説明

撮影装置

【課題】昆虫や小動物等の被写体を誘引して、シャッターチャンスを作り出すことが可能な撮影装置を提供する。
【解決手段】撮影装置(カメラシステム1)は、撮影を行う撮影部(撮像素子9)と、被写体を誘引する誘引部(投光装置50又はスピーカ18)と、撮影部の動作を制御する撮影制御部(カメラ本体CPU)と、誘引部の動作を制御する誘引制御部(カメラ本体CPU)と、を備える。誘引部は、投光を行うことにより被写体を誘引し、あるいは音を発生することにより被写体を誘引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体の誘引機能を備えた撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホタルや蝶等の昆虫、あるいは犬や猫等の小動物を撮影する際には、懐中電灯を発光させて昆虫を誘き寄せたり、小動物が興味を示す玩具を動かしたりして、シャッターチャンスを作っていた。このように、撮影を行いながら懐中電灯を操作したり、玩具を動かしたりすると、手ぶれを起こすおそれがある。また、撮影に集中できずに、せっかく作ったシャッターチャンスを逃すことがある。そこで、シャッターチャンスを作るために、歩行中あるいは走行中の人間に対して、静止を促す報知音を発生するようにしたカメラが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−70229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、報知音等の合図が何を意味するかを理解できる人間であれば、何らかの合図を行うことで、シャッターチャンスを作り出すことができるが、昆虫や小動物、あるいは乳幼児に対して単に合図を行っただけでは、シャッターチャンスを作り出すことができない。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、昆虫や小動物等の被写体を誘引して、シャッターチャンスを作り出すことが可能な撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る撮影装置は、撮影を行う撮影部と、被写体を誘引する誘引部と、撮影部の動作を制御する撮影制御部と、誘引部の動作を制御する誘引制御部と、を有することを特徴とする。
【0007】
このような撮影装置において、誘引部は、投光を行うことにより被写体を誘引する構成とすることが可能である。
【0008】
また、投光を行うことにより被写体を誘引する誘引部は、投光する光を点滅させることにより被写体を誘引する構成とすることが可能である。
【0009】
また、投光を行うことにより被写体を誘引する誘引部は、投光する光の波長を選択可能である構成とすることが好ましい。
【0010】
また、投光を行うことにより被写体を誘引する誘引部は、投光により誘引映像を映し出す構成とすることが可能である。
【0011】
また、投光を行うことにより被写体を誘引する誘引部は、投光方向を変更可能である構成とすることが好ましい。
【0012】
また、この撮影装置において、誘引部は、音を発生することにより被写体を誘引する構成とすることが可能である。
【0013】
また、音を発生することにより被写体を誘引する誘引部は、被写体が発生する音と同様の音を発生する構成とすることが可能である。
【0014】
また、音を発生することにより被写体を誘引する誘引部は、超音波を発生する構成とすることが可能である。
【0015】
また、この撮影装置において、誘引制御部は、誘引動作を中止するタイミングを制御可能である構成とすることが好ましい。
【0016】
また、この撮影装置において、撮影制御部は、撮影開始のタイミングを制御可能である構成とすることが好ましい。
【0017】
また、この撮影装置において、撮影部における撮影画像を表示する表示部と、誘引部による誘引が行われている期間は、表示部における表示を停止させる表示制御部と、を備える構成とすることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る撮影装置によれば、一連の撮影動作を行うだけで、被写体となる昆虫や動物等を誘き寄せることができるので、カメラの操作以外の複雑な動作を行うことなく、容易にシャッターチャンスを作り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】カメラシステムの要部断面図である。
