説明

支持構造

【課題】生産性を高めながら、捩れに対して強い支持構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる支持構造108Aは、略水平方向に延びたパイプ形状の後側ステアリングサポートメンバ104を備え後側ステアリングサポートメンバを支持する支持構造において、下端が固定され下方から直線状に延び後側ステアリングサポートメンバの端部130に接触する丸棒状のリンフォース106と、リンフォースを後側ステアリングサポートメンバの端部に取り付ける結合ブラケット102Aとをさらに備え、結合ブラケットは、リンフォースのうち後側ステアリングサポートメンバの端部に面しない側の少なくとも一部を囲みながら、リンフォースに接触する湾曲部102aと、湾曲部から後側ステアリングサポートメンバの側面130bに沿って後側ステアリングサポートメンバの長手方向に延び側面に溶接される一対の側部102d、102kとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略水平方向に延びたパイプ形状の部材を支持する支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車体ボディには、柱構造だけでは強度や剛性が不足することを考慮して、例えば、補強部材としてのリンフォースが取付けられる。リンフォースは、例えば異なる部品間をつなぐ場合がある。この場合に、リンフォースが屈曲部を有していると、その屈曲部を基点に折れが発生し、強度が低下してしまう。このため、リンフォースでは、部品間を直線状につなぐことが好ましい。直線状に延びたリンフォースを含む構造は、支持棒の役割を果たし、強度的に向上することが見込まれる。
【0003】
また、車体ボディは、エンジン振動や路面から受ける振動(路面振動)など、様々な振動を受ける。このような車体構造に取付けられ、異なる部品間をつなぐリンフォースには、これらの振動などに起因して捩れが生じる。この捩れに対しては、角部を有する部材よりも捩れに伴う応力集中部が発生しにくい丸棒形状のリンフォースを用いることが有効とされる。つまり、車体構造に取付けられるリンフォースとしては、直線状に延びた丸棒であることが好ましい。
【0004】
特許文献1には、捩れに有効な丸棒のリンフォースをステアリングサポートメンバに取付けて、ステアリングサポートメンバを支持する支持構造が開示されている。特許文献2には、丸棒のリンフォースをステアリングサポートメンバに貫通させた状態で取付けて、ステアリングサポートメンバを支持する支持構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−73489号公報
【特許文献2】特開平8−183478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の支持構造では、円形(パイプ)形状のステアリングサポートメンバの外形部分となる曲面にリンフォースを押し当てて、仮置きした状態でブラケットを介して溶接を行う。ここで、リンフォースとステアリングサポートメンバとは径の大きさが異なり、曲率が異なっている。
【0007】
このため、上記支持構造では、仮置き状態でステアリングサポートメンバとリンフォースとの位置ずれが生じ易く、位置合わせ手段が必要となる。つまり、特許文献1に記載の支持構造では、リンフォースとステアリングサポートメンバとの溶接を精度よく行うために、高度な生産設備が求められる。
【0008】
特許文献2に記載の支持構造では、ステアリングサポートメンバに貫通穴を設け、さらに、その部分で溶接を可能にするためのフランジ部を設ける必要がある。このため、この支持構造では、ステアリングサポートメンバへの加工工数が増えたり、製造コストが増加するという問題があった。
【0009】
また、従来技術として、捩れに対して有効な丸棒のリンフォースを使用しながら、丸棒のリンフォースとステアリングサポートメンバとの位置合わせを可能にするために、丸棒のリンフォースの端部に潰し加工を施して、溶接する場合がある。このような場合には、丸棒のリンフォースへの加工が必要な上に、潰し加工が施された部分は、丸棒の捩れに強いという特性の優位性を活かしきれていない。
【0010】
