説明

改善された熱的性質を有する高透明度フィルム

カレンダー加工によって半結晶性ポリエステルから製造された透明度の高いフィルムを開示する。これらのフィルムは、意外なことに、より高いピーク融点を発現し、より高い耐熱性をもたらす。半結晶性ポリエステルは生分解性であることができる。これらのカレンダー加工フィルムは、延伸すると、従来の方法によって製造されるフィルムに比較して予想外に高い物理的強度又は透明度を発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、半結晶性(semicrystalline)ポリエステルのカレンダー加工によって製造されたフィルムに関する。本発明はまた一般的に、カレンダー加工された半結晶性ポリエステルフィルムの延伸によって製造されたフィルムに関する。これらのフィルムは、改善された強度、透明度及び熱的性質を有する。
【背景技術】
【0002】
カレンダー加工は、プラスチックからフィルム及びシートを製造するための経済的で、効率の高い手段である。これらのフィルム及びシートは通常、1mil(0.025mm)〜80mil(2mm)の範囲の厚さを有する。これらは、種々の包装用途に使用される種々の形状に容易に熱成形される。例えば、カレンダー加工されたポリ塩化ビニル(PVC)フィルム又はシートはプールライナー、グラフィック・アーツ、トランザクション・カード、セキュリティ・カード、化粧板、壁装材、温室の透明板ガラス、本の装丁、フォルダー、フロアタイル及び二次操作で印刷、装飾又は貼り合わされる製品を含む広範囲の用途に使用できる。
【0003】
PVCは60年以上前から用いられているが、PVCは廃棄及び環境上問題を提起するため、代わりとなる環境に優しい材料が必要とされている。例えば、PVCは、焼却時に有毒副生成物を排出し、環境に残留する。PVC組成物は、カレンダー加工フィルム(calendered film)及びシートビジネスの中で群を抜いて大きい部分であるが、少量の他の熱可塑性ポリマー、例えば熱可塑性ゴム、ある種のポリウレタン、タルク充填ポリプロピレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー(本明細書中では「ABS」と略する)及び塩素化ポリエチレンも場合によっては、カレンダー加工法によって加工される。ポリエステルポリマー、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(本明細書中では「PET」と略する)又はポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(本明細書中では「PBT」と略する)をカレンダー加工しようとする試みはうまくいっていない。例えば0.6dL/gのインヘレント粘度値を有するPETポリマーは、カレンダーロール上で適切に機能する充分な溶融強度を有さない。また、典型的な加工温度においてカレンダーロールに供給される場合には、PETポリマーは急速に且つ制御不能な状態で結晶化し、その後の加工に適さない不均質な塊を形成する。この不均質な塊は、カレンダーの軸受上に不所望な強い力を生じる。加工時には、ポリエステルポリマーが周囲条件に暴露されたロール上において及びポリマーメルトの製造に必要な高温において加水分解する傾向が問題となる場合がある。加工潤滑剤(process lubricant)も内部剥離剤も含まない典型的なPETポリマーはまた、典型的な加工温度においてカレンダーロールに粘着する傾向がある。種々のコポリエステル組成物のカレンダー加工及びこれらの問題へのいくつかのアプローチは、例えば特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13及び14に記載されている。これらの問題のいくつかはポリマーの性質、添加剤及び加工条件を慎重に選択することによって回避できるが、ポリエステルのカレンダー加工は困難であるか、或いはこれまでは不可能又は非実際的である可能性がある。
【0004】
フィルム又はシートへのポリエステルの従来の加工は、フラットダイのマニホールドからのポリエステルメルトの押出を含む。材料のウェブ全体にわたって厚さを制御するために手動又は自動のダイリップ調整が用いられる。溶融ウェブを冷却し且つ平滑な表面仕上げを与えるために、水冷チルロールが用いられる。押出法は、優れた品質のフィルム及びシートを生成するが、カレンダー加工法によって提供される処理量及び経済的利点を有さない。また、カレンダー加工法における標準寸法の交差(gauge tolerance)は、押出の場合よりも優れている。更に、脂肪族−芳香族ポリエステル、例えばECOFLEX(登録商標)コポリエステル(BASF Corporationから入手可能)、他の同様な生分解性樹脂及びこれらの樹脂のブレンドから製造された押出フィルムは、典型的には不良な光学的性質を有する、即ち一般に透明でないが、表面との接触時に改良された透明度を示すことができる。この不良な透明度は、一つには、溶融流延及びメルトブローのような従来の加工技術を用いて、これらの樹脂を成功裏に加工するのに必要な粘着防止剤によるものである。このような不良な透明度のため、これらのフィルムは多くの商業的用途で容認されない。生分解性ポリマーから従来の方法によって製造されたフィルムもまた、不良な強度を有し且つ裂け易い傾向がある。従って、これらのフィルムには、例えばゴミ袋のような多くの用途に必要な靭性がない。
【0005】
ポリマーは、ガラス転移温度、即ちTgとして知られる熱転移を有する。室温又はそれ以下のTgを示すポリマーから製造された製品は典型的には柔軟であると考えられる。一般に、Tgが室温よりも低いほど、ポリマーは柔軟であろう。柔軟性がより高く且つ柔軟感の増大したポリマーを必要とする商業的用途に関しては、より低いTgは通常、本質的により低いTgを有するポリマー、例えばポリエチレンを用いるか又は設計することによって、或いはTgを所望の温度に低下させることができる添加剤、例えば可塑剤を用いることによって得られる。例えばポリエステルは、典型的には、多くのフィルム用途に必要な柔軟性を得るのに可塑剤の存在を必要とする。
【0006】
本質的により低いTgを有するポリマーの製造はモノマーの適切な選択によって行うことができる。しかし、場合によっては、得られるポリマーは重要な特性を失うことになる。これらのうち1つは、フィルム又は製品の表面性状に関係する。典型的には、Tgが低くなると、表面粘着性が増加し、その結果、表面への粘着性が増加する。従って、Tgが低い材料を用いて製造された製品及びフィルムはそれ自体に粘着し、製品又はフィルムを融合又は溶融させて1つの塊となるまで粘着することすらある。この問題を克服する1つの方法は、「粘着防止」剤、例えば無機化合物又はTgがより高いポリマーの混和である。これは、ポリマー表面に現れ、フィルム又は製品上の新しい表面に添加剤の粘着特性を与える。しかし、粘着防止剤は場合によっては、カレンダー加工フィルムの透明度を低下させ、また、しばしば多くの包装用途には不所望である。
【0007】
カレンダー加工フィルム中の可塑剤の存在はまた、いくつかの用途では往々にして望ましくない。例えば、ポリエステル中の可塑剤の濃度は、揮発又は抽出減量によって徐々に低下する可能性があり、これがフィルムの物理的性質に許容され得ない漸次的変化をもたらすおそれがある。可塑剤はまたフィルムとの接触時に蒸気又は液体の汚染を引き起こす可能性がある。多くの可塑剤は環境においてゆっくり分解するので、前記のゴミの問題以外の環境問題を提起する。このため、可塑剤を用いない軟質フィルムの製造が望ましく、結局はいくつかのフィルム用途では必要な場合がある。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,998,005号
【特許文献2】米国特許第6,068,910号
【特許文献3】米国特許第6,551,688号
【特許文献4】米国特許出願第10/086,905号
【特許文献5】特開平8−283547号公報
【特許文献6】特開平7−278418号公報
【特許文献7】特開平9−217014号公報
【特許文献8】特開2002−53740号公報
【特許文献9】特開平10−363908号公報
【特許文献10】特開2002−121362号公報
【特許文献11】特開2003−128894号公報
【特許文献12】特開平11−158358号公報
【特許文献13】欧州特許出願公開第1 375 556 A2号
【特許文献14】国際出願公開第02/28967号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、前記欠点から、可塑剤も粘着防止剤も添加する必要のない、高い透明度、高い耐熱性及び優れた靭性を示す、柔軟なカレンダー加工フィルム及びシートの必要性が生まれた。更に、環境において生分解性である、透明度が高く、耐熱性で、柔軟なフィルムが必要とされる。このようなフィルムは包装材料、ゴミ袋及び農業用フィルムとしての用途並びに前記利点を必要とする多くの他の用途を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、半結晶性(又は半結晶質)ポリエステルを、それが一部分溶融し且つその結晶性の一部を保持する温度でカレンダー加工することによって、予想外に高い透明度、靭性を有し且つ実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムよりも高い耐熱性を有するフィルムを形成できることを発見した。従って、本発明の一般的実施態様は、ポリエステルのそれぞれの融点範囲の上限温度(upper temperature)より低い最大温度におけるカレンダー加工によって形成される、1種又はそれ以上の半結晶性ポリエステル及び剥離剤(release additive)を含むフィルムである。例えば、本発明のフィルムは、1種のポリエステル又はポリエステルのブレンドをカレンダー加工することによって形成できる。カレンダー加工法は、典型的には、各ポリエステルの融点範囲の上限温度未満の任意の温度で実施できる。別の実施態様において、カレンダー加工法は、各ポリエステルの融点範囲内の最大温度で実施する。カレンダー加工フィルムは、同一ポリエステルを含む溶融流延フィルムよりも高い耐熱性、低い曇り価及び高いピーク融解温度を有することができる。