【図2】本実施形態に係るカメラシステムのブロック図である。
【図3】カメラシステムの動作を示すフローチャート図である。
【図4】撮影対象の設定を示すカメラシステムの背面概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る撮影装置の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係る撮影装置の一例として、カメラシステム1の構成について説明する。カメラシステム1は、カメラ本体2と交換可能な撮影レンズ3とを組み合わせ、撮像部である撮像素子9で撮像を行う撮影装置として機能する、レンズ交換式一眼レフカメラである。また、本カメラシステム1は、外付けの投光装置50を取り付け可能である。この場合、投光装置50を誘引部として機能させることが可能である。また、本カメラシステム1では、内蔵または外付けのスピーカ18を誘引部として機能させることが可能である。
【0021】
撮影レンズ3は、フォーカスレンズ、ズームレンズおよび防振レンズを含むレンズ群4、絞り5、カメラシステム1の振れを検出する角速度センサ6、レンズ群4を駆動する不図示の駆動装置等を備える。角速度センサ6は、少なくとも光軸に直交する2軸周りの角速度を検出する。駆動装置は、例えば振動波モータ、VCMにより構成される複数のモータを有し、フォーカスレンズを光軸方向に駆動し、防振レンズを光軸方向とは異なる方向に駆動する。また、撮影レンズ3は、この撮影レンズ3の全体を制御すると共に、カメラ本体2と協働するレンズCPU7を有する。
【0022】
カメラ本体2は、撮影レンズ3からの光束を反射してファインダー光学系8に導く反射位置と、撮影レンズ3からの光束がCCDまたはCMOSなどから構成される撮像素子9に入射するように退避する退避位置とで揺動するメインミラー10を備える。このメインミラー10の一部の領域は半透過領域となっており、カメラ本体2は、この半透過領域を透過した光束を焦点検出センサ11へ反射するサブミラー12を備える。このサブミラー12は、メインミラー10に連動して揺動し、メインミラー10が退避位置をとるときには、サブミラー12も光束から退避する。なお、焦点検出センサ11は、位相差方式により入射する光束の焦点状態を検出する。
【0023】
反射位置にあるメインミラー10で反射された光束は、焦点板13、ペンタプリズム14を介してファインダー光学系8へ導かれる。このファインダー光学系8は、複数のレンズから構成されており、ユーザはファインダー光学系8により被写界を確認することができる。
【0024】
また、ペンタプリズム14を透過する光束の一部は測光センサ15に導かれる。測光センサ15は、撮影レンズ3へ入射する光束を複数の領域ごとに測光することにより、被写界の輝度分布を計測する。また、ペンタプリズム14の上方にはGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)モジュール16を備えており、GPS衛星からの信号を受信して、カメラシステム1が存在している位置情報を取得する。さらに、カメラ本体2は、撮影レンズ3のマウント部近傍で撮影レンズ3と干渉しない位置に、被写界の音を取り込むマイク17を備え、ファインダー光学系8の近傍に、誘引音等を発するスピーカ18を備える。
【0025】
メインミラー10が退避位置にあるときには、撮影レンズ3からの光束は、ローパスフィルター19を介して撮像素子9に入射する。撮像素子9の近傍には撮像基板20が設けられており、撮像基板20の後方には外部に面して背面モニタ21が設けられている。本実施形態では、背面モニタ21が表示部として機能する。
【0026】
また、カメラ本体2は、姿勢センサ22を備える。姿勢センサ22は、カメラシステム1の姿勢を検出する。具体的には、カメラシステム1が横向きに構えられているのか、縦向きに構えられているのか、さらには、ユーザが背面モニタ21を視認しやすい姿勢である前傾姿勢であるのか等の姿勢を検出する。
【0027】
投光装置50は、例えば、光源としてR,G,Bの各色の発光ダイオード51(R-LED,G-LED,B-LED)と、各色の発光ダイオード51に電流を供給して、各色の発光ダイオード51の発光量および発光時間を制御する投光制御回路52とを有する。なお、投光装置50を誘引部として機能させる場合は、投光制御回路52がカメラ本体CPU27と協働し、誘引制御部として機能する。また、投光装置50は、このような構成からなる閃光装置に限られず、誘引映像を投影する投影装置とすることが可能である。投影装置を投光装置50として機能させる場合には、カメラ本体2に投影装置を搭載し、あるいは取り付け可能とする。また、カメラ本体2に投影装置と閃光装置の双方を搭載し、あるいは取り付け可能として、これらの投光装置50を誘引部として機能させてもよい。
