説明

攪拌乾燥装置

【課題】 粘土等のように凝集力が強く、攪拌乾燥中に造粒して乾燥不十分になりやすい原料を乾燥する場合においても、効率よく乾燥できる攪拌乾燥装置を提供する。
【解決手段】 攪拌乾燥装置に備えた2本のパドル軸において、その中の一本のパドル軸に備えたパドルの取り付け角度と、他のパドル軸に備えたパドルの取り付け角度を、異ならせて、並列する2本のパドル軸による原料の搬送速度を異ならせる。
本発明は前記構成によって、攪拌乾燥装置内で流動する原料の移動速度に差を生じさせるので、その結果、原料は、せん断力を受けて、造粒径が大きくならないので、凝集力が強い原料においても、その塊を充分に掻きほぐして、効率よく乾燥することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、雨水や海水などの水分を含む汚泥、粘土、又石炭や石灰石あるいはスラグなどの固体粒状物を主に原料として、表面水分を乾燥させながら攪拌して破砕もしくは解砕する、攪拌乾燥装置に関するものであり、特にガス分散板よって高温の熱風を被乾燥物に吹き上げながら、攪拌と乾燥を同時に効率良く行なう原料の攪拌乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高温熱風を高流速でガス分散板より噴出することにより、被乾燥物を流動化させた状態で、効率良く乾燥させる装置として、例えば、特許文献1に開示されるような固体粒状物の乾燥装置が公知である。
【特許文献1】実開平1−158094号公報
【0003】
特許文献1に開示される従来の乾燥装置によれば、乾燥室に配した原料の供給口から、被乾燥物である原料が乾燥室内に供給されると、原料は空気室から乾燥室内へ噴出される高温の熱風により流動化されるとともに、パドル軸の回転により掻き上げられて攪拌されながら、パドルの作用によりパドル軸方向へ移動されつつ乾燥される。
【0004】
また、特許文献1による従来の乾燥装置によれば、被乾燥物は粒子同士が、例え、凝集等により、くっつき合った塊を含有していたとしても、それをパドルのたたき作用でほぐすことができる(本発明において、原料をほぐすことを、解砕と称することもある)。
なお、被粉砕物は、パドルに攪拌されてたたかれることにより、ほぐされてばらばらになり、ほぐされた粒子と熱風との接触率は良くなるため、円滑に流動化されて乾燥が効率的に行なわれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の乾燥装置においては、被乾燥物は粒子同士が、凝集等により、くっつき合った塊を含有していたとしても、それをパドルのたたき作用でほぐすことができる。
しかし、粘土のように原料の特性において凝集力が極端に強い場合、或いは、汚泥のように含まれる水分率が多いという理由によって凝集力が強い場合等は、攪拌と流動ガスの作用によって、乾燥していない原料が攪拌装置内で造粒されて大きくなり、その結果、原料の見かけ上の比表面積が小さくなって、乾燥不十分になるという問題が発生した。
この問題を解決するために、二軸式の攪拌乾燥装置が使用されて、一定の効果を上げたものの、造粒を十分に抑えられずに、満足できる効果を得られない場合もあって、近年は、より効果的に乾燥できる乾燥装置が求められている。
【0006】
本発明は前述した従来技術の欠点に鑑みなされたものであり、被乾燥物としての原料が、粘土のように原料の特性において凝集力が極端に強い場合、或いは、汚泥のように含まれる水分率が多いという理由によって凝集力が強い場合等においても、その塊を充分に掻きほぐして、効率よく乾燥することができる攪拌乾燥装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による攪拌乾燥装置は、
(1) 回転自在に設けられた2本のパドル軸をその内部に有して該パドル軸の一端側と他端側にそれぞれ原料の供給口と取出口を形成するとともに該原料の取出口側の上方にガス排出口を形成した攪拌室と、該攪拌室の下方に配されて攪拌室に熱ガスを供給する送風室と、を備えて、該攪拌室に供給した原料を攪拌しながら乾燥する原料の攪拌乾燥装置において、該2本のパドル軸にそれぞれ複数個のパドルを配するとともに、該パドル軸に取り付けたパドルの取り付け角度を2本のパドル軸で異ならせることによって、該パドルの回転による原料の送り速度を、2本のパドル軸で異ならせる構成とした。
