説明

改善された中間層接着を有するポリウレタンコーティング

芳香族および脂肪族イソシアネートの混合物、ならびにアクリル性ポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含むポリウレタンコーティング組成物が開示される。経年変化した基材を処理するための方法もまた、開示される。本発明は、一般に、芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートの混合物の硬化剤、ならびにアクリル性ポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含む二成分ポリウレタンコーティング組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートの混合物、ならびにアクリル性ポリオール樹脂およびポリエステルポリオール樹脂の混合物を含むポリウレタンコーティング組成物、そして上記組成物を使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
航空輸送手段および航空宇宙輸送手段は、しばしば、エポキシ樹脂もしくはポリウレタンおよび硬化剤に基づく下塗りで最初にコーティングされ、水および有機溶媒(例えば、航空燃料および/もしくは作動液)に対する抵抗性を有する硬化性二成分ポリウレタントップコートで上塗りされる(overcoated)。下塗りは、しばしば、増大した耐腐食性のために金属表面に適用されるか、もしくはその後に適用される層の接着を増強するためにポリマー表面に適用される一方で、トップコートは、しばしば、耐溶媒性、耐候性、耐摩耗性、硬度、および/もしくは審美性のような特性を達成するために、選択される。
【0003】
使用の間に、上記トップコート表面は、経年変化し得る。用語「経年変化した(aged)表面」とは、本明細書において使用される場合、物理的および/もしくは化学的特性が、新しい表面のものと比較して劣化している表面をいう。表面の経年変化は、例えば、機械的摩耗、衝撃、水、溶媒、温度、照射、水分、風雨(weathering)および/もしくは他の機構(これは、物理的および/もしくは化学的特性、ならびに/または表面の審美的品質の劣化を引き起こす)の影響から生じ得る。「経年変化した表面」とはまた、本明細書において使用される場合、それらの最初に適用された状態から劣化した表面を含み、ここで上記劣化は、経年変化(これは、代表的には、1種以上のストレス条件への長期間の曝露から生じる)と比較して、ストレスへの比較的短期間の曝露から生じる。例えば、表面は、機械的ストレス(例えば、摩耗、衝撃など)、熱的ストレス(例えば、極端な温度への曝露)、溶媒および/もしくは化学的ストレスへの曝露(例えば、照射への曝露など)によって損傷を受け得る。実際問題として、経年変化した表面を再仕上げして、上記表面の物理的、化学的、および/もしくは審美的品質を修復することは有用であり得る。
【0004】
新たなコーティングまたは上記「再仕上げ」コーティングもしくは「再仕上げされた」コーティングと、上記経年変化した表面との間の接着は、上記コーティングの性能全体に寄与し得る。一部が最初にコーティングされる場合、上記コーティングの品質は、上記表面にわたって、同じもしくは類似の物理的および化学的特性を示し得る。しかし、例えば、使用され、経年変化し、そして/または損傷を受けた表面に関しては、および特に、航空機のような大きな表面については、コーティングおよび/もしくは再仕上げされるべき表面は、均質でない可能性がある。
【0005】
航空機のもののような大きな表面が再仕上げされるべき場合、上記トップコートは、塗り直しをする前に、剥離剤(stripper)を使用して除去され得る。新たな金属表面を前処理し、かつ新たな下塗りコーティングを再適用する必要性を回避するために、塗り直しをする前に上記トップコート層を除去するのみであることは有用であり得る。膨潤性の、剥離可能なトップコートおよびトップコートを除去すると同時に、硬化した下塗りコーティングを金属表面上に残したままにするためのプロセスは、米国特許第6,217,945号(本明細書に参考として援用される)において開示されている。上記剥離プロセスは、溶媒を使用し得、そして化学的廃棄物を生成し得るが、このことは、望ましくない場合がある。
【0006】
特定の適用において、ポリウレタントップコートを、経年変化したポリウレタン表面へと、上記経年変化したコーティングを最初に除去することなく適用することは、有用であり得る。しかし、経年変化したコーティングへポリウレタンコーティングを接着することは、不十分であり得る。上記経年変化したコーティングの表面現象(例えば、チョーキング、表面微細孔の存在、および/もしくは閉じこめられた水)は、経年変化したコーティングへの新たなポリウレタントップコートの不十分な接着に寄与し得る。
【0007】
経年変化したポリウレタン表面への新たなポリウレタントップコートの接着を促進および/もしくは増強するために、上記経年変化した表面は、上記新たなポリウレタントップコートを適用する前に、機械的に摩擦され得る。経年変化した表面の機械的摩擦は、例えば、研磨することによって、達成され得る。大きな表面(例えば、航空機のもの)の研磨は、コストがかかり、時間浪費性であり、そして/または新たに適用されるトップコートの均質な接着を容易にするのに必要な程度に制御することが困難であり得る。さらに、機械的摩擦のプロセスは、潜在的に有害なおよび/もしくは毒性の化学物質を含む微粒子を放出し得る。
