説明

撹拌処理方法、撹拌装置及び供給構造

【課題】析出粒子の粒径を均一化且つ微細化することができる撹拌処理方法、撹拌装置及び供給構造を提供する。
【解決手段】ポリマー溶液とポリマー粒子を析出させる貧溶媒とを撹拌するインラインミキサー10において、ポリマー溶液及び貧溶媒を撹拌する撹拌槽11と、撹拌槽11内に回転可能に設けられ、ポリマー溶液及び貧溶媒を剪断する撹拌翼12と、外管20と、該外管20の内側に挿通された内管21とを有する多重構造からなり、外管20及び内管21の間隙と内管21とを介して、ポリマー溶液及び貧溶媒を撹拌槽11と撹拌翼12との間に形成された微小間隙Cに導出する供給管15と、撹拌槽11内で撹拌された流体を外部に導出する導出部16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌処理方法、撹拌装置及び供給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品又は化学品等の生産プロセスでは、目的とする化合物の精製や分離を行う工程で、撹拌処理が行われることが多い。撹拌処理で用いられる撹拌装置は、一般的に、撹拌槽内に、タービン翼等の撹拌翼を設けた構成になっている。そして、撹拌翼により撹拌槽内の気体、液体、固体又はそれらの混相流を撹拌し、晶析、重合等の各種反応を行うようになっている。
【0003】
例えば晶析は、過飽和の溶液中から結晶粒子を再結晶又は再沈澱させる分離・精製方法であって、目的とする物質を分離するだけでなく、所望の粒径等、目的とする特性を有する粒子を精製する方法として用いられている。粒子を精製する際には、溶液を撹拌装置を用いて撹拌し、粒子が液体(溶媒)に分散された固液混相のスラリーを形成する。そして、スラリーを濾過又は乾燥させることにより、所望の固体粒子を得る。この一例として、ポリマー粒子の沈殿精製法がある。この沈殿精製法では、ポリマー溶液に貧溶媒を添加してスラリー化し、生成したスラリーを濾過及び乾燥させて、固体のポリマー粒子を得る(例えば特許文献1〜3参照)。
【0004】
一方、生産プロセスの撹拌処理では、処理量が限られるバッチ処理ではなく、連続処理が不可欠である。図9に示すように、連続処理式の撹拌装置本体100は、撹拌対象の第1の液体(例えばポリマー溶液P)を送液する第1の送液管101と、第2の液体(例えば貧溶媒S)を送液する第2の送液管102とに接続されている。第2の送液管102は、撹拌装置本体100の手前で第1の送液管101に合流している。このため、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sは、混合された状態で撹拌装置本体100に導出される。そして、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sの混合液は、撹拌装置本体100で撹拌され、導出管103から外部に送液される。
【特許文献1】特開2005−320444号公報
【特許文献2】特開2004−292544号公報
【特許文献3】特開2001−139692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、撹拌装置本体100に各液体を送液する際に、以下のような問題が生じる。例えば、ポリマー粒子の沈殿精製法の場合、インラインミキサー100の手前でポリマー溶液P及び貧溶媒Sが合流すると、貧溶媒Sに接触したポリマー溶液Pが固化してしまう。また、固化する際に、未反応のポリマー溶液P及び貧溶媒S等の不純物を取り込んだ粒径の大きな固化物が生成するだけでなく、固化物が凝集した凝集塊F(図9参照)が発生することがある。第1の送液管101内で、不均一なスラリーや凝集塊Fが発生すると、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sをインラインミキサー100に安定供給できないだけでなく、凝集塊F等によって閉塞された箇所で破裂を起こすことがある。また、一部固化したポリマー溶液Pをインラインミキサー100に供給すると、その固化物が核となって、過大な粒径のポリマーが形成され、所望の粒径よりも大きいポリマー粒子の生成や、粒径の不均一化を招来する。
【0006】
上記したポリマー粒子の沈殿精製法に限らず、インラインミキサー100の手前で撹拌対象の各流体を混合すると、凝集塊の生成による生産効率の低下、結晶粒子又は沈殿粒子
の粒径の不均一化を招来し、所望の粒径の粒子を得ることができない。これに対し、ポリマー溶液P等を十分に希釈し、貧溶媒Sに滴下する方法が考えられるが、多量の貧溶媒Sが必要となる他、生産効率が著しく低下する。また、上記問題点に対し、インラインミキサー100の撹拌槽(図示略)の異なる位置に形成された入口から、各流体を連続的に撹拌槽に導入することも考えられるが、外部に連通する入口が複数の位置に設けられることにより、撹拌槽の壁部と撹拌翼との間で発生する剪断効果が弱められる他、撹拌槽の密閉性が低下してしまう。また、各流体をそれぞれ異なる位置に形成された入口から導入することにより、各液体の分散効果が低下する問題もある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、析出物質の粒径を均一化且つ微細化することができる撹拌処理方法、撹拌装置及び供給構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、析出物質を含有する溶液と該析出物質を析出させる溶媒とを撹拌槽にて混合し、スラリー化する撹拌処理方法であって、前記撹拌槽内で回転する撹拌翼と、前記撹拌槽に接続する多重管の導出口との間であって、前記撹拌翼により剪断力が付与される微小間隙に、前記多重管によって前記溶液及び前記溶媒をそれぞれ導出し、前記溶液及び前記溶媒を前記撹拌翼の回転によって剪断して前記析出物質を析出させたスラリーを生成することを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、単量体組成物を重合させた重合体組成物を含有する溶液と貧溶媒とを撹拌槽にて混合し、スラリー化する撹拌処理方法であって、前記撹拌槽内で回転する撹拌翼と、前記撹拌槽に接続する多重管の導出口との間であって、前記撹拌翼により剪断力が付与される微小間隙に、前記多重管によって前記溶液及び前記貧溶媒をそれぞれ導出し、前記溶液及び前記貧溶媒を前記撹拌翼の回転によって剪断して前記重合体組成物を析出させたスラリーを生成することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物を含有する溶液と貧溶媒とを撹拌槽にて混合し、再沈殿精製法により前記ホスホリルコリン類似基含有重合体を精製する撹拌処理方法であって、前記撹拌槽内で回転する撹拌翼と、前記撹拌槽に接続する多重管の導出口との間であって、前記撹拌翼により剪断力が付与される微小間隙に、前記多重管によって前記溶液及び前記貧溶媒をそれぞれ導出し、前記溶液及び前記貧溶媒を前記撹拌翼の回転によって剪断して前記ホスホリルコリン類似基含有重合体を析出させたスラリーを生成することを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、析出物質を含有する溶液と該析出物質を析出させる溶媒とを撹拌する撹拌装置において、前記溶液及び前記溶媒を撹拌する撹拌槽と、前記撹拌槽内に回転可能に設けられ、前記溶液及び前記溶媒を剪断する撹拌翼と、外管と、該外管の内側に挿通された内管とを有する多重管を有し、前記外管に前記溶液及び前記溶媒のいずれか一方を、前記内管にその他方をそれぞれ供給し、前記溶液及び前記溶媒を、前記外管及び前記内管の各導出口と前記撹拌翼との間に形成された微小間隙に導出する供給部と、前記撹拌槽で撹拌された流体を外部に導出する導出部とを有することを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の撹拌装置において、前記供給部は、