説明

支持固定器及び支持固定システム

【課題】 垂直面や急傾斜面等に容易且つ確実に着脱可能な支持固定器及び支持固定システムの提供。
【解決手段】 支持固定器Xは、水平板状の前支持部X1と、水平板状の被支持部X2と、垂直板状の上被固定部X3及び下被固定部X4からなる。被支持部X2の後端部の両側に固定用孔Xaを設け、壁面Wに取り付けた山形鋼Yに対し固定する。上被固定部X3及び下被固定部X4のそれぞれ上下中間位置の両側にナット用孔Xbを形成し、その背面側に固定ナットXcを固着する。植物栽培装置U1の四隅部の連結用孔部Na、連結用孔部Ba、及び連結用孔部Aaに結合体Lの軸状部L1を挿通して先端側外方張出部L3aと基端側外方張出部L2の間に重合連結し、ユニット状の植物栽培装置U1を得る。結合体Lの貫通部L4に固定ボルトTを挿通し、支持固定器Xの固定ナットXcに締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直面や急傾斜面等に植物栽培装置等の固定対象物を固定するための支持固定器及び支持固定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007−143472号公報には、壁面に一定間隔に係止口を有する有穴帯状鋼板11を設置し、植栽マット盤15の受け金具14の設置位置に合わせて係止ピン13を差込み、これに受け金具14を差込み、植栽マット盤を固定するとともに、笠木鋼板23を有穴帯状鋼板11の上部に被せて有穴帯状鋼板と合わせてボルト締めして落下を防止する壁面植栽緑化システムが記載されている。
【0003】
この壁面植栽緑化システムにおいては、植栽マット盤を壁面に対し容易に着脱可能であるが、壁面の上端部から下方に至る有穴帯状鋼板11により植栽マット盤を支持するものであるため、特に、壁面に対し低位置から高位置まで植栽マット盤の固定を行う場合、植栽マット盤の固定支持を確実には行い得ない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−143472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであり、垂直面や急傾斜面等に固定対象物を容易且つ確実に着脱可能な支持固定器及び支持固定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の支持固定器は、
固定対象物を上向きに支持し得る前支持部と、その前支持部の後側において前支持部の上方及び下方にそれぞれ位置する上被固定部及び下被固定部を有し、
前記上被固定部及び下被固定部に、それぞれ、固定対象物を固定するための締結箇所を備えることを特徴とする。
【0007】
支持固定器における前支持部は、固定対象物を上向きに支持し得、上被固定部及び下被固定部は、その前支持部の後側において前支持部の上方及び下方にそれぞれ位置し、それぞれ、固定対象物を固定するための締結箇所を備える。
【0008】
そのため、前支持部において固定対象物を上向きに支持した状態でその固定対象物を上被固定部に対しその締結箇所において締結固定することができるので固定対象物の着脱を容易且つ確実に行い得ると共に、前支持部の下側に位置する別の固定対象物を下被固定部に対しその締結箇所において締結固定することができる。
【0009】
(2) 本発明の支持固定器は、上記上被固定部及び下被固定部のそれぞれにおける横方向に互いに離隔した2つの位置に締結箇所を備えるものとすることができる。
【0010】
この場合、上被固定部及び下被固定部のそれぞれにおける横方向に互いに離隔した2つの位置に締結箇所を備えるので、前支持部において2つの固定対象物を上向きに支持した状態でそれらの固定対象物をそれぞれ上被固定部に対し2つの締結箇所において締結固定することができると共に、前支持部の下側に位置する別の2つの固定対象物を下被固定部に対しその2つの締結箇所において締結固定することができる。
【0011】
(3) 上記前支持部は、少なくとも固定対象物を上向きに支持する部分が、所定の水平面に沿うものであり、
上記上被固定部及び下被固定部は、それぞれ、前面のうち少なくとも固定対象物に接する部分が、法線が前後方向である所定の垂直面に沿うものとすることができる。
【0012】
(4) 上記(3)の支持固定器は、上記前支持部が前方突出の水平状板部であり、
上記上被固定部及び下被固定部が、それぞれ、法線が前後方向である所定の垂直面に沿う垂直状板部であり、
上被固定部及び下被固定部に対し、前後方向軸の雌ねじ部が設けられ、その雌ねじ部が上記締結箇所であるものとすることができる。
【0013】
(5) 本発明の支持固定システムは、
四隅部にそれぞれ被固定箇所を有する正面方形状の固定対象物と、前記何れかの支持固定器からなり、
前記支持固定器の前支持部上に固定対象物の下部を上向きに支持した状態でその固定対象物の下部の被固定箇所を上被固定部の締結箇所に対し締結固定すると共に
別の固定対象物の上部の被固定箇所を下被固定部の締結箇所に対し締結固定するものである。
【0014】
(6) 上記支持固定システムは、上記固定対象物が、複数の被連結体が重合連結されてなるものであり、
前記各被連結体は、連結用孔部を備えた被連結部を有し、
前記複数の被連結体の重合連結は、各被連結体の被連結部における連結用孔部同士が同軸状に重なり合う状態で行われ、その状態の被連結部が上記被固定箇所を構成するものであり、
軸方向の貫通部を有する結合体と、結合体の前記貫通部を貫通し得る締結体を有し、
前記結合体は、前記同軸状に重なり合った連結用孔部に貫通して被連結部同士を重合連結し得るものであり、
前記締結体は、前記同軸状に重なり合った連結用孔部に貫通して被連結部同士を重合連結した結合体の前記貫通部を貫通して支持固定器の締結箇所に対し締結固定することにより、固定対象物の被固定箇所を支持固定器に対し固定するものとすることができる。
【0015】
上記複数の被連結体の被連結部における同軸状に重なり合った連結用孔部に結合体を貫通することにより、被連結部同士を重合連結することができる。
【0016】
その上で、その結合体の軸方向の貫通部に締結体を貫通させて支持固定器の締結箇所に対し締結固定することにより、固定対象物の被固定箇所を支持固定器に対し固定することができる。
【0017】
(7) 上記(6)の支持固定システムは、
上記結合体が、
軸状部と、
前記軸状部の基端側に位置する基端側外方張出部と、
前記軸状部の先端側に位置し、前記基端側外方張出部との間に対象物を挟む先端側外方張出部を有すると共に内方へ弾性的に撓み得る抜止部と、
前記基端側外方張出部及び軸状部を、軸方向の基端から前記抜止部の内方部まで軸方向に貫通する貫通部を備えてなるものとすることができる。
【0018】
上記複数の被連結体の被連結部における同軸状に重なり合った連結用孔部に対し、その同軸状に重なり合った連結用孔部のうち一方の側のものの開口よりも基端側外方張出部が外方に張り出している結合体の軸状部を、その軸状部の先端側から挿入すると、前記基端側外方張出部が固定対象物における前記一方の側の被連結部に受止されるまで挿入を進めることができる。
【0019】
前記同軸状に重なり合った連結用孔部が、結合体の抜止部が内方へ弾性的に撓むことによって先端側外方張出部が通過し得る一方、同軸状に重なり合った連結用孔部のうち他方側の連結用孔部を抜け出た前記抜止部が内方撓み状態から復元することにより前記先端側外方張出部が側方へ広がって前記他方側の連結用孔部を逆向きに通過し得なくなるものであれば、先端側外方張出部が前記他方側の連結用孔部から他方側へ出て抜止部が内方撓み状態から復元することにより、その先端側外方張出部と基端側外方張出部との間に、複数の被連結体の被連結部を挟んでそれらを重合連結した状態となる。
【0020】
(8) 上記(7)の支持固定システムは、上記結合体が、上記同軸状に重なり合った連結用孔部に貫通して抜止部の先端側外方張出部と基端側外方張出部との間に被連結部同士を重合連結し、上記締結体が結合体の上記貫通部を貫通して固定対象物の被固定箇所を支持固定器の締結箇所に対し締結固定した状態において、前記締結体が上記抜止部の内方に位置することにより前記抜止部の内方への撓みによる前記被連結部の重合連結の解除を防ぎ得るものとすることができる。
【0021】
この場合、結合体が、上記同軸状に重なり合った連結用孔部に貫通して抜止部の先端側外方張出部と基端側外方張出部との間に被連結部同士を重合連結し、締結体が結合体の軸方向の貫通部を貫通して固定対象物の被固定箇所を支持固定器の締結箇所に対し締結固定した状態において、前記締結体が上記抜止部の内方に位置することにより抜止部の内方への撓みによる前記被連結部の重合連結の解除を防ぎ得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、前支持部において固定対象物を上向きに支持した状態でその固定対象物を上被固定部に対しその締結箇所において締結固定することができるため固定対象物の着脱を容易且つ確実に行い得ると共に、前支持部の下側に位置する別の固定対象物を下被固定部に対しその締結箇所において締結固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】植物栽培装置の分解斜視図である。
【図2】生育体保持構造体の正面図である。
【図3】生育体保持構造体の縦断面図である。
【図4】外部構造体の正面図である。
【図5】外部構造体の縦断面図である。
【図6】外部構造体の背面側斜視図である。
【図7】上下に連結した植物栽培装置の縦断面図である。
【図8】植物生育体及び保水体を保持した植物栽培装置の縦断面図である。
【図9】結合体の斜視図である。
【図10】結合体の縦断面図である。
【図11】支持固定器の側面図である。
【図12】支持固定器の斜視図である。
【図13】植物栽培装置の配列固定状態を示す模式図である。
【図14】別の植物栽培装置の分解斜視図である。
【図15】生育体保持構造体の背面側斜視図である。
【図16】植物栽培装置の縦断面図である。
【図17】植物生育体及び保水体を保持した植物栽培装置の縦断面図である。
【図18】略円柱形状の植物生育体の拡大正面図である。
【図19】別の植物栽培装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.本発明の支持固定システムの実施の形態を説明する。
【0025】
(1) 図1乃至図13は、本発明の支持固定システムの実施の形態の一例に関するものである。
【0026】
(1-1) 本例の支持固定システムは、生育体保持構造体A、外部構造体B、植物生育体J1、植物生育体J2、保水体K、前面保持枠N、結合体L、固定ボルトT、及び、支持固定器X等からなる。本例において、生育体保持構造体A、外部構造体B、及び結合体Lは合成樹脂製であり、植物生育体J1、植物生育体J2及び保水体Kは、不規則に集合した繊維が圧縮成形されてなる保水性のものであり、前面保持枠N、固定ボルトT、及び支持固定器Xは、何れも金属製であるが、何れもこれらの材料に限るものではない。
【0027】
(1-1-1) 生育体保持構造体Aは、主として、一定の前後方向幅を有する、四隅が面取りされた正面略方形状の保持構造体外枠部Afと、その保持構造体外枠部Afの両側の縦板部Af1間に架設された棚板体Apと、保持構造体外枠部Afの四隅部における対角線方向外方突起部に形成された連結用孔部Aaからなる。
