説明

改善された演色性を有するLEDをベースとする高効率の照明系

照明系は、青、緑及び赤からの混色原理(RGB混色)とLEDから発光される一次放射線を、前記放射線を吸収する蛍光体によってより長波長の光に変換する原理とを同時に利用し、その際、少なくとも2種のLEDが使用され、前記の第1のLEDは340〜470nmの領域(主波長)で一次発光し、かつ第2のLEDは600〜700nmの赤色領域(主波長)で発光し、その際、緑色成分は、第1のLEDの一次放射線を少なくとも部分的に緑色発光蛍光体により変換することにより製造され、その際、緑色発光蛍光体として、カチオンMを有しかつ基本式M(1−c)Si:D(式中、Mは成分としてSrを有し、Dは二価のユーロピウムでドープされていて、M=Sr又はM=Sr(1−x−y)BaCa、x+y<0.5である)で示されるオキシニトリドシリケートの種類からなる蛍光体を使用し、その際、前記オキシニトリドシリケートは完全に又はほとんどが、高温安定性の変態HTからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、次の出願:2003P14657, 2003P14654及び2003P14656と近い関係にある。
【0002】
本発明は、改善された演色性を有するLEDをベースとする高効率の照明系に関する。これは、特に完全に調光可能である波長変換型LEDである。
【0003】
従来の技術
改善された演色性を有するLEDをベースとする高効率の照明系のための構想は、三原色混色である。この場合、白色を作り出すために三原色の赤−緑−青(RGB)の混色が考慮される。この場合、赤色及び緑色に発光する2種の蛍光体の部分的変換のために青色LEDを考慮することができる。RGB系のための有効な緑色蛍光体のサーチは、例えばUS 6 255 670からの提案が示しているように現在のところ中間点にある。これとは別にUV発光LEDが使用され、前記UV発光LEDは赤色、緑色及び青色にそれぞれ発光する3種の蛍光体を励起する(WO 97/48138参照)。この例は、線放射体、例えばYOB:Ce,Tb(緑色)及びYOS:Eu(赤色)である。この場合、高い量子収率を達成するために、比較的短波長の発光(UV領域<370nm)が必要である。これは、UV−LED用にサファイア基板を使用する必要があり、このサファイア基板は極めて高価である。他方で、より安価なSiC基板系のUV−LEDを使用する場合には、380〜420nmの領域内の発光で満足しなければならない。この系RGBの個々の色は、WO 01/41215に説明されているように、基本的にLEDの一次放射線によるか又は波長変換型LEDにより製造することができる。
【0004】
全体の光収量を向上させるために、575〜605の領域で発光する第4のLEDが含まれる複雑な系もWO 00/19141に提案されている。もちろん、この種の系は基本的にRGB系よりも高コストであり、高価でかつ複雑である。
【0005】
若干異なる構想がDE-OS 101 37 042に示されていて、これは青色成分の特別な導入を用いた平面状の照明系を考慮していて、通常の吸収の問題を青色蛍光体を用いて回避している。
【0006】
この種の照明系用の蛍光体の興味深い種類はオキシニトリドシリケート(Oxinitridosilikat)のタイプの蛍光体であり、これは短縮式MSiONのもとで自体公知であり、例えば、"On new rare-earth doped M-Si-AI-O-N materials"、J. van Krevel著、TU Eindhoven 2000, ISBN 90-386-2711-4,第6章に記載されている。これはTbでドープされている。発光は365nm又は254nmによる励起で達成される。
【0007】
新規種類の蛍光体は、未公開のEP-PA 02 021 117.8(整理番号2002P15736)からも公知である。この蛍光体は式MSi(M=Ca、Sr、Ba)のEu付活又はEu,Mn共付活オキシニトリドシリケートからなる。
【0008】
発明の開示
本発明の課題は、演色性ができる限り高い請求項1の上位概念に記載の、改善された演色性を有するLEDをベースとする照明系を提供することであった。他の課題は、調光可能な照明系を提供することであった。
【0009】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成により解決される。従属形式請求項には殊に有利な実施形態が示されている。
【0010】
