説明

改善された性能を有する医療用具

本発明のさまざまな態様によれば、1つ以上の重合体領域を含む、移植可能な医療用具および挿入可能な医療用具、が提供される。一態様では、重合体領域は、(b)スルホン化高Tg重合体と混合された、(a)ポリ芳香族ブロックおよびポリアルケンブロックを含むブロック共重合体を含む。本発明の別の態様では、重合体領域は、(a)スルホン化重合体ブロック、および(b)フッ素化重合体ブロック、を含むブロック共重合体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、全体として医療用具、より詳しくは、移植可能な医療用具または挿入可能な医療用具に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
患者の体内への医療用具の移植または挿入は、現代医療の実践において普通のことである。例えば、ステントは、バルーン傷害由来の内膜過形成の影響を弱めるので、過去10年間に関節硬化症の第一の治療法として浮上した。残念ながら、ステント内再狭窄は血管壁への傷害から起こり得る疾病である。薬物溶出ステントは、ステント内再狭窄の影響を弱めるために薬物を処方された速度で所定の期間放出する重合体被覆物をステントの上に有する。ステント上の被覆物は、その内径に沿って送達システム(例えばバルーン)と接触し、その外径に沿って血管壁と接触している。薬物の放出を制御し、血管壁に対して最適な生体適合性を有し、バルーンの表面と機械的に適合するように重合体被覆物の特性を最適化すると有利である。薬物溶出冠状動脈ステントの例は、Boston Scientific Corp.(TAXUS)、Johnson & Johnson(CYPHER)、その他からの市販のステントを含む。S.V.Ranade et.al.,Acta Biomater.2005 Jan;1(1):137−44(非特許文献1)およびR.Virmani et.al.,Circulation 2004 Feb 17,109(6)701−5(非特許文献2)を参照すること。
【0003】
例えば、ポリ(n−ブチルメタクリレート)などの単独重合体、ならびにポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)およびポリ(イソブチレン−co−スチレン)などの共重合体、例えばPinchukらの米国特許第6,545,097号明細書(特許文献1)に記載されている例えばポリ(スチレン−b−イソブチレン−b−スチレン)トリブロック共重合体(SIBS)を含むさまざまな種類の重合体材料が薬物放出用貯蔵体として用いられてきた。SIBSトリブロック共重合体は、柔らかなエラストマー性の低ガラス転移点(Tg)内部ブロックおよび硬い高Tg末端ブロックを有する。多くのブロック共重合体の場合と同じく、SIBSは相分離する傾向があり、エラストマーブロックは凝集してエラストマー相のドメイン(分域)を形成し、硬いブロックは凝集して硬い相のドメインを形成する。各エラストマーブロックはそれぞれの末端に硬いブロックを有し、同じトリブロック共重合体内の異なる硬いブロックは2つの異なる硬い相のドメインを占めることができるので、硬い相のドメインはエラストマーブロックによって物理的に互いに架橋されていると仮定されてきた。さらに、架橋は性質が共有結合性でないので、例えばブロック共重合体を溶解させるかまたは融解させることによって反転させることができる。従って、SIBS共重合体は熱可塑性エラストマー、言い換えると、重合体を融解させることによって(またはSIBSの場合には重合体を適当な溶媒の中に溶解させることによって)反転させることができる物理的な架橋を形成するエラストマー(すなわち可逆的に変形可能な)重合体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,545,097号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.V.Ranade et.al.,Acta Biomater.2005 Jan;1(1):137−44
【非特許文献2】R.Virmani et.al.,Circulation 2004 Feb 17,109(6)701−5
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明のさまざまな態様によって、1つ以上のブロック共重合体含有重合体領域を含む、移植可能な医療用具および挿入可能な医療用具が提供される。
【0007】
第1の態様では、重合体領域は、(b)スルホン化高Tg重合体と混合された(a)ポリ芳香族ブロックおよびポリアルケンブロックを含むブロック共重合体を含む。
【0008】
第2の態様では、重合体領域は、(a)スルホン化重合体ブロックおよび(b)フッ素化重合体ブロックを含むブロック共重合体を含む。
【0009】
本発明の利点は、所定の重合体領域について、とりわけ以下、すなわち生体適合性、表面粘着性、弾性、水拡散性、治療薬剤拡散性(治療薬剤が存在する場合)、および疎水性/親水性バランス(例えば濡れ性ならびに水拡散性および治療薬剤が存在する場合には治療薬剤拡散性に影響を及ぼす)の1つ以上を含むさまざまな物理的特性および化学的特性が調整され得ることである。
【0010】
本発明のこれらの態様および他の態様、実施態様および利点は、以下の詳細な説明および請求項を見れば当業者に直ちに明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スルホン化形および非スルホン化形の両方における30モル%SIBSの表面粘着性を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
以下の本発明の多数の態様および実施態様の詳細な説明を参照することによって、本発明のより完全な理解が得られる。以下の本発明の詳細な説明は、本発明を例示することを意図するが、限定する意図はない。
【0013】
本発明のさまざまな態様によれば、1つ以上のブロック共重合体含有重合体領域を含む移植可能な医療用具および挿入可能な医療用具(例えば医療用具全体、医療用具の1つ以上の部分等)が提供される。
【0014】
第1の態様では、重合体領域は、(a)スルホン化高Tg重合体と混合された、(a)ポリ芳香族ブロックおよびポリアルケンブロックを含むブロック共重合体を含む。
【0015】
SIBSは、多数の他の例の中のこの種類のブロック共重合体の一例である。上記のように、SIBS共重合体は、薬物放出冠状動脈ステント被覆物中で有用である。薬物送達の貯蔵体として働くその能力に加え、SIBSは優れた生体適合性、弾性、強さおよび加工性を有する。SIBS被覆物がステント上に配置される場合、通常、ステントの内径上の被覆物は送達システム(例えばバルーン)、続いて血流と接触し、一方、外径上の被覆物は体内管腔壁(例えば血管壁)に対向して配置される。これに関して、スルホン化共重合体(例えばスルホン化PEO)の表面被覆物が血小板および血管平滑筋細胞接着の減少によって測定されるインビボの抗血栓効果を有することが示された。例えばH.J.Lee et.al.,J.Biomater.Sci.Polymer Edn.,Vol.13,No.8,pp.939−952 (2002)を参照すること。スルホン化SIBSは、共形または外周ステント被覆物のために望ましいエラスマー特性および基材接着特性を有する一方、図1から分るようにこの材料は同程度のスチレンレベル(30モル%)を有する非スルホン化SIBSと比較して増加した表面粘着性を有する。高い表面粘着性はステントが広げられ/配置された後で被覆物中の欠陥の原因となり得るので、表面粘着性はステント被覆物にとって重要な特性である。図1の非スルホン化SIBSは、Pinchukらの米国特許第6,545,097号明細書に記載されている内容に従い、陽イオン重合法によって形成された。スルホン化形を作り出すために、この重合体はZ.Shi et al.,Macromolecules 2005,38,4193−4201に記載されている内容に従ってスルホン化された。
【0016】
従って、上記記載の本発明の第1の態様によれば、ブロック共重合体をスルホン化することによってではなく別の重合体に付いたスルホネート基、詳しくはスルホン化高Tg重合体を提供することによって、重合体領域にスルホネート基を提供する。
