説明

支保工用具、支保構造、及び支保工法

【課題】構築及び解体時の作業を省力化するととともに、建設コストの低廉化、廃材の減少を図る。
【解決手段】平行に隣接配置された端太角40を連結した状態で支持する支保工用具10であって、隣接配置された端太角40を、弾性力により一括して把持し、端太角40を下方から支持して固定する把持部110と、把持部110に接合され、端太角40の側面及び上面を拘束する拘束部120とを有する。拘束部120は、構造材40の上面側を拘束する上面拘束部121と、上面拘束部121と、把持部110とを結合する連結部122とからなり、上面拘束部121により構造材40を拘束した状態において、把持部110は、上面拘束部121を中心軸とする回転により、構造材40に対する把持位置と解放位置との間を移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、天井スラブや梁等を構築する際に組立てられるコンクリート型枠などの仮設構造物を支持・固定する支保工用具、支保構造、及び支保工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば天井スラブや梁等のコンクリート構造物は、コンクリート型枠を仮設し、型枠内に鉄筋を配筋し、コンクリートを打設することで、構築される。天井スラブや梁等の場合、かかるコンクリート型枠は、コンクリートの打設箇所に設置され、下方から支持・固定される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、住宅や小規模建築物などにおける天井スラブの構築に際しては、このコンクリート型枠を下方から支持する場合、所謂「端太角」と呼ばれる仮設用の角材を、ジャッキ等の揚重機により所定の高さ位置に平行に複数配置し、それら端太角の上にパイプなどを掛け渡して、コンクリート型枠を支保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−61180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、天井スラブや梁等のサイズや形状は種々であることから、コンクリート型枠もそれに合わせて種々のサイズ・形状となり、その支保工に用いられる上記端太角の長さや支持・固定位置も、適宜変更する必要がある。従来では、支保工に際し、端太角の長さが足りない場合には、複数本を継いで用いている。この端太角の継ぎ作業は、一対の端太角を重複させて継ぎ足し、その重複箇所において釘などで相互に固定しているため、その作業が複雑であるため、相当の作業時間が必要とされることと、また、頑強に固定するためには熟練を要するという問題があった。
【0006】
また、端太角は仮設用であることから、コンクリートの硬化後に解体される。その際、上述したように、端太角は継ぎ部分において釘で固定されているため、解体時に、釘を引き抜くことによって、端太角が傷む場合があり、端太角の再利用が難しくなり、建設コストの増大と、廃材の増量を招く結果となっている。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するものであり、天井スラブや梁等を構築する際に組立てられるコンクリート型枠などの仮設構造物を支持・固定する際に、構築及び解体時の作業を、熟練を要することなく省力化するととともに、仮設材の再利用率を向上させて、建設コストの低廉化、廃材の減少を図ることができる支保工用具、支保構造、及び支保工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、平行に隣接配置された構造材を連結した状態で支持する支保工用具であって、隣接配置された構造材を、弾性力により一括して把持し、該構造材を下方から支持して固定する把持部と、把持部に接合され、構造材の側面及び上面を拘束する拘束部とを有する。
【0009】
このような発明によれば、隣接配置された構造材同士を、下方から把持部の弾性力により一括して締め付けて把持するとともに、側面及び上方からも拘束部により拘束して固定するので、隣接配置された構造材同士が確実に連結される。これにより、本発明によれば、把持部及び拘束部による把持及び拘束のみで、構造材同士の連結した状態を維持できるので、従来用いられていた釘等を使用した作業よりも、熟練を要することなく、容易に構築及び解体することができ、作業を省力化することができる。また、構造材を釘等で固定しないので、組立時や解体時に構造材が傷むことがなく、他の現場においても構造材を再利用することができ、仮設材の再利用率を向上させて、建設コストの低廉化、廃材の減少を図ることができる。
【0010】
上記発明において、拘束部は、構造材の上面側を拘束する上面拘束部と、上面拘束部と、把持部とを結合する連結部とからなり、上面拘束部により構造材を拘束した状態において、把持部は、上面拘束部を中心軸とする回転により、構造材に対する把持位置と解放位置との間を移動可能であることが好ましい。この場合には、上面拘束部を中心軸として把持部を回転させることで、把持部による構造材の把持又は解放を容易に行うことができるので、従来用いられていた釘等を使用した作業よりも、熟練を要することなく、容易に構造材の構築及び解体することができ、作業を省力化することができる。
