説明

撮影装置

【課題】UV光、及びUV光を波長変換した複数の励起光から選択した1種類を励起光として生体に照射する。
【解決手段】撮影ステージ13は、UV光を発する底部光源15を内部に配するハウジング25、波長変換フィルタ28〜30と、認識スイッチ31,32が設けられている。波長変換フィルタ28〜30は、ハウジング25にそれぞれ回転軸28a,29a,30aを介して取り付けられており、UV光を赤、青、緑の蛍光にそれぞれ変換して生体に照射させる波長変換位置、及び波長変換位置から退避する退避位置との間で回動自在となっている。認識スイッチ31,32のオンオフ信号により、波長変換フィルタ28〜30のいずれか1つが波長変換位置にセットされたこと、あるいはいずれもセットされていないことが認識される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に分布する標識された対象物質からの光を受光して画像を生成する撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筐体内に被写体を配置し、筐体内に備えられた光源で生体を照射して被写体を撮影する装置が、従来より様々な分野で利用されている。生化学、分子生物学の分野においては、化学発光物質や蛍光物質を標識物質として使用し、これらの発光や蛍光を読み取ることによって、遺伝子配列、遺伝子の発現レベル、蛋白質の分離、同定、あるいは分子量、特性の評価などを行う撮影装置が知られている。
【0003】
また、マウスやラット等の生体に上記の標識物質で標識された遺伝子や蛋白質、抗体、薬理物質を与え、生体の体内または体表に分布した標識物質からの光をカメラで撮影し、生体内における遺伝子の発現や薬理作用等を撮影する、いわゆるin vivo イメージング (in vivo imaging)を行う撮影装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この撮影装置では、例えば蛍光物質で標識を行っている場合には、生体に励起光を照射して蛍光物質を励起させ、生じた蛍光をカメラで受光することによって画像を生成する。
【0004】
従来の撮影装置では、励起光の光源としては、ハロゲンランプや白色LEDなどが使用されていたが、本出願人は、安価なUV(紫外線)光源を使用することを検討している。このUV光源を使用する場合、UV光源が発生するUV光(紫外線領域の波長を有する光)を可視光や近赤外光の蛍光である励起光に変換しなければならない。そこでUV光を蛍光に変換する手段としては、特許文献1〜3に記載されているように、UV光を可視光に変換する波長変換フィルタ、及び蛍光体などの波長変換材料をUV光源に設ける構成が知られている。
【0005】
【特許文献1】米国特許5736744号明細書
【特許文献2】特開平10−319877号公報
【特許文献3】特開2002−23160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、生体に励起光を照射して蛍光を励起させる場合、生体や蛍光物質の種類によって励起する波長が異なる。さらに、1つの生体に対して複数種の蛍光物質を標識することあるため、それに合わせて複数種の蛍光を選択的に照射することが必要である。しかしながら、上記特許文献1では、UV光を1種類の可視光に変換する1つの波長変換フィルタだけを備える構成であり、また、特許文献2,3は、複数の波長変換材料を有するが、複数種の蛍光を選択的に照射する構成ではなく、これを示唆する記載もない。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、UV光源から照射されるUV光、及びこのUV光を波長変換した複数の励起光の中から選択した1種類を励起光として生体に照射することが可能な撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、生体に励起光を照射して蛍光物質を励起させ、生じた蛍光をカメラで受光することによって画像を生成する撮影装置であって、UV光を発するUV光源と、内部に前記UV光源を配し、前記UV光を前記生体へ照射させる開口部が形成されたハウジングと、前記開口部の上方に位置し、前記UV光を前記励起光に変換して前記生体に照射させる波長変換位置、及び前記波長変換位置から退避する退避位置との間で移動自在に設けられた複数の波長変換フィルタとを備えたことを特徴とする。なお、本発明におけるカメラとは、固体撮像素子などのイメージセンサを備えたものや、写真フィルムに画像を形成する写真カメラなど、受光した蛍光から画像を生成するカメラであればよい。
また、波長変換フィルタが変換する励起光としては、可視光、近赤外光が好ましい。
【0009】