所定の用途のために、発光色RGBを有する3つのチップからなるRGB−LEDの使用は重要である。全ての三原色が異なるLEDにより実現されているため、全ての3つの構成要素は互いに独立して制御することができる。従って、この種の照明系を用いて相応する制御電子装置によってほとんど全ての所望の色座標を意図的に調節することができる。この解決手段の欠点は、極めて低い演色評価数Ra<50であり、この極めて低い演色指数は3つの個別の発光の狭帯域性によって生じている。他の欠点は、使用された緑色LEDが技術的な理由から、他の2つの構成要素と比べて明らかに効率が悪いことである。色度座標は作動電流及び温度に著しく依存することになる。現在の技術(青色の430〜470nmのInGaN−LEDもしくは黄色の>540nmの、特に赤色の600〜700nmの領域内のInGa−AIP−LED)は、緑色スペクトル領域中でのLEDの一次発光のために、十分な解決手段を有していない。一次放射線を用いて実現されるRGB解決手段の利点は、もちろんこの種の照明系が調光可能であることである。
【0011】
それに対して、演色性に関する高度な要求が重要視される照明系のために、LED一次発光の一部をより長波長の光、特に緑色に変換するLEDが使用される。もちろんこの構造は調光可能ではない、それというのもこの二次成分は一次成分とは無関係ではないためである。
【0012】
今までには、外界の影響に対して敏感でない高効率の緑色発光蛍光体は存在していない。
【0013】
本発明による照明系は、青、緑及び赤からの混色原理(RGB混色)とLEDから発光される一次放射線を、前記放射線を吸収する蛍光体によってより長波長の光に変換する原理とを同時に利用し、その際、少なくとも2種のLEDが使用され、前記LED中の第1のLEDは340〜470nmの領域(ピーク波長)、特に少なくとも420nmで一次発光し、かつ第2のLEDは600〜700nmの赤色領域(ピーク波長)で発光し、その際、緑色成分は、第1のLEDの一次放射線を少なくとも部分的に緑色発光蛍光体により変換することにより製造され、その際、緑色発光蛍光体として、カチオンMを有しかつ基本式M(1−c)Si:D(式中、Mは成分としてSrを有し、Dは二価のユーロピウムでドープされていて、M=Sr又はM=Sr(1−x−y)BaCa、x+y<0.5である)で示されるオキシニトリドシリケートの種類からなる蛍光体を使用し、その際、前記オキシニトリドシリケートは完全に又はほとんどが、高温安定性の変態HTからなる。
【0014】
二価のEuで付活されていて、場合により共付活剤としてMnがさらに添加されている式MSi(M=Ca、Sr、Ba)のオキシニトリドシリケートの蛍光体の使用が提案されていて、その際、前記蛍光体は主に又は単独で、つまり蛍光体の50%より多くがHT相からなる。このHT変態は、広帯域で励起可能であり、外界の影響に対して極めて高い安定性を有し、つまり150℃でも測定可能な劣化を示さず、変化する条件下で極端に良好な色度座標安定性を示す(20〜100℃でわずかなドリフトが測定可能なだけである)ことを特徴とする。他の有利な点は、赤色領域において吸収性が低く、このことは蛍光体混合物の場合に特に有利である。この蛍光体は以後しばしばSr−Sion:Euとする。
【0015】
この新規種類の蛍光体を製造する際に、特に高い温度が重要であり、この合成範囲は1300〜1600℃である。他の決定的な因子は、出発成分の反応性である。この反応性はできる限り高いのが好ましい。
【0016】
EP-PA 02 021 117.8から公知の蛍光体のMSi:Eu(M=Ca、Sr、Ba)は、M=Sr又はM=Sr(1−x−y)BaCa(式中、x+y<0.5)のSrドープされた実施態様(以後Sr−Sionとする)の場合にだけ、制御するのが困難である。個々の試験条件は抜群の結果を提供するにもかかわらず、今までは信頼できる望ましい結果を得るために基準が欠けていた。このために、高い温度負荷の際に蛍光体の効率が低下しかつ色度座標が著しく変化するという特定の傾向が生じていた。
【0017】
意外にも、二つの相が蛍光体としてのその適性で本質的に区別されることが明らかになった。NT相はEuドープされた蛍光体として限定的にだけ利用可能でありかつむしろオレンジ−赤色を発光するが、HT相は緑色に発光する蛍光体として抜群の適性を示す。多くの場合にこの両方の変態の混合物が存在し、この混合物は広帯域の両方の発光により認識される。従って、HT相をできる限り純粋に、少なくとも50%の割合で、有利に70%の割合で、特に有利に少なくとも85%の割合で製造することが望ましい。
【0018】
