説明

操舵角切替機構

【課題】 ハンドル操舵時に鞍乗型車両を安定して走行させる操舵角切替機構を提供する。
【解決手段】 フレーム2と、フレーム2に対して回転するハンドル6と、を備えたハンドル6の最大操舵角を切り替える操舵角切替機構Sにおいて、ハンドル6の回転に応じて移動する移動部材51,61と、フレーム2に設けられ移動部材51,61の回転角度を規制する規制部材2bと、を備え、移動部材51,61は、ハンドル6の回転の角速度に応じて、規制部材51,61によって規制されるまでの角度が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵角切替機構に関し、特に、鞍乗型車両の操舵角切替機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗型車両において、ハンドルの操舵角を規制するストッパを設ける技術があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−182116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明の構造では、規制する操舵角が一定であるため、急ハンドルをした場合等に予想以上にハンドルが回転し、車両が不安定になるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、ハンドル操舵時に鞍乗型車両を安定して走行させる操舵角切替機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明は、フレームと、前記フレームに対して回転するハンドルと、を備えた前記ハンドルの最大操舵角を切り替える操舵角切替機構において、前記ハンドルの回転に応じて移動する移動部材と、前記フレームに設けられ前記移動部材の回転角度を規制する規制部材と、を備え、前記移動部材は、前記ハンドルの回転の角速度に応じて、前記規制部材によって規制されるまでの角度が変化することを特徴とする。
【0007】
また、前記移動部材は、前記ハンドルの回転の角速度が速いほど、前記規制部材によって規制されるまでの角度が小さいことを特徴とする。
【0008】
また、前記フレームに取り付けられて前記移動部材を回転可能に支持する軸部材と、一方を前記フレームに支持され他方を前記移動部材に取り付けられた弾性部材と、を有し、前記移動部材は、一方に前記規制部材に当接するストッパ部、他方に前記弾性部材に取り付けられる取付部、を有し、前記ストッパ部と前記取付部の間で前記軸部材に支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、フレームと、前記フレームに対して回転するハンドルと、を備えた前記ハンドルの最大操舵角を切り替える操舵角切替機構において、前記ハンドルの回転に応じて移動する移動部材と、前記フレームに設けられ前記移動部材の回転角度を規制する規制部材と、を備え、前記移動部材は、前記ハンドルの回転の角速度に応じて、前記規制部材によって規制されるまでの角度が変化するので、ハンドル操舵時の不安定な状態を低減することが可能となる。
【0010】
また、請求項2記載の発明によれば、前記移動部材は、前記ハンドルの回転の角速度が速いほど、前記規制部材によって規制されるまでの角度が小さいので、急にハンドルを操舵した場合に操舵角が小さく規制されて不安定な状態を低減することが可能となる。
【0011】
また、請求項3記載の発明によれば、前記フレームに取り付けられて前記移動部材を回転可能に支持する軸部材と、一方を前記フレームに支持され他方を前記移動部材に取り付けられた弾性部材と、を有し、前記移動部材は、一方に前記規制部材に当接するストッパ部、他方に前記弾性部材に取り付けられる取付部、を有し、前記ストッパ部と前記取付部の間で前記軸部材に支持されるので、低コストの簡単な構造で不安定な状態を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態の操舵角切替機構を用いた三輪車両を示す正面図である。
【図2】本発明に係る実施形態の操舵角切替機構を用いた三輪車両を示す側面図である。
【図3】図1のC−C断面を矢印方向から見た図である。
【図4】図1のD−D断面を矢印方向から見た図である。
【図5】後輪が傾斜した状態を示す図である。
【図6】図2のE部分を拡大した第1実施形態の操舵角切替機構付近を示す図である。
