説明

操作入力装置

【課題】コアの変位量に対して変化するインダクタンスの直線性を高めることが可能な、操作入力装置の提供。
【解決手段】コイル2と、操作入力の作用によりコイル2の中空部2a内をコイル2の軸方向に変位することによって、コイル2のインダクタンスを変化させるコア3と、コイル2の下端面2c側に配置されたヨークとを備え、コア3の変位量に応じた信号を出力する操作入力装置であって、前記ヨークは、コア3の下端3aに対向する開口部4が形成されるように、前記軸方向に対して直角な方向に互いに離間するヨーク11とヨーク12を有することを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作入力に応じて変化するコアの変位量を得ることが可能な操作入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁性体からなる被検出部材がコイルの内部に有るか無いかを検出することによって、オン/オフのスイッチ出力を得るための無接触スイッチ装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−76597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上述のスイッチ装置のように単にオン/オフ信号を得るのではなく、操作入力によるコアの変位によってコイルのインダクタンスが変化することを利用して、そのコアの変位量(言い換えれば、操作入力量)を得ることが可能な操作入力装置の開発が進んでいる。このような操作入力装置の場合、コアの変位量に応じてインダクタンスができるだけ直線的に変化することが求められる。しかしながら、従来の操作入力装置では十分な直線性(リニアリティ)を得ることができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、コアの変位量に対して変化するインダクタンスの直線性を高めることが可能な、操作入力装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る操作入力装置は、
コイルと、
操作入力の作用により前記コイルの内部を前記コイルの軸方向に変位することによって、前記コイルのインダクタンスを変化させるコアと、
前記コイルの下端面側に配置されたヨークとを備え、
前記コアの変位量に応じた信号を出力する操作入力装置であって、
前記ヨークは、前記コアの下端に対向する開口部が形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コアの変位量に対して変化するインダクタンスの直線性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】操作入力装置の原理を説明するための側面図である。
【図2】操作入力装置の一実施形態であるコイルアッセンブリの斜視図である。
【図3】コイルアッセンブリの6面図である。
【図4】図3のA−Aにおける断面図である。
【図5】基板に表面実装されたコイルアッセンブリの側面図である。
【図6A】コアの下方への実ストローク量に対するコイルのインダクタンスを示したグラフである。
【図6B】コアの下方への実ストローク量に対するコイルのインダクタンスの変化率を示したグラフである。
【図7】操作入力装置の一実施形態である操作検出装置の分解斜視図である。
【図8】キーが初期状態での操作検出装置の断面図である。
【図9】キーが傾動状態での操作検出装置の断面図である。
【図10】キーが押し下げ状態での操作検出装置の断面図である。
【図11】キーが初期状態での、クリックバネが追加された操作検出装置の拡大断面図である。
【図12】キーが傾動状態での、クリックバネが追加された操作検出装置の拡大断面図である。
【図13】絡げ端子の変形例である。
【図14】操作入力装置の一実施形態の斜視分解図である。
【図15A】操作入力がキーに作用していない操作初期状態での操作入力装置の正面視断面図である。
【図15B】操作入力の作用によりキーが片側に傾いた状態での操作入力装置の正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。本発明の一実施形態である操作入力装置は、操作者の手指等による力を受けて、その受けた力に応じて変化する出力信号を出力する操作インターフェイスである。その出力信号に基づいて操作者による操作入力が検出される。操作入力の検出によって、その検出された操作入力に対応する操作内容をコンピュータに把握させることができる。
【0010】
例えば、家庭用又は携帯可能なゲーム機、携帯電話や音楽プレーヤーなどの携帯端末、パーソナルコンピュータ、電化製品などの電子機器において、そのような電子機器に備えられるディスプレイの画面上の表示物(例えば、カーソルやポインタなどの指示表示や、キャラクターなど)を、操作者が意図した操作内容に従って、移動させることができる。また、操作者が所定の操作入力を与えることにより、その操作入力に対応する電子機器の所望の機能を発揮させることができる。
【0011】
一方、通常、コイル(巻線)等のインダクタのインダクタンスLは、係数をK、透磁率をμ、コイルの巻数をn、断面積をS、磁路長をdとした場合、
L=KμnS/d
という関係式が成り立つ。この関係式から明らかなように、コイルの巻数や断面積といった形状に依存するパラメータを固定した場合、周囲の透磁率と磁路長の少なくともいずれかを変化させるかによって、インダクタンスが変化する。
【0012】
このインダクタンスの変化を利用する操作入力装置の実施例について以下説明する。この操作入力装置は、X,Y,Z軸によって定まる直交座標系のZ軸方向側から入力される操作者の力を受け付けるものである。Z軸方向とは、Z軸に平行な方向のことをいう。操作入力装置は、操作入力の作用によりコイルとの位置関係が変化することによって、そのコイルのインダクタンスを変化させる変位部材を備えている。操作入力装置は、そのインダクタンスの大きさに応じて変化する所定の信号に基づいて、操作者の操作入力により変位する変位部材の動きを検知することにより、その操作入力を検出することができる。
【0013】