つまり、従来の技術では、ステアリングサポートメンバなどのパイプ形状の部材に、直線状に延びた捩れに強い丸棒のリンフォースを取付ける際に、位置合わせ、パイプ形状の部材あるいは丸棒のリンフォースへの加工などの手間がかかり、生産性が損なわれる場合だけでなく、丸棒のリンフォースの捩れに強いという特性を損なってしまう場合もある。よって、従来の技術では、生産性を高めながら、捩れに対して強い構造を確立することが困難であった。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑み、生産性を高めながら、捩れに対して強い支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかる支持構造の代表的な構成は、略水平方向に延びたパイプ形状の第1部材を備え第1部材を支持する支持構造において、下端が固定され下方から直線状に延び第1部材の端部に接触する丸棒状のリンフォースと、リンフォースを第1部材の端部に取り付けるブラケットとをさらに備え、ブラケットは、リンフォースのうち第1部材の端部に面しない側の少なくとも一部を囲みながら、リンフォースに接触する湾曲部と、湾曲部から第1部材の側面に沿って第1部材の長手方向に延び側面に溶接される一対の側部とを有することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、第1部材の端部とブラケットの湾曲部および一対の側部とで、丸棒のリンフォースが囲まれて固定された状態となる。このため、第1部材の端部にブラケットを介して丸棒のリンフォースを溶接する際に、第1部材またはリンフォースを加工して、溶接を成立させる平面部や凹部などを形成する必要がない。よって、第1部材とリンフォースとの取付けに際し、加工の手間を省いて生産性を高められる。特に、直線状に延びた丸棒のリンフォースに対して潰し加工などを施さずそのまま使用できるので、丸棒の特性、すなわち捩れに強いという特性を保ったままで、溶接が可能となる。したがって、生産性を高めながら、捩れに対して強い支持構造を確立できる。
【0014】
本発明にかかる支持構造の他の代表的な構成は、略水平方向に延びたパイプ形状の第1部材を備え第1部材を支持する支持構造において、下端が固定され下方から直線状に延び第1部材の端部に接触する丸棒状のリンフォースと、リンフォースを第1部材の端部に取り付けるブラケットと、第1部材の側面に第1部材とほぼ直交して接続される第2部材とをさらに備え、ブラケットは、リンフォースのうち第1部材の端部に面しない側の少なくとも一部を囲みながら、リンフォースに接触する湾曲部と、湾曲部から第1部材の側面に沿って第1部材の長手方向に延び側面に溶接される一方の側部と、湾曲部から第1部材の側面に沿って第1部材の長手方向に延びる他方の側部と、他方の側部から第2部材まで延びていて第2部材と溶接される延長部とを有することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、上述の支持構造の作用効果に加えて、第1部材、第2部材およびリンフォースのそれぞれの軸心方向がほぼ交差する箇所の近傍を、ブラケットの延長部で抑えられる。このため、これら3つの部材でそれぞれ捩れが発生しても、残り2つの部材で捩れを抑えられ、強固な補強が可能となる。
【0016】
リンフォースは、第1部材の軸線上に配置されているとよい。これにより、第1部材の重心である軸線上に配置されたリンフォースで、第1部材にかかる荷重を受ける。よって、第1部材に捩れ荷重を発生させずに、リンフォースで補強できる。
【0017】
リンフォースは、第1部材の径よりも小さい径を有するとよい。これにより、リンフォースに捩れが発生した場合でも、リンフォースよりも径が大きい第1部材の端部で支持するため、その捩れを抑えられる。
【0018】
ここで、溶接強度は、ブラケットの形状次第で変更される。すなわち、ブラケットの一対の側部はそれぞれ、第1部材の側面に、第1部材の長手方向に延びる上下2本の領域に沿って接し、側面と少なくとも2本の領域で溶接されているとよい。これにより、ブラケットの一対の側部と第1部材とで溶接面積を確保できる。よって、第1部材にかかる様々な方向からの荷重に耐え得る溶接強度を確保できる。
【0019】
また、他のブラケットの形状として、ブラケットの一方の側部は、第1部材の側面に、第1部材の長手方向に延びる上下2本の領域に沿って接し、側面と少なくとも2本の領域で溶接されているとよい。これにより、ブラケットの一方の側部と第1部材との溶接面積を確保でき、溶接強度を高められる。このように、生産性を高めた捩れに強い支持構造を確立した上で、さらにブラケットの形状を工夫することにより、溶接強度が確保され、構造強度を強化することができる。
【0020】