【0011】
本発明のフィルムは、可塑剤も粘着防止剤も用いずに、カレンダー加工することによって製造できる。従って、本発明の別の実施態様において、フィルム又はシートは、実質的に可塑剤を含まない。フィルム又はシートの製造に使用するポリエステルはまた、生分解性ポリエステル、例えば、1種又はそれ以上の、線状又は分岐脂肪族−芳香族ポリエステル(本明細書中では「AAPE」と略する)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート−バレレート又はポリブチレンスクシネートポリマー、これらのポリマーのブレンド或いはこれらのコポリマーを含むことができる。例えば、本発明の一実施態様において、生分解性ポリエステルは、アジピン酸残基及び65モル%又はそれ以下のテレフタル酸残基並びに1,4−ブタンジオール残基を含む。本発明のフィルムは更に、例えば澱粉又はタルクのような添加剤を含むことができる。
【0012】
これらのカレンダー加工フィルムは、延伸すると、溶融流延又は溶融ブローのような従来の方法で製造されたフィルムに比較して予想外に高い物理的強度及び透明度の改善を生じる。従って、本発明の更なる態様は、各ポリエステルの融点範囲の上限未満の最大温度においてカレンダー加工法によって形成される、1種又はそれ以上のポリエステル及び剥離剤を含む延伸フィルムである。
【0013】
本発明のフィルムは、それらを一部の可塑化PVCフィルムの代わりとして好適にする光沢的及び物理的性質を有し(但し、本発明のフィルムは可塑剤及び/又は粘着防止剤を用いずに製造できる利点を有する)、生分解性であることができる。これらの改良されたフィルムの他の潜在的用途としては、包装フィルム、収縮フィルム、ゴミ袋及び農業用フィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのフィルムは、食品及び非食品の両者に特有の包装用途のために種々の形態に容易に熱成形できる。これらは、種々のインキで印刷されることができ、また、これらには布又は他のプラスチックフィルム若しくはシートをインライン又はオフラインで貼り合わせることができる。いくつかの具体的最終用途としては、グラフィック・アーツ、トランザクション・カード、温室の透明板ガラス、セキュリティ・カード、化粧板、壁装材、本の装丁、フォルダーなどが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、各ポリエステルの融点範囲の上限温度未満の最大温度においてカレンダー加工法によって形成される、1種又はそれ以上のポリエステル及び剥離剤を含むカレンダー加工フィルムに関する。このフィルムは、優れた柔軟性、透明度及び靭性を示し、可塑剤又は粘着防止剤の使用を必要としない。本発明のフィルムは生分解性ポリエステルから製造できるので、同様に生分解性であることができる。カレンダー加工フィルムは1mil(0.025mm)〜80mil(2mm)の範囲の厚さを有することができる。
【0015】
以下の明細書及び添付した「特許請求の範囲」中に示す各数値パラメーターは少なくとも、記録された有効桁数を考慮に入れ且つ普通の丸めを適用することによって解釈すべきである。更に、本明細書の開示及び特許請求の範囲に記載した範囲は、端点だけでなく、全範囲を具体的に含むものとする。例えば、0〜10と記載された範囲は、0と10との間の全ての整数、例えば、1、2、3、4など、0と10との間の全ての分数、例えば、1.5、2.3、4.57、6.1113など、並びに端点0及び10を開示するものとする。また、化学置換基、例えば、「C1〜C5炭化水素」に関連した範囲は、C1炭化水素及びC5炭化水素だけでなくC2炭化水素、C3炭化水素及びC4炭化水素を具体的に含み且つ開示するものとする。
【0016】
本明細書中で使用する用語「カレンダー」並びに「カレンダー加工(calendering)」及び「カレンダー加工された(calendered)」のようなその種々の形態は、2つ又はそれ以上のロールを用いて溶融又は部分溶融ポリマーからフィルム又はシートを形成する任意の方法を意味する。本発明との関連で使用する用語「カレンダー加工」は、最初のフィルム形成工程が、溶融塊の形態の溶融又は部分溶融ポリマーの「バンク(bank)」を2つ又はそれ以上のカレンダーロールを通して供給することによって行われることを意味する。対照的に、「カレンダー加工」は、「仕上げカレンダー加工(finish calendering)」、例えば、予備成形フィルムに1つ又はそれ以上の追加ロールを用いてエンボス加工又は艶出しを行う「仕上げカレンダー加工」を含まないものとする。
【0017】
本明細書中で使用する用語「生分解性」は、言及されるポリエステル又は物質が、例えば、ASTM Standard Method D6340−98,”Standard Test Methods for Determining Aerobic Biodegradation of Radio Labeled Plastic Mateials in an Aqueous or Compost Environment”によって又はDIN Standard 54900によって定義される適当で実証可能な時間長で環境の影響下において分解し得ることを意味する。
【0018】
本明細書中で使用する「ポリエステル」は「コポリエステル」を含むものとする。一般に、ポリエステルは、1種又はそれ以上の二官能価カルボン酸と1種又はそれ以上の二官能価ヒドロキシル化合物との重縮合によって製造される合成ポリマーである。典型的には、二官能価カルボン酸はジカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸であり、二官能価ヒドロキシル化合物は二価アルコール、例えばグリコール及びジオールである。或いは、本発明のポリエステルは、例えば環状ラクチドから製造されるポリ乳酸又はカプロラクトンから形成されるポリカプロラクトンの場合と同様に、環状ラクトンの開環反応によって形成できる。本明細書中で使用する用語「脂肪族−芳香族ポリエステル」は、脂肪族若しくは脂環式ジカルボン酸若しくはジオールと芳香族カルボン酸若しくはジオールからの残基との混合物を含むポリエステルを意味する。
【0019】
本明細書中で本発明のジカルボン酸、ジオール及びヒドロキシルカルボン酸モノマーに関して使用する用語「非芳香族」は、モノマーのカルボキシル又はヒドロキシル基が芳香核を介して結合していないことを意味する。例えばアジピン酸は、その主鎖、即ち、カルボン酸基を結合する炭素原子の鎖中に芳香核を含まず、従って、アジピン酸は「非芳香族」である。これに対して、用語「芳香族」は、ジカルボン酸又はジオールが主鎖中に芳香族を含む、例えばテレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸であることを意味する。従って、「非芳香族」は、脂肪酸及び脂環式構造、例えば本質的に飽和されているか若しくはパラフィン系であるか、不飽和であるか(例えば、非芳香族炭素−炭素二重結合を含む)又はアセチレン系である(即ち炭素−炭素三重結合を含む)ことができる成分炭素原子の直鎖若しくは分岐鎖又は環状配列を主鎖として含む、例えばジオール、二酸及びヒドロキシカルボン酸を含むものとする。従って、本発明の説明及び「特許請求の範囲」との関連において、非芳香族は直鎖及び分岐鎖構造(本明細書中では「脂肪族」と称する)及び環状構造(本明細書中では「脂環式」と称する)を含むものとする。しかし、用語「非芳香族」は、脂肪族若しくは脂環式ジオール若しくは二酸若しくはヒドロキシカルボン酸の主鎖に結合できる芳香族置換基を除外するものではない。本発明において、二官能価カルボン酸は、脂肪族若しくは脂環式ジカルボン酸、例えばアジピン酸又は芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸であることができる。二官能価ヒドロキシル化合物は、脂環式ジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、直鎖若しくは分岐鎖脂肪族ジオール、例えば1,4−ブタンジオール又は芳香族ジオール、例えばヒドロキノンであることができる。
【0020】
本明細書中で使用する用語「残基」は、対応するモノマーを含む重縮合又は開環反応によってポリマー中に組み込まれた任意の有機構造を意味する。本明細書中で使用する「反復単位」は、カルボニルオキシ基によって結合されるジカルボン酸残基及びジオール残基又はヒドロキシカルボン酸残基を有する有機構造を意味する。従って、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー若しくはその関連する酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物又はそれらの混合物から得ることができる。従って、本明細書中で使用する用語「ジカルボン酸」は、高分子量ポリエステルを製造するためのジオールとの重縮合法において有用なジカルボン酸及びジカルボン酸の任意の誘導体、例えば、その関連する酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物又それらの混合物を含むものとする。「ヒドロキシカルボン酸」は、高分子量ポリエステルを製造するための重縮合法又は開環反応において有用な、脂肪族及び脂環式ヒドロキシカルボン酸並びにモノヒドロキシモノカルボン酸及びその任意の誘導体、例えば、その関連する酸ハロゲン化物、エステル、環状エステル(乳酸ラクチドのような二量体を含む)、塩、無水物、混合無水物又はそれらの混合物を含むものとする。
【0021】