なお、波長変換フィルタは剛性を有し、前記波長変換位置と、前記退避位置との間で回動自在に前記ハウジングに取り付けられたことが好ましい。また、赤蛍光、青蛍光、緑蛍光にそれぞれ変換する前記波長変換フィルタを備えており、互いに異なる方向に回転し、それぞれ異なる前記退避位置に移動することが好ましい。
【0010】
前記波長変換フィルタは、帯状の波長変換フィルムの長手方向に沿って並べて設けられ、前記波長変換フィルムを巻取り移送することにより、いずれか1つの前記波長変換フィルタが前記波長変換位置に選択的に位置することが好ましい。また、前記波長変換フィルムは、長手方向に沿って並べて配された複数のエリアに、赤蛍光、青蛍光、緑蛍光にそれぞれ変換する前記波長変換フィルタ、及び波長変換せずに透過させる透明フィルタとが設けられていることが好ましい。
【0011】
前記波長変換フィルタは、UV光を透過する透明材料に、蛍光顔料または蛍光染料を分散させて形成したことが好ましい。また、前記波長変換フィルタは、UV光を透過する透明材料に、蛍光顔料または蛍光染料を塗布して形成したことが好ましい。
【0012】
前記ハウジング上に、前記波長変換フィルタのいずれかが前記波長変換位置にあるとき、前記波長変換フィルタの自重により押圧されるスイッチを備え、前記スイッチのオンオフにより、前記波長変換フィルタの種類が認識されることが好ましい。また、前記波長変換フィルタには、それぞれの固有情報が記憶された記憶手段を備えており、前記波長変換位置にある前記波長変換フィルタの前記記憶手段から前記固有情報を読み取って認識させる読取手段を備えたことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、UV光を励起光に変換して生体に照射させる複数の波長変換フィルタを波長変換位置と、退避位置との間で移動させるので、UV光源から照射されるUV光、及びこのUV光を波長変換した複数の励起光の中から選択した1種類を励起光として生体に照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施した撮影システムの外観を図1に示す。撮影システム2は、撮影対象、例えばマウスやラット等の生体3(図2参照)の体表や体内に分布する標識物質からの光を受光し、生体3に分布する標識物質の画像(以下、分布画像という)を撮影(生成)して表示する。この実施形態では、標識物質として、励起光を照射することにより蛍光を発する蛍光物質を生体3に投与し、その生体3に分布する蛍光物質の分布画像を生成する場合について説明するが、自家蛍光を発する組織、例えば腫瘍組織の分布画像を生成する場合についても同様である。
【0015】
撮影システム2は、分布画像を生成する撮影装置5と、この撮影装置5に対する各種設定や撮影装置5で生成された分布画像に各種画像処理を施してモニタ6aに表示し、また分布画像を記録媒体への記録等を行うPC(パーソナルコンピュータ)6とから構成されている。PC6には、所定のソフトウェアをインストールすることによって、撮影装置5に対する設定機能や画像処理機能等を実現している。
【0016】
図2において、撮影装置5は、筐体11と、カメラ部12と、撮影ステージ13と、上部光源14と、底部光源15とからなる。筐体11は、中空の略直方体形状で、前面に開閉自在に取り付けられた蓋16(図1参照)が設けられている。蓋16を開けると、筐体11の内部に設けられた撮影室17が露呈して生体3を収容させることができ、また撮影室17から生体3を取り出すことができる。蓋16を閉じたときには、撮影室17内が遮光され、撮影の際に生体3から発せられる蛍光以外の光がカメラ部12に入射することを防止する。
【0017】
撮影室17は、上部にカメラ部12が設けられている。カメラ部12は、撮影ステージ13にセットされた生体3の分布画像を生成する。このカメラ部12は、イメージセンサ18,撮影レンズ19,カメラ側フィルタ20,冷却部21等から構成される。イメージセンサ18は、デジタルカメラ等に用いられているものと同様であり、その受光面に多数の受光素子をマトリクス状に配してある。具体的には、イメージセンサ18としてはCCDなどの固体撮像素子が用いられる。
【0018】
分布画像を生成する場合には、後述するように、受光素子で光電変換を行って電荷を蓄積する状態にイメージセンサ18を維持し、その間に蛍光物質から蛍光を受光させ、その光を電荷として蓄積させることによって露出を行う。
【0019】
撮影レンズ19は、生体3からの蛍光をイメージセンサ18に結像する。カメラ側フィルタ20は、上部光源14や底部光源15からの励起光を遮断し、生体3に分布する蛍光物質からの蛍光を透過するフィルタである。このカメラ側フィルタ20としては、例えば蛍光物質からの蛍光よりも短波長側の光をカットするロングパスフィルタを用い、生体3からの蛍光だけをイメージセンサ18に受光させる。冷却部21は、イメージセンサ18を冷却することにより暗電流を低減して、生成される分布画像のノイズを抑制する。