第1部材の端部には、リンフォースの外形に対応する円弧状の凹部が形成されているとよい。これにより、第1部材の端部を加工する手間がかかるものの、第1部材の端部にリンフォースを配置する仮置き状態で、第1部材の凹部にリンフォースが嵌り込む。このため、第1部材とリンフォースとの位置が安定し、溶接時での位置ずれを効果的に防止し、生産性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、生産性を高めながら、捩れに対して強い支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態における支持構造が適用される車体構造を示す図である。
【図2】図1の支持構造を含む車体構造の一部を上方から見た状態を示す図である。
【図3】図1の支持構造を含む車体構造の一部を拡大して示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における支持構造を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態における支持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における支持構造が適用される車体構造を示す図である。なお、図中、車体構造は車室側から見た状態で示されている。車体構造100は、車体前部に配置され、結合ブラケット102を用いて、後側ステアリングサポートメンバ104にリンフォース106を取付けることで、後側ステアリングサポートメンバ104を支持する支持構造108を含んでいる。
【0025】
車体構造100は、例えば、車体の一部を構成するダッシュパネル110と、ダッシュサイドパネル112a、112bと、フロアパネル114とを備える。ダッシュパネル110は、エンジンルームと車室内とを区画する部材である。ダッシュサイドパネル112a、112bは、ダッシュパネル110を相互間で支持する一対の部材であり、ダッシュパネル110の車幅方向の両端部に取付けられている。フロアパネル114は、ダッシュパネル110の一部とともに車体の床面を構成している。
【0026】
ダッシュパネル110の車室内側には、乗員に視認される意匠面を有する内装部品となる図示しないインストルメントパネルが配置されている。このダッシュパネル110とインストルメントパネルとで仕切られた空間では、運転席側に、上記支持構造108に含まれる結合ブラケット102と、後側ステアリングサポートメンバ104およびリンフォース106とが配置されている。なお、ここでの車体構造100では、左側にハンドルが位置する車両を例示している。このため、運転席側とは、車両の左右のうち左側となり、助手席側とは右側となる。また、支持構造108の周囲には、前側ステアリングサポートメンバ116、中間ブラケット118、120、ステアリングコラム取付用ブラケット122、ブレース124が配置されている。
【0027】
図2は、図1の支持構造108を含む車体構造100の一部を上方から見た状態を示す図である。前側ステアリングサポートメンバ116は、車幅方向に延びていて、両端116a、116bが車体側面のダッシュサイドパネル112a、112bに固定されている(図1参照)。
【0028】
後側ステアリングサポートメンバ104は、前側ステアリングサポートメンバ116の後方に前側ステアリングサポートメンバ116とほぼ平行に延びている。また、後側ステアリングサポートメンバ104は、図2に示す端部130、132が車体側面のダッシュサイドパネル112a、112bに到達せず、車体の運転席側に位置している。さらに、後側ステアリングサポートメンバ104は、その端部130、132近傍に結合された中間ブラケット118、120を介して、前側ステアリングサポートメンバ116に結合されている。
【0029】
ブレース124は、図1に示すように、後側ステアリングサポートメンバ104から前側ステアリングサポートメンバ116を跨いで、車体前面のダッシュパネル110まで直線状に延びている。なお、図1には、車体の助手席側に位置していて、前側ステアリングサポートメンバ116からダッシュパネル110に向かって延びる他のブレース126も示されている。
【0030】
以下、図3を参照して、支持構造108について説明する。図3は、図1の支持構造108を含む車体構造100の一部を拡大して示す図である。図3(a)は、支持構造108を斜め上方から見た状態を示す図である。図3(b)は、支持構造108を上方から見た状態を示す図である。
【0031】
