攪拌器、液体収納容器
【課題】簡易な構成によってインクタンク内のインク全体に対して、効果的な攪拌を実現することができる攪拌部材および液体収納容器を提供すること。
【解決手段】起き上がり小法師の原理を用いた揺動部材をインクタンク内に投入する。
【解決手段】起き上がり小法師の原理を用いた揺動部材をインクタンク内に投入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの液体を収納する液体収納容器およびその液体収納容器に収納される攪拌器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にシリアルタイプのインクジェット記録装置は、主走査方向に移動可能なキャリッジに、インクを吐出可能な記録ヘッドと、その記録ヘッドに供給するインクを収容するためのインクタンクと、が搭載されている。記録に際しては、キャリッジを主走査方向に移動させつつ、記録ヘッドの吐出口から記録媒体に向かってインクを吐出する動作と、主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を搬送する動作と、を繰り返す。このようにして、記録ヘッドから吐出されたインク滴が記録媒体上に着弾することにより、所望の記録が行なわれる。
【0003】
このようなインクジェット記録装置で用いられているインクの主流は、色材として染料を含有するインク(染料インク)であった。しかし一般に、染料インクは耐光性および耐ガス性がやや低く、その染料インクによる記録物は、屋外掲示のような特殊用途において耐久性のある画像堅牢性を提供しにくい場合があった。
【0004】
そこで近年、色材として顔料を含有するインク(顔料インク)を用いる記録装置が提供されてきている。顔料インクは耐光性および耐ガス性に優れ、それによる記録物も充分な画像堅牢性を発揮することができる。但し、顔料インクは、染料インクとは異なり色材の分散性を考慮した取り扱いが要求される。均一な記録を得るためには、色材を溶媒中に分散させる必要がある。
【0005】
顔料インク中の顔料分子は、染料インク中の染料分子のようにインク溶液中には溶解せず、分散した状態で浮遊している。顔料インクを収容するインクタンクが暫く静置されたままであると、インクタンク内の顔料粒子が重力によって徐々に沈降し、インクタンクの高さ方向において、顔料粒子の濃度傾斜が発生することがあった。すなわち、インクタンクの底部には色材濃度の高い層が位置し、その上部には色材濃度の低い層が位置することになる。この状態のインクタンクから記録ヘッドにインクを供給して画像の記録動作を開始し、そして記録動作を継続した場合には、記録動作の初期段階と後期段階において、記録に濃度差が発生するおそれがある。
【0006】
このように、インクタンクの使用に伴って、記録ヘッドから吐出されるインクの色材濃度が変化した場合、インクタンクの使用初期と使用後期において記録に濃度差を発生させるだけではない。例えば、複数のカラーインクを用い、所定のカラーバランスのもとに色相を表現するカラーインクジェット記録システムでは、カラーバランスが崩れるおそれがある。この場合記録物には、より顕著な濃度差が認識されることになる。
【0007】
インクタンク内に残存するインク量に拘わらず、記録ヘッドから吐出されるインク滴の色材濃度を、一定の濃度範囲内に維持するためには、少なくとも記録動作中に、インクタンク内の顔料分子が一様に分散していることが望まれる。
【0008】
このような顔料分子の一様な分散を実現するために、インクタンクの内部に、顔料分子を攪拌するための攪拌体を設ける構成が特許文献1に提案されている。
【0009】
特許文献1には、手動操作が可能な攪拌体を備えたインクパックが開示されている。この攪拌体は、インクパックに対して、外部から挿入される形状になっている。外部に突出している攪拌体の一部は、インクパック内に延在している攪拌体の攪拌部を動作させるための操作部として作用する。つまり、ユーザが定期的あるいは必要に応じて攪拌部を揺動させることにより、インクパック内のインクを攪拌して顔料分子を分散させることができる。
【0010】
また、特許文献1には、記録動作時にキャリッジが移動する際の慣性力を利用して、タンク内のインクを攪拌させる揺動部材を設けたインクカートリッジが開示されている。一例として、インクカートリッジケースと一体に成形された撹拌体が示されている。この例では、攪拌体がインクカートリッジケースの天井から底部に向けて垂れ下がるように延出し、その下端部に円柱状の錘部が形成されている。その攪拌体は、キャリッジの加速・停止・反転の動作に伴う慣性力によって、天井の付け根部分を支点としてキャリッジの移動方向に揺動し、インクカートリッジ内のインクを攪拌する。
【0011】
さらにまた、特許文献1には、他の例として、インクカートリッジケースに固定されずに、インクカートリッジ内の底面を自由に移動可能な撹拌体も開示されている。この攪拌体は、キャリッジの加速・停止・反転の動作に伴う慣性力によって、インクカートリッジ内の底面を移動してインクを攪拌する。
【0012】
また、特許文献2には、キャリッジの移動に伴う慣性力によって、揺動中心軸の左右に揺動する軸状錘と、この軸状錘と一体になって左右に揺動する複数のフィンと、を備えた攪拌機構が開示されている。この構成によれば、複数枚のフィンがインクカートリッジの高さ方向に並列に配置されているため、インクカートリッジ内の上層部から下層部にかけてインクが均等に攪拌される。
【0013】
【特許文献1】特開2005−066520号公報
【特許文献2】特開2004−216761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
例えば、特許文献1に記載された、手動式の揺動部材を備えたインクカートリッジの構成では、その揺動部材の動きの自由度が少ないことから、インクカートリッジ内の限られた領域のインクしか攪拌することができない。特に、攪拌動作の支点となる揺動部材とインクカートリッジとの接合部分の近傍では、揺動部材の移動域が狭いために充分な攪拌効果が得られない。
【0015】
また、特許文献1に開示された、円柱状の錘部を設けた構成では、慣性力を効率的に利用してはいるものの、やはり攪拌可能な範囲が充分でない。さらに、インクカートリッジ内の底面を自由に移動可能な撹拌体を用いた場合には、インクカートリッジの底部近傍のインクに対する攪拌は期待できるものの、その撹拌体から離れているカートリッジ上層部領域に対する撹拌は期待できない。
【0016】
一方、特許文献2に開示されている構成では、複数のフィンがインクカートリッジの高さ方向に配備されているため、高さ方向における攪拌の均等性はある程度期待できる。しかし、インクカートリッジ内の中心軸付近はフィンの揺動量が小さいため、撹拌効果は小さい。また、このように複数のフィンや回転軸を備える揺動部材は複雑な構成となるため、インクカートリッジ自体も高価なものになってしまう。
【0017】
上述したように、インクカートリッジ内における顔料インクは、顔料粒子が重力にしたがって徐々に沈降することにより、インクカートリッジの高さ方向に顔料粒子の濃度傾斜が生じる。インクカートリッジ内の濃度差を解消するには、インクカートリッジの下層に沈降する高濃度のインクを積極的に上層部に巻き上げるか、もしくは上層部の低濃度のインクを下層部に流し込むように、インクを攪拌することが効率的である。
【0018】
