説明

攪拌用回転体および攪拌装置

【課題】用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能な攪拌用回転体および攪拌装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る攪拌用回転体1は、回転軸方向の断面が円形状に構成される本体10と、本体10の表面に設けられる吸入口12と、本体10における吸入口12より半径方向外側の表面に設けられる吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐ流通路と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体その他の各種流体を攪拌し、混合、分散等を行うための攪拌用回転体および攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば2種類以上の流体を混合したり、流体中に添加した各種粉末等を均一に分散させたりする場合には、流体中で羽根車を回転させる攪拌機が使用されている。この羽根車には一般的にプロペラ翼やタービン翼が設けられており、回転することで流体を流動させて攪拌を行う。
【0003】
このような攪拌機は、流体を収容するタンクに恒常的に設置されて使用されるものが多いが、この他にも、例えば塗料等を使用直前に現場で攪拌するためのハンディタイプのものがよく使用されている。このハンディタイプの攪拌機は、一般的にハンドドリル型の駆動装置の駆動軸の先端に羽根車を設けて構成されている。そして、使用者は、駆動装置を両手に持ち、先端の羽根車を塗料等の被攪拌物が収容された容器内に挿入して回転させ、攪拌を行う。
【0004】
しかしながら、このハンディタイプの攪拌機では、鋭利な翼端を持つ羽根車を高速で回転させることから非常に危険であり、取扱に注意を要するという問題があった。また、突起の多い羽根車を容器にぶつけてしまった場合や、羽根車が疲労破壊を起こした場合に、羽根車の先端や容器の一部が欠けて、または削れて被攪拌物内に混入しやすいという問題があった。
【0005】
また、羽根車は被攪拌物と衝突することによって被攪拌物を流動させるため、羽根車を備える攪拌機では、回転する羽根車を被攪拌物内に投入する際、または被攪拌物内で羽根車の回転を開始する際に、反動によって羽根車が振られやすいという問題があった。このため、使用者が攪拌機の操作になれていない場合には、羽根車を容器にぶつけたり、被攪拌物を容器外に飛散させたりといったような事態が頻発していた。
【0006】
また、羽根車では、被攪拌物に沈降物が含まれるような場合に、羽根車を容器の底壁に接触させながら攪拌を行わなければ沈降物をうまく分散させることができないため、羽根車と容器の壁面の接触により発生する破片や削りカスが被攪拌物内に混入しやすいという問題があった。
【0007】
また、羽根車を備える攪拌機では、被攪拌物内に混入された粉末粒子が羽根車との衝突により粉砕される場合があるという問題があった。このため、例えばメタリック塗料のように、混入された粉末粒子を微細化したくないような場合には、十分な攪拌を行うことが困難であった。
【0008】
一方、プロペラ翼やタービン翼を使用するのではなく、外形が六角柱状の筒体から羽根車を構成すると共に、側面に複数の孔を設けた高粘性流体用ミキサー等も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−154386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の高粘性流体用ミキサーでは、羽根車の外形が六角柱状であるため、上述の各問題を解消するものではなかった。具体的には、上記特許文献1に記載のミキサーは外壁に複数の角部を持つことから、回転時の危険性が高く、容器にぶつけた場合に破片や削りカスが生じる可能性が高いものであった。
【0011】
また、側面の孔からの流体の流出による効果が加わってはいるものの、主として羽根車の外壁を被攪拌物に衝突させることによって被攪拌物を流動させるものであるため、反動の問題、および被攪拌物内の粉末粒子の粉砕の問題を解消するものではなかった。
【0012】