【0020】
イメージセンサ18としては、CCDタイプやCMOSタイプ等の各種のものを用いることができる。また、半導体によって光電変換を行うものの他、有機光電変換膜を使ったイメージセンサを用いてもよい。さらには、単色のみならず、受光する光を複数色に色分解して撮影するようにしてもよい。イメージセンサ18は、タイミング制御部22の制御の下で、ドライバ23によって駆動される。
【0021】
カメラ部12の直下に撮影ステージ13が配されている。この撮影ステージ13は、生体3が置かれる透明ステージ板24とその下側のハウジング25とからなる箱状となっている。この撮影ステージ13の中空な内部に底部光源15を配してある。
【0022】
撮影ステージ13の斜め上方には、上部光源14を配してある。この上部光源14と、底部光源15とは、いずれも生体3に分布する蛍光物質を励起して発光させるための励起光を生体3に向けて照射する励起光源となっている。上部光源14としては、ハロゲンランプ,ストロボ放電管,レーザ、発光ダイオード等の各種のものを用いることができるが、この例では、白色LEDと蛍光物質からの蛍光の波長域とそれよりも長波長側の光をカットするショートパスフィルタ等で構成してある。
【0023】
上部光源14は、いわゆる落射式の励起光源であり、生体3の上側から励起光を照射し、底部光源15は、生体3の下側から励起光を照射する。これらの上部光源14、及び底部光源15は、タイミング制御部22の制御の下で、それぞれ対応する上部光源ドライバ26、底部光源ドライバ27によって駆動される。
【0024】
図3に撮影ステージ13及び底部光源15の構成を示す。本発明は、底部光源15として、UV(紫外線)光源を使用する。UV光源は、UV光(紫外線領域の波長を有する光)を発する。ハウジング25は、中空な箱状で、上面と貫通する開口部25aが形成されている。この開口部25aには、上面に生体3が置かれる透明ステージ板24が嵌め込まれている。
【0025】
透明ステージ板24は、例えば石英ガラス、プラスチックなどから形成される。底部光源15から発したUV光は、開口部25a、すなわち透明ステージ板24を透過して生体3へ照射される。ハウジング25は、底部光源15からのUV光を遮断するように不透明にしてあり透明ステージ板24以外からUV光が射出されないようにしている。
【0026】
ハウジング25には、波長変換フィルタ28〜30と、認識スイッチ31,32が設けられている。波長変換フィルタ28〜30は、底部光源15から照射されたUV光を、それぞれ赤、青、緑の蛍光に変換する。本実施形態においては、UV光を波長変換した赤、青、緑の蛍光とともに、波長変換せずにUV光をそのまま励起光として使用する。
【0027】
底部光源15は、詳しくは図4に示す構成となっている。底部光源15は、複数のUV蛍光灯40と、反射板41と、コネクタ42と、排気ファン43と、これらを支持するフレーム44とを備える。UV蛍光灯40は、互いに平行に配列され、下方に反射板41が配置される。反射板41は、UV蛍光灯40から発するUV光を上方に反射する反射部材である。これにより、UV蛍光灯40から発せられるUV光は、上方の透明ステージ板24へ向かって照射される。
【0028】
コネクタ42は、UV蛍光灯40のソケットに接続されるとともに底部光源ドライバ27とケーブルに接続される。タイミング制御部22の制御にもとづく底部光源ドライバ27からの駆動信号がコネクタ42を介してUV蛍光灯40に送られる。フレーム44は、UV蛍光灯40の周りを囲む矩形枠状で、UV蛍光灯40の周面に対面する位置に通気孔44aが形成されており、通気孔44aの反対側に排気ファン43が配置されている。通気孔44aから吸い込まれた外気が、UV蛍光灯40の周囲を通過して排気ファンから排出されてUV蛍光灯40が冷却される。
【0029】
図3に戻って、波長変換フィルタ28〜30は、ハウジング25にそれぞれ回転軸28a,29a,30aを介して取り付けられている。これらの波長変換フィルタ28〜30は、剛性を有しており、透明ステージ板24の上方に位置し、UV光を赤、青、緑の蛍光(励起光)にそれぞれ変換して生体に照射させる波長変換位置、及び波長変換位置から退避する退避位置との間で回転軸28a,29a,30aを中心に回動自在となっている。回転軸28a,29a,30aは、ハウジング25の天板を形成する4辺のうちの異なる3辺に取り付けられている。よって、波長変換フィルタ28〜30は、波長変換位置では、同じように透明ステージ板24の上方に位置するが、回転軸28a,29a,30aを中心にして互いに異なる方向へ回転し、それぞれ異なる退避位置に移動する(図3に示す状態)。
【0030】
