説明

攪拌部材の故障判定装置及び車両

【課題】攪拌部材の故障判定装置の構造を簡素化してコストを削減する。
【解決手段】複数の円筒型電池121と熱交換を行う冷却液14と、複数の円筒型電池121及び冷却液14を収容する収容容器11と、コントローラ61から出力された作動信号に基づき冷却液14を攪拌する攪拌部材31と、収容容器11の内部の温度差を検出するための検出センサ131、132とを有し、コントローラ11は、前記作動信号が出力された後に、収容容器11の内部の温度差が予め設定された設定温度(例えば、20℃)以上である場合には、攪拌部材31が故障であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の蓄電体と熱交換を行う液状の熱交換媒体を攪拌する攪拌部材の故障判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタに蓄電された電力によりモータを回転させて、車両を駆動する電
気車両、ハイブリッド車両が知られている。二次電池やキャパシタは、電力を充放電
する際に発熱する。二次電池などが使用中に昇温して高温になると、電池の寿命が短くな
る。そこで、電池の温度を検出して、検出した温度が所定値以上になると、電池の近傍に
配置された冷却ファンを作動して電池を冷却し、電池温度を下げるようにした冷却装置
が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、電池を冷却する冷却ファンと、電池の温度を検出する温度センサと、冷却ファンの作動制御を行うバッテリコントローラと、冷却ファンが作動しているときに温度センサによって検出した電池の温度Tb1を記憶するRAMとを備える冷却装置の故障判定装置が開示されている。
【0004】
上述の構成において、RAMから読み出したTb1と、冷却ファンの作動を停止させる制御を行ったときに温度センサによって検出した電池の温度Tb2とに基づいて冷却ファンの故障を判断する。これにより、電池の出力を制限する制御の影響を受けることなく、冷却ファンの故障を確実に判断することができる。
【0005】
一方、近年、ハイブリッド車両の駆動電源などとして出力密度の高い蓄電体が求められるており、複数の蓄電体を冷却液の中に浸漬した蓄電装置が提案されている。この種の蓄電装置では、各蓄電体の温度のバラツキを抑制するために、冷却液の中に攪拌部材を配置して、冷却液を攪拌している。
【特許文献1】特開2002−343449号公報
【特許文献2】特開2002−101570号公報
【特許文献3】特開2004−281077号公報
【特許文献4】特開2005−129359号公報
【特許文献5】特開2005−160132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、攪拌部材が故障により回転不能に陥ると、冷却液の温度にバラツキが生じて、温度の高い蓄電体の寿命が短くなる。したがって、攪拌部材の故障を早期に検知する必要がある。
【0007】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであって、攪拌部材の故障を早期に検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明の攪拌部材の故障判定装置は、
(1)「複数の蓄電体と熱交換を行う液状の熱交換媒体と、前記複数の蓄電体及び前記熱交換媒体を収容する収容容器と、出力回路から出力された作動信号に基づき前記熱交換媒体を攪拌する攪拌部材と、前記収容容器の内部の温度差を検出するための検出センサと、前記出力回路から前記作動信号が出力された後に、前記収容容器の内部の温度差が予め設定された設定温度以上である場合には、前記攪拌部材が故障であると判定する故障判定手段と、を有する」ことを特徴とする。
【0009】
(1)に記載の発明によれば、攪拌部材の故障を早期に判定することができる。
【0010】
(2)(1)の構成において、前記検出センサとして、前記蓄電体の温度を検出する温度センサを用いることができる。(2)に記載の発明によれば、蓄電体に設けられた温度センサを用いることができるため、独立した温度センサが不要となり、コストを削減することができる。
【0011】
(3)(2)の構成において、前記複数の蓄電体は、第1の蓄電体と、この第1の蓄電体よりも下方に配置される第2の蓄電体とを含み、前記温度センサは、前記第1の蓄電体に設けられた第1の温度センサと、前記第2の蓄電体に設けられた第2の温度センサとを含んでいる。
【0012】
加熱された液状の熱交換媒体は比重が軽くなって収容部の内部を上側に移動する。したがって、(3)に記載の発明によれば、攪拌部材の異常検出をより正確かつ早期に行うことができる。
【0013】