本発明の新規フィルムのポリエステルは半結晶性ポリマーである。ここで使用する「半結晶性(又は半結晶質)」は、ポリマーが2相:規則正しい結晶質相及び不規則な非晶質相を含むことを意味する。半結晶質の形態を有するポリエステルは、結晶融解温度(Tm)及びガラス転移温度(g)の両方を示し、ガラス転移温度のみを示す「非晶質」ポリマーとは区別できる。ガラス転移温度及び結晶融点の存在は、半結晶質及び非晶質ポリマーの特性決定によく用いられる方法である。2つの熱転移、Tg及びTmは、示差走査熱量測定法(DSC)のような公知の分析法によって比容積及び熱容量の変化を測定することによって定量できる。例えば、Tg及びTmは、20℃/分の速度で走査するようにプログラムされたTA Instruments Model 2920 Differential Scanning Calorimeterで測定できる。吸熱転移の中点がTgと見なされた。Tmは、吸熱ピークの頂点の温度と見なされた。これらの方法は、Thermal Characterization of Polymeric Materials{Edith A.Turi編,Academic Press(New York,New York)によって1981年に発行}により詳細に記載されている。
【0022】
本発明に使用するポリエステル組成物は、実質的に等しいモル比で反応し且つそれらの対応する残基としてポリエステルポリマー中に組み込まれるジカルボン酸及びジオールから、又は開環反応によって環状エステル(例えば、ラクトン)から製造する。従って、本発明のジカルボン酸残基及びジオール残基から得られるポリエステルは、反復単位の総モルが100モル%に等しくなるように実質的に等モル比の酸残基(100モル%)及びジオール残基(100モル%)を含む。従って、本明細書の開示において示すモル%は、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル又は反復単位の総モルに基づくことができる。例えば、総酸残基に基づき30モル%のアジピン酸を含むコポリエステルは、コポリエステルが合計100モル%の酸残基のうち30モル%のアジピン酸残基を含むことを意味する。従って、酸残基100モル当たりアジピン酸残基が30モル存在する。別の例において、総ジオール残基に基づき30モル%の1,6−ヘキサンジオールを含むコポリエステルは、合計100モル%のジオール残基のうち30モル%の1,6−ヘキサンジオール残基を含むことを意味する。従って、ジオール残基100モル当たり1,6−ヘキサンジオール残基が30モル%存在する。
【0023】
本発明の1つの態様においてポリエステルはランダムコポリマー又はホモポリマーであることができる。「ランダムコポリマー」とは、ポリエステルが1種より多いジオール、ヒドロキシカルボン酸及び/又は二酸残基を含み、異なる残基がポリマー鎖に沿ってランダムに分布していることを意味する。「ホモポリマー」とは、ポリエステルが単一の二酸−ジオール又はヒドロキシカルボン酸反復単位から実質的に構成されることを意味する。しかし、ポリエステルは、「ブロックコポリマー」、即ち1つのホモポリマー構造のブロックが別の型のホモ構造ポリマーのブロックに結合したポリエステルではない。本発明のポリエステルはまた、各ポリエステルがカレンダー加工プロセスの間中、半結晶質メルトの形態であるような、2種又はそれ以上のポリエステルのブレンドであることができる。しかし、別の実施態様において、本発明のポリエステルはブレンドではない。
【0024】
別の実施態様において、本発明のフィルムのポリエステルは、溶融状態からの半結晶化時間が5分未満であることができる。半結晶化時間は、例えば4分未満及び3分未満であることができる。ここで使用するポリエステルの半結晶化時間は、当業者によく知られた方法を用いて測定できる。例えば、半結晶化時間は、Perkin−Elmer Model DSC−2示差走査熱量計を用いて測定できる。半結晶化時間は、溶融状態から以下の手法を用いて測定する。ポリエステルのサンプル15.0mgをアルミニウムパン中に密封し、320℃/分の速度で2分間290℃まで加熱する。次いで、サンプルを直ちにヘリウム存在下で約320℃/分の速度で所定の等温結晶化温度まで冷却する。等温結晶化温度は、最高の結晶化速度を生じる、ガラス転移温度と融解温度との間の温度である。等温結晶化温度は、例えば、Elias,H.Macromolecules,Plenum Press:NY,1977,391頁に記載されている。半結晶化時間は、等温結晶化温度に到達してから結晶化ピーク点までのDSC曲線上の時間長として求められる。
【0025】
本発明のフィルムはポリエステル及びカレンダーロールへのポリエステルの粘着防止に有効な剥離剤を含む。ポリエステルは可塑剤を添加しなくてもカレンダー加工できるほど充分に柔軟性である。従って、本発明の一例において、ポリエステルは可塑剤を実質的に含まない。ここで使用する用語「可塑剤」は当業者に理解されているような普通の意味を有する。即ち「可塑剤」は、加工を容易にすると共にポリマー分子の内部改質又は溶媒和によって最終製品の柔軟性及び靭性を増加させるために高分子化合物に添加される有機化合物である。一般に、可塑剤はポリマーのTgを低下させる。用語「実質的に含まない(substantially free)」とは、ポリマーが、本発明のポリエステル組成物、フィルム及びシート中に含ませることができる、剥離剤、難燃剤並びに典型的な添加剤、例えば酸化防止剤、着色剤、顔料、充填剤、連鎖延長剤及び加工助剤の他に又はそれらに加えて可塑剤を含まないことを意味するものとする。これらの添加剤のいくつかは、それらの構造及びポリエステルとの混和性によっては、コポリエステルに可塑化効果を与えることができる。従って、「実質的に含まない」とは、前に挙げた典型的な添加剤の具体例以外の化合物が、ポリエステル又はそれから製造されるフィルム及びシートの可塑化及び柔軟性の増大のためには、特にポリエステル組成物中に存在しないことを意味する。本発明の別の実施態様において、フィルムは、ポリエステル及び剥離剤から本質的になる。従って、本発明のフィルムは、単一のポリエステル樹脂及び剥離剤を、前記ポリエステルが半結晶性メルトの形態である最大温度(これは、カレンダー加工プロセスの最大温度が各ポリエステルの融解範囲の上限温度より低いことを意味する)において単にカレンダー加工することによって製造できる。一実施態様において、例えばフィルムは、ポリエステルの融点範囲内である最大温度においてポリエステルをカレンダー加工することによって形成できる。フィルムが2種又はそれ以上のポリエステルポリマーのブレンドを含む場合には、フィルムはこのブレンドを、各ポリエステルの融点範囲の上限より低い又は別の実施態様においては各ポリエステルの融点範囲内の最大温度においてカレンダー加工することによって形成できる。ここで使用する用語「本質的になる(consisting essentially of)」とは、ポリエステル樹脂及び剥離剤が、前記ポリエステルが半結晶性メルトの形態である温度でカレンダー加工されたフィルムを包含するものとし、この用語が言及するフィルムの本質的な性質を実質的に変える任意の要素を除外することを意味する。例えば、本発明のフィルム及びポリエステルは、カレンダー加工プロセスの間にポリエステルの半結晶質メルト相を変えない、例えば、難燃剤、酸化防止剤、着色剤などのような他の添加剤を含むことができる。これに対して、ポリエステル自体が半結晶質メルトでないようにポリエステルの溶融相の性質を変えることが予想されるであろう、ポリエステルへの可塑剤又は別のポリマーの添加は、本発明から除外する。更なる例において、ポリエステルのいずれか一方が半結晶質メルト中にないならば、例えば、一方のポリエステルが完全に溶融されており(即ち、その融解範囲の上限温度より高い温度でカレンダー加工され)且つ他方のポリエステルが溶融されたポリマー中に懸濁された固体の形態であったならば、ポリエステルのブレンドは除外するものとする。以下の説明は、使用できる改質の種類の例を示すが、当業者ならばその他の改質も容易にわかるであろう。
【0026】
本発明のフィルムは、フィルムの各ポリエステルが半結晶質メルトの形態である最大温度においてカレンダー加工プロセスによって形成する。ここで使用する「半結晶質メルト(semicrystalline melt)」は、ポリエステルがカレンダー加工操作の間中、液体の溶融相及び固体の結晶相の両方を示すことを意味するものとする。半結晶質メルトは、ポリマーの結晶領域が完全には溶融されないように、ポリエステルのTgを超えるがポリエステルの融点範囲の上限より低い温度でカレンダー加工操作を実施する場合に存在する。ここで使用する用語「融点範囲」は、融点吸熱の開始に始まって融点吸熱の終了で終わる、DSC曲線において観察される温度の範囲を意味する。ポリマーの融点範囲の開始及び終了は、当業者ならば測定できる。ポリマーに関する融点範囲の開始点及び終了点は、メルトの融解熱の90%が範囲に含まれる最小温度範囲によって決定される。メルトの融解熱は、標準的方法を用いて第2熱サイクルのDSCで求めることができる。例えば、融解熱及び最小温度範囲は、コンピュータ及び当業者によく知られた市販ソフトウェアを用いて第2熱サイクルのDSC曲線下の面積を積分することによって求めることができる。典型的には、カレンダー加工プロセスは、全てのカレンダーロールの最大温度がポリエステルの融点範囲の又は2種若しくはそれ以上のポリエステルのブレンドを用いる場合には各ポリエステルの融点範囲の上限温度より低いようにカレンダーロール温度を慎重に保持することによって実施する。これに対して、カレンダー加工プロセスの温度がポリエステルの融点範囲を超える場合には、ポリエステルは完全に融解し、半結晶質メルトの形態ではないであろう。カレンダー加工温度が1種又はそれ以上のポリエステルの融点範囲よりはるかに低すぎる場合には、メルトの粘度が高すぎることが多く、フィルムの溶融破壊が起こる可能性がある。典型的には、本発明の方法は70〜170℃の最大温度において実施する。カレンダー加工温度の更なる例としては80〜160℃及び90〜150℃が挙げられる。
【0027】
