改善された方法
被検体の病理学的状態の診断試験の感度及び特異度を改善するように被検体からのケラチンサンプルを分析する方法であって、a)エネルギー源から得られる入射エネルギーにケラチンサンプルを曝すこと、b)ケラチンサンプルに入射エネルギーが当たることで生じる、ケラチンサンプルからの放射エネルギーを受け取ること、c)ケラチンサンプルから受け取った放射エネルギーの少なくとも一部を、被検体特異的データを引き出すようにトランスデューサに通すこと、d)引き出された被検体特異的データを処理すること、及びe)そのようにして得られた前記処理された被検体特異的データを、参照データベースの、前記被検体の前記病理学的状態の存在と一致する第2の群の参照データと比較すること、を含み、f)上記処理方法は、上記参照データに対して感度及び特異度を改善するように、上記比較する工程の前に上記被検体特異的データに適切なアルゴリズムを適用する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の病理学的状態の診断試験の感度及び特異性を改善するように、被検体からのケラチンサンプルを分析する方法であって、エネルギー源から得られる入射エネルギーにケラチンサンプルを曝すこと、ケラチンサンプルに入射エネルギーが当たることで生じる、ケラチンサンプルからの放射エネルギーを受け取ること、ケラチンサンプルから受け取った放射エネルギーの少なくとも一部を、データを引き出すようにトランスデューサに通すこと、引き出されたデータを処理すること、及び処理されたデータを参照データベース内にある第2の群のデータと比較することであって、第2の群のデータは被検体の病理学的状態の存在と一致する、比較することを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの病理学的状態はそれらのライフサイクルの特定のステージで検出可能であろう。しかしながら多くの場合、この段階は病理学的状態のライフサイクルの晩期である可能性があり、そのため、病理学的状態が早期段階で検出された場合に得られたであろう被検体の予後よりも良くない。このような状況は、多くの場合に早期検出が被検体の生存の可能性を著しく高める可能性のある癌の場合に特に顕著である。
【0003】
標準試験に比して、診断試験の感度の改善又は特異度の改善は多くの場合、被検体の罹患率及び死亡率の低減に結びつき得る。
【0004】
定義では感度とは、病理学的状態のライフサイクルの或る段階での特定の病理学的状態の存在を検出する試験の能力を意味し、例えば、まだ浸潤性でない癌の存在を検出する試験が、癌が浸潤性となった場合にしか癌の存在を明らかにしない試験よりも感度が高い試験である。特異度とは、所定の試験結果に関連する考えられ得る範囲の病理学的状態の範囲を絞る試験の能力を意味し、例えば、1つの癌を示唆する試験が、試験の陽性結果と一致しているものとして3つの考えられ得る癌を示唆する試験よりも特異度が高い。他の試験は、病理学的状態の存在に対する特異度も感度もないものもあり、そのため、病理学的状態の存在を示さないか、又はせいぜい不確定な結果を生む。病理学的状態の存在について確定的な結果を全く生まない試験は全く感度がない(すなわち感度値がゼロ)と言えるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、癌又は病理学的状態の治療において依然としてある課題は概して、病理学的状態の試験の感度、特異度及び確定性を改善することである。
【0006】
本発明の一目的は、上記欠点のいくつかに対処するか又は少なくとも改善することである。
【0007】
注記
1. 「備える」という用語(及びその文法的な変形語)は本明細書では「有する」又は「含む」という包括的な意味で用いられ、「のみから成る」という排他的な意味では用いられない。
2.本発明の背景技術における従来技術の上記説明は、本明細書において説明されているいかなる情報も引用可能な従来技術であること、又はいずれもの国の当業者の共通の一般知識の一部であることを認めるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明の概説]
本発明の1つの広い形態では、被検体の病理学的状態に関連する診断試験の感度及び特異度を改善するように被検体からのケラチンサンプルを分析する方法であって、
a)エネルギー源から得られる入射エネルギーにケラチンサンプルを曝すこと、
b)ケラチンサンプルに入射エネルギーが当たることで生じる、ケラチンサンプルからの放射エネルギーを受け取ること、
c)ケラチンサンプルから受け取った放射エネルギーの少なくとも一部を、データを引き出すようにトランスデューサに通すこと、
d)引き出されたデータを適切なアルゴリズムを用いて処理すること、及び
e)そのようにして得られた前記処理された被検体特異的データを、参照データベースの、前記被検体の前記病理学的状態の存在と一致する第2の群の参照データと比較すること、を含む方法が提供される。好ましくは、第2の群のデータは被検体の病理学的状態の存在に相関する。
【0009】
好ましくは、第2の群のデータは被検体の病理学的状態の存在を示す。
【0010】
好ましくは、エネルギー源は複数の異なるエネルギー源から選択される。
【0011】
好ましくは、ケラチンサンプルは複数の異なるケラチンサンプルから選択される。
【0012】
好ましくは、第2の群のデータは複数の異なるデータ群のデータから選択される。
【0013】
好ましくは、引き出されたデータは複数の異なる数学的方法論を用いて処理される。
【0014】
好ましくは、処理されたデータ及び第2の群のデータは複数の異なる比較方法を用いて分析される。
【0015】
好ましくは、入射エネルギーの少なくとも一部はケラチンサンプルによって吸収される。
【0016】
好ましくは、使用時、ケラチンサンプルは薬局、試験キット、被検体の自宅、ヘルスケアクリニック、及び試験室のうち少なくとも1つに関連して入手及び分析されることができる。
【0017】
本発明のさらに広い形態では、上記に記載されるような方法において引き出されたデータを分析する方法であって、当該データは上記トランスデューサから得られた画像の画像データの形態であり、当該分析する方法は、
(a)上記画像内の特徴の間隔を確定するように当該画像内の所定の経路に沿って1次元データを抽出すること、
(b)上記1次元データの分析から、上記画像の中心点を中心として実質的に円形状に配向されたピークデータを確定すること、
(c)上記実質的に円形状に配向されたピークデータが上記画像内に現れる際に当該ピークデータをより良好に確定するように当該実質的に円形状に配向されたピークデータに強度補正を適用すること、
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】入射放射線に曝されているケラチンサンプルを示す図である。
【図2】ケラチンサンプルに向けられた複数の異なるタイプの入射放射線を示す図である。
【図3】所定のエネルギー源からの入射エネルギーに曝されている複数の異なるケラチンサンプルを示す図である。
【図4】図1に開示されている第1の実施形態に従って生成されたデータを分析するのに用いられている複数の異なる分析方法を示す図である。
【図5】図1に開示されている方法に関連して部分的に又は完全に回折している入射放射線に曝されているケラチンサンプルを示す図である。
【図6】図1に開示されているケラチンサンプルを分析する方法に関連して入射放射線を部分的に又は完全に吸収しているケラチンサンプルを示す図である。
【図7】被検体からのサンプルを採取室で適した熟練者が採取することができるか、又は好都合な場所でキットを用いてサンプルによって試験を行うことができる、使用時に行われるケラチンサンプルを分析する方法を示す図である。
【図8】本発明の実施形態によるビームラインレイアウト及び主要な処理工程のブロック図である。
【図9】図8の処理工程の1つに必要とされる3つの異なるセクタの1次元データプロットの一例を示す図である。
【図10】2つの異なる画像処理プロトコルから得られた画像の比較を示す図である。
【図11】「正常」体毛から得られた比較パターン、不良サンプルからの「異常」パターン、及び乳癌を示す体毛からのパターンを示す、本発明の実施形態の方法から得られたX線回折パターンを示す図である。
【図12】再現性を示す複数のパターンを示す図である。
【図13】本発明の実施形態による向上した方法が後に行われることによる比較パターンを示す図である。
【図14A】動物(タスマニアデビル)における疾患の検出に使用する際の方法の一例を示す図である。
【図14B】動物(タスマニアデビル)における疾患の検出に使用する際の方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[好適な実施形態の詳細な説明]
定義:
「放射」:点又は面から真っすぐに進むこと、
「哺乳動物種」は、本明細書の本文に見られるような種のタイプを含む。哺乳動物種としてはヒト、イヌ若しくはネコ等のペット、又は様々な他の動物が挙げられ得る。
「エネルギー源」は、本明細書の本文で見られるようなエネルギーのタイプを含む。
「ケラチンサンプル」又は「ケラチン物質」は実質的にケラチンから成るサンプルである。ケラチンサンプル又はケラチン物質としては概して、ヒトの頭髪若しくは体毛、及び特に陰毛、ペット毛、動物毛、又は哺乳動物種からの体毛、或いは爪の切り屑又は睫等の他のケラチン系材料が挙げられ得る。
「被検体」は哺乳動物種の個々の成員である。哺乳動物種としてはヒト、イヌ若しくはネコ等のペット、ウシ等の家畜、及び体毛を有するいずれもの他の動物が挙げられ得る。
【0020】
特許請求の範囲に記載の本発明に関連する複数の異なる選択及び形態は、本明細書の本文に見られるような選択及び形態を含む。
【0021】
文脈で別記に示さない限り、1つの要素に対する一クレームは少なくとも1つの要素に対する一クレームに一致する。
【0022】
次に、本発明の実施形態を添付の図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1はケラチンサンプル16を分析する方法を示す。図1は入射エネルギー14を発するエネルギー源12を示す。ケラチンサンプル16は被検体11から採取される。被検体11は哺乳動物種のいずれもの成員を含む。哺乳動物種としてはヒト、イヌ若しくはネコ等のペット、又は/及び体毛を有する他の動物が挙げられ得る。ケラチンサンプル16としては概して、ヒトの頭髪若しくは体毛、及び特に陰毛、ペット毛、動物毛、又は哺乳動物種からの体毛が挙げられ得る。体毛サンプルは単一の体毛繊維又は同じ被検体からの複数の体毛繊維とすることができる。爪の切り屑、動物の爪、蹄、皮膚、又は睫等の他のケラチン系材料を用いてもよい。
【0024】
特定の形態では、単一のサンプルを構成する体毛は最大5本のストランドから成る。さらに特定の形態では、ストランドの束が体毛管内に置かれる。
【0025】
ケラチンサンプル16はエネルギー源12から得られる入射エネルギー14に曝される。ケラチンサンプル16に入射エネルギー14が当たることで生じる、ケラチンサンプル16から放射エネルギー18が得られる。放射エネルギー18の少なくとも一部は、データ22を生成するようにトランスデューサ20に通される。