上記車体構造100、すなわち車体前部に車両前後方向にほぼ平行に配置された長さの異なる前側ステアリングサポートメンバ116および後側ステアリングサポートメンバ104を配置した構造では、後側ステアリングサポートメンバ104に負荷される車両上下方向の荷重に対して、補強(支持)部材となる上記リンフォース106が必要となる。
【0032】
後側ステアリングサポートメンバ104は、図示を省略するステアリングシャフトなどの車載部材を支えるほぼ水平方向に延びたパイプ形状を有していて、その軸心方向の端部130が一部破線で示すように円形状となっている。端部130は、円形状の端面130aと、径に応じた曲率を有する側面130bとを含む。なお、後側ステアリングサポートメンバ104は、リンフォース106から見て、結合ブラケット102を用いて取付けられる相手部品となる。
【0033】
リンフォース106は、例えば、異なる部品間、すなわち後側ステアリングサポートメンバ104とフロアパネル114との間をつなぐリンフォースである(図1参照)。ここで、後側ステアリングサポートメンバ104とフロアパネル114とは、車体ボディが受ける路面振動、エンジン振動、その他走行時に受ける荷重の方向がそれぞれ異なる。このため、その間をつなぐリンフォース106には、捩れが発生し易い。そこで、リンフォース106は、捩れを防止しながら、補強部材としての強度を確保するために、直線状に延びた丸棒形状を有している。
【0034】
リンフォース106は、後側ステアリングサポートメンバ104の径よりも小さい径を有している。また、リンフォース106は、後側ステアリングサポートメンバ104の軸線A上(同心上)に配置されている(図3(b)参照)。さらに、リンフォース106は、下端がフロアパネル114に固定され、下方から直線状に延びていて後側ステアリングサポートメンバ104の端部130に接触する。
【0035】
結合ブラケット102は、後側ステアリングサポートメンバ104の端部130にリンフォース106を取付けるための帯状部材であり、図示のように屈曲している。結合ブラケット102は、例えば、湾曲部102aと、拡張部102b、102cと、一方の側部(側部102d)、他方の側部(側部102e)と、延長部102fとを備える。
【0036】
湾曲部102aは、円弧形状を有し、リンフォース106のうち、後側ステアリングサポートメンバ104の端部130に面しない側の少なくとも一部を囲みながら、リンフォース106と接触している。以下、端部130に「面する側」とは、リンフォース106のうち後側ステアリングサポートメンバ104に対面している側の半円分の領域をいう。一方、端部130に「面しない側」とは、「面する側」を除く残りの半円分の領域をいう。また、拡張部102b、102cは、湾曲部102aから延びていて側部102d、102eまでをつないでいる。
【0037】
側部102dは、湾曲部102aから拡張部102bを介して後側ステアリングサポートメンバ104の側面130bに沿って、後側ステアリングサポートメンバ104の長手方向に延びていて、この側面130bに溶接されている。
【0038】
ここで、側部102dは、後側ステアリングサポートメンバ104の端部130の側面130bと少なくとも領域102g、102hで溶接される(図3(a)参照)。また、これらの領域102g、102hの間には、曲面部102iが形成されていて、側面130bの曲率と曲面部102iの曲率とが対応すれば、双方を溶接してもよい。なお、領域102g、102h、曲面部102iと側面130bとの位置関係は、図4(b)を用いて後述する。
【0039】
側部102eは、湾曲部102aから拡張部102cを介して後側ステアリングサポートメンバ104の側面130bに沿って、後側ステアリングサポートメンバ104の長手方向に延びている。また、側部102eは、ここでは後側ステアリングサポートメンバ104の端部130の側面130bに溶接されていないが、拡張部102cの長さを調整し側面130bと接するようにして、双方を溶接してもよい。
【0040】
延長部102fは、側部102eから中間ブラケット118まで延びている。さらに、延長部102fは、中間ブラケット118の長手方向に沿って延びていて、中間ブラケット118と溶接されている。なお、中間ブラケット118の長手方向は、後側ステアリングサポートメンバ104の軸心方向とほぼ直交する方向となっている。
【0041】