よって本発明は、簡易な構成によってインクタンク内のインク全体に対して、効果的な攪拌を実現することができる攪拌部材および液体収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そのため本発明の攪拌器は、液体収納容器に収められ、前記液体収納容器内の液体を攪拌する攪拌器において、前記攪拌器は本体部と流路部とを含み、前記流路部は、それぞれが連通した複数の開口部を備え、前記流路部を含む前記本体部は、安定姿勢と、該安定姿勢の時よりも高い位置に重心が位置する不安定姿勢と、の間で変位可能であり、前記本体部が前記安定姿勢の時に、前記流路部の複数の前記開口部の内の少なくとも2つの前記開口部の位置関係は、上下の位置関係であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の液体収納容器は、上記の攪拌器を含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、攪拌器は、本体部と流路部とを含み、その流路部にはそれぞれが連通した複数の開口部を備え、流路部を含む本体部は、安定姿勢と、安定姿勢の時よりも高い位置に重心が位置する不安定姿勢との間で変位可能にする。また、本体部が安定姿勢の時に、流路部の複数の前記開口部の内の少なくとも2つの開口部の位置関係は、上下の位置関係にする。また、液体収納容器は、上記の攪拌器を含むものとする。これによって、簡易な構成によってインクタンク内のインク全体に対して、効果的な攪拌を実現することができる攪拌部材および液体収納容器を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の攪拌部材を備えた液体収納容器を適用することが可能な、インクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)を示した外観斜視図である。この記録装置は、記録媒体に対して記録を行なう装置本体M1000と、記録媒体を装置内へ供給するための給紙部M3022と、記録後の記録媒体を受容する排紙トレイM1004と、から主に構成されている。
【0023】
図2は、装置本体M1000の内部機構を示す斜視図である。装置本体M1000の主な内部機構は、シャーシM3019に設置・保護されている。キャリッジM4001は、不図示の記録ヘッドカートリッジを搭載した状態で矢印X方向の主走査方向へ往復移動が可能になっている。記録ヘッドカートリッジには、後述するようにインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドともいう)が備えられている。記録動作コマンドが入力されると、給紙部M3022に積載されている複数の記録媒体から1枚が給紙され、キャリッジM4001上の記録ヘッドカートリッジによって記録可能な位置まで搬送される。その後、キャリッジM4001が主走査方向(矢印X方向)に移動しながら記録ヘッドカートリッジの記録ヘッドが記録データに基づいてインクを吐出する記録走査と、搬送手段によって記録媒体を副走査方向(矢印Y方向)へ搬送する搬送動作と、を繰り返す。このような動作により、記録媒体上に順次記録が行われる。
【0024】
図3は、記録ヘッドカートリッジH1001とインクを収納可能なインクタンク(液体収納容器)1とを示した斜視図である。記録ヘッドカートリッジH1001の一側には、吐出口からインク滴を吐出可能なインクジェット記録ヘッドH1000が備えられ、その反対側には、記録ヘッドH1000にインクを供給するためのインクタンク1が着脱可能に装着される。本実施形態の記録ヘッドカートリッジH1001には、6色分のインクタンク1が独立に装着できるようになっている。
【0025】
インクタンク1を記録ヘッドカートリッジH1001に装着すると、インクタンク1に設けられているインク供給口403(図4参照)が記録ヘッドH1000に接続される。インクタンク1のインク収納部(液体収納部)内のインクは、インク供給口403を経由して、重力方向下向きに、記録ヘッドH1000から記録媒体に向かって吐出される。このようにインクタンクを記録装置に装着した状態において、インク供給口が重力方向の下向きに位置する。本実施形態においては、インク供給口が重力方向下向きとなり、インク供給口から記録ヘッドに対してインクが供給されるときのインクタンクの姿勢を、インクタンクの使用状態における姿勢と定義する。また、インクタンクと記録ヘッドとが一体化された記録ヘッドカートリッジにおいては、記録ヘッドが記録媒体に向かって重力方向の下向きにインクを吐出する時の記録ヘッドカートリッジの姿勢を、記録ヘッドカートリッジの使用状態における姿勢と定義する。
【0026】
記録ヘッドH1000には、微細な記録素子が複数配列されており、各記録素子にはインクを吐出させるための機構が備わっている。例えば、発熱抵抗体(ヒータ)を有する電気熱変換素子が配備された構成では、インクの吐出信号に応じて、個々の電気熱変換素子に電圧パルスが印加される。これにより、発熱抵抗体の近傍のインクが急激に加熱され、そのときに生じる膜沸騰の作用によってインク滴が吐出口から吐出される。
【0027】
(インクタンク全体の構成)
図4は、インクタンク1の外観斜視図である。インクタンク1は、内部にインク収納室を備えた容器であり、主に、インク容器筐体401と蓋部材402から構成されている。インクタンク1の底部には、記録ヘッドH1000にインクを供給するためのインク供給口403が備えられている。
【0028】
図5は、インクタンク1の分解斜視図である。インクタンク1のインク容器筐体401は、例えばポリプロピレンで形成されており、その内部には、インクを攪拌するための揺動部材100が収容される。インク容器筐体401の開口部は、蓋部材402によって封じられている。インク容器筐体401の内部は仕切壁413によって2つの空間に仕切られており、その仕切壁413の下側には、仕切壁413によって仕切られる2つの空間を連通する連通部414が形成されている。この2つの空間の内、一方の揺動部材100が収容される空間は、インクが収容されるインク収容室411であり、連通部414を除いて密閉されている。また、他方の空間は負圧発生室412である。負圧発生室412に面する蓋部材402の部分には、インク消費に伴って大気を導入するための大気連通口417が形成されている。また、負圧発生室412に面するインク容器筐体401の部分には、記録ヘッドH1000にインクを供給するための供給口403が形成されている。供給口403には、インクを保持するためのメニスカス形成部材404が備えられている。メニスカス形成部材404内にはインクによるメニスカスが形成され、外部からの気泡がインク容器筐体401内に侵入しないようになっている。
【0029】
負圧発生室412内には、ポリプロピレンの繊維材料から形成されて毛管力を有する第1および第2の2つの負圧発生部材415および416が収納されている。負圧発生室内412内において、これらの負圧発生部材415および416は互いに圧接されて収納されている。負圧発生部材415および416は、ポリプロピレンに限定するものではなく、種々の多孔質または繊維部材を含むインクを吸収可能な吸収体であってもよい。
【0030】
第1の負圧発生部材415の毛管力をP1、第2の負圧発生部材416の毛管力をP2、メニスカス形成部材404の毛管力をP3とすると、これらの毛管力はP1<P2<P3の関係にある。
【0031】
このような構成において、負圧発生室412内のインクが記録ヘッドによって消費されると、大気連通口417から負圧発生室412に空気が導入され、その空気が連通部414を通してインク収容室411に入る。このようなインク収容室411へ空気の導入に代わって、連通部414を通して、インク収容室411から負圧発生室412内の負圧発生部材415、416にインクが充填される。このように連通部414を通して、空気とインクの気液交換が行われる。
【0032】
(攪拌機構の構成)