(4)(2)の構成において、前記複数の蓄電体は、前記攪拌部材が正常に作動する正常作動状態において最高温度となる第1の蓄電体と、最低温度となる第2の蓄電体とを含み、前記温度センサは、前記第1の蓄電体に設けられた第1の温度センサと、前記第2の蓄電体に設けられた第2の温度センサとを含んでいる。
【0014】
(4)に記載の発明によれば、攪拌部材の異常検出をより正確かつ早期に行うことができる。
【0015】
(5)(1)の構成において、「前記検出センサとして、前記蓄電体の電圧を検出する電圧検出センサ」を用いることもできる。蓄電体の温度と出力(電圧)との関係には相関関係があり、蓄電体の温度が上昇すると蓄電体の出力も増すため、蓄電体の電圧から収容部の内部における温度差を推定することができる。
【0016】
(6)(1)乃至(5)の構成において、「外周面に攪拌フィンが形成された回転軸を含む前記攪拌部材」を用いることができる。
【0017】
(6)の構成によれば、攪拌フィンに異物(例えば、収容容器の内面から削ぎ落ちた内壁の一部)が噛み込んで、攪拌部材が作動不能になったことを検知することができる。
【0018】
(7)(6)の構成において、「コイルに通電して前記回転軸を回転させるモータにより駆動される前記攪拌部材」を用いることができる。
【0019】
(7)の構成によれば、コイルが断線して、攪拌部材が作動不能になったことを検知することができる。
【0020】
(8) (1)乃至(7)の構成において、「前記設定温度は、前記攪拌部材が正常に機能しているときの前記収容部の内部の最大温度差よりも高い温度」に設定するのが好ましい。
【0021】
(8)の構成によれば、より正確に攪拌部材の故障を判定することができる。
【0022】
(9)(1)乃至(8)のいずれか一つに記載の攪拌部材の故障判定装置を、
該攪拌部材の故障判定装置の判定結果を車内の乗員に報知するための報知装置とともに車両に搭載することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、攪拌部材の故障を早期に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
図1乃至図4を参照しながら、本実施例の攪拌部材の故障判定装置の概略構成について説明する。ここで、図1は蓄電装置の分解斜視図であり、図2は円筒型電池の長手方向に対して直交する方向における蓄電装置の断面図であり、図3は攪拌ユニットの斜視図であり、図4は攪拌部材の故障判定装置の回路構成を図示したブロック図である。
【0025】
複数の円筒型電池(蓄電体)121からなる組電池12は、ハイブリッド車両の駆動用または補助電源として使用され、収容容器11に収容されている。収容容器11には組電池12を冷却するための冷却液(液状の熱交換媒体)14が収容されており、この冷却液14の中に組電池12は浸漬されている。
【0026】
図2に図示するように、組電池12において、最上段の右から4番目に配列された円筒型電池121(第1の蓄電体)A11には第1の温度センサ(検出センサ)131が設けられており、最下段の右端に配列された円筒型電池(第2の蓄電体)121D14には、第2の温度センサ(検出センサ)132が設けられている。
【0027】
図4に図示するように、第1及び第2の温度センサ131、132は不図示の導線を介してコントローラ(出力回路、故障判定回路、故障判定手段)61に電気的に接続されており、コントローラ61はこれらの温度センサ131、132から出力された温度情報に基づき、冷却液14内に設けられた攪拌部材31の攪拌動作を制御する。
【0028】
具体的には、第1の温度センサ131から出力された温度情報に基づき、円筒型電池121A11の電池温度が60℃を超えている場合には、作動信号を出力して攪拌部材31を駆動する。攪拌部材31により攪拌された冷却液14は、温度のバラツキが抑制される。
【0029】
しかしながら、コントローラ61から作動信号が出力されているにも関わらず、攪拌部材31が作動しない場合がある。攪拌部材31が動作しない場合としては、例えば、構造物の一部(例えば、破損した収容容器11の壁部)が攪拌部材31の攪拌フィン31aに噛み込んでいる場合、回転軸31bを駆動するモータのコイルが断線した場合を想定している。
【0030】
この場合、冷却液14を強制的に攪拌できないため、各円筒型電池121の温度のバラツキが抑制不能になり、結果的に電池寿命が短くなる。したがって、攪拌部材31が故障したことを車室内に報知して、速やかに電池交換を促す必要がある。
【0031】
本発明では組電池12の冷媒として液体が用いられており、コントローラ61から攪拌部材31に作動信号が出力されているにも関わらず、攪拌部材31が作動しない場合には、冷却液14の上下における温度差が空冷の場合よりも大きくなる。
【0032】