さらに、側面の孔に対して羽根車内部の容積が大きいため、羽根車内部の流速が低く、長時間使用した場合に滞留物が羽根車に付着して堆積し、攪拌能力が低下しやすいという問題があった。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたものであって、用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能な攪拌用回転体および攪拌装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明は、回転軸方向の断面が円形状に構成される本体と、前記本体の表面に設けられる吸入口と、前記本体における前記吸入口より半径方向外側の表面に設けられる吐出口と、前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備えることを特徴とする、攪拌用回転体である。
【0015】
(2)本発明はまた、前記本体は、前記回転軸方向の厚みが半径方向外側に向けて漸次減少する形状に構成されることを特徴とする、上記(1)に記載の攪拌用回転体である。
【0016】
(3)本発明はまた、前記本体は、少なくとも一方の底面を球面状にした円柱状または円盤状に構成されることを特徴とする、上記(2)に記載の攪拌用回転体である。
【0017】
(4)本発明はまた、前記本体は、球状または楕円体状に構成されることを特徴とする、上記(2)に記載の攪拌用回転体である。
【0018】
(5)本発明はまた、前記吐出口は、複数設けられ、前記吸入口および前記流通路は、前記複数の吐出口ごとに個別に設けられることを特徴とする、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0019】
(6)本発明はまた、前記吸入口は、前記本体を回転させるために前記本体に接続される駆動軸の反対側に設けられることを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0020】
(7)本発明はまた、前記吸入口は、前記回転軸の半径方向外側に設けられることを特徴とする、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0021】
(8)本発明はまた、被攪拌物の外部の気体を吸入する吸気口と、前記吸気口と前記吐出口を繋ぐ通気路と、をさらに備えることを特徴とする、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の攪拌用回転体である。
【0022】
(9)本発明はまた、上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の攪拌用回転体を、前記回転軸方向に複数配置して構成されることを特徴とする、攪拌装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(a)本発明の実施の形態に係る攪拌用回転体の平面図である。(b)攪拌用回転体の正面図である。
【図2】(a)攪拌用回転体の作動を示した平面図である。(b)攪拌用回転体の作動を示した正面図である。
【図3】(a)および(b)攪拌用回転体の使用例を示した概略図である。
【図4】(a)および(b)攪拌用回転体の使用例を示した概略図である。
【図5】(a)および(b)流通路のその他の形態の例を示した正面図である。
【図6】(a)〜(c)吸入口、吐出口および流通路のその他の形態の例を示した図である。
【図7】(a)および(b)本体のその他の形状の例を示した正面図である。
【図8】(a)および(b)本体のその他の形状の例を示した正面図である。
【図9】(a)駆動軸側に吸入口を設けた例を示した正面図である。(b)攪拌用回転体に流体外部の気体を吸引するための吸気口、および吸気口と吐出口を繋ぐ通気路を設けた例を示した正面図である。
【図10】(a)および(b)攪拌用回転体を異物の捕獲が可能に構成した例を示した正面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る攪拌装置の例を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0026】
まず、本発明の実施の形態に係る攪拌用回転体1の構造について説明する。図1(a)は、攪拌用回転体1の平面図であり、図1(b)は、攪拌用回転体1の正面図である。これらの図に示されるように、攪拌用回転体1は、略半球状の本体10と、本体10の表面に設けられた複数の吸入口12と、本体10の表面に設けられた複数の吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐように本体10の内部に形成された流通路16から構成されている。
【0027】