図1は、操作入力装置の原理を説明するための側面図であって、操作入力が操作入力部6の操作面6bに作用していない初期位置状態での操作入力装置の構成の一部を断面図で表したものである。
【0014】
操作入力装置は、コイル2と、コア3と、ヨーク11,12と、検出部160とを備えている。以下、各部について説明する。
【0015】
コイル2は、円筒状に線材(導線)が巻かれたものである。コイル2の形状は、円筒状が望ましいが、筒状であればよく、例えば角筒状でもよい。コイル2は、詳細は後述するが、コア3の変位量に応じた信号波形を出力する。
【0016】
コア3は、操作入力の作用によりコイル2の内部(すなわち、中空部2a内)をコイル2の中心軸Cの軸線方向に変位することによって、コイル2のインダクタンスを変化させる変位部材である。コア3は、コイル2が円筒状であれば、円柱状の磁性体であることが好ましく、コイル2が角筒状であれば、角柱状の磁性体であることが好ましい。
【0017】
コア3は、操作入力部6の下面6aの中央部に設けられ、操作入力部6の変位に連動して変位する。操作入力部6は、コイル2に対して操作者の力が入力されてくる側に設けられており、コイル2の上端面2bに対向する下面6aと、操作者の力が直接又は間接的に作用しうる操作面6bとを有している。操作入力部6は、操作者の力が操作面6bに作用することにより、コイル2の中空部2a内におけるコア3の位置を変化させることにより、コイル2のインダクタンスを変化させる。
【0018】
コア3及び操作入力部6は、コア3の下端3aとコイル2の上端面2bとの位置関係が中心軸Cの軸線方向で弾性的に変位可能なように、支持部材5a,5bによって支持される。支持部材5a,5bは、例えば、バネ部材でもよいし、ゴム部材でもよいし、スポンジ部材でもよいし、空気や油が充填されたシリンダーでもよい。例えば、バネ部材を採用することによって、軽量化や構造の単純化を図ることができ、ゴム部材を採用することによって、絶縁性を図ることができる。また、支持部材5a,5bは、粘性を有する粘性部材であってもよい。
【0019】
ヨーク11,12は、コイル2の下端面2c側に配置されている板状の磁性体である。ヨーク11,12は、コア3の下端3aに対向する位置に開口部4が形成されるように、中心軸Cの軸線方向に直角な方向に互いに離間して配置されている。つまり、開口部4が、ヨーク11とヨーク12との間の離間部分に、コイル2の中空部2aに連通するように形成されている。開口部4のZ軸方向の中心軸は、中心軸Cに一致していることが好ましい。また、ヨーク11,12は、比透磁率が1よりも高い材質であればよい。例えば、比透磁率は1.001以上あると好適であり、具体的には、鋼板(比透磁率5000)などが好ましい。
【0020】
検出部160は、コイル2のインダクタンスの変化を電気的に検出することで、コア3の連続的に変化するアナログ変位量(言い換えれば、操作入力部6の変位量(操作入力量))に応じた検出信号を出力する検出手段である。検出部160は、不図示の基板に実装される検出回路によって構成されるとよい。
【0021】
例えば、検出部160は、コイル2のインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量を検出し、その物理量の検出値をコア3の変位量に等価な値として出力する。また、検出部160は、コイル2のインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量を検出することによりコイル2のインダクタンスを算出し、そのインダクタンスの算出値をコア3の変位量に等価な値として出力するものでもよい。また、検出部160は、その物理量の検出値又はそのインダクタンスの算出値からコア3の変位量を演算し、その変位量の演算値を出力するものでもよい。
【0022】
具体的には、検出部160は、パルス信号をコイル2に供給することによって、コイル2のインダクタンスの大きさに対応して変化する信号波形をコイル2に発生させ、その信号波形に基づいてコイル2のインダクタンスの変化を電気的に検出するとよい。
【0023】
例えば、コイル2の中空部2a内におけるコア3の下方への変位量が増加するにつれて、コイル2周辺の透磁率が増加し、コイル2のインダクタンスが増加する。コイル2のインダクタンスが増加するにつれて、パルス信号の供給によりコイル2の両端に発生するパルス電圧波形の振幅も大きくなる。そこで、その振幅をコイル2のインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量とすることで、検出部160は、その振幅を検出することによって、その振幅の検出値をコア3の変位量に等価な値として出力することができる。また、検出部160は、その振幅の検出値からコイル2のインダクタンスを算出し、そのインダクタンスの算出値をコア3の変位量に等価な値として出力することもできる。
【0024】
また、コイル2のインダクタンスが増加するにつれて、パルス信号の供給によりコイル2に流れるパルス電流波形の傾きが緩やかになる。そこで、その傾きをコイル2のインダクタンスの変化に等価的に変化する物理量とすることで、検出部160は、その傾きを検出することによって、その傾きの検出値をコア3の変位量に等価な値として出力することができる。また、検出部160は、その傾きの検出値からコイル2のインダクタンスを算出し、そのインダクタンスの算出値をコア3の変位量に等価な値として出力することもできる。
【0025】
このように、図1の構成は、コイル2の下端面2c側に配置された下ヨークが、コア3の下端3aに対向する開口部4が形成されるように、中心軸Cに対して直角な方向に互いに離間するヨーク11とヨーク12を有している。この構成によれば、コア3と下ヨーク11,12との磁気的短絡を開口部4によって抑えることができるので、操作入力部6及びコア3の変位量に対して変化するコイル2のインダクタンスの直線性を高めることができる。
【0026】
