説明

支持ホルダの取付構造

【課題】支持部材を挟持する一対の支持弾性部を有する支持ホルダにおいて、被支持部材の支持ホルダに対する誤った組み付けを簡易な構成により防止する。
【解決手段】リヤシェルフ(4)の支持軸(11)を挟持するための一対の支持弾性部(31)を有する支持ホルダ(12)を、サイドライニング(5)の凹部(13)内に取り付ける取付構造において、凹部の一側面を画成する壁面(22)から突設させた凸部(25)を、支持ホルダが凹部内に収容された状態で一対の支持弾性部の間に配置し、自由状態にある支持弾性部の挟持方向への変位を規制する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被支持部材を挟持するための一対の支持弾性部を有する支持ホルダを、取付対象物の凹部内に取り付けるための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハッチバック等の車両においては、車室後部の荷室の上面開口を覆うためのリヤシェルフを備えたものが知られている。リヤシェルフは、車体側に対して着脱容易に取付られており、例えば、リヤシェルフの左右側部に支持軸(被支持部材)を設け、この支持軸を支持させるための支持ホルダを車体側に設けたものが存在する。支持ホルダは、リヤシェルフの支持軸を挟持する一対の支持弾性部を有しており、サイドライニング等(取付対象物)に設けられた凹部に収められた状態で固定される。
【0003】
ところで、上記支持ホルダの支持弾性部は、リヤシェルフの支持軸を挟持する際に拡開される構成であり、凹部内における支持弾性部とその左右の壁との間にはある程度の間隙が存在する(特許文献1参照)。しかし、ユーザがリヤシェルフを固定する際に、支持軸をその間隙に誤って組み付けると、リヤシェルフが適切に固定されずに不安定な状態となったり、場合によっては、支持軸の押圧により支持弾性部が内側に大きく変位して破損したりするといった不都合が生じ得る。
【0004】
このような不都合の解消を直接意図した従来技術は見あたらないが、その対策の1つとして、例えば、支持ホルダの支持弾性部とそれを収容する凹部の壁との間隙に弾性体を配置してその間隙を塞ぐことが考えられる(特許文献1参照)。また、例えば、支持ホルダの上部周辺を覆うカバー部材を設けるとともに、当該カバー部材に開口を設けて支持軸を支持弾性部の間に挿入可能とすることも考えられる(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−156717号公報(図1及び図7)
【0006】
【特許文献2】特開平8−132970号公報(図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、支持ホルダを車体側の凹部に取り付けた後に、その間隙に弾性体を適切に位置決めして接着剤等により固着する必要があるため、取り扱う部品点数が増加する上に、取付作業の負荷も増大するといった問題があった。
【0008】
また、上記特許文献2に記載された技術でも、支持ホルダを車体側の凹部に取り付けた後に、支持軸を支持弾性部の間に挿入可能なように開口を位置決めしてカバー部材を設置する必要があるため、特許文献1の場合と同様の問題が生じ得る。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、被支持部材を挟持する一対の支持弾性部を有する支持ホルダにおいて、被支持部材の支持ホルダに対する誤った組み付けを簡易な構成により防止することができる支持ホルダの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、被支持部材(11)を挟持するための一対の支持弾性部(31)を有する支持ホルダ(12)を、取付対象物(5)の凹部(13)内に取り付ける取付構造であって、前記凹部の一側面を画成する壁面(22)から凸部(25)が突設され、前記凸部は、前記支持ホルダが前記凹部内に収容された状態で前記一対の支持弾性部の間に位置し、自由状態にある前記支持弾性部の前記挟持方向への変位を規制する構成とする。
【0011】
上記課題を解決するためになされた第2の発明として、前記被支持部材は前記一対の支持弾性部の間に所定方向から進入し、前記凸部は、前記進入方向側に位置する面(26a)が、前記壁面から前記突設方向に向かって前記凹部の底側に傾斜する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の発明によれば、被支持部材を挟持する一対の支持弾性部を有する支持ホルダにおいて、被支持部材の支持ホルダに対する誤った組み付けを簡易な構成により防止することができるという優れた効果を奏する。また、上記第2の発明によれば、被支持部材を一対の支持弾性部に挟持させる際に、被支持部の支持弾性部の間への進入が、壁から突設された凸部によって阻害されることを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明に係る支持ホルダの取付構造が適用された自動車後部を模式的に示す斜視図であり、図2は図1のリヤシェルフ及びサイドライニングの一部の具体的構成を示す分解斜視図である。
【0015】