二重管を有することを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の撹拌装置において、前記外管及び前記内管の導出口は、その中心軸線が、前記撹拌翼の回転軸と一致するように配置されることを要旨とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか1項に記載の撹拌装置において、前記撹拌槽と前記撹拌翼との間に形成された前記微小間隙は、0.5mm〜30mmの大きさであることを要旨とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、単量体組成物を重合させた重合体組成物と貧溶媒とを撹拌する撹拌装置であって、前記重合体組成物及び前記貧溶媒を撹拌する撹拌槽と、前記撹拌槽内に回転可能に設けられ、前記重合体組成物及び前記貧溶媒を剪断する撹拌翼と、外管と、該外管の内側に挿通された内管とを有する多重管を有し、前記外管に前記溶液及び前記貧溶媒のいずれか一方を、前記内管にその他方をそれぞれ供給し、前記溶液及び前記貧溶媒を、前記外管及び前記内管の各導出口と前記撹拌翼との間に形成された微小間隙に導出する供給部と、前記撹拌槽で撹拌された流体を外部に導出する導出部とを有することを要旨とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の撹拌装置において、前記供給部は二重管を有し、前記外管は前記貧溶媒を送液し、前記内管は前記重合体組成物を送液することを要旨とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物と貧溶媒とを撹拌する撹拌装置であって、前記ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物及び前記貧溶媒を撹拌する撹拌槽と、前記撹拌槽内に回転可能に設けられ、前記ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物及び前記貧溶媒を剪断する撹拌翼と、外管と、該外管の内側に挿通された内管とを有する多重管を有し、前記外管及び前記内管の間隙と前記内管とを介して、前記ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物及び前記貧溶媒を前記導出口と前記撹拌翼との間に形成された微小間隙に導入する供給部と前記撹拌槽内で撹拌された流体を外部に導出する導出部とを有することを要旨とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、撹拌装置の撹拌槽に接続し、前記撹拌槽に析出物質を含有する溶液と該析出物質を析出させる溶媒とを供給する供給構造であって、外管と、該外管の内側に挿通された内管とを有する多重管を有し、前記外管及び前記内管の間隙と前記内管とを介して、前記溶液及び前記溶媒を前記撹拌槽に導入することを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、多重管によって溶液及び溶媒を供給するので、撹拌槽に導出される前に溶液及び溶媒を混合しないようにすることができる。また、撹拌翼と、撹拌槽に接続された多重管の導出口との微小間隙に溶液及び溶媒を導出するので、各液体が導出された際の溶液及び溶媒の接触率を高めるとともに、剪断効果を高めることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、多重管によって溶液及び貧溶媒を供給するので、撹拌槽に導出される前に溶液及び貧溶媒を混合しないようにすることができる。また、撹拌翼と、撹拌槽に接続された多重管の導出口との微小間隙に溶液及び貧溶媒を導出するので、各液体が導出された際の溶液及び貧溶媒の接触率を高めるとともに、剪断効果を高めることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、多重管によって溶液及び貧溶媒を供給するので、撹拌槽に導出される前に溶液及び貧溶媒を混合しないようにすることができる。また、撹拌翼と、撹拌槽に接続された多重管の導出口との微小間隙に溶液及び貧溶媒を導出するので、各液体が導出された際の溶液及び貧溶媒の接触率を高めるとともに、剪断効果を高めることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、供給部の外管と内管とを介して、溶液及び溶媒を撹拌槽にそれぞれ導入するので、供給部内で混合されることがない。このため、供給部内において、撹拌翼の剪断力が付与されない状態で混合しないようにすることができる。また、多重管構造にすることにより、撹拌槽に溶液及び溶媒が導入された際の各流体の接触率を高めるとともに、外管及び内管の導出口と撹拌翼との間に形成された微小間隙に溶液及び溶媒を導出することにより、剪断効果を高めることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、供給部は、二重管構造であるため、供給部の構成を複雑化することなく、溶液及び溶媒を独立させて撹拌槽に導くことができる。
請求項6に記載の発明によれば、外管及び内管の導入口は、撹拌翼の回転軸の直近に配置される。このため、撹拌翼の回転により、偏り無く溶液及び溶媒を撹拌することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、微小間隙は、0.5mm〜30mmであるので、撹拌翼は、微小間隙に入り込んだ溶液及び溶媒に大きな剪断力を付与することができる。
請求項8に記載の発明によれば、供給部の外管と内管とを介して、溶液及び貧溶媒を撹拌槽にそれぞれ導入するので、供給部内で混合されることがない。このため、供給部内において、撹拌翼の剪断力が付与されない状態で混合しないようにすることができる。また、多重管構造にすることにより、撹拌槽に溶液及び貧溶媒が導入された際の各流体の接触率を高めるとともに、外管及び内管の導出口と撹拌翼との間に形成された微小間隙に溶液及び貧溶媒を導出することにより、剪断効果を高めることができる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、外管を介して送液された溶媒が、内管を介して送液された重合対組成物を取り囲んだ状態で撹拌槽内に導入されるので、凝集等の発生を防止することができる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、供給部の外管と内管とを介して、溶液及び貧溶媒を撹拌槽にそれぞれ導入するので、供給部内で混合されることがない。このため、供給部内において、撹拌翼の剪断力が付与されない状態で混合しないようにすることができる。また、多重管構造にすることにより、撹拌槽に各流体が導入された際の各流体の接触率を高めるとともに、外管及び内管の導出口と撹拌翼との間に形成された微小間隙に各流体を導出することにより、剪断効果を高めることができる。
【0026】
請求項11に記載の発明によれば、供給構造の外管と内管とを介して、溶液及び溶媒を撹拌槽にそれぞれ導入するので、供給部内で混合されることがない。このため、供給部内において、撹拌翼の剪断力が付与されない状態で混合しないようにすることができる。また、多重管構造にすることにより、撹拌槽に各流体が導入された際の各流体の接触率を高めるとともに、外管及び内管の導出口と撹拌翼との間に形成された微小間隙に各流体を導出することにより、剪断効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した撹拌装置の一実施形態を図1〜図7に従って説明する。本実施形態では、撹拌装置を、析出物質としてのホスホリルコリン類似基含有重合体(以下、PC重合体と略す)を粉体粒子として得るための装置として具体化した場合について説明する。
【0028】