【図7】図6を正面から見た図である。
【図8】図6の操舵軸SAを含み、軸部材の軸MAに直交する面の断面図である。
【図9】図8のG−G断面の模式図である。
【図10】ハンドルを操舵してもストッパ部が軸部材に対して回転しない場合の操舵角切替機構を示す図である。
【図11】図10のH−H断面の模式図である。
【図12】ハンドルを操舵してストッパ部が軸部材に対して回転した場合の操舵角切替機構を示す図である。
【図13】図12の操舵軸SA及び軸部材の軸を含む面での断面図である。
【図14】図12及び図13のH−H断面の模式図である。
【図15】図2のE部分を拡大した第2実施形態の操舵角切替機構付近を示す図である。
【図16】図15を正面から見た図である。
【図17】図15の操舵軸SAを含み、モータ軸MAに直交する面の断面図である。
【図18】直進状態時における操舵軸SA及びモータ軸MAを含む面の断面図である。
【図19】図18のJ−J断面の模式図である。
【図20】ハンドルを操舵してもモータが作動しない場合の操舵角切替機構を示す図である。
【図21】図20のK−K断面の模式図である。
【図22】ハンドル6を操舵してモータ62が作動した場合の操舵角切替機構を示す図である。
【図23】図22のモータ軸MA及び操舵軸SAを含む面での断面図である。
【図24】図22のL−L断面の模式図である。
【図25】操舵角切替機構制御に対応したブロック図である。
【図26】操舵角切替機構制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例としての実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1及び図2は本実施形態の操舵角切替機構を用いた三輪車両を示す図であり、図1は三輪車両の正面図、図2は三輪車両の側面図である。なお、図1の矢印Aの方向を幅方向、図2の矢印Bの方向を前方、その反対を後方とする。
【0015】
まず、三輪車両1について説明する。
【0016】
三輪車両1は、フレームとしての車体フレーム2の前方にフロントフォーク3を介して前輪4を有し、車体フレーム2の後方の幅方向中心線を挟んで両側に二つの後輪5a,5bを有している。車体フレーム2の前方には、前輪4を操作するハンドル6を有し、ハンドル6とフロントフォーク3を連結するハンドルポスト6aの前方にはフロントカウル7を設け、後方にはハンドルポストカバー8を設けている。ハンドルポストカバー8の後方には、低床式フロアー9が設けられ、低床式フロアー9の後方にシートカウル10が立ち上がる。シートカウル10には、シート11が置かれる。また、シート11には、背もたれ12が設けられ、背もたれ12から後方に向けて車体フレーム2に連結された荷台13が延びている。また、低床式フロアー9の下方からは、連結部材21を介して車体フレーム2に対してピッチ方向あるいは上下方向に回転可能に連結された後方フレーム22が設けられている。後方フレーム22は、低床式フロアー9の下方から荷台13の下方に延び、後輪5を支持している。
【0017】
次に、後輪5付近の構成について説明する。図3は図1のD−D断面を矢印D方向から見た図、図4は図1のE−E断面を矢印E方向から見た図、図5は後輪が傾斜した状態を示す図である。
【0018】
図3に示すように、支持部材は、後方フレーム22と、後方フレーム22の図2に示した荷台13の前方側から下方に延びる第1支持部材としての第1支持フレーム23と、後方フレーム22の下方で第1支持フレーム23と連結され前後方向に伸びる第2支持部材としての第2支持フレーム24と、後方フレーム22の荷台13の後方側及び第1支持フレーム23の後方から下方に延び第2支持フレーム24と連結される第3支持部材としての第3支持フレーム25と、を有する。なお、第2支持フレーム24及び第3支持フレーム25は一体に形成されてもよい。
【0019】
後方フレーム22には、アクチュエータ連結部材としての後輪傾斜用のモータ連結部材30によりアクチュエータとしての後輪傾斜用のモータ31のケース等の固定部31aが連結固定されている。後輪傾斜モータ31の回転部31bは、前方で減速機32を介して第1リンク部材としてのシャフト一体リンク部材33に連結される。後輪傾斜モータ31の回転は、減速機32で減速され、シャフト一体リンク部材33に出力される。
【0020】