【0028】
また、投光装置50は、投光制御回路52の制御により、各色の発光ダイオード51を点滅させるように構成してもよい。すなわち、設定された時間間隔で各色の発光ダイオード51を点滅させることにより、被写体の関心を引いて、被写体を誘引することができる。例えば、雄の蛍を誘引する場合には、雌の蛍の発光間隔に合わせて光を点滅させればよい。
【0029】
また、投光装置50は、各色の発光ダイオード51の発光波長を選択できるように構成してもよい。各色の発光ダイオード51の発光波長を変更することにより、被写体が好む波長で発光を行い、被写体を誘引することができる。例えば、紫外線に嗜好性を示す昆虫等を誘引する場合には、紫外線を発光させればよい。この場合には、人間の可視光域を外れた紫外線を投光するので、投光された光が撮影の邪魔になることがない。また、撮像素子9の感光域から紫外線が外れていれば、発光した紫外線が撮影画像に写り込むことがない。
【0030】
また、投光装置50として、誘引映像を映し出す投影装置を搭載し、あるいは取り付け可能とした場合には、この投影装置により、LCOS等の図示しないライトバルブにより空間光変調された誘引映像を、投影レンズを介して投影面に投射させる。例えば、蛍を誘引する場合には、疑似蛍の映像を投影し、猫を誘引する場合には、猫が興味を示す玩具やネズミの動く映像を投影すればよい。
【0031】
また、投光装置50は、投光方向を変更できるように構成することが好ましい。すなわち、投光装置50の向きを変更可能として、被写体に向かって投光や映像投射を行ったり、あるいは撮影を行うユーザの背面側に投光や映像投射を行ったりすることにより、被写体を効果的に誘引することができる。例えば、蛍を誘引する場合には、被写界に向かって投光を行い、猫を誘引する場合には、撮影を行うユーザと被写体との間の地面に、猫が興味を示す玩具やネズミの動く映像を投影すればよい。また、子供の目線をカメラ本体2側に向けるためには、子供が興味を示すキャラクタ等をユーザの背面側に投影すれば良い。
【0032】
また、投光装置50における投光や映像投射を中止するタイミングを制御できるようにして、被写体の誘引を行っている間は投光や映像投射を行い、被写体の誘引を終了して撮影を行う際に、投光や映像投射を中止することが好ましい。これにより、撮影した画像に、投光や誘引映像が映り込むことがなくなると共に、消費電力の削減にも寄与することができる。
【0033】
また、上述のように、カメラ本体2は、誘引部として機能するスピーカ18を備える。なお、スピーカ18は不図示のアンプに接続されており、音源情報を用いてアンプにより誘引音を増幅し、スピーカ18から誘引音を発生する。スピーカ18から発生する音のオン・オフは、誘引制御部として機能するカメラ本体CPU27が制御する。
【0034】
また、スピーカ18は、被写体が発生する音と同様の音を発生するように構成してもよい。すなわち、複数種類の音源情報を記憶しておき、被写体に合わせて音源情報を選択し、スピーカ18から被写体が発生する音と同様の音を発生させる。例えば、被写体が猫である場合には、スピーカ18から猫の鳴き声を発生させることにより、猫の顔を撮影レンズに向かわせることができる。
【0035】
また、スピーカ18は、超音波を発生するように構成してもよい。すなわち、人間の可聴音域を外れた超音波を発生することにより、周囲の人間の邪魔になることなく、被写体を誘引することができる。例えば、犬を誘引する場合には、犬の可聴音域である超音波を発生することにより、周囲の人間の邪魔になることなく、犬の顔を撮影レンズに向かわせることができる。
【0036】
また、誘引制御部として機能するカメラ本体CPU27は、スピーカ18からの音声発生を中止するタイミングを制御して、被写体の誘引を行っている間はスピーカ18から音声を発生させる一方、被写体の誘引を終了して撮影を行う際にはスピーカ18から音声を発生させないようにすることが好ましい。これにより、長時間にわたる音声の発生により撮影者であるユーザや周囲の人間に不快感を与えることがなくなると共に、消費電力の削減にも寄与することができる。
【0037】