このように、結合ブラケット102は、リンフォース106のうち、後側ステアリングサポートメンバ104の端部130に面する側で、側部102dと側面130bとが溶接され、また、延長部102eと中間ブラケット118とが溶接されている。また、結合ブラケット102は、その湾曲部102aにより、リンフォース106のうち、後側ステアリングサポートメンバ104に面しない側の少なくとも一部を囲んでいる。
【0042】
本実施形態の支持構造108では、パイプ形状の後側ステアリングサポートメンバ104の端部130に、フロアパネル114から直線状に延びた丸棒のリンフォース106を配置し、この状態で、後側ステアリングサポートメンバ104の端部130に面しない側を結合ブラケット102で囲みながら溶接している。つまり、支持構造108では、後側ステアリングサポートメンバ104の端部130および結合ブラケット102により、リンフォース106が囲まれた状態となり、この状態で後側ステアリングサポートメンバ104の端部130および中間部ラケット118と結合ブラケット102とが溶接されている。
【0043】
このため、従来のように、後側ステアリングサポートメンバ104にリンフォース106を取付ける際に、後側ステアリングサポートメンバ104またはリンフォース106を加工し、溶接を成立させる平面部や凹部などを形成する必要がない。よって、支持構造108では、後側ステアリングサポートメンバ104とリンフォース106との取付けに際して、加工の手間を省いて製造コストを抑え、生産性を高めることができる。特に、支持構造108では、直線状に延びた丸棒のリンフォース106に対して加工(例えば潰し加工)を施さずそのまま使用できるので、丸棒のリンフォース106の特性、すなわち捩れに強いという特性を保ったままで、溶接が可能となる。したがって、支持構造108では、生産性を高めながら、捩れに対して強い構造を確立できる。
【0044】
さらに、支持構造108では、結合ブラケット102の形状を工夫することにより、溶接強度が確保され、構造強度を強化できる。例えば、一般に、パイプ形状の相手部品と直線状の丸棒のリンフォースとは、接地面積が小さい状態で溶接されるために、溶接強度が不足してしまう。溶接強度が不足すると、捩れに強いリンフォースであっても、大きな荷重がかかると破損することがある。特に、本実施形態では、リンフォース106がつなぐフロアパネル114と後側ステアリングサポートメンバ104との距離が長い。このため、リンフォース106には、フロアパネル114との取付点を中心とした円荷重がかかり、さらに、パイプ形状の後側ステアリングサポートメンバ104の取付点には大きな荷重がかかることになる。
【0045】
これに対して、支持構造108では、結合ブラケット102と後側ステアリングサポートメンバ104とで溶接面積が確保され、また、結合ブラケット102と後側ステアリングサポートメンバ104とでリンフォース106の周囲が固定される。このため、支持構造108では、後側ステアリングサポートメンバ104にかかる様々な方向からの荷重に耐え得る溶接強度を確保できる。したがって、支持構造108では、生産性を高めた捩れに強い支持構造を確立した上で、溶接強度を確保しながら、構造強度を強化できる。
【0046】
すなわち、支持構造108では、結合ブラケット102の側部102dが後側ステアリングサポートメンバ104の側面130bに沿って延びていて、側面130bの少なくとも領域102g、102hで溶接されている。これにより、支持構造108では、結合ブラケット102と後側ステアリングサポートメンバ104の溶接面積を確保でき、溶接強度を高めることができる。
【0047】
また、支持構造108では、結合ブラケット102の延長部102fが中間ブラケット118と溶接されている。このため、後側ステアリングサポートメンバ104およびリンフォース106の軸心方向、中間ブラケット118の長手方向を含む、3方向がほぼ交差する箇所の近傍を、結合ブラケット102の延長部102fで抑えることになる。このため、支持構造108では、これら3つの部材にそれぞれ発生する捩れを、残り2つの部材で抑えることができ、荷重や捩れに対する強固な補強が可能となる。
【0048】
また、支持構造108では、パイプ形状の後側ステアリングサポートメンバ104の軸線A上にリンフォース106を配置している。仮に、リンフォース106を軸線A上ではなく、パイプ形状の側面130bに沿うように取付けた場合には、パイプ形状の重心とリンフォース106の取付箇所との間にパイプ形状の半径分ほどの距離が生じて、モーメントが発生してしまう。
【0049】
