説明

改善された汚れにくさおよび改善された接着可能性を有するシリコーン上塗り塗料

【課題】ポリオルガノシロキサン成分を含有する組成物の汚れにくさおよび該組成物からの被覆とシリコーン下地との接着可能性をさらに改善する。
【解決手段】ポリマー成分(1):(A1)式(RSi−O1/2)で示される単位の存在下または不在下で式(RSi−O3/2)で示される単位からなるポリオルガノシロキサンおよび/または(A2)式(RSi−O1/2)で示される単位の存在下または不在下で式(Si−O4/2)で示される単位からなるポリオルガノシロキサン、(2)一般式
Si(OR4−xで示されるシラン、(3)シリコーン粒子、(4)場合によっては溶剤、(5)場合によっては触媒、(6)場合によっては水を使用しながら製造しうる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、組成物ならびに成形体、平面形成体またはエラストマーである。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第718355号明細書Aの記載から、ポリオルガノシロキサン成分を含有する組成物が公知であり、この組成物は、既に前記欧州特許出願公開明細書Aの出願日の時点で公知技術水準に対して改善された汚れにくさを有しているが、しかし、前記組成物からの被覆とシリコーン下地との接着可能性は、劣悪である。
【特許文献1】欧州特許出願公開第718355号明細書A
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、公知技術水準を改善し、殊に汚れにくさおよび接着可能性をさらに改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の対象は、ポリマー成分(1)
(A1)式(RSi−O1/2)で示される単位(M単位)の存在下または不在下で式(RSi−O3/2)で示される単位(T単位)からなるポリオルガノシロキサンおよび/または
(A2)式(RSi−O1/2)で示される単位(M単位)の存在下または不在下で式(Si−O4/2)で示される単位(Q単位)からなるポリオルガノシロキサン、
上記式中、
Rは、同一かまたは異なる、ハロゲン化されたかまたはハロゲン化されていない、基1個当たり1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基またはORを表わし、この場合Rは、同一でも異なっていてもよく、水素または置換されたかもしくは置換されていない、1〜8個の炭素原子を有する1価の炭化水素基を表わし、
但し、この場合には、1分子当たりSi結合した基OR0.01〜3.0質量%が含有されているものとし、
ならびに場合によっては
(B)塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレートコポリマー、
(C)酢酸ビニル−エチレンコポリマー、
(D)ポリ塩化ビニル、
(E)ポリアミド、
(F)ポリエステル、
(G)アクリレート−ポリエステルコポリマー、
(H)ポリアミド−ポリエステルコポリマー、
(I)酢酸ビニル−ポリエステルコポリマー、
(J)モノマー(メタ)アクリレートからなる群から選択された1つ以上のポリマー成分、
但し、この場合には、前記成分は、Si結合した(メタ)アクリレート基含有シランと共重合されているものとし、
(2)一般式
Si(OR4−x
で示されるシラン、
上記式中、Rは、置換されたかまたは置換されていない1価の炭化水素基を表わし、
は、1価の有機基を表わし、
xは、0または1を表わし、
(3)シリコーン粒子、
(4)場合によっては溶剤、
(5)場合によっては触媒、
(6)場合によっては水を使用しながら製造しうる組成物である。
【0005】
基Rの例は、特にアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基および第三ペンチル基;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基;オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基;ノニル基、例えばn−ノニル基;デシル基、例えばn−デシル基;ドデシル基、例えばn−ドデシル基;オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;アルケニル基、例えばビニル基およびアリル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基である。
【0006】
置換された基Rの例は、シアンアルキル基、例えばβ−シアンエチル基およびハロゲン化炭化水素基、例えばハロゲン化アルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2′,2′,2′−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基である。
【0007】
既に、簡単に入手可能であるために、基Rの例は、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0008】
基Rは、好ましくは水素原子および1〜8個の炭素原子を有する置換されたかまたは置換されていない炭化水素基であり、この場合には、水素および1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、殊にメチル基、エチル基およびイソプロピル基が特に好ましい。
【0009】
基Rの例は、基Rのために記載された、1〜8個の炭素原子を有する例である。
【0010】
基Rの例は、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換されたかまたは置換されていない炭化水素基であり、特に好ましいのは、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、第三ペンチル基;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基およびイソヘキシル基;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基およびイソヘプチル基;オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基である。有利なのは、メチル基およびエチル基である。エーテル酸素原子によって置換されていてよい炭化水素基Rの例は、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシ−n−プロピル基およびメトキシ−イソプロピル基である。