【0028】
棚板体Apは、上下方向等間隔に5箇所に架設されている。各棚板体Apは、保持構造体外枠部Afの後端部に位置する垂下板部Ap1と、その垂下板部Ap1の上端から前方に向かって突設された水平板状部Ap2と、水平板状部Ap2の前端に設けられた上方突起部Ap3からなる。水平板状部Ap2の前端は、保持構造体外枠部Afの前端位置よりもやや後方に位置する。各上方突起部Ap3の前面に横方向間隔おきに設けられた尖頭状の突起Appは、各棚板体Apの前側に芝生等の栽培対象植物に後方から突き刺さるようにすることにより栽培対象植物保持の補助とするものである。各棚板体Apの横断面形状は、突起Appを除き、生育体保持構造体Aの全横幅にわたり一定である。
【0029】
また、保持構造体外枠部Afの底板部Af2のうち各棚板体Apの上方突起部Ap3に対応する部分に、同じく全横幅にわたり上方突起部Af4を有する。
【0030】
植物生育体保持部A1は、棚板体Apと、保持構造体外枠部Afにより構成される。各棚板体Ap及び保持構造体外枠部Afは、厚み方向に水系液体が透過しない材料からなる。
【0031】
最上位置の植物生育体保持部A1は、最上位置の棚板体Apの水平板状部Ap2及び上方突起部Ap3並びに保持構造体外枠部Afの天板部Af3と両縦板部Af1と面取り状の両隅部Af5により囲まれた部分である。
【0032】
最上位置の植物生育体保持部A1のうち、上方突起部Ap3と天板部Af3の間、及び、水平板状部Ap2の後端部と天板部Af3の間は、開口部である。
【0033】
最上位置の植物生育体保持部A1には、正面横長台形状の細幅板状をなす植物生育体J1が保持される。植物生育体J1の底部は水平板状部Ap2により上向きに支持され、前側下部において上方突起部Ap3により前方離脱が防がれ、両側部及び上部が、それぞれ、保持構造体外枠部Afの両縦板部Af1及び隅部Af5並びに天板部Af3に接する状態又は圧接する状態で保持される。
【0034】
上から2乃至5番目の位置(中間位置)の植物生育体保持部A1は、上下に隣接する棚板体Apのうち、上側の棚板体Apの垂下板部Ap1及び水平板状部Ap2、下側の棚板体Apの水平板状部Ap2及び上方突起部Ap3並びに保持構造体外枠部Afの両縦板部Af1により囲まれた部分である。
【0035】
中間位置の植物生育体保持部A1のうち、下側の上方突起部Ap3と上側の水平板状部Ap2の間、及び、上側の垂下板部Ap1と下側の水平板状部Ap2の間は、開口部である。
【0036】
中間位置の植物生育体保持部A1には、正面横長方形状の細幅板状をなす植物生育体J1が、その底部が下側の水平板状部Ap2により上向きに支持され、前側下部において下側の上方突起部Ap3により前方離脱が防がれ、後側上部において上側の垂下板部Ap1により後方離脱が防がれ、両側部及び上部がそれぞれ保持構造体外枠部Afの両縦板部Af1及び上側の水平板状部Ap2に接する状態又は圧接する状態で保持される。
【0037】
最下位置の植物生育体保持部A1は、保持構造体外枠部Afの底板部Af2、上方突起部Af4、両縦板部Af1及び両隅部Af5並びに最下位置の棚板体Apの水平板状部Ap2及び垂下板部Ap1により囲まれた部分である。
【0038】
最下位置の植物生育体保持部A1のうち、上方突起部Af4と最下位置の棚板体Apの水平板状部Ap2の間、及び、最下位置の棚板体Apの垂下板部Ap1と保持構造体外枠部Afの底板部Af2の間は、開口部である。
【0039】
最下位置の植物生育体保持部A1には、正面逆横長台形状の細幅板状をなす植物生育体J1が、その底部が保持構造体外枠部Afの底板部Af2により上向きに支持され、前側下部において上方突起部Af4により前方離脱が防がれ、後側上部において最下位置の棚板体Apの垂下板部Ap1により後方離脱が防がれ、両側部及び上部がそれぞれ保持構造体外枠部Afの両縦板部Af1及び両隅部Af5並びに最下位置の棚板体Apの水平板状部Ap2に接する状態又は圧接する状態で保持される。
【0040】
このように、各植物生育体保持部A1による植物生育体を保持し得る空間は互いに分離している。また、各植物生育体保持部A1に保持された植物生育体J1及び植物生育体J2は、互いに実質上分離している。各植物生育体保持部A1に保持された植物生育体J1及び植物生育体J2は、何れも正面側の垂直状の面が、栽培対象植物を生育するための面である。
【0041】
(1-1-2) 外部構造体Bを構成する一定の前後方向幅を有する正面方形状の外部構造体外枠部Bfは、生育体保持構造体Aに対し後方から外嵌する前側外枠部Bffと、後側外枠部Bfrからなる。
【0042】
前側外枠部Bffの四隅部には、それぞれ円筒状の連結用孔部Baが設けられている。連結用孔部Baの後端は、前側外枠部Bffの前後方向中間位置のやや後寄りに位置する。
【0043】
後側外枠部Bfrは、両側の後部縦板部Bf1、後部底板部Bf2、及び、後部天板部Bf3、並びに、後部天板部Bf3の前端から上方に張り出した上垂直板部Bf4及び後部底板部Bf2から下方に張り出した下垂直板部Nf5からなる。後側外枠部Bfrは、両後部縦板部Bf1の前部並びに上垂直板部Bf4の上縁部と両側縁部及び下垂直板部Nf5の下縁部と両側縁部において前側外枠部Bffの後側に接合して前側外枠部Bffと一体状をなす。前側外枠部Bffと一体状をなした状態において、前側外枠部Bffの連結用孔部Baの後端と、後側外枠部Bfrの上垂直板部Bf4及び下垂直板部Nf5の前面の間に空間が形成される。
【0044】
後側外枠部Bfrは、主として、上下方向一定間隔おきに設けられた全横幅にわたる垂直板状の後板部Bnと、各後板部Bnの間にそれぞれ設けられた前方突出の棚状突部Bpと、各後板部Bnの前側に位置する外部経路部Bsと、後部天板部Bf3上の上垂直板部Bf4の後側に設けられた受給水部Brと、下垂直板部Nf5に設けられた排水孔部Beを備える。後側外枠部Bfrの背面側は、補強及び補剛のために、水平リブBrhと垂直リブBrpが格子状をなすように形成されている。
【0045】
棚状突部Bpは、垂直状の前板部Bp1と、水平状の下板部Bp2と、水平状の上板部Bp3からなる。下板部Bp2は、後板部Bnの上端部と前板部Bp1の下端部にわたり、上板部Bp3は、後板部Bnの下端部と前板部Bp1の上端部にわたる。
【0046】
最上位置の外部経路部Bsは、後板部Bnの前側のうち、後側外枠部Bfrの後部天板部Bf3、両後部縦板部Bf1及び最上位置の棚状突部Bpの上板部Bp3により囲まれた前方開口の溝状の凹部である。
【0047】
最上位置の外部経路部Bsには、正面横長方形状の細幅板状をなす保水体Kが、その底部が上板部Bp3により上向きに支持され、後部において後板部Bnにより後方離脱が防がれ、両側部及び上部がそれぞれ後側外枠部Bfrの両後部縦板部Bf1及び後部天板部Bf3に接する状態又は圧接する状態で保持される。
【0048】
上から2乃至4番目の位置(中間位置)の外部経路部Bsは、上下に隣接する棚状突部Bpのうち、上側の棚状突部Bpの水平下板部Bp2、下側の棚状突部Bpの水平上板部Bp3、及び後板部Bnにより囲まれた前方開口の溝状の凹部である。
【0049】
中間位置の外部経路部Bsには、保水体Kが、その底部が上板部Bp3により上向きに支持され、後部において後板部Bnにより後方離脱が防がれ、両側部及び上部がそれぞれ両後部縦板部Bf1及び水平下板部Bp2に接する状態又は圧接する状態で保持される。
【0050】
最下位置の外部経路部Bsは、後板部Bnの前側のうち、後側外枠部Bfrの後部底板部Bf2、両後部縦板部Bf1及び最下位置の棚状突部Bpの下板部Bp2により囲まれた前方開口の溝状の凹部である。
【0051】
最下位置の外部経路部Bsには、保水体Kが、その底部が後部底板部Bf2により上向きに支持され、後部において後板部Bnにより後方離脱が防がれ、両側部及び上部がそれぞれ両後部縦板部Bf1及び下板部Bp2に接する状態又は圧接する状態で保持される。
【0052】
何れの外部経路部Bsも、後側上部及び両側上部において、それぞれ、各後板部Bnに横方向に満遍なく設けた通気孔Bn1及び後部縦板部Bf1に設けた通気孔Bf1aを通じて外部との間に通気性が与えられている。
【0053】
受給水部Brは、後部天板部Bf3上における上垂直板部Bf4の水平方向全長にわたる後側に、上垂直板部Bf4に沿って溝状に設けられている。受給水部Brの両端には、上方開口のU字状切欠部Brw1を有する端壁部Brwが形成されている。
【0054】
受給水部Brの前壁である上垂直板部Bf4には、U字状切欠部Brw1の最下点よりも低い一定高さ位置における横方向全長にわたり(所定の水平方向部分に沿うように)、横長の同一形状の吐出小孔Brd(流出部)が等間隔に形成されている。
【0055】
受給水部Br内の溝長方向における等間隔位置に、前後壁及び底板にわたる補強板Brrが設けられている。これらの補強板Brrには、最下点が吐出小孔Brdよりも低い上方開口の切欠部Brr1が形成されている。
【0056】
排水孔部Beは、下垂直板部Bf5の下端位置に水平方向等間隔に設けられている。
【0057】
(1-1-3) 図7及び図8に示されるように、外部構造体外枠部Bfのうち前側外枠部Bffを、保持構造体外枠部Afに対し後方から外嵌することにより、生育体保持構造体Aの後側に外部構造体Bの後部が結合した状態となる。
【0058】
この状態において、各植物生育体保持部A1の後側の下部に各外部経路部Bsの前側の上部が相対し、各植物生育体保持部A1の後側の上部に各外部経路部Bsの前の下部が相対する。
【0059】
植物栽培に用いる場合、図8に示されるように、生育体保持構造体Aの各植物生育体保持部A1に植物生育体J1又は植物生育体J2が保持された状態とすることができる。
【0060】
この場合、各植物生育体保持部A1に保持された植物生育体J1又は植物生育体J2の後面の上下中間位置に、外部構造体Bにおける棚状突部Bpの前板部Bp1が相対又は相接し、各外部経路部Bsに保持された保水体Kの前面の上下中央から下方にわたる位置に、生育体保持構造体Aにおける棚板体Apの垂下板部Ap1が相対又は相接する状態となる。
【0061】
またこの場合、最上位置の植物生育体J1の後面に上垂直板部Bf4が相対又は相接してその植物生育体J1の後面上部に吐出小孔Brdが臨み、最下位置の植物生育体J1の後面に下垂直板部Bf5が相対又は相接してその植物生育体J1の後面下端部に排水孔部Beが臨む状態となる。
【0062】
更に、外部構造体Bにおける各外部経路部Bsに保水体Kが保持された状態とした場合、植物生育体J1又は植物生育体J2の後面下部と保水体Kの前面上部が相対又は相接し、植物生育体J1又は植物生育体J2の後面下部と保水体Kの前面上部が相対又は相接する状態となる。
【0063】
(1-1-4) 本例では、芝(芝生)やその他の地被植物を栽培する場合は、各植物生育体保持部A1に保持された植物生育体J1及び植物生育体J2の前面に芝生等の栽培対象植物を配した上で、その芝生等の栽培対象植物の脱落を防ぐために、生育体保持構造体Aの前側に、方形枠の四隅の突起部に連結用孔部Naを有すると共に対角線方向の交差部を有する金属線状材製の前面保持枠Nを配する。前面保持枠Nの連結用孔部Naは、生育体保持構造体Aの連結用孔部Aa及び外部構造体Bの連結用孔部Baと同軸状に重なり合った状態とする。これらの同軸状に重なり合った状態の連結用孔部Na、連結用孔部Ba、及び連結用孔部Aaの各孔に結合体Lを貫通させてそれらを連結することにより、ユニット状の植物栽培装置U1とすることができる。
