説明

操作子装置及び電子楽器

【課題】電気束線の弛みや引っ張り状態を生じにくくする。
【解決手段】固定体10の回動軸部11に可動体20が回動自在に軸支され、回動軸部11の軸中心AXを中心として可動体20が固定体10に対してX方向に回動自在となる。電気束線13は、一端13aが固定体10の制御基板14に接続され、他端13bが可動体20のLED23に接続される。電気束線13の途中部分が第1の拘束部12、第2の拘束部22により拘束され、第1の拘束部12は、電気束線13を回動軸部11の軸中心AXの延長上に拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に回動する要素間に電気束線が配線される操作子装置及び電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子楽器の楽音制御用等に用いられる操作子装置において、操作によりホイール等の可動体がフレーム等の固定体に対して回動するものが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1の装置では、フレームに対してホイール本体が回動し、その回動量を検出して楽音パラメータの制御に用いている。この種の代表的な電気配線について図3を用いて説明する。
【0004】
図3は、従来の操作子装置における電気配線の態様を示す模式図である。図3(a)、(b)は、それぞれ操作子装置の側面図、正面図を示している。
【0005】
この操作子装置は、固定的な固定体91に対して可動体92が回動軸93で回動自在に連結される。可動体92は、不図示の操作子の操作により回動軸93の軸中心97を中心に回動する。可動体92には電気部品であるLED96が設けられる。LED96からは、電気束線94が延びている。電気束線94は、固定体91の拘束部95で拘束され、その先端は固定体91の不図示の制御基板に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2921483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図3に示す従来の操作子装置では、可動体92と一体にLED96も回動する一方、拘束部95は固定されていて可動しない。そのため、電気束線94のうち、LED96に接続されている部分と拘束部95に拘束されている部分との距離が、可動体92の回動運動によって大きく変化する。
【0008】
そこで、上記両部分同士が最大距離となっても引っ張り状態になる等の問題が生じないように十分な長さを保って配線するが、その一方、上記両部分同士が最短距離となったときには大きく弛むことになる。そのため、電気束線94が他の部品と接触しないようにするべく、十分なスペースを確保する必要があり、省スペースの観点で問題がある。
【0009】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電気束線の弛みや引っ張り状態を生じにくくすることができる操作子装置及び電子楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の操作子装置は、本体(10)と、可動体(20)と、前記可動体を前記本体に対して相対的に回動自在に連結する回動軸部(11)と、前記本体から前記可動体にかけて配線される電気束線(13)と、前記本体または前記可動体のいずれか一方に設けられ、前記電気束線の端部(13a、13b)または途中部分を前記本体または前記可動体の前記いずれか一方に対して拘束するための拘束部(12、24)とを有し、前記拘束部は、前記電気束線を前記回動軸部の軸中心(AX)の延長上に拘束することを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記本体または前記可動体のいずれか他方に設けられ、前記電気束線を前記本体または前記可動体の前記いずれか他方に対して拘束するための別の拘束部(22、15)を有する。好ましくは、前記電気束線の、前記拘束部により拘束される部分(13c、13d)と前記別の拘束部により拘束される部分(13d、13c)との間は拘束されていない。好ましくは、前記拘束部(12、24)及び前記別の拘束部(22、15)は、それぞれ前記電気束線の途中部分(13c、13d)を拘束し、前記電気束線の一端(13a)は、前記本体に設けられた制御基板(14)に接続されると共に、前記電気束線の他端(13b)は、前記可動体に設けられた電気部品(23)に接続される。
【0012】
上記目的を達成するために本発明の請求項5の操作子装置は、本体と、可動体と、挿通部(11a)を有し、前記可動体を前記本体に対して相対的に回動自在に連結する回動軸部(11)と、前記本体から前記回動軸部の前記挿通部を通って前記可動体にかけて配線された電気束線(13)とを有し、前記挿通部は前記回動軸部の軸中心(AX)上に形成され、前記電気束線は、前記挿通部内において前記軸中心を通ることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するために本発明の請求項6の電子楽器は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の操作子装置を楽音パラメータ制御用装置として備えることを特徴とする。
【0014】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気束線の弛みや引っ張り状態を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る操作子装置の模式的な側面図、正面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る操作子装置の模式的な正面図、側面図、第3の実施の形態に係る操作子装置の模式的な側面図、正面図である。
【図3】従来の操作子装置における電気配線の態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1(a)、(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る操作子装置の模式的な側面図、正面図である。