【0011】
基Rの例は、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換されたかまたは置換されていない炭化水素基であり、特に好ましいのは、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、第三ペンチル基;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基およびイソヘキシル基;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基およびイソヘプチル基;オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基;ノニル基、例えばn−ノニル基およびイソノニル基;デシル基、例えばn−デシル基およびイソデシル基;ドデシル基、例えばn−ドデシル基およびイソドデシル基;オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基およびイソオクタデシル基;アルケニル基、例えばビニル基およびアリル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、o−ビニルフェニル基、m−ビニルフェニル基、p−ビニルフェニル基およびノニルフェニル基;ならびにアラルキル基、例えばベンジル基、α−フェニルエチル基およびβ−フェニルエチル基;イソシアンアルキル基、例えばイソシアンプロピル基、イソシアンエチル基、イソシアンヘキシル基、イソシアンオクチル基であり、この場合イソシアンプロピル基が好ましく、ならびに(メタ)アクリルオキシ基、例えばメタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシプロピル基、メタクリルオキシヘキシル基、アクリルオキシヘキシル基であり、この場合メタクリルオキシプロピル基が好ましい。
【0012】
ハロゲン化炭化水素基Rの例は、ハロゲン化アルキル基、例えば3−クロロ−n−プロピル基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2′,2′,2′−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基およびハロゲン化アリール基、例えばo−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基およびp−クロロフェニル基である。
【0013】
ポリオルガノシロキサン(A1)の場合には、M単位対T単位の比は、0〜1.8:1、有利に0.1〜1.2:1、特に有利に0.3〜0.8:1であり、ポリオルガノシロキサン(A2)の場合には、M単位対Q単位の比は、0.00〜2.7:1、有利に0.01〜2.1:1、特に有利に0.1〜1.8:1である。
【0014】
本発明によるポリオルガノシロキサンは、2〜500個、有利に4〜300個のモノマー単位からなるポリマーを形成する。
【0015】
ポリマー成分(A1)および(A2)は、単独でかまたはそれぞれ混合物としてか或いはオルガノポリシロキサン単位の反応生成物として使用されてよい。好ましいのは、ポリマー成分、例えばWacker-Chemie社の樹脂溶液Kまたは樹脂溶液K0118である。これらの樹脂は、有利には、溶剤中、例えばトルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチルエステル、エタノール中に溶解されていてよい。この溶剤は、それぞれポリマー成分の全質量に対して特に10〜98質量%、有利に30〜98質量%の量で使用される。
【0016】
ポリマー成分(A1)と(A2)は、単独でかまたは混合物として1:20〜20:1、有利に1:10〜10:1の比で使用されてよい。
【0017】
また、ポリマー成分(A1)および(A2)と共に、ポリマー成分(B)としては、塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレートコポリマーが使用されてもよい。このような製品は、Vinnolit E 15/40 Aの商品名でVinnolit社から販売されている。また、酢酸ビニルおよびエチレンからなるコポリマー(C)は、同様にポリマー成分として使用されてよい。刊行物に公知の方法により、2つのモノマーからコポリマーは、全ての好ましい比で製造されてよい。
【0018】
更に、ポリマー成分としては、(D)ポリ塩化ビニル、(E)ポリアミド、(F)ポリエステル、(G)アクリレート−ポリエステルコポリマー、(H)ポリアミド−ポリエステルコポリマーまたは(I)酢酸ビニル−ポリエステルコポリマーまたは(J)モノマー(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレート、ブチルメタクリレートが使用されてよく、これらのポリマー成分は、反応混合物中で重合される。好ましいのは、ポリマー成分(A1)、(A2)、(B)および(C)であり、特に好ましいのは、ポリマー成分(A1)および(A2)である。
【0019】
前記ポリマー成分は、2〜70質量%の量で本発明による組成物中に含有されている。5〜50質量%の量が好ましく、10〜40質量%の量が特に好ましい。
【0020】
シラン(2)の好ましい例は、
メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名Silan GF31 - Wacker-Chemie社)、
メチルトリエトキシシラン(商品名Silan M1- Triethoxy - Wacker-Chemie社)、
ビニルトリエトキシシラン(商品名Silan GF 56 - Wacker-Chemie社)、
テトラエトキシシラン(商品名TES 28 - Wacker-Chemie社)、
テトラエトキシシラン(商品名TES 40 - Wacker-Chemie社)からの低分子量加水分解生成物からなる混合物、
メチルトリメトキシシラン(商品名Silan M1- Trimethoxy - Wacker-Chemie社)、
イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(商品名Silan Y 9030 UCC)である。
【0021】
シランは、0.1〜20質量%、有利に0.5〜10質量%の量で含有されている。
【0022】
ポリマー成分は、シラン(2)またはその混合物と100:1〜100:30、特に有利に100:2〜100:20の比で使用される。