【0026】
次いで、データ22は、当該データをフィルタし、平均化し、且つ減算する適切なアルゴリズムを用いて処理されたデータ26を生成するように、処理工程23で処理される。
【0027】
本明細書においてさらに説明するように、好適な形態では、処理工程は、(排他的ではないが)より低いQ値での立ち上がり強度データ(rising intensity data)をなくすために、生データの平滑化、及び平滑化された画像からの背景画像の減算を含み得る。
【0028】
処理されたデータ26を参照データベース25のデータ24と比較して、被検体11が病理学的状態を有している可能性があるか否かを判定することができる(例えば、該当する結果が病理学的状態の存在と相関していることを参照データベース25が示す場合、有意義な比較と考えられる。さらに、相関がゼロであることも分析のための有用な情報を与え得る)。
【0029】
図2は、図1で説明した方法の感度又は特異度がエネルギー12を変える方法によって改善される、本発明の一実施形態を示す。図2は、異なるタイプの入射エネルギー14を生成するように示される、E1、E2、...ENである複数の異なるエネルギー源12を示す。
【0030】
図2では、データ22が当該データを参照データベース25のデータ24と比較することによって分析され、ケラチンサンプルを分析する方法の感度又は特異度の改善をもたらすようになっているエネルギー源を上記の組のE1、...ENから選択する。
【0031】
図2のエネルギー源は異なるタイプの電磁放射線を含み得る。代替的に又は付加的に、可視光スペクトルのエネルギー等、同じタイプの電磁放射線を選択することができるが、同じタイプのエネルギー源12に対して新たな可用性を求めてもよい。新たな可用性とは、所定のケラチンサンプル16と関連して方法の特異度又は感度をより高くすることができる、既知のタイプの電磁放射線のこれまで知られていない特性を意味する。
【0032】
電磁放射線の波長又は周波数は、例えば可視光スペクトルから入射エネルギー14を移すことなく変えることができる(より高い特異度又は感度をもたらし得る新たな可用性が特定のサブ範囲の可視光内で求められ得る)。エネルギー源12の周波数、振幅、波長、又は他の可用性の変化は、ケラチンサンプル16を分析する方法の感度又は特異度の改善
をもたらし得る。例えば、青色光が、音波を含む方法よりも感度をより高くすることができる。さらに、エネルギー源12として、以下のタイプのエネルギー源:赤外線放射線、UV放射線、ラマンエネルギー、レーザ放射線、又はX線放射線のうち1つ又は複数が挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0033】
図3は、複数の異なるケラチンサンプル16と関連した所定の動作モードの場合の特定のエネルギー源12の使用を示す。複数の異なるケラチンサンプル16を複数の異なる哺乳動物種(2つ示されているがそれより多くてもよい)から採取することができる。代替的に又は付加的に、複数の異なるケラチンサンプル16を複数の異なる病理学的状態を有する疑いのある被検体から採取することができる。
【0034】
図1で説明したケラチンサンプル16を分析する方法を図3に示す実施形態において再び行って、当該方法に関連して入射放射線14に特定の感受性を示す特定のケラチンサンプル16を選択することで分析方法の感度又は特異度の改善がもたらされる。或るケラチンサンプルが所定の動作形態及び所定のエネルギー源12に関連して方法の特異度又は感度のいずれかの改善をもたらすことが分かっている場合、特定の感受性が生じるであろう。
【0035】
図3に示す複数の異なるケラチンサンプル16は、肺癌、又はクロイツフェルト−ヤコブ病、狂牛病、感染(細菌性、又はプリオン若しくはより一般的には他の感染因子による)、代謝異常(糖尿病又は代替的には肝炎を含み得る)、心疾患、又は肝機能障害のような、1つ又は複数の癌又は病理学的状態を有する疑いのある被検体11から採取したケラチンサンプル16を含み得る。さらに、限定はしないが、ケラチンサンプル16はケラチンタイプI及びケラチンタイプIIを含み得る。
【0036】
図4は、図1に示すようにケラチンサンプル16を分析する方法の一実施形態を示し、ここでは、所定のエネルギー源12を、データ22とデータ24との間の、複数の異なるタイプの比較23の方法と共に所定のケラチンサンプル16と関連して用いて、ケラチンサンプル16を分析する方法の特異度又は感度の改善をもたらすようにする。図4に示す複数の異なる比較23としては、スペクトル分析又はパターン認識コンピュータプログラムの使用を含めた、ケラチンサンプル16を分析する方法の動作モードの以下の変形形態の1つ又は複数(2つ示されているがそれより多くてもよい)が挙げられ得るがこれらに限定されない。複数の異なる比較23は乳癌の存在と一致し得るX線回折に関する異なるパターン(例えばQ=1.32+/−0.02nm-1で完全なリング)を検出する比較を含み得る。
【0037】
図5は、ケラチンサンプル16から必ずしも完全反射しない放射エネルギー18を示す。むしろ、放射エネルギー18は部分的に又は完全に回折することができる。
【0038】
回折した放射エネルギー18から引き出されたデータ22は、ケラチンサンプル16を分析する方法の特異度又は感度の改善をもたらすように、図1に示すケラチンサンプル16を分析する方法を用いて分析することができる。
【0039】
図6は、部分的に又は完全に吸収されることができる入射放射線14を示す。吸収の程度により、引き出されるデータ22がもたらされるか又はデータ22がもたらされない場合があり、このことは被検体11における病理学的状態の存在に一致し得る。図6に見られる実施形態に関連した引き出されたデータ22を用いて、図1に開示されたケラチンサンプルを分析する方法の感度又は特異度を改善することができる。
【0040】
使用時
図7は使用時の本発明の一実施形態を示す。
【0041】
図7では、被検体11は薬局32に行ってケラチンサンプル16を提供することができる。次いで、図1に見られるようにケラチンサンプル16を分析する方法を行うためにケラチンサンプル16が試験室34に送られる。
【0042】
付加的に、試験キット33を入手して、都合の良い場所(例えば自宅、診療所、農場又は家畜小屋)で被検体からケラチンサンプル16を採取してもよく、図1に見られるようにケラチンサンプル16を分析する方法を行うために当該サンプルを試験室34に送ることができる。
【0043】
代替的に、被検体11をヘルスケア又は獣医クリニック38に運んでケラチンサンプル16を提供してもよい。クリニック38はケラチンサンプル16を分析する方法を行うか又は試験室34にケラチンサンプルを送ることができる。
【0044】
さらなる実施形態
好適な画像分析方法を試み、それを以下に説明する:
【0045】
サンプル採取及び取扱い
長さが少なくとも30mmの体毛サンプル(頭髪及び/又は陰毛)を乳房X線像のためにオーストラリアの放射線科クリニックに回された女性から採取した。ここ6週間以内に頭髪を染めたか又は化学的処置(例えばパーマネントウェーブ)を行っている場合の、及び、各自の陰毛を得ることができないか、又は5年以内に乳癌歴若しくは他の癌歴(非黒色腫皮膚癌及びCIN:子宮頸部上皮内腫瘍は除く)がある場合の女性は除外した。19本の盲検体毛(blinded-hair:盲検化された体毛)サンプルをクリニックで採取し、これらサンプルを、乳癌を有すると診断された女性からの14本のサンプル及びマンモグラフィによって陰性と推定された女性からの6本のサンプルと共にこの試験で分析した。
【0046】
頭髪を頭髪の生え際近くの、耳の後ろの領域5から採取し、可能な限り皮膚の近くで切除した。採取したサンプルが環境因子から最小限のダメージしか有しないことを確実にするようにこれを行った。陰毛もまた可能な限り皮膚の近くで切除し、全ての体毛サンプルをプラスチックの試料容器内に保管した。
【0047】
被検体の全ての医病歴をクリニックでファイルに保管した。
【0048】
シンクロトロン小角X線散乱(SAXS)分析には、細い鉗子を用いて容器から単一体毛を丁寧に取り出し、個々の体毛繊維を保持することが可能な特別に設計されたサンプルホルダに載せることが必要であった。これらのホルダは細いばねを用いて繊維及びピンを把持し、X線ビームに対して適切な向きに繊維を置く。それが確認されると、繊維のカット端が先に、ホルダの一方の側のばねのコイルを開いてコイル間に繊維を置くことによって載せられる。次いで、ばねを弛緩し、繊維をクランプ固定した。次いで対向するばねのコイルを開いて繊維のルーズ端(loose end:繊維がばら状の端)をコイルに挿入した。体毛を位置決めピンに隣接して配置し、次いでばねを丁寧に解放した。繊維が載置中に捩れないこと又は伸縮によって損傷を受けないことを確実にするように載置プロセスに多大な注意を払った。載せられると、解剖ステレオ顕微鏡(dissecting stereo microscope)下で体毛を試験した。
【0049】
X線回折
シンクロトロンSAXS実験をアルゴンヌ国立研究所(アメリカ合衆国)の高度光子源で行った。
【0050】
分析を、ビームライン18−ID(BioCAT)及び15−ID(ChemMatCARS)を用いて行った。
【0051】
BioCAT実験のビーム特性は垂直方向に70ミクロン、水平方向に200ミクロン、波長A=1.03オングストロームであった。体毛を体毛の軸により平行面内にゼロの入射角で取り付けた。ビーム内でのサンプルの最適な位置はCCD検出器(Aviex Electronics(アメリカ合衆国))の使用によって測定した。繊維をX線に2秒間曝して、繊維がビーム内で中央に位置しているかを示す特性特徴について評価した。最適に配置されると、繊維はX線に約20秒間曝され、回折画像が、約190mm×240mmの活性領域を有するFuji BAS I11画像プレート上に集まった。サンプルと検出器との間のスペースが真空下に保持されて空気散乱を低減し、この距離はベヘン酸銀の散乱パターンの分析によって959.4mmと測定された。
【0052】
ChemMatCARS実験に用いたビーム特性は垂直方向に300マイクロメートル、水平方向に500マイクロメートルであり、用いた波長はA=1.50オングストロームであった。これが変化してサンプルにおいてビーム束が下がり、したがって、サンプルの曝露が長くなったが、体毛がX線ビームに完全に包囲されていたため、サンプルの位置決めを容易にした。体毛サンプルはX線源に60秒間曝され、回折画像がMAR345検出器に集められた。サンプルと検出器との間のスペースは真空下に保持されて空気散乱を低減し、この距離はベヘン酸銀の散乱パターンの分析によって635.8mmと測定された。
【0053】
画像分析
回折画像をFIT2D及びSaxs15IDソフトウェアパッケージを用いて分析した。双方のプログラムは、データ削減及び次の分析を行うことが必要とされるデータ操作及び平滑化ルーチンを提供する。これらのパッケージから抽出された1次元データをスペクトルビューワソフトウェアパッケージを用いて可視化及び分析した。
【0054】