図6は、揺動部材100の設置状態を説明するための斜視図であり、図7(a)、(b)は、その揺動部材100を拡大して示した図である。揺動部材100はその内部に液体の流路を形成する中空部104を備え、更に上側開口部103と1つ以上の下側開口部102を備えている。また、その底部は球面形状となるように形成され、かつ、錘106が底部近傍に設けられている。このように、揺動部材100は底部が球面形状であり底部に錘106を備えているため、起き上がり小法師の原理で上側開口部103がインク収容室411の天面方向、下側開口部102が底面方向を向いた姿勢を保つように揺動する。つまり、揺動部材100の重心は錘106によって揺動部材100の底部近傍になるように設定されており、揺動部材100が傾くとその重心の位置は高くなるようになっている。そのため、揺動部材100が傾いた際には重心を最も低い位置に戻すように揺動部材100は動作(揺動)する。
【0033】
ここで揺動部材100は、インク収容室411に収容される液体より比重が重く、インク収容室411に液体とともに収容されたときに、インク収容室411の底面に揺動部材100の底部が接する。
【0034】
(攪拌機構の動作および作用)
図10(a)から(d)は、図2におけるキャリッジの動作を説明するための記録装置の要部を示した概略構成図である。図11(a)から(h)は、本実施形態における揺動部材100の動作、および揺動部材100の中空部104内に生じるインクの流れを説明するための図であり、インクタンクの底部に沈降した濃い顔料成分のインクが撹拌される様子を表している。また図11(a)から(h)は、図4のX−X線による断面図でもある。
【0035】
図10(a)から(d)を用いて、液体収容器であるインクタンク1を装着したキャリッジM4001の動作について説明する。
【0036】
キャリッジM4001は、図10(a)のようなホームポジションの位置から、記録装置M1000のシャーシに設置されたキャリッジシャフトM3020に沿って、矢印X2方向に移動する(図10(b)参照)。そして、記録媒体の記録幅、もしくは、揺動部材100を動作させるために必要な距離だけ、キャリッジM4001を移動させて、それを図10(c)のように位置させる。そして、その位置からキャリッジM4001の移動方向を反転させて、それを矢印X1方向に移動させる(図10(d)参照)。そして、図10(a)の位置から、再び、キャリッジM4001の移動方向を反転させ、その後、その矢印X2方向および矢印X1方向の往復移動を記録に必要な回数だけ反復する。キャリッジM4001は、その移動方向が反転する際に、減速、停止、および反対方向への加速が行なわれる。このように本実施形態においては、記録のためのキャリッジM4001の往復移動に先立って、図10(b)から(d)のように、少なくとも1回はキャリッジM4001を往復移動させる。これにより、後述するように記録動作に先立ってインクタンク1内のインクを攪拌することができる。
【0037】
図11(a)から(h)を用いて、キャリッジM4001の往復移動に伴うインクタンク1内の揺動部材100の動作について説明する。図11(a)は、キャリッジM4001が図10(a)のようにホームポジションに静置され、インク収容室411内の揺動部材100は、その上側開口部103側がインク収容室411の底面に対して垂直に直立して静置している状態を示す。
【0038】
キャリッジM4001が図10(a)の位置から、図10(b)のようにX2方向に動き出したとき、図11(b)に示すように、慣性力の働きにより揺動部材100が矢印S1方向に揺動する。そして、キャリッジM4001の移動による慣性力がインクの抵抗や重力の作用により揺動部材100に働かなくなると、図11(c)に示すように、揺動部材100は起き上がり小法師の復元力の作用によってS2方向に向かって揺動する。
【0039】
ここで、インク収容室411の底部には還状のホイール105が固定されており、キャリッジM4001が往復移動しても、揺動部材100のインク収容室411に対する相対位置がズレないよう構成されている。このホイール105は、インク収容室411の底部に固定されていなくてもよく、揺動部材100の揺動時に、上側開口部103が下側開口部102より、移動距離が長くなる形態であればよい。
【0040】
そして、図10(c)の位置においてキャリッジM4001の移動方向がX2方向からX1方向へ反転したときに、図11(d)に示すように、揺動部材100に矢印X2方向の慣性力が働いて、その揺動部材100が矢印S2方向に揺動する。そして揺動部材100は、図11(d)に示すようにインク収容室411の内壁に接した後、その接したときの反力および起き上がりこぼしの復元力の作用によってS1方向に戻される。そのように揺動部材100がS1方向に戻されている間に、図10(a)の位置においてキャリッジM4001の移動方向がX2方向からX1方向へ反転すると、揺動部材100には、さらに矢印X1方向に慣性力が働く。その慣性力により、揺動部材100は、図11(e)に示すように矢印S1方向に揺動する。
【0041】
このように、キャリッジM4001が図10(a)から(d)の移動を連続的に繰り返すことにより、揺動部材100は、図10(d)、(e)の揺動を繰り返す。本実施形態では、揺動部材100が重力と反力により揺動する方向を反転させる(例えば、S1方向からS2方向)間に、キャリッジM4001が反転を行うため、比較的小さい慣性力によって揺動部材を揺動させることができる。
【0042】
次に、図11(a)から(e)を用いて、インク収容室411の底部に沈降した顔料成分の濃いインクが撹拌される様子について説明する。図11(b)に示すように、揺動部材100がS1方向に揺動し始めると、その揺動部材100が揺動したことにより生じる遠心力によって、中空部104内に存在するインクには、上側開口部103から流出する流れT2が生じる。それと同時に、下側開口部102近傍で揺動部材100の外部に存在しているインクには、下側開口部102から中空部104に流入する流れT1が生じる。
【0043】
そして、揺動部材100の揺動が繰り返されると遠心力により、インクタンク1の底部に有る顔料成分の濃いインクは、図11(d)に示すように、下側開口部102から中空部104内に流入して、上側開口部102から矢印T2方向に放出される。また、図11(d),(e)のように、揺動部材100のS1方向およびS2方向の揺動が瞬間的に停止したときには、中空部104内のインクに慣性力が働いて、揺動部材100から流出するインクの流れは更に加速される。
【0044】
中空部104を経由したインクは、開口部103から流出された後、図11(e)に示すような流れT3となって、顔料成分の薄いインク中に拡散される。また、インク収容室411内のインクは、その内壁によって跳ね返るインクの流れT4によってさらに撹拌される。
【0045】
以上のような揺動部材100の揺動動作を1回もしくは複数回実施することにより、インク収容室411内のインクは、T1からT4の流れにより下層部から上層部にまで持ち上げられて撹拌される。その結果、インク収容室411の上層部のインクを含めて、インク収容室411内全体をまんべんなく撹拌することができる。
【0046】
なお、揺動部材100の揺動は連続的に実施することが望ましく、その連続的な揺動により、インク収容室411内の上部に向かってインクを巻き上げるための推進力を高めることができる。つまり、揺動部材100を連続的に揺動させることで、揺動部材100の中空部104内のインクに、流れT2を生じさせるポンピング作用を高めることができる。
【0047】