そこで、コントローラ61から作動信号が出力された後に、第1及び第2の温度センサ131、132から出力された温度情報に基づき収容部11の内部の温度差が予め設定された設定温度以上である場合には、攪拌部材31が故障しているものと判定する。これにより、攪拌部材の故障を早期に発見することができる。
【0033】
また、特許文献1のように、温度センサから出力される温度情報を記憶するための記憶手段(RAM)が無くても攪拌部材31の故障を検知できるため、故障判定装置の構造を簡素化しながら、コストを削減することができる。
【0034】
次に、攪拌部材の故障判定装置の構成を詳細に説明する。
【0035】
組電池12は、複数の円筒型電池121から構成されており、各円筒型電池121は一対の支持部材122間に支持されている。各円筒型電池121の長手方向両端には、ネジ電極121aが形成されており、一対の支持部材122には、このネジ電極121aを挿入するための貫通穴(不図示)が形成されている。
【0036】
図2に図示するように、複数の円筒型電池121にはそれぞれ符号を付している。最上段に配列される円筒形電池にあっては、図中左側から121A1〜121A14のように符号を付しており、円筒型電池121A1〜121A14の下段に配列される円筒型電池にあっては、図中左側から121B1〜121B14のように符号を付しており、円筒型電池121B1〜121B14の下段に配列される円筒型電池にあっては、図中左側から121C1〜121C14のように符号を付しており、最下段に配列される円筒型電池にあっては、図中左側から121D1〜121D14のように符号を付している。
【0037】
第1の温度センサ131は、最上段の右から4番目に配列された円筒型電池121A11に設けられており、第2の温度センサ132は、最下段の右端に配列された円筒型電池121D14に設けられている。
【0038】
ここで、第1及び第2の温度センサ131、132をそれぞれ、円筒型電池121A11及び121D14に設けた理由は、下記の通りである。攪拌部材31を停止した状態において、充放電により組電池12が発熱すると、組電池12の熱が冷却液14に伝熱する。温度上昇した冷却液14は、比重が軽くなり、収容容器11の内部を上側に移動する。したがって、収容容器11の内部において冷却液14の温度は、底部が最も低く、上部が最も高くなる。
【0039】
シミューションでも同様の結果が得られ、最上段の右から4番目に配列される円筒型電池121A11の電池温度が最も高くなり、最下段の右端に配列される円筒型電池121D14の電池温度が最も低くなるということがわかった。なお、この結果は、攪拌部材31が正常に作動している場合であっても同様である。
【0040】
そこで、後述するように、攪拌部材31に作動信号を出力しているにもかかわらず、円筒型電池121A11及び円筒型電池121D14の温度差が予め設定された設定温度以上ある場合には、攪拌部材31が作動していないものとみなし、故障であると判定している。このように、最も温度差がつきやすい二つの円筒型電池121の温度差に基づき攪拌部材31の故障を判定することにより、より正確かつ迅速に攪拌部材31の故障を発見することができる。
【0041】
本実施例では「設定温度」を20℃に設定したが、円筒型電池121、冷却液14の種類に応じて適宜変更することができる。攪拌部材31を正常に作動させた場合であっても、各円筒型電池121には温度差があり、この温度差は、攪拌部材31の作動不能により拡大する。したがって、攪拌部材31を正常に作動させたときの円筒型電池121A11及び円筒型電池121D14の温度差を予めシミュレーションなどにより調べておき、この温度差よりも高い温度を「設定温度」として用いるとよい。これにより、攪拌部材31の故障を正確に検知することができる。
【0042】
複数の円筒型電池121は、バスバー123により直列に接続されている。バスバー123は、締結ナット124を各円筒型電池121のネジ電極121aに締結することにより、固定されている。
【0043】
各円筒型電池121の内部には、発電要素が収容されている。発電要素は、電極板(正極板及び負極板)と、セパレータと、電解質とで構成されており、公知の構成を適宜、適用することができる。
【0044】
ここで、正極板としては、アルミニウム等の金属(合金を含む)で形成された集電体の表面に正極層を形成したものを用い、負極板としては、アルミニウム等の金属(合金を含む)で形成された集電体の表面に負極層を形成したものを用いることができる。より具体的には、ニッケル−水素電池では、正極層の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlxMnyCoz(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、リチウムイオン電池では、正極層の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極層の活物質として、カーボンを用いることができる。