例えば、コイル2の下端面2c側に配置された下ヨークに開口部4が設けられていない場合、コア3と下ヨークとのギャップが零又は零に非常に近くなると、磁気的に短絡状態となるため、コイル2のインダクタンスが急激に増加する。その結果、操作入力部6及びコア3のストローク量が大きい範囲において、ストローク量に対するコイル2のインダクタンスの直線性が特に悪化する。これに対し、図1のように下ヨークに開口部4が設けられている場合、コア3と下ヨークとのギャップが零又は零に非常に近くなっても、コイル2のインダクタンスが急激に増加することを抑えることができる。その結果、操作入力部6及びコア3の全ストローク範囲において、ストローク量に対するコイル2のインダクタンスの直線性が改善できる。これにより、例えば、操作入力部6のストローク量が一定の増加率になるように操作者が微妙な操作をしているにもかかわらず、ストローク量が最大値に到達する手前のあたりで、ストローク量が急激に増えたと所定の検知部によって誤検知されることを防ぐことができる。所定の検知部として、例えば、検出部160又は検出部160からの出力信号を受ける他の電子機器が挙げられる。その結果、操作者の操作感を向上させることができる。
【0027】
ここで、開口部4は、コイル2のインダクタンスの直線性を向上させる点や、自己インダクタンスの検出感度を向上させる点で、コア3が挿入可能な大きさに形成されることが好ましい。例えば、開口部4の間口d2(すなわち、中心軸Cに対して直角な方向での幅)は、コイル2のインダクタンスの直線性を向上させる点や、インダクタンスの検出感度を向上させる点で、コア3の外径d1以上コイル2の外径d4以下であることが好ましい。例えば、図示のように、間口d2が、コア3の外径d1以上コイル2の内径d3以下であってもよい。また、間口d2が、コイル2の内径d3以上コイル2の外径d4以下であってもよい。なお、開口部4はコア3に挿入可能な大きさに形成されていても、コア3は、コア3の下端3aの位置が開口部4に挿入されるまで移動する構成でなくてもよい。
【0028】
間口d2が外径d1以上あることによって、コア3が下ヨーク11,12の位置まで変位してもコア3が下ヨーク11,12に接触しないため、コイル2のインダクタンスが直線的に変化するストローク範囲を広げることができる。また、間口d2が外径d4以下(より好ましくは、内径d3以下)にすることで、下ヨーク11,12の部分が増えることによりコイル2のインダクタンスの絶対値が増加するため、操作入力部6及びコア3のストローク量の検出感度を上げることができる。
【0029】
d1〜d4は、中心軸Cの軸線方向に直角な方向での各部の最大寸法であるとよい。コア3が円柱形状とは異なる他の形状である場合、d1は、中心軸Cに直角な方向でのコア3の最大外形寸法であるとよい。コイル2が円筒形状とは異なる他の形状である場合、d3は、中心軸Cに直角な方向でのコイル2の最大内側寸法であるとよく、d4は、中心軸Cに直角な方向でのコイル2の最大外側寸法であるとよい。
【0030】
次に、本発明の操作入力装置のより詳細な具体例について説明する。
【0031】
図2は、操作入力装置の一実施形態であるコイルアッセンブリ100の斜視図である。図2(a)が上方からの斜視図であり、図2(b)が下方からの斜視図である。図3は、コイルアッセンブリ100の全体図である。図4は、図3のA−Aにおける断面図である。なお、各図において、図1のコア3に相当する部材は省略している。
【0032】
コイルアッセンブリ100は、コイル2が筒部33の外周に巻き付けられたボビン30と、ボビン30の下フランジ32に互いに離間して取り付けられたヨーク20A,20Bとを備えている。
【0033】
ボビン30は、円筒状の筒部33と、筒部33の上端に設けられた上フランジ31と、筒部33の下端に設けられた下フランジ32とから構成されている。下フランジ32の下面には、ボビン30の位置決めピン34が突出して形成されている。不図示のコアは、筒部33内を筒部33の軸方向に変位することによって、コイル2のインダクタンスを変化させる。ボビン30の材質は、半田付けなどで溶融しない耐熱性の高い樹脂が望ましいが、セラミックスでもよい。
【0034】
ボビン30を使用することによって、コイル2を構成する線材として、自己融着線を使用する必要が無くなる。自己融着線の場合、熱やアルコール蒸発を利用して線材を融着させる巻線工程が必要となるが、ボビン30を使用すれば、コイル自体を融着して固定化する必要が無いため、コイルを製作するための工程やコストを削減できる。
【0035】
また、ボビン30を使用することによって、コイルをヨークや基板に直接組み付ける構成に比べて、耐衝撃性を向上できる。また、コイルをヨークに直接組み付ける構成では、強度上、磁気的に要求される厚さよりもヨークを厚くしなければならない場合が考えられる。しかしながら、ボビン30を使用することで、耐衝撃性が向上するので、ヨークを薄くでき、コスト削減ができる。
【0036】
ヨーク20A,20Bは、コイル2の中心軸に対して直角な方向から、ボビン30の下フランジ32をその両側から挟みこむように、ボビン30に取り付けられている。ヨーク20Aは、下フランジ32の下面32aを覆う下面部27と、下フランジ32の側面32bを覆う側面部25と、下フランジ32の上面32cを覆う上面部21とによってU字状に構成されている。ヨーク20Bについても同様である。
【0037】
ヨーク20Aの上面部21とヨーク20Bの上面部22とを設けることによって、ヨーク20A,20Bとボビン30との結合強度を上げることができる。また、ヨーク20Aの下面部27及び側面部25、並びにヨーク20Bの下面部28及び側面部26は、ボビン30の基板実装用の半田付け端子部として機能する。図5に示されるように、ボビン30は、下面部27,28で基板1の表面に半田付けされる。また、側面部25,26に半田40が濡れることで、その濡れ性を向上させることができる。したがって、ボビン30の基板1への表面実装(SMT)が容易になって、リフロー炉による半田付けが可能となる。
【0038】
ヨーク20A,20Bは、基板への表面実装を容易にする点で、半田付け可能な磁性体であればよい。また、板状部材を曲げてU字状に成形するため、プレス加工性の良い材質が好ましい。例えば、半田めっきや錫めっき等が施された鋼板でもよいし、防錆性のあるステンレス鋼のマルテンサイト系材料にニッケルめっきが施されたものでもよい。
【0039】