本発明のフィルムは、生分解性半結晶質ポリエステルを含む(これらに限定されるものではない)任意の半結晶質ポリエステルを用いて形成できる。本発明に使用できる生分解性ポリエステルの例としては、1種又はそれ以上の線状又は分岐脂肪族−芳香族ランダムポリエステル(AAPE)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート−バレレート及びポリブチレンスクシネート並びにそれらのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば生分解性ポリエステルは、1種又はそれ以上のヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸(R型及びS型並びにそれらの混合物)、ラクトン、例えばカプロラクトン及びγ−ブチロラクトン、ヒドロキシアルカノエート、例えばヒドロキシブチレートの残基を含むことができる。
【0028】
本明細書中で本発明のポリエステル、ポリエステル組成物、フィルム及びシート並びに添加剤に関連して使用する用語「生分解性(biodegradable)」は、本発明のフィルム並びにそのポリエステル及び添加剤成分が、例えばASTM Standard Method D6340−98,”Standard Test Methods for Determining Aerobic Biodegradation of Radiolabeled Plastic Mateials in an Aqueous or Compost Environment”によって、或いはDIN Method 54900によって定義される適当で実証可能な時間長で環境の影響下で分解されることを意味する。ポリエステル、組成物、フィルム及びシートは最初に、熱、水、微生物及び他の要因の作用によって環境内で分子量が低下する。この分子量の低下により、物理的性質(フィルム強度)が低下し、多くの場合に更にフィルムの破壊が起こる。生分解性ポリエステルの分子量が十分に低くなると、次に、モノマー及びオリゴマーが微生物によって同化される。好気的環境においては、これらのモノマー又はオリゴマーは最終的にCO2、H2O及び新しい細胞バイオマスまで酸化される。嫌気的環境においては、モノマー又はオリゴマーは最終的にCO2、H2、アセテート、メタン及び細胞バイオマスに転化される。生分解がうまくいくには、生分解性材料と活性な微生物個体群又は活性な微生物個体群によって生成される酵素との間で直接的な物理的接触が生じる必要がある。本発明のフィルム、シート、ポリエステル及びポリエステル組成物の分解に有用な活性微生物個体群は一般に、任意の都市下水若しくは工業排水処理施設又は堆肥化施設から入手できる。更に、生分解がうまくいくには、適当なpH、温度、酸素濃度、適切な栄養素及び水分レベルのようないくつかの最小物理化学的要件を満たすことが要求される。
【0029】
本発明のフィルムを更に、特に脂肪族−芳香族ポリエステル(本明細書中では「AAPE」と略する)に関してここに更に説明及び例証する。AAPEは、炭素数2〜8の脂肪族ジオール、炭素数2〜8のポリアルキレンエーテルグリコール及び炭素数4〜12の脂環式ジオールから選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖ジオールの残基を含むジオール残基を含んでなる線状ランダムポリエステル又は分岐及び/若しくは連鎖延長ポリエステルであることができる。置換ジオールは、典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから独立して選ばれた1〜4個の置換基を含むものとする。使用できるジオールの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール。好ましいジオールは、1,4−ブタンジオール;1,3−プロパンジオール;エチレングリコール;1,6−ヘキサンジオール;ジエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールから選ばれた1種又はそれ以上のジオールを含む。
【0030】
ポリエステルはまた、酸残基の総モルに基づき、35〜99モル%の、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数5〜10の脂環式ジカルボン酸から選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖非芳香族ジカルボン酸の残基を含む二酸残基を含むことができる。置換非芳香族ジカルボン酸は、典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜4個の置換基を含む。脂肪族及び脂環式ジカルボン酸の非限定的例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸及び2,5−ノルボルナンジカルボン酸が挙げられる。非芳香族ジカルボン酸の他に、ポリエステルは、酸残基の総モルに基づき1〜65モル%の炭素数6〜10の1種又はそれ以上の置換又は非置換の芳香族ジカルボン酸の残基を含むことができる。置換芳香族ジカルボン酸を用いる場合には、それらは典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜4個の置換基を含むものとする。本発明のポリエステル中に使用できる芳香族ジカルボン酸の非限定的例はテレフタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸の塩及び2,6−ナフタレンジカルボン酸である。
【0031】
一実施態様において、ポリエステルは、1,4−ブタンジオール;1,3−プロパンジオール;エチレングリコール;1,6−ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;又は1,4−シクロヘキサンジメタノールの1種又はそれ以上の残基を含むジオール残基;並びに(i)酸残基の総モルに基づき、35〜95モル%の、グルタル酸、ジグリコール酸、コハク酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸から選ばれた1種又はそれ以上の非芳香族ジカルボン酸の残基;(ii)酸残基の総モルに基づき、5〜65モル%の、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれた1種又はそれ以上の芳香族ジカルボン酸の残基を含む二酸残基を含んでなる。より好ましくは、非芳香族ジカルボン酸はアジピン酸を含み、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸を含み、且つジオールは1,4−ブタンジオールを含むものとする。別の実施態様において、二酸残基は、アジピン酸残基及び二酸残基の総モルに基づき、65モル%又はそれ以下のテレフタル酸残基を含み、且つジオール残基は1,4−ブタンジオール残基を含む。
【0032】
本発明の他のポリエステルは、二酸成分100モル%及びジオール成分100モル%に基づき、以下のモル%の以下のジオール及びジカルボン酸(又はジエステルのようなコポリエステル形成性等価物)から製造されるものである。
グルタル酸(30〜75%):テレフタル酸(25〜70%);1,4−ブタンジオール(90〜100%);及び改質用ジオール(0〜10%);
コハク酸(30〜95%);テレフタル酸(5〜70%);1,4−ブタンジオール(90〜100%);及び改質用ジオール(0〜10%);並びに
アジピン酸(30〜75%);テレフタル酸(25〜70%);1,4−ブタンジオール(90〜100%);及び改質用ジオール(0〜10%)。
改質用ジオールは好ましくは、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びネオペンチルグリコールから選ばれる。
【0033】
更に他のポリエステルとしては、アジピン酸残基50〜60モル%、テレフタル酸残基40〜50モル%及び1,4−ブタンジオール残基少なくとも95モル%を含んでなる線状、分岐又は連鎖延長コポリエステルが挙げられる。更に好ましくは、アジピン酸残基は55〜60モル%であり、テレフタル酸残基は40〜45モル%であり且つ1,4−ブタンジオール残基は95〜100モル%である。このような組成物は、商標ECOFLEX(登録商標)として市販されている。
【0034】
好ましいポリエステルの更なる具体例としては以下のものが挙げられる。(1)(a)グルタル酸残基50モル%、テレフタル酸残基50モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%;(b)グルタル酸残基60モル%、テレフタル酸残基40モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%;又は(c)グルタル酸残基40モル%、テレフタル酸残基60モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含むポリ(テトラメチレングルタレート−co−テレフタレート);(2)(a)コハク酸残基85モル%;テレフタル酸残基15モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%又は(b)コハク酸残基70モル%;テレフタル酸残基30モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含むポリ(テトラメチレンスクシネート−co−テレフタレート);(3)コハク酸残基70モル%、テレフタル酸残基30モル%及びエチレングリコール残基100モル%を含むポリ(エチレンスクシネート−co−テレフタレート);並びに(4)(a)アジピン酸残基85モル%、テレフタル酸残基15モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%;又は(b)アジピン酸残基55モル%、テレフタル酸残基45モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含むポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)。更なる例は、以下の表Aに記載された樹脂を含み、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、例えば、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシブチレート−co−バレレート(PHBv)、ポリヒドロキシブチレート−co−オクタノエート(PHBO)、及びポリヒドロキシブチレート−co−ヘキサノエート(PHBHx);ポリカプロラクトン(PCL)並びにポリ乳酸(PLA)が挙げられる。