本体10は、この例では、略半球状、詳細には円盤の一方の底面10aを球面状に構成した形状となっている。本体10の他方の底面10bの中心には、モータ等の駆動装置の駆動軸20が接続される接続部18が設けられている。従って、本体10の中心軸Cが回転軸となる。なお、駆動軸20と接続部18の接続方法は、例えばネジや係合等、既知のいずれの方法であってもよい。
【0028】
本実施形態では、本体10を流通路16以外の部分を中実に構成することで、本体10の強度を高めるようにしている。本体10を構成する材質は、特に限定されるものではなく、例えば金属やセラミックス、樹脂、ゴム、木材等、使用条件に応じた適宜の材質を採用することができる。本実施形態の本体10は、シンプルで加工しやすい形態となっているため、製造方法に制限されることなく、多種多様な材質から本体10を構成することが可能となっている。
【0029】
吸入口12は、本体10における接続部18の反対側の底面10bに設けられている。本実施形態では、4つの吸入口12を中心軸Cを中心とする円周上に等間隔で並べて配置すると共に、中心軸Cと同一方向に形成している。吐出口14は、本体10の側面10cに設けられている。本実施形態では、4つの吐出口14を、各吸入口12に対して本体10の半径方向外側となる位置にそれぞれ配置している。また、中心軸Cに対して直交する方向に吐出口14を形成している。
【0030】
流通路16は、1つの吸入口12と1つの吐出口14を繋ぐ通路として形成されている。従って、本体10の内部には、4つの流通路が形成されている。各流通路16は、吸入口12から中心軸C方向に沿って直進した後に直角に曲がり、本体10の半径方向外側に向けて直進して吐出口14に到達するように形成されている。
【0031】
本実施形態では、流通路16をこのように構成することで、ドリルによる穴加工で容易に吸入口12、吐出口14および流通路16を形成できるようにしている。具体的には、吸入口12の位置から中心軸C方向に沿った穴加工、および吐出口14の位置から中心軸Cに向けた穴加工によって容易に吸入口12、吐出口14および流通路16を形成することができる。なお、本実施形態では、流通路16の断面形状を円形に構成しているが、これに限定されるものではなく、例えば楕円形や多角形等、その他の断面形状としてもよい。
【0032】
次に、攪拌用回転体1の作動について説明する。図2(a)は攪拌用回転体1の作動を示した平面図であり、図2(b)は攪拌用回転体1の作動を示した正面図である。攪拌用回転体1は、流体である被攪拌物内において、駆動軸20に駆動されて中心軸Cを中心に回転することにより、被攪拌物を攪拌する。
【0033】
流体中に攪拌用回転体1を浸漬して回転させると、流通路16内に進入した流体も攪拌用回転体1と共に回転することとなる。すると、流通路16内の流体に遠心力が作用し、これらの図に示されるように、流通路16内の流体は攪拌用回転体1の半径方向外側に向けて流動する。吐出口14は、吸入口12よりも本体10の半径方向外側に設けられているため、吐出口14では吸入口12よりも強い遠心力が働くこととなる。従って、流体は、攪拌用回転体1が回転している限り吸入口12から吐出口14に向けて流動する。すなわち、流通路16内の流体が吐出口14から噴出すると共に、外部の流体が吸入口12から流通路16内に吸引される。これにより、攪拌用回転体1の周囲の流体には、吐出口14のある側面10cから放射状に広がる流動と、吸入口12のある攪拌用回転体1の先端に向かう流動が発生することとなる。
【0034】
また、流体中に攪拌用回転体1を浸漬して回転させると、攪拌用回転体1の表面近傍の流体が粘性の影響により攪拌用回転体1と共に回転することとなる。従って、攪拌用回転体1の表面近傍の流体にも遠心力が働き、これらの図に示されるように、表面近傍の流体は攪拌用回転体1の表面に沿って側面10cまで流動し、吐出口14からの噴流の随伴流となる。
【0035】
本実施形態では、底面10bを球面状に構成することにより、本体10の形状を軸方向の厚みが半径方向外側に向けて漸次減少する形状としているため、攪拌用回転体1の底面10b近傍の流動を、側面10cから放射状に広がる流動にスムーズに合流させることを可能としている。また、底面10bをこのような形状にすることで、攪拌用回転体1の先端に向かう流動の一部を、底面10bに沿って側面10cまでスムーズに流動させて、側面10cから放射状に広がる流動に合流させることを可能としている。この結果、攪拌用回転体1は、周囲の流体に強力な流動を発生させることが可能となるため、効率的な攪拌を行うことが可能となっている。
【0036】