【0064】
(1-1-5) 結合体Lは、ポリプロピレン樹脂を一体成形してなるものであり、軸状部L1と基端側外方張出部L2と抜止部L3と貫通部L4を有する。
【0065】
基端側外方張出部L2は、結合体Lの基端に位置し、連結用孔部Naの孔径より外径が大きな円環板状をなす。
【0066】
軸状部L1は、基端側外方張出部L2の先端側中央部に、先端に向かって垂直状に設けられている。
【0067】
貫通部L4は、基端側外方張出部L2の中央部及び軸状部L1の中心線上を、結合体Lの軸方向の基端から先端まで軸方向に貫通する円柱状空間を形成する。
【0068】
軸状部L1は、基端側外方張出部L2の先端側の面から結合体Lの軸方向に伸びる一対の脚部L1aからなる。両脚部L1aは、それぞれ結合体Lの軸方向に垂直な方向の横断面形状が略円弧状をなし、両脚部L1aの横断面における両端部は、所定間隔を挟んで径方向に対称状に相対する。各脚部L1aは、先端が自由端であり、先端側が径方向内方へ弾性的に撓み得る。貫通部L4は、両脚部L1aの横断面における端部同士の間において径方向外方に露出する。
【0069】
抜止部L3は、軸状部L1の先端側部分により構成され、基端側外方張出部L2との間に対象物を挟む先端側外方張出部L3aを有すると共に内方へ弾性的に撓み得るものである。先端側外方張出部L3aは、各脚部L1aの先端から基端側に向かって漸次側方に膨出するよう形成されている。
【0070】
四隅部において同軸状に重なり合った状態の連結用孔部Na、連結用孔部Ba、及び連結用孔部Aaに対し、結合体Lの軸状部L1を先端側から挿入すると、結合体Lの抜止部L3が内方へ弾性的に撓むことによって、先端側外方張出部L3aは連結用孔部Na、連結用孔部Ba、及び生育体保持構造体Aの連結用孔部Aaの後方開口を通過し得る。結合体Lの挿入は、基端側外方張出部L2が連結用孔部Naの外周部に受止されることにより止まる。
【0071】
先端側外方張出部L3aが連結用孔部Aaの後方開口から出て抜止部L3が内方撓み状態から復元することにより、先端側外方張出部L3aは側方へ広がって連結用孔部Aaの後方開口を逆向きに通過し得ないものとなり、先端側外方張出部L3aと基端側外方張出部L2との間に、生育体保持構造体A、外部構造体B及び前面保持枠Nを挟んでそれらを連結する状態となり、ユニット状の植物栽培装置U1が得られる。
【0072】
(1-1-6) このユニット状の植物栽培装置U1は、例えば、図1、7、11及び12に示すような支持固定器Xを用いて、図13に示すように壁面等に対し所要数を上下左右に配列して固定することができる。
【0073】
この支持固定器Xは、前方に突出する水平板状の前支持部X1と、後方に延びる水平板状の被支持部X2と、前支持部X1の後端縁からそれぞれ上下に突出する垂直板状の上被固定部X3及び下被固定部X4からなる。
【0074】
被支持部X2の後端部の両側には、それぞれ固定用孔Xaが設けられている。
【0075】
上被固定部X3及び下被固定部X4のそれぞれ上下中間位置の両側にナット用孔Xbが形成され、その背面側に、ナット用孔Xbと同軸状に固定ナットXcが固着されている。
【0076】
壁面Wに対する支持固定器Xの固定は、図7に示すように、例えば、山形鋼Y(L形鋼)を介して行うことができる。すなわち、山形鋼Yの一辺部Y1を、他辺部Y2が上方に位置するように壁面Wに対し水平状に固定し、支持固定器Xの被支持部X2が他辺部Y2上に支持されるように例えばボルトとナット等により固定することにより、壁面Wに対する支持固定器Xの固定を行うことができる。
【0077】
例えば、植物栽培装置U1の高さに対応する上下方向位置毎に、山形鋼Y(L形鋼)を前記のように壁面Wに対し水平状に固定し、各山形鋼Yにおける植物栽培装置U1の横幅に対応する所定の水平方向位置毎に、前記のように支持固定器Xを固定することができる。
【0078】
その上で、水平方向に隣接する一対の支持固定器Xと、それらの垂直下方に隣接する一対の支持固定器Xに対し、植物栽培装置U1の四隅部を固定する。すなわち、植物栽培装置U1の四隅部の連結用孔部Na、連結用孔部Ba、及び連結用孔部Aaを連結している結合体Lにおける貫通部L4に対しそれぞれ固定ボルトTを挿通し、下側の一対の支持固定器Xの前支持部X1上に植物栽培装置U1の下側の両隅部を支持させ、左側の固定ボルトTを左側の上下の支持固定器Xにおけるそれぞれ右側の固定ナットXcに締結し、右側の固定ボルトTを右側の上下の支持固定器Xにおけるそれぞれ左側の固定ナットXcに締結することにより、支持固定器Xによる植物栽培装置U1の支持及び支持固定器Xに対する植物栽培装置U1の固定を行うことができる。同様に、全ての植物栽培装置U1を上下左右に隣接配列して支持固定器Xにより支持させると共に支持固定器Xに固定することができる。このように隣接配列された植物栽培装置U1の四隅の連結用孔部Na、結合体L及び固定ボルトTは、前面保持枠Nの四隅の前面部にカバー材Vを取り付けることにより覆うことができる。
【0079】
また、上下左右に隣接配列して支持固定器Xによる支持及び支持固定器Xに対する固定がなされたユニット状の植物栽培装置U1の何れかを単独で取り外すことができ、取り外した植物栽培装置U1に代えて別のユニット状の植物栽培装置U1を取り付けることもできる。
【0080】
植物栽培装置U1の結合体Lにおける貫通部L4に固定ボルトTを挿通した状態においては、固定ボルトTの軸部が抜止部L3の内方に位置することにより、抜止部L3が内方へ撓んで結合体Lが連結用孔部Na・Ba・Aaから脱落することが防がれる。それにより、連結用孔部Na・Ba・Aaの重合連結が解除されて前面保持枠N、生育体保持構造体A及び外部構造体Bが分離することが防がれる。一方、固定ボルトTを貫通部L4から抜いて結合体Lの抜止部L3を内方へ撓ませることにより、結合体Lを連結用孔部Na・Ba・Aaから抜き取って前面保持枠N、生育体保持構造体A、及び外部構造体Bを分離させることができる。
【0081】
(1-1-7) 本例において、プラグ苗のように嵌合用の孔に挿入固定して栽培する苗やその他の状態の各種植物を栽培する場合、例えば、植物生育体J1及び植物生育体J2において長手方向に配列された前後方向貫通の略円周状の切込部(例えば180度中心角或いはその他の中心角毎に非切断部[結合部]を設けた略円周状の切込部)に囲繞された円板状部Jcを抜き取り、それによって形成された孔にプラグ苗等の栽培植物の根部を挿入して栽培を行うことができる。栽培植物の根部は、円板状部Jcが抜き取られた孔に挿入されることにより植物生育体J1又は植物生育体J2に固定され得るサイズであることが好ましい。
【0082】
前面マットM1は、各植物生育体J1及び植物生育体J2における抜き取り可能な円板状部Jcの上下方向位置に合わせて横長切込Mcが設けられ、それらの円板状部Jcの水平方向位置に合わせて、横長切込Mcに交差する縦切込Mrが設けられた繊維製のマットである。前面マットM1は、各植物生育体保持部A1に保持された植物生育体J1又は植物生育体J2の前面に配することができる。その場合、円板状部Jcが抜き取られて形成された孔に根部が挿入された栽培対象植物の茎の基部等を、前面マットM1における横長切込Mcと縦切込Mrにおいて保持させることができる。
【0083】
その上で、生育体保持構造体Aにおける前面マットM1の前側に栽培植物及び前面マットM1の脱落を防ぐための前面保持枠Nを配する。更に、前面保持枠Nの連結用孔部Na、生育体保持構造体Aの連結用孔部Aa、外部構造体Bの連結用孔部Baを同軸状に重ね合わせ、それらの孔部に結合体Lを貫通させて前面保持枠N、生育体保持構造体A及び外部構造体Bを連結し、ユニット状の植物栽培装置U1とすることができる。これを壁面等に対し固定する場合は、前記のように、結合体Lの貫通孔に固定ボルトTを挿通して壁面等に対し固定された支持固定器X等に締結固定することができ、壁面等に対し所要数を上下左右に配列して固定することもできる。
【0084】
(1-2) 植物栽培装置U1における受給水部Br内に水(或いは、例えば液肥等を含んだ水系液体、又はその他の水系液体)を供給することにより受給水部Br内の水位が吐出小孔Brd以上となると、吐出小孔Brdから、最上位置の植物生育体保持部A1に保持された植物生育体J1の後面上部に水が供給される。補強板Brrの切欠部Brr1の最下点は吐出小孔Brdよりも低いので、植物栽培装置U1が横方向に水平な状態であれば水平方向に等間隔に配された全ての吐出小孔Brdから同等に水が供給される。
【0085】
最上位置の植物生育体J1に供給された水は、植物生育体J1に吸収されるが、吸収しきれない水は、その植物生育体J1を支持する水平板状部Ap2の後方へ流出し、最上位置の外部経路部Bsに保持された保水体Kに吸収される。更に、その保水体Kに吸収しきれない水は、棚状突部Bpの上板部Bp3の前方へ流出し、上から2番目の位置の植物生育体保持部A1に保持された植物生育体J2に吸収される。
【0086】
すなわち、最上位置の植物生育体保持部A1から、最上位置の外部経路部Bsを経、上から2番目の位置の植物生育体保持部A1に至る経路が、受給水部から水系液体が供給される所定植物生育体保持部から、それよりも下方位置の植物生育体保持部に水系液体を導き得る導水経路を構成する。
【0087】
また、上から2番目の位置の植物生育体保持部A1に保持された植物生育体J2に導かれた水は、植物生育体J2に吸収されるが、吸収しきれない水は、その植物生育体J2を支持する水平板状部Ap2の後方へ流出し、上から2番目の位置の外部経路部Bsに保持された保水体Kに吸収される。更に、その保水体Kに吸収しきれない水は、棚状突部Bpの上板部Bp3の前方へ流出し、上から3番目の位置の植物生育体保持部A1に保持された植物生育体J2に吸収される。
【0088】
すなわち、上から2番目の位置の植物生育体保持部A1から、上から2番目の外部経路部Bsを経、上から3番目の位置の植物生育体保持部A1に至る経路が、植物生育体保持部から導水経路を通じて下方位置の植物生育体保持部に導かれた水系液体を、その植物生育体保持部から、それよりも下方位置の植物生育体保持部に導き得る導水経路を構成する。
【0089】
このようにして、順に上方から下方へ、植物生育体J1又は植物生育体J2から保水体K、保水体Kから植物生育体J2又は植物生育体J1へと給水され、各植物生育体J1及び植物生育体J2において生育する栽培対象植物の灌水に利用される。
【0090】
底板部Af2上の最下位置の植物生育体保持部A1に保持された植物生育体J1から流出する水は、下垂直板部Bf5の下端位置に設けられた排水孔部Beを通じて外部構造体Bの後側外枠部Bfrの下方へ流出する(すなわち、底板部Af2上の植物生育体保持部A1から排水孔部Beを通じて外部構造体Bの後側外枠部Bfrの下方に至る排水経路を通じて流下排水される)。下方隣接位置に植物栽培装置U1が配置されている場合は、排水孔部Beを通じて流出した水は下側の植物栽培装置U1の受給水部Br内に供給され、上側の植物栽培装置U1と同様に植物生育体J1、植物生育体J2及び保水体Kに順次供給される。