このために、焼成プロセスを少なくとも1300℃で、しかしながら1600℃以上で実施する必要がある。約1450〜1580℃の温度範囲が有利である、それというのもより低い温度の場合には次第にNT相の形成が増加し、より高い温度では蛍光体の加工性が次第に悪くなり、かつ約1600℃からは硬質に焼結されたセラミック又は融液として存在するためである。この最適な温度範囲は、出発材料の正確な組成及び特性に依存する。
【0019】
Sr−Sionタイプの有効な蛍光体を製造するために特に重要なのは出発生成物のバッチであり、これは基本成分SiO、SrCO並びにSiの使用下でほぼ化学量論である。Srはこの場合に例えばMで表されている。この相違は理想的な化学量論的バッチの特に10%、有利に5%を上回らないのが好ましく、その際、しばしば常用である融剤の場合による添加もこの場合に含まれる。1%の最大の相違が特に有利である。これには、例えば酸化物のEuとして実現されるドーピングに寄与するユーロピウムのための前駆体が挙げられる。この認識は、今までの基本成分SiOを明らかに化学量論的に不足量で添加するという方法とは反対である。この認識は、EP-PA 02 021 117.8の教示による蛍光体として推奨される他のSion、たとえばBa−SionがまさにSiO不足量で製造されていることからも特に意外である。
【0020】
Sr−SionのMSiについて相応するバッチは、従ってSiO 11〜13質量%、Si 27〜29質量%、残りSrCOが使用される。Mに対するBa割合及びCa割合は、相応して炭酸塩として添加される。ユーロピウムは所望のドーピングに応じて、例えば酸化物又はフッ化物として、SrCOの代わりとして添加される。このバッチのMSiは電荷の維持に関して調和がとれている限り正確な化学量論から場合によって相違していることが考えられる。
【0021】
主格子の出発成分、特にSiができる限り高い純度を有することが特に有利であると判明した。従って、例えば四塩化ケイ素から出発する液相から合成されたSiが特に有利である。特に、タングステン及びコバルトによる汚染は危険であることが判明した。前記汚染はできる限り少なくするのが好ましく、前記前駆体物質に関して特にそれぞれ100ppmより少ない、特に50ppmより少ないのが好ましい。さらに、できる限り高い反応性が有利であり、これは活性表面積(BET)により定量化できる。これは、少なくとも6m/g、有利に少なくとも8m/gであるのが好ましい。アルミニウム及びカルシウムによる汚染も、前駆体物質のSiに対してできる限り100ppmを下回るのが好ましい。
【0022】
上記の方法実施から化学量論的バッチ及び温度管理において相違する際に、SiO添加量が低すぎる場合には窒素過剰量が生じるため、不所望な異質相としてニトリドシリケートのMSi、例えばMSiが増大する質量で生じる。この化合物自体は注目すべき蛍光体であるにもかかわらず、前記化合物はSr−Sionの合成との関係において、他のニトリドシリケートと同じように極端に妨げになる、それというのもこの異質相はSr−Sionの緑色放射を吸収し、かつ場合により前記ニトリドシリケートの公知の赤色放射に変換してしまうためである。反対に、高すぎるSiO添加量の際に、酸素過剰量が生じるために、ケイ酸Sr、例えばSrSiOが生じる。2つの異質相は利用可能な緑色の発光を吸収するか又は少なくとも格子欠陥、例えば空格子欠陥を引き起こし、この格子欠陥は蛍光体の効率を著しく損なってしまう。根拠として、異質相の割合ができる限り15%を下回り、有利に5%を下回る基準が用いられる。このことは、合成された蛍光体のXRDスペクトルにおいて、25〜32°の範囲内のXRD偏向角2θの場合に全ての異質相のピークの強度が、約31.8°でHT変態に特徴的な主ピークの強度の1/3より小さく、有利に1/4より小さく、特に1/5より小さいとする条件と一致する。このことは、特にSrSi、例えばSrSiのタイプの異質相に当てはまる。
【0023】
最適な方法実施の場合に、80〜明らかに90%を上回る量子効率が間違いなく達成される。それに対して、特別ではない方法実施の場合に、前記効率は高くても50〜60%の量子効率の範囲内にあるのが典型的である。
【0024】