【0017】
一方、本発明の第2の態様においては、(a)スルホン化重合体ブロックおよび(b)フッ素化重合体ブロックを含むブロック共重合体内にスルホネート基を含むことによって、重合体領域にスルホネート基を提供する。公知のように、通常、フッ素化重合体ブロックは、ポリイソブチレンなどのポリアルケン重合体ブロックを含むさまざまな他の重合体ブロックと比べて、固有に表面エネルギー(従って低い表面粘着性)を有する。
【0018】
本発明の実施のための医療用具の例は、移植可能な医療用具または挿入可能な医療用具、例えば、ステント(冠状動脈ステント、末梢脈管ステント、脳ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆菅ステント、気管ステント、消化管ステントおよび食道ステントを含む)、ステント被覆、ステント移植片、血管移植片、心臓弁および血管弁を含む弁、腹部大動脈瘤(AAA)用具(例えばAAAステント、AAA移植片等)、血管アクセスポート、透析ポート、脳動脈瘤充填コイル(Guglilmi脱着性コイルおよび金属コイルを含む)を含む塞栓形成用具、塞栓剤、組織増量用具、カテーテル(例えばバルーンカテーテルおよびさまざまな中枢静脈カテーテルなどの腎臓カテーテルまたは血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば大静脈フィルタおよびディスティル保護用具のためのメッシュフィルタ)、中隔欠損閉止用具、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカー、ペースメーカー導線用被覆物を含む導線被覆物、除細動導線およびコイル、左心室補助心臓およびポンプを含む補助人工心臓、全人工心臓、シャント、吻合クリップおよびリング、蝸牛インプラント、および軟骨、骨、皮膚および他のインビボ組織再生のための組織工学足場、尿道スリング、ヘルニア「メッシュ」、人工靭帯、整形用人工器官、歯科インプラント、生検用具、ならびに体内に移植または挿入される任意の被覆された基材(例えば、金属、重合体、セラミックおよびそれらの組み合わせを含むことができる)を含む。
【0019】
実施態様によっては、本発明の重合体領域は、医療用具全体に対応する。他の実施態様では、重合体領域は、医療用具の1つ以上の部分に対応する。例えば、重合体領域は、医療用具部品の形、医療用具の中に組み込まれた1つ以上の繊維の形、下にある基材全体の上にまたは一部だけの上に形成された1つ以上の重合体層の形、などであってよい。下にある医療用具基材として用いられる材料は、セラミック、金属および重合体基材を含む。基材材料は、とりわけ、炭素またはケイ素系材料であってもよい。層は、下にある基材の上のさまざまな位置に、さまざまな形状(例えば一連の長方形、ストライプ、または任意の他の連続または非連続パターンの形)で提供されてよい。本明細書中で用いられる所定の材料の「層」は、長さおよび幅と比較して厚さが小さなその材料の領域である。本明細書中で用いられる層は平面である必要はなく、例えば、下にある基材の輪郭と一致する。層は、不連続であって(例えばパターン化されて)よい。
【0020】
本明細書中で用いられる「重合体領域」は、重合体、例えば50重量%以下から75重量%まで、90重量%まで、95重量%まで、97.5重量%まで、99重量%以上の重合体を含む領域(例えば用具全体、用具部品、用具被覆物層等)である。
【0021】
本明細書中で用いられる「重合体」は、普通はモノマーと呼ばれる1つ以上の構成単位の複数のコピー(例えば5から10まで、25まで、50まで、100まで、250まで、500まで、1000以上まで)を含む分子である。本明細書中で用いられる用語「モノマー」は、遊離モノマーを指しても重合体中に組み込まれたものを指してもよく、この用語が用いられる状況から区別は明らかである。
【0022】
重合体は、例えば、とりわけ、直鎖、環状および分岐構成から選ばれてよい複数の構成を有してよい。分岐構成は、星形構成(例えば単一の分岐点から3つ以上の鎖が広がる構成)、くし構成(例えば主鎖および複数の側鎖を有する構成、「グラフト」構成とも呼ばれる構成)、デンドライト構成(例えば樹木状および超分岐重合体)、その他を含む。
【0023】
本明細書で用いられる「単独重合体」は、単一の構成単位(すなわちモノマー)の複数のコピーを含む重合体である。「共重合体」は、少なくとも2つの同じでない構成単位の複数のコピーを含む重合体であり、その例は、ランダム共重合体、統計的共重合体、傾斜共重合体、周期的(例えば交互)共重合体およびブロック共重合体を含む。
【0024】
本明細書中で用いられる「ブロック共重合体」は、例えば、別の重合体ブロック中に見いだされない構成単位(すなわちモノマー)が1つの重合体ブロック中で見いだされるので組成が異なる2つ以上の重合体ブロックを含む共重合体である。本明細書中で用いられる「重合体ブロック」または「ブロック」は、構成単位の集団(例えば5から10まで、25まで、50まで、100まで、250まで、500まで、1000以上まで)である。ブロックは分岐していなくても分岐していてもよい。ブロックは、単一の種類の構成単位(本明細書中では「単独重合体ブロック」とも呼ばれる)または、例えば、ランダム分布、統計的分布、傾斜分布または周期的(例えば交互)分布で存在してよい複数の種類の構成単位(本明細書中では「共重合体ブロック」とも呼ばれる)を含むことができる。
【0025】
本明細書中で用いられる「鎖」は、直鎖重合体またはその一部、例えば直鎖ブロックである。
【0026】
本発明において用いられる重合体および重合体ブロックは、低ガラス転移点(Tg)重合体および重合体ブロック、ならびに高Tg重合体および重合体ブロックを含む。本明細書中で用いられる「低Tg重合体」または「低Tg重合体ブロック」は体温未満、より典型的には35℃から20℃まで、0℃まで、−25℃まで、−50℃未満までのTgを示すものである。逆に、本明細書中で用いられる「高Tg重合体」または「高Tg重合体ブロック」は、体温より高温、より典型的には40℃から50℃まで、75℃まで、100℃以上までのTgを示すものである。Tgは、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定することができる。
【0027】
上記のように、本発明のさまざまな態様によれば、1つ以上の重合体領域を含む医療用具が提供される。一態様では、重合体領域は、(a)スルホン化重合体ブロックおよび(b)フッ素化重合体ブロックを含むブロック共重合体を含む。
【0028】
フッ素化重合体ブロックを形成する際に用いられるフッ素化モノマーは、とりわけ、以下(いくつかは公表された単独重合体のTgとともに示される)、すなわち(a)フッ化ビニル(Tg40℃)、フッ化ビニリデン(Tg−40℃)、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレンなどの部分および完全フッ素化アルケンモノマー(炭素、フッ素および任意選択として水素からなる)、(b)クロロトリフルオロエチレンなどのフッ素および塩素置換を有する部分および完全ハロゲン化アルケンモノマー(炭素、フッ素、塩素および任意選択として水素からなる)、(c)2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート(Tg−10℃)およびペンタフルオロエチルアクリレートなどの部分および完全フッ素化アルキル基を有するアクリレートエステル、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートおよびペンタフルオロエチルメタクリレートなどの部分および完全フッ素化アルキル基を有するメタクリレートエステル、およびトリフルオロ酢酸ビニル(Tg46℃)などの部分および完全フッ素化アルキル基を有するビニルエステルを含むフッ素化エステル、(d)ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテルおよびペルフルオロプロピルビニルエーテルなどの部分および完全フッ素化アルキル基を有するビニルエーテル、の1つ以上の適当なメンバーから選ばれてよい。
【0029】