【0008】
従って、溶媒剥離もしくは機械的研磨に代わる方法は、望ましく、特に、航空機および航空宇宙の適用のために、望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートを含む、イソシアネート硬化剤(「イソシアネート成分」)、ならびにアクリル性ポリオールおよびポリエステルポリオールを含む、ポリオール樹脂(「ポリオール成分」)を含む、ポリウレタンコーティング組成物に関する。
【0010】
本発明はさらに、経年変化した表面を処理するための方法に関し、上記方法は、上記のポリウレタンコーティング組成物を、上記表面に適用する工程、上記組成物を乾燥させる工程、第2のコーティング組成物を上記ポリウレタンコーティングに適用する工程、および上記第2のコーティングを硬化させる工程を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般に、芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートの混合物の硬化剤、ならびにアクリル性ポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物を含む二成分ポリウレタンコーティング組成物に関する。新たなコーティング層(特に、ポリウレタントップコート層)で再仕上げする前に、本発明のコーティング組成物が、その下にある(underlying)経年変化したコーティング層の機械的研磨も溶媒剥離もすることなく、改善された中間層接着を提供し得ることが発見された。この様式において、本発明のコーティングは、「結合コート(tie coat)」として機能する。
【0012】
結合コートは、一般に、新たなコーティングを適用する前に、経年変化した表面(例えば、経年変化したコーティングもしくはトップコート層)に適用される。従って、本明細書において使用される場合、「結合コート」とは、下にある表面(例えば、経年変化したコーティング)と、上に重なっている(overlying)コーティング(例えば、トップコート)との間の接着を促進もしくは増強することが意図された中間コーティングをいう。結合コートの使用は、機械的研磨および/もしくは溶媒剥離の必要性を回避し得る。
【0013】
本発明の組成物において、上記イソシアネート成分(これは、上記硬化剤として機能する)は、芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートの混合物を含む。特定の実施形態において、上記イソシアネート成分は、上記イソシアネート成分において使用されるイソシアネートの総重量に基づいて、重量%で、1〜50(例えば、1〜30)重量%の芳香族イソシアネートを含む。上記芳香族イソシアネートと、経年変化したポリウレタントップコート上の尿素もしくはウレタン基との間の反応は、強力でかつ耐久性のある中間面接着に寄与すると考えられているが、本発明者らは、このことに拘束されることは望まない。特定の実施形態において、上記イソシアネート成分はさらに、上記イソシアネート成分において使用されるイソシアネートの総重量に基づいて、重量%で、70〜99重量%の脂肪族イソシアネートを含み得る。脂肪族イソシアネートは、全体的なコーティング特性(例えば、適用時間、粘性、耐候性、耐UV性および/もしくは可撓性)に寄与し得るが、本発明者らは、これに拘束されることは望まない。任意の芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートが、使用され得る。特に適切な芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートとしては、2個以上のイソシアネート基を有するものが挙げられる。例えば、適切な芳香族イソシアネートとしては、トルエン2,4−ジイソシアネート(TDI)、トルエン2,6−ジイソシアネート(TDI)、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、2,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ポリマー性メチレンジフェニルジイソシアネート(PMDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PDI)、m−フェニレンジイソシアネート(PDI)、ナフタレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、ナフタレン2,4−ジイソシアネート(NDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート(XDI)などが挙げられるが、これらに限定されない;適切な脂肪族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられるが、これらに限定されない。これらイソシアネートは、任意の形態(ダイマー、トリマー、イソシアヌレート、付加物、ポリマー性イソシアネートおよびプレポリマーイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない)で存在し得、そしてBayer Corporation、BASF、ICI、Dow、Huntsman、Degussaなどから市販されている。
【0014】