本発明の場合に、従って、二価のEuで付活されていて、場合により共付活剤としてMnがさらに添加されている式MSi(M=Ca、Sr、Ba)のオキシニトリドシリケートの蛍光体が製造され、その際、前記蛍光体は主に又は単独で、つまり蛍光体の50%より多くが、有利に蛍光体の85%より多くがHT相からなる。このHT変態は、広帯域で励起可能であり、つまり50〜480nm、特に150〜480nm、特に有利に250〜470nmの広い範囲で励起可能であり、これは外界の影響に対して極端に高い安定性を有し、つまり空気中で150℃で測定可能な劣化は示さず、かつ変化する条件下で極めて良好な色度座標安定性を示すことを特徴とする。他の有利な点は、赤色領域において吸収性が低く、このことは蛍光体混合物の場合に特に有利である。この蛍光体は以後しばしばSr−Sion:Euとする。HT変態の過剰は、特に、25〜27°でのXRDスペクトルにおけるHT変態の3つの反射グループからなる最も高い強度を有するピークと比較して、約28.2°でのXRDスペクトルにおけるNT変態に特徴的なピークが、1:1よりも低い、有利に1:2よりも低い強度を有することにより識別可能である。この場合に実施されたXRDスペクトルは、それぞれ公知のCu−Kα線による励起に関する。
【0025】
同じ付活剤濃度で、この蛍光体は、同じ化学量論のNT変態とは異なる発光特性を示す。HT変態の半値幅は、最適なHT変態の場合に、単純な異質相を有する及び欠陥を有する混合物の場合よりも著しく低く、70〜80nmの範囲内にあるが、他方で単純な異質相を有するもしくは欠陥を有する混合物は約110〜120nmの半値幅を示す。この主波長はHT変態の場合に、明らかに異質相を有する試料の場合よりも一般に短く、典型的に10〜20nm短い。このために、高純度のHT変態の効率は、NTが主体の又は高い異質相を有する混合物の場合よりも、一般に少なくとも20%高く、部分的にさらに明らかに高くなる。
【0026】
NT変態及び異質相の割合が十分に低いという特徴は、90nmより低い発光の半値幅(FWHM)である。それというのもの異質相割合が少なくなればそれだけ、異質相が多い変態、特にニトリドシリケート異質相のSr−Si−N−Eu、特にSrSi:Euの特異的なオレンジ−赤色発光の割合が少なくなるためである。
【0027】
特性決定のために役立つのは、前記の低い半値幅の他に、前記したXRDスペクトルにおける典型的な反射であり、これは異なる結晶構造を明確に示している。
【0028】
HT変態のXRDスペクトルにおける主要なピークは約31.7°におけるピークである。他の主要なピークは、25〜27°の間(25.3及び26.0及び26.3°)のほぼ同じ強度の3つのピークであり、その際、最も小さな回折を有するピークが最も強いピークである。他の強いピークは12.6°である。
【0029】
この蛍光体は特に、550〜570nm、特に555〜565nmの領域内の主波長で緑色に発光する。
【0030】
式MSiのオキシニトリドシリケートの分子中のSiN基に換えてAlO基をわずかに、特にSiN割合の最大で30%まで混入することも可能である。
【0031】
このSr−Sion:Euの両方の相は、同様に2つの構造的に異なる主格子変態に結晶化することができ、それぞれバッチ化学量論SrSi:Euを介して製造できる。この化学量論のわずかな相違は可能である。Euドープされた主格子は意外にも青色又はUVにおける励起の際に両方とも、主格子変態に応じて異なる発光色で発光する。NT変態はオレンジ色の発光を示し、HT変態は原則的に明らかにより高い効率で例えばλdom=560nmで緑色発光を示す。ドーピング含有量及びドーピング材料(Eu又はEu、Mn)に応じて並びにHT変態とNT変態との相対的割合に応じて、蛍光体の所望の特性を正確に調節できる。
【0032】
HT相の利点は、量子効率がわずかに変化するだけで、極めて広いスペクトル領域にわたる均一な良好な励起性である。
【0033】
さらに、広い温度範囲におけるHT変態のルミネッセンスは温度にあまり依存しない。従って、安定化のための特別な措置なしで特にLED用途のための緑色発光する蛍光体は初めて見出された。これは、前記課題のために今までに最も有望の候補として見なされていた蛍光体、つまりチオガレート蛍光体又はクロロシリケートと比較して優れている。
【0034】
M=(Sr,Ba)の、有利にBaなしの又は10%までのBa割合を有するSion化合物は、発光極大の広い領域を有する有効な蛍光体である。これは、純粋なSr−Sionの場合よりも大抵はより短波長にあり、有利に520〜565nmの間にある。達成可能な色空間は、さらにCa及び/又は亜鉛の少量の添加(有利に30mol%まで)によって拡張され、それにより発光極大はむしろ純粋なSr−Sionと比較して長波長領域にシフトされる;並びにSiのGe及び/又はSnによる部分的な置き換え(25mol%まで)によって拡張される。
【0035】
他の実施態様は、Mの、特にSrの三価又は一価のイオン、例えばY3+、La3+又はLi、Naによる部分的置き換えである。有利にこのイオンの割合はMの最大20mol%である。
【0036】