図3(a)および(b)、ならびに図4(a)および(b)は、攪拌用回転体1の使用例を示した概略図である。これらの図に示されるように、攪拌用回転体1は、モータ等の駆動装置30の駆動軸20に接続され、容器40内に収容された流体である被攪拌物50内に浸漬された状態で使用される。駆動装置30は、容器40や架台等に固定されるものであってもよいし、使用者が保持して操作するものであってもよい。
【0037】
駆動装置30によって攪拌用回転体1を回転させることにより、上述のように攪拌用回転体1から放射状に広がる流動、および攪拌用回転体1の先端に向かう流動が発生する。これにより、図3(a)および(b)に示されるように、被攪拌物50内に複雑な循環流が発生し、この循環流により被攪拌物50は十分に攪拌される。なお、本実施形態では、本体10の回転軸方向の断面を円形状に構成することにより、回転中に被攪拌物50と衝突する部分がないようにしているため、回転開始時の反動がほとんど生じないようになっている。
【0038】
容器40の底に滞留している滞留物を分散させる場合には、図4(a)に示されるように、攪拌用回転体1の先端を容器400の底に近づければよい。このようにすることで、吸入口12から滞留物を吸い上げて吐出口14から噴出し、滞留物を被攪拌物50内に十分に分散させることができる。また、容器40の角部に滞留している滞留物を分散させる場合には、図4(b)に示されるように、攪拌用回転体1の先端を容器400の角部に近づければよい。本実施形態では、底面10bを球面状に構成しているため、狭隘な角部にも吸入口12を十分に近づけることができる。
【0039】
本実施形態では、本体10の回転軸方向の断面を円形状に構成すると共に突起物がないように構成することにより、攪拌用回転体1を容器40の壁面にぶつけた場合にも攪拌用回転体1または容器40が破損したり削れたりする可能性を低くしている。このため、安心して攪拌用回転体1を容器40の壁面に近づけることができ、容器40の隅々まで十分に攪拌を行うことが可能となっている。さらに、攪拌用回転体1または容器40の破片や削りカス等が被攪拌物50に混入し難いようになっている。
【0040】
また、本実施形態では、攪拌用回転体1の先端中心(回転軸である中心軸C)のやや外側に吸入口12を配置することにより、攪拌用回転体1の先端を容器40の壁面に接触させた場合にも吸入口12が塞がれないようにしている。このため、容器40の壁面近くにおいても安定して攪拌用回転体1を操作することができる。
【0041】
次に、攪拌用回転体1のその他の形態について説明する。図5(a)および(b)は、流通路16のその他の形態の例を示した正面図である。同図(a)は、流通路16を滑らかに湾曲した通路として構成した例を示している。流通路16をこのように構成することで、流通路16内の流動抵抗を減少させることができるため、攪拌用回転体1が引き起こす流動をさらに強力にし、攪拌能力を向上させることができる。なお、このような流通路16は、例えば本体10を鋳造により製造することで形成することができる。
【0042】
同図(b)は、流通路16を一直線状に構成した例を示している。流通路16をこのように構成した場合にも流通路16内の流動抵抗を減少させることができる。さらにこの場合、流通路16内の清掃を行いやすくすることができる。
【0043】
図6(a)〜(c)は、吸入口12、吐出口14および流通路16のその他の形態の例を示した図である。なお、同図(a)は攪拌用回転体1の平面図であり、同図(b)および(c)は攪拌用回転体1の正面図である。
【0044】
同図(a)は、吐出口14を回転方向にずらして配置し、流通路16の吐出口14へ繋がる部分を攪拌用回転体1の半径方向に対して角度を有するように構成した例を示している。このように、吐出口14の向きを変更することで、例えば図の反時計回りに攪拌用回転体1を回転させた場合には、吐出口14からの噴流をスムーズにすることができる。また、図の時計回りに攪拌用回転体1を回転させた場合には、吐出口14からの噴流を乱流状態にすることができる。すなわち、本実施形態では、流通路16および吐出口14の配置および向きを、用途に応じて適宜に設定することにより、効率的な攪拌に最も適した流動を得ることができるようになっている。
【0045】
同図(b)は、吐出口14を回転軸方向にずらして配置し、流通路16の吐出口14へ繋がる部分を攪拌用回転体1の先端側に向くように構成した例を示している。このように、吐出口14を先端側に向けることで、液面方向への流動を弱くすることができるため、液面近傍の強い流動や乱流に起因する泡立ちや気泡の混入等を減少させることができる。なお、あえて流体に外部の気体を巻き込ませるように、吐出口14を駆動軸側に向けるようにしてもよい。