ヨーク20Aとヨーク20Bは、互いに電気的に非接続の部材である。したがって、コイル2の一方の端部である第1のコイル端をヨーク20Aに電気的に接続し、コイル2のもう一方の端部である第2のコイル端をヨーク20Bに電気的に接続することができる。すなわち、ヨーク20Aとヨーク20Bは、文字通りヨークの機能だけでなく、ボビン30の基板実装用の半田付け端子の機能と、コイル2のコイル端の接続端子の機能とを有している。これにより、各機能が一種類の部品にまとめられているので、部品削減に貢献できる。
【0040】
例えば、図2,3に示されるように、コイル2のコイル端をヨーク20A,20Bに接続しやすくするため、ヨーク20A,20Bのそれぞれに、コイル端を絡げて半田付け又は溶接可能なように絡げ端子23,24が設けられるとよい。コイル2の第1のコイル端2dが、ヨーク20Aに設けられた絡げ端子23に絡げられ、コイル2の第2のコイル端2eが、ヨーク20Bに設けられた絡げ端子24に絡げられる。絡げ端子23は、ヨーク20Aの側面部25から、コイル2の中心軸に平行な方向に延伸するリード体である。絡げ端子24も同様である。
【0041】
また、コイルアッセンブリ100は、ボビン30と、ボビン30に取り付けられたヨーク20A,20Bと、ヨーク20A,20Bの絡げ端子23,24にコイル端が絡げられたコイル2とを組み合わせた構成であるので、ボビンを使用せずにコイルをヨークや基板に直接組み付ける従来の構成に比べて、製造や修理がしやすくなる。例えば、その従来の構成の場合、コイルをヨークに接着してからそのコイルのコイル端を基板に接続する必要がある。そのため、製造上、コイル端と基板との接続工程における取り扱いが難しく、また、接続工程等で不良が発生した場合、修理上、コイルとヨークとの接着を剥がさなければならない。しかしながら、上述のコイルアッセンブリの構成であれば、製造上、基板への組み付け性も容易であり、修理上、ヨークの絡げ端子やボビンからコイルを容易に取り外すことができる。
【0042】
また、ヨーク20Aの下面部27とヨーク20Bの下面部28は、不図示のコアの下端に対向する円状の開口部4が形成されるように、円弧状の部位が成形されていて、その円弧状の部位がコイル2の中心軸に直角な方向に互いに離間して配置されている。つまり、開口部4は、その離間部分に、ボビン30の筒部33に連通するように形成されている。下面部27及び下面部28は、コイル2の下端面側に位置する。
【0043】
図6Aは、コアの下方への実ストローク量に対するコイル2のインダクタンスを示したグラフである。図6Bは、コアの下方への実ストローク量に対するコイル2のインダクタンスの変化率を示したグラフである。図6Bのインダクタンス変化率は、図6Aにおいて、最大ストローク量2mmのときのインダクタンスを100としたときの、各ストローク量におけるインダクタンスの割合を示したものである。図6A,6Bから明らかなように、開口部4が有る場合、無い場合に比べて、ストローク量に対するコイル2のインダクタンスの直線性が向上していることがわかる。
【0044】
図7は、操作入力装置の一実施形態である操作検出装置200の分解斜視図である。図8は、操作入力がキー70に付与されていない初期状態での操作検出装置200の断面図である。操作検出装置200は、複数のコイルアッセンブリ100(本構成の場合、4個のコイルアッセンブリ100A,100B,100C,100D)が配置される配置面を有する基板1を備える。基板1は、XY平面に平行な配置面を有する基部である。基板1は、例えば樹脂製の基板、具体的にはFR−4基板であればよい。
【0045】
4個のコイルアッセンブリ100A−100Dは、三次元の直交座標系の基準点である原点Oとの距離が等しい点を結んでできる仮想的な円の円周方向に並べられている。コイルアッセンブリ100A等は、操作者の力のベクトルを算出しやすくするという点で、その円周方向に等間隔に配置されることが好ましい。各コイルアッセンブリが互いに同特性の場合、隣接する2つのコイルの重心間の距離が等しければよい。各コイルアッセンブリは、X(+),X(−),Y(+),Y(−)の4方向の各X,Y軸上に90°毎に配置されている。X(−)方向は、XY平面上でX(+)方向に対して180°反対向きの方向であり、Y(−)方向は、XY平面上でY(+)方向に対して180°反対向きの方向である。
【0046】
操作検出装置200は、各コイルアッセンブリの上側(すなわち、キー70の基板1との対向面側)に配置されるインダクタンス増加部材として、上ヨーク60及びコア61〜64を備える。
【0047】
キー70は、ケース80の開口部81との嵌合により、X方向及びY方向で保持され、Z方向に移動可能に支持されている。キー70のフランジ71は、コイル状のリターンバネ55によりZ軸方向へ初期荷重が与えられた状態で、ケース80の上側内面に当接している。
【0048】
リターンバネ55は、その一方の端がキー70の下面中央部に当接し、もう一方の端が基板1の上面に設置されるセンター保持ゴム50のフランジ上面に当接する。リターンバネ55は、キー70の下面に設置される上ヨーク60の中央部に設けられた孔を貫通している。センター保持ゴム50は、リターンバネ55の中空部に挿入されるように設置されている。キー70の下面中央部にZ軸方向に形成された突起部72は、リターンバネ55の中空部を貫通し、センター保持ゴム50の中央部にZ軸方向に形成された貫通穴51によって保持されている。
【0049】
上ヨーク60は、磁性体(例えば、鋼板、フェライト)によって成形され、キー70と同一の動きを伴う板状ヨーク材である。上ヨーク60の下面には、XY平面の原点を中心とする円周方向に、上ヨーク60をバーリング加工して形成されたコア61〜64が設けられている。コア61〜64は、上ヨーク60と同一部材でもよいし、上ヨーク60と異なる磁性部材でもよい。コア61〜64は、上ヨーク60及びキー70と同一の動きを伴い、コア61〜64の下方に配置された4個のコイルアッセンブリ100A等の内部をZ軸方向に変位するように構成された突起部である。コア及びコイルは、最低2個あればよく、3個、4個、それ以上の個数あってもよい。上ヨーク60及びコア61〜64を構成することによって、インダクタンスの変化が検出しやすくなり、操作検出装置の製品としての特性・性能が向上する。
【0050】