本発明のコーティング組成物のポリオール成分は、アクリル性ポリオールおよびポリエステルポリオールを含む、ポリオール樹脂の混合物を含む。特定の実施形態において、上記アクリル性ポリオールは、硬質アクリル性ポリオールおよび軟質アクリル性ポリオールを含む。「硬質アクリル性ポリオール」および類似の用語は、20℃より高いガラス転移温度(「T」)を有するアクリル性ポリオールを意味する;「軟質アクリル性ポリオール」および類似の用語は、20℃より低いTを有するアクリル性ポリオールを意味する。特定の実施形態において、上記ポリオール成分は、上記ポリオール成分において使用されるポリオールの総固体重量に基づいて、重量%で、(a)40〜80重量%の硬質アクリル性ポリオール、(b)10〜40重量%の軟質アクリル性ポリオール、ならびに(c)5〜30重量%のポリエステルポリオールを含む。
【0015】
上記硬質アクリル性ポリオールは、上記イソシアネート硬化剤で硬化される場合に、上記コーティングに、頑強性および/もしくは強度を与え得る。上記硬質ポリオールは、1種以上のヒドロキシル含有モノマー(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど)と、代表的には、アクリル性コーティング樹脂の合成において使用される他のモノマー(例えば、C1−4一価アルコールの(メタ)アクリルエステル、脂環式一価アルコールの(メタ)アクリルエステル、芳香族一価アルコールの(メタ)アクリルエステル、ビニル芳香族、ニトリルモノマー、シラン官能性モノマー、グリシジル官能性モノマー、フッ素含有化合物など)との共重合化によって、得られ得る。適切な硬質アクリル性ポリオールとしては、MACRYNAL SM510N、515、565/70BAC、VSM2872/70BAC(Cytec Corporationから市販されている)、JONCRYAL 550、551、552、558、580、581、587、910(BASFから市販されている)、およびXCG−7204(PPG Industries市販されている)が挙げられる。使用される場合、上記硬質アクリル性ポリオールは、上記ポリオール成分において使用されるポリオールの総固体重量に基づいて、40〜80重量%(例えば、50〜70重量%)で存在し得る。
【0016】
特定の実施形態において、上記ポリオール樹脂混合物は、軟質アクリル性ポリオール(これは、上記イソシアネート硬化剤で硬化される場合に、上記コーティングに可撓性を与え得る)をさらに含み得る。軟質アクリル性ポリオールは、ヒドロキシル含有モノマーと、上記で議論されるようなアクリル性コーティング樹脂の合成において代表的には使用される他のモノマーと、C4−18一価アルコールの(メタ)アクリレートエステルとを共重合化することによって得られ得る。適切な軟質アクリル性ポリオールとしては、MACRYNAL SM513、SM540/60BAC、SM600/60XBAC(Cytec Corporationから市販される)およびJONCRYAL 500、507、508、920、922、942(BASFから市販される)が挙げられる。使用される場合、上記軟質アクリル性ポリオール樹脂は、上記ポリオール成分において使用されるポリオールの総固体重量に基づいて、10〜40重量%(例えば、20〜30重量%)で存在し得る。
【0017】
上記ポリオール成分は、ポリエステルポリオールをさらに含む。上記ポリエステルポリオールは、他のコーティング層への上記コーティングの接着に寄与し得る。適切な接着促進剤ポリエステル樹脂としては、ADHESION RESIN LTW(Degussa Corporationから市販されている)、DESMOPHEN 1652および1700(Bayerなどから市販されている)が挙げられる。上記ポリエステルポリオールは、上記ポリオール成分において使用されるポリオールの総固体重量に基づいて、5〜30重量%(例えば、10〜20重量%)で存在し得る。
【0018】
上記芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネート硬化剤混合物、ならびに上記アクリル性ポリオールおよびポリエステルポリオール樹脂混合物に加えて、上記結合コートポリウレタンコーティング組成物は、溶媒、触媒、顔料、添加剤など(これらは、上記2成分のうちのいずれかもしくは両方に調合される)をさらに含み得る。
【0019】
有機溶媒の選択は、接着改善および最終のコーティング性能に寄与し得る。一般に、上記溶媒は、上記経年変化したコーティングの表面を濡らし、上記コーティングの表面張力を低下させ、上記コーティングの結合剤樹脂を溶解し、コーティング層の間の官能基の組み込みを容易にし、フィルム形成を制御し、硬化反応のための環境を提供し、そして/または適用時間および/もしくは可使時間を調節するように選択され得る。さらに、上記溶媒は、上記コーティングの他の成分(例えば、上記ポリオール樹脂、イソシアネート、顔料、触媒および添加剤)と混和性および/もしくは適合性であるように選択され得る。任意の有機溶媒が使用され得、特に、上記トップコート層の性能を妨害しないものが使用され得る。適切な有機溶媒としては、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど);芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど);ケトン(例えば、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルブチルケトンなど);およびエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸2−エチルヘキシルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。使用される場合、上記溶媒は、上記コーティング組成物の総重量に基づいて、20〜60重量%(例えば、30〜50重量%)で存在し得る。