図2は、本実施形態に係るカメラシステム1のブロック図である。カメラ本体CPU27により、このカメラシステム1の全体の制御が行われる。また、撮像基板20は、撮像素子9を駆動する駆動回路23、撮像素子9の出力をデジタル信号に変換するA/D変換回路24、ASICで構成される画像処理制御回路25および撮像素子9からの信号の高周波成分を抽出するコントラストAF回路26などを有している。
【0038】
画像処理制御回路25は、デジタル信号に変換された画像信号に対してホワイトバランス調整、シャープネス調整、ガンマ補正、階調調整などの画像処理を施すと共に、JPEGなどの画像圧縮を行って画像ファイルを生成する。生成された画像ファイルは、画像記録媒体34に記憶される。この画像記録媒体34は、カメラ本体2に対して着脱可能なフラッシュメモリなどの記録媒体であってもよいし、カメラ本体2に内蔵されるSSD(Solid State Drive)などの記録媒体であってもよい。
【0039】
画像処理を施された画像信号は、背面モニタ制御回路28の制御により、背面モニタ21に表示される。この背面モニタ21に撮影直後に撮影された画像信号を所定時間表示すれば、画像記録媒体34に記録された画像ファイルに対応する画像をユーザに視認させることができる。また、撮像素子9が連続的に光電変換する被写界像を、画像記録媒体34に記録することなく背面モニタ21に逐次表示すればライブビュー表示を実現できる。なお、本実施形態では、背面モニタ制御回路28がカメラ本体CPU27と協働して表示制御部として機能し、誘引部による誘引が行われている期間は、表示部である背面モニタ21における表示を停止させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、撮像素子9が連続的に光電変換する被写界像を、画像記録媒体34に記録開始するタイミングが制御される。すなわち、カメラ本体CPU27は、撮影を行わない待機状態ではライブビュー表示を行い、撮影開始タイミングを指示する撮影開始信号を受信すると、撮像素子9が連続的に光電変換する被写界像を、画像記録媒体34に記録する。撮影開始信号は、例えば、笑顔認識部(不図示)により笑顔認識が行われたとき、焦電センサ(不図示)により動物が発する体温を検知したとき、画像認識部(不図示)により顔認識が行われたとき、または画像認識部(不図示)により、画像の変化を認識したとき等に発信される。
【0041】
さらに、撮像素子9が連続的に光電変換する被写界像を、例えばMPEGなどの動画圧縮処理を画像処理制御回路25で施して画像記録媒体34に記録すれば、動画撮影を実現することができる。このとき、マイク17で収集した被写界の音声も圧縮処理して、動画データに同期させて記録する。生成される動画像のフレームレートは、例えば30fpsなど、複数のフレームレートから選択されて設定される。
【0042】
コントラストAF回路26は、撮像素子9からの撮像信号の高周波成分を抽出してAF評価値信号を生成し、これが最大になるフォーカスレンズ位置を検出する。具体的には、画像処理制御回路25から入力される画像信号から、バンドパスフィルタを用いて所定の高周波成分を抽出し、ピークホールド、積分等の検波処理を行ってAF評価値信号を生成する。生成したAF評価値信号は、カメラ本体CPU27に出力する。
【0043】
レンズCPU7は、角速度センサ6で検出した手振れをキャンセルするように、撮影レンズ3内の防振レンズを光軸方向とは異なる方向に駆動して光学式手振れ補正を実現している。手振れ補正はこのような光学式手振れ補正に限らず、撮像素子9に駆動機構を付与して、光軸方向とは異なる方向に駆動して手振れをキャンセルする撮像素子駆動式手振れ補正を採用することもできる。さらには、画像処理制御回路25から出力された複数枚の画像間の動きベクトルを算出し、算出した画像間の動きベクトルをキャンセルするように画像読み出し位置を制御して手振れをキャンセルする電子式手振れ補正を採用することもできる。光学式手振れ補正および撮像素子駆動式手振れ補正は特に静止画撮影に好適であり、動画撮影にも適用される。電子式手振れ補正は動画撮影に好適である。これらの方式は、選択的、追加的に採用され得る。
【0044】
また、カメラ本体CPU27は、レンズCPU7と協働し、焦点検出センサ11の出力に応じて撮影レンズ3を構成するフォーカスレンズの作動を制御することによりAF動作を行う。さらに、カメラ本体CPU27は、撮影レンズ3を構成するズームレンズの状態(焦点距離)や、この撮影レンズ3自体の情報(例えば、広角レンズ、望遠レンズ、マクロレンズ等のレンズ種別)を、レンズCPU7を介して取得することができる。