また、キー70は、樹脂で構成されてもよいが、磁性材料(例えば、プラスチックマグネット)で構成されてもよい。これにより、キー70は、上ヨーク60及びコア61〜64として兼用できる。また、上ヨーク60を省略して、コア61〜64のみをキー70に配設しても、インダクタンスの変化を検出することによって、キー70の動きを検知できる。
【0051】
図9は、キー70をコイルアッセンブリ100C側に傾ける操作入力が付与された傾動状態での操作検出装置200の断面図である。キー70がフランジ71及び/又は基板1を支点に傾動することにより、上ヨーク60及びコア63がコイルアッセンブリ100Cに近接し、コア63がコイルアッセンブリ100Cのボビンの筒部内に進入する。コイルアッセンブリ100Cへの近接とボビンの筒部内への進入によって、コイルアッセンブリ100Cを取り巻く周辺の透磁率が上昇し、コイルアッセンブリ100Cの自己インダクタンスが増加する。他の方向に傾けた場合も同様に考えることができる。したがって、各4つのコイルアッセンブリの各コイルのインダクタンスを評価することによって、キー70の傾倒方向と傾倒量が検出できる。
【0052】
図10は、キー70をZ軸方向に平行移動させる操作入力が付与された押し下げ状態での操作検出装置200の断面図である。図10に示されるように、キー70全体がその中央部を押されることによりZ軸方向に下降することによって、上ヨーク60及びコア61〜64が全コイルアッセンブリに近接し、コア61〜64が全コイルアッセンブリのボビンの筒部内に進入する。全コイルアッセンブリへの近接とボビンの筒部内への進入によって、全コイルアッセンブリのコイルを取り巻く周辺の透磁率が上昇するので、全コイルアッセンブリのコイルの自己インダクタンスが増加する。キー70全体がZ方向に下降した場合、全コイルのインダクタンスが全体的に略等しく上昇しているため、各コイルのインダクタンスを評価することにより、キー70がZ軸方向に押し込まれていることとその押し込み量を検出できる。
【0053】
各コイルアッセンブリは、コア61〜64の下端(図8〜10には、下端61a,63aが示されている)に対向する開口部4(図3参照)を有している。開口部4は、コア61〜64が挿入可能な大きさに形成されている。開口部4が形成されていることによって、コア61〜64と下面部27,28(図3参照)とが磁気的に短絡することを抑制できる。そのため、キー70に連動するコア61〜64の変位量に対して変化するコイルアッセンブリ100A〜100Dの各コイルの自己インダクタンスの直線性を高めることができる。
【0054】
図14は、上述の実施形態と異なる操作入力装置300の斜視分解図である。図15Aは、操作入力がキー110に作用していない操作初期状態での操作入力装置300の正面視断面図である。図15Bは、操作入力の作用によりキー110が片側に傾いた状態での操作入力装置300の正面視断面図である。図15Bにおいて、キー110の外縁部111を指す矢印は、外縁部111に作用する操作入力の向きを示している。操作入力装置300は、キー110と、ケース120と、上ヨーク130と、センサ165と、リターンバネ140とを備える。
【0055】
キー110は、操作入力の作用により傾倒する操作部である。キー110は、例えば、キー110の上側の操作面に直接又は間接的に作用する操作入力により押し込まれることによって、XY平面に対して任意の方向に傾倒する方向キーである。キー110は、キー110の中央部を通る中心軸C1に対して傾倒する。操作入力がキー110に作用していない状態では、中心軸C1は、Z軸に平行である。外縁部111は、キー110の操作面の周縁部である。キー110の操作面は、図示のような円盤部形状でもよいし、楕円形状、十字形状、多角形などの他の形状でもよい。
【0056】
ケース120は、開口部121が形成された上面を有するハウジングである。キー110の操作面は、中心軸C1が開口部121の軸線に一致するように、開口部121に対して操作入力が入力されてくる側(図上、上側)に配置されているとよい。また、中心軸C1と開口部121の内縁121aとの距離d2が、中心軸C1と外縁部111との距離d1よりも短くなるように、キー110は開口部121に対して配置されているとよい。開口部121は、例えば、ケース120の上面に筒状に形成されている。開口部121の形状は、円筒状でもよいし、角筒状でもよい。
【0057】
上ヨーク130及びセンサ165は、ケース120の内側空間に配置され、キー110の傾倒を検出する検出部である。上ヨーク130は、キー110の傾倒に連動して傾倒する第1の傾倒検出部である。センサ165は、上ヨーク130に対向して配置された第2の傾倒検出部である。センサ165は、複数のコイル(操作入力装置300の場合、4個のコイル161,162,163,164)を有している。
【0058】
リターンバネ140は、キー110が開口部121の上ヨーク130側の開口周囲部124を支点に傾倒できるように、キー110を開口部121からケース120に対して突き出る方向に付勢する弾性部材である。開口周囲部124は、ケース120の内側上面における環状部位である。また、開口部121からケース120に対して突き出る方向とは、図示の場合、操作入力に抗う上向きのZ方向に相当する。リターンバネ140は、例えば、キー110に操作入力が作用していない状態での初期位置に、キー110を復帰させる弾性力を、キー110に常時付与するコイルバネである。
【0059】
したがって、このような構成を有する操作入力装置300は、キー110の傾倒支点が外縁部111よりも中心軸C1寄りに位置する。そのため、操作部の傾倒支点が操作部の外側に位置する構成に比べて、キー110を所定の角度まで傾倒させるのに必要な押し込み量を容易に小さくできる。これにより、例えば、キー110の傾倒方向の検出を確定するのに必要なストローク長は、キー110の正確なストローク長自体の検出も必要な場合に比べて短くてよい。そのため、操作部の傾倒支点が操作部の外側に位置する構成に比べて、キー110の傾倒方向の検出を確定するのに余分なZ方向のストローク長を容易に小さくできる。
【0060】
その結果、例えば、キー110を傾倒させる際の操作性が向上し、操作入力装置のZ方向の高さを低くできる。
【0061】
次に、操作入力装置300の構成について更に詳細に説明する。
【0062】