【0020】
特定の実施形態において、本発明のコーティング組成物は、望ましい硬化速度を得るために、三級アミン触媒、金属化合物触媒もしくは触媒の組み合わせをさらに含み得る。上記三級アミンおよび金属触媒の両方が、周囲温度において、芳香族イソシアネートの反応性を顕著に増大し得る。金属化合物触媒は、周囲温度において、脂肪族イソシアネートの反応性を増大させるために特に適している。上記反応速度に加えて、コーティング性能(例えば、中間層接着、適用時間、可使時間、および/もしくはドライ−トゥ−テープ時間(dry−to−tape))は、触媒のタイプおよび量によって影響を受け得る。適切な三級アミン触媒としては、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。適切な金属化合物触媒としては、鉛、亜鉛、コバルト、チタネート、鉄、銅およびスズに基づく化合物(例えば、鉛2−エチルヘキソエート、亜鉛2−エチルヘキソエート、コバルトナフテネート、テトライソプロピルチタネート、鉄ナフテネート、銅ナフテネート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。これら触媒は、単独で、もしくは組み合わせて、使用され得る。使用される場合、触媒の総量は、上記コーティング組成物の総固体樹脂量に基づいて、0.001〜0.5重量%(例えば、0.005〜0.25重量%)であり得る。
【0021】
適切な顔料および充填剤がまた、上記ポリウレタンコーティング調合物において使用され得、これらとしては、カーボンブラック、二酸化チタン、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化鉄(III)、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウム、着色顔料などが挙げられる。使用される場合、上記顔料および/もしくは充填剤は、上記コーティング組成物の総固体重量に基づいて、20〜60重量%(例えば、30〜50重量%)で存在し得る。
【0022】
上記のように、本発明の組成物は、2成分組成物、または「2K」組成物である。上記ポリウレタンコーティングのうちの2つの成分は、適用する直前まで別個に維持される。適用後、上記イソシアネート成分およびポリオール成分は反応して、室温において硬化されたコーティングを形成する。本発明のコーティング組成物における芳香族イソシアネートは、経年変化したポリウレタントップコートの表面上の尿素および/もしくはウレタン基と反応して、上記経年変化した表面との強力でかつ耐久性の化学的結合を生成し得る。第2のコーティング(例えば、ポリオールおよび/もしくはイソシアネートを含むポリウレタントップコート)が、本発明のコーティングに適用される場合、その第2のコーティングの官能基は、上記結合コートの官能基と反応して、上記コーティング層の間の化学的結合およびポリマー鎖のからみ合いを形成し得る。その結果は、良好な接着を伴う複数層コーティング複合材である。特定の実施形態において、本明細書に記載されるポリウレタンコーティング組成物は、経年変化した表面(例えば、経年変化したポリウレタントップコート)に、上記経年変化した表面を最初に機械的に研磨も、溶媒剥離もせずに、適用され得る。上記コーティングを適用する前に、再仕上げされるべき表面は、微粒子および表面フィルムを除去するために処理され得る。上記処理の後、本明細書で開示されるコーティング組成物は、任意の適切な乾燥フィルム厚に適用され得る。特定の実施形態において、上記コーティングの乾燥フィルム厚は、0.2ミル〜2ミル(例えば、0.2ミル〜1ミル)の範囲に及び得る。
【0023】
特定の実施形態において、本発明に従うポリウレタン組成物は、下にある表面とその後に適用されるコーティングとの間に増強された接着を提供するために、結合コートとして使用され得る。上記表面は、経年変化した表面であり得、既存のコーティング(例えば、既存のポリウレタンコーティング)を有し得る。従って、本発明はさらに、経年変化した表面を処理するための方法に関し、上記方法は、本発明のコーティング組成物を、上記経年変化した表面の少なくとも一部分に適用する工程、本発明のコーティングでコーティングされた、上記経年変化した表面の少なくとも一部分に新たなコーティング(ときおり、本明細書では、第2のコーティングといわれる)を適用する工程、および上記コーティングを硬化する工程、による。適切な硬化条件は、使用されるコーティングに基づいて、当業者に公知である。本発明の結合コートは、その後に適用されるコーティングを適用する前に、乾燥させられ得る。結合コートおよび/もしくはコーティング層の任意の数が適用され得る。特定の実施形態において、上記経年変化した表面は、経年変化したポリウレタン表面を含み、特定の実施形態において、上記第2のコーティングは、ポリウレタンコーティングを含み、そして特定の実施形態において、上記経年変化した表面および上記第2のコーティングの両方が、ポリウレタンを含む。
【0024】