【0035】
【表1】

【0036】
ヒドロキシカルボン酸及びそれらの種々の誘導体(例えば、環状エステル)から製造されたポリマーを含むポリエステルは、開環重合によって合成的に製造されると前に記載したが、多くのこれらの生分解性ポリエステルはまた、生物学的方法によって得ることもできる。本特許及び技術文献に記載された生物学的方法から得られたことがある生分解性ポリエステルの具体例としては、PHB、PHBv、PHAs及びPLAが挙げられる。これらのポリエステルは、発酵、植物、遺伝子組み換え植物及び細菌からの採取を含む生物学的方法によって製造される。
【0037】
生分解性ポリエステルは、好ましくは10〜1,000個の反復単位、より好ましくは15〜600個の反復単位を含む。生分解性ポリエステルは、好ましくはまた、フェノール/テトラクロロエタンの重量比60/40の溶液100ml中0.5gのポリエステルの濃度を用いて25℃の温度で測定されたインヘレント粘度が0.4〜2.0dL/g、より好ましくは0.7〜1.4dL/gである。
【0038】
ポリエステルは場合によっては、分岐剤の残基を含むことができる。分岐剤の重量%範囲は、ポリエステルの総重量に基づき、0〜2重量%、0.1〜1重量%、そして最も好ましくは0.1〜0.5重量%である。分岐剤は、好ましくは50〜5000、より好ましくは92〜3000の重量平均分子量及び3〜6の官能基を有する。例えば、分岐剤は、3〜6個のヒドロキシル基を有するポリオール、3〜4個のカルボキシル基(若しくはエステル形成性等価基)を有するポリカルボン酸又は合計3〜6個のヒドロキシル及びカルボキシル基を有するヒドロキシ酸のエステル化残基であることができる。
【0039】
分岐剤として使用できる代表的な低分子量ポリオールとしては以下のものが挙げられる。グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ポリエーテルトリオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びジペンタエリスリトール。より高分子量のポリオール(MW 400〜3000)の詳細な分岐剤の例は、炭素数2〜3のアルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドをポリオール開始剤と縮合させることによって得られるトリオールである。
【0040】
分岐剤として使用できる代表的なポリカルボン酸としては、ヘミメリット酸、トリメリット酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)及び無水物、トリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)、ピロメリット酸及び無水物、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸及び1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸が挙げられる。酸はそのように使用できるが、好ましくはそれらの低級アルキルエステル又は環状無水物を形成できる場合にはそれらの環状無水物の形態で使用する。
【0041】
分岐剤として代表的なヒドロキシ酸としては、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、3−ヒドロキシグルタル酸、ムチン酸、トリヒドロキシグルタル酸、4−カルボキシフタル酸無水物、ヒドロキシイソフタル酸、及び4−(β−ヒドロキシエチル)フタル酸が挙げられる。このようなヒドロキシ酸は、3個又はそれ以上のヒドロキシル及びカルボキシル基の組合せを含む。特に好ましい分岐剤としては、トリメリット酸、トリメシン酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及び1,2,4−ブタントリオールが挙げられる。
【0042】
本発明の生分解性分岐ポリエステルの一例は、1,4−ブタンジオール残基100モル%、テレフタル酸残基43モル%及びアジピン酸残基57モル%を含み且つ0.5重量%のペンタエリスリトールで分岐させられたポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)である。この生分解性ポリエステルは、アジピン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、ペンタエリスリトール及び1,4−ブタンジオールのエステル交換及び重縮合によって製造できる。このポリエステルは、190℃において1時間、200℃において2時間、210℃において1時間、次いで250℃において1,5時間、真空下で、最初はチタンテトライソプロポキシドとして存在するTi 100ppmの存在下においてモノマーを加熱することによって製造できる。
【0043】
分岐生分解性ポリエステルの別の例は、1,4−ブタンジオール残基100モル%、テレフタル酸残基45モル%及びアジピン酸残基55モル%を含み且つピロメリット酸二無水物0.3重量%で分岐させられたポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)である。このポリエステルは、押出機を用いて線状ポリ(テトラメチレンアジペート−co−テレフタレート)をピロメリット酸二無水物と共に反応押出させることによって生成される。
【0044】
本発明のポリエステルはまた、それらの溶融粘度を増大させるために1種又はそれ以上のイオン含有モノマーを含むことができる。イオン含有モノマーは、スルホイソフタル酸又はそれらの誘導体の塩から選ばれるのが好ましい。この型のモノマーの典型的な例は、ソジオスルホイソフタル酸又はソジオスルホイソフタル酸のジメチルエステルである。イオン含有モノマーの好ましい濃度範囲は、酸残基の総モルに基づき、0.3〜5.0モル%、より好ましくは0.3〜2.0モル%である。
【0045】
本発明のポリエステルは、組成物の総重量に基づき、0〜5重量%の1種又はそれ以上の連鎖延長剤を含むことができる。代表的な連鎖延長剤は、米国特許第5,817,721号に開示されたようなジビニルエーテル、又は例えば米国特許第6,303,677号に開示されたようなジイソシアネートである。代表的なジビニルエーテルは、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,5−ヘキサンジオールジビニルエーテル及び1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルである。代表的なジイソシアネートは、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びメチレンビス(2−イソシアナトシクロヘキサン)である。好ましいジイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネートである。重量%の範囲は好ましくは、ポリエステルの総重量%に基づき、0.3〜3.5重量%、より好ましくは0.5〜2.5重量%である。また、基本的には、3以上の官能価を有するイソシアヌレート及び/又はビウレア基を含むことができる三官能価イソシアネート化合物を用いること、又はジイソシアネート化合物の代わりにトリ−又はポリイソシアネートを用いることも可能である。
【0046】
本発明のポリエステルは、典型的な重縮合反応条件を用いて、適当なジカルボン酸、エステル、無水物又は塩、適当なジオール又はジオール混合物及び任意の分岐剤から容易に製造できる。これらは、連続、半連続及び回分操作様式で製造でき、種々の反応器型を用いることができる。適当な反応器型の例としては、攪拌槽型反応器、連続攪拌槽型反応器、スラリー反応器、管状反応器、ワイプドフィルム反応器、流下膜式反応器又は押出反応器が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
ポリエステルは、当業者に知られた方法、例えば米国特許第2,012,267号に記載された方法で製造できる。このような反応は通常、150℃〜300℃の温度において重縮合触媒、例えばアルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコラート、有機カルボン酸の塩、アルキル錫化合物、金属化合物などの存在下で実施する。触媒は典型的には、反応体の総重量に基づき、10〜1000ppmの量で使用する。
【0048】
本発明のフィルムは、可塑剤も硬質固形物、無機化合物、珪藻土、タルク及び炭酸カルシウムのような粘着防止剤を用いずにカレンダー加工することができる。従って、一実施態様において、本発明のフィルムは粘着防止剤を含まない。本発明の方法は、剥離剤を用いると共に、カレンダーロールの通過時のポリマーメルトの温度を慎重に制御することを含む。
【0049】