キー110は、開口部121を通るように延びる軸部として、操作軸112を有する。操作軸112は、操作軸112の軸線が中心軸C1に一致するように、キー110の操作面の下側中央部から延びる支柱部であるとよい。操作軸112は、キー110の動きに一体となって連動し、キー110の傾倒方向と同じ方向に傾倒する。操作軸112は、図示のようにキー110の一部位でもよいし、キー110とは別部品でもよい。操作軸112はキー110の傾倒に連動して傾倒するので、操作軸112の側面とケース120の内縁121aとの間には予めクリアランスがあることが好ましい。操作軸112の形状は、円筒状でもよいし、角筒状でもよい。
【0063】
上ヨーク130は、操作軸112にフランジ状に取り付けられ、キー110の傾倒の検出に使用される板状部材である。上ヨーク130は、操作軸112に直接取り付けられてもよいし、操作軸112に所定の部材を介して取り付けられてもよい。上ヨーク130は、操作軸112の先端部113に取り付けられてもよいし、キー110の下側中央部と先端部113との間の中間部に取り付けられてもよい。上ヨーク130は、操作軸112の動きに一体となって連動し、操作軸112の傾倒方向(すなわち、キー110の傾倒方向)と同じ方向に傾倒する。上ヨーク130の外形は、図示のような四角形などの多角形でもよいし、円形でもよい。
【0064】
センサ165は、キー110の傾倒の検出に使用される。センサ165は、例えば、キー110のZ方向の押し込み量を測定対象とする素子であって、キー110のZ方向の押し込み量に応じて変化するアナログ信号波形を検出回路197に対して出力するものである。検出回路197は、例えば、センサ160から出力されたアナログ信号波形を検出するADコンバータを有し、ADコンバータによってアナログ信号波形から取得されたデータを、キー110の押し込み量に対応する検出データとして、制御回路198に対して供給する。検出回路197及び/又は制御回路198は、センサ165が実装される基板180に実装されてもよいし、基板180に接続される別の基板に実装されてもよい。基板180は、フレキシブルプリント基板(FPC)でもよいし、FR−4基板でもよいし、セラミック基板でもよいし、他の形態の基板でもよい。
【0065】
センサ165は、例えば、センサ165と上ヨーク130との位置関係に応じて変化するアナログ信号波形を出力する素子であるとよい。センサ165がこのような素子であれば、センサ165と上ヨーク130との距離がキー110の押し込み量に応じて変化するようにセンサ165を配置することによって、キー110の押し込み量を非接触で測定できる。
【0066】
センサ165は、キー110の押し込み量を非接触で測定できるように、例えば、キー110の押し込み量に応じて自己インダクタンスが変化するコイルを備えるとよい。この場合、センサ165は、コイルの自己インダクタンスの変化をキー110の押し込み量の変化として感知する。例えば、上ヨーク130に対向する位置にコイルを固定することで、キー110の押し込みによりコイル周囲の透磁率が変化するため、コイルの自己インダクタンスを容易に変化させることができる。
【0067】
検出回路197は、センサ165から出力されたアナログ信号波形から、センサ165のコイルの自己インダクタンスの変化に等価的に変化する物理量を検出することで、その物理量の検出値をキー110の押し込み量に対応する検出データとして制御回路198に対して供給する。検出回路197は、例えば、センサ165のコイルにパルス信号を供給することによって、センサ165から出力されたアナログ信号波形に、コイルの自己インダクタンスの変化に等価的に変化する物理量を発生させる。
【0068】
操作入力装置300の場合、4個のコイル161,162,163,164が、原点Oとの距離が等しい点を結んでできる仮想的な円の円周方向に等間隔に並べられている。原点Oは、三次元の直交座標系の基準点である。このように、キー110の押し込み量を互いに異なる位置に配置された複数のコイルで測定することで、操作入力によるキー110の押し込みの位置(言い換えれば、キー110の傾倒方向)を検出できる。図示の場合、各コイルは、X軸とY軸に挟まれるXY平面内の斜め45°の4方向に、円周方向に90°毎に配置されている。なお、各コイルは、X,Y軸上に90°毎に配置されてもよい。
【0069】
制御回路198は、センサ165及び検出回路197によって検出されたキー110の押し込みの位置に対応する方向に、ディスプレイの画面上のオブジェクトを移動させるための制御信号をホストに送信する制御部である。制御回路198は、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えるマイクロコンピュータを有する。
【0070】
リターンバネ140は、中心軸C1と外縁部111との距離よりも中心軸C1との距離が短い位置にある開口周囲部124を傾倒支点として、キー110及び上ヨーク130を傾倒可能に支持する。キー110に操作入力が作用していない状態では、操作軸112に対してフランジ状に突き出た上ヨーク130が開口周囲部124に接触するように、キー110及び上ヨーク130はリターンバネ140によって支持されている。リターンバネ140の上端部は、上ヨーク130の下面中央部に接触し、リターンバネ140の下端部は、基板180の中央部の孔を通って、下ヨーク170の上面中央部に接触する。
【0071】
下ヨーク170は、コイル161,162,163,164の自己インダクタンスの絶対値を上げる板状部材である。ラベル190は、下ヨーク170の下面に設置され、操作入力装置300を被取り付け面に接着させるシートである。
【0072】
また、ヨークは、例えば、比透磁率が1よりも高い材質であればよく、比透磁率が1.001以上あると好適である。具体的には、鉄、鉄の合金(鋼など)の軟磁性体が挙げられる。鉄の比透磁率は5000である。ヨークは、例えば、鋼板から成形されるとよい。
【0073】
また、ケース120は、上ヨーク130の上面と対向する位置に、上ヨーク130が傾倒する際の逃げ部123を有する。逃げ部123によって、傾倒した上ヨーク130がケース120の内側上面にぶつからないようにできる。逃げ部123は、例えば、ケース120の内側上面のうち開口周囲部124の外側部位を肉抜きして形成されている。