本発明のポリウレタンコーティング組成物は、はけ塗り、噴霧、浸漬、ローラー塗り(rolling)、流し塗り(flowing)などによって、表面に適用され得る。一旦本発明の組成物が表面に適用されると、乾燥してもしくは加熱して、または乾燥も加熱もなしに、フィルム形成が達成され得る。上記コーティングが硬化するのに要する時間は、適用される溶媒、上記コーティングの厚み、上記溶媒の蒸気圧、温度および湿度、ならびに/または上記表面における気流に、少なくとも一部依存し得る。特定の実施形態において、上記結合コートの硬化時間は、20分〜24時間の範囲に及び得る。
【0025】
第2のコートは、当該分野で公知の任意の適切なコーティング法を使用して、本発明のコーティングに適用され得る。1つより多いトップコートが、任意の適切な乾燥フィルム厚へと適用され得る。例えば、特定の実施形態において、トップコートの上記乾燥フィルム厚は、1ミル〜6ミル(例えば、2ミル〜4ミル)の範囲に及び得る。上記トップコートは、当業者に公知の推奨される手順に従って硬化され得る。
【0026】
上記ポリウレタンコーティング組成物を上記経年変化した表面に適用した後、上記結合コートおよび第2のコーティング(もしくは任意のさらなるコーティング)の両方が、周囲温度で少なくとも1週間にわたる完全硬化、もしくは60℃において24時間にわたる完全硬化の後に、優れた接着特性を有し得る。
【0027】
接着は、任意の適切な方法(例えば、BSS 7225に従う乾燥/湿潤テープ接着試験(Dry/Wet Tape Adhesion Test)、または以下に記載される旋回アーム試験(Whirling Arm Test))によって、決定され得る。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、本発明の例示であって、実施例に限定することを意図しない。
【0029】
(旋回アーム試験)
中間層およびトップコートの接着を、旋回アーム試験、方法1を使用して評価した。寸法3インチ×6インチ×0.063インチを有する被覆アルミニウム(clad aluminum)2024−T3翼を、MIL−C−5541、クラス1Aに従って、クロム酸塩変換(chromate conversion)コーティングで処理した。下塗りを適用し、0.5〜1.0モルの乾燥フィルム厚で、噴霧ブース中で2時間乾燥させた。第1のトップコートを適用し、2.0〜4.0ミルの乾燥フィルム厚で、特定の硬化条件(例えば、90°F/34% 相対湿度(RH)もしくは72時間にわたって75°F/17% RH)において乾燥させた。上記翼をオーブンから取り出し、上記輻射線と平坦表面との間の正接点における前縁突出部(nose)を、覆った(masked off)。上記結合コートを、0.2〜1.0ミルの乾燥フィルム厚で適用し、20分〜2時間にわたって乾燥させた。新たなポリウレタントップコートを、2.0〜4.0ミルの乾燥フィルム厚で適用し、いずれの接着試験をも行う前に、周囲温度で少なくとも1週間もしくは60℃において24時間乾燥させた。
【0030】
上記コーティングを全て適用および乾燥させた後に、上記前縁突出部上に適用されたマスクテープを外し、上記試験翼を、試験する直前に、25℃の水中に、16〜24時間浸漬した。上記水から取り出した後1時間以内に、上記試験翼を、旋回アーム取り付け器に固定した。次いで、上記試験片を、30分間にわたって3〜4インチ/時間 水噴霧(1〜4mm 液滴サイズ)で、385マイル/時間(試験片中点において)に曝した。任意のコーティングが、上記試験パネルの前縁から0.25インチより大きく剥がれた場合に、破損が示された。
【0031】
本発明に従うポリウレタンコーティング組成物を、以下のように、基本成分として、硬質アクリル性ポリオール樹脂、軟質アクリル性ポリオール樹脂およびポリエステルポリオール接着促進剤樹脂、顔料、添加剤ならびに溶媒を使用して、そして芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートのブレンドを硬化剤として使用して、調製した。上記ポリウレタンコーティング組成物を、経年変化したコーティング基材に適用し、1〜24時間にわたって周囲硬化(ambient cure)によって乾燥させた。新たなポリウレタントップコートを、本発明の上記乾燥コーティング組成物に適用した。上記再仕上げされた表面は、旋回アーム試験に合格する。
【0032】
上記基本成分および活性剤成分についての組成を、以下に列挙する。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

本発明のポリウレタンコーティングの本発明の基本成分および活性剤成分は、1:1容積比もしくは58%:42%重量比で混合し、経年変化したポリウレタントップコート上に、0.2〜1.0ミルの乾燥フィルム厚で噴霧し;次いで、新たなポリウレタントップコートを、本発明のコーティングの上に噴霧した。
【0035】
上記旋回アーム試験を、上記のように実施した。上記のように調製した本発明の結合コートを、0.2〜1.0ミルの乾燥フィルム厚で、適用した。次いで、高固体ポリウレタン航空宇宙産業用トップコートを適用し、いずれの接着試験の前にも、2.0〜4.0ミルの乾燥フィルム厚に対して、周囲温度で少なくとも1週間、もしくは60℃で24時間、乾燥させた。
【0036】
【表3】