【0091】
なお、上記のように順次下方へ流れる水の一部は、植物生育体J1又は植物生育体J2の後面沿いに流下して保水体Kや他の植物生育体J2又は植物生育体J1に吸収されること、保水体Kの後面沿いに流下して植物生育体J2又は植物生育体J1や他の保水体Kに吸収されること、或いは、そのような水が何れにも吸収されずに排水孔部Beに至ること等が生じ得る。
【0092】
(2) 図14乃至18は、本発明の支持固定システムの実施の形態の別の例に関するものである。
【0093】
(2-1) 本例の支持固定システムは、生育体保持構造体C、外部構造体B、略円柱形状の植物生育体J3、保水用板状体J4、保水体K、前面保持枠N、結合体L、固定ボルトT、及び、支持固定器X等からなる。本例において、生育体保持構造体C、外部構造体B、及び結合体Lは合成樹脂製であり、略円柱形状の植物生育体J3はは、図18に示されるように、不規則に集合した繊維が圧縮成形されてなる板形状体が巻回されてなるものであり、保水用板状体J4及び保水体Kは、不規則に集合した繊維が圧縮成形されてなるものであり、前面保持枠N、固定ボルトT、及び支持固定器Xは、何れも金属製であるが、何れもこれらの材料に限るものではない。
【0094】
本例は、基本的に、上記図1乃至図13の例における生育体保持構造体A並びにそれに保持された植物生育体J1及び植物生育体J2を生育体保持構造体C、植物生育体J3及び保水用板状体J4に置き換えたものである。
【0095】
(2-1-1) 生育体保持構造体Cは、主として、一定の前後方向幅を有する、四隅が面取りされた正面略方形状の保持構造体外枠部Cfと、その保持構造体外枠部Cfの両側の縦板部Cf1間に架設された上棚板体Cpa、中棚板体Cpb及び下棚板体Cpcと、仕切壁Ch1と、湾曲上板Ch2と、保持構造体外枠部Cfの四隅部における対角線方向外方突起部に形成された連結用孔部Caからなる。
【0096】
上棚板体Cpa、中棚板体Cpb及び下棚板体Cpcは、それぞれ、水平板状部Cp1と、前端部の全横方向長にわたる上方突起部Cp2からなる。上棚板体Cpa及び中棚板体Cpbの水平板状部Cp1の後端部は保持構造体外枠部Cfの後端位置に一致する。下棚板体Cpcの水平板状部Cp1は、保持構造体外枠部Cfの底板部Cf2のやや上方に位置し、その後端部には横長切欠部CPxが形成されている。そのため下棚板体Cpcの水平板状部Cp1の後端縁は、両端部を除き、保持構造体外枠部Cfの底板部Cf2の後端縁よりもやや前方に位置する。
【0097】
各水平板状部Cp1の横方向等間隔おきの4箇所の上方に、横方向に対し直交する垂直状の仕切壁Ch1が設けられている。各仕切壁Ch1の下縁は上方突起部Cp2の上縁と同等の高さで水平状をなし、各仕切壁Ch1の前端部下縁は上方突起部Cp2の上部に連結している。各仕切壁Ch1の前縁は上方突起部Cp2の前面に続いて上方に垂直状に連続する。各仕切壁Ch1の後縁は、上部が後方に突出し、水平板状部Cp1の後縁よりも前方に位置する。
【0098】
隣り合う仕切壁Ch1の上端部同士の間、及び仕切壁Ch1の上端部と、それに隣接する縦板部Cf1の間には、上に凸に湾曲した湾曲上板Ch2が設けられている。
【0099】
植物生育体保持部C1は、各棚板体の水平板状部Cp1及び上方突起部Cp2と、保持構造体外枠部Cfの両縦板部Cf1と、各棚板体の上方の各仕切壁Ch1及び各湾曲上板Ch2により囲まれた部分である。本例における上棚板体Cpa、中棚板体Cpb及び下棚板体Cpc、仕切壁Ch1、湾曲上板Ch2及び保持構造体外枠部Cfは、厚み方向に水系液体が透過しない材料からなる。
【0100】
植物生育体保持部C1には、保水用板状体J4と、略円柱形状の植物生育体J3が保持される。保水用板状体J4は、水平板状部Cp1と各仕切壁Ch1の下端部の間において、保持構造体外枠部Cfの両縦板部Cf1間にわたり配置される。各植物生育体J3は、その保水用板状体J4の上側であって各湾曲上板Ch2の下側における、隣り合う縦板部Cf1と仕切壁Ch1の間、及び、隣り合う仕切壁Ch1同士の間に配される。
【0101】
このように、各植物生育体保持部C1による植物生育体を保持し得る空間は互いに分離している。また、各植物生育体保持部C1に保持された植物生育体J3は、互いに実質上分離している。各植物生育体保持部C1に保持された植物生育体J3は、何れも正面側の垂直状の面が、栽培対象植物を生育するための面である。
【0102】
(2-1-2) 図16及び図17に示されるように、外部構造体外枠部Bfのうち前側外枠部Bffを、保持構造体外枠部Cfに対し後方から外嵌することにより、生育体保持構造体Cの後側に外部構造体Bの後部が結合した状態となる。
【0103】
本例の場合、上から2番目及び4番目の後板部Bnの前側にそれぞれ位置する前方開口の溝状の凹部が、何れも外部経路部Bsである。一方、上から1番目、3番目及び5番目の後板部Bnの前側にそれぞれ位置する前方開口の溝状の凹部は、保水体保持部Bhである。
【0104】
この状態において、上位置の植物生育体保持部C1の後側の下部に、上位置の外部経路部Bsの前側の上部が相対し、その上位置の外部経路部Bsの前側の下部に、中位置の植物生育体保持部C1の後側の上部が相対する。その中位置の植物生育体保持部C1の後側の下部には、下位置の外部経路部Bsの前側の上部が相対し、その下位置の外部経路部Bsの前側の下部には、下位置の植物生育体保持部C1の後側の上部が相対する。
【0105】
植物栽培に用いる場合、図17に示されるように、生育体保持構造体Cの各植物生育体保持部C1に略円柱形状の植物生育体J3と保水用板状体J4が保持された状態とすることができる。
【0106】
この場合、外部構造体Bにおける上から1番目の棚状突部Bpの前板部Bp1は上位置の植物生育体保持部C1に保持された略円柱形状の植物生育体J3の下部と保水用板状体J4の上部の後面にわたり相対又は相接し、上から2番目の棚状突部Bpの前板部Bp1は中位置の植物生育体保持部C1に保持された略円柱形状の植物生育体J3の上部の後面に相対又は相接し、上から3番目の棚状突部Bpの前板部Bp1は中位置の植物生育体保持部C1に保持された略円柱形状の植物生育体J3の下部と保水用板状体J4の上部及び中部の後面にわたり相対又は相接し、最下位置の棚状突部Bpの前板部Bp1は下位置の植物生育体保持部C1に保持された略円柱形状の植物生育体J3の上部の後面に相対又は相接する状態となる。
【0107】
またこの場合、上位置の植物生育体保持部C1に保持された略円柱形状の植物生育体J3の上部後面に上垂直板部Bf4が相対又は相接してその植物生育体J1の上部後面に吐出小孔Brdが臨む。また、下位置の植物生育体保持部C1に保持された略円柱形状の植物生育体J3の下端部と保水用板状体J4の後面に下垂直板部Bf5の上部が相対又は相接し、下棚板体Cpcの水平板状部Cp1と保持構造体外枠部Cfの底板部Cf2にわたる部分の後側には、下垂直板部Bf5の下部が位置し且つ排水孔部Beが臨む状態となる。
【0108】
更に、外部構造体Bにおける各外部経路部Bs及び各保水体保持部Bhに保水体Kが保持された状態とした場合、上位置の植物生育体保持部C1に保持された保水用板状体J4の下部後面と上位置の外部経路部Bsに保持された保水体Kの上部前面が相対又は相接し、その保水体Kの下部前面は、中位置の植物生育体保持部C1に保持された略円柱形状の植物生育体J3の上部後面と相対又は相接する状態となり、中位置の植物生育体保持部C1に保持された保水用板状体J4の下部後面と下位置の外部経路部Bsに保持された保水体Kの上部前面が相対又は相接し、その保水体Kの下部前面は、下位置の植物生育体保持部C1に保持された略円柱形状の植物生育体J3の上部後面と相対又は相接する状態となる。
【0109】
また、上、中、下の各保水体保持部Bhに保持された保水体Kの前面は、それぞれ、上、中、下の各植物生育体保持部C1に保持された略円柱形状の植物生育体J3の後面に相対又は相接する状態となる。
【0110】
(2-1-3) 本例では、例えば、板形状体が巻回されてなる略円柱形状の植物生育体J3における中央部や径方向に層状をなす湾曲した板形状体同士の間の何れか1又は2以上の箇所に、プラグ苗のように嵌合用の孔に挿入固定して栽培する苗やその他の状態の各種植物の根部を挿入することにより、それらの植物の栽培を行うことができる。
【0111】
前面マットM2は、各植物生育体J3の中心の上下方向位置に合わせて横長切込Mcが設けられ、各植物生育体J3の中心の水平方向位置に合わせて、横長切込Mcに交差する縦切込Mrが設けられた繊維製のマットである。前面マットM2は、各植物生育体保持部C1に保持された植物生育体J3及び保水用板状体J4の前面に配することができる。その場合、各植物生育体J3に対し根部が挿入された栽培対象植物の茎の基部等を、前面マットM2における横長切込Mcと縦切込Mrにおいて保持させることができる。
【0112】
その上で、生育体保持構造体Cにおける前面マットM2の前側に栽培植物及び前面マットM2の脱落を防ぐための前面保持枠Nを配する。更に、前面保持枠Nの連結用孔部Na、生育体保持構造体Cの連結用孔部Ca、外部構造体Bの連結用孔部Baを同軸状に重ね合わせ、それらの孔部に結合体Lを貫通させて前面保持枠N、生育体保持構造体C及び外部構造体Bを連結し、ユニット状の植物栽培装置U2とすることができる。これを壁面等に対し固定する場合は、前記の例と同様に、生育体保持構造体C及び結合体Lの貫通孔に固定ボルトTを挿通して壁面等に対し固定された支持固定器X等に締結固定することができ、壁面等に対し所要数を上下左右に配列して固定することもできる。
【0113】
(2-2) 植物栽培装置U2における受給水部Br内に水(或いは、例えば液肥等を含んだ水系液体、又はその他の水系液体)を供給することにより受給水部Br内の水位が吐出小孔Brd以上となると、吐出小孔Brdから、上位置の植物生育体保持部C1に保持された略円柱形状の植物生育体J3の後面上部に水が供給される。
【0114】
上位置の植物生育体保持部C1に保持された植物生育体J3に供給された水は、その植物生育体J3に吸収され、更にその植物生育体保持部C1における保水用板状体J4に吸収されるが、吸収しきれない水は、その保水用板状体J4を支持する上棚板体Cpaの水平板状部Cp1の後方へ流出し、上位置の外部経路部Bsに保持された保水体Kに吸収される。更に、その保水体Kに吸収しきれない水は、棚状突部Bpの上板部Bp3の前方へ流出し、中位置の植物生育体保持部C1に保持された植物生育体J3に吸収される。
【0115】
すなわち、上位置の植物生育体保持部C1から、上位置の外部経路部Bsを経、中位置の植物生育体保持部C1に至る経路が、受給水部から水系液体が供給される所定植物生育体保持部から、それよりも下方位置の植物生育体保持部に水系液体を導き得る導水経路を構成する。
【0116】
また、中位置の植物生育体保持部C1に保持された植物生育体J3に導かれた水は、その植物生育体J3に吸収され、更にその植物生育体保持部C1における保水用板状体J4に吸収されるが、吸収しきれない水は、その保水用板状体J4を支持する中棚板体Cpbの水平板状部Cp1の後方へ流出し、下位置の外部経路部Bsに保持された保水体Kに吸収される。更に、その保水体Kに吸収しきれない水は、棚状突部Bpの上板部Bp3の前方へ流出し、下位置の植物生育体保持部C1に保持された植物生育体J3に吸収される。