波長変換フィルタ28〜30は、UV光を透過する透明材料、例えば石英ガラスやプラスチック材料などに、赤、青、緑の蛍光顔料や蛍光染料を分散させて形成している。蛍光顔料や蛍光染料としては、具体的には、上記特許文献2に記載されている蛍光体であり、例えば、赤色の発光を生ずるものとしては、Y22S:Eu、青色の発光を生ずるものとしては、(Sr、Ca、Ba、Eu)10(PO46・Cl2、緑色の発光を生ずるものとしては、3(Ba、Mg、Eu、Mn)O・8Al23などを挙げることができる。また、有機蛍光体を使用することもできる。あるいはまた、ローダミン(RHODAMINE640)、クマリン(COUMARIN540A、COUMARIN460)なども使用することができる。
【0031】
また、波長変換フィルタ28,29には、認識スイッチ31,32にそれぞれ合わせた位置に切り欠き部28b,29bが設けられており、後述する認識スイッチ31,32による波長変換フィルタ28〜30の認識に使用される。
【0032】
認識スイッチ31,32はハウジング25の天面、透明ステージ板24の付近に配されており、上面に押圧を受けてハウジング25の内部に押し込まれるとオンとなり、押圧から開放されてハウジング25から突出するとオフする。PC6は、これら認識スイッチ31,32から出力されるオンオフ信号に基づいて、波長変換位置にセットされた波長変換フィルタ28〜30のうちのいずれかを認識する。以下の表1は、PC6が判別する波長変換フィルタ28〜30の認識パターンを示す。
【0033】
【表1】

【0034】
上記表1、及び図5(A)に示すように、赤蛍光の波長変換フィルタ28が波長変換位置にセットされたとき、切り欠き部28bが認識スイッチ31を避けるため、認識スイッチ31は押圧を受けずにオフされるが、認識スイッチ32は波長変換フィルタ28の自重によってオンされる。また、図5(B)に示すように、青蛍光の波長変換フィルタ29が波長変換位置にセットされたとき、認識スイッチ31は、波長変換フィルタ29の自重によってオンされ、認識スイッチ32は、切り欠き部29bにより避けられて押圧を受けずにオフされる。そして、図5(C)に示すように、緑蛍光の波長変換フィルタ30が波長変換位置にセットされたとき、認識スイッチ31,32はともに波長変換フィルタ30の自重によってオンされる。さらにまた、波長変換フィルタ28〜30のいずれも波長選択位置にセットされていないときは、認識スイッチ31,32はともにオフされる。このようにして認識スイッチ31,32のオンオフ信号が出力され、PC6は波長変換フィルタ28〜30の種類を認識することができる。PC6は、認識スイッチ31,32のオンオフ信号により波長変換フィルタ28〜30の種類を認識すると、認識された波長変換フィルタ28〜30の種類に応じた赤、青、緑のいずれかの蛍光が生体3に照射されること、あるいは波長変換フィルタ28〜30のいずれも認識されないときは、UV光が生体3に照射されることをモニタに表示する。
【0035】
次に、上記構成の作用について説明する。まず、ユーザーが蓋16を開いて、観察に適した励起光に対応させるように、波長変換フィルタ28〜30のいずれか1つを選択して波長変換位置にセットする状態、あるいは波長変換フィルタ28〜30のいずれもセットしない状態とする。そして、波長変換フィルタ28〜30のいずれか1つがセットされた状態、あるいはいずれもセットされていない状態の撮影ステージ上に、蛍光物質を予め投与した生体3が撮影ステージ13に置かれる。ユーザーが蓋16を閉めて撮影室17が遮光状態とされた後、PC6を操作して、上部光源14と底部光源15とのいずれを使用するかを選択設定し、撮影開始を指示する。以下では、本発明に関わる底部光源15が選択された場合について詳細に説明する。撮影開始が指示されると、タイミング制御部22は、露出開始信号をドライバ23に送るとともに認識スイッチ31,32が起動してオンオフ信号のいずれかを出力する。
【0036】
ドライバ23が露出開始信号を受けることにより、イメージセンサ18が作動を開始して、各受光素子で受光する光を電荷に光電変換し蓄積する状態となる。一方、タイミング制御部22では、タイミング信号を生成する処理が開始される。そして、この処理で発生する各タイミング信号が選択されている光源のドライバに順次に送出される。選択されている光源が底部光源15であった場合には、底部光源ドライバ27に各タイミング信号が順次に送られる。
【0037】