【0011】
また、上記発明において、把持部は、屈曲された硬材で形成され、屈曲された部分の弾性力により構造材を把持し、屈曲された部分の少なくとも一つは、把持部が構造材を把持した状態において、下方へ向けて突出していることが好ましい。
【0012】
この場合、把持部に形成された屈曲する部分によって構造材を把持するための弾性力を生じさせることができるとともに、屈曲部分の弾性変形により把持部の幅が一定の許容量を有することとなり、種々のサイズ・形状の構造材に対応して把持することができる。さらに、屈曲された部分の少なくとも一つは、把持部が構造材を把持した状態において、下方へ向けて突出しているので、その突出した部分を取っ手部分として使用することができる。また、この下方へ突出した屈曲部分は、例えば、下方に設置されたジャッキ等の架台に連結するための係合部としても利用することができ、この支保工用具を用いた支保構造を、より強固なものにすることができる。
【0013】
なお、上述した上面拘束部を中心軸として回転させるようなときには、構造材の建築時及び解体時において、突出した部分をハンマー等で叩くことで、その外力を把持部に伝達させ、その結果、把持部の構造材に対する位置を、容易に把持位置又は解放位置へ移動させることができ、作業を省力化することができる。
【0014】
上記支保工用具は、以下のような他の発明である、平行に隣接配置された構造材を連結した状態で支持する支保構造及び支保工法に用いることができる。
【0015】
すなわち、支保構造の発明は、平行に隣接配置された構造材を連結した状態で支持する支保構造であって、隣接配置された構造材を、弾性力により一括して把持し、該構造材を下方から支持して固定する把持部と、把持部に接合され、構造材の側面及び上面を拘束する拘束部と、構造材を把持した状態において、把持部から下方へ向けて突出している係合部と、係合部を介して、構造材を支持する架台とから構成される。
【0016】
また、支保工法の発明は、平行に隣接配置された構造材を連結した状態で支持する支保工法であって、
(1)隣接配置された構造材を、把持部の弾性力により一括して把持するとともに、該把持部に接合された拘束部により、構造材の側面及び上面を拘束する構造材連結工程と、
(2)把持部によって構造材を把持した状態において、該構造材を下方から支持するとともに、把持部から下方へ向けて突出している係合部を介して、構造材を架台により支持する構造材支持工程と
を有する。
【0017】
これらの発明によれば、隣接配置された構造材同士を、下方から把持部の弾性力により一括して締め付けて把持するとともに、側面及び上方からも拘束部により拘束して固定するので、隣接配置された構造材同士が確実に連結することができる。これにより、本発明によれば、コンクリート型枠などの仮設構造物を構築する際に、熟練を要することなく簡易に建築することができ、その作業を省力化することができる。また、構造材を釘等で固定しないので、組立時や解体時に構造材が傷むことがなく、他の現場においても構造材を再利用することができ、仮設材の再利用率を向上させて、建設コストの低廉化、廃材の減少を図ることができる。
【0018】
また、仮設構造物を支持する際には、把持部から下方へ向けて突出している係合部を介して、構造材を架台により支持するので、仮設構造物が架台に確実に固定され、支保構造をより強固なものとすることができる。
【0019】
上記発明において、拘束部は、構造材の上面側を拘束する上面拘束部と、上面拘束部と、把持部とを結合する連結部とからなり、上面拘束部により構造材を拘束した状態において、把持部は、該上面拘束部を中心軸とする回転により、構造材に対する把持位置と解放位置との間を移動可能であることが好ましい。この場合には、上面拘束部を中心軸として把持部を回転させることで、把持部による構造材の把持又は解放を容易に行うことができるので、従来用いられていた釘等を使用した作業よりも、熟練を要することなく、容易に構造材の構築及び解体することができ、作業を省力化することができる。
【0020】
また、上記発明において、把持部は、屈曲された硬材で形成され、屈曲された部分の弾性力により構造材を把持し、屈曲された部分の少なくとも一つは、把持部が構造材を把持した状態において、係合部として下方へ向けて突出し、把持部は、係合部を介して、架台に支持されることが好ましい。
【0021】
この場合、把持部に形成された屈曲する部分によって構造材を把持するための弾性力を生じさせることができるとともに、屈曲部分の弾性変形により把持部の幅が一定の許容量を有することとなり、種々のサイズ・形状の構造材に対応して把持することができる。
【0022】