【0046】
同図(c)は、複数の吐出口14に対して1つの吸入口12を設け、流通路16を1つの吸入口12から複数の吐出口14に分岐するように構成した例を示している。このように、複数の吐出口14に対して共通する吸入口12を設けるようにしてもよい。この場合において、流通路16の共通部分16aの断面積を分岐部分16bの断面積の総和と同一または略同一にすることにより、共通部分16aにおける流速を低下させないようにすることができる。これにより、流通路16内に滞留物が堆積するのを防止することが可能となる。
【0047】
図7(a)および(b)、ならびに図8(a)および(b)は、本体10のその他の形状の例を示した正面図である。図7(a)は、本体10を球状に構成した例を示しており、図7(b)は、本体10を楕円体状に構成した例を示している。本体10は、回転軸方向の断面が円形状に構成されるものであれば、どのような形状(例えば、円柱状や円盤状等)であってもよいが、本体10表面近傍の流動をスムーズに吐出口14からの噴流の随伴流とするためには、図7(a)または(b)に示されるように、回転軸方向の厚みが半径方向外側に向けて漸次減少する形状が好ましい。特に、図7(b)に示されるように、回転軸方向の厚みを全体的に薄くした方が、攪拌用回転体1から放射状に広がる流動をより強力にすることができる。
【0048】
なお、本発明における球状とは、球体の一部分からなる形状や球体に類似する形状を含んだ広範な概念を示している。また、本発明における楕円体状には、楕円体の一部分からなる形状や楕円体に類似する形状を含んだ広範な概念を示している。
【0049】
図8(a)は、回転軸方向の厚みが半径方向外側に向けて凹状に漸次減少する形状に、本体10を構成した例を示している。このような形状にすることで、吸入口12に向かう流動の一部、および回転軸側からの流動を本体10表面に沿ってスムーズに流動させて吐出口14からの噴流の随伴流とすることができるため、より強力な流動を発生させることが可能となる。
【0050】
図8(b)は、回転軸方向の厚みが部分的に半径方向外側に向けて減少する形状に、本体10を構成した例を示している。この場合、図8(b)に示されるように、厚みが一定の部分の半径方向外側に厚みが減少する部分を設けるようにしてもよいし、厚みが減少する部分の半径方向外側に厚みが一定な部分を設けるようにしてもよい。
【0051】
なお、本体10の形状の設定に加えて、本体10表面の粗さを適宜に設定したり、適宜の凹凸形状やディンプル加工を施したりすることによって、攪拌用回転体1の周囲の流動をより精密に制御するようにしてもよい。また、例えば球状に構成した本体10の表面にりんごやサッカーボール等の彩色を施して意匠性を向上させるようにしてもよい。
【0052】
図9(a)は、駆動軸側に吸入口12を設けた例を示した正面図である。同図は、4つの吸入口12のうち、2つの吸入口12を駆動軸側の底面10aに設けた例を示している。吸入口12は、このように複数の吸入口12の一部を先端側に配置し、残りの一部を駆動軸側に配置するようにしてもよい。また、用途によっては、全ての吸入口12を駆動軸側に設けるようにしてもよい。
【0053】
吸入口12の配置を適宜に設定することで、用途に応じた最適な流動を発生させるようにすることができる。また、駆動軸側の吸入口12を流体の液面に近づけて流体外部の気体を吸引するようにすれば、流体中に積極的に外部の気体を取り込むことができる。これにより、流体中に気体を溶け込ませたり、流体中に気泡を混入させたりすることができる。
【0054】
図9(b)は、攪拌用回転体1に流体外部の気体を吸引するための吸気口13、および吸気口13と吐出口14を繋ぐ通気路17を設けた例を示した正面図である。同図は、球状に構成した本体10の駆動軸側の表面に2つの吸気口13を設けると共に、流通路16を介して吸気口13と吐出口14を繋ぐ通気路13を本体10内部に形成した例を示している。このように、本体10に吸気口13および通気路17を設け、吸気口13を流体外部に露出させた状態で攪拌用回転体1を回転させることにより、容易に流体中に気体を溶け込ませたり、流体中に気泡を混入させたりすることができる。
【0055】
この場合、吸気口13を吸入口12よりも半径方向内側(回転軸側)に配置することで、吸気口13からの流体の流出を防止して流体中への気体の取り込みを効率的に行うことが可能となる。なお、通気路17を流体を噴出する吐出口14に繋ぐのではなく、気体を流体中に噴出するための専用の吐出口を別に設け、この専用吐出口に通気路17を繋ぐようにしてもよい。
【0056】