特に、この蛍光体は照明系中で使用する場合に有利であり、その際、前記蛍光体は緑色蛍光体として今までの緑色成分用の非効率な解決手段に代えられる。蛍光体の励起はこの場合、高効率の一次放射線を有する青色LED又はUV−LEDにより行われる。この緑色発光は、他の技術的解決手段、例えばチオガレート又はクロロシリケートと比較して比較的広帯域であるため、明らかに向上した演色評価値が生じる。
【0037】
この蛍光体は、UV−青色に一次発光するLEDをベースとするフルカラーに適した波長変換型LED並びに任意に調節可能な色を有する波長変換型LEDにおける使用のために特に良好に適している。本発明による蛍光体による変換は、青緑色〜黄緑色を提供する。
【0038】
M=(Sr,Br)を有する混合化合物は、広い範囲の発光極大を有する有効な蛍光体である。この発光極大は520〜570nmの間にある。達成可能な色空間は、さらにCa及び/又は亜鉛をわずかに添加(有利に30mol%まで)すること、並びにSiをGe及び/又はSnに部分的に置き換える(25mol%まで)ことによって拡張される。
【0039】
他の実施態様は、Mの、特にSrの三価又は一価のイオン、例えばLa3+又はLiによる部分的置き換えである。有利に割合はMの最大20mol%である。
【0040】
波長変換型LED用の本発明による蛍光体は、有利に、青色一次放射線を用いる場合でも白色光の製造のために使用され、UV一次放射線を用いる場合でも、青色及び黄緑色に発光する蛍光体を用いて白色光が製造される。青色成分用の代表物は自体公知であり、例えばBaMgAl1017:Eu2+(BAMとして公知)又はBaSiO(Cl,Br):Eu2+又はCaLa:Ce3+又は(Sr,Ba,Ca)(POCl:Eu2+(SCAPとして公知)が適している。黄緑色成分として本発明による蛍光体が適している。
【0041】
この系の色の改善のためにさらに赤色蛍光体が使用される。付加的な赤色に一次発光するLEDの使用が有利である。前記蛍光体は特に、青色に発光する基本−LEDと一緒に使用され、((Y,La,Gd,Lu)S:Eu3+、SrS:Eu2+又は特にCa割合の高い(Ca,Sr)Si:Eu2+が特に適している。
【0042】
このように、特に、照明系の調光性を損なうことなしに、広い領域で、色温度2200〜3500Kの暖白色の光の色で、演色評価値Raの85〜95の値が達成される。
【0043】
この見出された解決手段は、もはや両方の一部の局面の解決手段より優れている、それというのもこの解決手段は今まで効率的に最適化された系よりも高い効率を可能にし、かつ調光可能な系の劇的に改善された解決手段を可能にする。従って、全体でこの技術に対するブレークスルーが達成された。
【0044】
RGB技術において、主波長440〜465nm、有利にピーク波長460nmを有する高効率の青色LEDを波長変換型LEDと組み合わせて使用することにより、窒化物系の蛍光体だけを使用する照明系が特に有利である。第1の波長変換型LEDは、一次光源として有利にピーク波長460nm青色LEDを使用し、緑色の二次光源として前記したSr−Sionを用いて変換する。第2の波長変換型LEDは、一次光源として有利にピーク波長約460nm青色LEDを使用し、赤色の二次光源として(Ca,Sr)Si:Eu2+タイプのニトリドシリケートを用いて変換する。意外にも、これらの三成分はそのスペクトル中でほぼ理想的に補い合うため、高効率で高い演色性が可能となる。
【0045】
本発明による照明系の技術的な実現は多様な方法で行うことができる。特に、いわゆるマルチチップLEDが重要であり、この場合異なるチップが1つのケーシング中に存在する。通常では、この場合2つ又は3つのチップが存在する。原則として次の実現化が可能である:
前記の第1のLEDは第1の実施態様の場合に340〜430nmの領域で一次発光するUV−LEDであり、これが緑色蛍光体を励起して二次発光を生じる。第2のLEDは赤色発光LEDである。さらに、有利にそれ自体青色に一次発光(430〜470nmでピーク)する第3のLEDが使用されるか、又はUVで一次発光するLEDにより青色蛍光体が励起される。
【0046】
第2の実施態様の場合には2種のLEDだけが使用される。この場合、第1のLEDは340〜420nmの領域で発光する一次UVであり、その際、前記LEDの前方に青色発光蛍光体と新規の緑色発光蛍光体とが配置されている。この両方の蛍光体は第1のLEDのUV放射線を完全に変換する。しかしながら、第1のLEDが430〜470nmの領域でピークを有する青色発光LEDであり、前記LEDの前方に新規の緑色発光蛍光体が設けられていて、この蛍光体はLEDの一次発光を緑色の二次放射線に変換する態様も有利である。第2のLEDは赤色発光LEDである。もちろん、赤色成分がより短波長の放射線、例えばUV−LED又は青色LEDの変換により製造されることも排除されない。