さらに、屈曲された部分の少なくとも一つは、把持部が構造材を把持した状態において、下方へ向けて突出しているので、その突出した部分を取っ手部分として使用することができる。なお、上述した上面拘束部を中心軸として回転させるようなときには、構造材の建築時及び解体時において、突出した取っ手部分をハンマー等で叩くことで、その外力を把持部に伝達させ、その結果、把持部の構造材に対する位置を、容易に把持位置又は解放位置へ移動させることができ、作業を省力化することができる。また、この下方へ突出した屈曲部分は、例えば、下方に設置されたジャッキ等の架台に連結するための係合部としても利用することができ、この支保工用具を用いた支保構造を、より強固なものにすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、この発明によれば、天井スラブや梁等を構築する際に組立てられるコンクリート型枠などの仮設構造物を支持・固定する際に、構築及び解体時の作業を、熟練を要することなく省力化するととともに、仮設材の再利用率を向上させて、建設コストの低廉化、廃材の減少を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る支保構造の全体構成を示す側面図である。
【図2】実施形態に係る支保工用具の全体構成を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る支保工用具の全体構成を示す上面図及び側面図である。
【図4】実施形態に係る支保工用具の取付動作を示す説明図である。
【図5】実施形態に係る支保工用具の取付動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る支保工用具の実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る支保構造の全体構成を示す側面図であり、図2は、本実施形態に係る支保工用具の全体構成を示す斜視図であり、図3は、本実施形態に係る支保工用具の全体構成を示す上面図及び側面図である。
【0026】
図1に示すように、支保構造1は、コンクリートの打設箇所に設置されるコンクリート型枠2を下方から支持する支保構造であって、コンクリート型枠2の下部に配置された構造材である端太角40と、端太角40を支持する架台30と、支保工用具10とから構成されている。
【0027】
コンクリート型枠2は、天井スラブや梁等を構築する際に組立てられる仮設構造物であり、コンクリートの打設箇所に設置される。本実施形態において、コンクリート型枠2は、コンクリート型枠の底面を形成するベニア板21等を有しており、このベニア板21を支保構造1により支持する。具体的には、架台30上に架設された端太角40の上に、金属製のパイプ22をさらに架設し、このパイプ22によりベニア板21を支持する。そして、この支保構造1により支持・固定された状態において、コンクリート型枠2内にコンクリートを打設することで、コンクリート構造物が構築される。
【0028】
端太角40は、コンクリートの打設箇所に設置されたコンクリート型枠2を、パイプ22を介して、下方から支持・固定する構造材であり、本実施形態では角材が用いられる。この端太角40は、架台30で支持されて、コンクリート型枠2の下方において平行に複数配置され、これら平行に配置された端太角40,40間にパイプ22が架設される。また、本実施形態において、端太角40は、種々の長さや大きさを有しており、コンクリート型枠のサイズ・形状に合わせて、端太角40を、複数継いで長さを調整している。この構造材を継ぐ際に、本実施形態では、隣接配置された端太角40の連結した状態を固定するために、連結部分には支保工用具10が用いられる。
【0029】
架台30は、建築物の床面50などの構造材上に設置され、端太角40を下方より支持し、所定の高さ位置に持ち上げる揚重機であり、例えば、ねじ式・歯車式・水圧式・油圧式等のジャッキ部31を備えている。本実施形態において、ジャッキ部31は、固定部32を内部に収納する筒状のねじ式ジャッキであり、ジャッキ部31の上部に備えられたハンドル35付きの回転体36を備えており、ハンドル35を回転させることで回転体36を上下動させ、その回転体36に連結された固定部32をジャッキアップ、ジャッキダウンさせるようになっている。
固定部32は、本実施形態では、ジャッキ部31の上方に連結した筒状の部材であり、その上部に板上のフランジ34が形成されているとともに、その上面が開口された凹部33を備えており、この凹部33と、支保工用具10の取っ手部分とを係合させることで、端太角40が架台30により支持されるようになっている。
【0030】
支保工用具10は、隣接配置された端太角40を連結した状態で固定・支持する治具であって、例えば、鋳造した鉄や鋼等の金属部材を溶接で接合して成形されている。そして、本実施形態において、支保工用具10は、図2に示すように略Y字形をなす把持部110と、把持部110の屈曲部分に連結された拘束部120とから構成されている。
【0031】
把持部110は、略Y字形状に屈曲された硬材で形成され、屈曲された部分の弾性力により隣接配置された端太角40を一括して把持し、端太角40を下方から支持して固定する部材であり、本実施形態においては、端太角40の側面部分を把持する一対の側面把持部111,112と、これらの側面把持部111,112とを連結し、架設時における端太角40の下面部分を支持・固定する下面把持部113とから構成されている。