まず、PC重合体を含有したスラリーを生成するための沈殿精製システム1について説明する。図1に示すように、沈殿精製システム1は、溶液及び重合体組成物としてのポリマー溶液Pを貯留する重合槽2、貧溶媒Sを貯留する溶媒供給槽3、撹拌装置としてのインラインミキサー10、濾過装置9を有している。重合槽2は、ホスホリルコリン類似基
含有単量体(以下、PC単量体と略す)を重合するための反応槽であって、モノマー供給槽及び開始剤供給槽(いずれも図示略)に接続されている。そして、供給されたPC単量体と重合開始剤とを混合して重合反応を開始させ、ポリマー溶液Pを生成する。
【0029】
重合槽2とインラインミキサー10との間には、流量制御弁4a及び流量計5a及び送液ポンプ6aが設けられている。流量制御弁4aは、流量計5aにより測定された流量に基づき、インラインミキサー10の撹拌槽11(図2参照)に送出されるポリマー溶液Pの流量を制御し、送液ポンプ6aは、フィルタ(図示略)によって濾過されたポリマー溶液Pをインラインミキサー10に導出する。
【0030】
沈殿精製システム1に用いられる送液ポンプ6aの種類としては、無脈動定量ポンプが好ましい。脈動型ポンプで送液すると、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sの送液バランスがポンプ脈動によって崩れる。これにより、ポリマー溶液Pの供給量が、貧溶媒Sの供給量に対して一時的に過剰又は不足することで、未反応のPC単量体や溶媒等を取り込んだ凝集塊が生じる。この凝集塊が生じると、インラインミキサー10内の各部材への付着、粒子の不均一化を招来する。また、本実施形態では、ポリマー溶液Pを、送液ポンプ6aによりインラインミキサー10に送液したが、密閉された重合槽2内に窒素等の不活性ガスを充填し、ガス圧力によりポリマー溶液Pを圧送するようにしてもよい。また、ガスによる圧送方式と送液ポンプ6aによる送液方式を組み合わせてもよい。
【0031】
また、溶媒供給槽3と、インラインミキサー10との間には、流量制御弁4b及び流量計5b及び送液ポンプ6bが設けられている。流量制御弁4bは、流量計5bに基づき、予め設定されたポリマー溶液Pの供給量と貧溶媒Sの供給量の比に基づき、貧溶媒Sの流量を制御する。また、送液ポンプ6bは、重合槽2側に設けられた送液ポンプ6bと同じ定量ポンプを用いることが好ましい。又は、貧溶媒Sをガスによる圧送方式で送液してもよい。
【0032】
インラインミキサー10には、重合槽2から送液されたポリマー溶液Pと、溶媒供給槽3から送液された貧溶媒Sとが供給される。インラインミキサー10は、ポリマー溶液Pと貧溶媒Sとを撹拌することにより、PC重合体の微粒子を含むスラリーを生成する。そして、生成したスラリーを濾過装置9に導出する。
【0033】
濾過装置9は、スラリーを固液分離してケーキとして回収する。尚、濾過方法としては窒素背圧による加圧ろ過や減圧濾過、遠心濾過などが挙げられるが、この中で得られるスラリーケーキ中の残留溶媒量を減らすには、特に遠心濾過が望ましい。濾材としての高分子素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)から選ばれる1種または2種以上の不織布が好ましく、特に長軸繊維を用いたものが、粉体中へのコンタミが少なく好ましい。また無機素材としては多孔質セラミック、金属焼結板が好ましく挙げられる。ケーキを乾燥させるには、通気乾燥や減圧乾燥により行うことができる。
【0034】
次に、インラインミキサー10について、図2〜図7に従って詳述する。図2はインラインミキサー10の要部断面図である。図2に示すように、インラインミキサー10は、撹拌槽11、撹拌翼12、スクリーン13、供給構造及び供給部としての供給管15を有している。撹拌槽11は、有底円筒状の本体11aと、本体11aの開口部を閉塞する蓋部11bとから構成され、本体11aの側部には、スラリーを外部に導出する排出管19と接続する導出部としての導出部16を備えている。また、蓋部11bの略中央には、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sを撹拌槽11内に導入する入口11dが貫通形成されている。また、撹拌槽11は、本体11a及び蓋部11bによって構成される略円形状の撹拌室11rに、撹拌翼12を回転可能に収容している。
【0035】
図3に示すように、撹拌翼12は、モータM(図1参照)に連結される回転軸17と、回転軸17の先端部に設けられた板状の翼部18とを有している。本実施形態では、撹拌翼12を、4枚の翼部18が十字状に配置されたパドル翼としたが、その形状は特に限定されず、タービン翼、プロペラ翼、ピッチドパドル翼等、その他の形状の撹拌翼を用いてもよい。この撹拌翼12の回転軸17は、蓋部11bに形成された入口11dの中心軸線と同一軸線となるように本体11aの底部11cから貫通されるとともに、その先端が入口11dの直近になるように配置される。これにより、回転軸17に設けられた翼部18は、撹拌室11r内に配置される。
【0036】
また、図2及び図3に示すように、撹拌翼12の外周には、円筒状のスクリーン13が備えられている。スクリーン13の直径は、撹拌翼12の翼部18の先端18bと、スクリーン13の内側面との間隔が、0.1〜10.0mm程度になるような大きさになっている。図3に示すように、スクリーン13の壁部13aには、多数の貫通孔13bが等間隔で形成されている。本実施形態では、各貫通孔13bは、同じ内径を有する円形状の孔としたが、矩形状の孔でもよく、貫通孔13bの形状及び配置パターンは特に限定されない。
【0037】
次に、撹拌槽11に接続される供給管15について図2に従って詳述する。供給管15は、共軸二重管であって、撹拌槽11の蓋部11bに形成された入口11dに接続されている。図4の供給管15の断面図に示すように、本実施形態の供給管15は、円筒状の外管20及び内管21とから構成されている。供給管15をこのような二重管にすることで、大きな送液量を確保することができるため、生産効率を向上することができる。また、二重管にすることで、外管20及び内管21の圧力損失を極力少なくできるため、粘度が比較的大きい液体を送液しても目詰まりを防止することができる。
【0038】
外管20及び内管21の材質は、特に限定されないが、ステンレス又はテフロンが望ましく、耐圧性の点からステンレスが好ましい。また、外管20及び内管21の内径D1,D2は、送液時の圧力損失を防ぐために0.5mm以上が望ましく、撹拌槽11からの逆流を防止するために50mm以下が望ましい。また、内管21に対する外管20の内径比(D1/D2)は、1.3〜4.0が好ましい。さらに、内管21に対する外管20の断面積比は、0.5〜15倍が好ましい。
【0039】
この内管21は、その中心軸線が、外管20の中心軸線と一致するように外管20内に挿通されている。これにより、内管21と外管20との間に形成された間隙Rは、断面円環状をなし、その幅Δdは一定になっている。また、内管21は、その中心軸線と、撹拌翼12の回転軸17とが合致するように撹拌槽11に接続されている。
【0040】
外管20は、溶媒供給槽3に接続され、外管20と内管21との間に形成された間隙Rを介して、撹拌槽11の入口11dから貧溶媒Sを撹拌室11rに供給する。内管21は、重合槽2に接続され、内管21の内部を流路として、ポリマー溶液Pを撹拌槽11に供給する。このように、内管21を介してポリマー溶液Pを送液し、外管20を介して貧溶媒Sを送液することで、撹拌槽11までは混合しない状態で送液することができる。このため、管内での混合による、不純物を含むスラリーや凝集塊の生成を防ぐことができる。また、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sを撹拌槽11に導出する際に、ポリマー溶液Pを貧溶媒Sで取り囲んだ状態で導出することができる。このため、ポリマーの撹拌槽11内での凝集をも防ぐばかりでなく、ポリマー溶液Pに含まれるPC重合体と貧溶媒Sとの接触率を高めることができる。