【0023】
前記組成物は、有利に有機溶剤中、例えばテトラヒドロフラン、トルエン、アセトン、ナフサ、ベンジン、メチルエチルケトン、キシレン、ブチルアルコール、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、イソプロパノール中で製造される。
【0024】
有機溶剤は、10〜90質量%の量で含有されており、好ましくは、30〜85質量%である。
【0025】
前記組成物は、場合によっては縮合触媒、例えば有利に有機錫化合物または有機ジルコニウム化合物、例えば有利にジルコニウムブチラート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテートと混合される。
【0026】
前記縮合触媒の中で好ましいのは、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫アセテート、ジルコニウムブチラートである。
【0027】
縮合触媒は、0〜10質量%の量で含有されている。0〜5質量%の量が好ましく、0〜2質量%が特に好ましい。
【0028】
特にポリマー成分(J)の場合に使用されるフリーラジカルの源は、過酸化物であり、殊に有機過酸化物が好ましい。このような有機過酸化物の例は、ペルオキシケタール、例えば1,1−ビス(第三ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(第三ブチルペルオキシ)ブタンおよび類似物、ジアシルペルオキシド、例えばアセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドおよび類似物、ジアルキルペルオキシド、例えばジ−第三ブチルペルオキシド、第三ブチル−クミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)ヘキサン、第三ブチル−ペル−エチルヘキサノエートならびに類似物およびペルエステル、例えば第三ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートである。好ましいのは、第三ブチル−ペル−エチルヘキサノエート(商品名Peroxan PO)Interox TBPINである。
【0029】
特に、過酸化物は、それぞれ本発明による方法において使用される化合物の質量に対して0〜5質量%、殊に0〜3質量%の量で使用される。
【0030】
また、場合によっては水が0〜20質量%、有利に0〜10質量%の量で添加されてもよい。
【0031】
前記組成物は、官能性シランと混合されかつ有機溶剤中で加水分解されるシリコーン樹脂からなるかまたは官能性シランと共重合される有機(コ)ポリマーからなる。
【0032】
シリコーン粒子は、唯一の分子からなる架橋されたオルガノポリシロキサン粒子であり、この場合は、この粒子の少なくとも80%は平均直径の最大30%が偏倚している直径を有するような5〜200nmの平均直径を有しかつ溶剤中で少なくとも5質量%が溶解する。
【0033】
オルガノポリシロキサン粒子は、典型的には少なくとも10、殊に5×10〜最大1010、殊に10の平均分子量を有する。オルガノポリシロキサン粒子の平均直径は、特に少なくとも10nm、最大150nmである。特に、粒子の少なくとも80%は、平均直径の最大20%、殊に最大10%が偏倚している直径を有する。オルガノポリシロキサン粒子は、有利に球面状のマイクロゲルである。
【0034】
オルガノポリシロキサン粒子は、分子内で架橋されているが、しかし、オルガノポリシロキサン粒子間に分子内架橋を全く有しない。従って、オルガノポリシロキサン粒子は、溶剤中で良好に可溶性である。
【0035】
オルガノポリシロキサン粒子の少なくとも5質量%が溶解する溶剤は、オルガノポリシロキサン粒子の構造に依存し、殊にオルガノポリシロキサン粒子の表面上に存在する基に依存する。全てのオルガノポリシロキサン粒子に適した溶剤が存在する。このような溶剤の例は、水;アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール;エーテル、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル;塩素化炭化水素、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン;炭化水素、例えばペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン−異性体混合物、ヘプタン、オクタン、染み抜き用ベンジン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン;ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−イソブチルケトン;ジメチルホルムアミド、二硫化炭素およびニトロベンゼンまたは前記溶剤の混合物、ならびにモノマー、例えばメチルメタクリレートまたはスチレンおよびポリマー、例えば液状オルガノポリシロキサンである。
【0036】
オルガノポリシロキサン粒子の溶解度は、例えば20℃で測定されうる。炭化水素基を有するオルガノポリシロキサン粒子に特に適した溶剤としては、トルエンがあり、アミノ基を有するオルガノポリシロキサン粒子に特に適した溶剤としては、テトラヒドロフランがあり、スルホナト基を有するオルガノポリシロキサン粒子に特に適した溶剤としては、水がある。例えば、炭化水素基を有するオルガノポリシロキサン粒子は、トルエン中で殆んど無制限であり、35mPa・sの粘度を有する液状ポリジメチルシロキサン中で25℃で15質量%になるまで溶解する。特に、オルガノポリシロキサン粒子は、トルエン、テトラヒドロフランおよび水から選択される溶剤中で少なくとも10質量%、殊に少なくとも15質量%が溶解する。
【0037】
特に、オルガノポリシロキサン粒子は、
一般式
[RSiO1/2] (1)
で示される単位0.5〜80.0質量%、
一般式
[RSiO2/2] (2)
で示される単位0〜99.0質量%、
一般式
[RSiO3/2] (3)
で示される単位0〜99.5質量%、
一般式
[SiO4/2] (4)
で示される単位0〜80.0質量%および
一般式
[RSi(O(3−a)/2)−R−X−(R−Si(O(3−a)/2))] (5)
で示される単位0〜20.0質量%から構成されており、この場合
は、水素原子または同一かまたは異なる1価のSiC結合した、置換されたかまたは置換されていないC〜C18−炭化水素基を表わし、