【0047】
ここに記載されたLEDはもちろん同種のLEDのグループとも解釈される。
【0048】
これらの個々のチップには、この場合、局所的にそれぞれの蛍光体が設けられている。これらの個々のチップは、この目的で異なる中空室又はキャビティ中に存在するか又は唯一のキャビティ中に一緒に存在することができる。この場合、前記のチップには、通常では既に予備プロセスにおいて蛍光体が設けられている。唯一のキャビティを用いた解決手段又は蛍光体が物理的にチップと区分されて配置されている解決手段の場合には、蛍光体の塗布は、照明系のケーシング内へのチップの組み込みの後に初めて行うこともできる。この記載された蛍光体は、特にチップ付近での変換の技術のために適していて、前記技術自体は文献中に公知である(例えばDE 102 03 795参照)。
【0049】
本発明は、さらに前記したようなLEDを備えた照明系に関し、その際、前記の照明系はさらに電子的な構成要素を有する。この構成要素は例えば調光を行うことができる。前記電子装置の他の課題は、個々のLED又はLEDのグループの制御である。この機能は周知の電子的エレメントによって実現することができる。
【0050】

次に、2つの実施例に基づき本発明について詳しく説明する。
【0051】
図面の簡単な説明:
図1は、オキシニトリドシリケートの発光スペクトルを表す。
【0052】
図2は、前記オキシニトリドシリケートの反射スペクトルを表す。
【0053】
図3は、複数の半導体デバイスを備えた照明系を表し、前記半導体デバイスは白色光用の光源として利用され(図3b)、その際、1つの半導体デバイスは拡大されて示されている(図3a)。
【0054】
図4は、図3からの半導体デバイスの発光スペクトルを表す。
【0055】
図5は、半導体デバイスの第2の実施例を表す。
【0056】
図面の記載
高効率で緑色に発光する蛍光体についての具体的な例を図1に示した。これはHT変態の形の蛍光体SrSi:(10%Eu2+)の発光であり、この場合Eu割合はSrが配置される格子位置の10mol%である。この発光極大は545nmにあり、平均主波長は564nm(λdom)にある。この色度座標はx=0.393;y=0.577である。励起は460nmで行った。FWHMは84nmである。
【0057】
図2は、前記蛍光体の拡散反射スペクトルを示す。この拡散反射スペクトルは430nmより低い領域で顕著な最低値を示し、従ってこれはこの領域での良好な励起性を表している。
【0058】
白色光のための光源の構造は、図3a、3bに詳細に示されている。前記光源(図3b参照)は、例えば460nmのピーク発光波長を有するInGaNタイプの第1のチップ1と、例えば620nmのピーク発光波長を有するInGaAIPタイプの第2のチップと、最後に例えば460nmの一次ピーク発光波長を有するInGaNタイプの第3のチップを用いた波長変換型LEDタイプの半導体素子とを備えたLEDタイプの半導体デバイス6である。前記半導体デバイス6は他の同様のデバイスと共に光不透過性の基体ケーシング8中に埋め込まれている。前記蛍光体は、実施例として挙げられたオキシニトリドシリケートのSrSi:Eu(10%)であり、これはチップ3の一次放射線を完全に変換し、かつλdom=563nmのピーク発光547nmの緑色放射線に変換する。この解決手段は、電子的制御装置7による3つのLEDの相対的強度の変更により広い範囲の色温度に調光可能であるという大きな利点を有する。今まで提供されている3種の一次発光LED(RGB、その際、緑色はλdom=526を有するInGaN−LEDにより実現された)を用いた解決手段と比較して(表1参照)、新規の解決手段の明らかな優位性が示された。図3aはLED6の拡大図を表す。
【0059】
図4は、波長(nm)にわたるスペクトル分布(任意単位の強度)としてのこの種の照明系の発光を示す。波線は従来の解決手段(3種の一次発光LED)を示し、色温度4000Kでの新規の解決手段(2種の一次発光LEDと緑色のための波長変換型LED)と比較する。
【0060】
緑色波長変換型LEDのために長波長の一次光源(450〜465nm)を使用する特別な利点は、ケーシング及び樹脂並びに蛍光体の老化及び劣化を伴う問題を解消することで、長い寿命を達成することである。
【0061】