また本実施形態では、揺動部材100の揺動方向を反転させながら撹拌を行った。しかし、その揺動方向は必ずしも反転する必要は無い。慣性力によって、インク収納室の底部に位置する顔料粒子を揺動部材の中空部を経由して容器上部へ巻き上げるための充分な推進力が加えられればよく、揺動部材の一方向の揺動の後、その揺動部材が停止しても構わない。また、インク収容室411内のインクが減少して液面が下がっても、揺動部材100の中空部104がインクに没している限り、上述したようなインクの撹拌効果を得ることができる。
【0048】
いずれの構成においても、中空部104を有する揺動部材100を液体収納容器内に備え、その揺動部材100を揺動させる。これによって、その中空部104の一端側開口部から液体を中空部104内に流入させて、他端側開口部から液体を流出させるように、液体(インク)を中空部内に案内できればよい。それにより、液体収納容器内の液体を攪拌する上で効果的な液体の流れを生じさせることができる。その際、濃い顔料成分のインクはインクタンクの底部に沈降しているため、液体が中空部に流入する側の開口部は、インクタンクの底部に近い位置に配置されていることが好ましい。
【0049】
また、撹拌の効果は、インク収容室の寸法、揺動部材の内径、揺動部材の周囲長、揺動部材の表面積、揺動部材の長さ、揺動部材の比重、揺動部材の移動速度、揺動部材の移動距離、インクの粘度、接触角、インクの比重等のパラメータにより異なる。しかし、このようなパラメータは、インクタンク内のインクが揺動部材の中空部を経由して、容器内部を移動するために充分な推進力が得られるのであれば、どのように設定してもよい。タンク内のインクに作用する遠心力、および慣性力によって、このような推進力が発生するように、揺動部材100を揺動させればよい。このような揺動部材100の揺動によって、インクタンク1内のインクを撹拌することが可能になる。
【0050】
なお、本実施形態では、揺動部材100に中空部および開口部を設けて、揺動部材100の内部に液体が流れる構成としているが、これに限定するものではなく、揺動可能な本体と液体を流す流路部とに分かれている構成でもよい。
【0051】
このように、本実施形態では、起き上がり小法師の原理を用いた揺動部材をインクタンク内に投入するだけで、インクタンク内のインク全体を効果的に攪拌して、インクタンク内における濃度傾斜を少なくすることができた。そして、従来発生していたインクタンクと揺動部材の寸法バラツキによる組立不良や、インク収容室に支持固定する工程増加を解消することができた。
【0052】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態における基本的な構成は、第1の実施形態と同様であるため、以下は本実施形態の特徴的な部分についてのみ説明する。
【0053】
図8は、第2の実施形態における揺動部材の斜視図である。また、図9は、本実施形態の変形例の揺動部材の斜視図である。揺動部材200は液体の流路を形成する中空部204を備え、上側開口部203と1つ以上の下側開口部202が設けられている。また、その底部の一部はフラット形状となるように形成され、かつ、フラット形状の左右が曲面形状に形成され、かつ、重り206がフラット形状の部分に設けられている。このようフラット形状の部分が設けられていることで、開口部203を上方に向けた姿勢がとりやすく、キャリッジM4001の移動に伴って、揺動部材200は揺動することが可能であり、インクタンク内のインクを効率よく攪拌することができた。
【0054】
また揺動部材300は、液体の流路を形成する中空部304を備え、上側開口部303と1つ以上の下側開口部302とが設けられている。また、その底部は一部が窪み形状となるように形成され、かつ、重り306が底部近傍にある。このように、窪みが設けられていることで、開口部203を上方に向けた姿勢がとりやすく、キャリッジM4001の移動に伴って、揺動部材200は揺動することが可能であり、インクタンク内のインクを効率よく攪拌することができた。
【0055】
このように揺動部材の底部が球状ではなく、比較的安定して開口部を上方に向けた姿勢をとりやすくした各揺動部材においても、揺動部材をインクタンク内に投入するだけで、インクを効率よく攪拌することができた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】インクジェット記録装置を示した外観斜視図である。
【図2】装置本体の内部機構を示す斜視図である。
【図3】記録ヘッドカートリッジとインクを収納可能なインクタンクとを示した斜視図である。
【図4】インクタンクの外観斜視図である。
【図5】インクタンクの分解斜視図である。
【図6】揺動部材の設置状態を説明するための斜視図である。
【図7】(a)、(b)は、その揺動部材を拡大して示した図である。
【図8】第2の実施形態における揺動部材の斜視図である。
【図9】第2の実施形態の変形例の揺動部材の斜視図である。
【図10】(a)から(d)は、図2におけるキャリッジの動作を説明するための記録装置の要部を示した概略構成図である。
【図11】(a)から(h)は、第1の実施形態における揺動部材の動作、および揺動部材の中空部内に生じるインクの流れを説明するための図である。
【符号の説明】
【0057】
1 インクタンク
100 揺動部材
102 下側開口部
103 開口部
104 中空部
106 錘
200 揺動部材
202 下側開口部
203 開口部
204 中空部
206 錘
300 揺動部材
302 下側開口部
303 開口部
304 中空部
306 錘
411 インク収容室
M4001 キャリッジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの液体を収納する液体収納容器およびその液体収納容器に収納される攪拌器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にシリアルタイプのインクジェット記録装置は、主走査方向に移動可能なキャリッジに、インクを吐出可能な記録ヘッドと、その記録ヘッドに供給するインクを収容するためのインクタンクと、が搭載されている。記録に際しては、キャリッジを主走査方向に移動させつつ、記録ヘッドの吐出口から記録媒体に向かってインクを吐出する動作と、主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を搬送する動作と、を繰り返す。このようにして、記録ヘッドから吐出されたインク滴が記録媒体上に着弾することにより、所望の記録が行なわれる。
【0003】
このようなインクジェット記録装置で用いられているインクの主流は、色材として染料を含有するインク(染料インク)であった。しかし一般に、染料インクは耐光性および耐ガス性がやや低く、その染料インクによる記録物は、屋外掲示のような特殊用途において耐久性のある画像堅牢性を提供しにくい場合があった。
【0004】
そこで近年、色材として顔料を含有するインク(顔料インク)を用いる記録装置が提供されてきている。顔料インクは耐光性および耐ガス性に優れ、それによる記録物も充分な画像堅牢性を発揮することができる。但し、顔料インクは、染料インクとは異なり色材の分散性を考慮した取り扱いが要求される。均一な記録を得るためには、色材を溶媒中に分散させる必要がある。
【0005】
顔料インク中の顔料分子は、染料インク中の染料分子のようにインク溶液中には溶解せず、分散した状態で浮遊している。顔料インクを収容するインクタンクが暫く静置されたままであると、インクタンク内の顔料粒子が重力によって徐々に沈降し、インクタンクの高さ方向において、顔料粒子の濃度傾斜が発生することがあった。すなわち、インクタンクの底部には色材濃度の高い層が位置し、その上部には色材濃度の低い層が位置することになる。この状態のインクタンクから記録ヘッドにインクを供給して画像の記録動作を開始し、そして記録動作を継続した場合には、記録動作の初期段階と後期段階において、記録に濃度差が発生するおそれがある。