図10(a)および(b)は、攪拌用回転体1を異物の捕獲が可能に構成した例を示した正面図である。同図(a)は、流通路16の吐出口14近傍にゴミ等の異物捕獲用のフィルタ60を設けた例を示している。このように、流通路16の途中にフィルタ60を設けることにより、流体中に含まれる異物の除去を攪拌と同時に行うことが可能となる。フィルタ60は、例えば金網やスポンジ等、用途に応じた材質から構成すればよい。なお、フィルタ60を配置する位置は、同図(a)に示す位置に限定されるものではなく、その他の位置であってもよい。
【0057】
同図(b)は、1つの吸入口12を設けた場合に、流通路16の共通部分16aの内周壁に異物捕獲用の凹部62を設けた例を示している。吸入口12を1つとした場合、流通路16の共通部分16a内を通過する流体は、攪拌用回転体1の回転により旋回流となる。従って、流通路16の共通部分16aの内周壁に凹部62を設けることにより、遠心分離と同様の原理により、流体中の異物を凹部62内に捕獲することができる。凹部62内にフィルタ60を設けて、捕獲した異物が確実に凹部62内に保持されるようにしてもよい。
【0058】
次に、複数の攪拌用回転体1を連結して構成した攪拌装置2について説明する。図11(a)および(b)は、攪拌装置2の例を示した正面図である。同図(a)は、駆動軸を介して3つの攪拌用回転体1を連結した例を示しており、同図(b)は、2つの攪拌用回転体1を一体的に連結した例を示している。このように、複数の攪拌用回転体1を回転軸方向に連結することで、攪拌能力をさらに向上させることができる。特に、攪拌する流体の深さが深い場合に、効果的である。また、同図(b)に示す例において、駆動軸側の吸入口14から流体外部の気体を吸引するようにすれば、より効率的に流体中に気体を取り込むことができる。
【0059】
また、複数の攪拌用回転体1を連結することにより、攪拌装置2をより意匠性の高い形状にすることが可能である。例えば、同図(b)に示す攪拌装置2を雪だるま状に彩色することで、家庭用の泡立て器としての商品性を高めることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る攪拌用回転体1は、回転軸方向の断面が円形状に構成される本体10と、本体10の表面に設けられる吸入口12と、本体10における吸入口12より半径方向外側の表面に設けられる吐出口14と、吸入口12と吐出口14を繋ぐ流通路と、を備えている。
【0061】
このため、羽根車等に比べてはるかに低コストで、十分な攪拌能力を有する攪拌用回転体1を製造することができる。また、回転軸方向の断面を円形状に構成することにより、回転開始時の反動をなくすと共に、被攪拌物50を収容した容器40等にぶつけた場合にも容器40または攪拌用回転体1の破損や削れ等を生じにくくすることができる。この結果、用途を問わずに安全且つ効率的な攪拌を行うことが可能となる。
【0062】
また、本体10の回転軸方向の断面を円形状に構成することより、回転軸に対する不釣合いの発生を少なくすることができる。このため、不釣合いの発生しやすい羽根車等とは異なり、回転時の振動や振れ回り等を略解消することができる。
【0063】
また、本体10は、回転軸方向の厚みが半径方向外側に向けて漸次減少する形状に構成されている。このため、本体10の表面近傍の流動をスムーズに吐出口14からの噴流の随伴流とすることができる。これにより、より強力な流動を発生させることが可能となるため、攪拌能力をさらに向上させることができる。
【0064】
また、本体10は、少なくとも一方の底面を球面状にした円柱状または円盤状に構成されている。このため、強力な流動を発生させることができると共に、例えば、容器の角部のような狭隘部分に吸入口12を近づけて滞留物を吸引することができる。すなわち、容器内の隅々まで十分に攪拌を行うことができる。なお、本体10は、球状または楕円体状に構成されるものであってもよい。
【0065】
また、吐出口14は、複数設けられ、吸入口12および流通路16は、複数の吐出口14ごとに個別に設けられている。このため、流通路16内の流速を適宜の高い速度に維持することができる。これにより、流通路16内に滞留物が堆積し、攪拌能力が低下するのを未然に防止することができる。
【0066】
また、吸入口12は、本体10を回転させるために本体10に接続される駆動軸20の反対側に設けられている。これにより、容器40の底の滞留物を吸い上げることが可能となるため、ムラのない確実な攪拌を行うことができる。また、被攪拌物50の液面を乱すことなく、攪拌を行うことができる。
【0067】