本発明には必須ではないが、本発明の新規フィルムは更に、フィルムの性質、例えば、その概観、生分解性を改善するために又はそのコストを低下させるために、必要に応じて、染料、顔料、充填剤及び加工助剤、例えば充填剤、艶消剤、粘着防止剤、帯電防止剤、発泡剤、繊維、炭素繊維、ガラス、耐衝撃性改良剤、カーボンブラック、澱粉、タルク、TiO2などを含むことができる。例えば、本発明のフィルムは剥離剤の他に、フィルムの表面特性を変えるための又はカレンダー加工時における半結晶質メルトの流れを向上させるための1種又はそれ以上の加工助剤を0〜30重量%含むことができる。加工助剤の代表的な例としては、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、マイカ、ウォラストナイト、カオリン、珪藻土、TiO2、NH4Cl、シリカ、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム及びリン酸カルシウムが挙げられる。本発明のポリエステル組成物内の加工助剤レベルの更なる例は、5〜25重量%及び10〜20重量%である。トナーと称することもある着色剤は、ポリエステル及びカレンダー加工製品に所望のニュートラルな色相及び/又は明度を与えるために添加することができる。別の例において、本発明のフィルムは澱粉又はタルクを更に含んでなることができる。澱粉は熱可塑性澱粉であることができる。熱可塑性澱粉は、無秩序な結晶構造を与えるためにエクストルージョンクッキングによってゼラチン化された澱粉である。ここで使用する「熱可塑性澱粉」は、例えば、Bastioli,C.Degradable Polymers,1995,Chapman & Hall:London、112〜137頁に記載されたような「ゼラチン化澱粉」及び「非構造化(destructured)澱粉」を含むものとする。「ゼラチン化」とは、澱粉顆粒が、水中で滑らかで粘稠な分散液を形成するほど充分に膨潤し且つ崩壊していることを意味する。ゼラチン化は、水又は水溶液の存在下で60℃の温度において加熱するような任意の公知の方法で行う。強アルカリの存在は、このプロセスを促進することが知られている。熱可塑性澱粉は、穀粒又は根菜作物、例えばトウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ及びタピオカからの任意の未変性澱粉から、澱粉のアミロース及びアミロペクチン成分から、変性澱粉製品、例えば部分解重合澱粉及び誘導体化澱粉から、また澱粉グラフトコポリマーから製造できる。熱可塑性澱粉は、National Starch Companyから市販されている。
【0050】
本発明のフィルムに使用できる生分解性ポリエステルは、環境におけるそれらの崩壊及び生分解性を向上させるために、生分解性添加剤を含むことができる。このような添加剤の効果の1つは、ポリエステル組成物の生分解性を増大し且つ高濃度の他の非生分解性添加剤によって生じる生分解性の低下を補うことである。本発明のフィルムに組み込むことができる生分解性添加剤の代表的な例としては、微晶質セルロース、ポリビニルアルコール、熱可塑性澱粉若しくは他の炭水化物又はそれらの組合せが挙げられる。例えば、フィルムは組成物の総重量に基づき、1〜40重量%の、熱可塑性澱粉、微晶質セルロース及びポリビニルアルコールから選ばれた1種又はそれ以上の生分解性添加剤を更に含むことができる。別の例において、ポリエステル組成物は、1〜30重量%の生分解性添加剤を含むことができる。生分解性添加剤レベルの他の例は、5〜25重量%及び10〜20重量%である。好ましい生分解性添加剤は熱可塑性澱粉である。
【0051】
フィルムは、生分解促進剤、即ち環境における生分解速度を増加させるか又は速める添加剤を更に含むことができる。本発明者らは、ある種の添加剤、例えば加工助剤として添加されるものが、生分解促進剤として二つの目的を果たすことができることを発見した。例えば炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、珪酸ナトリウム、リン酸カルシウム、酸化マグネシウムなどのような促進剤は、堆肥化環境のpHを変え、従って、生分解プロセスを促進する働きをすることができると考えられる。
【0052】
ポリエステルの他に、本発明のフィルムは、カレンダーロールへのポリエステル組成物の粘着を防止するのに有効な剥離剤を含む。ここで使用する用語「有効な」とは、ポリエステルが、ロールの周囲に巻き付くこともロール表面にポリエステルの過剰な層を生じることもなく、カレンダーロール間を自由に通過することを意味する。ポリエステル組成物中に使用する添加剤の量は典型的には、フィルムの総重量%に基づき、0.1〜2重量%である。添加剤の最適使用量は、当業界でよく知られた要因によって決定され、装置、材料、プロセス条件及びフィルム厚の変動に左右される。添加剤レベルの更なる例は、0.1〜1重量%、0.1〜0.8重量%及び0.1〜0.5重量%である。本発明の添加剤の例としては以下のものが挙げられる。脂肪酸アミド、例えばエルシルアミド及びステアロアミド;有機酸の金属塩、例えばステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛;脂肪酸、例えばステアリン酸、オレイン酸及びパルミチン酸;脂肪酸塩;脂肪酸エステル;炭化水素ワックス、例えばパラフィンワックス、燐酸エステル、ポリエチレンワックス及びポリ(プロピレン)ワックス;化学改質ポリオレフィンワックス;エステルワックス、例えばカルナウバワックス;グリセリンエステル、例えばグリセロールモノ−及びジ−ステアレート;タルク;微晶質シリカ;並びにアクリルコポリマー(例えば、Rohm & Haasから入手可能なPARALOID(登録商標)K175)。典型的には、添加剤は以下から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む。エルシルアミド、ステアロアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリ(プロピレン)ワックス、カルナウバワックス、グリセロールモノステアレート又はグルセロールジステアレート。
【0053】
使用できる別の添加剤は、炭素数18より多い脂肪酸又は脂肪酸塩並びに炭素数18より多い脂肪酸残基及び炭素数2〜28のアルコール残基を含むエステルワックスを含むことができる。脂肪酸又は脂肪酸塩のエステルワックスに対する比は、1:1又はそれ以上であることができる。別の例において、脂肪酸又は脂肪酸塩のエステルワックスに対する比は、2:1又はそれ以上である。
【0054】
脂肪酸はモンタン酸を含むことができ、脂肪酸の塩は、モンタン酸のナトリウム塩、モンタン酸のカルシウム塩若しくはモンタン酸のリチウム塩又はそれらの組合せを含むことができる。エステルワックスの脂肪酸残基はモンタン酸を含むことができる。エステルワックスのアルコール残基は、炭素数が好ましくは2〜28である。アルコールの例としては、モンタニルアルコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール及びペンタエリスリトールが挙げられる。添加剤は、例えば水酸化カルシウムのような塩基で部分鹸化されたエステルワックスを含むこともできる。
【0055】
従来のカレンダー加工装置及び方法を用いて、ポリエステル組成物のカレンダー加工が可能である。例えば、典型的なカレンダー加工プロセスラインにおいて、プラスチック樹脂は、種々の添加剤、例えば熱分解を防ぐための安定剤;透明度、熱安定性又は不透明度の改質剤;顔料;潤沢剤及び加工助剤;帯電防止剤;紫外線抑制剤;及び難燃剤とブレンドする。混合された成分を、ニーダー又は押出機中で可塑化する。熱、剪断作用及び圧力によって、乾燥粉末、ペレット又は液体を溶融させて、概して均一な溶融材料又は部分溶融材料を形成する。押出機は、溶融材料を連続法でカレンダーラインのカレンダー部の上部の第1加熱カレンダーロールと第2加熱カレンダーロールとの間に供給する。典型的には、3つのニップ又は間隙を形成するには4つのロールを用いる。例えばロールはL字形又は逆L字形のような種々の配置で配置できる。ロールは種々のフィルム幅に対応するように寸法が変化する。ロールは別個の温度制御及び速度制御を有する。材料は、供給ニップと称する、第1の2つのロール間のニップを通って進む。この2つのロールは、ロールの幅全体に材料を広げるのを助けるために、それぞれ反対の方向に回転する。材料は第1ロールと第2ロールの間、第2ロールと第3ロールの間、第3ロールと第4ロールの間などを曲がりくねって進む。ロール間の間隙は、材料が進むにつれてロールセット間で薄くなるように、ロールのそれぞれの間で厚さが減少する。カレンダー部を通過後、材料は別の一組のロールを通って進み、そこで引き伸ばされ且つ徐々に冷却されて、フィルム又はシートを形成することができる。次いで、冷却された材料をマスターロールに巻き付ける。カレンダー加工方法の概要は、Jim Butschli,Packaging World,26〜28頁,June 1997及びW.V.Titow,PVC Technology,4th Edition,803〜848頁(1984),Elsevier Publishing Co.に開示されている。延伸フィルムに関しては、二軸延伸又は一軸延伸装置のようなインラインのフィルム延伸装置を含む市販カレンダー加工装置(例えば、テンター又は異周速圧延装置)を用いることができる。
【0056】
カレンダーロールを通過する際のポリマーメルトの温度は、ポリマーメルトプローブ温度又はポリマーメルト温度とも称される場合もあり、典型的には温度プローブによって測定される。この温度は、カレンダー加工を行うために慎重に制御すべきである。メルトの温度は通常、摩擦熱及びポリマーへの直接熱移動の組合せを制御することによって制御する。摩擦熱は、ポリマーメルトの粘度及びカレンダーロールの回転速度(通常は回転数/分又はRPMで測定される)の関数である。ポリマーへの直接熱移動は通常、加熱されたカレンダーロールを用いることによって又はロールに供給されるポリマーを予熱することによって行われる。典型的には、ポリエステルメルトが、ポリエステルが半結晶質メルトの状態であるカレンダー可能温度(即ちその融点範囲の上限温度未満)に達したら、ポリマーメルトはその温度、±15℃、好ましくは±10℃、又はより好ましくは±5℃に保持しなければならない。典型的には、本発明の半結晶質ポリエステルに関しては、ポリマーメルトプローブ温度は80℃〜160℃の範囲であり、カレンダーロール温度は80℃〜130℃の範囲である。ポリマーメルト温度の制御及び前記剥離剤の添加の組合せにより、これまで達成できなかった、半結晶質生分解性ポリエステルのカレンダー加工が可能になる。
【0057】