【0008】
(2) (1)記載の攪拌乾燥装置において、前記2本のパドル軸を異方向に回転させて、それぞれのパドル軸の回転方向に合わせて原料を取出口側に搬送する方向に傾斜させたパドルの取り付け角度を、パドル軸ごとに異ならせた場合において、一方のパドル軸に配したパドルの取り付け角度θ2を、他方のパドル軸に配したパドルの取り付け角度θ1と比較して、1.3倍以上の大きさとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による攪拌乾燥装置は、2本のパドル軸において、その中の一本のパドル軸に備えたパドルの取り付け角度と、他のパドル軸に備えたパドルの取り付け角度を、異ならせる構成としたので、パドル軸による原料の搬送速度が、パドル取り付け角度の異なる各々パドル軸で、それぞれ異なり、乾燥装置内で攪拌、流動する原料の移動速度に差が生じる。その結果、原料は、せん断力を受けて、造粒径が大きくなりにくく、小さくなる。従って、本発明によれば、乾燥装置内で、原料が凝集しにくく、原料の見かけ上の比表面積が小さくなりにくいので、乾燥効率が向上する。
【0010】
また、2本のパドル軸でパドルの取り付け角度が異なれば前述の効果が生じるが、その差が小さければ効果が小さい。
従って、取り付け角度は、パドル軸の回転する方向に合わせて傾斜させたパドルの取り付け角度として、その取り付け角度が大きい方の側のパドル取り付け角度が、小さい方の側のパドル取り付け角度に比較して、1.3倍以上にとなることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明による実施形態の好ましい1例について説明する
図1は本発明による攪拌乾燥装置の1実施形態を概念的に示す縦断面図、図2は図1のA線矢視側断面図、図3はパドルの取り付け角度を説明する図である。
【0012】
図1に示すように、攪拌乾燥装置1は、上部に攪拌室3を、下部に送風室4を備えて、攪拌室3の底面は、断面が部分半円形の樋状に形成されており、その中央円弧部分にガスが通過するためのスリットを形成したガス分散板2が配されている。
【0013】
また、送風室4の内壁面には耐火物43が内張りされており、高温熱風に対して保護されている。この耐火物43は、ガス分散板2にも一部が施されている。
なお、本実施形態においては、内張りに耐火物43を使用したが、使用するガスの温度等により、耐火物を使用しなくても良い場合もあることは勿論である。
【0014】
攪拌室3内には、パドル軸5が攪拌室3の両外側壁に取り付けられた軸受に軸承されて回転自在に設けられており、このパドル軸5に軸方向に複数個(本実施形態では6個)の攪拌用のパドル51が略等間隔で取り付けられている。
この各々のパドル51はその腕51aをパドル軸5に貫通され、腕51aの螺子部にパドル軸5を挟んで両則からナットを螺合させて締付けることによりパドル軸5に対して着脱自在に取り付けられている。
【0015】
また、攪拌室3内には、パドル軸5に並列するようにしてパドル軸6が配されており、パドル軸6が攪拌室3の両外側壁に取り付けられた軸受に軸承されて回転自在に設けられており、このパドル軸6に軸方向に複数個(本実施形態では6個)の攪拌用のパドル61が略等間隔で取り付けられている。
この各々のパドル61は、先に説明したパドル51と同様に、その腕61aをパドル軸6に貫通され、腕61aの螺子部にパドル軸6を挟んで両則からナットを螺合させて締付けることによりパドル軸6に対して着脱自在に取り付けられている。
【0016】
なお、パドル51、61を、パドル軸5、6に取り付ける手段は、本実施形態で説明した手段に限らず、例えば、パドル軸5、6に対して、パドル51、61の取り付け用リブを溶接等により予め固設しておき、該リブにパドル51、61をボルト止め等する手段であっても良く、それ以外も手段であっても、本発明の作用効果を損わない範囲で、公知の取り付け手段を用いることは、本発明の適応の範囲であることは説明するまでもない。
【0017】
また、パドル51、61は、その回転によって被乾燥物としての原料を掻き上げるべく平板状に形成されており、パドル51a、61aはパドル軸方向に隣接し合うパドルの軸方向視の取り付け角度を互いに異ならせて取り付けられている。