【0045】
測光センサ15は、上述のように、撮影レンズ3へ入射する光束を複数の領域ごとに測光することにより被写界の輝度分布を計測するが、計測結果はカメラ本体CPU27に出力する。カメラ本体CPU27では、選択された測光モードに応じて露出値を算出する。測光モードとしては、明るい部分と暗い部分のバランスを取る分割測光モード、画面中央を適正露出とする中央重点測光モード、選択したフォーカスポイントの狭領域を適正露出とするスポット測光モードなどが選択され得る。
【0046】
カレンダー部31は、水晶発振子、計時用集積回路等を有しており、年月日時分秒といったカレンダー情報を保持する。カメラ本体CPU27は、カレンダー部31から時間に関する情報を適宜検出することができる。GPSモジュール16は、GPS衛星からの信号を受信してカメラ本体2が存在している緯度、経度、高度情報を取得する。カメラ本体CPU27は、GPSモジュール16からカメラ本体2が存在している位置に関する情報を適宜検出することができる。
【0047】
フラッシュROM29は、EEPROM(登録商標)であり、カメラシステム1を動作させるプログラムのほか、各種調整値、設定値を記憶する記憶装置である。具体的には、AF調整データ、AE調整データ、製造時の年月日時間データ、各種設定SWの設定履歴などを記憶している。特に、ユーザが設定する各種設定値は、カメラシステム1のメニュー項目として、種類に応じて複数に分類され、さらにそれぞれの分類の中でその従属関係からツリー構造状に階層化されて管理されている。また、カメラシステム1が備える機能についてユーザをガイドするユーザガイドも、メニュー項目と同様に、種類に応じて複数に分類され、さらにそれぞれの分類の中でツリー構造状に階層化されて管理されている。また、フラッシュROM29は、メニュー設定画面およびユーザガイド画面の所定回数分の使用履歴を記憶している。
【0048】
RAM30は、フラッシュROM29に記憶されたプログラムが展開され、カメラ本体CPU27が高速にアクセスできるDRAMなどの高速RAMである。特に頻繁に参照される各種調整値、設定値などもフラッシュROM29からコピーされ、カメラ本体CPU27からのアクセスを容易にする。
【0049】
背面モニタ制御回路28は、上述のように画像処理された画像の他、フラッシュROM29から読み出したメニュー設定画面およびユーザガイド画面を背面モニタ21へ表示する表示制御を行う。また、背面モニタ21の表面にはタッチパネルセンサが積層されており、ユーザが背面モニタ21のメニュー項目等を視認しつつタッチパネルセンサを操作したときには、その座標とその座標に対応して表示されていたメニュー項目をカメラ本体CPU27へ出力する。なお、誘引動作中のスリープ動作を行わせる場合は、この背面モニタ制御回路28が表示制御部として機能する。
【0050】
姿勢センサ22は、上述のように、カメラシステム1の姿勢を検出する姿勢検出部である。この姿勢センサ22は、簡単なものでは、フォトインタラプタの赤外光を、重力によって移動する小球が遮断するかにより一軸方向の姿勢を検出するセンサを組み合わせて構成される。また、カメラシステム1の姿勢として正確な角度まで検出したい場合には、3軸加速度センサなどが用いられる。特に本実施形態においては、ユーザが背面モニタ21を視認しやすい姿勢である前傾姿勢であるかが検出される構成であればよい。
【0051】
レリーズSW32は、2段式のスイッチである。ユーザがレリーズSW32を半押しすると、オートフォーカス、測光などの撮影準備動作を行う。さらにユーザがレリーズSW32を全押しすると、カメラ本体CPU27は、静止画、動画の撮影動作を開始する。
【0052】
投光装置50の投光制御回路52は、カメラ本体CPU27と協働して、各色の発光ダイオード51(R-LED,G-LED,B-LED)の発光量および発光時間を制御する。このとき、カメラ本体CPU27は、レンズCPU7および投光装置50と協働してカメラシステム1の全体を制御する。
【0053】