スルホン化重合体ブロックは、スルホン化モノマーを重合させることによって形成されたもの、およびモノマーが重合によって組み込まれた後でスルホン化されたものを含む。従って、スルホン化モノマーは、モノマー取り込み(重合)の時点でスルホン化されるもの、およびモノマー取り込み後に形成されるものを含む。
【0030】
前者の例は、とりわけビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸および3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ならびにとりわけアンモニウム、アルカリ金属(例えばLi、Na、K等)およびアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca等)塩を含むそれらの塩を含む。
【0031】
後者の例は、芳香族モノマーなどの容易にスルホン化可能なモノマー、例えば(1)(a)スチレン(Tg100℃)および2−ビニルナフタレン(Tg151℃)などの非置換ビニル芳香族化合物、(b)アルファ−メチルスチレンなどのビニル置換芳香族化合物、(c)3−メチルスチレン(Tg97℃)、4−メチルスチレン(Tg97℃)、2,4−ジメチルスチレン(Tg112℃)、2,5−ジメチルスチレン(Tg143℃)、3,5−ジメチルスチレン(Tg104℃)、2,4,6−トリメチルスチレン(Tg162℃)、および4−tert−ブチルスチレン(Tg127℃)などの環アルキル化ビニル芳香族化合物、4−メトキシスチレン(Tg113℃)および4−エトキシスチレン(Tg86℃)などの環アルコキシル化ビニル芳香族化合物、2−クロロスチレン(Tg119℃)、3−クロロスチレン(Tg90℃)、4−クロロスチレン(Tg110℃)、2,6−ジクロロスチレン(Tg167℃)および4−ブロモスチレン(Tg118℃)などの環ハロゲン化ビニル芳香族化合物、4−アセトキシスチレン(Tg116℃)などの環エステル置換ビニル芳香族化合物、4−ヒドロキシスチレン(Tg174℃)などの環ヒドロキシル化ビニル芳香族化合物、4−アミノスチレンを含む環アミノ置換ビニル芳香族化合物、p−ジメチルエトキシシロキシスチレンなどの環シリル置換スチレンを含む環置換ビニル芳香族化合物、(d)2−ビニルピリジン(Tg104℃)および4−ビニルピリジン(Tg142℃)などの非置換および置換ビニルピリジン、(e)安息香酸ビニル(Tg71℃)および4−tert−ブチル安息香酸ビニル(Tg101℃)などのビニル芳香族エステル、および(f)ビニルカルバゾール(Tg227℃)およびビニルフェロセン(Tg189℃)などの他のビニル芳香族モノマーなどのビニル芳香族モノマー、(2)ベンジルクリレート(Tg6℃)などの芳香族アクリレート、(3)フェニルメタクリレート(Tg110℃)およびベンジルメタクリレート(Tg54℃)などの芳香族メタクリレートを含む。環置換芳香族化合物の場合、スルホン化の速度および度合いは置換基の性質に依存するであろう。例えば、通常、電子供与基(例えばアミン、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ等)を有する芳香族化合物は非置換芳香族化合物より速く反応し、一方、通常、電子吸引基(例えばハロゲン、ニトロ、ニトリル等)を有する芳香族化合物はスルホン化の速度を低下させるであろう。
【0032】
後者の例は、とりわけ、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、4−ブチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジブチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、cis−クロロブタジエン(Tg−20℃)およびtrans−クロロブタジエン(Tg−40℃)などのジエンモノマーをさらに含む。
【0033】
フッ素化重合体ブロック、スルホン化重合体ブロック(またはその非スルホン化対応物)は、独立に、例えば、低Tgまたは高Tg重合体ブロックであってよい。
【0034】
例えば、特定の実施態様では、ブロック共重合体は、1つ以上の高Tgフッ素化重合体ブロックおよび1つ以上の低Tgスルホン化重合体ブロックを含んでよい。
【0035】
特定の他の実施態様では、ブロック共重合体は、1つ以上の低Tgフッ素化重合体ブロックおよび1つ以上の高Tgスルホン化重合体ブロックを含んでよい。
【0036】
例えば、実施態様によっては、ブロック共重合体は、(a)1つ以上のスルホン化ポリスチレンブロックおよび(b)ポリフッ化ビニリデンブロック、ポリヘキサフルオロプロピレンブロック、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)ブロック、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロメチルビニルエーテル)ブロック、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン)ブロック、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−プロピレン)ブロック、およびポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン−co−テトラフルオロエチレン)ブロック、ポリ(フッ化ビニリデン−co−フッ素化ビニルエーテル−co−テトラフルオロエチレン)ブロック、ポリ(フッ化ビニリデン−co−プロピレン−co−テトラフルオロエチレン)ブロックおよびポリ(フッ化ビニリデン−co−フッ素化ビニルエーテル−co−ヘキサフルオロプロピレン−co−エチレン−co−テトラフルオロエチレン)ブロックから選ばれた1つ以上の低Tgフッ素化重合体ブロックを含んでよい。
【0037】
本発明の特定の実施態様では、ブロック共重合体は少なくとも1つの低Tgブロックおよび少なくとも2つの高Tgブロックを含み、低Tgブロックの少なくとも一部が2つの高Tgブロックを分離している(言い換えると高Tgブロックは低Tgブロックによって相互接続している)。この構造の例は、例えば、低Tg重合体ブロックが「L」と指定され、高Tg重合体ブロックが「H」と指定されている以下の構成、すなわち、(a)HLH、(HL)、L(HL)およびH(LH)、ここでmは2以上の正の整数、の型の交互鎖を有するブロック共重合体、(b)X(LH)、ここでmは2以上の正の整数であり、Xはハブ種(例えば開始剤分子残留物、結合残留物等)であり、Xはブロック共重合体用語法では通常無視され、例えばX(LH)は式HLHのトリブロック共重合体として記述される、などの複数アーム(星形を含む)共重合体および(c)L鎖主鎖および複数のH側鎖を有するくし型共重合体をとりわけ含む。この型の重合体は、高い強度およびエラストマー特性を示すことができる一方、同時に溶媒系および/または溶融系加工技法などの技法を用いて加工することができる。
【0038】
別の態様では、(b)スルホン化高Tg重合体と混合された、(a)ポリアルケンブロックおよびポリ芳香族ブロックを含むブロック共重合体を含む、医療用具のための重合体領域が提供される。
【0039】
ポリアルケンブロックの例は、例えば、とりわけ、以下すなわちエチレン、プロピレン(Tg−8から−13℃)、イソブチレン(Tg−73℃)、1−ブテン(Tg−24℃)、4−メチルペンテン(Tg29℃)、1−オクテン(Tg−63℃)および他のα−オレフィンなどの一不飽和C2〜C10アルケン、および1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、4−ブチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジブチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、および3−ブチル−1,3−オクタジエンなどのC4〜C15ジエンの1つ以上について選ばれてよい。
【0040】