【0032】
一対の側面把持部111,112は、図3(b)にも示すように、それぞれ、所定の角度D1及びD2をもって、内側に傾斜され、内方へ締め付けるように形成されており、この内方への締付力により端太角40を把持するようになっている。一方、一対の側面把持部111,112のそれぞれ先端部分111b,112bは、外側方向に向けて拡がるように形成されてているとともに、その先端部分が傾斜された切欠111c及び112cがそれぞれ形成されており、端太角40を差し込みやすいようになっている。さらに、一対の側面把持部111,112の内側面には、図3(b)に示すように、端太角40と接する部分に溝111a,112aをそれぞれ複数備えており、これら溝111a、112aの摩擦力によって、把持した端太角40の滑り落ちを防止するようになっている。
【0033】
下面把持部113には、複数の屈曲部分113a,113bを有している。本実施形態において、これらの屈曲部分113a,113bによって、把持部110に弾性力が生じ、この弾性力により端太角40を挟み込んで、把持するようになっている。
【0034】
本実施形態において、屈曲された部分の一つである屈曲部分113aは、図3(b)にも示すように、下面把持部113の中央部分に配置され、把持部110が端太角40を把持した状態において、下方へ向けて突出するように形成されている。この屈曲部分113aは、端太角40に対する着脱時において、作業者が掴む取手部分としても使用される。また、屈曲部分113aの先端部113cは、図3(c)に示すように、突出した方向に対して所定の角度D3で傾斜されている。これにより、例えば解体する際、作業者が下方からハンマー等で叩きやすくなっており、解体作業を省力化することができる。
【0035】
また、本実施形態において、屈曲部分113aは、架台30と係合する係合部としての機能も備えており、端太角40を把持した状態において、把持部110から下方へ向けて突出している屈曲部分113aと、架台30の凹部33とが係合することで、架台30は、係合部である屈曲部分113aを介して、端太角40を支持するようになっている。なお、上述したように屈曲部分113aの先端部113cが傾斜されていることにより、架台30の凹部33に係合させるときに、凹部33の内面との接触面積が増大し、係合部のぐらつきを抑止することができる。
【0036】
一方の屈曲部分113bは、図3(a)及び(b)に示すように、側面把持部112と、下面把持部113の境界部に形成されている。この屈曲部分113bにより、側面把持部112に弾力を持たせることができる。
【0037】
拘束部120は、図2に示すように、把持部110の屈曲部に接合され、端太角40の側面及び上面を拘束する部材であり、本実施形態において、拘束部120は、端太角40の上面側を拘束する上面拘束部121と、端太角40の側面を拘束するとともに、上面拘束部121と把持部110とを結合する連結部122とから構成されている。
【0038】
本実施形態において、連結部122は、把持部110に溶接されて、直角に屈曲された棒状部材であり、この連結部122が端太角40の側面を拘束するようになっている。なお、本実施形態において、連結部122は、屈曲された棒状の部材としているが、本発明はこれに限定するものではなく、把持部110と、上面拘束部121とを連結し、端太角40の側面を拘束すればよく、例えば、板状の部材であってもよい。
【0039】
上面拘束部121は、図3(a)に示すように、端太角40の上面を拘束する棒状部材であり、把持部110の下面把持部113と平行になるように形成されている。なお、本実施形態において、上面拘束部121は、棒状をなしているとともに、その先端部121aは、テーパー状の切欠が形成されており、端太角40を差し込みやすいようになっている。
【0040】
このような構成を有する支保工用具10では、図4(a)に示すように、端太角40の設置前の状態において、上面拘束部121及び把持部110で挟み込むように、平行に隣接配置された端太角40に差し込み、図4(b)及び図5に示すように、上面拘束部121により端太角40を拘束した状態において、上面拘束部121を中心軸として回転させることにより、端太角40に対する把持部110の把持位置と解放位置との間が移動可能となっている。
【0041】
(支保工法)
上述した支保構造は、以下の手順により構築することができる。図4及び図5は、本実施形態に係る支保工用具10を用いた支保工法の手順を示す説明図である。
【0042】
先ず、コンクリート型枠2の下方の床面50上において、コンクリート型枠の設置箇所に対応させて、端太角40を複数配置する。この際、コンクリート型枠のサイズ・形状に合わせて、端太角40を平行に配置する。端太角40の長さがコンクリート型枠の長さに足りない場合には、端太角40を継ぎ足せるように、一部を重複させて平行に隣接配置する。
【0043】
