説明

攪拌釜

【課題】羽根の着脱は容易に行うことができるものでありながら、羽根の脱落は防止することのできる攪拌釜を提供する。
【解決手段】アーム5部分に設けたアーム部穴3と、羽根7部分に設けた羽根部穴14を合わせた一続きの貫通穴に差し込みピン9を通すことでアーム5と羽根7の連結を行い、アームと羽根の連結部に、2箇所のコイル部とコイル部をつなぐ2つの連結部によって環状としたねじりバネ10を組み込むことで、羽根をアームとの連結部で折り曲げた際には、ねじりバネ10で羽根が開く方向に力が掛かるようにするとともに、アーム部には羽根が所定角度より開くことを防止するストッパ12を設けることで、羽根は所定角度までしか開かないようにしており、前記差し込みピン9は、先端をワッシャー形金具であるピン固定具11と接合することによって抜け落ちることがないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釜の内面に沿って動く羽根を持ち、食材を攪拌しながら調理する攪拌釜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品工場などでは円弧形の釜内底部に沿って動く羽根を設けておき、羽根を回転させることで食材を攪拌しながら調理を行う攪拌釜が広く普及している。攪拌釜では、釜内に回転軸を設け、回転軸の周囲にアームを介して羽根を設置しておき、回転軸を回転させることで羽根を回転させるようにしている。羽根は釜の内面を擦りながら回転させるため、バネを使って羽根を釜内面に押さえ付けることが行われている。
【0003】
食品を調理する攪拌釜の場合、装置は掃除を行うことで常に清潔に保つ必要がある。攪拌釜を掃除する際には羽根の取り外しを行うため、羽根のアームとの着脱は頻繁に行われている。バネによって羽根を釜内面に押さえ付けている攪拌釜の場合、羽根をアームに取り付ける際にはバネを手でねじらせながら組み付ける必要があり、作業しづらいものであった。また攪拌中に羽根が外れることを防止するために、アームと羽根の連結部にナットなどの固定具を使用している場合には、羽根の着脱時に工具が必要であり、アームと羽根の着脱は手間の掛かるものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実登2595339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、羽根を釜内面に適度の力で押さえ付けるようにしている攪拌釜であって、羽根の着脱は容易に行うことができるものでありながら、羽根の脱落は防止することのできる攪拌釜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、釜内の回転軸と接続したアームの先端に羽根を設置しておき、釜の内面に沿って前記羽根を回転させることで食品の攪拌を行う攪拌釜であって、アーム部分に設けたアーム部穴と、羽根部分に設けた羽根部穴を合わせて一続きの貫通穴とし、前記貫通穴に差し込みピンを通すことでアームと羽根の連結を行うようにしており、アームと羽根の連結部に、2箇所のコイル部とコイル部をつなぐ2つの連結部によって環状としたねじりバネを組み込むことで、羽根をアームとの連結部で折り曲げた際には、ねじりバネがねじられることで羽根が開く方向に力が掛かるようにするとともに、アーム部には羽根が所定角度より開くことを防止するストッパを設けることで、羽根は所定角度までしか開かないようにしている攪拌釜であって、前記差し込みピンを軸としてねじりバネをねじる方向に羽根を曲げた状態で差し込んだ差し込みピンは、先端をワッシャー形金具であるピン固定具と接合することによって抜け落ちることがないようにしていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記の攪拌釜において、差し込みピンは先端に差し込みピンの軸に対して交差する方向に延びるピン部突起物を設け、ピン固定具は、縦と横で大きさを異ならせている長穴を持ち、差し込みピンとの接合時に外側となる面には留め具を設けたものであり、長穴の長径部は差し込みピンの先端部に設けているピン部突起物を通すことのできる大きさ、長穴の短径部はピン部突起物を通すことのできない大きさとしておき、差し込みピン先端を長穴に通した後にピン固定具を回転させ、ピン固定具の留め具に前記差し込みピンのピン部突起物を掛けることでピン固定具が外れない ようにしていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記の攪拌釜において、ねじりバネのコイル部は掃除をしやすくするための隙間を開けて巻いているものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
羽根の着脱は工具を用いることなく簡単に行うことができ、しかも攪拌使用時には釜内面に羽根を適度に押さえ付けることができて羽根が外れることも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施している攪拌釜の断面図
【図2】実施例における羽根部の組立説明図
【図3】実施例における羽根抜き出し図