各ポリマーに関してポリマーメルト温度をカスタマイズするのが有利である。理論によって拘束するつもりはないが、カレンダー加工は、ポリマーメルト温度が、メルト中で溶融ポリマーと非溶融(微結晶)ポリマーとの平衡が保たれている点又は範囲に達している場合に順調に行われる。本発明との関連において、溶融ポリエステルと非溶融微結晶との混合物が存在しているこの状態を、半結晶質メルトと定義する。本発明のポリエステルに関しては、この温度はTgより高く且つフィルムの各ポリエステルの融解範囲の上限温度未満である。例えば、一実施態様において、カレンダー加工の最大温度は、各ポリエステルの融点範囲内である。別の実施態様において、本発明のフィルムは、ポリエステルのブレンドから、例えば、AAPEとポリ(乳酸)(PLA)のそれぞれの融解範囲の上限温度未満の最大温度でカレンダー加工されたAAPEとPLAとのブレンドから形成できる。別の例において、フィルムはAAPE、例えば、ECOFLEX(登録商標)を含んでなることができ、AAPEの融解範囲内の温度でカレンダー加工できる。更なる例において、フィルムはポリ(ヒドロキシブチレート)を含んでなり、ポリ(ヒドロキシブチレート)の融点範囲内の温度でカレンダー加工される。溶融及び未溶融微結晶のこの平衡は、ごく少量のポリエステルを固体(非溶融)形態に保持することによって有効範囲の溶融強度及び結晶化速度を達成できる。この少量の固体ポリエステルが、熱的に可逆性な架橋結合をもたらし、それが一部のポリエステル、例えば一部の生分解性ポリエステルの通常は低い溶融強度を増強する(増加させる)。更に、この少量の固体ポリエステルは、結晶化速度を増加させる(予め形成された核生成部位を提供することによって)可能性があり、それがアウトフィードロールの粘着の問題を減少させ且つ最終フィルムに見られる、熱的に完成された(アニールされた)結晶領域を提供する可能性がある。結晶領域は最終フィルムの耐熱性を向上させる。
【0058】
本発明のカレンダー加工フィルムは、実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムに比べて高い透明度を示す。ここで使用する「実質的に同じ組成」とは、カレンダー加工フィルム及び溶融流延フィルムが少なくとも90重量%の同一ポリエステル組成を含み、フィルムの加工に使用できる剥離剤、粘着防止剤又は潤沢剤のみが異なることを意味する。例えば溶融流延フィルムは、典型的には、フィルムの曇り価%を増加させる粘着防止剤の存在を必要とする。従って、一実施態様において、本発明のフィルムは実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムよりも低い曇り価%を有する。曇り価%の測定値は、当業者によく知られた手法によって、例えばASTM Method D−1003によって求めることができる。
【0059】
カレンダー加工フィルムは、また、実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムよりも改善された熱的性質及び強度を示す。例えば本発明のカレンダー加工フィルムは、実質的に同じ組成の溶融流延フィルムよりも高い耐熱性を有する。「より高い耐熱性」とは、カレンダー加工フィルムが、実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムより高いピーク融解温度を有することを意味する。ここで使用する用語「より高いピーク融解温度」とは、カレンダー加工フィルムが、実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムのピーク融点温度よりも高い温度において、その融点範囲内に第2融点ピークを示すことを意味する。本発明のカレンダー加工フィルムに第2のより高いピーク融点が存在することは、その耐熱性を増加する第2のより高い溶融結晶相がフィルム内に存在することを示す。
【0060】
本発明のフィルムは、カレンダー加工プロセスの間に又はカレンダープロセスの後に更に延伸又は伸長して、延伸フィルムを生成させることができる。従って、本発明は、各ポリエステルの融点範囲の上限温度未満の最大温度でカレンダー加工プロセスによって形成された、1種又はそれ以上の半結晶質ポリエステル及び離型剤を含む延伸フィルムを提供する。本発明の延伸フィルムは、前記のカレンダー加工フィルムの実施態様、例えば二酸、ジオール、インヘレント粘度、分岐モノマー、連鎖延長剤などを含むポリエステル;剥離剤、充填剤、生分解性添加剤及び促進剤並びに加工助剤を包含する。例えば、一実施態様において、延伸フィルムは、ポリエステル及び剥離剤から本質的になる。別の例において、ポリエステルは可塑剤を実質的に含まない。更に別の例において、延伸フィルムのポリエステルは生分解性である。更に別の例において、延伸フィルムのポリエステルは、線状又は分岐脂肪族−芳香族ランダムコポリエステル(本明細書中では「AAPE」と略する)であることができる。生分解性ポリエステルの更なる例としては、ECOFLEX(登録商標)コポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート−バレレート又はそれらのコポリエステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリエステルがAAPEである1つの例において、非芳香族ジカルボン酸は、好ましくはアジピン酸を含み、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸を含み、ジオールは1,4−ブタンジオールを含むものとする。別の実施態様において、二酸残基は、アジピン酸残基及び二酸残基の総モルに基づき、65モル%又はそれ以下のテレフタル酸残基を含み、ジオール残基は1,4−ブタンジオール残基を含む。更に別の好ましいポリエステルとしては、50〜60モル%のアジピン酸残基、40〜50モル%のテレフタル酸残基及び少なくとも95モル%の1,4−ブタンジオール残基を含む線状、分岐又は連鎖延長コポリエステルが挙げられる。更に好ましくは、アジピン酸残基が55〜60モル%であり、テレフタル酸残基が40〜45モル%であり、且つ1,4−ブタンジオール残基が95〜100モル%である。延伸フィルムは更に、充填剤、例えば澱粉又はタルクを含むことができる。好ましくは、澱粉は熱可塑性澱粉であることができる。別の実施態様において、延伸フィルムはまた、粘着防止剤を含まない。前述のように、ポリエステルは、溶融状態からの半結晶化時間が5分より短い時間、又は別の例においては3分より短い時間であることができる。
【0061】
カレンダー加工フィルムの伸長には、従来の延伸装置及び方法を用いることできる。カレンダー加工フィルムは、各方向に600%まで一軸又は二軸延伸することができる。カレンダー加工フィルムは、カレンダー加工プロセスと一体化されたインラインのプロセスで延伸することもできるし、或いはその後のオフラインのプロセスで延伸することもできる。意外なことに、これらのカレンダー加工フィルムを延伸する場合には、得られるフィルムは、熱可塑性澱粉ブレンドを用いずに溶融流延又は溶融ブローによって製造されるフィルムに比較して予想外に高い物理的強度及び透明度の向上を示すことができることを発見した。例えば延伸は、典型的には、フィルムの強度を改善し、溶融流延フィルムのピーク融点よりも高い第2融点ピークを示す。
【0062】
カレンダー加工フィルムと同様に、本発明の延伸カレンダー加工フィルムもまた、実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムに比べて、改善された熱的性質、透明度及び強度を示すことができる。更に、一部の例では、延伸カレンダー加工フィルムは、対応する非延伸カレンダー加工フィルムよりも高い耐熱性を有することができる。従って、本発明の一実施態様において、本発明の延伸カレンダー加工フィルムは、実質的に同じ組成を有する延伸された溶融流延フィルムよりも高い融解ピーク温度を有する。本発明の延伸カレンダー加工フィルムは、延伸時に高い透明度を生じ、典型的には、実質的に同じ組成を有する延伸溶融流延フィルムよりも低い曇り価%を有する。例えば延伸フィルムは、典型的には、5%より低い曇り価%を有する。別の例において、延伸フィルムは3%より低い曇り価%を有することができる。
【実施例】
【0063】
本発明を更に以下の実施例によって説明及び例証する。
【0064】
概要−二酸成分としてのアジピン酸及びテレフタル酸とジオール成分としての100モル%の1,4−ブタンジオールとの混合物並びにそれらとPLA及び熱可塑性澱粉のような他の生分解性ポリマーとのブレンドを含む生分解性脂肪族−芳香族ポリエステル(AAPE)組成物を用いてフィルムを製造した。表Iは、ポリマーフィルムの識別番号、使用樹脂材料、樹脂中のテレフタル酸のモル%、視覚的なフィルムグレード、フィルム形成方法、フィルム厚さ、及び融点範囲を示す。融点範囲は、本明細書中に定義した通りである。融点範囲は、20℃/分の加熱速度で得られたDSC曲線から評価した。
【0065】
【表2】

【0066】
カレンダー加工方法−カレンダー加工をシミュレートするために、フィルムID No.1〜6及び9〜11をDr.Colin機器装着二本ロールミル上で製造した。ワックス剥離剤{LICOWAX(登録商標)Sモンタン酸(Clariant Corporationから入手可能)とLICOWAX(登録商標)OP(Clariant Corporationから入手可能な、水酸化カルシウムで部分鹸化されたモンタン酸のブチレングリコールエステル)との重量比1:1のブレンド}を0.9重量%含む樹脂ペレットを、加熱されたロールに直接加えて、メルトに加工するか、或いはコポリエステル樹脂基材中に剥離剤を含む予備配合マスターバッチによって加えた。表IIは、ロール間隙、ロール温度、ポリマーメルトプローブ温度(表II中には「融解温度」の下に記載)、引取(回転数/分)、及び各フィルムの加工についての注釈を示す。
【0067】
【表3】

【0068】
溶融流延法−以下の溶融流延法を用いて、フィルムID No.7及び8を製造した。コーティングを施していないタルク(平均粒度=6ミクロン)50重量%をWerner−Pflederer二軸スクリュー押出機中でAAPE 50重量%と配合することによって、コンセントレートを形成し;このコンセントレート20%を、追加のAAPEに添加して、10重量%のタルクを含む混合物を形成した。次いで、この樹脂混合物を、除湿乾燥装置中で以下の条件において一晩乾燥させた。
【0069】
乾燥時間 4〜6時間
温度 65℃(150°F)
露点 −30℃(−20°F)
気流速度 1 CFM/lb/時