次いで、端太角40の継ぎ作業を行う。本実施形態では、支保工用具10を用いて、端太角40の重複部分において継ぐようにして連結する。具体的には、図4(a)に示すように、隣接配置された端太角40の側面より、支保工用具10をスライド移動させて差し込む。なお、この時点では、端太角40は床面50上に載置されており、天地が逆の状態にある。従って、支保工用具10を端太角40に差し込んだ時点では、上面拘束部121が端太角40の下面及び側面に配置され、端太角40の下面及び側面を拘束するとともに、下面把持部113が端太角40の上面に位置されている。
【0044】
そして、上面拘束部121により端太角40を下側から拘束した状態において、図4(b)に示すように、上面拘束部121を中心軸(P)として回転させ、把持部110を端太角40に対する解放位置から、把持位置へと移動させる。この際、作業者は、屈曲部分113aを取っ手部分として掴み、回転させることができる。これにより、図5に示すように、隣接配置された端太角40は把持部110の弾性力により一括して把持されるとともに、把持部110に接合された拘束部120により、端太角40の側面及び上面が拘束される。
【0045】
次に、把持部110によって端太角40を把持した状態において、架台30上へ載置する。このとき、端太角40は、上下反転され、上面拘束部121が端太角40の上面及び側面に配置され、端太角40の上面及び側面を拘束するとともに、下面把持部113が端太角40の下面に位置されることとなる。そして、この反転された状態において、把持部110から下方へ向けて突出している屈曲部分113aと架台30の凹部33とを係合させ、この係合部分を介して、端太角40を架台30により下方から支持する。次いで、架台30に設置された端太角40を所定の高さまでジャッキアップし、その端太角40の上部に、パイプ材とベニア板を設置して、コンクリート型枠2を構築する。
【0046】
その後、コンクリートが硬化した際には、コンクリート型枠を脱型し、支保構造1を解体する。具体的には、架台30に設置された端太角40を、所定の高さまでジャッキダウンして、床面50まで下ろした後、端太角40を把持及び拘束した支保工用具10を取り外す。この支保工用具10の取り外しの際、作業者は、例えば、屈曲部分113aの先端部113cをハンマー等で叩くことにより、上面拘束部121を中心軸(P)として回転させ、把持部110は端太角40に対する把持位置から、解放位置へと移動させられる。これにより、支保工用具10は、端太角40から取り外すことができる。この支保構造の解体作業と併せて、端太角40の上方に配置したパイプ22及びベニア板21の撤去作業を行い、解体作業を終了する。
【0047】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、隣接配置された端太角40同士を、下方から把持部110の弾性力によって一括して締め付けて把持するとともに、側面及び上方からも拘束部120により拘束して固定するので、隣接配置された端太角40同士が確実に固定される。これにより、本実施形態によれば、隣接配置された端太角40を釘等で固定せず、支保工用具10によって把持及び拘束することで連結した状態を維持できるので、従来用いられていた釘等を使用した作業よりも、熟練を要することなく、容易に構築及び解体することができ、作業を省力化することができる。また、仮設材である端太角40を釘等で固定しないので、解体時に端太角40が傷むことがなく、他の現場においても端太角40を使用することができるので、仮設材の再利用率を向上させて、建設コストの低廉化、廃材の減少を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態において、拘束部120は、端太角40の上面側を拘束する上面拘束部121と、上面拘束部121と、把持部110とを結合する連結部122とからなり、上面拘束部121により端太角40を拘束した状態において、把持部110は、上面拘束部121を中心軸とする回転により、端太角40に対する把持位置と解放位置との間を移動可能であるので、従来用いられていた釘等を使用した作業よりも、熟練を要することなく、容易に構築及び解体することができ、作業を省力化することができる。
【0049】
また、本実施形態において、把持部110は、屈曲された硬材で形成されているので、端太角40を把持する把持部の幅が一定の許容量を有し、種々のサイズ・形状の端太角40に対応して把持することができる。
【0050】
また、屈曲された部分の少なくとも一つは、把持部110が端太角40を把持した状態において、下方へ向けて突出しているので、その突出した部分を取っ手部分として使用することができる。これにより、例えば、端太角40の建築時及び解体時において、ハンマー等で突出した部分を叩くことで、その外力が把持部110に伝達され、上面拘束部121を中心軸として回転されるので、その結果、把持部の端太角40に対する位置を、容易に把持位置又は解放位置へ移動させることができ、作業を省力化することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、仮設構造物を支持する際には、把持部110から下方へ向けて突出している突出部分113aを係合部として介し、端太角40を架台30により支持するので、この支保工用具10を用いた支保構造を、より強固なものにすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…支保構造