また、吸入口12は、回転軸(中心軸C)の半径方向外側に設けられている。このため、攪拌用回転体1を容器40の壁面に近づけた場合にも、攪拌用回転体1が壁面に吸い付いて吸入口が塞がれるような事態を回避することができる。これにより、攪拌用回転体1を手動操作する場合にも安定した攪拌を行うことができる。
【0068】
また、攪拌用回転体1に、被攪拌物の外部の気体を吸入する吸気口13と、吸気口13と吐出口14を繋ぐ通気路17と、をさらに備えるようにしてもよい。このようにすることで、被攪拌物40に容易に気泡を混入させることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る攪拌装置2は、攪拌用回転体1を、回転軸方向に複数配置して構成されている。このため、攪拌能力をさらに向上させることが可能であると共に、意匠性を向上させることができる。
【0070】
なお、本実施形態では、本体10の形状が回転軸方向の厚みが半径方向外側に向けて漸次減少する場合の例について示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、被攪拌物である流体の粘性等の性状や、攪拌の目的によっては、本体10の形状を円盤状や円柱状等から構成し、回転軸方向の厚みが半径方向外側に向けて漸次減少する部分を設けないようにしてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の攪拌用回転体および攪拌装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の攪拌用回転体は、各種流体の攪拌、または気泡混入の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 攪拌用回転体
2 攪拌装置
10 本体
12 吸入口
13 吸気口
14 吐出口
16 流通路
17 通気路
20 駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸方向の断面が円形状に構成される本体と、
前記本体の表面に設けられる吸入口と、
前記本体における前記吸入口より半径方向外側の表面に設けられる吐出口と、
前記吸入口と前記吐出口を繋ぐ流通路と、を備えることを特徴とする、
攪拌用回転体。
【請求項2】
前記本体は、前記回転軸方向の厚みが半径方向外側に向けて漸次減少する形状に構成されることを特徴とする、
請求項1に記載の攪拌用回転体。
【請求項3】
前記本体は、少なくとも一方の底面を球面状にした円柱状または円盤状に構成されることを特徴とする、
請求項2に記載の攪拌用回転体。
【請求項4】
前記本体は、球状または楕円体状に構成されることを特徴とする、
請求項2に記載の攪拌用回転体。
【請求項5】
前記吐出口は、複数設けられ、
前記吸入口および前記流通路は、前記複数の吐出口ごとに個別に設けられることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項6】
前記吸入口は、前記本体を回転させるために前記本体に接続される駆動軸の反対側に設けられることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項7】
前記吸入口は、前記回転軸の半径方向外側に設けられることを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項8】
被攪拌物の外部の気体を吸入する吸気口と、
前記吸気口と前記吐出口を繋ぐ通気路と、をさらに備えることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の攪拌用回転体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の攪拌用回転体を、前記回転軸方向に複数配置して構成されることを特徴とする、
攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−5349(P2011−5349A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148223(P2009−148223)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【特許番号】特許第4418019号(P4418019)
【特許公報発行日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(509177094)
【Fターム(参考)】