【0041】
また、外管20に対し、ポリマー溶液Pではなく貧溶媒Sを送液し、内管21にポリマー溶液Pを送液することで、ポリマー溶液Pの凝集を防ぐことができることが発明者の実
験により判っている。即ち、ポリマー溶液Pを外管20を介して供給すると、ポリマーが貧溶媒Sに取り囲まれた状態にならないため、入口11dから導入されたポリマー溶液Pは、撹拌槽11の蓋部11b部分に拡散し、凝集してしまう。その結果、撹拌翼12や撹拌槽11内に、凝集したポリマーが付着してしまい、撹拌翼12の回転や、スラリーの良好な流動を妨げる。このため、供給管15の外側に貧溶媒Sを、内側にポリマー溶液Pを供給することで、ポリマーの凝集を防止することができる。
【0042】
また、供給管15は、蓋部11bの略中央に形成された入口11dと接続されることで、図5中破線で示すように、外管20の出口20a及び内管21の出口21aは、その中心軸線が、蓋部11bの略中央であって、撹拌翼12の回転軸17の中心軸線と合致するように配置される。また、図2に示すように、撹拌翼12の翼部18の下端18aと、外管20の出口20a及び内管21の出口21a(又は蓋部11b)との間に形成された微小間隙Cは、その相対距離が、0.5〜30.0mmになっている。微小間隙Cをこの大きさにすることにより、撹拌翼12の回転負荷を軽減しながら、微小間隙Cにある液体に大きな剪断力を付与する高剪断領域とすることができる。微小間隙Cの大きさが0.5mm未満になると、撹拌翼12と撹拌槽11の蓋部11bとの隙間が狭すぎて、スラリーが流動し難くなるとともに、撹拌翼12の負荷が大きくなる。また、30.0mm超になると、微小間隙C内で低剪断領域が生じ、ポリマー粒子の微粉化が不十分となる。また、剪断不足により、ポリマーの凝集が生じ、その凝集塊が撹拌翼12等に付着する。尚、図2では、供給管15が水平になるようにインラインミキサー10を配置したが、供給管15が鉛直になるように配置してもよい。供給管15が鉛直方向になるように配置する場合、送液方向が鉛直方向下方になるように配置しても、鉛直方向上方になるように配置しても良い。つまり、インラインミキサー10をいずれの向きに配置しても、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sが入口11dから導出された瞬間に、撹拌翼12によって剪断力を付与することができるため、インラインミキサー10の配置方向は特に限定されない。
【0043】
次に、このインラインミキサー10の作用について図6に従って説明する。内管21を介して送液されたポリマー溶液Pは、微小間隙Cに導出された瞬間に、外管20を介して送液された貧溶媒Sに取り囲まれた状態となる。これと同時に、微小間隙Cにあるポリマー溶液P及び貧溶媒Sは、2,000〜10,000rpm等の回転数で回転する撹拌翼12により撹拌される。その結果、PC重合体と貧溶媒Sとの接触率が高められ、多くのPC重合体が、この段階で貧溶媒Sと接触して瞬時に固化(沈殿精製)し、PC重合体の粒子が貧溶媒S中に分散したスラリーSLとなる。このように、PC重合体と貧溶媒Sとの接触率が高めることで、スラリーSL中の未反応のPC重合体を減少させることができる。
【0044】
また同時に、スラリーSLは、撹拌翼12の翼部18と撹拌槽11の蓋部11bとの間に形成された微小間隙Cにおいて、回転する翼部18と蓋部11bとの間で強力な剪断力を付与され粉砕される。尚、このとき、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sの送液方向と、撹拌翼12の回転方向とを直交させることで、剪断力を高めることができる。そして、図5中矢印方向で示すように、スラリーSLは、回転軸17から翼部18の先端に向かって放出される。このとき、供給管15の出口20a,21aの中心軸線を回転軸17の中心軸線と一致させ、回転軸17の直近とすることで、一方向に偏ることなく、スラリーSLを撹拌槽11の側面に向かって各方向に放出することができる。
【0045】
また、各翼部18とスクリーン13とで構成される空間に収容されたスラリーSLは、図6に示すように、渦状の流れにより撹拌される。これにより、スラリーSL中に残留している未反応のPC重合体を貧溶媒Sに接触させることができる。そして、スラリーSLは、遠心力により、翼部18の先端18b及びスクリーン13の内側面との間に到達すると、撹拌翼12の回転方向に沿って周方向に流れるとともに、回転する翼部18の先端1
8bとスクリーン13との間で剪断される。また、図6に示すように、スラリーSLは、スクリーン13の貫通孔13bを通過することにより、さらに細分化される。
【0046】
貫通孔13bを介して、スクリーン13の外側に導出されたスラリーSLは、重合槽2及び溶媒供給槽3からの送液圧力等により、導出部16の入口に導かれ、導出部16から外部に送液される。導出部16に導出されたスラリーSLは、回収タンク(図示略)に一旦回収された後、濾過装置9に送液される。
【0047】
次に、沈殿精製法によるPC重合体の製造方法とインラインミキサー10の作用とについて説明する。
本発明に用いるPC単量体としては、次の式(1)で示される化合物を用いることができる。
【0048】
【化1】

【0049】
ここで式(1)中、Xは2価の有機塩基を示し、Yは炭素数1〜6のアルキレンオキシ基を示す。また式(1)のR1は、水素元素若しくはメチル基を示し、R1〜R4は同一若しくは異なる基であって、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基又はヒドロキシ炭化水素基を示す。式(1)の「m」は0又は1、「n」は2〜4の整数を示し、特に好ましくは、入手性の良さ等の点から、m=1、n=2であるのが良い。
【0050】
上記Xで表される2価の有機残基としては、例えば、−C−、−C610−、−
(C=O)−O−、−O−、−CH2−O−、−(C=O)−NH−、−O−(C=O)
−、−O−(C=O)−O−、−C−O−、−C−CH−O−、−C−(C=O)−O−等で示される基が挙げられ、特に好ましくは、PC単量体の合成の容易さ、得られたPC単量体の重合成の容易さなどの理由から、−(C=O)−O−で示される基である。上記Yで表される炭素数1〜6のアルキレンオキシ基としては、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の基が挙げられ、特に好ましくは、PC単量体の合成の容易さ、得られたPC単量体の重合成の容易さ等の理由から、エチルオキシ基が挙げられる。
【0051】
また、式(1)に示されるPC単量体の具体例としては、例えば2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(以下MPCと略す)、3−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5−((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6−((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリシ
クロヘキシルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリフェニルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリメタノールアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アリルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(p−ビニルベンジルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(p−ビニルベンゾイルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(スチリルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(p−ビニルベンジル)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニルオキシカルボニル)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アリルオキシカルボニル)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−((メタ)アクリロイルアミノ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニルカルボニルアミノ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート等を挙げることができる。
【0052】
これらの単量体は、単量体組成物としての使用に際しては、単独もしくは混合物として用いることができる。これらのPC単量体は、公知の合成方法によって得ることができる。例えば、特開昭54−63025号公報、特開昭58−154591号公報等に開示された公知の方法等が挙げられる。
【0053】
本発明に用いるPC単量体を含む単量体組成物は、PC単量体の他に、PC単量体と重合可能なほかの重合性単量体を含んでいてもよい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート単量体、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体単量体、さらにメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系単量体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等の不飽和炭化水素系単量体、さらにアクリロニトリル等も好ましく挙げられる。
【0054】
本発明のPC単量体組成物は、PC単量体のみからなるか、またはPC単量体と他の単量体との組成物であり、これらの単量体もしくは単量体組成物は、さらに重合開始剤を加えて重合される。
【0055】
PC単量体と他の単量体との組成物のときに得られる単量体の組み合わせとしては、MPCと(メタ)アクリル酸、MPCと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、MPCと2−
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、MPCと2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリ
レート、MPCとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、MPCと(メタ)アクリル酸アミド、MPCとアミノエチル(メタ)アクリレート、MPCとジメチルアミノエチル、MP
Cと(メタ)アクリレート、MPCとメチル(メタ)アクリレート、MPCとエチル(メタ)ア
クリレート、MPCとブチル(メタ)アクリレート、MPCとラウリル(メタ)アクリレート、MPCとステアリル(メタ)アクリレート、MPCと2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、MPCとベンジル(メタ)アクリレート、MPCとフェノキシエチル(メタ)アクリレート、MPCとグリシジル(メタ)アクリレート、MPCと(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート単量体、MPCとスチレン、MPCとメチルスチレン、MPCとクロロメチルスチレン等のスチレン誘導体単量体、さらにMPCとメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体、MPCと酢酸ビニル、MPCとプロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系単量体、MPCとエチレン、プロピレン、イソブチ
レン等の不飽和炭化水素系単量体、さらにMPCとアクリロニトリル等も好ましく挙げられ
る。
【0056】
また重合開始剤としては、通常用いられるラジカル重合開始剤を使用できる。中でも沈澱精製時に除去のし易さなどから、特に好ましいラジカル開始剤として、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクシニルパーオキサイド、グルタルパーオキサイド、サクシニルパーオキシグルタノエート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート、1−((1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ)ホルムアミド、2,2−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミヂン)ジハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2−アゾビス(2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、使用に際しては前記のものを単独で、若しくは混合物として用いることができる。ラジカル重合開始剤の使用量は、目的の共重合体の分子量を制御する等の理由から適宜設定できるが、分子量を制御しやすく吸着剤処理しやすい濃度として、単量体を含む重合溶液全重量に対して、0.001〜10重量%とするのが好ましく、より好ましくは0.005〜5重量%とするのが特に好ましい。必要であれば、本発明に用いる単量体組成物には、公知の溶媒、公知の添加剤等を加えてもよく、前記の単量体組成物を重合してPC含有重合体を含むPC重合体組成物を得ることができる。
【0057】
重合体組成物を得るための、重合反応における温度と時間の条件は、特に限定されないが、溶液重合の場合は通常、重合温度5〜150℃、好ましくは重合温度40〜80℃、重合時間10分〜72時間、好ましくは重合時間30分〜10時間の範囲である。また本発明における重合体組成物を得る方法としては、PC重合体を含んでいるが、このような重合体組成物は、特開平9−3132号公報、特開平8−333421号公報、特開平11−35605号公報等に示される公知の方法も参考として挙げることができる。得られる重合体組成物中に含まれるPC重合体の分子量は、特に限定されないが、操作のし易さ等の点から、重量平均分子量にして1,000〜5,000,000の範囲が望ましい。より好ましくは、重量平均分子量は、2,000〜1,000,000の範囲が望ましい。
【0058】
また、上記のPC重合体を含むポリマー溶液Pの粘度は貧溶媒Sと混和できる粘度であれば構わない。好ましくは室温において1,000cPs以下である方が、インラインミキサー10により効率よく混和できるため良い。このときPC重合体を適当な溶剤で希釈しても良く、とくにメタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール等の低級
アルコール類で希釈することが望ましい。また反応液を加温することにより低粘度化して送液することも好ましい。
【0059】
貧溶媒Sとしては、重合体が沈澱し不純物が溶解するものが好ましいが、具体的には例えば、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル類、またこれらとのヘキサンやエーテルとの混合溶媒が好ましく挙げられる。またPC重合体が水不溶性であれば純水を使用しても構わない。
【0060】
このような各種条件に従い、重合槽2にてポリマー溶液Pを生成すると、次に、インラインミキサー10で未反応単量体を効率的に除去して、未反応単量体等の不純物の少ない(純度の高められた)PC重合体を得る。