【0019】
この操作子装置は、例えばホイール操作子として構成され、用途としては電子楽器(鍵盤楽器等)の楽音パラメータ制御用装置としての入力装置等が適している。制御対象としては、例えば音高、音色、音量のほか、ビブラート、リバーブ等の各種効果に関する楽音パラメータが考えられる。ただし、楽音制御に限定されるものではなく、楽器以外の電気機器(ゲーム装置等)にも適用可能である。
【0020】
この操作子装置は、本体である固定体10と、固定体10に対して相対的に回動自在な可動体20とを有する。固定体10は、例えば、楽器のフレーム自身やフレームに固定された要素である。
【0021】
固定体10には回動軸部11が設けられ、回動軸部11に可動体20が回動自在に軸支されている。これにより、回動軸部11の軸中心AXを中心として、可動体20が固定体10に対してX方向(図1(b))に回動する。可動体20はそれ自身が直接操作される操作子として機能するものでもよいが、可動体20に突設される操作子の操作により回動する構成であってもよい。回動軸部11は、固定体10と可動体20とを回動自在に連結するものであればよく、いずれの側に固定的に設けられるかは問わない。
【0022】
固定体10には、制御基板14(図1(b))が配設されている。固定体10には、軸中心AX付近に第1の拘束部12が設けられている。
【0023】
可動体20には、電気部品の一例として照明デバイスであるLED23が上部に配設される。可動体20の下部は延設部21となっており、延設部21の先端に第2の拘束部22(別の拘束部)が設けられている。
【0024】
リード線材の束である電気束線13が、可動体20から固定体10にかけて配線され、LED23を制御基板14に電気的に接続している。また、不図示のロータリボリュームが可動体20または固定体10に配設され、両者の相対的な回動量を検出する。検出された回動量は制御基板14に供給され、楽音制御に用いられる。
【0025】
電気束線13は、一端13aが制御基板14に接続され、他端13bがLED23に接続される。そして、途中部分が第1の拘束部12、第2の拘束部22により拘束されている。ここで第1の拘束部12は、電気束線13を、回動軸部11の軸中心AXの延長上に拘束する。すなわち、第1の拘束部12に拘束されることにより、電気束線13は軸中心AXの延長線と交わる。電気束線13の、第1の拘束部12により拘束された部分13cと第2の拘束部22により拘束された部分13dとの間は拘束されておらず、フリーとなっている。
【0026】
可動体20がX方向に回動すると、第2の拘束部22も一体となって回動するので、第2の拘束部22に拘束された電気束線13の部分13dも一緒に回動変位する。しかし、部分13cは軸中心AXの延長上に位置するため、撓んで位置が不定となるようなことがない。そのため、2箇所の拘束部分である部分13cと部分13dとが、回動中心と円弧軌跡との関係になるので、両者の距離は可動体20の回動全行程においてほとんど変化することがない。そのため、電気束線13における部分13cと部分13dとの間に余計な弛みを設けておく必要がなく、図1に示すようにほぼ直線的に結んでも可動上支障がない。
【0027】
本実施の形態によれば、電気束線13が、第1の拘束部12により回動軸部11の軸中心AXの延長上に拘束されるので、可動体20の回動全行程において電気束線13の弛みや引っ張り状態を生じにくくすることができる。電気束線13の、部分13cと部分13dとの間の部分がほとんど可動しないので、他の部品との接触回避のための過剰なスペースを確保する必要がなく、省スペースにも繋がる。
【0028】
ところで、本実施の形態において、制御基板14を軸中心AXの延長上に配置し、第1の拘束部12に代えて電気束線13の一端13aを制御基板14に接続することをもって、一端13aが固定体10の側において軸中心AXの延長上に拘束される構成としてもよい。また、第2の拘束部22の位置にLED23等の電気部品を配置し、第2の拘束部22に代えてこの電気部品に電気束線13の他端13bを接続することをもって、他端13bが可動体20の側に拘束される構成としてもよい。
【0029】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、電気束線13を軸中心AXの延長上に拘束する拘束部を固定体10に設けたが、本発明の第2の実施の形態では可動体20に設ける。
【0030】
図2(a)、(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る操作子装置の模式的な正面図、側面図である。図2(a)、(b)において、第1の実施の形態のものと同様の構成要素には形状の異同を問わず同じ符号が付してある。
【0031】
可動体20には、軸中心AX付近に第2の拘束部24が設けられている。固定体10の下部は延設部16となっており、延設部16の先端に第1の拘束部15(別の拘束部)が設けられている。
【0032】
電気束線13は、途中部分が第2の拘束部24、第1の拘束部15により拘束されている。ここで第2の拘束部24は、電気束線13を、回動軸部11の軸中心AXの延長上に拘束する。電気束線13の、第1の拘束部15により拘束される部分13cと第2の拘束部24により拘束された部分13dとの間は拘束されておらず、フリーとなっている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0033】
可動体20がX方向に回動すると、第2の拘束部24により拘束された部分13dは軸中心AXの延長上に位置するため、回動はするがその位置はほとんど変化しない。第1の拘束部15に拘束された電気束線13の部分13cの位置は不変である。よって、相対的に見れば、部分13dと部分13cとが回動中心と円弧軌跡との関係になり、両者の距離は可動体20の回動全行程においてほとんど変化することがない。
【0034】
本実施の形態によれば、可動体20の回動全行程において電気束線13の弛みや引っ張り状態を生じにくくすることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0035】