三輪車両1は、図4に示すように、シャフト一体リンク部材33と、第2リンク部材28と、第3リンク部材及び第4リンク部材としての左右のホイールモータブラケット42とで形成されるリンク機構Lを有する。
【0021】
シャフト一体リンク部材33は、前方で第1支持フレーム23に第1ベアリング35を介して回転可能に支持され、後輪傾斜モータ31及び減速機32を貫通し、後方で第3支持フレーム25に第2ベアリング36を介して回転可能に支持されていると共に、後方第1リンク部材26に回転可能に連結されている軸部33aを有する。
【0022】
また、図4に示すように、シャフト一体リンク部材33は、軸部33aと一体に設けられ三輪車両1が直進状態の時に車体幅方向に延びるリンク部33bと、軸部33aの軸方向に対して直交する方向に突出したフランジ部33cとを有する。
【0023】
軸部33aとリンク部33bとを一体に設けることにより、部品点数を少なくすることができ、低コスト化が可能となる。また、部品点数を少なくすることで、スペース及び質量を小さくすることが可能となる。さらに、部品同士を連結する部分のガタを低減することが可能となる。
【0024】
なお、軸部33aは必ずしも後輪傾斜モータ31及び減速機32を貫通する必要はない。この場合、後方第1リンク部材26は、第3支持フレーム25に回転可能に支持されていればよい。
【0025】
また、シャフト一体リンク部材33と後方第1リンク部材26は、それぞれ車両幅方向の一端で第1ホイールモータ41Rを支持する第1車輪支持部材としての第1ホイールモータブラケット42Rの上方と第1連結軸27Rを介して回動可能に連結され、他端で第2ホイールモータ41Lを支持する第2車輪支持部材としての第2ホイールモータブラケット42Lの上方と第2連結軸27Lを介して回動可能に連結されている。
【0026】
第2リンク部材としての前方第2リンク部材28aは、車両幅方向の中央部分で、第2支持フレーム24の前方側と回動可能に連結されている。また、後方第2リンク部材28bは、第2支持フレーム24の後方側と回動可能に連結されている。
【0027】
また、前方第2リンク部材28aと後方第2リンク部材28bは、それぞれ車両幅方向の一端側で第1ホイールモータ41Rを支持する第3リンク部材としての第1ホイールモータブラケット42Rの下方と第3連結軸29Rを介して回動可能に連結され、他端側で第2ホイールモータ41Lを支持する第4リンク部材としての第2ホイールモータブラケット42Lの下方と第4連結軸29Lを介して回動可能に連結されている。
【0028】
図5は、後輪傾斜モータ31の動力により後輪5が傾斜した状態を示す図である。後輪傾斜モータ31の前方から見て反時計方向に回転したとすると、後輪傾斜モータ31の回転は、図3で示した減速機32で減速され、シャフト一体リンク部材33に伝達され、シャフト一体リンク部材33を反時計方向に回転させる。シャフト一体リンク部材33が反時計方向に回転すると、反作用により第1支持フレーム23がシャフト一体リンク部材33と逆方向に時計方向に回転すると共に、リンク機構Lが作動する。
【0029】
図5に示すように、リンク機構Lは、シャフト一体リンク部材33及び図示しない後方第1リンク部材26と前方第2リンク部材28a及び図示しない後方第2リンク部材28bが前方から見て反時計方向に回転し、第1ホイールモータブラケット42R及び第2ホイールモータブラケット42Lが時計方向に回転する。そして、後輪5は傾斜する。第1ホイールモータブラケット42R及び第2ホイールモータブラケット42Lと共に、時計方向に回転し、後輪5が傾斜する。
【0030】
また、後輪傾斜モータ31が前方から見て時計方向に回転したとすると、第1ホイールモータブラケット42R及び第2ホイールモータブラケット42Lは、反時計方向に回転し、後輪5が傾斜する。
【0031】
本実施形態の操舵角切替機構Sは、一般的な鞍乗型車両に適用することが可能であるが、図1〜図5に示した三輪車両又はバギー車等の車両に適用すると特に効果を奏する。二輪車等の一般的な鞍乗型車両は旋回時に車体を傾斜させて旋回するものが多いが、図1〜図5に示した三輪車両又はバギー車等の車両では、ハンドルを操舵することで旋回する。したがって、急ハンドル時に予想以上にハンドルが回転し、曲がりきれずに車両が不安定になる場合がある。本実施形態の操舵角切替機構Sは、このような場合に車両を安定に走行させることが可能となる。
【0032】
次に、第1実施形態の操舵角切替機構S付近の構造について説明する。
【0033】