【0117】
すなわち、中位置の植物生育体保持部C1から、下位置の外部経路部Bsを経、下位置の植物生育体保持部C1に至る経路が、植物生育体保持部から導水経路を通じて下方位置の植物生育体保持部に導かれた水系液体を、その植物生育体保持部から、それよりも下方位置の植物生育体保持部に導き得る導水経路を構成する。
【0118】
このようにして、順に上方から下方へ、植物生育体J3及び保水用板状体J4から保水体K、保水体Kから植物生育体J3及び保水用板状体J4へと給水され、各植物生育体J3において生育する植物の灌水に利用される。
【0119】
下位置の植物生育体保持部C1に保持された保水用板状体J4から流出する水は、下棚板体Cpcの水平板状部Cp1の後部の横長切欠部CPxを通じて保持構造体外枠部Cfの底板部Cf2上に流下し、下垂直板部Bf5の下端位置に設けられた排水孔部Beを通じて外部構造体Bの後側外枠部Bfrの下方へ至る排水経路を経て流下排水される。下方隣接位置に植物栽培装置U2が配置されている場合は、排水孔部Beを通じて流出した水は下側の植物栽培装置U2の受給水部Br内に供給され、上側の植物栽培装置U2と同様に植物生育体J3、保水用板状体J4及び保水体Kに順次供給される。
【0120】
なお、水の一部は、植物生育体J3の後方の保水体保持部Bhに保持された保水体Kに吸収され、その保水体Kから前方の植物生育体J3へ流出し得る。更に、上記のように順次下方へ流れる水の一部は、植物生育体J3又は保水用板状体J4の後面沿いに流下して保水体Kや他の植物生育体J3又は保水用板状体J4に吸収されること、保水体Kの後面沿いに流下して植物生育体J3又は保水用板状体J4や他の保水体Kに吸収されること、或いは、そのような水が何れにも吸収されずに排水孔部Beに至ること等が生じ得る。
【0121】
(3) 更に別の例として、図19に示すように、植物栽培装置における構造体を上記植物栽培装置U1の生育体保持構造体Aに対応する生育体保持構造体Dのみとしたものを挙げることができる。
【0122】
生育体保持構造体Dは、主として、一定の前後方向幅を有する正面方形状の外枠部Dfと、その外枠部Dfの後端部に設けられた背板部Dnと、外枠部Dfの両側の縦板部Df1間に架設されると共に背板部Dnに支持された棚板体Dpからなる。
【0123】
棚板体Dpは、上下方向一定間隔おきの5つの上下方向位置に設けられている。各棚板体Dpは、後面が背板部Dnに接合している垂下板部Dp1と、その垂下板部Dp1の上端から前方に向かって突設された水平板状部Dp2と、水平板状部Dp2の前端に設けられた上方突起部Dp3からなる。
【0124】
水平板状部Dp2は上下方向に水系液体が通過可能な網板状をなし、水平板状部Dp2の前端は、外枠部Dfの前端位置よりもやや後方に位置する。
【0125】
各上方突起部Dp3の前面に横方向間隔おきに設けられた尖頭状の突起Dppは、各棚板体Dpの前側に芝生等の栽培対象植物に後方から突き刺さるようにすることにより栽培対象植物保持の補助とするものである。各棚板体Dpの横断面形状は、突起Dppを除き、生育体保持構造体Dの全横幅にわたり実質上一定である。
【0126】
受給水部Drは、外枠部Dfのうち後部の上端部に溝状に設けられている。受給水部Drの底板部Dr1は上下方向に水系液体が通過可能に構成されている。
【0127】
外枠部Dfの下端垂直板部Df2の下端位置には、排水孔部Deが水平方向等間隔に設けられている。
【0128】
外枠部Dfの四隅部には、それぞれ円筒状の連結用孔部Daが設けられている。
【0129】
最上位置の植物生育体保持部D1は、最上位置の棚板体Dpの水平板状部Dp2、上方突起部Dp3、受給水部Drの底板部Dr1、並びに外枠部Dfの両縦板部Df1により囲まれた部分である。
【0130】
それ以外の植物生育体保持部D1は、下側の棚板体Dpの水平板状部Dp2及び上方突起部Dp3、背板部Dn、上側の棚板体Dpの水平板状部Dp2及び垂下板部Dp1、並びに外枠部Dfの両縦板部Df1により囲まれた部分である。
【0131】
このように、各植物生育体保持部D1による植物生育体を保持し得る空間は互いに分離している。また、各植物生育体保持部D1に保持される植物生育体は、互いに実質上分離している。
【0132】
背板部Dnのうち、少なくとも植物生育体の後面を支持する部分の全体又は部分は、格子状部又は網状部を有するものを用いることが好ましい。水平板状部Dp2上に保持した植物生育体の前面部において生育する対象植物の根の通気性を良くするためである。
【0133】
本例では、芝(芝生)やその他の地被植物を栽培する場合、各植物生育体保持部D1に、図示しない植物生育体(好ましくは植物生育体J2と同様の保水性植物生育体)を保持させ、それらの前面に芝生等の栽培対象植物を配した上で、その芝生等の栽培対象植物の脱落を防ぐために、生育体保持構造体Dの前側に上記と同様の前面保持枠Nを配する。前面保持枠Nの連結用孔部Naを生育体保持構造体Dの連結用孔部Daと同軸状に重なり合った状態とし、これらの同軸状に重なり合った状態の連結用孔部及び連結用孔部Daの各孔に上記と同様の結合体Lを貫通させてそれらを連結することにより、ユニット状の植物栽培装置とすることができる。
【0134】
受給水部Dr内に水(或いは、例えば液肥等を含んだ水系液体、又はその他の水系液体)を供給することにより、その底板部Dr1を水系液体が下方に通過して最上位置の植物生育体保持部D1に流下し、その植物生育体保持部D1に保持された植物生育体に吸収される。吸収しきれない水は、その植物生育体を支持する水平板状部Dp2を下方へ透過し、上から2番目の位置の植物生育体保持部D1に保持された植物生育体に吸収される。すなわち、最上位置の植物生育体保持部D1から、その下側の水平板状部Dp2を経、上から2番目の位置の植物生育体保持部D1に至る経路が、受給水部から水系液体が供給される所定植物生育体保持部(最上位置の植物生育体保持部D1に保持された植物生育体)から、それよりも下方位置の植物生育体保持部に水系液体を導き得る導水経路を構成する。
【0135】
また、上から2番目の位置の植物生育体保持部D1に保持された植物生育体に導かれた水は、その植物生育体に吸収されるが、吸収しきれない水は、その植物生育体を支持する水平板状部Dp2を下方へ透過し、上から3番目の位置の植物生育体保持部D1に保持された植物生育体に吸収される。すなわち、上から2番目の位置の植物生育体保持部D1から、その下側の水平板状部Dp2を経、上から3番目の位置の植物生育体保持部D1に至る経路が、植物生育体保持部から導水経路を通じて下方位置の植物生育体保持部に導かれた水系液体を、その植物生育体保持部から、それよりも下方位置の植物生育体保持部に導き得る導水経路を構成する。
【0136】
このようにして、順に上方から下方へ、上側の植物生育体から下側の植物生育体へと給水され、各植物生育体の前面部において生育する栽培対象植物の灌水に利用される。
【0137】
最下位置の植物生育体保持部D1に保持された植物生育体を支持する水平板状部Dp2を下方へ透過した水は、下端垂直板部Df2の下端位置に設けられた排水孔部Deを通じて生育体保持構造体Dの後部下方へ流出する(すなわち、最下位置の棚板体Dpの水平板状部Dp2から排水孔部Deを通じて生育体保持構造体Dの後部下方に至る排水経路を通じて流下排水される)。
【0138】
2.植物栽培装置
【0139】
植物栽培装置は、複数の植物生育体保持部と、受給水部とを備える。
【0140】
(1) 植物生育体保持部により保持される植物生育体は、栽培対象植物が生育し得るものであり、保水性を有するものであることが好ましい。栽培対象植物が生育し得るというのは、例えば、栽培対象とする植物の根、仮根、地下茎等が固着した状態又は内部において張った状態で植物が生育し得るものを言う。
【0141】
植物生育体の栽培対象植物の例としては、芝類、こけ類等の地被植物、セダム類、つた類等を挙げることができるが、その他の各種植物も対象となり得る。
【0142】
保水性の植物生育体としては、例えば、不規則に集合した繊維(繊維の種類は特に問わない。椰子殻繊維、ジュート、ケナフ、木綿等の各種天然繊維、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系等の各種合成繊維、或いはその他の繊維を用い得る。)からなるもの、特に、不規則に集合した繊維を、圧縮成形したもの、圧縮成形すると共にニードルパンチやバインダー繊維の含有及び溶融により繊維成形物の保形性を高めたもの、不織布、不織布を重積したものを用いることができる。また、保水性の植物生育体として、合成又は天然高分子材料製のスポンジ状又はその他の多孔質有機材料、ゼオライトや軽石等を始めとする多孔質無機材料、その他の各種植物生育材料を用いることができる。
【0143】
植物生育体は、ばらばらの繊維や粒子等の状態ではなく、一体性又は定形性を有するものとすることができ、平板状又は湾曲板状の他、直方体又はその他の多面体状、或いはその他の立体形状とすることができる。また、平板状のもの又はその他の形状のものを巻回又はその他の変形等を加えて円柱状又はその他の形態にしたものであってもよい。また、これらの形態のものを二種以上組み合わせたもの、例えば平板状のものの上に、円柱状のもの(例えば平板状のものを巻回して円柱状としたもの等)を軸線を水平状に載置したものであってもよい。
【0144】
保水性の植物生育体としては、例えば、その下端からある限界高さまで、毛細管現象等により、水系液体を保有し得るものを用いることができる。保水性の植物生育体は、水系液体を保有した場合に下方側の水系液体保有量が上方側に比し多くなるものであってよい。
【0145】
水系液体とは、水道水、雨水、液肥等を含有する水等の、対象植物の生育に利用され得る、水を主成分とする液体である。
【0146】
保水体は、保水性の植物生育体と同様の材料を用いて同様に形成したものとすることができ、保水体と保水性の植物生育体は同一材料から同様に形成したものであってもよい。
【0147】
(2) 植物生育体保持部は、植物生育体(例えば上記のような植物生育体)を、その植物生育体の何れかの部分において栽培対象植物を生育し得るように保持するためのものである。
【0148】
(2-1) 植物栽培装置は、各植物生育体保持部に、保水性を有し対象植物が生育し得る植物生育体が保持されたものとすることができる。
【0149】
植物生育体保持部による植物生育体の保持は、基体(枠状体、柱状体、壁状体、アーチ、シェル等)に、例えば、植物生育体の底面部の全部又は一部を上向きに支持する上向支持部や、植物生育体の側面部の一部又は全部を側方および/または上方に支持する側方支持部を設けることによる保持、植物生育体の一部に挿通した又は植物生育体を貫通した棒材又は板材等を前記のような基体により支持することによる保持、前記のような基体に対し植物生育体を、接着、縫着・綴着・釘、ビス、ボルト等により直接固定することによる保持等により行い得る。植物生育体を上向きに支持する構造体としては、多数の透孔部を好ましくは満遍なく有する板状構造体、スノコ状構造体、網状構造体(パンチングメタルようなものも含む)、格子状(縦横格子状又は並列格子状)構造体、植物生育面に向かって保水性植物生育体の後方から突設された片持梁状のものを並列した構造体、複数並列した水平方向の梁状体又は可撓性線条体、又はこれらの組み合わせ等を挙げることができる。スノコ状構造体、網状構造体、格子状構造体、片持梁状のものを並列した構造体等の前記各種構造体を構成する材料としては、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属、各種合成樹脂、セラミクス等を挙げることができる。