これに対して、支持構造108では、後側ステアリングサポートメンバ104にかかる荷重を、パイプ形状の重心となる軸線A上に配置されたリンフォース106で受ける。よって、支持構造108では、モーメントの発生を軸線A上で抑えて、後側ステアリングサポートメンバ104に捩れ荷重を発生させない効果的な補強が可能となる。
【0050】
また、支持構造108では、リンフォース106の径が後側ステアリングサポートメンバ104の径よりも小さい。このため、リンフォース106に捩れが発生した場合であっても、リンフォース106よりも径の大きい後側ステアリングサポートメンバ104の端部130により、その捩れが後側ステアリングサポートメンバ104に伝達されることを抑えられる。一般に、リンフォース106から他の部材に僅かな捩れが伝達された場合であっても、車両全体で見ると、その捩れに起因して支持強度を満たさない箇所が生じ、新たな補強部材が必要となるという事態があり得る。支持構造108では、リンフォース106の径を後側ステアリングサポートメンバ104の径よりも小さくすることで、このような事態を回避している。
【0051】
なお、支持構造108では、上記したように結合ブラケット102の形状を工夫することで、溶接強度が確保され、構造強度を強化できることから、結合ブラケット102の湾曲部102aとリンフォース106とを溶接しなくてもよい。この場合には、後側ステアリングサポートメンバ104やリンフォース106にかかる荷重を分散でき、後側ステアリングサポートメンバ104やリンフォース106が変形してしまうことを防止できる。また、溶接が不要な分、生産性を高められる。
【0052】
さらに、従来の技術では、パイプ形状の相手部品の端部ではなく外形の曲面に丸棒のリンフォースを配置した仮置き状態で溶接を行う場合があり、溶接時に位置ずれが生じる可能性があった。これに対して、支持構造108では、後側ステアリングサポートメンバ104の端部130に丸棒のリンフォース106を配置した仮置き状態で溶接を行う。このため、溶接時の位置ずれを抑えて、取付性や生産性を高めることができる。
【0053】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態における支持構造を示す図である。図4(a)は、図3(b)に対応する上面図である。図4(b)は、図3(a)のB−B断面図である。なお、以下に示す各実施形態では、上記支持構造108と同一部材には符号を省略して示し、説明を適宜省略する。
【0054】
支持構造108Aは、図4(a)に示すように、結合ブラケット102Aに上記延長部102fが存在しない点、拡張部102jから連続する側部102kが後側ステアリングサポートメンバ104の側面130bに溶接されている点で、上記第1の実施形態の支持構造108と異なる。
【0055】
すなわち、側部102d、102kは、湾曲部102aから拡張部102b、102jを介して後側ステアリングサポートメンバ104の側面130bに沿って後側ステアリングサポートメンバ104の長手方向に延びていて、この側面130bに溶接される一対の側部となる。
【0056】
また、側部102d、102kはそれぞれ、図4(b)に示すように、後側ステアリングサポートメンバ104の側面130bに、後側ステアリングサポートメンバ130bの長手方向に延びる上下2本の領域102g、102h、102l、102mに沿って接している。側部102d、102kは、側面130bと少なくとも2本の領域102g、102h、102l、102mで溶接されている。
【0057】
側部102dでは、領域102g、102hの間に形成された曲面部102iの曲率と側面130bの曲率とが対応すれば、双方を溶接してもよい。また、側部102kでは、領域102l、102mの間に曲面部102nが形成されている。側部102kでは、この曲面部102nの曲率と側面130bの曲率とが対応すれば、双方を溶接してもよい。
【0058】
本実施形態における支持構造108Aでは、後側ステアリングサポートメンバ104の端部130に結合ブラケット102Aを介して丸棒のリンフォース106を取付ける際に、後側ステアリングサポートメンバ104またはリンフォース106を加工する必要がなく、生産性を高めることができる。また、支持構造108Aでは、直線状に延びた丸棒のリンフォース106に対して加工を施さずそのまま使用できるので、丸棒のリンフォース106の捩れに強いという特性を保ったままで、溶接が可能となる。したがって、支持構造108Aでは、生産性を高めながら、捩れに対して強い構造を確立できる。
【0059】