【0006】
このように、インクタンクの使用に伴って、記録ヘッドから吐出されるインクの色材濃度が変化した場合、インクタンクの使用初期と使用後期において記録に濃度差を発生させるだけではない。例えば、複数のカラーインクを用い、所定のカラーバランスのもとに色相を表現するカラーインクジェット記録システムでは、カラーバランスが崩れるおそれがある。この場合記録物には、より顕著な濃度差が認識されることになる。
【0007】
インクタンク内に残存するインク量に拘わらず、記録ヘッドから吐出されるインク滴の色材濃度を、一定の濃度範囲内に維持するためには、少なくとも記録動作中に、インクタンク内の顔料分子が一様に分散していることが望まれる。
【0008】
このような顔料分子の一様な分散を実現するために、インクタンクの内部に、顔料分子を攪拌するための攪拌体を設ける構成が特許文献1に提案されている。
【0009】
特許文献1には、手動操作が可能な攪拌体を備えたインクパックが開示されている。この攪拌体は、インクパックに対して、外部から挿入される形状になっている。外部に突出している攪拌体の一部は、インクパック内に延在している攪拌体の攪拌部を動作させるための操作部として作用する。つまり、ユーザが定期的あるいは必要に応じて攪拌部を揺動させることにより、インクパック内のインクを攪拌して顔料分子を分散させることができる。
【0010】
また、特許文献1には、記録動作時にキャリッジが移動する際の慣性力を利用して、タンク内のインクを攪拌させる揺動部材を設けたインクカートリッジが開示されている。一例として、インクカートリッジケースと一体に成形された撹拌体が示されている。この例では、攪拌体がインクカートリッジケースの天井から底部に向けて垂れ下がるように延出し、その下端部に円柱状の錘部が形成されている。その攪拌体は、キャリッジの加速・停止・反転の動作に伴う慣性力によって、天井の付け根部分を支点としてキャリッジの移動方向に揺動し、インクカートリッジ内のインクを攪拌する。
【0011】
さらにまた、特許文献1には、他の例として、インクカートリッジケースに固定されずに、インクカートリッジ内の底面を自由に移動可能な撹拌体も開示されている。この攪拌体は、キャリッジの加速・停止・反転の動作に伴う慣性力によって、インクカートリッジ内の底面を移動してインクを攪拌する。
【0012】
また、特許文献2には、キャリッジの移動に伴う慣性力によって、揺動中心軸の左右に揺動する軸状錘と、この軸状錘と一体になって左右に揺動する複数のフィンと、を備えた攪拌機構が開示されている。この構成によれば、複数枚のフィンがインクカートリッジの高さ方向に並列に配置されているため、インクカートリッジ内の上層部から下層部にかけてインクが均等に攪拌される。
【0013】
【特許文献1】特開2005−066520号公報
【特許文献2】特開2004−216761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
例えば、特許文献1に記載された、手動式の揺動部材を備えたインクカートリッジの構成では、その揺動部材の動きの自由度が少ないことから、インクカートリッジ内の限られた領域のインクしか攪拌することができない。特に、攪拌動作の支点となる揺動部材とインクカートリッジとの接合部分の近傍では、揺動部材の移動域が狭いために充分な攪拌効果が得られない。
【0015】
また、特許文献1に開示された、円柱状の錘部を設けた構成では、慣性力を効率的に利用してはいるものの、やはり攪拌可能な範囲が充分でない。さらに、インクカートリッジ内の底面を自由に移動可能な撹拌体を用いた場合には、インクカートリッジの底部近傍のインクに対する攪拌は期待できるものの、その撹拌体から離れているカートリッジ上層部領域に対する撹拌は期待できない。
【0016】
一方、特許文献2に開示されている構成では、複数のフィンがインクカートリッジの高さ方向に配備されているため、高さ方向における攪拌の均等性はある程度期待できる。しかし、インクカートリッジ内の中心軸付近はフィンの揺動量が小さいため、撹拌効果は小さい。また、このように複数のフィンや回転軸を備える揺動部材は複雑な構成となるため、インクカートリッジ自体も高価なものになってしまう。
【0017】
上述したように、インクカートリッジ内における顔料インクは、顔料粒子が重力にしたがって徐々に沈降することにより、インクカートリッジの高さ方向に顔料粒子の濃度傾斜が生じる。インクカートリッジ内の濃度差を解消するには、インクカートリッジの下層に沈降する高濃度のインクを積極的に上層部に巻き上げるか、もしくは上層部の低濃度のインクを下層部に流し込むように、インクを攪拌することが効率的である。
【0018】
よって本発明は、簡易な構成によってインクタンク内のインク全体に対して、効果的な攪拌を実現することができる攪拌部材および液体収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そのため本発明の攪拌器は、液体収納容器に収められ、前記液体収納容器内の液体を攪拌する攪拌器において、前記攪拌器は本体部と流路部とを含み、前記流路部は、それぞれが連通した複数の開口部を備え、前記流路部を含む前記本体部は、安定姿勢と、該安定姿勢の時よりも高い位置に重心が位置する不安定姿勢と、の間で変位可能であり、前記本体部が前記安定姿勢の時に、前記流路部の複数の前記開口部の内の少なくとも2つの前記開口部の位置関係は、上下の位置関係であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の液体収納容器は、上記の攪拌器を含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、攪拌器は、本体部と流路部とを含み、その流路部にはそれぞれが連通した複数の開口部を備え、流路部を含む本体部は、安定姿勢と、安定姿勢の時よりも高い位置に重心が位置する不安定姿勢との間で変位可能にする。また、本体部が安定姿勢の時に、流路部の複数の前記開口部の内の少なくとも2つの開口部の位置関係は、上下の位置関係にする。また、液体収納容器は、上記の攪拌器を含むものとする。これによって、簡易な構成によってインクタンク内のインク全体に対して、効果的な攪拌を実現することができる攪拌部材および液体収納容器を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の攪拌部材を備えた液体収納容器を適用することが可能な、インクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)を示した外観斜視図である。この記録装置は、記録媒体に対して記録を行なう装置本体M1000と、記録媒体を装置内へ供給するための給紙部M3022と、記録後の記録媒体を受容する排紙トレイM1004と、から主に構成されている。
【0023】
図2は、装置本体M1000の内部機構を示す斜視図である。装置本体M1000の主な内部機構は、シャーシM3019に設置・保護されている。キャリッジM4001は、不図示の記録ヘッドカートリッジを搭載した状態で矢印X方向の主走査方向へ往復移動が可能になっている。記録ヘッドカートリッジには、後述するようにインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドともいう)が備えられている。記録動作コマンドが入力されると、給紙部M3022に積載されている複数の記録媒体から1枚が給紙され、キャリッジM4001上の記録ヘッドカートリッジによって記録可能な位置まで搬送される。その後、キャリッジM4001が主走査方向(矢印X方向)に移動しながら記録ヘッドカートリッジの記録ヘッドが記録データに基づいてインクを吐出する記録走査と、搬送手段によって記録媒体を副走査方向(矢印Y方向)へ搬送する搬送動作と、を繰り返す。このような動作により、記録媒体上に順次記録が行われる。