【0150】
(2-2) 植物生育体保持部により保持された状態の植物生育体において、植物を生育するための面としては、例えば、垂直状の面又は傾斜状(水平方向に対し、例えば40乃至90度の傾斜、若しくは50乃至90度の傾斜、好ましくは60乃至90度の傾斜、より好ましくは70乃至90度の傾斜)の上向き若しくは下向きの面、水平面を挙げることができる。また、このような植物を生育するための面は、平面に限らず、例えば、垂直方向(若しくは傾斜方向)及び水平方向の両方又は一方において湾曲している曲面や凹凸を有する面であってもよい。例えば直立円筒状の外周面又は内周面或いは円錐状の外周面に沿うものとすることができる。更に、1つの植物生育体が複数の面(例えば反対側の面、隣接面等)を植物生育面として有するものであってもよい。
【0151】
(2-3) 植物生育体の相対する両面のそれぞれにおける全体又は一部を、対象植物の生育を妨げない材料(例えば網状部又は格子状部等)により支持すること又は覆うことにより、それらの相対する両面又はその一方を植物生育面とすることができる。また、保水性植物生育体の相対しない2以上の面のそれぞれにおける全体又は一部を、対象植物の生育を妨げない材料(例えば網状部又は格子状部等)により支持すること又は覆うことにより、それら全ての面又は一部の面を植物生育面とすることができる。
【0152】
(3) 複数の植物生育体保持部は、異なる上下方向位置に設けられる。
【0153】
(3-1) 異なる上下方向位置というのは、一方の植物生育体保持部の下端位置よりも下方に他方の植物生育体保持部の上端位置が位置する場合の他、一方の植物生育体保持部の上端位置よりも下方であって下端位置よりも上方に他方の植物生育体保持部の上端位置が位置し、一方の植物生育体保持部の下端位置よりも下方に他方の植物生育体保持部の下端位置が位置する場合を含む。
【0154】
前者においては、一方の植物生育体保持部の垂直下方に他方の植物生育体保持部の全体が位置する場合、一方の植物生育体保持部の垂直下方に他方の植物生育体保持部の一部が位置する場合、及び、一方の植物生育体保持部の垂直下方以外の位置に他方の植物生育体保持部の全体が位置する場合の何れかとすることができる。
【0155】
後者においては、一方の植物生育体保持部の垂直下方以外の位置に他方の植物生育体保持部の全体が位置するものとすることができる。
【0156】
(3-2) 何れかの植物生育体保持部による植物生育体を保持し得る空間と、他の植物生育体保持部による植物生育体を保持し得る空間は、実質上分離しているものとすることができる。
【0157】
実質上分離というのは、一方の植物生育体保持部による植物生育体を保持し得る空間と他方の植物生育体保持部による植物生育体を保持し得る空間が分離している場合の他、次のような場合が有り得る。
【0158】
両空間が水平方向に一部接触していて上方側の空間に保持された植物生育体が含有する水分が下方側の空間に保持された植物生育体に一部接触することにより一部の水分が下方側の植物生育体に流れるが、その量は相対的に小さい場合。
【0159】
両空間が垂直方向に一部接触していて上方側の空間に保持された植物生育体が含有する水分が下方側の空間に保持された植物生育体に一部接触することにより一部の水分が下方側の植物生育体に流れるが、その量は相対的に小さい場合。
【0160】
(3-3) 植物生育体保持部に保持された植物生育体と、その植物生育体保持部から導水経路を介して水系液体が導かれる、前記植物生育体保持部よりも下方位置の植物生育体保持部に保持された植物生育体は、実質上分離している。
【0161】
すなわち、上方位置の植物生育体と下方位置の植物生育体とが実質上分離しているというのは、例えば、両者が空間を隔てている場合、両植物生育体が水平方向に一部接触していて上方の植物生育体が含有する水分が下方の植物生育体に一部接触することにより一部の水分が下方側の植物生育体に流れるが、その量は相対的に小さい場合、及び、両植物生育体が垂直方向に一部接触していて上方の植物生育体が含有する水分が下方の植物生育体に一部接触することにより一部の水分が下方側の植物生育体に流れるが、その量は相対的に小さい場合を挙げることができる。
【0162】
(3-4) 前記のような複数の植物生育体保持部は、生育体保持構造体(例えば棚状又は枠状の構造体)として一体的に構成することができる。その材料としては、例えば合成樹脂を好適に用い得るが、これに限らない。
【0163】
(4) 受給水部は、供給源から供給される水系液体を受け入れてそれを、例えば受給水部に設けた流出部を通じて、給水し得る。受給水部は、供給源から供給される水系液体を受け入れて、例えば一定水位になるまで一時貯留し得、一定水位を超える水系液体を流出部を通じて給水し得るもの、或いは、受け入れた水系液体を流出部を通じて給水し得るが、給水可能な流量を超える供給流量の水系液体を一時貯留し得るものとすることができる。なお、受給水部は、供給源から供給される水系液体を給水し得る給水部の一例であり、受給水部が、供給源から供給される水系液体をそのまま給水する給水部(水系液体の一時貯留等を行わないもの)であっても植物栽培装置として成立し得ることは言うまでもない。
【0164】
供給源としては、例えば、水道、降水、貯留降水、又は、植物栽培装置から排水された水系液体、植物栽培装置から排水された水系液体のポンプ等による循環、或いは、これらの組み合わせを挙げることができるが、その他の装置等であってもよい。
【0165】
受給水部は、供給された水系液体を、植物生育体保持部のうち最上位置の植物生育体保持部に対し給水し得るものであることが好ましい。尤も、受給水部は、供給された水系液体を、植物生育体保持部のうち少なくとも最下位置の植物生育体保持部よりも上方の植物生育体保持部に対し給水し得るものとすることができる。また、受給水部から水系液体が供給される所定植物生育体保持部よりも下方に、異なる上下方向位置の2以上の植物生育体保持部を有するものとすることができる。なお、給水は、2以上の上下方向位置の植物生育体保持部における、或いは1又は2以上の植物生育体保持部及び1又は2以上の外部経路部における、例えば水平方向における全体に対して又は所要部分のみに対して行うこともできる。
【0166】
受給水部は、このような給水対象の植物生育体保持部における少なくとも所定の水平方向部分に沿うように配された流出部を有し、受給水部に供給された水系液体は、前記流出部を通じて前記植物生育体保持部に給水されるものとすることができる。
【0167】
また、給水する植物生育体保持部に保持される植物生育体における植物を生育するための面が、例えば、垂直状の面又は傾斜状(水平方向に対し、例えば40乃至90度の傾斜、好ましくは60乃至90度の傾斜、より好ましくは75乃至90度の傾斜)の上向き若しくは下向きの面である場合、受給水部から植物生育体保持部への給水は、受給水部の側部又は下部若しくは底部に設けた流出部を通じて、植物生育体保持部に保持される植物生育体の、例えば、植物を生育するための面の背面側(好ましくは背面側上部)、その植物生育体の上端部、その植物生育体の正面側(好ましくは正面側上部)、又はその植物生育体の側面側(好ましくは側面側上部)に対し行われるものとすることができる。
【0168】
流出部としては、例えば、孔(多数の孔、1又は2以上の横長孔等)、単数又は複数の切欠き(せき)、水系液体透過層(例えば多数の粒状体からなる層)、水系液体透過膜等を例示することができる。このような流出部は、水系液体を供給する対象である所定植物生育体保持部における所定の水平方向部分(例えば、所定高さ位置の所定の水平方向長さ部分、上端部の所定の横長部分等)に沿うように配され、水系液体の供給に水平方向における偏りが生じることが可及的に防がれることが好ましい。
【0169】
(5) 導水経路は、受給水部から水系液体が供給される所定植物生育体保持部から、それよりも下方位置の植物生育体保持部に水系液体を導き得るものである。また、導水経路は、植物生育体保持部から導水経路を通じて下方位置の植物生育体保持部に導かれた水系液体を、その植物生育体保持部から、それよりも下方位置の植物生育体保持部に導き得るものである。
【0170】
(5-1) 導水経路は、例えば、植物生育体保持部から、その側方外部の外部経路部を経て、下方位置の植物生育体保持部へ水系液体を導くものとすることができる。側方外部というのは、平面視において植物生育体保持部の外方に位置する部分であり、前後左右を問わない。この場合、外部経路部は、導水経路の少なくとも一部を構成する。なお、植物生育体保持部が、その下部に水系液体を貯留し得る凹部を有する場合は、水系液体が側方外部の外部経路部へ流出するには、その凹部における水系液体の水位が外部経路部へ流出し得るまで上がることを要する。
【0171】
外部経路部には、水系液体を保持し得る上記保水体を備えるものとすることができる。
【0172】
前記のように、複数の植物生育体保持部を、生育体保持構造体(例えば棚状又は枠状の構造体)として一体的に構成した場合(或いはその他の場合でも)、導水経路における外部経路部を、生育体保持構造体等の植物生育体保持部に対応するように、外部構造体(例えば棚状又は枠状の構造体)として一体的に構成することができる。その材料としては、例えば合成樹脂を好適に用い得るが、これに限らない。生育体保持構造体と外部構造体が結合することにより、植物生育体保持部から、その側方外部の外部経路部を経て、下方位置の植物生育体保持部へ水系液体を導く導水経路を備えた植物栽培装置が得られるものとすることができる。なお、受給水部は、例えば、生育体保持構造体と外部構造体の何れかに一体に設けることができる。
【0173】
このような外部構造体は、生育体保持構造体に正面側が存在する場合は背面側又は側面側に、或いはその両方に設けることができる。また、例えば正面側に生育体保持構造体を位置させ、背面側に外部構造体を位置させて両者を結合し、外部構造体における外部経路部の背面側を開口状態とすることにより、外部構造体が生育体保持構造体としても機能する(外部経路部を、植物生育体保持部を兼ねるものとし、植物生育体を兼ねる保水体を保持し得る)ものとし、生育体保持構造体が外部構造体としても機能する(植物生育体保持部を、外部経路部を兼ねるものとし、保水体を兼ねる植物生育体を保持し得る)ものとすることも可能である。
【0174】
保水体は、例えば、植物生育体の側方(後方の他、横方向、前方等でもよい)において水系液体を保有するため、保有した水系液体を前方の植物生育体(特に、水分保有量が低下した状態の保水性植物生育体)に供給するため、又は、植物生育体の後方に対象植物の根が伸びてその根が水系液体を吸収できるようにするために、外部経路部に配装することができる。
【0175】
保水体と保水性植物生育体は水平方向において接するものとすることができる。保水体と保水性植物生育体の水平方向接触は、垂直方向接触に比し、上方のものから下方のものへの水系液体の移動をあまり招かない。