ところで、本実施の形態において、可動体20においてLED23等の電気部品を軸中心AXの延長上に配置し、第2の拘束部24に代えて電気束線13の他端13bをこの電気部品に接続することをもって、他端13bが可動体20の側において軸中心AXの延長上に拘束される構成としてもよい。また、第1の拘束部15の位置に制御基板14を配置し、第1の拘束部15に代えて電気束線13の一端13aをこの制御基板14に接続することをもって、一端13aが固定体10の側に拘束される構成としてもよい。
【0036】
(第3の実施の形態)
第1、第2の実施の形態では、電気束線13を軸中心AXの延長上の位置を通過させるために、拘束部を設けて拘束する構成であった。しかし、電気束線13を軸中心AXの延長上の位置を通るようにするためには、専用の拘束部を設けることは必須でなく、本発明の第3の実施の形態では、回動軸部11の中を通す。
【0037】
図2(c)、(d)は、本発明の第3の実施の形態に係る操作子装置の模式的な側面図、正面図である。図2(c)、(d)において、第1の実施の形態のものと同様の構成要素には形状の異同を問わず同じ符号が付してある。
【0038】
図2(c)に示すように、回動軸部11には、軸中心AXを軸芯とする中空穴11aが貫通して形成される。固定体10には、中空穴11aと同心の中空穴17が中空穴11aに連通し貫通して形成される。電気束線13は、可動体20のLED23から、中空穴11a及び中空穴17の中を通って固定体10の制御基板14に接続されている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0039】
この構成によれば、電気束線13のうち、中空穴11a及び中空穴17に挿通されている部分13eが軸中心AXを通り、軸中心AXの線上に拘束されていることになる。可動体20がX方向に回動すると、一端13aも一体となって回動変位する。しかし、中空穴11a及び中空穴17に挿通されている部分13eは軸中心AXの延長上に位置するためほとんど変位しない。なお、部分13eは、中空穴11aに対して軸中心AXの軸線方向の位置がずれないように何らかの係止手段で位置決めしてもよい。
【0040】
本実施の形態によれば、可動体20の回動全行程において電気束線13の弛みや引っ張り状態を生じにくくすることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、電気束線13を軸中心AXの位置に確実に拘束することができる。
【0041】
なお、電気束線13が通る領域は中空穴の形に限られず、溝等の挿通部であってもよい。
【0042】
上記した各実施の形態において、電気部品としてLED23を例示したが、電気束線13が接続される部品であればよく、LED23に限るものではない。
【0043】
また、上記した各実施の形態において、固定体10と可動体20とは相対的に回動すればよく、固定体10が別の要素に対して回動可能となっていてもよい。さらに、電気束線13の配線の態様に関し、固定体10と可動体20との関係を逆にしてもよい。
【0044】
この操作子装置は、ねじりコイルバネ等により固定体10に対して可動体20が所定の中立位置に復帰するよう構成されたものでもよいし、そのような復帰機構を有しないホイールであってもよい。ホイール以外の操作子装置でもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 固定体(本体)、 11 回動軸部、 11a 中空穴(挿通部)、 12 第1の拘束部、 13 電気束線、 13a 一端、 13b 他端、 13c、13d 部分、 14 制御基板、 15 第1の拘束部(別の拘束部)、 20 可動体、 22 第2の拘束部(別の拘束部)、 24 第2の拘束部、 23 LED(電気部品)、 AX 軸中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
可動体と、
前記可動体を前記本体に対して相対的に回動自在に連結する回動軸部と、
前記本体から前記可動体にかけて配線される電気束線と、
前記本体または前記可動体のいずれか一方に設けられ、前記電気束線の端部または途中部分を前記本体または前記可動体の前記いずれか一方に対して拘束するための拘束部とを有し、
前記拘束部は、前記電気束線を前記回動軸部の軸中心の延長上に拘束することを特徴とする操作子装置。
【請求項2】
前記本体または前記可動体のいずれか他方に設けられ、前記電気束線を前記本体または前記可動体の前記いずれか他方に対して拘束するための別の拘束部を有することを特徴とする請求項1記載の操作子装置。
【請求項3】
前記電気束線の、前記拘束部により拘束される部分と前記別の拘束部により拘束される部分との間は拘束されていないことを特徴とする請求項2記載の操作子装置。
【請求項4】
前記拘束部及び前記別の拘束部は、それぞれ前記電気束線の途中部分を拘束し、前記電気束線の一端は、前記本体に設けられた制御基板に接続されると共に、前記電気束線の他端は、前記可動体に設けられた電気部品に接続されたことを特徴とする請求項2または3記載の操作子装置。
【請求項5】
本体と、
可動体と、
挿通部を有し、前記可動体を前記本体に対して相対的に回動自在に連結する回動軸部と、
前記本体から前記回動軸部の前記挿通部を通って前記可動体にかけて配線された電気束線とを有し、
前記挿通部は前記回動軸部の軸中心上に形成され、前記電気束線は、前記挿通部内において前記軸中心を通ることを特徴とする操作子装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の操作子装置を楽音パラメータ制御用装置として備えることを特徴とする電子楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−38220(P2013−38220A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173042(P2011−173042)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】