図6は、図2のE部分を拡大した第1実施形態の操舵角切替機構S付近を示す図、図7は図6を正面から見た図である。
【0034】
図6及び図7に示すように、ハンドル6に連結されたハンドルポスト6aは、車体フレーム2に溶接等により連結された中空のポスト受部2aに回転可能に挿通される。また、ハンドルポスト6aの下方端部は、フロントフォーク3に固着されて、図2に示したハンドル6、ハンドルポスト6a及びフロントフォーク3は一体に回転する。ポスト受部2aの下方には、ハンドルポスト6aの回転角である操舵角を規制する規制部2bが設けられている。規制部2bは、フロントフォーク3の後方に間隔をあけて所定の角度だけ配置されている。
【0035】
また、フロントフォーク3には、前方に開口部3aが設けられている。開口部3aに対応したフロントフォーク3の内部には、移動部材としてのストッパ51及び軸部材52等を有するガバナ機構50が設けられている。
【0036】
図8は直進状態時における操舵軸SA及びモータ軸MAを含む面の断面図、図9は図8のF−F断面の模式図である。
【0037】
図8に示すように、フロントフォーク3には操舵軸SA方向に内側に突出した支持部3bが設けられている。支持部3bは、弾性部材としてのバネ53の一方を支持している。また、フロントフォーク3の開口部3a付近には直進状態での幅方向に軸部材52が貫通して設けられている。ストッパ51の一方にはストッパ部51aが形成され、開口部3aから前方に突出するように配置されている。また、ストッパ51の他方にはバネ53の他方が取付部51bに取り付けられている。さらに、ストッパ51のストッパ部51aと取付部51bの間で軸部材52に揺動可能に取り付けられている。
【0038】
次に、運転者が低角速度でハンドルを操舵した場合について説明する。図10はハンドルを操舵してもストッパ部が軸部材に対して回転しない場合の操舵角切替機構を示す図、図11は図10のG−G断面図である。
【0039】
図10に示すように、運転者がハンドル6を操舵すると、ハンドルポスト6aを介してフロントフォーク3が回転し、ガバナ機構50も回転する。
【0040】
運転者のハンドル6の操舵回転速度が低角速度であると、ストッパ部51aに作用する遠心力はわずかなので、ストッパ部61bは軸部材に対して回転せず、ストッパ部51aの鉛直方向の位置は変化しない。したがって、本実施形態では、図11に示すように、フロントフォーク3は第1の角度αだけ回転し、ストッパ部51aが規制部22に当接するので、ハンドル6の操舵角は第1の角度αに規制される。
【0041】
次に、運転者が高角速度でハンドルを操舵した場合について説明する。図12はハンドルを操舵してストッパ部が軸部材に対して回転した場合の操舵角切替機構を示す図、図13は図12の操舵軸SA及び軸部材の軸MAを含む面での断面図、図14は図12及び図13のH−H断面の模式図である。
【0042】
運転者のハンドル6の操舵回転速度が高角速度であると、ハンドルポスト6aを介してフロントフォーク3及びガバナ機構50も高角速度で回転する。すると、ストッパ部51aに遠心力が作用し、図13に示すように、ストッパ51のストッパ部51aがバネ53の付勢力に抗して軸部材52を中心に矢印のように鉛直方向の下方に回転する。
【0043】
図12に示すように、ストッパ51のストッパ部51aは鉛直方向の上方に行くほど幅が大きく形成されているので、ストッパ部51aが鉛直方向の下方に行くほど規制部22に当接する断面でのストッパ部51aの幅は広くなる。
【0044】
したがって、図14に示すように、フロントフォーク3は第2の角度β回転し、ストッパ部51aは、規制部22に当接するので、ハンドル6の操舵角は第1の角度αよりも小さい第2の角度βに規制される。
【0045】
このような構造により、低コストの簡単な構造で、ハンドル6操舵時の車両の不安定な状態を低減することが可能となる。
【0046】
次に、第2実施形態の操舵角切替機構Sについて説明する。
【0047】
図15は、図2のE部分を拡大した第2実施形態の操舵角切替機構S付近を示す図、図16は図15を正面から見た図、図17は操舵軸SAを含み、モータ軸MAに直交する面の断面図である。
【0048】