ポリ芳香族ブロックの例は、とりわけ以下のモノマー、すなわち(1)(a)スチレン(Tg100℃)および2−ビニルナフタレン(Tg151℃)などの非置換ビニル芳香族化合物、(b)アルファ−メチルスチレンなどのビニル置換芳香族化合物、(c)3−メチルスチレン(Tg97℃)、4−メチルスチレン(Tg97℃)、2,4−ジメチルスチレン(Tg112℃)、2,5−ジメチルスチレン(Tg143℃)、3,5−ジメチルスチレン(Tg104℃)、2,4,6−トリメチルスチレン(Tg162℃)、および4−tert−ブチルスチレン(Tg127℃)などの環アルキル化ビニル芳香族化合物、4−メトキシスチレン(Tg113℃)および4−エトキシスチレン(Tg86℃)などの環アルコキシル化ビニル芳香族化合物、2−クロロスチレン(Tg119℃)、3−クロロスチレン(Tg90℃)、4−クロロスチレン(Tg110℃)、2,6−ジクロロスチレン(Tg167℃)、4−ブロモスチレン(Tg118℃)および4−フルオロスチレン(Tg95℃)などの環ハロゲン化ビニル芳香族化合物、4−アセトキシスチレン(Tg116℃)などの環エステル置換ビニル芳香族化合物、4−ヒドロキシスチレン(Tg174℃)などの環ヒドロキシル化ビニル芳香族化合物、4−アミノスチレンを含む環アミノ置換ビニル芳香族化合物、p−ジメチルエトキシシロキシスチレンなどの環シリル置換スチレンを含む環置換ビニル芳香族化合物、(d)2−ビニルピリジン(Tg104℃)および4−ビニルピリジン(Tg142℃)などの非置換および置換ビニルピリジン、(e)安息香酸ビニル(Tg71℃)および4−tert−ブチル安息香酸ビニル(Tg101℃)などのビニル芳香族エステル、および(f)ビニルカルバゾール(Tg227℃)およびビニルフェロセン(Tg189℃)などの他のビニル芳香族モノマー、を含むビニル芳香族モノマー、(2)ベンジルアクリレート(Tg6℃)などの芳香族アクリレート、および(3)フェニルメタクリレート(Tg110℃)およびベンジルメタクリレート(Tg54℃)などの芳香族メタクリレート、を含むモノマーの1つ以上から形成されるものを含む。
【0041】
スルホン化高Tg重合体の例は、高Tgスルホン化単独重合体および共重合体を含む。
【0042】
実施態様によっては、スルホン化高Tg単独重合体は、スルホン化モノマー(例えばスチレンスルホン酸またはその塩などのスルホン化芳香族モノマー)を重合させることによって形成されてよい。他の実施態様では、スルホン化高Tg単独重合体は、適当な単独重合体、例えば適当な芳香族モノマー(例えば上記の芳香族モノマーのスルホン化可能なメンバーから選ばれる)から形成された芳香族化合物単独重合体をスルホン化することによって形成されてよい。
【0043】
実施態様によっては、スルホン化高Tg共重合体は、(a)スルホン化モノマー(例えばスルホン化芳香族モノマー)および(b)スルホン化共重合用単量体、非スルホン化共重合用単量体(例えば下記に示すものの適当なメンバーから選ばれた高Tg非スルホン化共重合用単量体)、または両方から選ばれた1つ以上の共重合用単量体を共重合させることによって形成されてよい。他の実施態様では、スルホン化高Tg共重合体は、適当な共重合体、例えば(a)スルホン化可能なモノマー、および(b)スルホン化可能な共重合用単量体、非スルホン化可能な共重合用単量体(例えば、下記に示す高Tg共重合用単量体の非スルホン化可能メンバーから選ばれる)、または両方から選ばれた1つ以上の共重合用単量体を含む共重合体をスルホン化することによって形成されてよい。
【0044】
明らかに、上記の方法のために選ばれるモノマーは、使用される重合条件および/またはスルホン化条件と適合している必要がある。
【0045】
非スルホン化および非スルホン化可能共重合用単量体の例は、とりわけ、以下、すなわち(1)無水マレイン酸などの不飽和無水物モノマー、(2)(a)上に示されたものなどの高Tgビニル芳香族化合物、(b)シクロヘキサンカルボン酸ビニル(Tg76℃)、ピバル酸ビニル(Tg86℃)、トリフルオロ酢酸ビニル(Tg46℃)、ビニルブチラール(Tg49℃)などの高Tgビニルエステル、(c)高Tgビニルアミン、(d)塩化ビニル(Tg81℃)およびフッ化ビニル(Tg40℃)などの高Tgハロゲン化ビニル、(e)tert−ブチルビニルエーテル(Tg88℃)およびシクロヘキシルビニルエーテル(Tg81℃)などの高Tgアルキルビニルエーテル、(f)ビニルビニルピロリドンなどの他のビニルモノマーを含む高Tgビニルモノマー、(3)(a)メタクリル酸無水物(Tg159℃)、(b)(i)メチルメタクリレート(Tg105〜120℃)、エチルメタクリレート(Tg65℃)、イソプロピルメタクリレート(Tg81℃)、イソブチルメタクリレート(Tg53℃)、t−ブチルメタクリレート(Tg118℃)およびシクロヘキシルメタクリレート(Tg92℃)などのアルキルメタクリレート、(ii)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(Tg57℃)および2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(Tg76℃)などのヒドロキシアルキルメタクリレート、(iii)イソボルニルメタクリレート(Tg110℃)およびトリメチルシリルメタクリレート(Tg68℃)を含むさらに別のメタクリレート、を含むメタクリル酸エステル(メタクリレート)、および(c)メタクリロニトリル(Tg120℃)を含む他のメタクリル酸誘導体、を含む高Tgメタクリルモノマー、(4)(a)tert−ブチルアクリレート(Tg43〜107℃)、ヘキシルアクリレート(Tg57℃)およびイソボルニルアクリレート(Tg94℃)などのアクリル酸エステルおよび(b)アクリロニトリル(Tg125℃)を含む他のアクリル酸誘導体を含む高Tgアクリルモノマーの適当なメンバーから選ばれてよい。
【0046】
特定の実施態様では、(b)高Tgスルホン化重合体、例えばとりわけスルホン化ポリスチレンおよび/またはスルホン化ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)とブレンドされた、(a)ポリアルケンブロックおよびポリ芳香族ブロックを含むブロック共重合体、例えばとりわけSIBS、を含む医療用具のための重合体領域が提供される。
【0047】
当業者には自明となるように、本発明に従って使用される重合体は、陽イオン重合法、陰イオン重合法およびラジカル重合法、特に制御型/「リビング」陽イオン重合法、陰イオン重合法およびラジカル重合法を含む、既知の方法によって合成されてよい。
【0048】
リビングプロセスが提供する多分散性、構造および分子量を制御する力と組み合わされた制約の少ないラジカル重合の性質によって、本発明のさまざまな実施態様においてリビングフリーラジカル重合(制御型フリーラジカル重合とも呼ばれる)が使用されてよい。フリーラジカル重合する能力があるモノマーは広く変化し、とりわけ以下、すなわち置換および非置換スチレンなどのビニル芳香族モノマー、エチレン、プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの置換および非置換アルケン、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびp−ジビニルベンゼンなどのジエンモノマー、アクリルモノマー、例えばアクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、およびブチルアクリレートなどのアクリレートエステル、メタクリルモノマー、例えばメタクリル酸、メタクリロニトリル、およびメチルメタクリレート、ベータ−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベータ−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレートなどのメタクリレートエステル、酢酸ビニルなどのビニルエステル、ならびにとりわけイタコン酸、フマル酸、マレイン酸、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルイミダゾールおよびN,N′−メチレンビスアクリルアミドを含む他の不飽和モノマーから選ばれてよい。
【0049】