図1に示すように、自動車後部には、テールゲート1の下方におけるリアシート2の車両後方側に荷室3が設けられている。この荷室3の上部は外部から視認できないようにするためのリヤシェルフ4により画成され、また、その左右側部はサイドライニング5により画成されている。
【0016】
リヤシェルフ4は、合成樹脂製の板状部材からなり、その前側部4aの前端がリアシート2の背面上部に固定される一方、その後側部4bの左右側部には金属製の支持軸11が突設され、この支持軸11が、左右のサイドライニング5に取り付けられた支持ホルダ12(図2参照)によって支持される。支持ホルダ12はサイドライニング5に形成された凹部13に収容された状態で固定されている。また、前側部4aと後側部4bとの間にはヒンジ部4cが形成されており、このヒンジ部4cを支軸として後側部4bを回動させることで荷室3を開閉可能である。荷室3の閉塞時には、後側部4bの支持軸11が支持ホルダ12によって固定支持される一方、荷室3の開放時には、その支持軸11の固定支持が解除される。
【0017】
次に、支持ホルダ12をサイドライニング5の凹部13内に取り付けるための取付構造の詳細について説明する。図3は図2の要部を拡大して示す分解斜視図であり、図4は凹部に取り付けられた状態の支持ホルダの正面図であり、図5は図4のV−V断面図である。
【0018】
サイドライニング5に設けられた凹部13は、その側部が3つの側壁面21〜23により画成され、また、その底部が底壁面24により画成される。側壁面22には凸部25が突設されており、この凸部25は、略平行に配置された左右の規制片26とそれらを接続する接続片27とを有する。左右の規制片26は、それぞれ別体として形成してもよいが、接続片27で連結して補強することでそれらの変形を防止することができる。また、底壁面24の中央部には支持ホルダ12を取り付けるための取付穴24aが設けられている。凹部13の形状及び大きさは、収容される支持ホルダ12の形状等に応じて決定することができる。
【0019】
規制片26の上面26a(図5参照)は、側壁面22から凸部の突設方向に向かって凹部13の底側に傾斜するように設けられている。これにより、支持軸11を支持ホルダ12に固定する際に、支持軸11の支持ホルダ12(支持弾性部31間)への進入が、側壁面22から突設された凸部25によって阻害されることを回避することができるという利点がある。
【0020】
支持ホルダ12は、リヤシェルフ4の支持軸11を挟持する一対の支持弾性部31と、これら支持弾性部31の下部を接続するように形成されたベース部32とによって略コ字状をなすように設けられている。ベース部32の下面には、下方に延出する係止部33が設けられている。支持ホルダ12は、例えば、合成樹脂材料で一体成形することができるが、これに限らず種々の材料を用いることができ、場合によっては、上記各部をその機能に適した異なる材料で形成してもよい。
【0021】
一対の支持弾性部31は、ベース部32から上方に突出するように設けられ、これらは一定間隔を置いて概ね左右対称に配置されている。各支持弾性部31の上下方向の中央付近には、リヤシェルフ4の支持軸11を挟持する挟持面31aが設けられており、これら挟持面31aにより支持軸11の挟持位置が規定される。挟持面31aは支持軸11の周面と同様の曲率を有する。また、各支持弾性部31の先端部31bは、その上端から下方に向かって支持弾性部31間の幅を狭めるように内側に傾斜した面を有し、これにより、リヤシェルフ4の支持軸11の支持弾性部31間への進入が容易となる。
【0022】
ここで、サイドライニング5の側壁面22に設けられた凸部25は、図4及び図5に示すように、支持ホルダ12が凹部13に収容された状態で、自由状態(変形していない状態)にある支持弾性部31の間に位置するように配置される。このとき、凸部25は、その少なくとも一部(ここでは、突出方向の先端部25a)が支持弾性部31の間に位置するように配置される。このような構成により、自由状態にある支持弾性部31を内側(挟持方向)へ変位させるような力が加わった場合でも、支持弾性部31が凸部25の規制片26に当接してその変位が規制される。なお、支持弾性部31の変位を容易に規制するために、凸部25は、少なくとも支持弾性部31の先端部31bと当接可能な位置に配置するとよい。
【0023】
ベース部32の略中央には、支持ホルダ12をサイドライニング5に固定するための留め具41が挿入される貫通孔32aが設けられており、また、その上面には貫通孔32aを前後に挟み込むように一対の突片43が設けられている。これらの突片43は、リヤシェルフ4の支持軸11が支持弾性部31間において正規の挟持位置よりも下方へ進入することを規制するストッパとして機能する。
【0024】
係止部33は、貫通孔32aの周縁に配置された複数の切割片33aを有している。これら切割片33aは、留め具41の軸部41aが貫通孔32aに挿入されることで、その軸部41aの外周面に押圧されてそれぞれ外側に撓むように形成されている(図4,図5参照)。
【0025】
支持ホルダ12をサイドライニング5の凹部13に取り付ける際には、支持ホルダ12の係止部33をサイドライニング5の凹部13の取付穴24aに挿入して所定位置に配置した後、留め具41の軸部41aを支持ホルダ12の貫通孔32aに挿入する。これにより、図4及び図5に示すように、切割片33aがそれぞれ放射状に広がって係止部33の先端側がサイドライニング5の取付穴24aよりも大きく拡径され、支持ホルダ12のベース部32及びサイドライニング5の底壁面24が、その拡径された先端部と留め具41の頭部41bとの間に強固に挟持される。