以上のように構成された本カメラシステム1の撮影動作について、以下、図3のフローチャートに沿って説明を行う。また、本フローチャートは、上述のように。フラッシュROM29に記憶され、RAM30に展開されたプログラムにより、カメラ本体CPU27で実行されるものとする。すなわち、カメラ本体CPU27は、投光制御回路52と協働して、本フローチャートに基づき、上述の投光装置50における投光状態の制御、スピーカ18における発音状態の制御を行うことにより、被写体の誘引を制御する誘引制御部として動作すると共に、撮影部における撮影を制御する撮影制御部として動作する。また、カメラ本体CPU27は、背面モニタ制御回路28と協働して、背面モニタにおけるプレビュー動作を制御する。
【0054】
不図示の電源がオンとなると(ステップS1)、動画撮影又は静止画撮影を選択する(ステップS2)。そして、動画撮影が選択されると、撮影対象と撮影モードを選択する(ステップS3、ステップS4)。選択される撮影対象は、図4に示すように、例えば、蛍(光る虫)、犬・猫(小動物)等である。また、撮影モードは、オートモード、シーンモード、露出モード(P・S・A・Mモード)等である。なお、撮影対象や撮影モードの選択は、図4に示すように、ユーザが十字スイッチ33を操作することで実行される。十字スイッチ33の操作に代えてタッチパネルセンサの操作によりどちらの撮影かを選択するようにしてもよい(以下の選択処理においても同様)。
【0055】
次に、誘き寄せ方法の選択(ステップS5)、照明方法の選択(ステップS6)、背面モニタモードの選択(ステップS7)を行う。誘き寄せ方法には、ストロボ点滅、ストロボ光源の波長選択、投影機による誘引映像投影、音声発生等がある。また、照明方法には、全発光/蛍自体を撮影するモード、中間発光/背景を入れて蛍を撮影するモード、自動発光/蛍と投光の双方を撮影(蛍自体を撮影すると共に背景映像を撮影)するモード等がある。また、背面モニタモードは、誘引中の背面モニタ21のオンまたはオフがある。
【0056】
上述した選択が終了すると、撮影動作に移行する。なお、各選択ステップは、背面モニタに表示される選択メニューにおいて、選択アイコンによりユーザが所望の選択を行い、設定アイコンにより設定を確定させた際に発信される選択信号に基づいて、カメラ本体CPU27により実行される。
【0057】
撮影動作では、まず、メインミラー10をアップしてプレビュー状態とすると共に、AF動作及びAE動作を開始する(ステップS8)。なお、ミラーレスの場合には、ミラーアップ動作は行わずに、AF動作及びAE動作を開始する。そして、誘き寄せの開始契機としてレリーズSW32が半押しされ、あるいはスタートボタンが操作されると(ステップS9)、AF動作を終了してフォーカスを確定させ、AE動作を終了し適正露出とする(ステップS10)。その後、誘き寄せを開始して、投光装置50による投光や誘引映像の投影、スピーカ18からの音声発生を行う(ステップS11)。また、背面モニタ21をオフする設定がなされている場合には、背面モニタ21をオフして電力の消費を抑える(ステップS12)。
【0058】
次に、撮影の開始契機としてレリーズSW32が全押しされ、あるいはスタートボタンが操作されると(ステップS13)、撮影を開始し(ステップS14)、誘き寄せを終了する(ステップS15)。なお、レリーズSW32が全押しされると、まず、誘き寄せを終了し、その後、撮影を開始してもよい。そして、撮影の終了契機としてレリーズSW32が全押しされ、あるいはストップボタンが操作されると(ステップS16)、撮影を終了する(ステップS17)。なお、撮影中は誘き寄せを続行し、撮影終了と同時に誘き寄せを終了するようにしてもよい。
【0059】
また、図示しないが、静止画撮影が選択された場合の静止画撮影(ステップS20)においても、上述した動画撮影とほぼ同様の動作が実行される。なお、静止画撮影(ステップS20)では、動画撮影のように撮影状態を常時モニタする必要がないため、動画撮影におけるライブビュー動作(ステップS8)と同様の動作は実行しない。
【0060】
また、ステップS4で選択した撮影対象及び撮影モードが、夏の夜間の屋外(郊外)における夜光虫の撮影である場合には、閃光撮影を禁止することが好ましい。この場合に、閃光撮影は禁止しても各色の発光ダイオード51(R-LED,G-LED,B-LED)を利用して夜光虫をおびき出すことができる。このため、本実施例において、カメラ本体CPU27は、投光制御回路52を介してB-LEDに電流を供給してB-LEDを点灯させるように制御する。この際に、ローパスフィルター19により撮像素子9への入射しない波長域の光を用いれば、夜光虫をおびき寄せた後の撮影時にも発光ダイオード51を点灯させたままにすることができる。
【0061】
<変形例>