は、同一かまたは異なる2価のSiC結合した、置換されたかまたは置換されていないC〜C18−炭化水素基を表わし、この炭化水素基は、−O−、−COO−、−OOC−、−CONR−、−NRCO−および−CO−の群からの2価の両側で炭素原子に結合された基によって中断されていてよく、
は、水素原子または基Rを表わし、
Xは、−N=N−、−O−O−、−S−S−および−C(C−C(C−の群からの基を表わし、
aは、0、1または2の値を表わし、
bは、0または1の値を表わし、
但し、この場合一般式(3)および(4)の単位の総和は、少なくとも0.5質量%であるものとする。
【0038】
置換されていない基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、第三ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;アルケニル基、例えばビニル基、アリル基、n−5−ヘキセニル基、4−ビニルシクロヘキシル基および3−ノルボルネニル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基およびメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えばフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基;アラルキル基、例えばベンジル基、α−フェニルエチル基およびβ−フェニルエチル基、ならびにフルオレニル基である。
【0039】
基Rとしての置換された炭化水素基の例は、ハロゲン化炭化水素基、例えばクロルメチル基、3−クロルプロピル基、3−ブロムプロピル基、3,3,3−トリフルオルプロピル基および5,5,5,4,4,3,3−ヘプタフルオルペンチル基ならびにクロルフェニル基、ジクロルフェニル基およびトリフルオルトリル基;メルカプトアルキル基、例えば2−メルカプトエチル基および3−メルカプトプロピル基;シアノアルキル基、例えば2−シアノエチル基および3−シアノプロピル基;アミノアルキル基、例えば3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基およびN−(2−アミノエチル)−3−アミノ−(2−メチル)プロピル基;アミノアリール基、例えばアミノフェニル基;第4級アンモニウム基;アクリルオキシアルキル基、例えば3−アクリルオキシプロピル基および3−メタクリルオキシプロピル基;ヒドロキシアルキル基、例えばヒドロキシプロピル基;ホスホン酸基;ホスホネート基およびスルホネート基、例えば2−ジエトキシホスホナト−エチル基または3−スルホナト−プロピル基である。
【0040】
基Rは、有利に置換されていないC〜C−アルキル基および置換されたC〜C−アルキル基、水素およびフェニル基、殊にメチル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、メタクリルオキシプロピル基、3−クロルプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基および(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、水素および第4級アンモニウム基である。
【0041】
2価の炭化水素基の例は、飽和アルキレン基、例えばメチレン基およびエチレン基、ならびにプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基およびオクタデシレン基または不飽和アルキレン基もしくは不飽和アリーレン基、例えばヘキセニレン基およびフェニレン基ならびに殊に式(6)
−(CH)N(R)−C(O)−(CH)−C(CN)(CH)− (6)
〔式中、Rは、水素原子、メチル基またはシクロヘキシル基を表わす〕で示される基および式(7)
−(CH)−O−C(O)−(CH)−C(O)− (7)
で示される基である。
【0042】
好ましい基Xは、−N=N−および−O−O−である。
【0043】
一般式(5)の特に好ましい単位は、一般式(8)
[(CH)Si(O(3−a)/2)−(CH)−N(R)−C(O)−(CH)−C(CN)(CH)−N=]
〔式中、aおよびRは、前記の意味を有する〕で示される。
【0044】
特に、オルガノポリシロキサン粒子は、
一般式(1)の単位1〜80.0質量%、
一般式(2)の単位0〜98.0質量%、
一般式(3)の単位0〜99.0質量%、
一般式(4)の単位0〜50.0質量%および
一般式(5)の単位0〜10.0質量%を含有し、但し、この場合には、一般式(3)と(4)の単位の総和は、少なくとも1質量%であるものとする。
【0045】
殊に、オルガノポリシロキサン粒子は、
一般式(1)の単位5〜70.0質量%、
一般式(2)の単位0〜94.0質量%、
一般式(3)の単位1〜95.0質量%、
一般式(4)の単位0質量%および
一般式(5)の単位0〜5.0質量%を含有する。
【0046】
オルガノポリシロキサン粒子は、特に欧州特許第744432号明細書(Wacker-Chemie社)およびその実施例の記載により製造される。
【0047】
オルガノポリシロキサン粒子の構造的な特性決定のためには、特に静的光散乱および動的光散乱が適当である。静的光散乱および動的光散乱は、分散粒子を特性決定するために巨大分子化学およびコロイド化学において当業者に公知の確立された方法である。静的光散乱において、散乱強度は、種々の角度で十分長い時間的間隔に亘って確認され、巨大分子の静的性質、例えば分子量の質量平均M、回転半径の2乗のz平均<R2>および第2ビリアル係数A2、分散された粒子と溶剤との分子内熱力学的相互作用および分子間熱力学的相互作用についての確証を得ることができる。静的光散乱とは異なり、動的光散乱の場合には、散乱光の強さの変動は、時間関数として観察される。これは、試験された分子の動的挙動についての確証を導く。拡散係数Dのz平均、ひいては、ストークス−アインシュタインの法則(Stokes-Einstein-Gesetz)により流体力学的半径Rおよび拡散係数に対する濃度依存性が表わされる係数kが測定される。散乱光の角度依存性から、粒子形を見出すことができ、場合によっては溶液中での存在する構造体を解明することができる。同時に静的光散乱の測定と動的光散乱の測定は、唯一の実験で試験された系についての上記の確証を得ることを可能にし、それによって、例えば粒径、粒子の分散度および粒子の分散形ならびに分子量および密度を得ることを可能にする。これは、例えばDynamic Light Scattering: The Method and some Applications; Brown, W. (編); Oxford University Press, Oxford, Uk, 372-406 (1993)中のM. Schmidt, Simultaneous Static and Dynamic Light Scattering: Applications to Polymer Structures Analysisに記載されている。