他の実施例の場合には、緑色波長変換型LEDのために一次光源としてUV−LED(約380nm)を使用し、その際、ケーシング及び樹脂並びに蛍光体の老化及び劣化を伴う問題は付加的に自体公知の方法、例えばケーシング材料の入念な選択、UV耐性樹脂成分の添加によりできる限り十分に回避しなければならない。この解決手段の大きな利点は、それにより達成可能な一般に30lm/Wの極めて高い効率である。
【0062】
表1: 単なるLEDの解決手段(従来)をベースとする白色発光半導体デバイスと、緑色波長変換型LEDを用いた解決手段(新規)をベースとする白色発光半導体デバイスとの演色評価値Ra並びに赤色評価値R9の比較。
【0063】
【表1】

【0064】
他の実施例(図5参照)の場合に、白色発光半導体デバイスとして2種のLEDを用いた解決手段が用いられる。この原理構造は、WO 01/41215に記載されているものと同様である。第1の波長変換型LEDは青色及び緑色成分が準備されている。例えば460nmの一次ピーク発光波長を有するInGaNタイプのチップ1が、光不透過性の基体ケーシング8の中空室9の範囲内に埋め込まれている。同時に、前記キャビティ9中にさらに、赤色に発光するInGaAIPタイプの第2のLED2が、第1の実施態様と同様に取り付けられている。
【0065】
前記チップは、別個に制御可能な別々の端子3を有している。前記端子の一方3は、ボンディングワイヤ4を介してチップ1,2と接続している。この凹設部は壁部7を有し、この壁部7はチップ1,2の一次放射線のためのリフレクタとして利用される。この凹設部9は注型材料5で充填されていて、この注型材料は主成分(80〜90質量%)としてシリコーン注型樹脂(又はエポキシ注型樹脂)と蛍光体顔料6(15質量%未満)とを含有する。他のわずかな成分は、特にメチルエーテル及びアエロジル(Aerosil)である。前記蛍光体は、比較的低い濃度での第1の実施例として挙げられたオキシニトリドシリケートのSrSi:Eu(10%)であり、これはLEDの一次放射線を部分的に変換し、かつピーク発光540nm、もしくはλdom=560nmの緑色放射線に変換する。
【0066】
共通のキャビティを備えた比較的狭い構造形式は、645nmでの一次発光を有する赤色LED2が緑色蛍光体によって吸収されないかもしくは変換されないために可能である。従って、狭い半値幅(FWHMが90nm以下、有利に80nm以下)の重要性が実例で示される。この初めて想定された極端にコンパクトな解決手段の欠点は、3種のLEDを用いた解決手段と比較して、単に調光性に欠けるだけである。
【0067】
この照明系は、この照明系の光の色又は明度を自由に選択可能な所定の基準に応じて調節するか又は適当な方法で周囲の明度に適合させる適応型照明の構想のために特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】オキシニトリドシリケートの発光スペクトルを表す図。
【図2】前記オキシニトリドシリケートの反射スペクトルを表す図。
【図3】半導体デバイスの拡大図(図3a)及び複数の半導体デバイスを備えた照明系の白色光用の光源を示す図(図3b)。
【図4】図3からの半導体デバイスの発光スペクトルを表す図。
【図5】、半導体デバイスの第2の実施態様を表す断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青、緑及び赤からの混色原理(RGB混色)と、LEDから発光される一次放射線を、前記放射線を少なくとも部分的に吸収する蛍光体によってより長波長に変換する原理とを同時に利用し、少なくとも2種のLEDが使用され、前記LEDの第1のLEDは340nm〜470nmの領域(ピーク波長)で、特に少なくとも420nmで一次発光し、第2のLEDは600〜700nmの赤色領域(ピーク波長)で発光する、改善された演色性を有するLEDをベースとする高効率の照明系において、緑色成分は、第1のLEDの一次放射線を少なくとも部分的に緑色発光蛍光体によって変換することにより製造され、緑色発光蛍光体として、カチオンMを有しかつ基本式M(1−c)Si:D(式中、Mは成分としてSrを有し、M=Sr単独であるか又はM=Sr(1−x−y)BaCa、0≦x+y<0.5)で示されるオキシニトリドシリケートの種類からなる蛍光体が使用され、前記オキシニトリドシリケートは完全に又はほとんどが、高温安定性の変態HTからなることを特徴とする、高効率の照明系。
【請求項2】
系が同じ種類のLEDのグループを有することを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項3】