【図4】実施例における差し込みピンとピン固定具の組立説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施している攪拌釜の断面図、図2は攪拌釜羽根部の組立説明図、図3は攪拌釜の羽根部抜き出し図、図4は差し込みピンとピン固定具の組立説明図である。攪拌釜1は半球状の底部を持った容器の下方に蒸気ジャケット2を持ち、蒸気ジャケット2内に高温の蒸気を供給することで加熱を行うものである。半球状底部の中心から少しずれた位置に、攪拌釜の底部を貫いて斜め上方に延びる回転軸4を設けておく。回転軸4には、先端部から周囲の方向に延びるアーム5を3本接続しており、各アーム5の他端側に攪拌用の羽根7を設ける。回転軸4は、攪拌釜1の下部に設けている原動機6と接続しており、原動機6を駆動することで回転軸4の回転を行い、羽根7を攪拌釜の内面に沿って動かすことで攪拌釜1内の食材を攪拌するものである。
【0012】
アーム5と羽根7は容易に着脱することができるように接続する。アーム5の先端には、羽根取付ボス8を設置しておき、羽根取付ボス8には、先端近くに1本の貫通するアーム部穴3を開けている。羽根取付ボス8には、羽根の角度を定めるためのストッパ12を設ける。ストッパ12は、羽根取付ボス8の先端から先方向に延ばした突起体であり、アーム5の中心軸に対して45度程度傾けた方向に延びる面を持っている。ストッパ12は、アーム5と羽根7の連結部で羽根7を曲げた状態で連結した場合、ねじりバネ10の力によって羽根7がアーム5に対して真っすぐとなる方向に動こうとしても、ストッパ12が羽根7に当たることでアーム5に対する羽根7の取付角度が所定角度よりも開くことがないようにするものである。
【0013】
羽根7のアーム5と連結する部分には、羽根取付ボス8を挟み込む位置に2枚の接続片13を設ける。接続片13は円盤形であって、円心部分にはアーム部穴3の位置に合わせて羽根部穴14を開けておく。接続片13の外側となる盤面には、ねじりバネ10のコイル部が来る位置にコイル部を乗せ置くためのバネ受け18を設ける。バネ受け18は、接続片13の羽根7側を底部とした円弧状の板であり、羽根7の連結時にはバネ受け18にねじりバネ10を乗せ置いた状態で接続するようにすることで、ねじりバネ10のコイル部と接続片13のアーム部穴3がずれないようにすることができる。
【0014】
羽根7とアーム5を接続する場合、2箇所のコイル部とコイル部をつなぐ2つの連結部によって環状としているねじりバネ10を連結部に組み込む。ねじりバネ10は、2つのコイル部が羽根部に2枚設けている接続片13の外側となり、コイル部の中空部が接続片13の羽根部穴14と連なるように配置する。ねじりバネ10の2つの連結部は90度ほどずらしたものとしており、2つのコイル部はそれぞれで1mm程度の隙間を開けて巻くことで、バネの隙間を掃除しやすくしておく。コイル部は隙間をあまり開けることなく巻くのが一般的であるが、コイル部の隙間は、限界まで狭くしても食材が隙間に入り込むことを防ぐのは不可能であり、コイル部の隙間がせまいと、掃除をした際に食材の取り残しが発生し、残った食材が汚染源になってしまうおそれがある。コイル部に1mm程度の隙間を開けておくことで掃除がしやすくなり、コイル部で食材が残留することを防止できる。
【0015】
アーム5と羽根7を連結する場合、ねじりバネ10のコイル部の中空部、2枚ある接続片13の羽根部穴14、羽根取付ボス8のアーム部穴3を一直線とし、1本の貫通穴を形成した状態で、差し込みピン9を貫くように差し込むことで、アーム5と羽根7を連結する。このとき、ねじりバネ10の2つの連結部は、アーム部と羽根部でそれぞれ同じ面(攪拌時には後ろ側になる面)に置いておき、羽根7をアーム5との連結部で折り曲げるようにバネをねじると、バネが戻る力によって羽根にはアーム5との角度が開く方向に力が発生するようにしておく。羽根7は連結部で少し曲げた状態で攪拌釜1の内面に接するように配置しておくと、バネの力が羽根7を釜の内面に押さえ付ける力として働くことになる。
【0016】
差し込みピン9は、貫通穴に差し込んだだけでは簡単に抜けてしまうため、差し込みピン9の先端をピン固定具11に差し込んで結合することによって差し込みピン9が抜けなくなるようにする。差し込みピン9の太さは、アーム部穴3や羽根部穴14の穴径よりわずかに小さなものとするが、差し込みピン9の先端部は径を細くしておき、細くした部分にピン部突起物15を付ける。ピン部突起物15は、差し込みピン9の軸に対して交差する方向に丸棒を溶接するなどして形成したものであり、2方向に突き出させている。
【0017】
ピン固定具11は、円盤の中央に穴を開けたワッシャー形金具であって、中央の穴は縦と横で大きさを違わせている長穴17とし、円盤の一方の面に留め具16を設ける。長穴17の長径部は差し込みピン9の先端部に設けているピン部突起物15を通すことのできる大きさ、長穴17の短径はピン部突起物15を通すことのできない大きさとする。ピン固定具11に設けている留め具16は、ピン部突起物15を挟み込むことで差し込みピン9が回転しないようにするもので、ピン部突起物15を入れるための間隔を開けた2つの突起からなっている。
【0018】
図2を用いて羽根7の取付け手順を用いて説明する。図2の左端はアーム5、ピン固定具11、ねじりバネ10、羽根7、差し込みピン9に分解した状態にある。まず、ねじっていない状態であるねじりバネ10のコイル部をバネ受け18に乗せ置くことで、ねじりバネ10のコイル部と羽根部穴14を合わせる。バネ受け18にねじりバネ10を乗せた状態が図2の中央の図であり、次に、羽根7の羽根部穴14を羽根取付ボス8のアーム部穴3に合わせて1本の貫通穴とし、差し込みピン9を貫通穴に差し込む。