フリーラジカル重合プロセスの特定の例は、金属触媒原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介プロセス(NMP)を含む安定フリーラジカル重合(SFRP)、および可逆付加−フラグメント化連鎖移動(RAFT)プロセスを含む縮重移動(degenerative transfer)を含む。これらの方法は文献に十分に詳述され、例えばPyun and Matyjaszewski,「Synthesis of Nanocomposite Organic/Inorganic Hybrid Materials Using Controlled/”Living”Radical Polymerization」,Chem.Mater.,13:3436−3448(2001)、B.Reeves,「Recent Advances in Living Free Radical Polymerization」,November 20,2001,University of Florida、T.Kowalewski et al.,「Complex nanostructured materials from segmented copolymers prepared by ATRP」,Eur.Phys.J.E,10,5−16(2003)による論文に記載されている。
【0050】
ATRPは、さまざまな官能基(例えばとりわけアルコール、アミンおよびスルホネート基)を許容し、従って多数のモノマーの重合を可能にするので、訴求力のあるフリーラジカル重合技法である。ATRPによるモノマー重合においては、普通には有機ハロゲン化物開始剤および遷移金属錯体を用いてラジカルが発生させられる。有機ハロゲン化物開始剤のいくつかの典型的な例は、ハロゲン化アルキル、ハロエステル(例えばメチル2−ブロモプロピオネート、エチル2−ブロモイソブチレート等)およびハロゲン化ベンジル(例えば、1−フェニルエチルブロミド、ベンジルブロミド等)を含む。さまざまなRu、Cu、OsおよびFe系システムを含む広い範囲の遷移金属錯体が使用されてよい。ATRP重合反応において用いられてよいモノマーの例は、とりわけアルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ビニルエステル、ビニル芳香族モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリルおよび4−ビニルピリジンなどのさまざまな不飽和モノマーを含む。ATRPにおいては、重合の終わりに、高分子鎖はハロゲン原子を用いてキャッピングされる。ハロゲン原子は、S1、S2またはラジカル化学によって容易に変換されてとりわけアミノ基などの他の官能基を提供することができる。官能性は、他の方法によって、例えば、ラジカル重合プロセスに関与しない官能基を含む開始剤を使用することによっても重合体中に導入されることができる。例は、とりわけエポキシド、アジド、アミノ、ヒドロキシル、シアノおよびアリル基を有する開始剤を含む。さらに、モノマー自体に官能基が存在してよい。
【0051】
一般に、縮重移動システムによるラジカル重合は、ラジカルの存在下で発生する、開始および移動の両方のための部分を含む移動剤を使用する。縮重移動反応による制御型ラジカル重合は、とりわけヨウ化アルキル、不飽和メタクリレートエステルおよびチオエステルを移動剤として実行されている。ビニルモノマーのラジカル重合におけるチオエステルの使用は結果としてRAFT重合となる。RAFTプロセスは、とりわけ官能性スチレン、アクリレート、メタクリレートおよびビニルエステル、ならびにナトリウム2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネート(AMPS)およびナトリウム3−アクリルアミド−3−メチルブタノエート(AMBA)などのイオン種を含む水溶性モノマーを含む極めて広い範囲のラジカル重合可能なモノマーを重合させることができる汎用性の高い方法であることが証明されている。RAFTの後、残っているチオ末端基は、ラジカル化学によって除去されても他の基によって置換されてもよい。
【0052】
NMPを含むSFRP重合は、アルコキシアミン開始剤およびニトロキシド持続ラジカルを利用してスチレン類およびアクリレート類などのモノマーを重合させる。スチレンの重合において広く用いられているニトロキシドは2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ(TEMPO)であるが、最近になって開発されたニトロキシドもとりわけアクリレート、アクリルアミド、1,3−ジエンおよびアクリロニトリル系モノマーを制御された様式で重合させることができる。結果として得られる重合体は、末端アルコキシアミン基を含む。この基は、ラジカル化学によって変換されてよい。例えば、無水マレイン酸またはマレイミド誘導体がアルコキシアミンに加えられ、他の官能基の容易な導入を可能にしてよい。
【0053】
上記の重合技法および他の重合技法を用いて、本発明による重合体を形成するためにさまざまな戦略が使用されてよい。
【0054】
重合分野において知られているさまざまな方法を用いてブロック共重合体が調製されてよい。例は、(a)単官能または二官能開始剤(例えばそれぞれ直鎖ABまたはABA型ブロック共重合体の場合)から、および(b)三官能、四官能、五官能等の開始剤(例えば、星形共重合体の形成の場合)からの連続モノマー付加を含む。
【0055】
ブロック共重合体を形成するために複数の種類の重合技法が使用されてよい。例えば、ラジカル重合可能でないモノマーを含むブロック共重合体のためにラジカル重合技法が使用されてよい。その際、例えば、とりわけハロゲン化ベンジルおよびα−ハロエステル基などのハロゲン化アルキル基に見いだされるもののような少なくとも1つのラジカル移動可能な原子を導入することによって、結果として得られる重合体の末端基を適切に修飾した上で、リビングアニオンまたはカチオン技法などの非フリーラジカル技法を用いてマクロ開始剤が調製されてよい。別の例として、第1の種類の重合プロセスには官能性開始剤(保護されていてもよい)が使用され、続いて必要に応じて官能基(単数または複数)の脱保護/変換が行われ、続いて第2の重合プロセスによる重合が行われてよい。別の例として、ブロック共重合体を作り出すために2つ以上の既に形成された重合体が互いに共有結合によって連結されてよい。
【0056】
例えば、末端重合可能基(例えばビニル基等)を有するマクロモノマーと別のモノマー(例えば別のビニルモノマー等)との共重合によって、くし形ブロック共重合体が調製されてよい。2つの異なるマクロモノマーを用いて混合側鎖が作り出されてよい。モノマーに対するマクロモノマーの比を変えることによって側鎖の密度を変化させてよい。重合開始剤として作用するペンダント官能基(例えばATRP重合のためのハロゲン化アルキル基)をその長さに沿って有する重合体から重合体側鎖を成長させることによっても、くし形共重合体が形成されてよい。さらに、末端官能性高分子鎖を、長さに沿って反応性官能基を有する重合体と結合させることによって、くし形共重合体が形成されてよい。
【0057】
上記のように、本発明において用いられるスルホン化重合体は、例えば、スルホン化モノマーの重合および/または適当な予め存在する重合体をスルホン化することによって形成されてよい。芳香環を有するものを含む重合体をスルホン化するためのさまざまな方法が知られている。Klierらの米国特許出願公開第2004/0081829号明細書にいくつかのそのような方法が記載されている。例えば、発煙硫酸(硫酸中に溶解された三酸化硫黄)との接触によって、三酸化硫黄、クロロスルホン酸または発煙硫酸、および低級トリアルキルホスフェートまたはホスフェートの反応生成物を含むスルホン化用錯体との接触によって、または硫酸が無水酢酸と一緒にされた後、塩素化溶媒中の重合体の溶液にこの混合物が加えられる方法によって重合体がスルホン化されてよい。結果として得られる重合体の塩は、重合体を中和剤または塩基(例えばアンモニア、アルキルアミン、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)と反応させることによって調製されてよい。これらの技法に関する詳しい情報については、米国特許出願公開第2004/0081829号明細書およびその中の引用文献を参照すること。