【0061】
インラインミキサー10へのポリマー溶液Pおよび貧溶媒Sの送液方法としては、上記したように、無脈動定流量ポンプ(送液ポンプ6a,6b)により送液する方法や、重合槽2及び溶媒供給槽3にポリマー溶液及び貧溶媒Sを投入し、窒素背圧で流量をコントロールしながら送液する方法を採用できる。本発明のインラインミキサー10による処理時の流速は最適なスラリーSLが得られるように、ポリマー溶液Pを10m/min〜400m/min、貧溶媒Sを25m/min〜1,000m/minで送液するのが好ましい。
【0062】
ポリマー溶液Pと貧溶媒Sとの送液比率は、PC重合体の沈澱が分散して生じる範囲であれば構わないが、ポリマー溶液Pの供給量に対して貧溶媒Sの供給量は100%以上である方が、精製純度が高いため好ましく、また5,000%以下の方が沈殿物の回収率や貧溶媒削減による生産効率向上のため好ましい。
【0063】
そして、供給管15を介して、撹拌槽11にポリマー溶液P及び貧溶媒Sを送液し、撹拌翼12を2,000〜10,000rpm等の回転数で回転させる。上記したように、供給管15は二重管であるため、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sは、管を閉塞することなく撹拌槽11に供給される。インラインミキサー10に送液されたポリマー溶液P及び貧溶媒Sは、撹拌翼12の回転により撹拌され、上記したように微小間隙Cやスクリーン13等において剪断される。そして、生成されたスラリーSLを、インラインミキサー10の導出部16を介して、濾過装置9に回収する。
【0064】
回収したスラリーSLは濾過装置9により濾過して固液分離し、さらに乾燥処理等を行って、粉体とする。尚、濾過以外の回収方法としては例えば、スラリーを静置して上澄み除去して乾固させる方法、スラリー分散液を液体サイクロンにて分離回収する方法が採用できるが、濾過による回収が固液分離性と設備の容易さから最適である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明する。
上記実施形態のインラインミキサー10として、供給管15を除くミキサー本体を、ミキサー装置(シルバーソン社製 インラインミキサー)を用いた。そして、このミキサー装置に供給管15を接続したインラインミキサー10を用いて、下記の合成例1〜3に従ってポリマー溶液を生成した。
【0066】
そして、下記の各方法により、ポリマーの分子量及び未反応単量体、残留溶媒量、粘度等の各特性値を測定した。さらに、本発明のインラインミキサー10以外のミキサーを用いて生成したポリマーを比較例とし、合成例1〜3の特性値と、比較例1〜3の特性値とを比較した。
<分子量及び未反応単量体の測定方法>
1.ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量測定方法
GPCの測定は次の条件による。
【0067】
GPCの解析機器;東ソー(株)社製、SC−8020、
試料;ポリマー溶液を溶離液で10倍希釈し、250μl(インジェクションボリュム)注入した。
【0068】
試料溶離;メタノール/クロロホルム(4/6;重量比)を使用した。
分子量測定;ポリエチレングリコール標準による換算値である。
検出機器;UVの検出器;東ソー(株)社製UV−8020、(260nm)及び屈折率(RI)の検出機器;東ソー(株)社製、RI−8020を使用した。
2.高速液体クロマトグラフィーによる重合反応率の測定方法;
解析機器;日本分光(株)社製、807−IT、
試料;ポリマー溶液を溶離液で400倍に希釈し、20μl(インジェクションボリュウム)注入した。
【0069】
試料の溶離液;エタノール/水(容量比;90/10)を用いた。
検出;UV検出機器;日本分光(株)875−UV(210nm)による。尚、反応率は、検量線から未反応MPCおよび他の未反応単量体を測定して、測定できないものは重合したとして差分法により求めた。
<粘度の測定方法>
ポリマー溶液を50℃に加温し、回転粘度計により求めた。
<残留溶媒量の測定方法>
下記合成例1〜3で生成した製品1.25gを精密に量り、n-ブタノール(特級試薬)/メチルイソブチルケトン(特級試薬)=50/50(wt)混合液を加えて溶かし、正確に25mLとし、残留溶媒量を測定するための試験溶液とする。
【0070】
試験溶液各々5mLにつき、次の条件でヘッドスペース・ガスクロマトグラフ法により試
験を行うとき、試験溶液のピーク面積の合計が、標準溶液のピーク面積の合計より大きくないとき、適合とする。
【0071】
以下、パーキンエルマー製Auto System XL GC+HS40XLでの測定条件を示す。
測定装置;パーキンエルマー製Auto System XL GC+HS40XL
カラム;HP-5 30m×0.32mm×0.25μm FilmThickness
注入口条件;250℃, 1mL/min、検出口温度;250℃
昇温条件;35℃(10分)→昇温15℃/分→250℃(5分)
ヘッドスペース部設定条件;オーブン温度60℃、ニードル温度65℃、トランスF温度100℃、
保温時間:15.0分
(合成例1;MPCの単独重合)
MPC 200.0gをエタノール1050gに溶解し4つ口フラスコに入れ、30分間
窒素を吹き込んだ。次いで、60℃でアゾビスイソブチロニトリル4.05gを加えて8時間重合反応させた。GPCにより重合反応率及び分子量を測定した。その結果、重合反応率は98.5%、分子量は重量平均分子量121,000であった。
(合成例2;MPC0.25-SMA0.75の重合)
MPC 67.6gを2−プロパノール 1200gに溶解し、50℃で加温して溶解したn−ステアリルメタクリレート(SMA)232.4gを4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹き込んだ。次いで、65℃でt−ブチルパーオキシネオデカノエート 6.50gを加えて6時間重合反応させた。GPCにより重合反応率及び分子量を測定した。その結果、重合反応率は97.7%、分子量は平均分子量43,000であった。
(合成例3;MPC0.3-BMA0.7の重合)
MPC 211.5gを純水 315.0gに溶解し、エタノール 735.0gに溶解
したn−ブチルメタクリレート(BMA)238.5gを4つ口フラスコに入れ、30分
間窒素を吹き込んだ。次いで、60℃でt−ブチルパーオキシネオデカノエート1.76gを加えて8時間重合反応させた。重合反応率は96.8%、重量平均分子量522,000であった。
【0072】
【表1】

【0073】
(実施例1)
上記実施形態のインラインミキサー10を備えた沈殿精製システム1を用いて、合成例1で得られた重合体P−1の反応液のうち400gを、貧溶媒Sにエ−テルを用い、ポリマー溶液送液線流速;25m/min、貧溶媒送液線流速;50m/minにて撹拌翼1
2の回転数3,000rpmにて処理した。処理したスラリーは直接ろ過してケーキとして回収し、40℃で72時間真空乾燥することで粉体として回収した。得られた粉体中の不純物を、上記した測定方法で測定した結果、未反応のMPCは2,190ppm、残留溶媒であるエーテルは200ppm以下、エタノールは200ppm以下であった。
(実施例2)
上記実施形態のインラインミキサー10を備えた沈殿精製システム1を用いて、合成例2で得られた重合体P−2の反応液のうち400gを、貧溶媒Sにアセトンを用い、ポリマー溶液送液線流速;50m/min、貧溶媒送液線流速;1,000m/minにて撹拌翼12の回転数6,000rpmにて処理した。処理したスラリーは直接ろ過してケー
キとして回収し、40℃で72時間真空乾燥し、軽く壊砕して回収した。得られた粉体中の不純物を測定した結果、未反応のMPCは1,300ppm、SMAは960ppm、アセトン200ppm以下、2−プロパノール700ppmであった。
(実施例3)