また、支持構造108Aでは、結合ブラケット102Aが、リンフォース106のうち、後側ステアリングサポートメンバ104の端部130に面する側で、一対の側部102d、102kと側面130bとがそれぞれ溶接されていて、溶接強度を確保できる。さらに、支持構造108Aでは、結合ブラケット102Aが、上記延長部102fが存在せず、一対の側部102d、102kが形成されていることから、上記結合ブラケット102に比べて構造が簡素化されており、溶接の手間がかからず、生産性をより高めることができる。したがって、支持構造108Aでは、支持構造108と同様に、生産性を高めた捩れに強い支持構造を確立した上で、さらに、結合ブラケット102Aの形状を工夫することで、溶接強度を確保しながら、構造強度を強化できる。
【0060】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態における支持構造を示す図である。図5(a)および図5(b)は、それぞれ図3(a)、図3(b)に対応した斜視図および上面図である。支持構造108Bは、後側ステアリングサポートメンバ204の端部230の一部が、リンフォース106の外形に対応する円弧状を有している点、また、結合ブラケット202が後側ステアリングサポートメンバ204の端部230の端面230aに溶接されている点で、上記支持構造108と異なる。
【0061】
後側ステアリングサポートメンバ204の端部230は、図中、一部破線で示す円形状の端面230aと、曲率を有する側面230bと、円弧状の凹部230cとを含む。結合ブラケット202は、湾曲部202aと、拡張部202b、202cと、側部202d、202eと、延長部202fとを備えている。
【0062】
湾曲部202aは、リンフォース106のうち後側ステアリングサポートメンバ204の端部230に面しない側の少なくとも一部を囲んでいる。この湾曲部202aは、リンフォース106とは溶接されていない。
【0063】
拡張部202b、202cは、湾曲部202aから延びていて側部202d、202eまでをつないでいる。この拡張部202b、202cは、後側ステアリングサポートメンバ204の端部230の端面230aに溶接されている。
【0064】
側部202dは、図5(a)に示す少なくとも領域202g、202hで、後側ステアリングサポートメンバ204の端部230の側面230bに溶接されている。なお、領域202g、202h間に形成された曲面部202iは、側面230bと溶接されていないが、双方の曲率を対応させて溶接してもよい。
【0065】
側部202eは、湾曲部202aから拡張部202cを介して後側ステアリングサポートメンバ204の側面230bに沿って、後側ステアリングサポートメンバ204の長手方向に延びている。なお、側部202eは、ここでは後側ステアリングサポートメンバ204の側面230bに溶接されていないが、拡張部202cの長さを調整し側面230bと接するようにして、双方を溶接してもよい。また、延長部202fは、側部202eから中間ブラケット118まで延びていて、中間ブラケット118に溶接されている。
【0066】
本実施形態における支持構造108Bでは、後側ステアリングサポートメンバ204の端部230に凹部230cを形成することから、加工の手間がかかることになる。しかし、支持構造108Bでは、後側ステアリングサポートメンバ204の端部230にリンフォース106を配置する仮置き状態で、図示のようにリンフォース106が凹部230cに嵌り込む。
【0067】
このため、支持構造108Bでは、仮置き状態での後側ステアリングサポートメンバ204とリンフォース106との位置が安定し、溶接時での位置ずれを防止し、取付性を高めることができる。
【0068】
また、支持構造108Bでは、結合ブラケット202の拡張部202b、202cが後側ステアリングサポートメンバ204の端部230の端面230aに溶接されている。このため、支持構造108Bでは、溶接面積が拡大して、溶接強度を高められる。
【0069】
さらに、支持構造108Bでは、溶接強度が高いことから、結合ブラケット202の湾曲部202aとリンフォース106とを溶接しなくてもよい。このため、支持構造108Bでは、後側ステアリングサポートメンバ202やリンフォース106にかかる荷重を分散して変形を防止し、さらに、溶接が不要であるから、生産性も高めることができる。したがって、支持構造108Bでは、リンフォース106に対して加工などを施さずそのまま使用できるので、捩れに対して強い構造を確立し、その上で、結合ブラケット202の形状を工夫することで、溶接強度が確保され、構造強度を強化できる。