ペレットの含水量 100重量ppm(0.01重量%)
【0070】
次に、乾燥した樹脂混合物を、以下の温度分布及び一軸スクリュー押出を用いてフィルムに溶融流延した。
スクリュー 50mm(2インチ)
ねじれたMaddockヘッド混合部を有するバリアスクリュー
(スクエア・ピッチド・スクリュー(square pitch
ed screw)も成功裏に使用される)
L/D 24:1(30:1も成功裏に使用される)
圧縮比3対1
ゾーン1 199℃(390°F)
ゾーン2 216℃(420°F)
ゾーン3 216℃(420°F)
ゾーン4 216℃(420°F)
アダプター 204℃(400°F)
ダイ 160℃(320°F)
ダイ型 760mm(30インチ)の軟質リップコートハンガーダイ
スクリーンパック 100メッシュ
キャスティングロール 27℃(80°F)
【0071】
延伸方法−フィルムID No.1、3〜7及び10〜11を、TD(横断方向)を物理的に一定(1倍)に保ちながら、TM Longフィルム延伸装置を用いてMD(縦方向)延伸(40℃において)4倍で延伸した。延伸は、カレンダー加工/溶融流延フィルムから切り取られた幅0.5インチ及び長さ約6インチのストリップを用いて、表IIIに記載した以外は14インチ/秒の伸長速度で行った。表IIIは、延伸フィルムのポリマーフィルム識別番号、出発フィルム番号、延伸条件、フィルム厚さ及び使用したフィルム形成方法を示す。表IVA〜IVBは、得られたフィルム(以下の表中においてo=延伸;u=非延伸)の物理的性質及び熱的性質を示す。
【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
【表8】

【0077】
【表9】

【0078】
表IVA〜IVEからわかるように、ECOFLEX(登録商標)フィルム(ID 10及び11)を除く全ての場合に、カレンダー加工フィルムは、溶融流延フィルム(フィルムID No.7及び7A)のいずれにおいても又はAAPE又はECOFLEX(登録商標)コポリエステルの溶融ブローンフィルムにおいても見られなかった、並外れた高いピーク融解温度(Tm2)を示す。更に、これらのカレンダー加工フィルムは、粘着防止剤(例えば、タルク、CaCO3)の使用を必要とする溶融流延法又はメルトブロー法によって製造されたフィルムに比較した場合に、良好な光学的性質を有する。粘着防止剤の使用は、より高い曇り価によって示されるように不良な光学的性質を生じる。延伸後にはAAPEコポリエステル/澱粉ブレンドを除いて、示した全てのブレンド及びカレンダー加工された樹脂/ブレンドについてより高い透明度が観察された。AAPEコポリエステル/澱粉ブレンドの例においては、延伸工程が若干の微小空隙化(microvoiding)を引き起こし、それがより高い曇り価を生じた可能性がある。
【0079】
AAPEコポリエステルを含むいくつかのフィルムの物理的特性を、表VA〜VDにおいて詳細に比較する。複数のピークを有する融点値(Tm1及びTm2)は、表中の1つのセルに示す。DSC曲線からの個々の値は分離しなかった。
【0080】
【表10】

【0081】
【表11】

【0082】
【表12】

【0083】
【表13】

【0084】
表VA〜VDからわかるように、カレンダー加工フィルム(フィルムID No.3及び5)の物理的性質は、溶融流延フィルム(フィルムID No.7及び8)の場合ほど良好でなかった。しかし、溶融流延フィルムにおいては10%のタルク添加剤がAAPE及び他の生分解性ポリエステルの物理的性質を改善することが知られているにもかかわらず、延伸カレンダー加工フィルム(フィルムID No.3A及び5A)の物理的性質は、それらの物理的性質が延伸溶融流延フィルム(フィルムID No.7A)の物理的性質に匹敵する点まで改善された。不活性充填剤の添加によるヤング率の改良は、よく知られた現象である。この現象を考えると、溶融流延フィルムにおいて用いられる(粘着防止のために)10重量%のタルクを用いることも加えることもなく、匹敵する物理的性質を達成できることは予期されないことであった。AAPE−澱粉ブレンドの延伸カレンダー加工フィルム(フィルムID No.5A)の場合には、物理的性質のプロフィールは、溶融流延延伸フィルム(フィルムID No.7A)よりも良好であった。
【0085】
本発明を、純粋なAAPE及び他の生分解性樹脂、例えば、ECOFLEX(登録商標)から、これらの生分解性ポリエステルと澱粉との及びポリ乳酸とのブレンドに拡大した。いずれの場合にも、延伸及び融点範囲のより高い成分の存在によって改善された強度増加が観察された(前記例外を除いて)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又はそれ以上の半結晶性ポリエステル及び剥離剤を含んでなり、前記1種又はそれ以上の各ポリエステルの融点範囲の上限温度より低い最大温度においてカレンダー加工法によって形成されたフィルム。
【請求項2】
前記フィルムが1種のポリエステル及び剥離剤から本質的になる請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムが実質的に可塑剤を含まない請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記最大温度が前記1種又はそれ以上の各ポリエステルの融点範囲内である請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
前記1種又はそれ以上のポリエステルが生分解性である請求項3に記載のフィルム。
【請求項6】
前記1種又はそれ以上のポリエステルが脂肪族−芳香族ポリエステル(「AAPE」)、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート−バレレート及びそれらのコポリマーからなる群から選ばれる請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記1種又はそれ以上のポリエステルがAAPEである請求項4又は6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記AAPEが
(a)アジピン酸残基及び二酸残基の総モルに基づき、65モル%又はそれ以下のテレフタル酸残基を含む二酸残基;並びに
(b)1,4−ブタンジオール残基を含むジオール残基
を含んでなる請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
前記二酸残基が、二酸残基の総モルに基づき、55〜60モル%のアジピン酸の残基及び40〜45モル%のテレフタル酸の残基を含み;且つジオール残基が、ジオール残基の総モルに基づき、95〜100モル%の1,4−ブタンジオールの残基である請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
澱粉又はタルクを更に含む請求項5に記載のフィルム。
【請求項11】
前記澱粉が熱可塑性澱粉である請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
前記フィルムが粘着防止剤を含まない請求項5に記載のフィルム。
【請求項13】
前記剥離剤が、前記フィルムの総重量に基づき、0.1〜2.0重量%の、エルシルアミド、ステアロアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、モンタン酸塩、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナウバワックス、グリセロールモノステアレート又はグルセロールジステアレートを含む請求項5に記載のフィルム。
【請求項14】
前記剥離剤が炭素数18より多い脂肪酸又は脂肪酸塩及び炭素数18より多い脂肪酸と炭素数2〜28のアルコールとを含むエステルワックスを含んでなる請求項5に記載のフィルム。
【請求項15】
前記1種又はそれ以上のポリエステルの少なくとも1種が5分未満の溶融状態からの半結晶化時間を有する請求項6に記載のフィルム。
【請求項16】
前記フィルムが実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムよりも低い曇り価%を有する請求項6に記載のフィルム。
【請求項17】
前記フィルムが実質的に同じ組成を有する溶融流延フィルムよりも高いピーク融解温度を有する請求項6に記載のフィルム。
【請求項18】
前記フィルムが少なくとも1つの方向に伸長することによって延伸される請求項1〜6及び10〜17のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項19】
前記1種又はそれ以上のポリエステルがAAPEである請求項18に記載のフィルム。
【請求項20】
前記AAPEが
(a)アジピン酸残基及び65モル%又はそれ以下のテレフタル酸残基を含む二酸残基;並びに
(b)1,4−ブタンジオール残基を含むジオール残基
を含んでなる請求項19に記載の延伸フィルム。
【請求項21】
前記二酸残基が、二酸残基の総モルに基づき、55〜60モル%のアジピン酸の残基及び40〜45モル%のテレフタル酸の残基を含み;且つ前記ジオール残基が、ジオール残基の総モルに基づき、95〜100モル%の1,4−ブタンジオールの残基を含む請求項20に記載のフィルム。
【請求項22】
前記フィルムが実質的に同じ組成を有する延伸溶融流延フィルムよりも高いピーク融解温度及び低い曇り価%を有する請求項18に記載のフィルム。
【請求項23】
前記フィルムが5%未満の曇り価を有する請求項22に記載のフィルム。

【公表番号】特表2007−514862(P2007−514862A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545783(P2006−545783)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/041737
【国際公開番号】WO2005/061577
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】