2つの方法及びパラメータを用いて平滑化及び次の背景除去によってSAXS画像を向上させた。以下で「標準プロトコル」と呼ぶ第1の方法及びパラメータは、James著の一刊行物(参照: WiIk K, James V, and Amemiya Y. Intermediate Filament Structure of Human Hair. Biophysica Biochimica Acta. 1995;1245: 392-396)にしか記載されていないことが知られている。Jamesによる刊行物以外は、癌の存在を検出するのに用いられる生SAXSデータ及びパラメータの処理方法の完全なレシピを記載しているものはない。SAXS画像から乳癌の発症を求めるのに単独の観察者が用いることができる完全な方法を載せている刊行物はこれまでなかった。(Jamesの刊行物が)初めて刊行されてからというもの、とにかく、Jamesによる、SAXS画像を処理するのに用いられるパラメータ及び方法が発展しているか否かは分かっていないが、SAXS画像20を処理して乳癌を診断する完全な方法の明確且つ詳細な説明は依然として公開されていない。簡潔に述べると、生SAXS画像の平滑化は、3×3画素ボックスの中心画素の値を、そのボックスに対して計算された平均値に置換することによって達成される。背景画像は上記と同様にして、ただし20×20画素ボックスで平滑化した画像をぼかすことによって作成される。乳癌の診断に用いられる画像は、作成された背景画像を平滑化画像から減算することによって生成される。背景補正(background correction:バックグラウンド補正)の目的は、元の画像内にある特徴のいずれも妥協することなくより低いQ値での立ち上がり強度をなくすことである。FIT2Dはユーザに利用可能な2つの異なる平滑化機能、すなわち「平滑化」及び「メディアン(median:中央値平滑化)」を有する。
【0055】
この試験過程では、本発明者らは生データを平滑化するように、且つ、平滑化データから減算されると元の画像に低強度で存在している重要な特徴を除去しない又は遮ることの
ない背景画像を生成するように試みる代替的な背景補正プロトコルを開発した。SAXS画像は最初に、3×3画素「メディアン」フィルタ操作を用いて平滑化され、これによりわずかな特徴も損失することなく平滑化させ、その後、50×50画素「平均化」を行って平滑化画像から背景を作成した。本発明者らはこれを「代替プロトコル」と呼ぶ。
【0056】
図8を参照すると、本発明の好適な実施形態による画像処理工程と共に典型的なビームラインレイアウトがブロック形態で示されている。
【0057】
この例では、波長Aを有すると共に幅X及び高さYを有するX線ビーム40が体毛サンプル41に向けられ、その結果の回折画像42がサンプル41から距離Zにあるプレート43に現れている。特定の好適な形態では、サンプル41とプレート43との間に画定される体積が、散乱を最小限にとどめるように少なくとも部分真空内に維持される。
【0058】
回折画像42をデジタル化し、平滑化アルゴリズム44の適用後に平均化アルゴリズム45を適用する。次いで、1次元スライス46がプレート43の面内の元の回折画像から引き出された選択セクタ47に沿って取られる。
【0059】
特定の非限定的な一形態では、A=1.03オングストローム、X=200ミクロン、Y=70ミクロン、及びZ=959mmである。
【0060】
例えば図9に示すような1次元データを各SAXS画像から抽出して、画像内の特徴の正確な間隔を測定した。これは2つの異なる方法によって達成された。第1の方法は、画像の中心から経線面に沿って延びる単一ラインに沿って0度、60度、120度、180度、240度、及び300度で強度データを抽出することであった。このプロセスを用いて、SAXS画像内にリングが存在する場合に、強度データが適切な場所での、且つ4つの全ての四分円からのデータの分析からのピークを示し、且つその円形性が確立され得ることを確実にした。
【0061】
乳癌の存在を示すリングの近似間隔ではかすかな特徴しか示さなかったSAXS画像には、上記のデータ抽出の方法に対して修正を用いた。これらの場合では、強度データを、複数の場所の5度のセクタを上記経線に統合する(integrating)ことによって抽出した。これは、弱いデータの背景雑音に対して信号レベルの増大を試みるように行った。次に図10を参照する:
【0062】
乳癌のSAXSパターンの確定−第1の試行
画像処理に標準プロトコルを用いて、本発明者らは、確定された間隔(Q=1.33nm-1;より好ましくはQ=1.32+/−0.02nm-1)で14本の陽性対照のうち13本に、乳癌の存在に相関するリングを確認することができた。
【0063】
マンモグラフィによって陰性と推定されたサンプルはいずれも、それらの各SAXSパターンにおいてその間隔でリングを示さなかった。各SAXSパターンから抽出された1次元データには上記所見が確認された。次いで、標準プロトコルを用いて、放射線科クリニックで採取した盲検サンプルを評価した。被検体の病状と、標準プロトコルを用いた分析結果とを表1に示す。この表に提示された情報から、採取した19本のサンプルのうち1本だけが、乳癌が確認された女性からのものであることが分かる。この特定のサンプルに対する、標準プロトコルを用いたSAXSパターンの分析により、対象のゾーン内に非常にぼやけたわずかに楕円状のリングのみを有する画像が生成された。この画像から抽出した1次元データはリングの存在を示しているが、背景との差がはっきりとしていないため、陰性として示された。サンプルの非盲検化後、この結果は偽陰性として分類された。他のサンプルのうち、3つが対象のゾーン内にリングを示し、陽性を示し、別のものは対
象のゾーン内にリングを示し、異常の証拠を示したが依然として陽性を示した。その他のサンプルは陰性と断定された。
【0064】
標準プロトコルを用いて生成されたSAXS分析結果から、画像処理にJamesが用いている、開示されている方法及びパラメータはかすかな特徴及び/又は散乱した特徴を含む画像に適していないことが明白であった。次に、本発明者らは、対象の領域においてわずかであるが有意な情報が画像処理の結果として失われないことを確実にするようにデータ削減の代替プロトコルを用いて画像を再分析した。
【0065】
代替プロトコルと共にFit2D及びSax15IDを用いて、陽性対照サンプルを再評価した。これらの結果、及び抽出された1次元データから、本発明者らは、乳癌の存在に相関するリングの間隔をQ=1.32+/−0.02nm-1と測定した。平均+/−2SDを主要な定量的基準として適用して、対象のゾーンを画定した。代替プロトコルの使用により、標準プロトコルの画像に比して質のよいより詳細なSAXS画像が生成された。図9A及び図9Bは、標準プロトコル及び代替プロトコルを、それぞれ陰性を示した後に偽陰性として分類されたサンプルに適用することにより得られた画像である。図9Bに見られるように、ここではかすかな散乱リングを見ることができる。この画像から抽出された1次元データは、リングがQ=1.32±0.02nm-1(d=4.76+/−0.07nm)の近似間隔を有すると確定した。したがって、画像削減の代替プロトコルにより、散乱した低強度情報が観察される場合よりもより詳細で質のよいデータが生成された。
【0066】
【表1−1】
【表1−2】
【0067】
乳癌SAXSパターンの確定−第2の試行
サンプル採取及び取扱い
72本の体毛サンプル(頭髪及び/又は陰毛)を乳房X線像のためにオーストラリア放射線科クリニックに回された女性から採取した。サンプルコレクション及び被検体情報に関する倫理認定が登録倫理委員会によって試みられ付与された。女性達は、インフォームドコンセントを自ら提供することができると共に長さが少なくとも30mmの有用な頭髪又は陰毛がある場合に、体毛サンプルを提供することができた。ここ6週間内に頭髪を染めているか若しくは化学的処置(パーマネントウェーブ等)を行っている場合、及び、陰毛を得ることができない場合、又は5年以内の乳癌歴若しくは他の癌歴(非黒色腫皮膚癌及びCIN:子宮頸部上皮内腫瘍を除く)がある場合の女性は除外した。シンクロトロンが利用可能なときに19本の盲検体毛サンプルをクリニックで採取し、これらサンプルを、乳癌を有すると診断された女性からの14本のサンプル及びマンモグラフィによって陰性と推定された女性からの6本のサンプルと共にこの試験において分析した。
【0068】
頭髪を頭髪の生え際近くの、耳の後ろの領域から採取し、可能な限り皮膚の近くで切除した。採取したサンプルが環境因子から最小限のダメージしか有しないことを確実にするようにこれを行った。陰毛もまた可能な限り皮膚の近くで切除し、全ての体毛サンプルをプラスチックの試料容器内に保管した。
【0069】
サンプルを放射線科クリニックにて一意な識別番号でコード化し、そのコード以外の他の識別情報を有しないように「盲検処理」として提供した。被検体の全ての医病歴をクリニックでファイルに保管した。単一体毛を細い鉗子を用いて容器から丁寧に取り出し、10本の個々の体毛繊維を保持することが可能な特別に設計されたサンプルホルダに載せた(図1)。
【0070】
シンクロトロンSAXS実験をアルゴンヌ国立研究所(アメリカ合衆国)の高度光子源で行った。
【0071】
分析を、15−ID(ChemMatCARS)ビームラインを用いて行った。
【0072】
15−ID(ChemMatCARS)は一方向にしか集光を可能としない光学素子を有する。このビームラインの実験に用いられるビームサイズは垂直方向に300ミクロンであり、水平
方向に500ミクロンであり、スリットの使用によって画定される。用いた波長は0.150nmであった。体毛サンプルはX線源に60秒間曝され、回折画像はMAR345検出器に集められた。サンプルと検出器の間のスペースは真空下に保持され、サンプルから検出器までの距離は上記の較正基準を用いて635.8mmと測定された。
【0073】
画像分析
回折画像をFIT2Dソフトウェア(FIT2Dは汎用として、且つEuropean Synchrotron Research Facility beam- linesから入手可能な且つそれを通じて使用される特に1次元及び2次元データ分析プログラムとして説明される)及びSaxs15IDソフトウェア(Cookson, DJ (2005) "Saxsl5ID Software for acquiring, processing and viewing SAXS/WAXS image data at ChemMatCARS"を参照)を用いて分析した。
【0074】
双方のプログラムは、データ削減及び次の分析を行うことが必要とされるデータ削減及び平滑化ルーチンを提供する。Jamesによる先の試験では、SAXS画像は天文学ソフトウェアパッケージIRAF及びSAOを用いて分析したが、Jamesは同様の結果がFIT2Dソフトウェアを用いて付随物により得られたと述べている(James V, Corino G/ Robertson T, Dutton N, Halas D, Boyd A, Bentel J, Papadimitriou J. Early diagnosis of breast cancer by hair diffraction. Int J Cancer. 2005; 114 : 969-972を参照)。
