シャッタ幕の走行時間及びシャッタ秒時から前記シャッタ全開時間を演算すること
を特徴とする撮影用照明装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の撮影用照明装置を備えること
を特徴とする撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−282239(P2009−282239A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133374(P2008−133374)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】