【0070】
なお、上記各実施形態における支持構造108、108A、108Bでは、結合ブラケット102、102A、202とリンフォース106とを、後側ステアリングサポートメンバ104、204の端部130、230に面しない側で溶接されていないとしたが、これに限られず、溶接してもよい。このようにすれば、溶接面積がより大きくなり、溶接強度をより高めることができる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、略水平方向に延びたパイプ形状の部材を支持する支持構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
100…車体構造、102、102A、202…結合ブラケット、102a、202a…湾曲部、102b、102c、102j、202b、202c…拡張部、102d、102e、102k、202d、202e…側部、102f、202f…延長部、102g、102h、102l、102m、202g、202h…領域、102i、102n、202i…曲面部、104、204…後側ステアリングサポートメンバ、106…リンフォース、108、108A、108B…支持構造、110…ダッシュパネル、112a、112b…ダッシュサイドパネル、114…フロアパネル、116…前側ステアリングサポートメンバ、118、120…中間ブラケット、122…ステアリングコラム取付用ブラケット、124、126…ブレース、130、132…端部、130a、230a…端面、130b、230b…側面、230c…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平方向に延びたパイプ形状の第1部材を備え該第1部材を支持する支持構造において、
下端が固定され下方から直線状に延び前記第1部材の端部に接触する丸棒状のリンフォースと、
前記リンフォースを前記第1部材の端部に取り付けるブラケットとをさらに備え、
前記ブラケットは、
前記リンフォースのうち前記第1部材の端部に面しない側の少なくとも一部を囲みながら、該リンフォースに接触する湾曲部と、
前記湾曲部から前記第1部材の側面に沿って該第1部材の長手方向に延び該側面に溶接される一対の側部とを有することを特徴とする支持構造。
【請求項2】
略水平方向に延びたパイプ形状の第1部材を備え該第1部材を支持する支持構造において、
下端が固定され下方から直線状に延び前記第1部材の端部に接触する丸棒状のリンフォースと、
前記リンフォースを前記第1部材の端部に取り付けるブラケットと、
前記第1部材の側面に該第1部材とほぼ直交して接続される第2部材とをさらに備え、
前記ブラケットは、
前記リンフォースのうち前記第1部材の端部に面しない側の少なくとも一部を囲みながら、該リンフォースに接触する湾曲部と、
前記湾曲部から前記第1部材の側面に沿って該第1部材の長手方向に延び該側面に溶接される一方の側部と、
前記湾曲部から前記第1部材の側面に沿って該第1部材の長手方向に延びる他方の側部と、
前記他方の側部から前記第2部材まで延びていて該第2部材と溶接される延長部とを有することを特徴とする支持構造。
【請求項3】
前記リンフォースは、前記第1部材の軸線上に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の支持構造。
【請求項4】
前記リンフォースは、前記第1部材の径よりも小さい径を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の支持構造。
【請求項5】
前記ブラケットの一対の側部はそれぞれ、前記第1部材の側面に、該第1部材の長手方向に延びる上下2本の領域に沿って接し、該側面と少なくとも該2本の領域で溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の支持構造。
【請求項6】
前記ブラケットの一方の側部は、前記第1部材の側面に、該第1部材の長手方向に延びる上下2本の領域に沿って接し、該側面と少なくとも該2本の領域で溶接されていることを特徴とする請求項2に記載の支持構造。
【請求項7】
前記第1部材の端部には、前記リンフォースの外形に対応する円弧状の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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