【0024】
図3は、記録ヘッドカートリッジH1001とインクを収納可能なインクタンク(液体収納容器)1とを示した斜視図である。記録ヘッドカートリッジH1001の一側には、吐出口からインク滴を吐出可能なインクジェット記録ヘッドH1000が備えられ、その反対側には、記録ヘッドH1000にインクを供給するためのインクタンク1が着脱可能に装着される。本実施形態の記録ヘッドカートリッジH1001には、6色分のインクタンク1が独立に装着できるようになっている。
【0025】
インクタンク1を記録ヘッドカートリッジH1001に装着すると、インクタンク1に設けられているインク供給口403(図4参照)が記録ヘッドH1000に接続される。インクタンク1のインク収納部(液体収納部)内のインクは、インク供給口403を経由して、重力方向下向きに、記録ヘッドH1000から記録媒体に向かって吐出される。このようにインクタンクを記録装置に装着した状態において、インク供給口が重力方向の下向きに位置する。本実施形態においては、インク供給口が重力方向下向きとなり、インク供給口から記録ヘッドに対してインクが供給されるときのインクタンクの姿勢を、インクタンクの使用状態における姿勢と定義する。また、インクタンクと記録ヘッドとが一体化された記録ヘッドカートリッジにおいては、記録ヘッドが記録媒体に向かって重力方向の下向きにインクを吐出する時の記録ヘッドカートリッジの姿勢を、記録ヘッドカートリッジの使用状態における姿勢と定義する。
【0026】
記録ヘッドH1000には、微細な記録素子が複数配列されており、各記録素子にはインクを吐出させるための機構が備わっている。例えば、発熱抵抗体(ヒータ)を有する電気熱変換素子が配備された構成では、インクの吐出信号に応じて、個々の電気熱変換素子に電圧パルスが印加される。これにより、発熱抵抗体の近傍のインクが急激に加熱され、そのときに生じる膜沸騰の作用によってインク滴が吐出口から吐出される。
【0027】
(インクタンク全体の構成)
図4は、インクタンク1の外観斜視図である。インクタンク1は、内部にインク収納室を備えた容器であり、主に、インク容器筐体401と蓋部材402から構成されている。インクタンク1の底部には、記録ヘッドH1000にインクを供給するためのインク供給口403が備えられている。
【0028】
図5は、インクタンク1の分解斜視図である。インクタンク1のインク容器筐体401は、例えばポリプロピレンで形成されており、その内部には、インクを攪拌するための揺動部材100が収容される。インク容器筐体401の開口部は、蓋部材402によって封じられている。インク容器筐体401の内部は仕切壁413によって2つの空間に仕切られており、その仕切壁413の下側には、仕切壁413によって仕切られる2つの空間を連通する連通部414が形成されている。この2つの空間の内、一方の揺動部材100が収容される空間は、インクが収容されるインク収容室411であり、連通部414を除いて密閉されている。また、他方の空間は負圧発生室412である。負圧発生室412に面する蓋部材402の部分には、インク消費に伴って大気を導入するための大気連通口417が形成されている。また、負圧発生室412に面するインク容器筐体401の部分には、記録ヘッドH1000にインクを供給するための供給口403が形成されている。供給口403には、インクを保持するためのメニスカス形成部材404が備えられている。メニスカス形成部材404内にはインクによるメニスカスが形成され、外部からの気泡がインク容器筐体401内に侵入しないようになっている。
【0029】
負圧発生室412内には、ポリプロピレンの繊維材料から形成されて毛管力を有する第1および第2の2つの負圧発生部材415および416が収納されている。負圧発生室内412内において、これらの負圧発生部材415および416は互いに圧接されて収納されている。負圧発生部材415および416は、ポリプロピレンに限定するものではなく、種々の多孔質または繊維部材を含むインクを吸収可能な吸収体であってもよい。
【0030】
第1の負圧発生部材415の毛管力をP1、第2の負圧発生部材416の毛管力をP2、メニスカス形成部材404の毛管力をP3とすると、これらの毛管力はP1<P2<P3の関係にある。
【0031】
このような構成において、負圧発生室412内のインクが記録ヘッドによって消費されると、大気連通口417から負圧発生室412に空気が導入され、その空気が連通部414を通してインク収容室411に入る。このようなインク収容室411へ空気の導入に代わって、連通部414を通して、インク収容室411から負圧発生室412内の負圧発生部材415、416にインクが充填される。このように連通部414を通して、空気とインクの気液交換が行われる。
【0032】
(攪拌機構の構成)
図6は、揺動部材100の設置状態を説明するための斜視図であり、図7(a)、(b)は、その揺動部材100を拡大して示した図である。揺動部材100はその内部に液体の流路を形成する中空部104を備え、更に上側開口部103と1つ以上の下側開口部102を備えている。また、その底部は球面形状となるように形成され、かつ、錘106が底部近傍に設けられている。このように、揺動部材100は底部が球面形状であり底部に錘106を備えているため、起き上がり小法師の原理で上側開口部103がインク収容室411の天面方向、下側開口部102が底面方向を向いた姿勢を保つように揺動する。つまり、揺動部材100の重心は錘106によって揺動部材100の底部近傍になるように設定されており、揺動部材100が傾くとその重心の位置は高くなるようになっている。そのため、揺動部材100が傾いた際には重心を最も低い位置に戻すように揺動部材100は動作(揺動)する。
【0033】
ここで揺動部材100は、インク収容室411に収容される液体より比重が重く、インク収容室411に液体とともに収容されたときに、インク収容室411の底面に揺動部材100の底部が接する。
【0034】
(攪拌機構の動作および作用)
図10(a)から(d)は、図2におけるキャリッジの動作を説明するための記録装置の要部を示した概略構成図である。図11(a)から(h)は、本実施形態における揺動部材100の動作、および揺動部材100の中空部104内に生じるインクの流れを説明するための図であり、インクタンクの底部に沈降した濃い顔料成分のインクが撹拌される様子を表している。また図11(a)から(h)は、図4のX−X線による断面図でもある。
【0035】
図10(a)から(d)を用いて、液体収容器であるインクタンク1を装着したキャリッジM4001の動作について説明する。
【0036】
キャリッジM4001は、図10(a)のようなホームポジションの位置から、記録装置M1000のシャーシに設置されたキャリッジシャフトM3020に沿って、矢印X2方向に移動する(図10(b)参照)。そして、記録媒体の記録幅、もしくは、揺動部材100を動作させるために必要な距離だけ、キャリッジM4001を移動させて、それを図10(c)のように位置させる。そして、その位置からキャリッジM4001の移動方向を反転させて、それを矢印X1方向に移動させる(図10(d)参照)。そして、図10(a)の位置から、再び、キャリッジM4001の移動方向を反転させ、その後、その矢印X2方向および矢印X1方向の往復移動を記録に必要な回数だけ反復する。キャリッジM4001は、その移動方向が反転する際に、減速、停止、および反対方向への加速が行なわれる。このように本実施形態においては、記録のためのキャリッジM4001の往復移動に先立って、図10(b)から(d)のように、少なくとも1回はキャリッジM4001を往復移動させる。これにより、後述するように記録動作に先立ってインクタンク1内のインクを攪拌することができる。