【0074】
また、操作入力装置300は、キー110の可動範囲を制限するストッパーとして、ハードストップ部122を備えている。
【0075】
ハードストップ部122は、外縁部111に対向する位置に配置された、キー110の傾倒を制限する傾倒止めである。ハードストップ部122は、ケース120の上面に形成された凸状の環状部位である。ハードストップ部122は、キー110が外縁部111の直下でハードストップ部122に接触してから、その接触位置よりもキー110が下方に変位しないように規制することで、キー110の傾倒動作の終点を決める。ハードストップ部122によって、キー110のフルストローク時におけるキー110やケース120などの撓みが抑制されるため、操作入力装置を構成する各部品に作用する応力を軽減できる。その結果、操作入力装置の強度を向上でき、部品変形によるストロークの誤差を軽減できる。また、360°方向のストローク長のばらつきを軽減できる。
【0076】
また、操作入力装置300は、キー110の可動範囲を制限するストッパーとして、回転止め150を備えている。
【0077】
回転止め150は、キー110及び上ヨーク130が中心軸C1周りに回転することを制限する部材である。回転止め150は、操作軸112の先端部113に対向する位置に固定されている。回転止め150は、図示のように下ヨーク170に固定されてもよいが、基板180に固定されてもよい。回転止め150と操作軸112の先端部113との間には、キー110及び上ヨーク130が開口周囲部124を支点に傾倒しやすいように、クリアランスがX,Y,Zの各方向に予め設けられている。回転止め150が、ハードストップ部122のように、キー110の傾倒動作の終点を決めるハードストップ部として機能してもよい。
【0078】
回転止め150は、キー110及び上ヨーク130が中心軸C1周りに回転することを制限するため、操作軸112の先端部113と嵌め合わせ可能な受け部151を有している。キー110及び上ヨーク130の回転が受け部151によって制限されていない状態で、受け部151と先端部113との間には、キー110及び上ヨーク130が開口周囲部124を支点に傾倒しやすいように、X,Y,Zの各方向にクリアランスがあるとよい。
【0079】
上ヨーク130は、磁性体(例えば、鋼板、フェライト)によって成形され、キー110と同一の動きを伴う板状ヨーク材である。上ヨーク130の下面には、XY平面の原点を中心とする円周方向に、上ヨーク130を切り起こし曲げ加工して形成された複数の切り起こし部133が設けられている。切り起こし部133は、上ヨーク130の板面に形成された切り欠き穴135を輪郭とする片持ち梁形状部を、切り欠き穴135の無い根元部分136で曲げ加工することによって成形されたコアである。4つの切り起こし部133は、上ヨーク130及びキー110と同一の動きを伴い、切り起こし部133の下方に配置された4個のコイル161〜164の内部をZ軸方向に変位するように構成された突起部である。上ヨーク130及び切り起こし部133を構成することによって、インダクタンスの変化が検出しやすくなり、操作入力装置の製品としての特性・性能が向上する。
【0080】
下ヨーク170は、コイル161〜164の下端面165c側に位置する。下ヨーク170は、4つの切り起こし部133の下端133aに対向する開口部として、4つの貫通穴171を有している。貫通穴171は、切り起こし部133が挿入可能且つ接触しない大きさに形成されている。貫通穴171が形成されていることによって、下ヨーク170(貫通穴171を除いた部分)と切り起こし部133とが磁気的に短絡することを抑制できる。そのため、キー110に連動する切り起こし部133の変位量に対して変化するコイル161〜164の自己インダクタンスの直線性を高めることができる。
【0081】
図15Bに示されるように、上ヨーク130が傾き可能な最大角度まで傾いても、切り起こし部133の側面134と貫通穴171の側面172との間に、磁束Φが通るギャップが存在するように構成されている。これにより、コイル161〜164の自己インダクタンスの直線性を高めることができる。
【0082】
貫通穴171は、側面172が切り起こし部133の側面134と平行になるように、半円又は半楕円状(図14参照)に形成されてもよい。これにより、コイル161〜164の自己インダクタンスの直線性を更に高めることができる。
【0083】
また、切り起こし部133は、根元部分136が切り欠き穴135に対して上ヨーク130の周縁部137側に位置するように形成されている。図の場合、根元部分136が切り欠き穴135に対して周縁部137の角部側に位置している。つまり、切り欠き穴135は、上ヨーク130の中央部138よりも変位が大きい周縁部137側の部位が根元部分136として残るように形成されている。これにより、コイル161〜164の自己インダクタンスの変化を検出する感度を増加させることができる。コイル161〜164の自己インダクタンスの変化を検出する感度を増加させる点で、切り欠き穴135は、切り起こし部133それぞれの根元部分136が各コイルの環状の上端面165bに対向するように形成されていると好適である。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。また、上述の複数の実施形態それぞれの一部を組み合わせて構成された別の実施形態も考えられ得る。
【0085】
例えば、図11,12に示されるように、クリックバネ90を、各コイルアッセンブリのボビン30の筒部33に囲まれるように、基板1上に設置する構成が考えられる。この場合、図3,11,12に示されるように、ボビン30の筒部33の基板1側の下端周縁部に、クリックバネ90の周縁部を基板1との間で挟むことでクリックバネ90を固定する段差35を設けると好適である。段差35を設けることにより、クリックバネの上面を覆うことでクリックバネを固定するラミネートフィルム等の固定用フィルムを削除できる。その結果、部品点数を削減でき、組み立てを簡素化できる。
【0086】