【0075】
これらのパッケージから抽出された1次元データを、スペクトルビューワを用いて可視化及び分析した(スペクトルビューワ:XYグラフのXY−プロットを、又は2D強度プロットとして読み取って表示)。スペクトルビューワはアイントホーヘン工科大学応用物理学部(オランダ)(Department of Applied Physics at Eindhoven Technical University(Netherlands))から入手可能である。
【0076】
「代替プロトコル」を用いて、平滑化及び次の背景除去によってSAXS画像を向上させた。SAXS画像は最初に、3×3画素「メディアン」フィルタ操作を用いて平滑化し、これによりわずかな特徴を損失することなく平滑化させ、その後、50×50画素「平均化」を行って平滑化画像から背景を作成した。
【0077】
1次元データを各SAXS画像から抽出して画像内の特徴の正確な間隔を測定した。これは2つの異なる方法によって達成された。始めに、画像の中心から経線面に沿って延びる単一ラインに沿って、0度、60度、120度、180度、240度、及び300度で強度データを抽出することであった。このプロセスを用いて、SAXS画像内にリングが存在する場合に、強度データが適切な場所での、且つ4つの全ての四分円からのデータの分析からのピークを示し、且つその円形性が確立され得ることを確実にした。乳癌の存在を示すリングの近似間隔でかすかな特徴を示したSAXS画像には、上記のデータ抽出の方法に対して修正を用いた。これらの場合では、強度データは複数の場所の50のセクタを上記経線に統合することによって抽出した。これは、弱いデータの背景雑音に対して信号レベルの増大を試みるように行った。
【0078】
結果
19本のサンプルはマンモグラフィによると陽性であり、続けて生検を行った。これらの19本のうち、10本が乳癌に関して陰性であることが病状によって分かった。体毛による試験ではこれらの10本のうち9本を陰性としてピックアップした。したがって、1本が偽陽性であった。
【0079】
浸潤癌と確認されたことが分かった9例のうち、6つが体毛X線回折を用いて陽性であり、3つが外れであった。次に、これらのサンプルには永久的に染められている証拠があ
り、再成長はわずかしかないことが分かった。
【0080】
【表2】
【0081】
体毛のX線回折を用いた試験の結果陽性であったが、マンモグラフィによって乳癌について陰性であると推定された13本のサンプルがあった。
【0082】
図11、図12、図13は上記の方法を用いて得られた典型的な回折パターンを示す。
【0083】
図9は図11Cに示すX線回折パターンから抽出された1次元データのプロットである。このデータは、矢印で示すように乳癌の存在と一致する間隔(Q=1.31nm-1)でピークがあることを示す。
【0084】
図10は、乳癌を有することが確認された被検体からの繊維に対する2つの異なる画像処理プロトコルの比較である。
【0085】
図10Aは標準プロトコルを用いて処理したX線回折パターンである。このリングは対象の領域においてわずかにしか見えない。
【0086】
図10Bは、「図10A」と同じであるが代替プロトコルを用いて処理されたデータ10のX線回折パターンである。このプロトコルを用いると対象の領域内のリングがはっきりと見える。
【0087】
図11Aは、α−ケラチンの中間径フィラメント構造の46.7nm格子の7次、19次、及び38次の経線アーク、及び離散点として見られる赤道特徴(ES)を示す、正常な体毛のX線回折パターンである。
【0088】
図11Bは、「異常」パターンの典型的な例を示すX線回折パターンである。これは、Q=1.37nm-1の間隔での広い1次リング(矢印で示す)、さらにかすかな2次リング及び3次リング(これらもまた矢印で示されている)の存在を特徴とする。この1次リングは典型的に、回折パターン内の最大強度を有する特徴であり、全体にわたって均一な強度を有する。典型的に、赤道付近の離散点は区別不可能であり、経線アークの強度が低減している。
【0089】
図11Cは、Q=1.32nm-1の間隔(矢印で示す)で十分にはっきりとしたリングを示す、乳癌を有する個人からの体毛のX線回折パターンであり、このパターンは経線特徴よりも強度が低く、赤道点を通る際に強度がより大きくなっている。7次、19次、及
び38次ははっきりと見えることに留意されたい。
【0090】
図12は、同じヒト被検体からの異なる体毛繊維のX線回折パターンを示し、X線回折画像化の再現性を実証している。
【0091】
図12A〜図12Dは、一貫したα−ケラチンパターンを示す異なる繊維から得られたパターンである。
【0092】
図13は、本発明の実施形態による以下の向上した方法から得られる比較パターンを示す。
【0093】
図14は、タスマニアデビル(Sarcophilus laniarius)からの体毛繊維のX線回折パターンを示す。図14Aは健康な動物からの回折パターンである一方、図14Bは疾患動物からの体毛のものである。相違点は、矢印によってマークされている赤道領域に認められ得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の病理学的状態の診断試験の感度及び特異性を改善するように、被検体からのケラチンサンプルを分析する方法であって、エネルギー源から得られる入射エネルギーにケラチンサンプルを曝すこと、ケラチンサンプルに入射エネルギーが当たることで生じる、ケラチンサンプルからの放射エネルギーを受け取ること、ケラチンサンプルから受け取った放射エネルギーの少なくとも一部を、データを引き出すようにトランスデューサに通すこと、引き出されたデータを処理すること、及び処理されたデータを参照データベース内にある第2の群のデータと比較することであって、第2の群のデータは被検体の病理学的状態の存在と一致する、比較することを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの病理学的状態はそれらのライフサイクルの特定のステージで検出可能であろう。しかしながら多くの場合、この段階は病理学的状態のライフサイクルの晩期である可能性があり、そのため、病理学的状態が早期段階で検出された場合に得られたであろう被検体の予後よりも良くない。このような状況は、多くの場合に早期検出が被検体の生存の可能性を著しく高める可能性のある癌の場合に特に顕著である。
【0003】
標準試験に比して、診断試験の感度の改善又は特異度の改善は多くの場合、被検体の罹患率及び死亡率の低減に結びつき得る。
【0004】
定義では感度とは、病理学的状態のライフサイクルの或る段階での特定の病理学的状態の存在を検出する試験の能力を意味し、例えば、まだ浸潤性でない癌の存在を検出する試験が、癌が浸潤性となった場合にしか癌の存在を明らかにしない試験よりも感度が高い試験である。特異度とは、所定の試験結果に関連する考えられ得る範囲の病理学的状態の範囲を絞る試験の能力を意味し、例えば、1つの癌を示唆する試験が、試験の陽性結果と一致しているものとして3つの考えられ得る癌を示唆する試験よりも特異度が高い。他の試験は、病理学的状態の存在に対する特異度も感度もないものもあり、そのため、病理学的状態の存在を示さないか、又はせいぜい不確定な結果を生む。病理学的状態の存在について確定的な結果を全く生まない試験は全く感度がない(すなわち感度値がゼロ)と言えるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、癌又は病理学的状態の治療において依然としてある課題は概して、病理学的状態の試験の感度、特異度及び確定性を改善することである。
【0006】
本発明の一目的は、上記欠点のいくつかに対処するか又は少なくとも改善することである。
【0007】
注記
1. 「備える」という用語(及びその文法的な変形語)は本明細書では「有する」又は「含む」という包括的な意味で用いられ、「のみから成る」という排他的な意味では用いられない。
2.本発明の背景技術における従来技術の上記説明は、本明細書において説明されているいかなる情報も引用可能な従来技術であること、又はいずれもの国の当業者の共通の一般知識の一部であることを認めるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[発明の概説]
本発明の1つの広い形態では、被検体の病理学的状態に関連する診断試験の感度及び特異度を改善するように被検体からのケラチンサンプルを分析する方法であって、
a)エネルギー源から得られる入射エネルギーにケラチンサンプルを曝すこと、
b)ケラチンサンプルに入射エネルギーが当たることで生じる、ケラチンサンプルからの放射エネルギーを受け取ること、
c)ケラチンサンプルから受け取った放射エネルギーの少なくとも一部を、データを引き出すようにトランスデューサに通すこと、
d)引き出されたデータを適切なアルゴリズムを用いて処理すること、及び
e)そのようにして得られた前記処理された被検体特異的データを、参照データベースの、前記被検体の前記病理学的状態の存在と一致する第2の群の参照データと比較すること、を含む方法が提供される。好ましくは、第2の群のデータは被検体の病理学的状態の存在に相関する。
【0009】
好ましくは、第2の群のデータは被検体の病理学的状態の存在を示す。
【0010】
好ましくは、エネルギー源は複数の異なるエネルギー源から選択される。
【0011】
好ましくは、ケラチンサンプルは複数の異なるケラチンサンプルから選択される。
【0012】
好ましくは、第2の群のデータは複数の異なるデータ群のデータから選択される。
【0013】
好ましくは、引き出されたデータは複数の異なる数学的方法論を用いて処理される。
【0014】
好ましくは、処理されたデータ及び第2の群のデータは複数の異なる比較方法を用いて分析される。
【0015】
好ましくは、入射エネルギーの少なくとも一部はケラチンサンプルによって吸収される。
【0016】
好ましくは、使用時、ケラチンサンプルは薬局、試験キット、被検体の自宅、ヘルスケアクリニック、及び試験室のうち少なくとも1つに関連して入手及び分析されることができる。
【0017】
本発明のさらに広い形態では、上記に記載されるような方法において引き出されたデータを分析する方法であって、当該データは上記トランスデューサから得られた画像の画像データの形態であり、当該分析する方法は、
(a)上記画像内の特徴の間隔を確定するように当該画像内の所定の経路に沿って1次元データを抽出すること、
(b)上記1次元データの分析から、上記画像の中心点を中心として実質的に円形状に配向されたピークデータを確定すること、
(c)上記実質的に円形状に配向されたピークデータが上記画像内に現れる際に当該ピークデータをより良好に確定するように当該実質的に円形状に配向されたピークデータに強度補正を適用すること、
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】入射放射線に曝されているケラチンサンプルを示す図である。
【図2】ケラチンサンプルに向けられた複数の異なるタイプの入射放射線を示す図である。