【0037】
図11(a)から(h)を用いて、キャリッジM4001の往復移動に伴うインクタンク1内の揺動部材100の動作について説明する。図11(a)は、キャリッジM4001が図10(a)のようにホームポジションに静置され、インク収容室411内の揺動部材100は、その上側開口部103側がインク収容室411の底面に対して垂直に直立して静置している状態を示す。
【0038】
キャリッジM4001が図10(a)の位置から、図10(b)のようにX2方向に動き出したとき、図11(b)に示すように、慣性力の働きにより揺動部材100が矢印S1方向に揺動する。そして、キャリッジM4001の移動による慣性力がインクの抵抗や重力の作用により揺動部材100に働かなくなると、図11(c)に示すように、揺動部材100は起き上がり小法師の復元力の作用によってS2方向に向かって揺動する。
【0039】
ここで、インク収容室411の底部には還状のホイール105が固定されており、キャリッジM4001が往復移動しても、揺動部材100のインク収容室411に対する相対位置がズレないよう構成されている。このホイール105は、インク収容室411の底部に固定されていなくてもよく、揺動部材100の揺動時に、上側開口部103が下側開口部102より、移動距離が長くなる形態であればよい。
【0040】
そして、図10(c)の位置においてキャリッジM4001の移動方向がX2方向からX1方向へ反転したときに、図11(d)に示すように、揺動部材100に矢印X2方向の慣性力が働いて、その揺動部材100が矢印S2方向に揺動する。そして揺動部材100は、図11(d)に示すようにインク収容室411の内壁に接した後、その接したときの反力および起き上がりこぼしの復元力の作用によってS1方向に戻される。そのように揺動部材100がS1方向に戻されている間に、図10(a)の位置においてキャリッジM4001の移動方向がX2方向からX1方向へ反転すると、揺動部材100には、さらに矢印X1方向に慣性力が働く。その慣性力により、揺動部材100は、図11(e)に示すように矢印S1方向に揺動する。
【0041】
このように、キャリッジM4001が図10(a)から(d)の移動を連続的に繰り返すことにより、揺動部材100は、図10(d)、(e)の揺動を繰り返す。本実施形態では、揺動部材100が重力と反力により揺動する方向を反転させる(例えば、S1方向からS2方向)間に、キャリッジM4001が反転を行うため、比較的小さい慣性力によって揺動部材を揺動させることができる。
【0042】
次に、図11(a)から(e)を用いて、インク収容室411の底部に沈降した顔料成分の濃いインクが撹拌される様子について説明する。図11(b)に示すように、揺動部材100がS1方向に揺動し始めると、その揺動部材100が揺動したことにより生じる遠心力によって、中空部104内に存在するインクには、上側開口部103から流出する流れT2が生じる。それと同時に、下側開口部102近傍で揺動部材100の外部に存在しているインクには、下側開口部102から中空部104に流入する流れT1が生じる。
【0043】
そして、揺動部材100の揺動が繰り返されると遠心力により、インクタンク1の底部に有る顔料成分の濃いインクは、図11(d)に示すように、下側開口部102から中空部104内に流入して、上側開口部102から矢印T2方向に放出される。また、図11(d),(e)のように、揺動部材100のS1方向およびS2方向の揺動が瞬間的に停止したときには、中空部104内のインクに慣性力が働いて、揺動部材100から流出するインクの流れは更に加速される。
【0044】
中空部104を経由したインクは、開口部103から流出された後、図11(e)に示すような流れT3となって、顔料成分の薄いインク中に拡散される。また、インク収容室411内のインクは、その内壁によって跳ね返るインクの流れT4によってさらに撹拌される。
【0045】
以上のような揺動部材100の揺動動作を1回もしくは複数回実施することにより、インク収容室411内のインクは、T1からT4の流れにより下層部から上層部にまで持ち上げられて撹拌される。その結果、インク収容室411の上層部のインクを含めて、インク収容室411内全体をまんべんなく撹拌することができる。
【0046】
なお、揺動部材100の揺動は連続的に実施することが望ましく、その連続的な揺動により、インク収容室411内の上部に向かってインクを巻き上げるための推進力を高めることができる。つまり、揺動部材100を連続的に揺動させることで、揺動部材100の中空部104内のインクに、流れT2を生じさせるポンピング作用を高めることができる。
【0047】
また本実施形態では、揺動部材100の揺動方向を反転させながら撹拌を行った。しかし、その揺動方向は必ずしも反転する必要は無い。慣性力によって、インク収納室の底部に位置する顔料粒子を揺動部材の中空部を経由して容器上部へ巻き上げるための充分な推進力が加えられればよく、揺動部材の一方向の揺動の後、その揺動部材が停止しても構わない。また、インク収容室411内のインクが減少して液面が下がっても、揺動部材100の中空部104がインクに没している限り、上述したようなインクの撹拌効果を得ることができる。
【0048】
いずれの構成においても、中空部104を有する揺動部材100を液体収納容器内に備え、その揺動部材100を揺動させる。これによって、その中空部104の一端側開口部から液体を中空部104内に流入させて、他端側開口部から液体を流出させるように、液体(インク)を中空部内に案内できればよい。それにより、液体収納容器内の液体を攪拌する上で効果的な液体の流れを生じさせることができる。その際、濃い顔料成分のインクはインクタンクの底部に沈降しているため、液体が中空部に流入する側の開口部は、インクタンクの底部に近い位置に配置されていることが好ましい。
【0049】
また、撹拌の効果は、インク収容室の寸法、揺動部材の内径、揺動部材の周囲長、揺動部材の表面積、揺動部材の長さ、揺動部材の比重、揺動部材の移動速度、揺動部材の移動距離、インクの粘度、接触角、インクの比重等のパラメータにより異なる。しかし、このようなパラメータは、インクタンク内のインクが揺動部材の中空部を経由して、容器内部を移動するために充分な推進力が得られるのであれば、どのように設定してもよい。タンク内のインクに作用する遠心力、および慣性力によって、このような推進力が発生するように、揺動部材100を揺動させればよい。このような揺動部材100の揺動によって、インクタンク1内のインクを撹拌することが可能になる。
【0050】
なお、本実施形態では、揺動部材100に中空部および開口部を設けて、揺動部材100の内部に液体が流れる構成としているが、これに限定するものではなく、揺動可能な本体と液体を流す流路部とに分かれている構成でもよい。
【0051】
このように、本実施形態では、起き上がり小法師の原理を用いた揺動部材をインクタンク内に投入するだけで、インクタンク内のインク全体を効果的に攪拌して、インクタンク内における濃度傾斜を少なくすることができた。そして、従来発生していたインクタンクと揺動部材の寸法バラツキによる組立不良や、インク収容室に支持固定する工程増加を解消することができた。