【0058】
Y.A.Elabd et al.,Polymer 45(2004)3037−3043に、SIBSのスチレン系モノマーがさまざまな度合い(すなわちスチレンの13から82モル%)にスルホン化される特定の手順が示されている。手短には、塩化メチレン中のSIBSの溶液が撹拌され、還流されながら、スルホン化反応を開始するために塩化メチレン中のアセチル硫酸エステルの指定された量がゆっくり加えられた。無水酢酸および硫酸を冷却された塩化メチレンに撹拌しながら加えることによって塩化メチレン中の硫酸アセチルが調製された。無水酢酸は硫酸と反応して硫酸アセチル(スルホン化剤として作用する)および酢酸(副生成物)を形成し、過剰の水を除去し、それによってスルホン化のための無水条件を作り出す。スルホン化反応は、一般に重合体のスチレンブロック中の芳香環のパラ位置に置換されたスルホン酸基を作り出す。
【0059】
本発明の医療用具において用いられる重合体領域は、1つ以上の重合体に加えて1つ以上の治療薬剤を任意選択として含んでよい。本明細書において、「治療剤」、「薬物」、「医薬的に活性な剤」、「医薬的に活性な物質」および他の関連用語は区別なく用いられてよい。
【0060】
本発明による重合体領域からの治療薬剤(単数または複数)の放出の速度は、例えば、治療薬剤(単数または複数)の性質、重合体領域内の重合体(単数または複数)の性質(例えば分子量、構造およびモノマー組成)および、任意の他の任意選択の補助的な化学種の性質に依存するであろう。例えば、治療薬剤(単数または複数)の性質(例えば親水性/疎水性)および重合体の性質(例えば親水性/疎水性/膨潤性)は、薬物の放出に顕著な効果を有するであろう(例えば、重合体領域の濡れ性、水拡散係数、治療薬剤拡散性、その他に影響を及ぼす)。重合体領域の親水性/疎水性/膨潤性も、任意選択として補助的な疎水性および/または親水性重合体を重合体領域に加えることによって改変されてよい。
【0061】
治療薬剤放出プロフィルは、用具内の重合体領域のサイズ、数および/または位置などの他の因子によっても制御されてよい。例えば、本発明による重合体領域の放出プロフィルは、重合体領域の厚さおよび/または表面積を変化さることによって改変されてよい。さらに、放出プロフィルを改変するために複数の重合体領域が使用されてよい。例えば、同じ含有率または異なる含有率のどちらか(例えば異なる重合体および/または治療薬剤含有率)を有する重合体領域が上下に積み重ねられてよく、互いに横方向に配置されてよい、等である。さらに、本明細書に記載されている治療薬剤含有重合体領域の上に重合体障壁層が設けられてよく、または本明細書に記載されている重合体領域は、治療薬剤含有領域の上に障壁層として配置されてよい。
【0062】
広い範囲の疾病および病気の治療(すなわち疾病または病気の予防、疾病または病気と関連した症状の軽減または除去、あるいは疾病または病気の実質的なまたは完全な除去)のために用いられるものを含む広い範囲の治療薬剤が本発明とともに使用されることができる。
【0063】
本発明とともに用いられる治療薬剤の例は、以下、すなわち(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、クロピドグレルおよびPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)などの抗血栓剤、(b)デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジンおよびメサラミンなどの抗炎症剤、(c)パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を遮断することができるモノクローナル抗体、およびチミジンキナーゼ阻害剤などの抗新生剤/抗増殖剤/抗縮瞳剤、(d)リドカイン、ブピバカインおよびロピバカインなどの麻酔剤、(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤およびチック抗血小板ペプチドなどの抗凝集剤、(f)成長因子、転写活性化剤および翻訳促進剤などの血管細胞成長促進剤、(g)成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写リプレッサー、翻訳リプレッサー、複製阻害剤、阻害性抗体、成長因子に対する抗体、成長因子およびサイトトキシンからなる二元機能分子、抗体およびサイトトキシンからなる二元機能分子などの血管細胞成長阻害剤、(h)蛋白質キナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害剤(例えばチルホスチン類、ゲニステイン、キノキサリン類)、(i)プロスタサイクリン類縁体、(j)コレステロール低下剤、(k)アンギオポイエチン類、(l)トリコサン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよびニトロフラントインなどの抗菌剤、(m)細胞毒剤、細胞増殖抑制剤および細胞増殖影響因子、(n)血管拡張剤、(o)内因性血管作動機序と干渉する剤、(p)モノクローナル抗体などの白血球補充阻害剤、(q)サイトカイン、(r)ホルモン、(s)ゲルダナマイシンを含むHSP90蛋白質(すなわち、分子シャペロンまたはハウスキーピング蛋白質であり、細胞の成長および生存に寄与する他のクライアント蛋白質/信号変換蛋白質の安定性および機能のために必要な熱ショックタンパク質)の阻害剤、(t)アルファ受容体拮抗剤(ドキサゾシン、タムスロシンなど)およびベータ受容体作動薬(ドブタミン、サルメテロールなど)、ベータ受容体拮抗剤(アテノロール、メタプロロール、ブトキサミンなど)、アンギオテンシン−II受容体拮抗剤(ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタンおよびテルミサルタンなど)、および鎮痙剤(オキシブチニンクロリド、フラボキサート、トルテロジン、ヒヨスチアミンスルファート、ジクロミンなど)、(u)bARKct阻害剤、(v)ホスホランバン阻害剤、(w)Serca2遺伝子/蛋白質、(x)アミノキゾリン、例えばレスキモドおよびイミキモドなどのイミダゾキノリンを含む免疫応答改変剤および(y)ヒトアポリポ蛋白質(例えばAI、AII、AIII、AIV、AV等)を含む。
【0064】
血管治療投薬計画、例えば再狭窄を標的とする剤のための候補として、上に列挙された治療薬剤を必ずしも除外しない多数の治療薬剤が特定された。そのような剤は、本発明の実施にとって有用であり、以下すなわち(a)ジルチアゼムおよびクレンチアゼムなどのベンゾチアザピン、ニフェジピン、アムロジピンおよびニカルダピンなどのジヒドロピリジン、およびベラパミルなどのフェニルアルキルアミンを含むCaチャネルブロッカー、(b)ケタンセリンおよびナフチドロフリルなどの5−HT拮抗剤ならびにフルオキセチンなどの5−HT摂取阻害剤を含むセロトニン経路調節剤、(c)シロスタゾールおよびジピリダモールなどのホスホジエステラーゼ阻害剤、フォルスコリンなどのアデニラーゼ/グアニレートシクラーゼ刺激剤、ならびにアデノシン類縁体を含む環状ヌクレオチド経路剤、(d)プラゾシンおよびブナゾシンなどのα−拮抗剤、プロプラノロールなどのβ−拮抗剤、およびラベタロールおよびカルベジロールなどのα/β−拮抗剤を含むカテコールアミン調節剤、(e)エンドセリン受容体拮抗剤、(f)ニトログリセリン、二硝酸イソソルビドおよび亜硝酸アミルなどの有機硝酸エステル/亜硝酸エステル、ナトリウムニトロプルシドなどの無機ニトロソ化合物、モルシドミンおよびリンシドミンなどのシドノンイミン、ジアゼニウムジオラートなどのノノアート、およびアルカンジアミンのNO付加体、低分子量化合物(例えばカプトプリル、グルタチオンおよびN−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)および高分子量化合物(例えば蛋白質、ペプチド、オリゴ糖、多糖、合成重合体/オリゴマーおよび天然重合体/オリゴマーのS−ニトロソ誘導体)を含むS−ニトロソ化合物、ならびにC−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物およびL−アルギニンを含む一酸化窒素供与体/放出分子、(g)シラザプリル、フォシノプリルおよびエナラプリルなどのACE阻害剤、(h)サララシンおよびロサルチンなどのATII受容体拮抗剤、(i)アルブミンおよびポリエチレンオキシドなどの血小板接着阻害剤、(j)シロスタゾール、アスピリンおよびチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)を含む血小板凝集阻害剤、およびアブシキシマブ、エピチフィバチドおよびチロフィバンなどのGp