【0026】
リヤシェルフ4の支持軸11を支持ホルダ12に固定支持させる際には、支持軸11をサイドライニング5の凹部13の上面開口側から降下させ、支持ホルダ12の支持弾性部31間に進入させる。これにより、自由状態にあった支持弾性部31が支持軸11に押圧されて左右に拡がるように弾性変形し、図4に示すように、支持軸11が支持弾性部31の挟持面31aの間に導かれる。この場合、図5に示すように、凹部13の上面開口側から進入する支持軸11の側面11aは凸部25と干渉しない(即ち、凸部25は、支持軸11が支持弾性部31に挟持される際に、当該支持軸11と当接しない長さで側壁面22から突出する)構成とすることができる。
【0027】
また、上記のように支持軸11を支持ホルダ12に固定支持させる際には、ユーザが組み付け操作を誤ると、支持軸11が図4の場合のように支持弾性部31の間に適切に進入せずに、例えば、図6に示すように、支持弾性部31と側壁面23との間の間隙Gに進入する場合もあり得る。このような場合、支持軸11に押圧されて内側(挟持方向)に変位した支持弾性部31の先端部31bが、規制片26に当接することでその変位が規制される。従って、リヤシェルフ4が適切に固定されずに不安定な状態となったり、支持軸11により支持弾性部31が過度に押し曲げられて破損したりするといった不都合を回避することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、説明の便宜上、図4及び図6に示すように、自由状態にある支持弾性部31と規制片26との間に一定の間隙が設けられているが、図4の想像線で示すように、規制片26間の距離を拡大し、変位前の自由状態における支持弾性部31に凸部25の規制片26を当接させた構成としてもよい。このような構成とすることで、支持軸11をサイドライニング5の凹部13に取り付ける際の位置合わせが容易となるという利点もある。
【0029】
さらに、上記のように支持軸11を支持ホルダ12に固定支持させる際には、支持軸11が支持弾性部31の間に進入する際に、その側面11aが凹部13の側壁面22に接近するようにずれた状態となる場合もあり得る。この場合、支持軸11は凸部25の傾斜した上面26a上で滑動し、そのずれを解消しながら進入方向に導かれる。このとき、図5に示すように、凸部25の先端部25aを、最終的に支持弾性部31間に挟持された支持軸11の側面11aに当接(または近接)するように設けることで、リヤシェルフ4の左右方向(車両の左右方向)のずれを防止できるという利点がある。
【0030】
本発明を特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、支持ホルダが取り付けられる取付対象物は、上述の車両のサイドライニングに限らず、少なくとも凹部を備えた部材であればよい。また、被支持部材は、リヤシェルフの支持軸に限らず、少なくとも支持ホルダで挟持可能な形状を有する部材であればよい。さらに、取付対象物の凹部の壁面に突設される凸部は、上述のものに限らず、支持ホルダの使用形態に応じて、その位置、形状、及び大きさ等を適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の支持ホルダの取付構造が適用された自動車後部の模式図
【図2】図1のリヤシェルフ及びサイドライニングの具体的構成を示す分解斜視図
【図3】図2の要部を拡大して示す分解斜視図
【図4】凹部に取り付けられた状態の支持ホルダの正面図
【図5】図4のV−V断面図
【図6】支持ホルダの支持弾性部の変位を凸部により規制する動作を示す説明図
【符号の説明】
【0032】
4 リヤシェルフ
5 サイドライニング
11 支持軸
11a 側面
12 支持ホルダ
13 凹部
21−23 側壁面
24 底壁面
24a 取付穴
25 凸部
26 規制片
26a 上面
27 接続片
31 支持弾性部
31a 挟持面
32 ベース部
32a 貫通孔
33 係止部
33a 切割片
41 留め具
41a 軸部
41b 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持部材を挟持するための一対の支持弾性部を有する支持ホルダを、取付対象物の凹部内に取り付ける取付構造であって、
前記凹部の一側面を画成する壁面から凸部が突設され、
前記凸部は、前記支持ホルダが前記凹部内に収容された状態で前記一対の支持弾性部の間に位置し、自由状態にある前記支持弾性部の前記挟持方向への変位を規制することを特徴とする支持ホルダの取付構造。
【請求項2】
前記被支持部材は前記一対の支持弾性部の間に所定方向から進入し、前記凸部は、前記進入方向側に位置する面が、前記壁面から前記突設方向に向かって前記凹部の底側に傾斜することを特徴とする請求項1に記載の支持ホルダの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−73322(P2009−73322A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243811(P2007−243811)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】