図15〜図17に示すように、ハンドル6に連結されたハンドルポスト6aは、車体フレーム2に溶接等により連結された中空のポスト受部2aに回転可能に挿通される。また、ハンドルポスト6aの下方端部は、フロントフォーク3に固着されて、図2に示したハンドル6、ハンドルポスト6a及びフロントフォーク3は一体に回転する。ポスト受部2aの下方には、ハンドルポスト6aの回転角である操舵角を規制する規制部2bが設けられている。規制部2bは、フロントフォーク3の後方に間隔をあけて所定の角度だけ配置されている。
【0049】
また、フロントフォーク3には、前方に開口部3aが設けられている。開口部3aに対応したフロントフォーク3の内部には、ストッパ61及び軸部材としてのボールネジ62を有する。ボールネジ62は、フロントフォーク3を貫通して、外周に取り付けたモータ63に連結されている。ストッパ61は、ボールネジ62の作動により移動可能に取り付けられ、操舵軸SAに対して両側に第1ストッパ61aと第2ストッパ61bが1つずつ設けられる。第1ストッパ61aと第2ストッパ61bはそれぞれ開口部3aから前方に突出している。また、モータ63が一方に回転駆動すると、ボールネジ62が作動し、第1ストッパ61aと第2ストッパ61bをそれぞれ離間するように移動させる。また、モータ63が他方向に回転駆動すると、ボールネジ62が作動し、第1ストッパ61aと第2ストッパ61bをそれぞれ近づくように移動させる。
【0050】
図18は直進状態時における操舵軸SA及びモータ軸MAを含む面の断面図、図19は図18のJ−J断面の模式図である。
【0051】
図18に示すように、直進状態では、モータ62は作動せず、第1ストッパ61aと第2ストッパ61bは操舵軸SAを挟んで当接している。この状態では、図19に示すように、第1の角度αが操舵角として回転可能な角度となっている。なお、第1ストッパ61aと第2ストッパ61bは、直進状態で必ずしも当接している必要はない。
【0052】
図20はハンドルを操舵してもモータが作動しない場合の操舵角切替機構を示す図、図21は図20のK−K断面図である。
【0053】
図20に示すように、運転者がハンドル6を操舵すると、ハンドルポスト6aを介してフロントフォーク3が回転し、ストッパ61等も回転する。
【0054】
本実施形態では、ハンドル6を操舵してもモータ62が作動しない状態では、図21に示すように、フロントフォーク3は第1の角度αだけ回転すると、第2ストッパ61bが規制部2bに当接するので、ハンドル6の操舵角は第1の角度αに規制される。なお、運転者がハンドル6を逆方向に操舵すると、第1ストッパ61aが規制部2bに当接する。
【0055】
次に、ハンドル6を操舵してモータ62が作動した場合について説明する。図22はハンドル6を操舵してモータ62が作動した場合の操舵角切替機構を示す図、図23は図22のモータ軸MA及び操舵軸SAを含む面での断面図、図24は図22のL−L断面図である。
【0056】
図22に示すように、運転者が、ハンドル6を操舵してモータ62が作動した場合には、図23に示すように、モータ62が回転し、ボールネジ63を作動させることにより、ストッパ61の第1ストッパ61aと第2ストッパ61bは、操舵軸SAからそれぞれ離間するように移動する。したがって、図24に示すように、フロントフォーク3は、第2の角度βだけ回転すると、第2ストッパ61bが規制部2bに当接するので、ハンドル6の操舵角は第1の角度αよりも小さい第2の角度βに規制される。なお、運転者がハンドル6を逆方向に操舵すると、第1ストッパ61aが規制部2bに当接する。
【0057】
第2実施形態の操舵角切替機構の制御について説明する。
【0058】
図25は操舵角切替機構制御に対応したブロック図、図26は操舵角切替機構制御のフローチャートである。
【0059】
図25に示すように、操舵角切替機構の制御は、操舵角速度センサ101が検出した角速度に応じて、制御部110がモータ62の回転を制御するものである
【0060】
図26に示すように、まず、ステップ11で、操舵角速度センサ101が検出したハンドル6、ハンドルポスト6a又はフロントフォーク3の操舵角速度を取得する(ST11)。次に、ステップ12で、ステップ1において取得した操舵角速度ωが所定の値a以下か否か判断する(ST12)。
【0061】
ステップ12において、操舵角速度ωが所定の値a以下の場合、ステップ13で、図20及び図21に示したように、ストッパ61が規制部2bに規制される操舵角θがあらかじめ定めた第1の値αとなるように、制御部110がモータ62を制御する(ST13)。本実施形態では、モータ62を回転させず、ストッパ61を移動させない。
【0062】