IIb/IIIa阻害剤、(k)ヘパリン、低分子量ヘパリン、デキストランスルファートおよびβ−シクロデキストリンテトラデカスルファートなどのヘパリノイドを含む凝固経路調節剤、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D−phe−L−プロピル−L−arg−クロロメチルケトン)およびアルガトロバンなどのトロンビン阻害剤、アンチスタチンおよびTAP(チック抗凝固ペプチド)などのFXa阻害剤、ワルファリンなどのビタミンK阻害剤、ならびに活性化蛋白質C、(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシンおよびスルフィンピラゾンなどのシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、(m)デキサメタゾン、プレドニソロン、メトプレドニソロンおよびハイドロコーチゾンなどの天然および合成副腎皮質ステロイド、(n)ノルジヒドログアイレチン酸およびコーヒー酸などのリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o)ロイコトリエン受容体拮抗剤、(p)E−およびP−セレクチンの拮抗剤、(q)VCAM−1およびICAM−1相互作用の阻害剤、(r)PGE1およびPGI2などのプロスタグランジン、ならびにシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロストおよびベラプロストなどのプロスタサイクリン類縁体を含むプロスタグランジンおよびその類縁体、(s)ビスホスホネートを含むマクロファージ活性化妨害剤、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチンおよびセリバスタチンなどのHMG−CoA還元酵素阻害剤、(u)魚油およびオメガ−3−脂肪酸、(v)プロブコール、ビタミンCおよびE、エブセレン、trans−レチノイン酸およびSODミミックなどのフリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、(w)bFGF抗体およびキメラ融合蛋白質などのFGF経路剤、トラピジルなどのPDGF受容体拮抗剤、アンギオペプチンおよびオクレオチドなどのソマトスタチン類縁体を含むIGF経路剤、ポリアニオン剤(ヘパリン、フコイジン)、デコリンおよびTGF−β抗体などのTGF−β経路剤、EGF抗体、受容体拮抗剤およびキメラ融合蛋白質などのEFG経路剤、サリドマイドおよびその類縁体などのTNF−α経路剤、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベンおよびリドグレルなどのトロンボキサンA2(TXA2)経路調節剤、ならびにチルホスチン、ゲニステインおよびキノキサリン誘導体などの蛋白質チロシンキナーゼ阻害剤を含むさまざまな成長因子に影響を及ぼす剤、(x)マリマスタット、イロマスタットおよびメタスタットなどのMMP経路阻害剤、(y)サイトカラシンBなどの細胞運動阻害剤、(z)プリン類縁体(例えば6−メルカプトプリン、または塩素化プリンヌクレオシド類縁体であるクラドリビン)、ピリミジン類縁体(例えばシタラビンおよび5−フルオロウラシル)およびメトトレキセート、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、エチレンイミン、抗生物質(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチンなどの抗代謝剤、微小管動力学に影響を及ぼす剤(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、Epo D、パクリタキセルおよびエポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管新生阻害剤(例えばエンドスタチン、アンギオスタチンおよびスクアラミン)、ラパマイシン(シロリムス)およびその類縁体(例えばエベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス等)、セリバスタチン、フラボピリドールおよびスラミンを含む抗増殖/抗新生剤、(aa)ハロフギノンまたは他のキナゾリノン誘導体およびトラニラストなどのマトリックス堆積/組織経路阻害剤、(bb)VEGFおよびRGDペプチドなどの内泌細胞形成促進剤、および(cc)ペントキシフィリンなどの血液流動性調節剤の1つ以上を含む。
【0065】
好ましい治療薬剤は、とりわけ、パクリタキセル(その粒子形、例えばアルブミン結合パクリタキセルナノ粒子、例えばアブラキサンなどの蛋白質結合パクリタキセル粒子を含む)などのタキサン、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、Epo D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフギノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT−578(Abbott Laboratories)、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、レステン−NG、Ap−17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、ベータブロッカー、bARKct阻害剤、ホスホランバン阻害剤、Serca2遺伝子/蛋白質、イミキモド、ヒトアポリポ蛋白質(例えばAI〜AV)、成長因子(例えばVEGF−2)ならびに前述のものの誘導体を含む。
【0066】
本発明の医療用具とともに広い範囲の治療薬剤担持率が用いられてよい。例えば、典型的な担持率は、1重量%以下から2重量%まで、5重量%まで、10重量%まで、25重量%以上までの範囲の重合体領域の範囲である。
【0067】
本発明による重合体領域を形成するために、多数の技法が利用可能である。
【0068】
例えば、熱可塑性特性を有する1つ以上の重合体から重合体領域が形成される場合、重合体領域を形成するためにさまざまな標準的な熱可塑性材料加工技法が用いられてよい。これらの技法を用いると、例えば、(a)最初に重合体(単数および複数)および治療薬剤などの任意の他の任意選択の剤を含むメルトを準備し、(b)続いてメルトを冷却することによって重合体領域が形成されることができる。熱可塑性材料加工技法の例は、圧縮形成法、射出成形法、ブロー成形法、スプレイ法、真空成形法およびカレンダー法、さまざまな長さのシート、繊維、ロッド、チューブおよび他の断面プロフィルへの押し出し法、およびこれらのプロセスの組み合わせを含む。これらおよび他の熱可塑性材料加工技法を用いると、デバイス全体またはその一部が作られることができる。
【0069】
本発明の重合体領域を形成するために、溶媒系技法を含む、熱可塑性材料加工技法以外の他の加工技法も用いられてよい。これらの技法を用いると、例えば、(a)最初に重合体(単数および複数)および治療薬剤などの任意の任意選択の剤を含む溶液または分散物を準備し、(b)続いて溶媒を除去することによって重合体領域が形成されることができる。最終的に選ばれる溶媒は、1つ以上の溶媒種を含み、溶媒種は、一般に、乾燥速度、表面張力等を含む他の因子に加えて、重合体領域を形成する重合体(単数または複数)の少なくとも1つを溶解するその能力にもとづいて選ばれる。特定の実施態様では、溶媒は、任意選択の剤があれば、それらの剤を溶解するその能力にもとづいて選ばれる。従って、治療薬剤などの任意選択の剤は、コーティング溶液中に溶解されても分散されてもよい。好ましい溶媒系技法は、溶媒キャスト技法、スピンコーティング技法、ウエブコーティング技法、溶媒スプレイ技法、浸漬技法、空気懸濁物を含む機械的懸濁物によるコーティングを含む技法、インクジェット技法、静電技法、およびこれらのプロセスの組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0070】