【0048】
回転半径と流体力学的半径とからの商、所謂ρ比は、粒子形についての構造学的情報、例えば硬質の球、中空球、ランダムコイル形、小棒状物または星状ポリマー(Sternpolymer)を提供する。粒子形の”硬質球”については、理論的なρ比は、0.775であり;好ましいオルガノポリシロキサン粒子の場合に測定される値は、0.775〜最大ρ=1.0である。従って、好ましいオルガノポリシロキサン粒子は、球状である。
【0049】
オルガノポリシロキサン粒子の寸法範囲は、一面で大きな分子とオリゴマーとデンドリマーとの間の限界範囲を表わし、 他面、小さな固体を表わし、したがって固体と分子との境界領域に相当する。一面で、一括した固体特性は、なお形成されておらず、他面、分子比は、もはや観察することができないかまたはなお手がかりとしてのみ観察することができるにすぎない。殆んど固定された形態を有する前記の程度の寸法の特殊な構造の例は、ミクロゲルである。アントニエッティ(Antonietti)(Angew. Chemie 100 (1988) 1813-1817)によれば、水性コロイド系から得ることができる、5〜200nmのメゾスコピックの寸法範囲内の粒子直径および10〜1011(g/モル)の分子量を有するミクロゲルは、”B型”ミクロゲルと呼ばれる。”B型”ミクロゲルは、例えば充填剤としてかまたは(光学的に透明な)ポリマーのための相容性助剤として、または適合した触媒系のための潜在的な出発材料として特に重要である。
【0050】
好ましくは、シリコーンエラストマー粒子は、80〜120nmの粒子寸法を有し、メチルイソブチルケトン中に存在する。別の溶剤、例えばトルエン、アセトンならびに酢酸エチルおよび酢酸ブチルは、可能であるが、しかし、MIBKは、特に好ましいことが判明した。
【0051】
更に、本発明の対象は、前記組成物を製造する方法であり、この場合この組成物の成分は、反応されるかまたは混合され、この場合には、
ポリマー成分(1)
(A1)式(RSi−O1/2)で示される単位(M単位)の存在下または不在下で式(RSi−O3/2)で示される単位(T単位)からなるポリオルガノシロキサンおよび/または
(A2)式(RSi−O1/2)で示される単位(M単位)の存在下または不在下で式(Si−O4/2)で示される単位(Q単位)からなるポリオルガノシロキサン、
上記式中、
Rは、同一かまたは異なる、ハロゲン化されたかまたはハロゲン化されていない、基1個当たり1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基またはORを表わし、この場合Rは、同一でも異なっていてもよく、水素または置換されたかもしくは置換されていない、1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基を表わし、
但し、この場合には、1分子当たりSi結合した基OR0.01〜3.0質量%が含有されているものとし、
ならびに場合によっては
(B)塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレートコポリマー、
(C)酢酸ビニル−エチレンコポリマー、
(D)ポリ塩化ビニル、
(E)ポリアミド、
(F)ポリエステル、
(G)アクリレート−ポリエステルコポリマー、
(H)ポリアミド−ポリエステルコポリマー、
(I)酢酸ビニル−ポリエステルコポリマー、
(J)モノマー(メタ)アクリレートからなる群から選択された1つ以上のポリマー成分、
但し、この場合には、前記成分は、Si結合した(メタ)アクリレート基含有シランと共重合されているものとし、
(2)一般式
Si(OR4−x
上記式中、Rは、置換されたかまたは置換されていない1価の炭化水素基を表わし、
は、1価の有機基を表わし、
xは、0または1を表わし、
(3)シリコーン粒子、
(4)場合によっては溶剤、
(5)場合によっては触媒、
(6)場合によっては水を使用しながら反応されるかまたは混合される。
【0052】
R、R、RおよびRの例は、基R、R、RおよびRについて記載された上記例である。
【0053】
本発明による組成物は、化学工業において常用されているような攪拌装置および混合装置中で製造される。前記装置は、−10℃〜+150℃の範囲内で温度調節可能であり、この装置中で温度は、制御可能である。有機溶剤を使用するために、爆発からの保護は、避けて通ることできないことである。
【0054】
前記組成物は、個々の成分を周囲の室温に相当する温度で1回混合することによって製造される。しかし、また、反応、例えば重合、縮合または反応性基との反応は、実施されてもよい。更に、この場合には、反応進行の熱的制御が必要とされる。このような方法は、0℃〜150℃で実施される。好ましくは、10℃〜120℃の温度である。簡易化のために、前記組成物は、常圧の空気圧で製造される。しかし、この製造は、同様に20バールまでの過圧または20ミリバールまでの真空中で行なわれてもよい。
【0055】
更に、本発明の対象は、本発明による組成物で被覆されている成形体、平面形成体またはエラストマーである。
【0056】
更に、本発明による組成物は、エラストマー成形部材の保護被覆として使用されるかまたは片側または両側でエラストマー材料で被覆された平面形成体のためのトップコートとして使用される。この平面形成体は、フィルムまたは紡織繊維、殊に化学繊維、天然繊維または鉱物繊維からなる織物、編物、メリヤス生地またはフリース材料であることができる。このための例は、エラストマー材料、例えば天然ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴムまたはシリコーンゴムからなる射出成形部材または押出成形部材である。エラストマー材料で被覆された紡織繊維担体、例えばベルトコンベヤー、補償板、保護被覆、電気絶縁ホース、電気絶縁マット、紡織繊維の構造体、例えばテント、カバー、板に使用されることができる被覆された紡織繊維は、本発明によるトップコートを本発明により装備した後に、それ自体に対しておよび別の材料に対して減少された摩擦係数ならびにシリコーンゴム接着剤との良好な接着可能性を有する耐引掻性の汚れにくい表面を示す。
【0057】