【0045】
なお、本実施例では、円筒型電池を用いているが、角型等の他の形状の電池を用いることもできる。また、本実施例では、二次電池を用いているが、二次電池の代わりに、蓄電体としてのキャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。
【0046】
収容容器11及び蓋部材13は、熱伝導性や耐食性等に優れた材料、例えば、冷却液14の熱伝導率と同等又はこれよりも高い熱伝導率を有する材料で形成することができる。具体的には、収容容器11や蓋部材13を金属(銅や鉄等)で形成することができる。収容容器11は、助手席下部に位置する車両のフロアパネルFに対して固定されている。ただし、運転席及び助手席の間のコンソールボックス、後部座席の下方などに配置することもできる。
【0047】
冷却液14は、絶縁性を有する液体であり、例えば、絶縁性を有する油や、フッ素系不活性液体を用いることができる。フッ素系不活性液体としては、例えば、フロリナート、Novec HFE(hydrofluoroether)、Novec1230(スリーエム社製)を用いることができる。
【0048】
蓋部材13の平面視4隅にはそれぞれ、取り付け穴部(不図示)が形成されており、これらの取り付け穴部には、一対の支持部材122の上端面に形成された取り付け突起部122aが圧入される。支持部材122の取り付け突起部122aを蓋部材13の該取り付け穴部に圧入することにより、収容容器11を密閉構造にすることができる。これにより、収容容器11の内部に異物が入り込むのを阻止でき、電池短絡を防止できる。
【0049】
組電池12の一端には、攪拌ユニット30が配置されている。ここで、攪拌ユニット30の両端は、一対の支持部材122の同一面内に位置するように配置されている。以下、図2及び図3を併せ用いて、攪拌ユニット30の構成について詳細に説明する。なお、図2の矢印は、冷却液14の対流方向を示している。
【0050】
攪拌ユニット30の攪拌部材31は、回転軸31bと、回転軸31bの外周面に設けられた複数の攪拌フィン31aとから構成される。回転軸31bは、円筒型電池121の長手方向に配置されている。複数の攪拌フィン31aは、回転軸31bの周方向において等間隔に配置されており、各攪拌フィン31aは、曲面を持った形状に形成されている。
【0051】
回転軸31bの両端は、ラジアル式の軸受け部材(不図示)に回転可能に支持されている。回転軸31bの一端は、回転軸駆動モータユニット35に接続されている。モータユニット35は、モータとドライバにより構成されており、モータにはコイルへの通電を制御することによりロータが回転するステッピングモータを用いることができる。一方の支持部材122には、モータ設置部122bが切欠により形成されており、このモータ設置部122bにモータユニット35が設置されている。
【0052】
このようにモータユニット35を支持部材122の内部に設置することにより、収容容器14の内部のスペースを有効に活用することができる。
【0053】
攪拌ユニット30は、第1の対流方向調整板36と第2の対流方向調整板37とを含む。第1の対流方向調整板36は水平方向に対して斜設されており、その先端部は左下隅に配置される円筒型電池121D1と収容容器11の底面との間の領域に位置している。
【0054】
回転する攪拌フィン31aによって押し出された冷却液14は、第1の対流方向調整板36に当接して、収容容器11の底面に沿って対流する。これにより、攪拌部材31の近傍の領域のみにおいて冷却液14が攪拌されるのを防止できる。
【0055】
第2の対流方向調整板37は上下方向に延びており、その上端部は、最上列に配列された円筒型電池121A1〜A14の上端部と同じ高さに位置している。蓋部材13の内面に沿って対流する冷却液14は、第2の対流方向調整板37と蓋部材13との間に形成された隙間を通って、第2の対流方向調整板37と収容容器11の側壁との間に形成された流路S1に流入する。
【0056】
流路S1に流入した冷却液14は、回転する攪拌部材31に引き込まれて、再び収容容器11の底面に沿って対流する。冷却液14の熱は、収容容器11及び蓋部材13に伝熱して、収容容器11の外部に放出される。
【0057】
上述の構成によれば、収容容器11及び蓋部材13の内面に沿って冷却液14が対流する層流を起こすことができる。これにより、各円筒型電池121に対してその長手方向に均一に冷却液14を供給できるため、各円筒型電池121を均一に冷却することができる。なお、層流とは、流体が規則正しく流線上を運動していることを意味する。
【0058】
次に、図5を参照しながら、攪拌部材31の故障判定方法について説明する。ここで、図5は攪拌部材の故障判定方法を説明するためのフローチャートである。