【0052】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態における基本的な構成は、第1の実施形態と同様であるため、以下は本実施形態の特徴的な部分についてのみ説明する。
【0053】
図8は、第2の実施形態における揺動部材の斜視図である。また、図9は、本実施形態の変形例の揺動部材の斜視図である。揺動部材200は液体の流路を形成する中空部204を備え、上側開口部203と1つ以上の下側開口部202が設けられている。また、その底部の一部はフラット形状となるように形成され、かつ、フラット形状の左右が曲面形状に形成され、かつ、重り206がフラット形状の部分に設けられている。このようフラット形状の部分が設けられていることで、開口部203を上方に向けた姿勢がとりやすく、キャリッジM4001の移動に伴って、揺動部材200は揺動することが可能であり、インクタンク内のインクを効率よく攪拌することができた。
【0054】
また揺動部材300は、液体の流路を形成する中空部304を備え、上側開口部303と1つ以上の下側開口部302とが設けられている。また、その底部は一部が窪み形状となるように形成され、かつ、重り306が底部近傍にある。このように、窪みが設けられていることで、開口部203を上方に向けた姿勢がとりやすく、キャリッジM4001の移動に伴って、揺動部材200は揺動することが可能であり、インクタンク内のインクを効率よく攪拌することができた。
【0055】
このように揺動部材の底部が球状ではなく、比較的安定して開口部を上方に向けた姿勢をとりやすくした各揺動部材においても、揺動部材をインクタンク内に投入するだけで、インクを効率よく攪拌することができた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】インクジェット記録装置を示した外観斜視図である。
【図2】装置本体の内部機構を示す斜視図である。
【図3】記録ヘッドカートリッジとインクを収納可能なインクタンクとを示した斜視図である。
【図4】インクタンクの外観斜視図である。
【図5】インクタンクの分解斜視図である。
【図6】揺動部材の設置状態を説明するための斜視図である。
【図7】(a)、(b)は、その揺動部材を拡大して示した図である。
【図8】第2の実施形態における揺動部材の斜視図である。
【図9】第2の実施形態の変形例の揺動部材の斜視図である。
【図10】(a)から(d)は、図2におけるキャリッジの動作を説明するための記録装置の要部を示した概略構成図である。
【図11】(a)から(h)は、第1の実施形態における揺動部材の動作、および揺動部材の中空部内に生じるインクの流れを説明するための図である。
【符号の説明】
【0057】
1 インクタンク
100 揺動部材
102 下側開口部
103 開口部
104 中空部
106 錘
200 揺動部材
202 下側開口部
203 開口部
204 中空部
206 錘
300 揺動部材
302 下側開口部
303 開口部
304 中空部
306 錘
411 インク収容室
M4001 キャリッジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収納容器に収められ、前記液体収納容器内の液体を攪拌する攪拌器において、
前記攪拌器は本体部と流路部とを含み、
前記流路部は、それぞれが連通した複数の開口部を備え、
前記流路部を含む前記本体部は、安定姿勢と、該安定姿勢の時よりも高い位置に重心が位置する不安定姿勢と、の間で変位可能であり、
前記本体部が前記安定姿勢の時に、前記流路部の複数の前記開口部の内の少なくとも2つの前記開口部の位置関係は、上下の位置関係であることを特徴とする攪拌器。
【請求項2】
前記流路部は前記本体部の内部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の攪拌器。
【請求項3】
前記攪拌器の前記重心は、前記本体部の底面の近傍にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の攪拌器。
【請求項4】
前記開口部の少なくとも1つは前記液体収納容器の底部近傍にあることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の攪拌器。
【請求項5】
前記攪拌器は、前記液体収納容器の中で、前記液体収納容器の移動に伴う慣性力によって変位することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の攪拌器。
【請求項6】
前記攪拌器の比重は、前記液体収容器の中の前記液体の比重よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の攪拌器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の攪拌器を備えたことを特徴とする液体収納容器。
【請求項8】
前記液体収納容器に収納される液体はインクであることを特徴とする請求項7に記載の液体収納容器。
【請求項9】
前記インクは顔料成分を含むことを特徴とする請求項8に記載の液体収納容器。
【請求項1】
液体収納容器に収められ、前記液体収納容器内の液体を攪拌する攪拌器において、
前記攪拌器は本体部と流路部とを含み、
前記流路部は、それぞれが連通した複数の開口部を備え、
前記流路部を含む前記本体部は、安定姿勢と、該安定姿勢の時よりも高い位置に重心が位置する不安定姿勢と、の間で変位可能であり、
前記本体部が前記安定姿勢の時に、前記流路部の複数の前記開口部の内の少なくとも2つの前記開口部の位置関係は、上下の位置関係であることを特徴とする攪拌器。
【請求項2】
前記流路部は前記本体部の内部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の攪拌器。
【請求項3】
前記攪拌器の前記重心は、前記本体部の底面の近傍にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の攪拌器。
【請求項4】
前記開口部の少なくとも1つは前記液体収納容器の底部近傍にあることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の攪拌器。
【請求項5】
前記攪拌器は、前記液体収納容器の中で、前記液体収納容器の移動に伴う慣性力によって変位することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の攪拌器。
【請求項6】
前記攪拌器の比重は、前記液体収容器の中の前記液体の比重よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の攪拌器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の攪拌器を備えたことを特徴とする液体収納容器。
【請求項8】
前記液体収納容器に収納される液体はインクであることを特徴とする請求項7に記載の液体収納容器。
【請求項9】
前記インクは顔料成分を含むことを特徴とする請求項8に記載の液体収納容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−292059(P2009−292059A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148329(P2008−148329)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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