トップコートは、シリコーン被覆された紡織繊維膜上に3〜50g/mの層で施こされる。理想的なのは、5〜15g/mの層厚である。トップコートは、一面でベースコート上で十分な付着力を有していなければならない。他面、このトップコートは、接着可能でなければならず、即ちシリコーン接着剤は、トップコート上で十分な付着力を有していなければならない。前記層の付着力は、例えばDIN 53530により測定され、少なくとも150N/5cmである。
【0058】
本発明による組成物は、噴霧、刷毛塗り、ナイフ塗布、ロール圧力、スクリーン圧力、浸漬または類似の技術によって施こされることができる。
【0059】
この本発明による組成物は、通常のシリコーンゴム表面との堅固な結合を生じる。硬化は、溶剤の蒸発および引続く重縮合によって行なわれる。硬化は、熱的に促進させることができる。
【0060】
本発明による上塗り塗料で処理された表面は、汚れにくく、耐引掻性であり、それ自体に対してならびに別の材料、例えばガラス、金属、プラスチック、織物等に対して減少された摩擦係数を有する。シリコーンゴム成形部材、シリコーンゴム射出成形部材、シリコーンゴム絶縁ホース、医薬製品、シリコーンゴムで被覆された織物、フリース、フェルト、フィルムまたは紙の通常の表面は、本発明によるトップコートで処理される。
【0061】
基材の重要な性質、例えば引張強さ、伸び、弾性率、後引裂抵抗(Weiterreissfestigkeit)、熱時および冷時に対する安定性、化学薬品または光に対する安定性は、前記の表面処理によって影響を及ぼされない。
【0062】
本発明による組成物の利点は、この組成物がシリコーンゴム成形部材、射出成形部材、絶縁ホース等上に施こされてもよいことにある。従って、この組成物の使用は、被覆された織物に限定されるものではない。本発明による組成物は、純粋なシリコーン樹脂だけから形成されているのではなく、コポリマーとシリコーン含量とからも形成されている。この結果、多数の性質、例えば汚れにくさ、耐引掻強さおよび減少された摩擦抵抗をトップコートだけで達成させることが可能である。このトップコートは、公知方法の場合のような基材の硬化を生じない。これは、なかんずく被覆された紡織繊維の範囲内で本質的な利点である。
【0063】
本発明によるシリコーン上塗り塗料は、改善された汚れにくさ、ワックス掛けされていない平滑な表面、低い摩擦係数ならびに極めて良好な接着可能性を有する。
【0064】
前記上塗り塗料は、1回の作業工程だけで施こされうる。即ち、ベース塗料と共に、2回の作業工程のみが必要とされる。被覆された織物、編物、メリヤス生地またはフェルトの場合には、ベース塗料としての市販の液状シリコーンゴムを用いて作業されうる。この場合には、付着助剤の添加によって、下塗りなしに十分な付着力を達成することができる方法が公知である。
【0065】
前記のシリコーン粒子は、記載された縮合架橋性結合剤系、過酸化物架橋性結合剤系と共に、付加架橋性シリコーン結合剤系中に導入されてもよい。
【実施例】
【0066】
シリコーン粒子を製造するための次の例1〜2においては、それぞれ別記しない限り、
a)全ての量の記載は、質量に対するものであり;
b)全ての圧力は、0.10MPa(絶対)であり;
c)全ての温度は、20℃である。
【0067】
光散乱:
静的光散乱および動的光散乱は、なかんずくSpectra-Physics社のStabilite(登録商標)2060-11s Kr-レーザー装置、ALV社のゴニオメーターおよびALV-3000 デジタル・ストラクチュレーター(Strukturator)/相関計からなる装置で測定された。クリプトン−イオンレーザー装置は、647.1nmの波長で作業される。
【0068】
試料調製:試料(トルエン中のオルガノポリシロキサン粒子;それぞれの濃度範囲は、例中に記載されている)は、3回Millipore社のMillex(登録商標)-FGSフィルター(孔径0.2μm)を通して濾過された光散乱実験での測定温度は、20℃である。光散乱測定は、50゜〜130゜の角度に依存して20゜のステップで実施され、相関関数は、シンプレックスアルゴリズムで評価された。静的光散乱の場合、30゜〜140゜の散乱光の角度依存性は、5゜のステップで測定された。
【0069】
例1:
水125g、ベンズエトニウムクロリド3gおよび水酸化ナトリウム溶液0.3g(水中で10%)からなる装入液に、攪拌しながら45分間の経過中にメチルトリメトキシシラン25.0gを供給した。更に、5時間の攪拌の後、生成された懸濁液25gに攪拌しながらトリメチルメトキシシラン1.2gを添加し、さらに10時間、攪拌した。メタノール50mlを添加することによって、懸濁液を破壊した。沈殿した固体を濾別し、3回メタノール30mlで洗浄し、トルエン50ml中に入れた。ヘキサメチルジシラザン1.6gの添加および10時間の攪拌の後、生成物をメタノール150mlで沈殿させ、濾別し、高真空中で乾燥した。相対組成式[(CHSiO1/2]1.38[CHSiO3/2]1.0の白色粉末1.2gを得ることができた。静的光散乱および動的光散乱(溶剤トルエン;測定の濃度範囲:0.5〜2g/l)により、10.0nmの流体力学的半径Rおよび10nm未満の回転半径Rを測定した。これから、1.0未満のρ比が明らかになる。ナノ分散性の球状粒子の分子量Mは、2.0×10であることが測定された。
【0070】
オルガノポリシロキサン粒子は、粘度35mPa・sのトルエン、ペンタン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルメタクリレート、スチレンおよびポリ(ジメチルシロキサン)中で良好に可溶性である。
【0071】
例2:
水125g、ベンズエトニウムクロリド3gおよび水酸化ナトリウム溶液0.3g(水中で10%)からなる装入液に、攪拌しながら1時間の経過中にメチルトリメトキシシラン13.3gとジメチルジメトキシシラン11.7gとからなる混合物を供給した。更に、10時間の攪拌の後、生成された懸濁液25gに攪拌しながらトリメチルメトキシシラン1.2gを添加し、さらに10時間、攪拌した。メタノール50mlを添加することによって、懸濁液を破壊した。沈殿した固体を濾別し、3回メタノール30mlで洗浄し、トルエン50ml中に入れた。ヘキサメチルジシラザン1.6gの添加および10時間の攪拌の後、生成物をメタノール150mlで沈殿させ、濾別し、高真空中で乾燥した。[(CHSiO1/2]−単位、[(CHSiO2/2]−単位および[CHSiO3/2]−単位から構成されている白色粉末2.0gを得ることができた。静的光散乱および動的光散乱(溶剤トルエン;測定の濃度範囲:0.05〜2g/l)により、11.7nmの流体力学的半径Rおよび10nm未満の回転半径Rを測定した。これから、0.85未満のρ比が明らかになる。ナノ分散性の球状粒子の分子量Mは、2.0×10であることが測定された。