【0059】
ステップ(以下、ステップをSと略す)101にて、コントローラ61は、イグニションSW62がONされたかどうかを判別し、イグニションSW62がONされた場合には、S102に進む。
【0060】
S102にて、コントローラ61は、第1の温度センサ131から出力される温度情報の検出を開始してS103に進む。
【0061】
S103にて、コントローラ61は、第1の温度センサ131から出力される温度情報に基づき、円筒型電池121A11の電池温度が攪拌部材31の作動温度よりも高いか否かを判別する。ここで、攪拌部材31の作動温度は、円筒型電池121の種類により適宜変更することができる。例えば、円筒型電池121としてリチウムイオン電池を使用した場合には、攪拌部材31の作動温度を55℃に設定するとよい。
【0062】
リチウムイオン電池では、電池温度が60℃(以下、最高使用温度という)を超えると電池劣化が進行すると考えられており、当該最高使用温度よりも低い温度を作動開始温度とすることにより、リチウムイオン電池の劣化を抑止できる。
【0063】
S104にて、コントローラ61は、第1の温度センサ131から出力される温度情報に基づき、円筒型電池121A11の電池温度が攪拌部材21の作動温度を超えている場合には、モータユニット35に作動信号を出力する。
【0064】
また、S105にて、コントローラ61は、内部タイマーによるカウント動作を開始する。
【0065】
S106にて、コントローラ61は、内部タイマーによりカウント時間が10秒に達したかどうかを判定する。ここで、カウント時間を10秒に設定したのは、攪拌部材31による攪拌動作が開始され、冷却液14の温度のバラツキが抑制されるまでの時間を確保するためである。
【0066】
S107にて、コントローラ61は、第1の温度センサ131により検出された円筒型電池121A11の電池温度(以下、「温度T1」という)と、第2の温度センサ132により検出された円筒型電池121D14の電池温度(以下、「T2」という)とを比較する。
【0067】
S108にて、コントローラ61は、温度T1が温度T2よりも20℃(設定温度)以上高いか否かを判定する。ここで、温度T1が温度T2よりも20℃以上高い場合には、S104にて作動信号を出力しているにもかかわらず、故障により攪拌部材31が作動せずに、電池の温度差が拡大したものと考えられる。
【0068】
ここで、攪拌部材31の回転数を測定し、この測定結果に基づき攪拌部材31の故障を判定する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、攪拌部材31の回転数を測定するための回転計を必要とするため、コストが増大する。これに対して、本実施例では、電池の温度差に基づき、攪拌部材31の故障を判定しているため、回転計を省略することによりコストを削減することができる。
【0069】
また、冷却液14の流速を測定し、この測定結果に基づき攪拌部材31の故障を判定する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、攪拌部材31の流速を測定するための流量計を必要とするため、コストが増大する。これに対して、本実施例では、電池の温度差に基づき、攪拌部材31の故障を判定しているため、流量計を省略することによりコストを削減することができる。
【0070】
S109にて、コントローラ61は、報知装置41に信号を出力する。ここで、報知装置41としては、運転席前方のコンビネーションメータに設けられたコーションランプを用いることができる。コーションランプは、攪拌部材31が作動不能である場合に点灯して、車室内の乗員に故障を報知する。
【0071】
(実施例2)
次に、実施例2の故障判定装置による攪拌部材の故障判定方法について、図6を参照しながら説明する。実施例1では、温度上昇した円筒型電池121の温度を下げるために攪拌部材31を作動したが、本実施例では、温度低下した円筒型電池121の温度を上げるために攪拌部材31を作動する。図6は、攪拌部材の故障判定方法を説明するためのフローチャートである。
【0072】
車両外部の温度が低い場合には、車両のフロアパネルFに設置された収容容器11を介して組電池12の熱が放熱され、特に最下段に配列される(つまり、フロアパネルに近い側に配置される)円筒型電池121D1〜14の電池温度が上がりにくくなり、要求出力に対応した電池出力が得られなくなる。例えば、リチウムイオン電池の場合には、電池温度が10℃以下になると、要求出力に対応した電池出力が得られなくなると考えられている。
【0073】