本発明のいくつかの実施態様では、重合体領域を形成するために重合体含有溶液(溶媒系加工法が使用される場合)または重合体含有メルト(熱可塑性材料加工法が使用される場合)が基材に塗布される。例えば、基材は、重合体被覆物が例えばスプレイ法、押し出し法、その他によって塗布される移植可能な医療用具または挿入可能な医療用具の全体または一部に対応してよい。基材は、例えば、重合体領域が固化後に取り出される型などの鋳型であってもよい。例えば、他の実施態様、押し出しおよび共押し出し技法では、1つ以上の重合体領域が基材の助けなしに形成される。特定の例では、医療用具全体が押し出される。別の例では、重合体被覆物層が下にある医療用具実体とともに共押し出しされる。
【0071】
本明細書にはさまざまな実施態様が詳しく例示され、説明されているが、本発明の変更形および変化形は上記の教示に含まれ、本発明の技術思想および意図した範囲から逸脱することなく、添付の請求項の範囲内にあることは自明であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)スルホン化重合体ブロック、および(b)フッ素化重合体ブロック、を含むブロック共重合体を含む移植可能な医療用具または挿入可能な医療用具。
【請求項2】
前記スルホン化重合体ブロックは、スルホン化芳香族モノマー、スルホン化ジエンモノマー、スルホン化メタクリレートモノマーおよびそれらの組み合わせから選ばれるスルホン化モノマーを含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項3】
前記スルホン化重合体ブロックは、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホアルキルメタクリレート、それらの塩、およびそれらの組み合わせから選ばれるスルホン化モノマーを含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項4】
前記スルホン化重合体ブロックは、スルホン化ポリスチレンブロックである、請求項1に記載の医療用具。
【請求項5】
前記フッ素化重合体ブロックは、部分および完全フッ素化アルケンモノマー、フッ素置換および塩素置換を含む部分および完全ハロゲン化アルケンモノマー、部分および完全フッ素化アルキルアクリレート、部分および完全フッ素化アルキルメタクリレート、部分および完全フッ素化アルキルビニルエステル、部分および完全フッ素化アルキルビニルエーテル、およびそれらの組み合わせから選ばれるフッ素化モノマーを含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項6】
前記フッ素化重合体ブロックは、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレンおよびそれらの組み合わせから選ばれるフッ素化モノマーを含む、請求項1に記載の医療用具。
【請求項7】
前記フッ素化重合体ブロックは、低Tgブロックである、請求項1に記載の医療用具。
【請求項8】
前記スルホン化重合体ブロックは、高Tg重合体ブロックである、請求項7に記載の医療用具。
【請求項9】
前記フッ素化重合体ブロックは、ポリフッ化ビニリデンブロック、ポリヘキサフルオロプロピレンブロック、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)ブロック、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロメチルビニルエーテル)ブロック、ポリ(フッ化ビニリデン−co−クロロトリフルオロエチレン)ブロック、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−プロピレン)ブロック、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン−co−テトラフルオロエチレン)ブロック、ポリ(フッ化ビニリデン−co−フッ素化ビニルエーテル−co−テトラフルオロエチレン)ブロック、ポリ(フッ化ビニリデン−co−プロピレン−co−テトラフルオロエチレン)ブロック、およびポリ(フッ化ビニリデン−co−フッ素化ビニルエーテル−co−ヘキサフルオロプロピレン−co−エチレン−co−テトラフルオロエチレン)ブロックから選ばれるフッ素化エラストマーブロックである、請求項1に記載の医療用具。
【請求項10】
前記スルホン化重合体ブロックは、スルホン化ポリスチレンブロックである、請求項9に記載の医療用具。
【請求項11】
前記ブロック共重合体は、前記フッ素化エラストマーブロックを中間ブロックとして、スルホン化ポリスチレンブロックを末端ブロックとして含むトリブロック共重合体である、請求項9に記載の医療用具。
【請求項12】
(a)ポリ芳香族ブロックおよびポリアルケンブロックを含むブロック共重合体、および(b)スルホン化高Tg重合体、を含む重合体ブレンドを含む移植可能な医療用具または挿入可能な医療用具。
【請求項13】
前記ポリアルケンブロックは、ポリイソブチレンブロックである、請求項12に記載の医療用具。
【請求項14】
前記ポリ芳香族ブロックは、ビニル芳香族モノマーを含む、請求項12に記載の医療用具。
【請求項15】
前記ポリ芳香族ブロックは、ポリスチレンブロックである、請求項12に記載の医療用具。
【請求項16】
前記ブロック共重合体は、トリブロック共重合体である、請求項12に記載の医療用具。
【請求項17】
前記ブロック共重合体は、ポリイソブチレン中間ブロックおよび2つのポリスチレン末端ブロックを含むトリブロック共重合体である、請求項12に記載の医療用具。
【請求項18】
前記スルホン化高Tg重合体は、ビニル芳香族モノマーを含むスルホン化重合体である、請求項12に記載の医療用具。
【請求項19】
前記スルホン化重合体は、スルホン化ポリスチレンである、請求項18に記載の医療用具。
【請求項20】
前記スルホン化高Tg重合体は、ビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1つの別のモノマーを含むスルホン化共重合体である、請求項18に記載の医療用具。
【請求項21】
前記スルホン化高Tg共重合体は、スルホン化ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)である、請求項20に記載の医療用具。
【請求項22】
複数の重合体領域を含む、請求項1および12のいずれか1項に記載の医療用具。
【請求項23】
前記重合体領域は、下にある基材を少なくとも部分的に覆う層の形である、請求項1および12のいずれか1項に記載の医療用具。
【請求項24】
前記重合体領域は、治療薬剤をさらに含む、請求項1および12のいずれか1項に記載の医療用具。
【請求項25】
前記第1の治療薬剤は、抗増殖剤、抗血栓剤、内皮細胞成長促進剤、抗菌剤、鎮痛剤、および抗炎症剤から選ばれる、請求項24に記載の医療用具。
【請求項26】
前記医療用具は、ステント、血管移植片、ステント移植片、心臓弁、血管弁、脳動脈瘤充填コイル、フィルタ、ガイドワイヤ、バルーンおよびカテーテルから選ばれる血管医療用具である、請求項1および12のいずれか1項に記載の医療用具。

【図1】
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【公表番号】特表2010−520781(P2010−520781A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552719(P2009−552719)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/002906
【国際公開番号】WO2008/109098
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】