タイミング信号が底部光源ドライバ27に入力されると、このタイミング信号の入力に応じて底部光源15がオンとなってUV光が発せられる。底部光源15から発せられたUV光は、波長変換フィルタ28〜30のいずれか1つを透過して赤、青、緑のいずれかの蛍光に波長変換され、あるいは波長変換されずにUV光のまま、生体3に励起光として照射される。そして、その照射で蛍光物質から発せられる蛍光がカメラ側フィルタ20、撮影レンズ19を通してイメージセンサ18に受光され、その受光による電荷が徐々に蓄積される。イメージセンサ18に蓄積された電荷が光電変換されて画像が生成され、PC6に送られる。このとき、PC6は、イメージセンサ18で撮影された画像をモニタに表示するととともに、認識スイッチ31,32のオンオフ信号により撮影ステージにセットされた波長変換フィルタ28〜30の種類、あるいは波長変換フィルタ28〜30のいずれもセットされていないことを認識し、この認識に応じた赤、青、緑のいずれかの蛍光、あるいはUV光が励起光として使用中であることをモニタに表示する。
【0038】
上述したように、底部光源15から発せられるUV光を波長変換フィルタ28〜30で波長変換した複数の蛍光、及び波長変換しないUV光の中から選択した1つを励起光として生体3に照射することができる。これにより、生体3の標識物質に最も適した励起光を選択して蛍光を生じさせて生体3からの鮮明な観察画像を得ることができる。また、ユーザーはモニタの表示によって生体3の観察を行うとともに、使用中の励起光の種類を確認できるので、観察内容や、画像の鮮明度によって所望の結果が得られないときなどは、撮影装置5の撮影を一端停止し、波長変換フィルタ28〜30の選択を変更、あるいはいずれの波長変換フィルタ28〜30もセットしない状態に変更するだけで、先程とは異なる励起光での観察を行うことができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、ハウジング25に対して複数の波長変換フィルタ28〜30を回動自在に取り付けて、いずれか1つを波長変換位置にセットした状態、あるいはいずれもセットしない状態にして励起光の種類を変更する構成を例示しているが、これに限らず、以下で説明する本発明の第2実施形態では、帯状の波長変換フィルムの長手方向に沿って並べて設けられた波長変換フィルタ及び透明フィルタを移動させて励起光の種類を変更する構成を示す。この構成を適用した底部光源及び撮影ステージを図6に示す。なお、図6において、上記実施形態と同じ部品、部材を用いるものは同符号を付して説明を省略する。この場合、撮影ステージ50は、透明ステージ板24と、ハウジング25と、波長変換フィルム51、巻取りローラ52a,52bとを備える。
【0040】
波長変換フィルム51は、幅寸法を透明ステージ板24に合わせた帯状で、長手方向に沿って並べて配された複数のエリアに、赤蛍光、青蛍光、緑蛍光にそれぞれ変換する波長変換フィルタ53〜55、及び波長変換せずにUV光を透過させる透明フィルタ56とが設けられ、両端部が巻取りローラ52a,52bに固定されている。波長変換フィルタ53〜55及び透明フィルタ56のエリアはそれぞれ透明ステージ板24に合わせた大きさになっている。波長変換フィルタは、UV光を透過する透明材料、例えばプラスチックフィルムに赤、青、緑の蛍光顔料または蛍光染料を塗布して形成されている。蛍光顔料または蛍光染料としては、上記第1実施形態で使用されているものと同様である。
【0041】
巻取りローラ52a,52bを回動させることで、波長変換フィルムが巻取り移送され、波長変換フィルタ53〜55及び透明フィルタ56のいずれか1つが透明ステージ板24上の波長変換位置にセットされ、これ以外の波長変換フィルタ53〜55及び透明フィルタ56は波長変換位置から退避する退避位置となる。このような構成とすることで、波長変換フィルタ53〜55で波長変換した蛍光、あるいは透明フィルタ56で波長変換せず、そのまま透過させたUV光のいずれか1つをユーザーが選択して生体3に励起光として照射することができる。
【0042】
上記実施形態においては、波長変換フィルタに形成した切り欠き部、及びスイッチによって、波長変換フィルタの種類を認識する構成としているが、本発明はこれに限るものではなく、図7に示すように、複数の波長変換フィルタ60にそれぞれの固有情報が記憶された記憶手段、例えばICタグ61を設けるとともに、撮影ステージ62には、読み取り手段としてのタグリーダ63を設ける。ICタグ61は、波長変換フィルタ60が透明ステージ板24上の波長変換位置にあるとき、タグリーダ63で読み取り可能な位置にあり、ICタグ61から波長変換フィルタ60の固有情報を読み取ったタグリーダ63は、この固有情報をPC6へ送って波長変換フィルタ60の種類を認識させることができる。また、ICタグ61が読み取れない場合は、波長変換フィルタのいずれも波長変換位置にセットされない状態として認識させてもよい。
【0043】
なお、上記実施形態においては、波長変換フィルタは、UV光を赤、青、緑の蛍光に変換する構成を列挙しているが、これに限らず、UV光を赤、青、緑の蛍光以外の可視光や近赤外光に変換するようにしてもよい。また、上部光源に本発明を適用した構成を列挙しているがこれに限らず、底部光源に適用してもよい。また、UV光源としてUV蛍光灯40を使用しているが、本発明はこれに限らず、UV光を発する半導体発光素子などを用いてもよい。