一方、最上段に配列される円筒型電池121A1〜14は、最下段に配置される円筒型電池121D1〜14よりも熱が逃げにくく、電池温度を上げやすい。そこで、最下段の円筒型電池121D1〜14の電池温度が10℃よりも低い場合には、冷却液14を攪拌して、温度分布のバラツキを抑制しながら冷却液14の温度を上昇させ、これにより円筒型電池121D1〜14の電池温度を上昇させる必要がある。
【0074】
しかしながら、実施例1と同様の理由から、故障により攪拌部材31が作動しない場合がある。そこで、以下の手順にしたがって、攪拌部材31の故障を判定する。なお、特許請求の範囲では、実施例の冷却液14に対応する発明特定事項を液状の熱交換媒体と表現している。これは、本実施例のように、円筒型電池121を昇温させるための熱交換媒体として冷却液14を使用する場合を考慮したものである。
【0075】
S201にて、コントローラ61は、イグニションSW62がONされたかどうかを判別し、イグニションSW62がONされた場合には、S202に進む。
【0076】
S202にて、コントローラ61は、第2の温度センサ132から出力される温度情報の検出を開始してS203に進む。
【0077】
S203にて、コントローラ61は、第2の温度センサ132から出力される温度が10℃よりも低いか否かを判定する。前述したように、電池温度が10℃よりも低い場合には、必要な出力値に対応した電池出力が得られないため、電池温度を昇温させる必要がある。
【0078】
S204にて、コントローラ61は、第2の温度センサ132から出力される温度が所定温度よりも低い場合には、モータユニット35に作動信号を出力する。この場合、攪拌部材30を作動することにより、冷却液14全体の温度のバラツキを抑制しながら、最下段に配列される円筒型電池121D1〜14の電池温度を上昇させることができる。
【0079】
S205にて、コントローラ61は、内部タイマーによるカウント動作を開始する。
【0080】
S206にて、コントローラ61は、内部タイマーが10秒以上カウントしたかどうかを判定する。ここで、カウント時間を10秒に設定したのは、攪拌部材31による攪拌動作が開始され、冷却液14の温度のバラツキが抑制されるまでの時間を確保するためである。
【0081】
S207にて、コントローラ61は、第1の温度センサ131により検出された円筒型電池121A11の電池温度(以下、「温度T3」という)と、第2の温度センサ132により検出された円筒型電池121D14の電池温度(以下、「T4」という)とを比較する。
【0082】
S208にて、コントローラ61は、温度T3が温度T4よりも20℃以上高いか否かを判定する。ここで、温度T3が温度T4よりも20℃以上高い場合には、S204にて作動信号を出力しているにもかかわらず、故障により攪拌部材31が作動せずに、電池の温度差が拡大しているものと考えられる。
【0083】
S209にて、コントローラ61は、報知装置41に信号を出力する。ここで、報知装置41としては、運転席前方のコンビネーションメータに設けられたコーションランプを用いることができる。コーションランプは、攪拌部材31が作動不能である場合に点灯して、車室内の乗員に故障を報知する。本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0084】
(他の実施例)
攪拌部材31としては、他の構成を用いることもできる。例えば、攪拌部材として、外面に攪拌フィンを有する無端ベルトを用いることができる。この場合、組電池12全体を包囲するように無端ベルトを配置するとよい。また、攪拌部材として、収容容器11の内外で冷却液14を循環させる循環ポンプを用いることができる。
【0085】
上述の各実施例では、収容容器11の内部の温度差を検出するための検出センサとして、円筒型電池121に設けられた温度センサを用いたが、他の検出センサを用いることもできる。例えば、蓋部材13の内面及び収容容器11の底面にそれぞれ第1及び第2の温度センサを設けて、冷却液14の上下の温度差を直接検出してもよい。この場合、冷却液14及び円筒型電池121の温度分布は互いに概ね等しいため、冷却液14の上下の温度差を検出して、この温度差が所定温度以上である場合に、攪拌部材31が故障していると判定することができる。
【0086】
また、各円筒型電池121の電圧差から円筒型電池121の温度差を推定し、この推定した温度差に基づき攪拌部材31の故障を判定することもできる。電池温度と電池の出力値(電圧値)との間には相関関係があり、電池温度の上昇に応じて電池の出力値は高くなる。したがって、円筒型電池121の電圧値から電池の温度差を推定することもできる。
【0087】
円筒型電池121の電圧を検出する検出センサとしては、例えば、電池ECUを用いることができる。この場合、電池ECUが請求項1に記載の「検出センサ」に相当する。上述の各実施例と同様に、円筒型電池121A11、121D14を電圧検出の対象にするとよい。
【0088】