上述の実施例においては、レンズ交換式一眼レフカメラであるカメラシステム1を例として説明したが、メインミラー10やペンタプリズム14などを省略したミラーレス一眼カメラにも適用することができる。また、レンズを交換することができないカメラシステム(コンパクトカメラ等)においても、同様に被写体の誘引を行うことができる。さらに、上述の実施形態においては、外付けの投光装置50の場合について説明したが内蔵の閃光装置を用いてもよい。
【0062】
また、以上の実施例では、撮影開始(ステップS14)をレリーズ32が全押しされたことで判断していたが、カメラ本体CPU27を用いて自動的に開始させるように構成することも可能である。例えば、蛍(光る虫)を撮影する場合、撮像素子9から連続的に画像を取得し、この画像を解析することにより、動く点(光る点)が被写界内に現れたことを認識して撮影を開始するように構成する。また、猫のような動物を撮影する場合にも、画像を解析して被写界内に動く物体を認識して撮影を開始するように構成することも可能であるし、別途焦電センサを設けて熱を発する物体が被写界内に入ったことを検出して撮影を開始するように構成することも可能である。同様に、カメラ本体CPUで経過時間を計測し、所定の時間が経過すると自動的に撮影を開始するように構成することも可能である。また、撮影の終了も、同様の手法を用いてカメラ本体CPU27が制御するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 カメラシステム(撮影装置) 9 撮像素子(撮像部)
18 スピーカ(誘引部) 21 背面モニタ(表示部)
27 カメラ本体CPU(誘引制御部、撮影制御部)
28 背面モニタ制御回路(表示制御部) 50 投光装置(誘引部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影を行う撮影部と、
被写体を誘引する誘引部と、
前記撮影部の動作を制御する撮影制御部と、
前記誘引部の動作を制御する誘引制御部と、を有することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記誘引部は、投光を行うことにより被写体を誘引することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記誘引部は、投光する光を点滅させることにより被写体を誘引することを特徴とする請求項2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記誘引部は、投光する光の波長を変更可能であることを特徴とする請求項2に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記誘引部は、投光により誘引映像を映し出すことを特徴とする請求項2に記載の撮影装置。
【請求項6】
前記誘引部は、投光方向を変更可能であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項7】
前記誘引部は、音を発生することにより被写体を誘引することを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。
【請求項8】
前記誘引部は、被写体が発生する音と同様の音を発生することを特徴とする請求項7に記載の撮影装置。
【請求項9】
前記誘引部は、超音波を発生することを特徴とする請求項7に記載の撮影装置。
【請求項10】
前記誘引制御部は、誘引動作を中止するタイミングを制御可能であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項11】
前記撮影制御部は、撮影開始のタイミングを制御可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項12】
前記撮影部における撮影画像を表示する表示部と、
前記誘引部による誘引が行われている期間は、前記表示部における表示を停止させる表示制御部と、を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−128305(P2012−128305A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281315(P2010−281315)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】