【0044】
上記実施形態では、撮影装置に用いられるカメラとして、イメージセンサを備えたカメラの構成を例示しているが、本発明はこれに限らず、受光した蛍光から写真フィルムに画像を生成する写真カメラを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明を実施した撮影システムの構成を示す斜視図である。
【図2】撮影装置の構成の概略を示すブロック図である。
【図3】撮影ステージ及び光源の構成を示す斜視図である。
【図4】光源の構成を示す斜視図である。
【図5】波長変換フィルタの認識パターンを示す説明図である。
【図6】第2実施形態の撮影ステージ及び光源の構成を示す斜視図である。
【図7】波長変換フィルタの固有情報を読み取る読取手段を備えた一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
2 撮影システム
3 生体
5 撮影装置
12 カメラ部
13,50 撮影ステージ
14 上部光源
15 底部光源
28〜30,53〜55 波長変換フィルタ
31,32 認識スイッチ
51 波長変換フィルム
52a,52b 巻取りローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に励起光を照射して蛍光物質を励起させ、生じた蛍光をカメラで受光することによって画像を生成する撮影装置であって、
UV光を発するUV光源と、内部に前記UV光源を配し、前記UV光を前記生体へ照射させる開口部が形成されたハウジングと、
前記開口部の上方に位置し、前記UV光を前記励起光に変換して前記生体に照射させる波長変換位置、及び前記波長変換位置から退避する退避位置との間で移動自在に設けられた複数の波長変換フィルタとを備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記波長変換フィルタは剛性を有し、前記波長変換位置と、前記退避位置との間で回動自在に前記ハウジングに取り付けられたことを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
赤蛍光、青蛍光、緑蛍光にそれぞれ変換する前記波長変換フィルタを備えており、互いに異なる方向に回転し、それぞれ異なる前記退避位置に移動することを特徴とする請求項2記載の撮影装置。
【請求項4】
前記波長変換フィルタは、帯状の波長変換フィルムの長手方向に沿って並べて設けられ、前記波長変換フィルムを巻取り移送することにより、いずれか1つの前記波長変換フィルタが前記波長変換位置に選択的に位置することを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項5】
前記波長変換フィルムは、長手方向に沿って並べて配された複数のエリアに、赤蛍光、青蛍光、緑蛍光にそれぞれ変換する前記波長変換フィルタ、及び波長変換せずに透過させる透明フィルタとが設けられていることを特徴とする請求項4記載の撮影装置。
【請求項6】
前記波長変換フィルタは、UV光を透過する透明材料に、蛍光顔料または蛍光染料を分散させて形成したことを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載の撮影装置。
【請求項7】
前記波長変換フィルタは、UV光を透過する透明材料に、蛍光顔料または蛍光染料を塗布して形成したことを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載の撮影装置。
【請求項8】
前記ハウジング上に、前記波長変換フィルタのいずれかが前記波長変換位置にあるとき、前記波長変換フィルタの自重により押圧されるスイッチを備え、前記スイッチのオンオフにより、前記波長変換フィルタの種類が認識されることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1つ記載の撮影装置。
【請求項9】
前記波長変換フィルタには、それぞれの固有情報が記憶された記憶手段を備えており、前記波長変換位置にある前記波長変換フィルタの前記記憶手段から前記固有情報を読み取って認識させる読取手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし8いずれか1つ記載の撮影装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−85152(P2010−85152A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252446(P2008−252446)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】