図11は、操作入力が付与されていない初期状態での、クリックバネ90を追加した操作検出装置200の拡大断面図である。図12は、キー70をコイル100C側に傾ける操作入力が付与された傾動状態での、クリックバネ90を追加した操作検出装置200の拡大断面図である。コア61〜64のZ軸方向の長さは、キー70が傾動した状態で、クリックバネを押し切ることが可能な(すなわち、クリックバネがクリック動作することが可能な)長さにする。また、コア61〜64の先端部(すなわち、クリックバネとの当接部)にゴム等の弾性体を設けてよい。これにより、クリック時の触感を和らげることができる。また、その先端部に樹脂材を設けてもよい。これにより、クリックバネとの接触による摩擦を軽減できる。
【0087】
図12に示されるように、キー70が傾動すると、上ヨーク60がコア63と共に下方に移動し、その下方に配設されるコイルアッセンブリ100Cのコイルのインダクタンスが増加する。さらに、傾倒動作を続けると、コア63の先端がクリックバネ90と接触し、クリックバネ90の変形により、キー70の操作者にクリック感を与えることができる。
【0088】
また、図13に示されるように、絡げ端子23,24は、コイル2の中心軸に対して直角な方向に延伸させてもよい。これにより、絡げ端子23,24の位置がボビン30から離れる。そのため、コイルアッセンブリ100の製造工程において、絡げ装置の取り回しの自由度が増し、コイル2の線材を絡げ端子23,24に絡げることが容易になる。
【0089】
また、本発明の操作入力装置は、手指に限らず、手のひらで操作するものであってもよい。また、足指や足の裏で操作するものであってもよい。また、操作者が触れる面は、平面でも、凹面でも、凸面でもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 基板
2 コイル
2a コイル2の内部(中空部)
2b コイル2の上端面
2c コイル2の下端面
2d,2e コイル端
3 コア
3a 下端
4 開口部
5a,5b 支持部材
6 操作入力部
11,12 ヨーク
20A 第1のヨーク部
20B 第2のヨーク部
21,22 上面部
23,24 絡げ端子
25,26 側面部
27,28 下面部
30 ボビン
31 上フランジ
32 下フランジ
32a 下面(下フランジ32の下部)
32b 側面(下フランジ32の側部)
32c 上面(下フランジ32の上部)
33 筒部
34 位置決めピン
35 段差
40 半田
50 センター保持ゴム
55 リターンバネ
60 上ヨーク
61〜64 コア
61a,63a 下端
70 キー
80 ケース
90 クリックバネ
100(100A,100B,100C,100D) コイルアッセンブリ
110 キー
111 外縁部
112 操作軸
113 先端部
120 ケース
121 開口部
121a 内縁
122 ハードストップ部
123 逃げ部
124 開口周囲部
130 上ヨーク
133 切り起こし部
133a 下端
134 側面
135 切り欠き穴
136 根元部分
137 周縁部
138 中央部
140 リターンバネ
150 回転止め
151 受け部
160 検出部
161〜164 コイル
165 センサ
165b 上端面
165c 下端面
170 下ヨーク
171 貫通穴
172 側面
180 基板
190 ラベル
197 検出回路
198 制御回路
200 操作検出装置
300 操作入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
操作入力の作用により前記コイルの内部を前記コイルの軸方向に変位することによって、前記コイルのインダクタンスを変化させるコアと、
前記コイルの下端面側に配置されたヨークとを備え、
前記コアの変位量に応じた信号を出力する操作入力装置であって、
前記ヨークは、前記コアの下端に対向する開口部が形成されることを特徴とする、操作入力装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記コアが挿入可能な大きさに形成された、請求項1に記載の操作入力装置。
【請求項3】
前記ヨークは、前記開口部が形成されるように、前記軸方向に直角な方向に互いに離間する第1のヨーク部と第2のヨーク部を有する、請求項1又は2に記載の操作入力装置。
【請求項4】
前記コイルの一方の端部である第1のコイル端が前記第1のヨーク部に電気的に接続され、前記コイルのもう一方の端部である第2のコイル端が前記第2のヨーク部に電気的に接続された、請求項3に記載の操作入力装置。
【請求項5】
前記第1のコイル端が、前記第1のヨーク部の第1の絡げ端子に絡げられ、前記第2のコイル端が、前記第2のヨーク部の第2の絡げ端子に絡げられた、請求項4に記載の操作入力装置。
【請求項6】
前記コイルが巻き付けられたボビンを備え、
前記コアが、前記ボビンの筒部内を前記筒部の軸方向に変位する、請求項1から5のいずれか一項に記載の操作入力装置。
【請求項7】
前記ヨークが、前記ボビンの実装用の半田付け端子部を有する、請求項6に記載の操作入力装置。
【請求項8】
前記ヨークは、前記半田付け端子部が形成されるように、前記ボビンのフランジの下部及び側部を覆うように曲げられた、請求項7に記載の操作入力装置。
【請求項9】
前記ヨークは、前記フランジの上部を覆うように曲げられた、請求項8に記載の操作入力装置。
【請求項10】
基板上のクリックバネを固定する段差が、前記筒部の前記基板側の縁部に形成された、請求項6から9のいずれか一項に記載の操作入力装置。
【請求項11】
前記コアは、板状ヨーク材に形成された突起部である、請求項1又は2に記載の操作入力装置。
【請求項12】
前記突起部は、切り起こし部である、請求項11に記載の操作入力装置。
【請求項13】
前記切り起こし部の根元部分が、前記切り起こし部を形成するための切り欠き穴に対して、前記板状ヨーク材の周縁部側に位置する、請求項12に記載の操作入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2012−181827(P2012−181827A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12488(P2012−12488)
【出願日】平成24年1月24日(2012.1.24)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】