ステップ12において、操舵角速度ωが所定の値aより大きい場合、ステップ14で、図22〜図24に示したように、ストッパ61が規制部2bに規制される操舵角θが第1の値αよりも小さいあらかじめ定めた第2の値βとなるように、制御部110がモータ62を制御し、ストッパ61を移動させる(ST14)。
【0063】
このような制御により、車両の状態に対して細かく対応することができ、ハンドル6操舵時、特に急ハンドル時等の車両の不安定な状態を低減することが可能となる。
【0064】
このように、車体フレーム2と、車体フレーム2に対して回転するハンドル6と、を備えたハンドル6の最大操舵角を切り替える操舵角切替機構Sにおいて、ハンドル6の回転に応じて移動するストッパ51,61と、車体フレーム2に設けられストッパ51,61の回転角度を規制する規制部材2bと、を備え、ストッパ51,61は、ハンドル6の回転の角速度に応じて、規制部材2bによって規制されるまでの角度が変化するので、ハンドル6操舵時の車両の不安定な状態を低減することが可能となる。
【0065】
また、ストッパ51,61は、ハンドル6の回転の角速度が速いほど、規制部材2bによって規制されるまでの角度が小さいので、急にハンドル6を操舵した場合に操舵角が小さく規制されて、ハンドル6操舵時の車両の不安定な状態を低減することが可能となる。
【0066】
また、車体フレーム2に取り付けられてストッパ51を回転可能に支持する軸部材52と、一方を車体フレーム2に支持され他方をストッパ51に取り付けられたバネ53と、を有し、ストッパ51は、一方に規制部材2bに当接するストッパ部51a、他方にバネ53に取り付けられる取付部51b、を有し、ストッパ部51aと取付部51bの間で軸部材52に支持されるので、低コストの簡単な構造で、ハンドル6操舵時の車両の不安定な状態を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1…三輪車両、2…車体フレーム(フレーム)、2a…ポスト受部、2b…規制部材、4…前輪、5…後輪、6…ハンドル、6a…ハンドルポスト、22…後方フレーム(支持部材)、23…第1支持フレーム(支持部材)、24…第2支持フレーム(支持部材)、25…第3支持フレーム(支持部材)、28a…前方第2リンク部材(第2リンク部材)、31…後輪傾斜モータ(アクチュエータ)、32…減速機、33…シャフト一体リンク部材(第1リンク部材)、41…ホイールモータ、42R…ホイールモータカバー(第3リンク部材)、42L…ホイールモータカバー(第4リンク部材)、50…ガバナ機構、51,61…ストッパ(移動部材)、52…軸部材、53…バネ(弾性部材)、62…モータ、L…リンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに対して回転するハンドルと、
を備えた前記ハンドルの最大操舵角を切り替える操舵角切替機構において、
前記ハンドルの回転に応じて移動する移動部材と、
前記フレームに設けられ前記移動部材の回転角度を規制する規制部材と、
を備え、
前記移動部材は、前記ハンドルの回転の角速度に応じて、前記規制部材によって規制されるまでの角度が変化する
ことを特徴とする操舵角切替機構。
【請求項2】
前記移動部材は、前記ハンドルの回転の角速度が速いほど、前記規制部材によって規制されるまでの角度が小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の操舵角切替機構。
【請求項3】
前記フレームに取り付けられて前記移動部材を回転可能に支持する軸部材と、
一方を前記フレームに支持され他方を前記移動部材に取り付けられた弾性部材と、
を有し、
前記移動部材は、
一方に前記規制部材に当接するストッパ部、
他方に前記弾性部材に取り付けられる取付部、
を有し、
前記ストッパ部と前記取付部の間で前記軸部材に支持される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の操舵角切替機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−17039(P2012−17039A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156090(P2010−156090)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】