上記旋回アーム試験の結果は、上記経年変化したポリウレタントップコートを研磨プロセスで処理した場合に、および上記経年変化したポリウレタントップコートを本発明の結合コートコーティング組成物で処理した場合に、優れた接着が達成されたのに対して、上記経年変化したトップコートを研磨もしくは本発明の結合コートのいずれかで処理しなかった場合に、上記接着試験は不合格であったことを示す。上記結果は、市販の航空宇宙産業用ポリウレタントップコートのいくつかの異なるタイプでを確認され、証明された。従って、本発明は、機械的研磨も溶媒剥離もなしに、経年変化した表面上への新たなトップコートの一貫したかつ信頼性のある中間層接着を提供し得るポリウレタンコーティング組成物を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンコーティング組成物であって、
a)脂肪族イソシアネートおよび芳香族イソシアネートを含む、イソシアネート成分、ならびに
b)アクリル性ポリオールおよびポリエステルポリオールを含む、ポリオール成分、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記芳香族イソシアネートは、ポリマー性メチレンジフェニルジイソシアネートを含み、前記脂肪族イソシアネートは、ポリマー性ヘキサメチレンジイソシアネートを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記芳香族イソシアネートは、前記イソシアネート硬化剤の総固体重量のうちの1〜30重量%を構成する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記脂肪族イソシアネートは、前記イソシアネート硬化剤の総固体重量のうちの70〜99重量%を構成する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記アクリル性ポリオールは、硬質アクリル性ポリオールおよび軟質アクリル性ポリオールの混合物を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記硬質アクリル性ポリオールは、前記ポリオール成分において使用されるポリオールの総固体重量のうちの40〜80重量%を構成する、請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記軟質アクリル性ポリオールは、前記ポリオール成分において使用されるポリオールの総固体重量のうちの10〜40重量%を構成する、請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルポリオールは、前記ポリオール成分において使用されるポリオールの総固体重量のうちの10〜20重量%を構成する、請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記組成物は、アミンおよび/もしくは金属化合物触媒をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記触媒は、前記コーティング組成物の総固体重量のうちの0.005〜0.25重量%を構成する、請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記組成物は、溶媒をさらに含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記溶媒は、前記コーティング組成物の総重量のうちの30〜60重量%を構成する、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
経年変化した表面を処理するための方法であって、該方法は、請求項1に記載のポリウレタンコーティング組成物を、該経年変化した表面の少なくとも一部分に適用する工程;第2のコーティング層を、該ポリウレタンコーティングの少なくとも一部分に適用する工程;および該第2のコーティングを硬化させる工程、を包含する、方法。
【請求項14】
前記経年変化した表面は、経年変化したポリウレタンコーティングを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記経年変化した表面は、前記ポリウレタンコーティング組成物を適用する前に、機械的に研磨されてもいないし、溶媒で剥がされてもいない、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリウレタンコーティング組成物の乾燥フィルム厚は、0.05ミル〜1ミルである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記再仕上げした表面は、BMS 10−11仕様に従う旋回アーム試験に合格する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリウレタンコーティング組成物は、前記第2のコーティング層を適用する前に乾燥させられる、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2010−539254(P2010−539254A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524098(P2010−524098)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/074540
【国際公開番号】WO2009/035856
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(502328466)ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド (29)
【Fターム(参考)】