【0176】
(5-2) 別の導水経路の例として、植物生育体保持部が、その下方へ水系液体が透過し得る透水性構造部を備えており、上方位置の植物生育体保持部から前記透水性構造部を介して下方位置の植物生育体保持部へ水系液体を導くものを挙げることができる。
【0177】
透水性構造部としては、例えば、植物生育体を上向きに支持する上向支持部であって、多数の透孔部を好ましくは満遍なく有する板状構造体、スノコ状構造体、網状構造体(パンチングメタルようなものも含む)、格子状(縦横格子状又は並列格子状)構造体、植物生育面に向かって保水性植物生育体の後方から突設された片持梁状のものを並列した構造体、複数並列した水平方向の梁状体又は可撓性線条体により形成したものの他、植物生育体の保持を、植物生育体の一部に挿通又は植物生育体を貫通した棒材又は板材等を支持することにより行ったり、植物生育体を、接着、縫着・綴着・釘、ビス、ボルト等により直接固定することにより、上下の植物生育体間に空間を設けたもの、或いは、これらの組み合わせ等を挙げることができる。スノコ状構造体、網状構造体、格子状構造体、片持梁状のものを並列した構造体等の構造体からなる区画部を構成する材料としては、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属、各種合成樹脂、セラミクス等を挙げることができる。
【0178】
(5-3) 植物栽培装置は、導水経路を通じて上方の植物生育体保持部から水系液体が導かれ得る植物生育体保持部のうち、その植物生育体保持部から更に下方位置の植物生育体保持部へ導水経路を通じて水系液体が導かれ得るもの以外の植物生育体保持部(例えば最下位置の植物生育体保持部)から水系液体が流下排水される排水経路を有するものとすることができる。
【0179】
このような排水経路は、例えば、下方の外部へ排水するものとすることができる他、排水貯留部を設けてそこに流下するものとすることができ、そのような排水貯留部に流下した水系液体は、循環ポンプ等により上方の受給水部へ供給されるものとすることもできる。
【0180】
(6) 植物生育体保持部に保持する保水性の植物生育体における植物を生育するための面(植物生育面)が、垂直状の面又は傾斜状(水平方向に対し、例えば40乃至90度の傾斜、若しくは50乃至90度の傾斜、好ましくは60乃至90度の傾斜、より好ましくは70乃至90度の傾斜)の上向き若しくは下向きの面である場合、植物生育体の下端からできるだけ高い位置まで水系液体を保有し得るものであることが好ましい。例えば、保水性の植物生育体の高さを、下端から高さの10乃至100%までの部分が水系液体を保有し得る高さとすることができる。すなわち、下端からの高さの例えば10%まで水系液体を保水し得るものであってもよく、下端からの高さの例えば50%まで水系液体を保水し得るものであってもよく、下端からの高さの例えば100%まで水系液体を保水し得るものでもよい。或いは、30乃至100%までの部分が水系液体を保有し得る高さとすることができる。好ましくは、40又は50乃至100%、より好ましくは60又は70乃至100%、更に好ましくは80若しくは90乃至100%である。一般的には、保水性の植物生育体の下端から上端までの高さを低くすることにより、その植物生育体の全体の高さ(下端から上端までの高さ)に対する下端から水系液体を保水し得る位置までの高さの比率を大きくすることができる。
【0181】
(6-1) 植物生育体保持部に保持された状態の保水性の植物生育体の高さは、用いる繊維材料や繊維材料同士の密度等による。例えば1乃至20cmとすることができ、好ましくは3乃至15cm、より好ましくは4乃至10cmとすることができるが、これに限られるものではない。
【0182】
(6-2) 植物生育体保持部に保持された状態の植物生育体の奥行きは、高さ以下とすることが望ましい。この場合、スペースを有効に利用して植物生育体の植物生育面において植物栽培を行うことができる。植物生育体の奥行きは、好ましくは、高さの3/4又は2/3以下、より好ましくは1/2又は1/3以下である。
【0183】
(6-3) 異なる上下方向位置に設けられた植物生育体保持部に保持された植物生育体は、互いに実質上分離して上下方向に並び、それらの上下方向に並ぶ植物生育体の各植物生育面が上下方向に並ぶものとすることができる。
【0184】
(6-4) 上下隣り合う植物生育体の植物生育面の前後方向位置は、一致するものとすることができる。その場合に各植物生育面の水平方向に対する傾斜角が90度であれば、各植物生育面が一定の垂直面に沿うものとなる。
【0185】
また、例えば、上側の植物生育面に対して下側の植物生育面が前方に位置するものとすることもできる。その場合、上側の保水性植物生育体の下端よりも下側の保水性植物生育体の上端が上方に位置するものとして上側の植物生育面と下側の植物生育面の上下間隔を0又はできるだけ小さくすることができる。
【0186】
(6-5) 植物生育面同士の上下間隔は、例えば、植物生育面(保水性植物生育体のうち上方突起部等により覆われて植物が生育し得ない部分は除かれる)の上下方向寸法の2倍若しくは3/2以下、或いは、1倍若しくは2/3以下、好ましくは1/2若しくは1/3以下、より好ましくは1/4若しくは1/5以下、更に好ましくは1/10以下若しくは0であるものとすることができる。
【0187】
(6-6) 上下方向に並んだ植物生育面の形状、大きさ、水平方向両端位置等は、それぞれ一定とすることができるほか、互いに異なるものとすることもできる。例えば、上下方向に並んだ植物生育面の一端が上下方向に一定傾斜又は傾斜が1以上の箇所で変化する直線又は所定の曲線に沿い、他端は前記一端の直線又は曲線を平行移動した直線又は曲線或いはその他の直線又は曲線に沿うものとすることができる。
【0188】
従って、上下方向に並んだ全ての植物生育面の外周縁を包絡する線は、長方形、正方形、その他の多角形、円、楕円、その他の閉曲線等を描くものとすることができる。
【0189】
(7) 植物栽培装置は、全体がユニット状をなすもの(例えば、生育体保持構造体と外部構造体が結合した植物栽培装置であってユニット状をなすもの)を、2以上、上下方向に配列した場合に、上側の植物栽培装置における上記排水経路を通じて排水される水系液体が、下側の植物栽培装置における上記受給水部に受け入れられ得るものとすることができる。
【0190】
また、植物栽培装置は、全体がユニット状をなすものであり、それを被固定体(例えば壁面等の垂直状の面や傾斜面等)に対し上下方向に配列した状態で固定する場合に、個々のユニット毎に被固定部に対し着脱可能に固定されるものとすることができる。
【0191】
3.支持固定器
【0192】
支持固定器は、前支持部と、上被固定部及び下被固定部を有する。支持固定器は、ステンレス鋼等の金属製であることが好ましいが、これに限るものではない。
【0193】
(1) 前支持部は、固定対象物を上向きに支持し得る。前支持部は、少なくとも固定対象物を上向きに支持する部分が、所定の水平面に沿うものであることが好ましい。また、前支持部の上面は水平面であることが好ましく、前支持部は、水平状板部であることが好ましいが、何れも、これに限るものではない。
【0194】
(2) 固定対象物としては、上記ユニット状の植物栽培装置の他、各種の物を対象とすることができるが、奥行きが比較的小さい直方体外形の物を上下左右に配列固定するのに特に適する。
【0195】
(3) 上被固定部及び下被固定部は、前支持部の後側において前支持部の上方及び下方にそれぞれ位置し、それらの上被固定部及び下被固定部は、それぞれ、固定対象物を固定するための締結箇所を備える。
【0196】
これにより、前支持部において固定対象物を上向きに支持した状態でその固定対象物を上被固定部に対しその締結箇所において締結固定することができると共に、前支持部の下側に位置する別の固定対象物を下被固定部に対しその締結箇所において締結固定することができる。
【0197】
上被固定部及び下被固定部は、それぞれにおける横方向に互いに離隔した2つの位置に、締結箇所を備えるものとすることができる。
【0198】
この場合、前支持部において2つの固定対象物(例えば正面方形状をなす固定対象物)を支持した状態でそれらの固定対象物をそれぞれ上被固定部に対し2つの締結箇所において締結固定することができると共に、前支持部の下側に位置する別の2つの固定対象物(例えば正面方形状をなす固定対象物)を下被固定部に対しその2つの締結箇所において締結固定することができる。
【0199】
上被固定部及び下被固定部は、それぞれ、前面のうち少なくとも固定対象物に接する部分が、法線が前後方向である所定の垂直面に沿うものであることが好ましい。また、上被固定部及び下被固定部は、それぞれ、法線が前後方向である所定の垂直面に沿う垂直状板部であることが好ましい。
【0200】
締結箇所は、上被固定部及び下被固定部のそれぞれにおける横方向に互いに離隔した左右対称位置の2箇所ずつに備えるものとすることが好ましく、これらの締結箇所は、上下対称位置に位置することが好ましい。
【0201】
締結箇所としては、ボルト等が挿通し得る孔、雌ねじ部(例えばバーリング加工等により形成したもの)、固定ナットの雌ねじ孔部、ボルト等が挿通し得る孔の後側に固定されたナットの雌ねじ孔部、植え込みボルトの雄ねじ部等を例示することができるが、これに限るものではない。
【0202】
(4) 支持固定器は、上被固定部及び下被固定部の位置の後側に、壁面等の垂直状の面や傾斜面等の被固定体に直接又は別部材を介して固定するための被支持部、例えば後方突出の水平板状をなす被支持部を有するものとすることができる。
【0203】
4.支持固定システム
【0204】
四隅部にそれぞれ被固定箇所を有する正面方形状の固定対象物と、上記支持固定器からなり、
支持固定器の前支持部上に固定対象物の下部を上向きに支持した状態でその固定対象物の下部の被固定箇所を上被固定部の締結箇所に対し締結固定すると共に
別の固定対象物の上部の被固定箇所を下被固定部の締結箇所に対し締結固定するものである。
【0205】
(1) 固定対象物は、複数の被連結体が重合連結されてなるものとすることができる。その各被連結体は、連結用孔部を備えた被連結部を有し、複数の被連結体の重合連結は、各被連結体の被連結部における連結用孔部同士が同軸状に重なり合う状態で行われ、その状態の被連結部が被固定箇所を構成するものとすることができる。連結用孔部とは、連結用の孔及びその周縁部を意味する。被連結部は、連結用孔部を含む部分を意味し、連結用孔部が被連結部の全部である場合もある。
【0206】
(2) 複数の被連結体の重合連結は、それらの被連結体の被連結部における同軸状に重なり合った連結用孔部に結合体を貫通させることにより行うことができる。
【0207】
(2-1) 結合体は、
複数の被連結体の被連結部における同軸状に重なり合った連結用孔部に貫通してそれらの被連結部を重合連結し得るものであり、
例えば、
軸状部と、
軸状部の基端側に位置する基端側外方張出部と、
軸状部の先端側に位置し、基端側外方張出部との間に対象物を挟む先端側外方張出部を有すると共に内方へ弾性的に撓み得る抜止部
を備えるものとすることができる。
【0208】