2…コンクリート型枠
10…支保工用具
21…ベニア板
22…パイプ
30…架台
31…ジャッキ部
32…固定部
33…凹部
34…フランジ
35…ハンドル部
36…回転体
40…端太角
50…床面
110…把持部
111,112…側面把持部
111a,112a…溝
111b,112b…先端部分
111c…切欠
112…側面把持部
113…下面把持部
113a,113b…屈曲部分
113c…先端部
120…拘束部
121…上面拘束部
121a…先端部
122…連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に隣接配置された構造材を連結した状態で支持する支保工用具であって、
隣接配置された前記構造材を、弾性力により一括して把持し、該構造材を下方から支持して固定する把持部と、
前記把持部に接合され、前記構造材の側面及び上面を拘束する拘束部と
を有することを特徴とする支保工用具。
【請求項2】
前記拘束部は、前記構造材の上面側を拘束する上面拘束部と、前記上面拘束部と、前記把持部とを結合する連結部とからなり、
前記上面拘束部により前記構造材を拘束した状態において、前記把持部は、該上面拘束部を中心軸とする回転により、前記構造材に対する把持位置と解放位置との間を移動可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の支保工用具。
【請求項3】
前記把持部は、屈曲された硬材で形成され、屈曲された部分の弾性力により前記構造材を把持し、
前記屈曲された部分の少なくとも一つは、該把持部が前記構造材を把持した状態において、下方へ向けて突出している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の支保工用具。
【請求項4】
平行に隣接配置された構造材を連結した状態で支持する支保構造であって、
隣接配置された前記構造材を、弾性力により一括して把持し、該構造材を下方から支持して固定する把持部と、
前記把持部に接合され、前記構造材の側面及び上面を拘束する拘束部と、
前記構造材を把持した状態において、前記把持部から下方へ向けて突出している係合部と、
前記係合部を介して、前記構造材を支持する架台と
から構成されることを特徴とする支保構造。
【請求項5】
前記拘束部は、前記構造材の上面側を拘束する上面拘束部と、前記上面拘束部と、前記把持部とを結合する連結部とからなり、
前記上面拘束部により前記構造材を拘束した状態において、前記把持部は、該上面拘束部を中心軸とする回転により、前記構造材に対する把持位置と解放位置との間を移動可能である
ことを特徴とする請求項4に記載の支保構造。
【請求項6】
前記把持部は、屈曲された硬材で形成され、屈曲された部分の弾性力により前記構造材を把持し、
前記屈曲された部分の少なくとも一つは、該把持部が前記構造材を把持した状態において、前記係合部として下方へ向けて突出し、
前記把持部は、前記係合部を介して、前記架台に支持される
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の支保構造。
【請求項7】
平行に隣接配置された構造材を連結した状態で支持する支保工法であって、
隣接配置された前記構造材を、把持部の弾性力により一括して把持するとともに、該把持部に接合された拘束部により、前記構造材の側面及び上面を拘束する構造材連結工程と、
前記把持部によって前記構造材を把持した状態において、該構造材を下方から支持するとともに、該把持部から下方へ向けて突出している係合部を介して、前記構造材を架台により支持する構造材支持工程と
を有することを特徴とする支保工法。
【請求項8】
前記拘束部は、前記構造材の上面側を拘束する上面拘束部と、前記上面拘束部と、前記把持部とを結合する連結部とからなり、
前記構造材連結工程において、前記把持部は、上面拘束部により前記構造材を拘束した状態において、該上面拘束部を中心軸とする回転により、前記構造材に対する把持位置へ移動される
ことを特徴とする請求項7に記載の支保工法。
【請求項9】
前記把持部は、屈曲された硬材で形成され、屈曲された部分の弾性力により前記構造材を把持し、
前記屈曲された部分の少なくとも一つは、該把持部が前記構造材を把持した状態において、前記係合部として下方へ向けて突出し、
前記把持部は、前記係合部を介して、前記架台に支持される
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の支保工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231535(P2011−231535A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103258(P2010−103258)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(510119728)
【Fターム(参考)】