【0019】
この状態では、差し込みピン9は差し込んだだけであって、すぐに抜けてしまうため、差し込みピン9をピン固定具11に差し込むことで差し込みピン9を抜けなくする。ピン固定具11による固定の手順は図4に示している。差し込みピン9のピン部突起物15とピン固定具11の長穴17の長径部を合わせないと、差し込みピン9をピン固定具11に刺すことができないため、図4上の図では、ピン部突起物15は差し込みピン9から水平方向に延びる位置に置き、ピン固定具11の長穴17は横に長くし縦に短くした状態としている。このように穴の向きを合わせた状態で差し込みピン9にピン固定具11を押し込むと、ねじりバネ1が差し込みピン9の軸方向に圧縮され、ピン固定具11をピン部突起物15よりも奥側まで押し込むことができる。ピン固定具11でねじりバネ10を押した状態でピン固定具11を90度回転し、ピン部突起物15を留め具16の間に入れる。ピン固定具11を押さえ付けていた手の力を弱めると、圧縮されていたねじりバネ10が延び、ねじりバネ10がピン固定具11を押し出す方向の力がかかることになる。しかし、ピン固定具11はピン部突起物15に当たると、それ以上は動けないためにピン固定具11は差し込みピン9から外れることはなく、差し込みピン9も羽根部穴14から抜けなくなる。
【0020】
ねじりバネ10をひねった状態でアーム5と羽根7の連結を行うと、ねじりバネ10が戻ろうとする力が羽根7にかかり、羽根7はアーム5に対して直線となる向きに回転しようとするが、ストッパ12が羽根7に当たるとそれ以上に動くことはできない。そのため、羽根7はアーム5に対して所定の角度までしか開かないようになっている。羽根7はアーム5との連結部で折れ曲がった状態で攪拌釜1の内面に接触するようにしておくことで、ねじりバネ10の力は羽根7を攪拌釜内面に押さえ付ける力となる。そのため、羽根7を連結した状態で原動機6を作動して回転軸を回転させると、釜内面に沿わせて羽根7を回転させることができる。
【0021】
なお、羽根7を取り外す場合は逆の手順であり、ピン固定具11をねじりバネ10に押しつけて留め具16からピン部突起物15を外し、ピン固定具11を90°回転させてピン部突起物15と長穴17の位置を合わせると、ピン固定具11を差し込みピン9から外すことができる。ピン固定具11を外すと差し込みピン9抜くことができるため、差し込みピン9を抜いて羽根7を外す。
【符号の説明】
【0022】
1 攪拌釜
2 蒸気ジャケット
3 アーム部穴
4 回転軸
5 アーム
6 原動機
7 羽根
8 羽根取付ボス
9 差し込みピン
10 ねじりバネ
11 ピン固定具
12 ストッパ
13 接続片
14 羽根部穴
15 ピン部突起物
16 留め具
17 長穴
18 バネ受け


【特許請求の範囲】
【請求項1】
釜内の回転軸と接続したアームの先端に羽根を設置しておき、釜の内面に沿って前記羽根を回転させることで食品の攪拌を行う攪拌釜であって、アーム部分に設けたアーム部穴と、羽根部分に設けた羽根部穴を合わせて一続きの貫通穴とし、前記貫通穴に差し込みピンを通すことでアームと羽根の連結を行うようにしており、アームと羽根の連結部に、2箇所のコイル部とコイル部をつなぐ2つの連結部によって環状としたねじりバネを組み込むことで、羽根をアームとの連結部で折り曲げた際には、ねじりバネがねじられることで羽根が開く方向に力が掛かるようにするとともに、アーム部には羽根が所定角度より開くことを防止するストッパを設けることで、羽根は所定角度までしか開かないようにしている攪拌釜であって、前記差し込みピンを軸としてねじりバネをねじる方向に羽根を曲げた状態で差し込んだ差し込みピンは、先端をワッシャー形金具であるピン固定具と接合することによって抜け落ちることがないようにしていることを特徴とする攪拌釜。
【請求項2】
請求項1に記載の攪拌釜において、差し込みピンは先端に差し込みピンの軸に対して交差する方向に延びるピン部突起物を設け、ピン固定具は、縦と横で大きさを異ならせている長穴を持ち、差し込みピンとの接合時に外側となる面には留め具を設けたものであり、長穴の長径部は差し込みピンの先端部に設けているピン部突起物を通すことのできる大きさ、長穴の短径部はピン部突起物を通すことのできない大きさとしておき、差し込みピン先端を長穴に通した後にピン固定具を回転させ、ピン固定具の留め具に前記差し込みピンのピン部突起物を掛けることでピン固定具が外れない ようにしていることを特徴とする攪拌釜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の攪拌釜において、ねじりバネのコイル部は掃除をしやすくするための隙間を開けて巻いているものであることを特徴とする攪拌釜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−101684(P2011−101684A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256927(P2009−256927)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000130651)株式会社サムソン (164)
【Fターム(参考)】