上記実施形態のインラインミキサー10を備えた沈殿精製システム1を用いて、合成例3で得られた重合体P−3の反応液のうち300gに対して2−プロパノールを300g加えて均一に溶解した。貧溶媒Sにアセトン/2−プロパノール(98/2;重量比)を用い、重合反応希釈液流速;25m/min、貧溶媒送液線流速;125m/minにて撹拌翼12の回転数9,000rpmにて処理した。処理したスラリーは直接ろ過してケーキとして回収し、40℃で72時間真空乾燥し、軽く壊砕して回収した。得られた粉体中の不純物を測定した結果、MPCは1,560ppm、BMA280ppm、アセトン200ppm以下、エタノール800ppm、2−プロパノール700ppmであった。(実施例4)
上記実施形態のインラインミキサー10を備えた沈殿精製システム1を用いて、合成例3で得られた重合体P−3の反応液のうち300gに対して2−プロパノールを900g加えて均一溶解した(溶液粘度300cPs)。貧溶媒Sにアセトン/2−プロパノール(98/2;重量比)を用い、重合反応希釈液流速;50m/min、貧溶媒送液線流速;300m/minにて撹拌翼12の回転数9,000rpmにて処理した。処理したスラリーは直接ろ過してケーキとして回収し、40℃で72時間真空乾燥し、軽く壊砕して回収した。得られた粉体中の不純物を測定した結果、MPCは800ppm、BMA100ppm以下、アセトン200ppm以下、エタノール850ppm、2−プロパノール1,100ppmであった。
【0074】
また、実施例1〜4で生成したスラリーの平均粒径は、いずれも直径1.0mm以下であった。インラインミキサー10の目詰まりはなく、装置内への高粘度のスラリー又は凝集塊の付着はほとんどみられなかった。
(比較例1)
比較例1〜3では、図7に示す沈殿精製システム50を用いた。沈殿精製システム50は、本発明の沈殿精製システム1と、インラインミキサー51のみが異なる構成となっており、重合槽52、溶媒供給槽54、濾過装置55と、送液ポンプ、流量計、流量制御弁(いずれも図示略)は同じ装置を用いている。インラインミキサー51は、撹拌槽51aに供給した貧溶媒に、ポリマー溶液を滴下して、ポリマー溶液及び貧溶媒を撹拌翼51bにより撹拌する構成になっている。
【0075】
比較例1では、図7に示す沈殿精製システム50を用いて、合成例1で得られた重合体P−1の反応液のうち400gと、貧溶媒Sとしてエ−テルとを用い、ポリマー溶液送液線流速;25m/min、貧溶媒送液線流速;50m/minにて、撹拌翼51bの回転
数150rpmにて処理した。処理したスラリーは直接ろ過してケーキとして回収し、40℃で72時間真空乾燥することで粉体として回収した。得られた粉体中の不純物を測定した結果、MPCは8,470ppm、エーテル4,800ppm以下、エタノール4,700ppmであった。
(比較例2)
図7に示す沈殿精製システム50を用いて、合成例2で得られた重合体P−2の反応液のうち400gと、貧溶媒Sとしてアセトンとを用い、ポリマー溶液送液線流速;50m/min、貧溶媒送液線流速;1,000m/minにて撹拌翼51bの回転数150rpmにて処理した。処理したスラリーは直接ろ過してケーキとして回収し、40℃で72時間真空乾燥し、軽く壊砕して回収した。得られた粉体中の不純物を測定した結果、MPCは3,340ppm、SMA4,530ppm、アセトン2,800ppm、2−プロパノール7,000ppmであった。
(比較例3)
図7に示す沈殿精製システム50を用いて、合成例3で得られた重合体P−3の反応液のうち300gに対して2−プロパノールを900g加えて均一溶解した(溶液粘度300cPs)。貧溶媒Sにアセトン/2−プロパノール(98/2;重量比)を用い、重合反応希釈液流速;50m/min、貧溶媒送液線流速;300m/minにて、撹拌翼51bの回転数150rpmにて処理した。処理したスラリーは直接ろ過してケーキとして回収し、40℃で72時間真空乾燥し、軽く壊砕して回収した。得られた粉体中の不純物を測定した結果、MPCは3,200ppm、BMA570ppm以下、アセトン8,100ppm以下、エタノール7,000ppm、2−プロパノール8,600ppmであった。
【0076】
尚、比較例1〜3で生成したスラリーの粒径は、1.0〜20mmであって、実施例1〜4で生成したスラリーの粒径(〜1.0mm)よりも大きく、不均一であった。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
以上の結果から本発明のインラインミキサー10を用いた製造方法による実施例1〜4は、比較例1〜3に比べて、PC重合体の精製に優れ、残留溶媒量の少ない、高純度なPC重合体が得られる優れた方法であることがわかる。
【0081】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、インラインミキサー10にポリマー溶液P及び貧溶媒Sを供給する供給管15を、外管20と内管21とからなる共軸二重管とした。このため、インラインミキサー10の撹拌槽11まで、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sを独立させて供給できるので、不純物を含むスラリーSLの生成を防ぐとともに、凝集塊等による管の閉塞を未然に防ぐことができる。また、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sを、撹拌槽11に供給した際に、ポリマー溶液Pを貧溶媒Sで取り囲んだ状態にすることができるので、ポリマー溶液Pと貧溶媒Sとを接触させやすくすることができる。また、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sを撹拌翼12と撹拌槽11との間の微小間隙Cに導出するようにしたので、導出された直後に撹拌翼12により剪断することができる。このため、ポリマー溶液Pが凝集する前に、スラリーSLを細分化することができる。これにより、不純物を含むポリマー粒子の生成を防ぎ、ポリマー粒子の粒径を微粒子化及び均一化することができる。
【0082】
(2)上記実施形態では、外管20の出口20a及び内管21の出口21aを、回転軸17の直近に配置するようにした。より具体的には、出口20a,21aの中心軸線と、撹拌翼12の回転軸17の中心軸線とが一致するようにした。このため、出口20a,21aから導入されたポリマー溶液P及び貧溶媒Sは、撹拌翼12の回転により、回転軸17から翼部18の先端18bに向かって偏りなく全方向に拡散される。これにより、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sを、滞りなく撹拌することができるので、均一化されたポリマー粒子を得ることができる。
【0083】
(3)上記実施形態では、供給管15を撹拌翼12の回転軸17と略平行に接続し、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sを、回転軸17の方向に沿って導入するようにした。このため、翼部18の回転方向は、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sの導入方向と略直交するので、ポリマー溶液P及び貧溶媒Sに強力な剪断力を与えることができる。
【0084】
(4)上記実施形態では、撹拌翼12の翼部18と、撹拌槽11の蓋部11bとの間に形成された微小間隙Cの大きさを、0.5〜30.0mmにした。このため、撹拌翼12
の回転負荷を軽減しながら、微小間隙Cに入り込んだポリマー溶液P及び貧溶媒Sに対し、大きな剪断力を付与することができる。
【0085】
尚、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、撹拌槽11は、略有底筒状の本体11aと蓋部11bとから構成したが、本体11aと蓋部11bとを一体化してもよい。また、撹拌槽11に排出管19を直接接続する構成でもよく、撹拌槽11の形状は特に限定されない。