攪拌部材31の故障を報知する報知装置の構成として、音声を用いることもできる。例えば、ドアにスピーカを設けて、該スピーカからの音声出力により、攪拌部材31の故障を報知することができる。また、ハイブリッド車両に搭載されたディスプレイなどに、攪拌部材31の故障を表示してもよい。
【0089】
上述の各実施例では、第1の温度センサ131又は第2の温度センサ132から出力される温度情報に基づき攪拌部材31を作動したが、攪拌部材31を常時回転させる構成であってもよい。この場合、コントローラ61は、イグニションSW62がオンされると同時に、モータユニット35に作動信号を出力する。攪拌部材31の故障判定方法は、前述した図5及び図6のフローチャートと同様であるが、S102、S103、S202、S203については省略される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】蓄電装置の分解斜視図である。
【図2】円筒型電池の長手方向に対して直交する方向における蓄電装置の断面図である。
【図3】攪拌ユニットの斜視図である。
【図4】攪拌部材の故障判定装置の回路構成を図示したブロック図である。
【図5】故障判定装置による攪拌部材の故障判定方法を示したフローチャートである。
【図6】実施例2の故障判定装置による攪拌部材の故障判定方法を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
11 収容容器
12 組電池
13 蓋部材
14 冷却液
30 攪拌ユニット
31 攪拌部材
31a 攪拌フィン
31b 回転軸
35 モータユニット
36 第1の対流方向調整板
37 第2の対流方向調整板
41 報知装置
61 コントローラ
121 円筒型電池
131 第1の温度センサ
132 第2の温度センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電体と熱交換を行う液状の熱交換媒体と、
前記複数の蓄電体及び前記熱交換媒体を収容する収容容器と、
出力回路から出力された作動信号に基づき前記熱交換媒体を攪拌する攪拌部材と、
前記収容容器の内部の温度差を検出するための検出センサと、
前記出力回路から前記作動信号が出力された後に、前記収容容器の内部の温度差が予め設定された設定温度以上である場合には、前記攪拌部材が故障であると判定する故障判定手段と、を有することを特徴とする攪拌部材の故障判定装置。
【請求項2】
前記検出センサは、前記蓄電体の温度を検出する温度センサであることを特徴とする請求項1に記載の攪拌部材の故障判定装置。
【請求項3】
前記複数の蓄電体は、第1の蓄電体と、この第1の蓄電体よりも下方に配置される第2の蓄電体とを含み、
前記温度センサは、前記第1の蓄電体に設けられた第1の温度センサと、前記第2の蓄電体に設けられた第2の温度センサとを含むことを特徴とする請求項2に記載の攪拌部材の故障判定装置。
【請求項4】
前記複数の蓄電体は、前記攪拌部材が正常に作動する正常作動状態において最高温度となる第1の蓄電体と、最低温度となる第2の蓄電体とを含み、
前記温度センサは、前記第1の蓄電体に設けられた第1の温度センサと、前記第2の蓄電体に設けられた第2の温度センサとを含むことを特徴とする請求項2に記載の攪拌部材の故障判定装置。
【請求項5】
前記検出センサは、前記蓄電体の電圧を検出する電圧検出センサであることを特徴とする請求項1に記載の攪拌部材の故障判定装置。
【請求項6】
前記攪拌部材は、外周面に攪拌フィンが形成された回転軸を含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の攪拌部材の故障判定装置。
【請求項7】
前記攪拌部材は、コイルに通電して前記回転軸を回転させるモータにより駆動されることを特徴とする請求項6に記載の攪拌部材の故障判定装置。
【請求項8】
前記設定温度は、前記攪拌部材が正常に機能しているときの前記収容部の内部の最大温度差よりも高いことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一つに記載の攪拌部材の故障判定装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずか一つに記載の攪拌部材の故障判定装置と、
該攪拌部材の故障判定装置の判定結果を車内の乗員に報知するための報知装置と、を有することを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−158442(P2009−158442A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338889(P2007−338889)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】