なお、本実施形態では軸方向に隣接し合うパドル51a同士、又パドル61a同士は円周方向の取り付け角度を順次120度ずつ位相をずらされて取り付けられている。
【0018】
さらに、パドル51、61は、パドル軸5、6の軸線に対して傾けられて、パドル軸の回転する方向において、原料を取出口側に搬送する方向の傾斜を有するパドルの取り付け角度により取り付けられており、パドル51、61は、この傾斜によって、被乾燥物である原料をパドル軸方向へ移動させる効果を有する。
ここで、本実施形態においては、2本のパドル軸51及び61を異方向に回転させており、後述する原料供給口側から見て、パドル軸51が時計方向に回転し、パドル軸61が反時計方向に回転している。そのため、図3に示すようにパドル51及びパドル61の取り付け角度θ(パドル軸に対して直行する方向からの角度)を、パドル軸が異なる回転方向に回転した際において、同一方向(後述する原料取出口側)へ原料が送られるようにするために、逆向きの傾斜を与え、かつ、その大きさを、θ1及びθ2として異ならせている。図3に示す実施形態においては、パドル51の取り付け角度θ1を30度とするとともにし、パドル61の取り付け角度θ2を40度とした。
なお、本実施形態においては、パドル51の取り付け角度をθ1とし、パドル61の取り付け角度をθ2としたが、これはパドル軸が右側、左側の違いではなく、単にパドル軸への取り付け角度が大きな方をθ2と呼称し、取り付け角度の小さな方をθ1と呼んでいるものである。
【0019】
また、本実施形態においては、パドル軸5、6の一端側で、攪拌室3の上方部分に供給口31が設けられ、さらに、パドル軸5、6の他端側の攪拌室3の側壁に、乾燥された原料を機外に取り出す取出口32が設けられている。
【0020】
さらに、原料の供給口31の下方に位置する送風室4の側壁にはガス導入口41(熱風導入口41と称することもある)が設けられており、また、攪拌室3の取出口32が位置する側の上壁に、乾燥を終えたガス排出口42(熱風出口42と称することもある)が設けられている。
【0021】
ここで、本実施形態では、送風室4のガス導入口41から流れ込んだガスは、スリットを形成されたガス分散板2を通過して、攪拌室3にある原料を乾燥させた後に、ガス排出口42から、機外に排出される構成となっている。
【0022】
前述した構成となった本実施形態による攪拌乾燥装置1を運転した場合について、その作用効果を説明する。なお、本実施形態においては、水分が20%程度付着した汚泥を原料とした場合について説明する。
【0023】
まず、最初の工程として、図示しない原料ビンに貯留していた汚泥を、攪拌乾燥装置1の供給口31から攪拌室3内に供給し、ガス分散板2上に載せるとともに、下方のガス導入口41から熱した空気(熱風と称することもある)を送風室4内に供給する。
【0024】
ガス導入口41から送風室4内に供給された熱風は、ガス分散板2を通して攪拌室3内に流れ込む。ここで、図示していない駆動電流機を駆動して、パドル軸5、6を逆方向に同一の回転速度で回転させて、パドル51、61を回転させると、供給口31から投入された汚泥は、ガス分散板2のスリット20から高速で噴射する高温(本実施形態においては約600℃以下)の熱風により流動化されながら、取出口32側へ移動されつつ、乾燥される。なお、本実施形態においては、前述したように、原料供給口側から見てパドル軸51を時計回方向に回転させ、パドル軸61を反時計回方向に回転させている。
【0025】
ここで、本実施形態においては、前述したようにパドル51とパドル61の取り付け角度をθ1とθ2を異ならせているため、原料である汚泥の搬送速度が、パドル51とパドル61で異なる。
そのため、原料は、攪拌、流動中において、常にせん断を受けているため、造粒径が大きくならずに、塊が効率よくほぐされつつパドル軸方向の取出口32側へ移動され、この間に原料は、乾燥される。
【0026】
前述したように従来の乾燥装置においては、粘土のように凝集力が極端に強い場合、或いは、汚泥のように含まれる水分率が多い場合等は、攪拌と流動ガスの作用によって、乾燥していない原料が攪拌装置内で造粒されて、かえって大きくなり、その結果、原料の見かけ上の比表面積が小さくなって、乾燥不十分になるという問題が発生した。