【0072】
オルガノポリシロキサン粒子は、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、シクロヘキサン、ペンタンおよびメチルメタクリレート中で良好に可溶性である。
【0073】
例3:
共沸的に搬出される水の分離に適した蒸留可能性を備えた攪拌装置中に、メチルメタクリレート94kg、ブチルメタクリレート94kgおよびトルエン313kgを装入する。この混合物を105℃に加熱することによって、含有されている水を共沸的に除去する。この混合物から水がもはや搬出されなくなった時に、30℃に冷却し、シランGF 31 21kg(Wacker-Chemie社の市販製品)および第三ブチル−ペルエチルヘキサノエート2.1kgを添加する。この反応混合物を還流下に加熱し、この場合には、約100℃で明らかに反応が開始する。この混合物を還流下に8時間維持し、30℃に冷却する。n−ブタノール15.8kgおよびシランM1−トリメトキシ10.5kg(Wacker-Chemie社の市販製品)を撹拌下に混入する。30分間の攪拌の後、イソプロパノール720kgおよび120〜140℃の沸騰範囲を有するベンジン180kgを添加する。更に、30分間、攪拌する。濾過器上に充填する。8mPa・sの粘度および14質量%の固体含量を有する澄明で無色の溶液が得られる。引続き、シリコーンエラストマー粒子239kgを有機溶剤中(Wacker-Chemie社の商品名MIBK 444660)に添加する。更に、室温で2時間攪拌した後、生成物を適切な容器中に充填する。澄明で無色の液体は、13mm/sの粘度および22%の固体含量を示す。
【0074】
例4:
ディスソルバーディスクを備えた攪拌装置中に、ベンジン47.8kg(沸騰範囲140〜150℃)、メチルエチルケトン102.6kg、キシレン236.2kg、n−ブタノール9.9kgおよびテトラヒドロフラン60kgを装入し、強力に混合しながらVinnol E 15/40 A 52kg(Wacker-Chemie社の市販製品)を前記溶剤混合物中に溶解する。
【0075】
イソシアナトプロピルトリエトキシシラン0.5kgを添加し、還流下(約64℃)に1時間煮沸する。30℃に冷却し、テトラヒドロフラン50kg、トルエン350kgおよびアセトン1000kgを添加する。30分間、強力に混合する。澄明で無色の生成物は、11mPa・sの粘度および約2.8質量%の固体含量を有する。引続き、シリコーンエラストマー粒子239kgを有機溶剤中(Wacker-Chemie社の商品名MIBK 444660)に添加する。更に、室温で2時間攪拌した後、生成物を適切な容器中に充填する。澄明で無色の液体は、13mm/sの粘度および22%の固体含量を示す。
【0076】
例5:
蒸留用取付け物を有する撹拌機中にトルオール系溶液中のメチルシリコーン樹脂700kg(Wacker-Chemie社の商品名シリコーン樹脂溶液K トルエンの市販製品)およびシリコーン樹脂溶液K0118 200kg(Wacker-Chemie社の市販製品)を装入し、混合する。絶えず攪拌しながら、トルエン324kgを加熱によって常圧下で留去する。
【0077】
内容物質を有する装置を室温に冷却し、メチルトリエトキシシラン108kg(Wacker-Chemie社の市販製品M1-トリエトキシシラン)、テトラエトキシシラン54kg(Wacker-Chemie社の商品名TES28)、ビニルトリエトキシシラン54kg(Wacker-Chemie社の商品名Geniosil GF56)ならびにジルコニウムブチラート5kgを記載された順序で攪拌しながら添加する。
【0078】
1時間室温で攪拌し、次にアセトン900kgおよび水44kgを攪拌しながら添加し、1時間攪拌する。引続き、シリコーンエラストマー粒子239kgを有機溶剤中(Wacker-Chemie社の商品名MIBK 444660)に添加する。更に、室温で2時間攪拌した後、生成物を適切な容器中に充填する。澄明で無色の液体は、13mm/sの粘度および22%の固体含量を示す。
【0079】
例a):
本発明による上塗り塗料をヒドロゲンジメチルポリシロキサン(Hydrogendimethylpolysiloxan)5質量%(Wacker-Chemie社の商品名架橋剤W)と混合し、ナイフ塗布法でElastosil R 401/40からなる両側でシリコーンゴム被覆を有するガラス織物(Wacker-Chemie社の商品名)上に塗布する。被覆された織物の全質量は、240g/mである。上塗り塗料を180℃で2分間硬化させた後、10g/mの上塗り塗料の単位面積当たりの質量が生じる。
【0080】
上塗り塗料なしの膜は、5−5−6の汚れにくさを有する。シリコーン粘着テープで接着する場合には、217N/5cmの付着力値が生じる。公知技術水準によるトップコートを用いた場合には、4−4−3〜2−3−2の汚れにくさが達成され、ならびに0〜106N/5cmの付着力値が達成される。本発明による上塗り塗料を有する膜は、2−2−1の汚れにくさおよび233N/5cmの付着力値を有する。また、汚れの付着の結果ならびに付着力値は、戸外での6ヶ月間の耐候試験によって僅かにのみ減少される。
【0081】
マトリックス中への同時の良好な結合の際の拡大された表面積は、良好な接着可能性を生じる。
【0082】
【表1】

【0083】
測定結果は、本発明による上塗り塗料が良好な汚れにくさならびに良好な浄化挙動を有することを示す。接着試験における付着力値は、必要とされる値よりも明らかに高い。
【0084】
例b):
粗製質量100g/mを有するポリエステル織物にシリコーン液体ゴムからなるシリコーン被覆を両側で備えさせる(被覆質量100g/m)。上塗り塗料なしに被覆された織物は、5−4−4の汚れの付着の特徴を有する。上塗り塗料を有する被覆された織物は、3−3−2の汚れの付着の特徴を有する。また、汚れの付着挙動の改善は、60℃で5回の洗浄作業周期の後に明らかなままである。
【0085】
例c):
Elastosil LR 6250F 30g/m(Wacker-Chemie社の商品名)で被覆されたナイロン織物を本発明によるトップコートで被覆する。上塗り塗料の塗布質量は、5g/m
である。
【0086】
摩擦係数の測定のために、それぞれの被覆の2つのひな形を被覆上に置く。摩擦係数をDIN 53375により測定する。
【0087】
本発明による上塗り塗料によって、静的摩擦係数および動的摩擦係数が改善される。DIN ISO 5981による洗浄試験は、被覆の耐摩耗性が不利に影響を及ぼされないことを示す。
【0088】
【表2】

【0089】
汚れにくさを試験するための試験方法