【0086】
・上記実施形態では、撹拌槽11に供給管15を接続するようにしたが、外管20及び内管21のうち少なくとも一方は、撹拌槽11の蓋部11bに一体に形成された管にしてもよい。
【0087】
・上記実施形態では、インラインミキサー10は、PC重合体の粒子を得るための装置として具体化したが、その他の晶化、重合等のための撹拌処理に用いてもよい。
・上記実施形態では、供給管15は、共軸二重管構造としたが、外管20及び内管21の中心軸は偏倚していてもよい。また、撹拌槽11において3種類以上の液体(固体、液体、気体を含む流体)を混合及び撹拌する場合には、図8(a)に示すように、内管としての第1及び第2の管61,62と、外管としての第3の管63からなる3重管以上の供給管60にしてもよい。さらには、図8(b)に示すように、内管64の周囲に、内管64の内径よりも小さい内径を有する外管65を多数配置するようにしてもよい。この場合、外管65に送液する液体(流体)の供給源を共通にしなくても良いので、供給源が異なる場合に効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施形態の沈殿精製システムの模式図。
【図2】インラインミキサーの要部断面図。
【図3】撹拌翼及びスクリーンの斜視図。
【図4】供給管の断面図。
【図5】インラインミキサーを底面側からみた断面図。
【図6】インラインミキサー内のスラリーの流動を説明する説明図。
【図7】比較例のポリマー粒子を生成した沈殿精製システムの模式図。
【図8】(a)は別例の三重管、(b)は別例の供給管構造の説明図。
【図9】従来のインラインミキサーの説明図。
【符号の説明】
【0089】
1…沈殿精製システム、10…撹拌装置としてのインラインミキサー、11…撹拌槽、12…撹拌翼、15…供給構造としての供給管、16…導出部、17…回転軸、20,65…外管、21,64…内管、61,62…内管としての第1及び第2の管、63…外管としての第3の管、C…微小間隙、P…溶液、重合体組成物としてのポリマー溶液、R…間隙、S…溶媒としての貧溶媒、SL…スラリー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
析出物質を含有する溶液と該析出物質を析出させる溶媒とを撹拌槽にて混合し、スラリー化する撹拌処理方法であって、
前記撹拌槽内で回転する撹拌翼と、前記撹拌槽に接続する多重管の導出口との間であって、前記撹拌翼により剪断力が付与される微小間隙に、前記多重管によって前記溶液及び前記溶媒をそれぞれ導出し、前記溶液及び前記溶媒を前記撹拌翼の回転によって剪断して前記析出物質を析出させたスラリーを生成することを特徴とする撹拌処理方法。
【請求項2】
単量体組成物を重合させた重合体組成物を含有する溶液と貧溶媒とを撹拌槽にて混合し、スラリー化する撹拌処理方法であって、
前記撹拌槽内で回転する撹拌翼と、前記撹拌槽に接続する多重管の導出口との間であって、前記撹拌翼により剪断力が付与される微小間隙に、前記多重管によって前記溶液及び前記貧溶媒をそれぞれ導出し、前記溶液及び前記貧溶媒を前記撹拌翼の回転によって剪断して前記重合体組成物を析出させたスラリーを生成することを特徴とする撹拌処理方法。
【請求項3】
ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物を含有する溶液と貧溶媒とを撹拌槽にて混合し、再沈殿精製法により前記ホスホリルコリン類似基含有重合体を精製する撹拌処理方法であって、
前記撹拌槽内で回転する撹拌翼と、前記撹拌槽に接続する多重管の導出口との間であって、前記撹拌翼により剪断力が付与される微小間隙に、前記多重管によって前記溶液及び前記貧溶媒をそれぞれ導出し、前記溶液及び前記貧溶媒を前記撹拌翼の回転によって剪断して前記ホスホリルコリン類似基含有重合体を析出させたスラリーを生成することを特徴とする撹拌処理方法。
【請求項4】
析出物質を含有する溶液と該析出物質を析出させる溶媒とを撹拌する撹拌装置において、
前記溶液及び前記溶媒を撹拌する撹拌槽と、
前記撹拌槽内に回転可能に設けられ、前記溶液及び前記溶媒を剪断する撹拌翼と、
外管と、該外管の内側に挿通された内管とを有する多重管を有し、前記外管に前記溶液及び前記溶媒のいずれか一方を、前記内管にその他方をそれぞれ供給し、前記溶液及び前記溶媒を、前記外管及び前記内管の各導出口と前記撹拌翼との間に形成された微小間隙に導出する供給部と、
前記撹拌槽で撹拌された流体を外部に導出する導出部と
を有することを特徴とする撹拌装置。
【請求項5】
請求項4に記載の撹拌装置において、
前記供給部は、二重管を有することを特徴とする撹拌装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の撹拌装置において、
前記外管及び前記内管の導出口は、その中心軸線が、前記撹拌翼の回転軸と一致するように配置されることを特徴とする撹拌装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の撹拌装置において、
前記撹拌槽と前記撹拌翼との間に形成された前記微小間隙は、0.5mm〜30mmの大きさであることを特徴とする撹拌装置。
【請求項8】
単量体組成物を重合させた重合体組成物を含む溶液と貧溶媒とを撹拌する撹拌装置であって、
前記溶液及び前記貧溶媒を撹拌する撹拌槽と、
前記撹拌槽内に回転可能に設けられ、前記溶液及び前記貧溶媒を剪断する撹拌翼と、
外管と、該外管の内側に挿通された内管とを有する多重管を有し、前記外管に前記溶液及び前記貧溶媒のいずれか一方を、前記内管にその他方をそれぞれ供給し、前記溶液及び前記貧溶媒を、前記外管及び前記内管の各導出口と前記撹拌翼との間に形成された微小間隙に導出する供給部と、
前記撹拌槽で撹拌された流体を外部に導出する導出部と
を有することを特徴とする撹拌装置。
【請求項9】
請求項8に記載の撹拌装置において、
前記供給部は二重管を有し、
前記外管は前記貧溶媒を送液し、前記内管は前記重合体組成物を送液することを特徴とする撹拌装置。
【請求項10】
ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物と貧溶媒とを撹拌する撹拌装置であって、
前記ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物及び前記貧溶媒を撹拌する撹拌槽と、
前記撹拌槽内に回転可能に設けられ、前記ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物及び前記貧溶媒を剪断する撹拌翼と、
外管と、該外管の内側に挿通された内管とを有する多重管を有し、前記外管に前記ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物及び前記貧溶媒のいずれか一方を、前記内管にその他方をそれぞれ供給し、前記ホスホリルコリン類似基含有重合体組成物及び前記貧溶媒を、前記外管及び前記内管の各導出口と前記撹拌翼との間に形成された微小間隙に導出する供給部と、
前記撹拌槽内で生成されたスラリーを外部に導出する導出部と
を有することを特徴とする撹拌装置。
【請求項11】
撹拌装置の撹拌槽に接続し、前記撹拌槽に析出物質を含有する溶液と該析出物質を析出させる溶媒とを供給する供給構造であって、
外管と、該外管の内側に挿通された内管とを有する多重管を有し、前記外管及び前記内管の間隙と前記内管とを介して、前記溶液及び前記溶媒を前記撹拌槽に導入することを特徴とする供給構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−81662(P2008−81662A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265199(P2006−265199)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】