【図3】所定のエネルギー源からの入射エネルギーに曝されている複数の異なるケラチンサンプルを示す図である。
【図4】図1に開示されている第1の実施形態に従って生成されたデータを分析するのに用いられている複数の異なる分析方法を示す図である。
【図5】図1に開示されている方法に関連して部分的に又は完全に回折している入射放射線に曝されているケラチンサンプルを示す図である。
【図6】図1に開示されているケラチンサンプルを分析する方法に関連して入射放射線を部分的に又は完全に吸収しているケラチンサンプルを示す図である。
【図7】被検体からのサンプルを採取室で適した熟練者が採取することができるか、又は好都合な場所でキットを用いてサンプルによって試験を行うことができる、使用時に行われるケラチンサンプルを分析する方法を示す図である。
【図8】本発明の実施形態によるビームラインレイアウト及び主要な処理工程のブロック図である。
【図9】図8の処理工程の1つに必要とされる3つの異なるセクタの1次元データプロットの一例を示す図である。
【図10】2つの異なる画像処理プロトコルから得られた画像の比較を示す図である。
【図11】「正常」体毛から得られた比較パターン、不良サンプルからの「異常」パターン、及び乳癌を示す体毛からのパターンを示す、本発明の実施形態の方法から得られたX線回折パターンを示す図である。
【図12】再現性を示す複数のパターンを示す図である。
【図13】本発明の実施形態による向上した方法が後に行われることによる比較パターンを示す図である。
【図14A】動物(タスマニアデビル)における疾患の検出に使用する際の方法の一例を示す図である。
【図14B】動物(タスマニアデビル)における疾患の検出に使用する際の方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[好適な実施形態の詳細な説明]
定義:
「放射」:点又は面から真っすぐに進むこと、
「哺乳動物種」は、本明細書の本文に見られるような種のタイプを含む。哺乳動物種としてはヒト、イヌ若しくはネコ等のペット、又は様々な他の動物が挙げられ得る。
「エネルギー源」は、本明細書の本文で見られるようなエネルギーのタイプを含む。
「ケラチンサンプル」又は「ケラチン物質」は実質的にケラチンから成るサンプルである。ケラチンサンプル又はケラチン物質としては概して、ヒトの頭髪若しくは体毛、及び特に陰毛、ペット毛、動物毛、又は哺乳動物種からの体毛、或いは爪の切り屑又は睫等の他のケラチン系材料が挙げられ得る。
「被検体」は哺乳動物種の個々の成員である。哺乳動物種としてはヒト、イヌ若しくはネコ等のペット、ウシ等の家畜、及び体毛を有するいずれもの他の動物が挙げられ得る。
【0020】
特許請求の範囲に記載の本発明に関連する複数の異なる選択及び形態は、本明細書の本文に見られるような選択及び形態を含む。
【0021】
文脈で別記に示さない限り、1つの要素に対する一クレームは少なくとも1つの要素に対する一クレームに一致する。
【0022】
次に、本発明の実施形態を添付の図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1はケラチンサンプル16を分析する方法を示す。図1は入射エネルギー14を発するエネルギー源12を示す。ケラチンサンプル16は被検体11から採取される。被検体11は哺乳動物種のいずれもの成員を含む。哺乳動物種としてはヒト、イヌ若しくはネコ等のペット、又は/及び体毛を有する他の動物が挙げられ得る。ケラチンサンプル16としては概して、ヒトの頭髪若しくは体毛、及び特に陰毛、ペット毛、動物毛、又は哺乳動物種からの体毛が挙げられ得る。体毛サンプルは単一の体毛繊維又は同じ被検体からの複数の体毛繊維とすることができる。爪の切り屑、動物の爪、蹄、皮膚、又は睫等の他のケラチン系材料を用いてもよい。
【0024】
特定の形態では、単一のサンプルを構成する体毛は最大5本のストランドから成る。さらに特定の形態では、ストランドの束が体毛管内に置かれる。
【0025】
ケラチンサンプル16はエネルギー源12から得られる入射エネルギー14に曝される。ケラチンサンプル16に入射エネルギー14が当たることで生じる、ケラチンサンプル16から放射エネルギー18が得られる。放射エネルギー18の少なくとも一部は、データ22を生成するようにトランスデューサ20に通される。
【0026】
次いで、データ22は、当該データをフィルタし、平均化し、且つ減算する適切なアルゴリズムを用いて処理されたデータ26を生成するように、処理工程23で処理される。
【0027】
本明細書においてさらに説明するように、好適な形態では、処理工程は、(排他的ではないが)より低いQ値での立ち上がり強度データ(rising intensity data)をなくすために、生データの平滑化、及び平滑化された画像からの背景画像の減算を含み得る。
【0028】
処理されたデータ26を参照データベース25のデータ24と比較して、被検体11が病理学的状態を有している可能性があるか否かを判定することができる(例えば、該当する結果が病理学的状態の存在と相関していることを参照データベース25が示す場合、有意義な比較と考えられる。さらに、相関がゼロであることも分析のための有用な情報を与え得る)。
【0029】
図2は、図1で説明した方法の感度又は特異度がエネルギー12を変える方法によって改善される、本発明の一実施形態を示す。図2は、異なるタイプの入射エネルギー14を生成するように示される、E1、E2、...ENである複数の異なるエネルギー源12を示す。
【0030】
図2では、データ22が当該データを参照データベース25のデータ24と比較することによって分析され、ケラチンサンプルを分析する方法の感度又は特異度の改善をもたらすようになっているエネルギー源を上記の組のE1、...ENから選択する。
【0031】
図2のエネルギー源は異なるタイプの電磁放射線を含み得る。代替的に又は付加的に、可視光スペクトルのエネルギー等、同じタイプの電磁放射線を選択することができるが、同じタイプのエネルギー源12に対して新たな可用性を求めてもよい。新たな可用性とは、所定のケラチンサンプル16と関連して方法の特異度又は感度をより高くすることができる、既知のタイプの電磁放射線のこれまで知られていない特性を意味する。
【0032】
電磁放射線の波長又は周波数は、例えば可視光スペクトルから入射エネルギー14を移すことなく変えることができる(より高い特異度又は感度をもたらし得る新たな可用性が特定のサブ範囲の可視光内で求められ得る)。エネルギー源12の周波数、振幅、波長、又は他の可用性の変化は、ケラチンサンプル16を分析する方法の感度又は特異度の改善
をもたらし得る。例えば、青色光が、音波を含む方法よりも感度をより高くすることができる。さらに、エネルギー源12として、以下のタイプのエネルギー源:赤外線放射線、UV放射線、ラマンエネルギー、レーザ放射線、又はX線放射線のうち1つ又は複数が挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0033】
図3は、複数の異なるケラチンサンプル16と関連した所定の動作モードの場合の特定のエネルギー源12の使用を示す。複数の異なるケラチンサンプル16を複数の異なる哺乳動物種(2つ示されているがそれより多くてもよい)から採取することができる。代替的に又は付加的に、複数の異なるケラチンサンプル16を複数の異なる病理学的状態を有する疑いのある被検体から採取することができる。
【0034】
図1で説明したケラチンサンプル16を分析する方法を図3に示す実施形態において再び行って、当該方法に関連して入射放射線14に特定の感受性を示す特定のケラチンサンプル16を選択することで分析方法の感度又は特異度の改善がもたらされる。或るケラチンサンプルが所定の動作形態及び所定のエネルギー源12に関連して方法の特異度又は感度のいずれかの改善をもたらすことが分かっている場合、特定の感受性が生じるであろう。
【0035】
図3に示す複数の異なるケラチンサンプル16は、肺癌、又はクロイツフェルト−ヤコブ病、狂牛病、感染(細菌性、又はプリオン若しくはより一般的には他の感染因子による)、代謝異常(糖尿病又は代替的には肝炎を含み得る)、心疾患、又は肝機能障害のような、1つ又は複数の癌又は病理学的状態を有する疑いのある被検体11から採取したケラチンサンプル16を含み得る。さらに、限定はしないが、ケラチンサンプル16はケラチンタイプI及びケラチンタイプIIを含み得る。
【0036】
図4は、図1に示すようにケラチンサンプル16を分析する方法の一実施形態を示し、ここでは、所定のエネルギー源12を、データ22とデータ24との間の、複数の異なるタイプの比較23の方法と共に所定のケラチンサンプル16と関連して用いて、ケラチンサンプル16を分析する方法の特異度又は感度の改善をもたらすようにする。図4に示す複数の異なる比較23としては、スペクトル分析又はパターン認識コンピュータプログラムの使用を含めた、ケラチンサンプル16を分析する方法の動作モードの以下の変形形態の1つ又は複数(2つ示されているがそれより多くてもよい)が挙げられ得るがこれらに限定されない。複数の異なる比較23は乳癌の存在と一致し得るX線回折に関する異なるパターン(例えばQ=1.32+/−0.02nm-1で完全なリング)を検出する比較を含み得る。
【0037】
図5は、ケラチンサンプル16から必ずしも完全反射しない放射エネルギー18を示す。むしろ、放射エネルギー18は部分的に又は完全に回折することができる。
【0038】
回折した放射エネルギー18から引き出されたデータ22は、ケラチンサンプル16を分析する方法の特異度又は感度の改善をもたらすように、図1に示すケラチンサンプル16を分析する方法を用いて分析することができる。
【0039】
図6は、部分的に又は完全に吸収されることができる入射放射線14を示す。吸収の程度により、引き出されるデータ22がもたらされるか又はデータ22がもたらされない場合があり、このことは被検体11における病理学的状態の存在に一致し得る。図6に見られる実施形態に関連した引き出されたデータ22を用いて、図1に開示されたケラチンサンプルを分析する方法の感度又は特異度を改善することができる。
【0040】
使用時
図7は使用時の本発明の一実施形態を示す。
【0041】
図7では、被検体11は薬局32に行ってケラチンサンプル16を提供することができる。次いで、図1に見られるようにケラチンサンプル16を分析する方法を行うためにケラチンサンプル16が試験室34に送られる。
【0042】
付加的に、試験キット33を入手して、都合の良い場所(例えば自宅、診療所、農場又は家畜小屋)で被検体からケラチンサンプル16を採取してもよく、図1に見られるようにケラチンサンプル16を分析する方法を行うために当該サンプルを試験室34に送ることができる。
【0043】
代替的に、被検体11をヘルスケア又は獣医クリニック38に運んでケラチンサンプル16を提供してもよい。クリニック38はケラチンサンプル16を分析する方法を行うか又は試験室34にケラチンサンプルを送ることができる。
【0044】
さらなる実施形態
好適な画像分析方法を試み、それを以下に説明する:
【0045】
サンプル採取及び取扱い