3種のLED又はLEDのグループを使用し、第1のLEDの一次放射線は完全に緑色二次発光に変換され、第3のLEDは、特に430〜470nmの領域内でピーク波長を有する青色光を発光することを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項4】
系は、調光性又は系の特性、例えば光の色の意図的な制御を行う制御電子装置を有することを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項5】
系は個々のLED又はLEDのグループの明度を別個に調整する制御電子装置を有することで、2500〜5000Kの対域内で少なくとも1000Kをカバーする色温度の領域で調光可能であり、選択された領域内のそれぞれ選択された色温度で少なくとも85、特に少なくとも90のRaを有する照明系が生じることを特徴とする、請求項3記載の照明系。
【請求項6】
2種のLED又はLEDのグループを使用し、その際、第1のLEDの一次放射線は一部だけ緑色二次発光に変換され、その際、前記第1のLEDは緑色にも青色にも貢献することを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項7】
緑色二次発光は550〜570nmの領域内の主波長を有することを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項8】
オキシニトリドシリケートにおいてEuの割合がMの0.1〜20mol%であることを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項9】
MとしてSrは大部分の割合を占めていて、かつMの一部、特に30mol%までがBa及び/又はCaに置き換えられていることを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項10】
Mの一部、特に30mol%までがLi及び/又はLa及び/又はZn及び/又はNa及び/又はYに置き換えられていることを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項11】
式MSiのオキシニトリドシリケート中の基SiNの一部、特に30mol%までが基AlOに置き換えられていることを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項12】
Euの一部、特に30mol%までがMnに置き換えられていることを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項13】
一次放射源として420〜470nmの領域内でピーク波長を有する、特に440〜465nmの領域内でピーク波長を有するInGaN系の発光ダイオードを使用することを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項14】
RGB原理を用いた混色により、色温度2500〜5000K、特に3500〜5000Kを有する白色発光照明系が実現されることを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項15】
複数の発光する構成要素、特に青色及び緑色成分を同時に発光する波長変換型LEDと赤色成分を直接発光するLEDとが、1つのキャビティ内に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の照明系。
【請求項16】
オキシニトリドシリケートの半値幅が90nmより小さい、有利に80nmより小さいことを特徴とする、請求項17記載の照明系。
【請求項17】
系が、個々のLED又はLEDのグループを制御するための電子装置を有することを特徴とする、請求項1記載の照明系。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−507065(P2007−507065A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527270(P2006−527270)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002135
【国際公開番号】WO2005/030903
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Wernerwerkstrasse 2, D−93049 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】