シリコーンで被覆された膜の汚れにくさを測定するために、一般に受け入れられた規格は存在しない。従って、家庭内での試験方法が開発された。カーボンブラック粉末をティッシュペーパーで並存した3個所(A、BおよびC)でそれぞれ3回の円運動で膜上に塗布する。次に、円BおよびCを蒸留水で10秒間すすぎ洗いする。円Cを付加的に湿ったティッシュペーパーで3回の円運動で浄化する。円Aは、どの位のカーボンブラックが膜によって受け入れられたかを示す(汚れの付着)。円Bは、どの位のカーボンブラックが水によってすすぎ洗いされたかを示す(すすぎ洗い)。円Cは、どの位のカーボンブラックが湿った後浄化によって除去されうるかを示す(浄化)。
【0090】
汚れの付着は、可視的に1(極めて良好)〜6(極めて劣悪)の目盛りにつき評価される。即ち、3つの符号からなる分級化がもたらされる。この開発方法の目的は、2−3−2の特徴またはそれ以上の改善を達成することであった。
【0091】
接着可能性を試験をするための試験方法
接着可能性を測定するために、シリコーン上塗り塗料で処理された、シリコーンで被覆された2つの膜を、シリコーン粘着テープ(例えば、Elastosil R 4001/40、Wacker-Chemie社の商品名、厚さ0.6mm)を用いて180℃で熱プレス機中で2分間接着する。粘着テープの結合の付着力をDIN 53530により超音波試験で測定する。この開発の目的は、150N/5cmまたはそれ以上の全層の付着力を達成することであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー成分(1)
(A1)式(RSi−O1/2)で示される単位(M単位)の存在下または不在下で式(RSi−O3/2)で示される単位(T単位)からなるポリオルガノシロキサンおよび/または
(A2)式(RSi−O1/2)で示される単位(M単位)の存在下または不在下で式(Si−O4/2)で示される単位(Q単位)からなるポリオルガノシロキサン、
上記式中、
Rは、同一かまたは異なる、ハロゲン化されたかまたはハロゲン化されていない、基1個当たり1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基またはORを表わし、この場合Rは、同一でも異なっていてもよく、水素または置換されたかもしくは置換されていない、1〜8個の炭素原子を有する1価の炭化水素基を表わし、
但し、この場合には、1分子当たりSi結合した基OR0.01〜3.0質量%が含有されているものとし、
ならびに場合によっては
(B)塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレートコポリマー、
(C)酢酸ビニル−エチレンコポリマー、
(D)ポリ塩化ビニル、
(E)ポリアミド、
(F)ポリエステル、
(G)アクリレート−ポリエステルコポリマー、
(H)ポリアミド−ポリエステルコポリマー、
(I)酢酸ビニル−ポリエステルコポリマー、
(J)モノマー(メタ)アクリレートからなる群から選択された1つ以上のポリマー成分、
但し、この場合には、前記成分は、Si結合した(メタ)アクリレート基含有シランと共重合されているものとし、
(2)一般式
Si(OR4−x
で示されるシラン、
上記式中、Rは、置換されたかまたは置換されていない1価の炭化水素基を表わし、
は、1価の有機基を表わし、
xは、0または1を表わし、
(3)粒子の少なくとも80%は平均直径の最大30%が偏倚している直径を有するような5〜200nmの平均直径を有しかつ溶剤中で少なくとも5質量%が溶解する、唯一の分子からなる架橋されたオルガノポリシロキサン粒子であるシリコーン粒子、
(4)場合によっては溶剤、
(5)場合によっては触媒、
(6)場合によっては水を使用しながら製造しうる組成物。
【請求項2】
ポリオルガノシロキサン(A1)の場合には、M単位対T単位の比が0〜1.8:1であり、ポリオルガノシロキサン(A2)の場合には、M単位対Q単位の比が0.00〜2.7:1である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
唯一の分子からなる、架橋されたオルガノポリシロキサン粒子が
一般式
[RSiO1/2] (1)
で示される単位0.5〜80.0質量%、
一般式
[RSiO2/2] (2)
で示される単位0〜99.0質量%、
一般式
[RSiO3/2] (3)
で示される単位0〜99.5質量%、
一般式
[SiO4/2] (4)
で示される単位0〜80.0質量%および
一般式
[RSi(O(3−a)/2)−R−X−(R−Si(O(3−a)/2))] (5)
で示される単位0〜20.0質量%から構成されており、この場合
は、水素原子または同一かまたは異なる1価のSiC結合した、置換されたかまたは置換されていないC〜C18−炭化水素基を表わし、
は、同一かまたは異なる2価のSiC結合した、置換されたかまたは置換されていないC〜C18−炭化水素基を表わし、この炭化水素基は、−O−、−COO−、−OOC−、−CONR−、−NRCO−および−CO−の群からの2価の両側で炭素原子に結合された基によって中断されていてよく、
は、水素原子または基Rを表わし、
Xは、−N=N−、−O−O−、−S−S−および−C(C−C(C−の群からの基を表わし、
aは、0、1または2の値を表わし、
bは、0または1の値を表わし、
但し、この場合一般式(3)および(4)の単位の総和は、少なくとも0.5質量%であるものとする、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物を製造する方法において、この組成物の成分を反応させるかまたは混合することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項5】
成形体、平面形成体またはエラストマーにおいて、前記の成形体またはエラストマーが請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物または請求項4の記載により製造された組成物で被覆されていることを特徴とする、成形体、平面形成体またはエラストマー。

【公開番号】特開2006−83388(P2006−83388A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265457(P2005−265457)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(390008969)ワッカー ヘミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, BRD
【Fターム(参考)】