長さが少なくとも30mmの体毛サンプル(頭髪及び/又は陰毛)を乳房X線像のためにオーストラリアの放射線科クリニックに回された女性から採取した。ここ6週間以内に頭髪を染めたか又は化学的処置(例えばパーマネントウェーブ)を行っている場合の、及び、各自の陰毛を得ることができないか、又は5年以内に乳癌歴若しくは他の癌歴(非黒色腫皮膚癌及びCIN:子宮頸部上皮内腫瘍は除く)がある場合の女性は除外した。19本の盲検体毛(blinded-hair:盲検化された体毛)サンプルをクリニックで採取し、これらサンプルを、乳癌を有すると診断された女性からの14本のサンプル及びマンモグラフィによって陰性と推定された女性からの6本のサンプルと共にこの試験で分析した。
【0046】
頭髪を頭髪の生え際近くの、耳の後ろの領域5から採取し、可能な限り皮膚の近くで切除した。採取したサンプルが環境因子から最小限のダメージしか有しないことを確実にするようにこれを行った。陰毛もまた可能な限り皮膚の近くで切除し、全ての体毛サンプルをプラスチックの試料容器内に保管した。
【0047】
被検体の全ての医病歴をクリニックでファイルに保管した。
【0048】
シンクロトロン小角X線散乱(SAXS)分析には、細い鉗子を用いて容器から単一体毛を丁寧に取り出し、個々の体毛繊維を保持することが可能な特別に設計されたサンプルホルダに載せることが必要であった。これらのホルダは細いばねを用いて繊維及びピンを把持し、X線ビームに対して適切な向きに繊維を置く。それが確認されると、繊維のカット端が先に、ホルダの一方の側のばねのコイルを開いてコイル間に繊維を置くことによって載せられる。次いで、ばねを弛緩し、繊維をクランプ固定した。次いで対向するばねのコイルを開いて繊維のルーズ端(loose end:繊維がばら状の端)をコイルに挿入した。体毛を位置決めピンに隣接して配置し、次いでばねを丁寧に解放した。繊維が載置中に捩れないこと又は伸縮によって損傷を受けないことを確実にするように載置プロセスに多大な注意を払った。載せられると、解剖ステレオ顕微鏡(dissecting stereo microscope)下で体毛を試験した。
【0049】
X線回折
シンクロトロンSAXS実験をアルゴンヌ国立研究所(アメリカ合衆国)の高度光子源で行った。
【0050】
分析を、ビームライン18−ID(BioCAT)及び15−ID(ChemMatCARS)を用いて行った。
【0051】
BioCAT実験のビーム特性は垂直方向に70ミクロン、水平方向に200ミクロン、波長A=1.03オングストロームであった。体毛を体毛の軸により平行面内にゼロの入射角で取り付けた。ビーム内でのサンプルの最適な位置はCCD検出器(Aviex Electronics(アメリカ合衆国))の使用によって測定した。繊維をX線に2秒間曝して、繊維がビーム内で中央に位置しているかを示す特性特徴について評価した。最適に配置されると、繊維はX線に約20秒間曝され、回折画像が、約190mm×240mmの活性領域を有するFuji BAS I11画像プレート上に集まった。サンプルと検出器との間のスペースが真空下に保持されて空気散乱を低減し、この距離はベヘン酸銀の散乱パターンの分析によって959.4mmと測定された。
【0052】
ChemMatCARS実験に用いたビーム特性は垂直方向に300マイクロメートル、水平方向に500マイクロメートルであり、用いた波長はA=1.50オングストロームであった。これが変化してサンプルにおいてビーム束が下がり、したがって、サンプルの曝露が長くなったが、体毛がX線ビームに完全に包囲されていたため、サンプルの位置決めを容易にした。体毛サンプルはX線源に60秒間曝され、回折画像がMAR345検出器に集められた。サンプルと検出器との間のスペースは真空下に保持されて空気散乱を低減し、この距離はベヘン酸銀の散乱パターンの分析によって635.8mmと測定された。
【0053】
画像分析
回折画像をFIT2D及びSaxs15IDソフトウェアパッケージを用いて分析した。双方のプログラムは、データ削減及び次の分析を行うことが必要とされるデータ操作及び平滑化ルーチンを提供する。これらのパッケージから抽出された1次元データをスペクトルビューワソフトウェアパッケージを用いて可視化及び分析した。
【0054】
2つの方法及びパラメータを用いて平滑化及び次の背景除去によってSAXS画像を向上させた。以下で「標準プロトコル」と呼ぶ第1の方法及びパラメータは、James著の一刊行物(参照: WiIk K, James V, and Amemiya Y. Intermediate Filament Structure of Human Hair. Biophysica Biochimica Acta. 1995;1245: 392-396)にしか記載されていないことが知られている。Jamesによる刊行物以外は、癌の存在を検出するのに用いられる生SAXSデータ及びパラメータの処理方法の完全なレシピを記載しているものはない。SAXS画像から乳癌の発症を求めるのに単独の観察者が用いることができる完全な方法を載せている刊行物はこれまでなかった。(Jamesの刊行物が)初めて刊行されてからというもの、とにかく、Jamesによる、SAXS画像を処理するのに用いられるパラメータ及び方法が発展しているか否かは分かっていないが、SAXS画像20を処理して乳癌を診断する完全な方法の明確且つ詳細な説明は依然として公開されていない。簡潔に述べると、生SAXS画像の平滑化は、3×3画素ボックスの中心画素の値を、そのボックスに対して計算された平均値に置換することによって達成される。背景画像は上記と同様にして、ただし20×20画素ボックスで平滑化した画像をぼかすことによって作成される。乳癌の診断に用いられる画像は、作成された背景画像を平滑化画像から減算することによって生成される。背景補正(background correction:バックグラウンド補正)の目的は、元の画像内にある特徴のいずれも妥協することなくより低いQ値での立ち上がり強度をなくすことである。FIT2Dはユーザに利用可能な2つの異なる平滑化機能、すなわち「平滑化」及び「メディアン(median:中央値平滑化)」を有する。
【0055】
この試験過程では、本発明者らは生データを平滑化するように、且つ、平滑化データから減算されると元の画像に低強度で存在している重要な特徴を除去しない又は遮ることの
ない背景画像を生成するように試みる代替的な背景補正プロトコルを開発した。SAXS画像は最初に、3×3画素「メディアン」フィルタ操作を用いて平滑化され、これによりわずかな特徴も損失することなく平滑化させ、その後、50×50画素「平均化」を行って平滑化画像から背景を作成した。本発明者らはこれを「代替プロトコル」と呼ぶ。
【0056】
図8を参照すると、本発明の好適な実施形態による画像処理工程と共に典型的なビームラインレイアウトがブロック形態で示されている。
【0057】
この例では、波長Aを有すると共に幅X及び高さYを有するX線ビーム40が体毛サンプル41に向けられ、その結果の回折画像42がサンプル41から距離Zにあるプレート43に現れている。特定の好適な形態では、サンプル41とプレート43との間に画定される体積が、散乱を最小限にとどめるように少なくとも部分真空内に維持される。
【0058】
回折画像42をデジタル化し、平滑化アルゴリズム44の適用後に平均化アルゴリズム45を適用する。次いで、1次元スライス46がプレート43の面内の元の回折画像から引き出された選択セクタ47に沿って取られる。
【0059】
特定の非限定的な一形態では、A=1.03オングストローム、X=200ミクロン、Y=70ミクロン、及びZ=959mmである。
【0060】
例えば図9に示すような1次元データを各SAXS画像から抽出して、画像内の特徴の正確な間隔を測定した。これは2つの異なる方法によって達成された。第1の方法は、画像の中心から経線面に沿って延びる単一ラインに沿って0度、60度、120度、180度、240度、及び300度で強度データを抽出することであった。このプロセスを用いて、SAXS画像内にリングが存在する場合に、強度データが適切な場所での、且つ4つの全ての四分円からのデータの分析からのピークを示し、且つその円形性が確立され得ることを確実にした。
【0061】
乳癌の存在を示すリングの近似間隔ではかすかな特徴しか示さなかったSAXS画像には、上記のデータ抽出の方法に対して修正を用いた。これらの場合では、強度データを、複数の場所の5度のセクタを上記経線に統合する(integrating)ことによって抽出した。これは、弱いデータの背景雑音に対して信号レベルの増大を試みるように行った。次に図10を参照する:
【0062】
乳癌のSAXSパターンの確定−第1の試行
画像処理に標準プロトコルを用いて、本発明者らは、確定された間隔(Q=1.33nm-1;より好ましくはQ=1.32+/−0.02nm-1)で14本の陽性対照のうち13本に、乳癌の存在に相関するリングを確認することができた。
【0063】
マンモグラフィによって陰性と推定されたサンプルはいずれも、それらの各SAXSパターンにおいてその間隔でリングを示さなかった。各SAXSパターンから抽出された1次元データには上記所見が確認された。次いで、標準プロトコルを用いて、放射線科クリニックで採取した盲検サンプルを評価した。被検体の病状と、標準プロトコルを用いた分析結果とを表1に示す。この表に提示された情報から、採取した19本のサンプルのうち1本だけが、乳癌が確認された女性からのものであることが分かる。この特定のサンプルに対する、標準プロトコルを用いたSAXSパターンの分析により、対象のゾーン内に非常にぼやけたわずかに楕円状のリングのみを有する画像が生成された。この画像から抽出した1次元データはリングの存在を示しているが、背景との差がはっきりとしていないため、陰性として示された。サンプルの非盲検化後、この結果は偽陰性として分類された。他のサンプルのうち、3つが対象のゾーン内にリングを示し、陽性を示し、別のものは対
象のゾーン内にリングを示し、異常の証拠を示したが依然として陽性を示した。その他のサンプルは陰性と断定された。
【0064】
標準プロトコルを用いて生成されたSAXS分析結果から、画像処理にJamesが用いている、開示されている方法及びパラメータはかすかな特徴及び/又は散乱した特徴を含む画像に適していないことが明白であった。次に、本発明者らは、対象の領域においてわずかであるが有意な情報が画像処理の結果として失われないことを確実にするようにデータ削減の代替プロトコルを用いて画像を再分析した。
【0065】
代替プロトコルと共にFit2D及びSax15IDを用いて、陽性対照サンプルを再評価した。これらの結果、及び抽出された1次元データから、本発明者らは、乳癌の存在に相関するリングの間隔をQ=1.32+/−0.02nm-1と測定した。平均+/−2SDを主要な定量的基準として適用して、対象のゾーンを画定した。代替プロトコルの使用により、標準プロトコルの画像に比して質のよいより詳細なSAXS画像が生成された。図9A及び図9Bは、標準プロトコル及び代替プロトコルを、それぞれ陰性を示した後に偽陰性として分類されたサンプルに適用することにより得られた画像である。図9Bに見られるように、ここではかすかな散乱リングを見ることができる。この画像から抽出された1次元データは、リングがQ=1.32±0.02nm-1(d=4.76+/−0.07nm)の近似間隔を有すると確定した。したがって、画像削減の代替プロトコルにより、散乱した低強度情報が観察される場合よりもより詳細で質のよいデータが生成された。