上記例の結合体を用いた場合、上記複数の被連結体の被連結部における同軸状に重なり合った連結用孔部に対し、その同軸状に重なり合った連結用孔部のうち一方の側(例えば正面側)のものの開口よりも基端側外方張出部が外方に張り出している結合体の軸状部を、その軸状部の先端側から挿入すると、前記基端側外方張出部が固定対象物における前記一方の側の被連結部に受止されるまで挿入を進めることができる。
【0209】
前記同軸状に重なり合った連結用孔部が、結合体の抜止部が内方へ弾性的に撓むことによって先端側外方張出部が通過し得る一方、同軸状に重なり合った連結用孔部のうち他方側(例えば背面側)の連結用孔部を抜け出た前記抜止部が内方撓み状態から復元することにより前記先端側外方張出部が側方へ広がって前記他方側の連結用孔部を逆向きに通過し得なくなるものであれば、先端側外方張出部が前記他方側の連結用孔部から他方側へ出て抜止部が内方撓み状態から復元することにより、その先端側外方張出部と基端側外方張出部との間に、複数の被連結体の被連結部を挟んでそれらを重合連結した状態となる。
【0210】
また、結合体は、更に、軸方向に貫通する貫通部を有するもの、例えば、前記例の結合体においては、基端側外方張出部及び軸状部を、軸方向の基端から前記抜止部の内方部まで軸方向に貫通する貫通部を備えるものとすることができる。
【0211】
また、同軸状に重なり合った連結用孔部に対する前記例の結合体の貫通は、連結用孔部の一方から他方(例えば正面側から背面側)に対し行うことの他、他方から一方(例えば背面側から正面側)に対し行うことも可能なものとすることができる。
【0212】
結合体は、ポリプロピレン等の合成樹脂製とすることができるが、これに限るものではない。
【0213】
(2-2) 前記例の結合体の軸状部は、例えば、結合体の軸方向に伸びる(すなわち軸方向が結合体の軸方向と一致するか又は平行な)筒状部、脚部、或いはこれらの組み合わせ、例えば筒状部の軸方向先端側に脚部を有するものとすることができる。筒状部としては、例えば円筒状部、多角筒状部を挙げることができ、脚部は、例えば、結合体の軸心線よりも径方向外方において結合体の軸方向に沿い、先端が自由端であり、先端側が径方向内方へ弾性的に撓み得るものを挙げることができる。このような脚部は、例えば、結合体の軸心線のまわりに周方向間隔を挟んで複数本設けることができる。結合体の軸方向に垂直な方向における脚部の横断面形状は、例えば、略円弧状、或いは、扇面形状(中心並びに中心角の大きさ及び位置が一致し半径が異なる二つの円弧とそれらの円弧の両端を通る二つの半径とで囲まれた図形)、方形状、その他の多角形状とすることができる。軸状部の先端部は先細形状に形成されることにより同軸状に重なり合った連結用孔部に軸状部を挿入し易いものとすることが望ましい。
【0214】
基端側外方張出部は、軸状部の基端側に位置する。基端側外方張出部の位置は、軸状部の基端に限るものではない。基端側外方張出部の形状は、例えば、結合体の軸方向に対し垂直な環状板状部や蝶形板状部とすることができる。
【0215】
抜止部は、軸状部の先端側に位置し、基端側外方張出部との間に対象物を挟む先端側外方張出部を有すると共に内方へ弾性的に撓み得るものである。例えば、結合体の軸心線よりも径方向外方において結合体の軸方向に沿った脚部であって、先端が自由端であり、先端側が径方向内方へ弾性的に撓み得るものにおける先端部の径方向外方側に先端側外方張出部を設けたものを挙げることができる。
【0216】
前記例の結合体が有し得る前記貫通部は、基端側外方張出部及び軸状部を、結合体の軸方向の基端から抜止部の内方部まで軸方向に貫通するものである。このような貫通部は軸方向の先端まで貫通するものが一般的であるが、先端に達することを必ずしも要しない。前記貫通部は、例えば円形断面とすることができるが、これに限るものではなく、例えば多角形断面とすることもできる。
【0217】
(3) 支持固定器に対する固定対象物の固定は、結合体の軸方向の貫通部を貫通する締結体により行うことができる。複数の被連結体における同軸状に重なり合った連結用孔部に貫通して被連結部同士を重合連結した結合体の軸方向の貫通部に、締結体を貫通させ、その締結体を支持固定器の締結箇所に対し締結固定することにより、固定対象物の被固定箇所を支持固定器に固定することができる。
【0218】
締結体は、支持固定器の締結箇所に対応するものであり、一般的にはボルトを用いるが、これに限るものではない。
【0219】
また、上記例の結合体が、前記同軸状に重なり合った連結用孔部に貫通して抜止部の先端側外方張出部と基端側外方張出部との間に被連結部同士を重合連結し、ボルト等の締結体が結合体の軸方向の貫通部を貫通して固定対象物の被固定箇所を支持固定器の締結箇所に対し締結固定した状態において、締結体(ボルトの軸部等)が結合体の抜止部の内方に位置することにより、抜止部の内方への撓みによる前記被連結部の重合連結の解除を防ぎ得るものとすることができる。この場合、締結体(ボルトの軸部等)が抜止部の内方に位置することにより、結合体の抜止部の内方への撓みによる前記被連結部の重合連結の解除を防ぐことができる。
【0220】
なお、以上の実施の形態についての記述における構成部品の寸法、個数、材質、形状、その相対配置などは、特にそれらに限定される旨の記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【符号の説明】
【0221】
A 生育体保持構造体
A1 植物生育体保持部
Ap 棚板体
Ap1 垂下板部
Ap2 水平板状部
Ap3 上方突起部
App 突起
Af 保持構造体外枠部
Af1 縦板部
Af2 底板部
Af3 天板部
Af4 上方突起部
Af5 隅部
Aa 連結用孔部
B 外部構造体
Bf 外部構造体外枠部
Bff 前側外枠部
Bfr 後側外枠部
Bf1 後部縦板部
Bf1a 通気孔
Bf2 後部底板部
Bf3 後部天板部
Bf4 上垂直板部
Bf5 下垂直板部
Bn 後板部
Bn1 通気孔
Bp 棚状突部
Bp1 前板部
Bp2 下板部
Bp3 上板部
Bs 外部経路部
Bh 保水体保持部
Br 受給水部
Brw 端壁部
Brw1 U字状切欠部
Brd 吐出小孔
Brr 補強板
Brr1 切欠部
Be 排水孔部
Ba 連結用孔部
C 生育体保持構造体
C1 植物生育体保持部
Cpa 上棚板体
Cpb 中棚板体
Cpc 下棚板体
Cp1 水平板状部
Cp2 上方突起部
CPx 横長切欠部
Ch1 仕切壁
Ch2 湾曲上板
Cf 保持構造体外枠部
Cf1 縦板部
Cf2 底板部
Cf3 天板部
Ca 連結用孔部
D 生育体保持構造体
D1 植物生育体保持部
Da 連結用孔部
De 排水孔部
Df 外枠部
Df1 縦板部
Df2 下端垂直板部
Dn 背板部
Dp 棚板体
Dp1 垂下板部
Dp2 水平板状部
Dp3 上方突起部
Dpp 突起
Dr 受給水部
Dr1 底板部
J1 植物生育体
J2 植物生育体
Jc 円板状部
J3 植物生育体
J4 保水用板状体
K 保水体
L 結合体
L1 軸状部
L1a 脚部
L2 基端側外方張出部
L3 抜止部
L3a 先端側外方張出部
L4 貫通部
M1 前面マット
M2 前面マット
Mc 横長切込
Mr 縦切込
N 前面保持枠
Na 連結用孔部
T 固定ボルト
U1 植物栽培装置
U2 植物栽培装置
V カバー材
W 壁面
X 支持固定器
X1 前支持部
X2 被支持部
Xa 固定用孔
X3 上被固定部
X4 下被固定部
Xb ナット用孔
Xc 固定ナット
Y 山形鋼
Y1 一辺部
Y2 他辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定対象物を上向きに支持し得る前支持部と、その前支持部の後側において前支持部の上方及び下方にそれぞれ位置する上被固定部及び下被固定部を有し、
前記上被固定部及び下被固定部に、それぞれ、固定対象物を固定するための締結箇所を備えることを特徴とする支持固定器。
【請求項2】
上記上被固定部及び下被固定部のそれぞれにおける横方向に互いに離隔した2つの位置に締結箇所を備える請求項1記載の支持固定器。
【請求項3】
上記前支持部は、少なくとも固定対象物を上向きに支持する部分が、所定の水平面に沿うものであり、
上記上被固定部及び下被固定部は、それぞれ、前面のうち少なくとも固定対象物に接する部分が、法線が前後方向である所定の垂直面に沿うものである請求項1又は2記載の支持固定器。
【請求項4】
上記前支持部が前方突出の水平状板部であり、
上記上被固定部及び下被固定部が、それぞれ、法線が前後方向である所定の垂直面に沿う垂直状板部であり、
上被固定部及び下被固定部に対し、前後方向軸の雌ねじ部が設けられ、その雌ねじ部が上記締結箇所である請求項3記載の支持固定器。
【請求項5】
四隅部にそれぞれ被固定箇所を有する正面方形状の固定対象物と、請求項1乃至4の何れか1項に記載の支持固定器からなり、
前記支持固定器の前支持部上に固定対象物の下部を上向きに支持した状態でその固定対象物の下部の被固定箇所を上被固定部の締結箇所に対し締結固定すると共に
別の固定対象物の上部の被固定箇所を下被固定部の締結箇所に対し締結固定する支持固定システム。
【請求項6】
上記固定対象物が、複数の被連結体が重合連結されてなるものであり、
前記各被連結体は、連結用孔部を備えた被連結部を有し、
前記複数の被連結体の重合連結は、各被連結体の被連結部における連結用孔部同士が同軸状に重なり合う状態で行われ、その状態の被連結部が上記被固定箇所を構成するものであり、
軸方向の貫通部を有する結合体と、結合体の前記貫通部を貫通し得る締結体を有し、
前記結合体は、前記同軸状に重なり合った連結用孔部に貫通して被連結部同士を重合連結し得るものであり、
前記締結体は、前記同軸状に重なり合った連結用孔部に貫通して被連結部同士を重合連結した結合体の前記貫通部を貫通して支持固定器の締結箇所に対し締結固定することにより、固定対象物の被固定箇所を支持固定器に対し固定するものである請求項5記載の支持固定システム。
【請求項7】
上記結合体は、
軸状部と、
前記軸状部の基端側に位置する基端側外方張出部と、
前記軸状部の先端側に位置し、前記基端側外方張出部との間に対象物を挟む先端側外方張出部を有すると共に内方へ弾性的に撓み得る抜止部と、
前記基端側外方張出部及び軸状部を、軸方向の基端から前記抜止部の内方部まで軸方向に貫通する貫通部を備えてなるものである請求項6記載の支持固定システム。
【請求項8】
上記結合体が、上記同軸状に重なり合った連結用孔部に貫通して抜止部の先端側外方張出部と基端側外方張出部との間に被連結部同士を重合連結し、上記締結体が結合体の上記貫通部を貫通して固定対象物の被固定箇所を支持固定器の締結箇所に対し締結固定した状態において、前記締結体が上記抜止部の内方に位置することにより前記抜止部の内方への撓みによる前記被連結部の重合連結の解除を防ぎ得るものである請求項7記載の支持固定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−66443(P2013−66443A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208270(P2011−208270)
【出願日】平成23年9月24日(2011.9.24)
【出願人】(000178583)山崎産業株式会社 (77)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】