本実施形態においては、2本のパドル軸において、その中の一本のパドル軸に備えたパドルの取り付け角度と、他のパドル軸に備えたパドルの取り付け角度を、異ならせて、並列する2本のパドル軸による原料の搬送速度を異ならせたので、攪拌乾燥装置内で攪拌され流動する原料の移動速度に差が生じて、その結果、原料は、せん断力を受けて、造粒径が大きくならずに小さくなる。
そのため、本実施形態によれば、乾燥装置内で、原料が凝集しにくく、原料の見かけ上の比表面積が小さくなりにくいので、乾燥効率が向上する。
従って、本実施形態においては、攪拌乾燥装置1により所定の乾燥度にすることのみならず、原料塊を効率よく解砕して、原料を充分に攪拌することができ、破砕や解砕することができる。
【0027】
なお、パドル51及びパドル61の角度を少しでも変えれば、本願発明の期待する効果はあるが、角度の違いが小さければ効果としての差がわかりにくい。
従って、パドルの取り付け角度としては、取り付け角度が小さい方のパドルを基準とした場合において、取り付け角度が大きい方のパドル取り付け角度を、取り付け角度が小さいパドルの取り付け角度の1.3倍以上とすることが好ましく、特に好ましくは2倍以上とすることである。
【0028】
なお、本実施形態においては、取り付け角度が小さいパドル51(取り付け角度θ1が30度)を基準とし、パドル61を取り付け角度θ2(40度)で取り付けた。
この場合おいては、取り付け角度が大きい方のパドル61取り付け角度が、取り付け角度が小さいパドル51の取り付け角度に対して、1.33倍程度となる
なお、原料を一定方向に搬送する角度であるという理由から、パドル51及びパドル61の取り付け角度の範囲は、0度を超え90度未満の範囲とすることが好ましく、また、パドルの取り付け角度は小さい場合であっても30度以下にしないことが特に好ましい。
【0029】
また、本実施の形態においては、2本のパドル軸を有する攪拌乾燥機の例を示したが、本発明に適応できるパドル軸の本数は、これに限らず、少なくとも2本以上あれば良いので、3本以上であっても良く、他のパドル軸と異なるパドル取り付け角度を有したパドルを有するパドル軸が少なくとも1本以上あれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による攪拌乾燥装置の1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のA線矢視側断面図である。
【図3】パドルの取り付け角度を説明する図である。
【符号の説明】
【0031】
1 攪拌乾燥装置
2 ガス分散板
3 攪拌室
4 送風室
5 パドル軸
6 パドル軸
31 供給口
32 取出口
41 ガス導入口
42 ガス排出口
50 軸受
51 パドル
61 パドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に設けられた2本のパドル軸をその内部に有して該パドル軸の一端側と他端側にそれぞれ原料の供給口と取出口を形成するとともに該原料の取出口側の上方にガス排出口を形成した攪拌室と、
該攪拌室の下方に配されて攪拌室に熱ガスを供給する送風室と、を備えて、該攪拌室に供給した原料を攪拌しながら乾燥する原料の攪拌乾燥装置において、
該2本のパドル軸にそれぞれ複数個のパドルを配するとともに、該パドル軸に取り付けたパドルの取り付け角度を2本のパドル軸で異ならせることによって、該パドルの回転による原料の送り速度を、2本のパドル軸で異ならせること特徴とする攪拌乾燥装置。
【請求項2】
前記2本のパドル軸を異方向に回転させて、それぞれのパドル軸の回転方向に合わせて原料を取出口側に搬送する方向に傾斜させたパドルの取り付け角度を、パドル軸ごとに異ならせた場合において、
一方のパドル軸に配したパドルの取り付け角度θ2を、他方のパドル軸に配したパドルの取り付け角度θ1と比較して、1.3倍以上の大きさすることを特徴とする請求項1記載の攪拌乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−255807(P2007−255807A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82003(P2006−82003)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】