【0066】
【表1−1】
【表1−2】
【0067】
乳癌SAXSパターンの確定−第2の試行
サンプル採取及び取扱い
72本の体毛サンプル(頭髪及び/又は陰毛)を乳房X線像のためにオーストラリア放射線科クリニックに回された女性から採取した。サンプルコレクション及び被検体情報に関する倫理認定が登録倫理委員会によって試みられ付与された。女性達は、インフォームドコンセントを自ら提供することができると共に長さが少なくとも30mmの有用な頭髪又は陰毛がある場合に、体毛サンプルを提供することができた。ここ6週間内に頭髪を染めているか若しくは化学的処置(パーマネントウェーブ等)を行っている場合、及び、陰毛を得ることができない場合、又は5年以内の乳癌歴若しくは他の癌歴(非黒色腫皮膚癌及びCIN:子宮頸部上皮内腫瘍を除く)がある場合の女性は除外した。シンクロトロンが利用可能なときに19本の盲検体毛サンプルをクリニックで採取し、これらサンプルを、乳癌を有すると診断された女性からの14本のサンプル及びマンモグラフィによって陰性と推定された女性からの6本のサンプルと共にこの試験において分析した。
【0068】
頭髪を頭髪の生え際近くの、耳の後ろの領域から採取し、可能な限り皮膚の近くで切除した。採取したサンプルが環境因子から最小限のダメージしか有しないことを確実にするようにこれを行った。陰毛もまた可能な限り皮膚の近くで切除し、全ての体毛サンプルをプラスチックの試料容器内に保管した。
【0069】
サンプルを放射線科クリニックにて一意な識別番号でコード化し、そのコード以外の他の識別情報を有しないように「盲検処理」として提供した。被検体の全ての医病歴をクリニックでファイルに保管した。単一体毛を細い鉗子を用いて容器から丁寧に取り出し、10本の個々の体毛繊維を保持することが可能な特別に設計されたサンプルホルダに載せた(図1)。
【0070】
シンクロトロンSAXS実験をアルゴンヌ国立研究所(アメリカ合衆国)の高度光子源で行った。
【0071】
分析を、15−ID(ChemMatCARS)ビームラインを用いて行った。
【0072】
15−ID(ChemMatCARS)は一方向にしか集光を可能としない光学素子を有する。このビームラインの実験に用いられるビームサイズは垂直方向に300ミクロンであり、水平
方向に500ミクロンであり、スリットの使用によって画定される。用いた波長は0.150nmであった。体毛サンプルはX線源に60秒間曝され、回折画像はMAR345検出器に集められた。サンプルと検出器の間のスペースは真空下に保持され、サンプルから検出器までの距離は上記の較正基準を用いて635.8mmと測定された。
【0073】
画像分析
回折画像をFIT2Dソフトウェア(FIT2Dは汎用として、且つEuropean Synchrotron Research Facility beam- linesから入手可能な且つそれを通じて使用される特に1次元及び2次元データ分析プログラムとして説明される)及びSaxs15IDソフトウェア(Cookson, DJ (2005) "Saxsl5ID Software for acquiring, processing and viewing SAXS/WAXS image data at ChemMatCARS"を参照)を用いて分析した。
【0074】
双方のプログラムは、データ削減及び次の分析を行うことが必要とされるデータ削減及び平滑化ルーチンを提供する。Jamesによる先の試験では、SAXS画像は天文学ソフトウェアパッケージIRAF及びSAOを用いて分析したが、Jamesは同様の結果がFIT2Dソフトウェアを用いて付随物により得られたと述べている(James V, Corino G/ Robertson T, Dutton N, Halas D, Boyd A, Bentel J, Papadimitriou J. Early diagnosis of breast cancer by hair diffraction. Int J Cancer. 2005; 114 : 969-972を参照)。
【0075】
これらのパッケージから抽出された1次元データを、スペクトルビューワを用いて可視化及び分析した(スペクトルビューワ:XYグラフのXY−プロットを、又は2D強度プロットとして読み取って表示)。スペクトルビューワはアイントホーヘン工科大学応用物理学部(オランダ)(Department of Applied Physics at Eindhoven Technical University(Netherlands))から入手可能である。
【0076】
「代替プロトコル」を用いて、平滑化及び次の背景除去によってSAXS画像を向上させた。SAXS画像は最初に、3×3画素「メディアン」フィルタ操作を用いて平滑化し、これによりわずかな特徴を損失することなく平滑化させ、その後、50×50画素「平均化」を行って平滑化画像から背景を作成した。
【0077】
1次元データを各SAXS画像から抽出して画像内の特徴の正確な間隔を測定した。これは2つの異なる方法によって達成された。始めに、画像の中心から経線面に沿って延びる単一ラインに沿って、0度、60度、120度、180度、240度、及び300度で強度データを抽出することであった。このプロセスを用いて、SAXS画像内にリングが存在する場合に、強度データが適切な場所での、且つ4つの全ての四分円からのデータの分析からのピークを示し、且つその円形性が確立され得ることを確実にした。乳癌の存在を示すリングの近似間隔でかすかな特徴を示したSAXS画像には、上記のデータ抽出の方法に対して修正を用いた。これらの場合では、強度データは複数の場所の50のセクタを上記経線に統合することによって抽出した。これは、弱いデータの背景雑音に対して信号レベルの増大を試みるように行った。
【0078】
結果
19本のサンプルはマンモグラフィによると陽性であり、続けて生検を行った。これらの19本のうち、10本が乳癌に関して陰性であることが病状によって分かった。体毛による試験ではこれらの10本のうち9本を陰性としてピックアップした。したがって、1本が偽陽性であった。
【0079】
浸潤癌と確認されたことが分かった9例のうち、6つが体毛X線回折を用いて陽性であり、3つが外れであった。次に、これらのサンプルには永久的に染められている証拠があ
り、再成長はわずかしかないことが分かった。
【0080】
【表2】
【0081】
体毛のX線回折を用いた試験の結果陽性であったが、マンモグラフィによって乳癌について陰性であると推定された13本のサンプルがあった。
【0082】
図11、図12、図13は上記の方法を用いて得られた典型的な回折パターンを示す。
【0083】
図9は図11Cに示すX線回折パターンから抽出された1次元データのプロットである。このデータは、矢印で示すように乳癌の存在と一致する間隔(Q=1.31nm-1)でピークがあることを示す。
【0084】
図10は、乳癌を有することが確認された被検体からの繊維に対する2つの異なる画像処理プロトコルの比較である。
【0085】
図10Aは標準プロトコルを用いて処理したX線回折パターンである。このリングは対象の領域においてわずかにしか見えない。
【0086】
図10Bは、「図10A」と同じであるが代替プロトコルを用いて処理されたデータ10のX線回折パターンである。このプロトコルを用いると対象の領域内のリングがはっきりと見える。
【0087】
図11Aは、α−ケラチンの中間径フィラメント構造の46.7nm格子の7次、19次、及び38次の経線アーク、及び離散点として見られる赤道特徴(ES)を示す、正常な体毛のX線回折パターンである。
【0088】
図11Bは、「異常」パターンの典型的な例を示すX線回折パターンである。これは、Q=1.37nm-1の間隔での広い1次リング(矢印で示す)、さらにかすかな2次リング及び3次リング(これらもまた矢印で示されている)の存在を特徴とする。この1次リングは典型的に、回折パターン内の最大強度を有する特徴であり、全体にわたって均一な強度を有する。典型的に、赤道付近の離散点は区別不可能であり、経線アークの強度が低減している。
【0089】
図11Cは、Q=1.32nm-1の間隔(矢印で示す)で十分にはっきりとしたリングを示す、乳癌を有する個人からの体毛のX線回折パターンであり、このパターンは経線特徴よりも強度が低く、赤道点を通る際に強度がより大きくなっている。7次、19次、及
び38次ははっきりと見えることに留意されたい。
【0090】
図12は、同じヒト被検体からの異なる体毛繊維のX線回折パターンを示し、X線回折画像化の再現性を実証している。
【0091】
図12A〜図12Dは、一貫したα−ケラチンパターンを示す異なる繊維から得られたパターンである。
【0092】
図13は、本発明の実施形態による以下の向上した方法から得られる比較パターンを示す。
【0093】
図14は、タスマニアデビル(Sarcophilus laniarius)からの体毛繊維のX線回折パターンを示す。図14Aは健康な動物からの回折パターンである一方、図14Bは疾患動物からの体毛のものである。相違点は、矢印によってマークされている赤道領域に認められ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の病理学的状態の診断試験の感度及び特異度を改善するように、該被検体からのケラチンサンプルを分析する方法であって、
a)エネルギー源から得られる入射エネルギーに前記ケラチンサンプルを曝すこと、
b)前記ケラチンサンプルに前記入射エネルギーが当たることで生じる、該ケラチンサンプルからの放射エネルギーを受け取ること、
c)前記ケラチンサンプルから受け取った前記放射エネルギーの少なくとも一部をトランスデューサに通し、被検体特異的データを得ること、
d)前記得られた被検体特異的データを処理すること、及び
e)そのようにして得られた前記処理された被検体特異的データを、参照データベースの、前記被検体の前記病理学的状態の存在と一致する第2の群の参照データと比較すること、
を含み、
f)前記処理方法は、前記参照データに対して感度及び特異度を改善するように、前記比較する工程の前に前記被検体特異的データに適切なアルゴリズムを適用する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記アルゴリズムは前記参照データに適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルゴリズムはフィルタ操作を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルゴリズムは画定された画素アレイを用いてのメディアンフィルタ操作を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記画素アレイは3×3画素アレイである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルタ工程の後に平均化操作が行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記平均化操作は50×50画素アレイを用いて行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記平均化工程の後に減算操作が行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記減算操作は請求項5において生成された、フィルタ操作された前記データから、請求項7において生成された、平均化されたデータを減算することによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
関連する特徴の間隔を確定するために、1次元強度データが前記被検体特異的データから抽出される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記強度データは、前記画像の中心から、予め選択された平面に沿って延びる単一ラインに沿っている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記強度データは統合セクタによって抽出される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の群のデータは前記被検体の前記病理学的状態の存在に相関する、請求項1に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項14】
前記第2の群のデータは前記被検体の前記病理学的状態の存在を示す、請求項1又は2に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項15】
前記エネルギー源は複数の異なるエネルギー源から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項16】
前記ケラチンサンプルは複数の異なるケラチンサンプルから選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項17】
前記第2の群のデータは複数の異なる群のデータから選択される、請求項1〜16のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項18】
前記引き出されたデータ及び前記第2の群のデータは複数の異なる比較の方法を用いて分析される、請求項1〜17のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項19】
前記入射エネルギーの少なくとも一部が前記ケラチンサンプルによって吸収される、請求項1〜18のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項20】
使用の際、前記ケラチンサンプルは、薬局、試験キット、被検体の自宅、ヘルスケアクリニック及び試験室の少なくとも1つに関連して入手及び分析され得る、請求項1〜19のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項21】
実質的に明細書の本文に示し記載したような工程を含む、ケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項の方法において引き出されたデータの分析方法であって、該データは、前記トランスデューサから得られた画像の画像データの形態であり、該分析方法は、
(a)前記画像内の特徴の間隔を確定するように前記画像内の所定の経路に沿って一次元データを抽出すること、
(b)前記1次元データの分析から前記画像の中心点を中心として実質的に円形状に配向されたピークデータを確定すること、及び
(c)前記画像内に現れる際に前記実質的に円形に配向されたピークデータをより良好に確定するように、該実質的に円形に配向されたピークデータに強度補正を適用すること、
を含む、方法。
【請求項1】
被検体の病理学的状態の診断試験の感度及び特異度を改善するように、該被検体からのケラチンサンプルを分析する方法であって、
a)エネルギー源から得られる入射エネルギーに前記ケラチンサンプルを曝すこと、
b)前記ケラチンサンプルに前記入射エネルギーが当たることで生じる、該ケラチンサンプルからの放射エネルギーを受け取ること、
c)前記ケラチンサンプルから受け取った前記放射エネルギーの少なくとも一部をトランスデューサに通し、被検体特異的データを得ること、
d)前記得られた被検体特異的データを処理すること、及び
e)そのようにして得られた前記処理された被検体特異的データを、参照データベースの、前記被検体の前記病理学的状態の存在と一致する第2の群の参照データと比較すること、
を含み、
f)前記処理方法は、前記参照データに対して感度及び特異度を改善するように、前記比較する工程の前に前記被検体特異的データに適切なアルゴリズムを適用する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記アルゴリズムは前記参照データに適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルゴリズムはフィルタ操作を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルゴリズムは画定された画素アレイを用いてのメディアンフィルタ操作を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記画素アレイは3×3画素アレイである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルタ工程の後に平均化操作が行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記平均化操作は50×50画素アレイを用いて行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記平均化工程の後に減算操作が行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記減算操作は請求項5において生成された、フィルタ操作された前記データから、請求項7において生成された、平均化されたデータを減算することによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
関連する特徴の間隔を確定するために、1次元強度データが前記被検体特異的データから抽出される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記強度データは、前記画像の中心から、予め選択された平面に沿って延びる単一ラインに沿っている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記強度データは統合セクタによって抽出される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の群のデータは前記被検体の前記病理学的状態の存在に相関する、請求項1に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項14】
前記第2の群のデータは前記被検体の前記病理学的状態の存在を示す、請求項1又は2に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項15】
前記エネルギー源は複数の異なるエネルギー源から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項16】
前記ケラチンサンプルは複数の異なるケラチンサンプルから選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項17】
前記第2の群のデータは複数の異なる群のデータから選択される、請求項1〜16のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項18】
前記引き出されたデータ及び前記第2の群のデータは複数の異なる比較の方法を用いて分析される、請求項1〜17のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項19】
前記入射エネルギーの少なくとも一部が前記ケラチンサンプルによって吸収される、請求項1〜18のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項20】
使用の際、前記ケラチンサンプルは、薬局、試験キット、被検体の自宅、ヘルスケアクリニック及び試験室の少なくとも1つに関連して入手及び分析され得る、請求項1〜19のいずれか一項に記載のケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項21】
実質的に明細書の本文に示し記載したような工程を含む、ケラチンサンプルを分析する方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項の方法において引き出されたデータの分析方法であって、該データは、前記トランスデューサから得られた画像の画像データの形態であり、該分析方法は、
(a)前記画像内の特徴の間隔を確定するように前記画像内の所定の経路に沿って一次元データを抽出すること、
(b)前記1次元データの分析から前記画像の中心点を中心として実質的に円形状に配向されたピークデータを確定すること、及び
(c)前記画像内に現れる際に前記実質的に円形に配向されたピークデータをより良好に確定するように、該実質的に円形に配向されたピークデータに強度補正を適用すること、
を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【公表番号】特表2009−541748(P2009−541748A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516821(P2009−516821)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000889
【国際公開番号】WO2008/000027
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(509005443)ファーミスカン オーストラリア プロプライエタリー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000889
【国際公開番号】WO2008/000027
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(509005443)ファーミスカン オーストラリア プロプライエタリー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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