説明

改善された生物付着防止コーティング

本発明は、基材に生物付着防止コーティングを提供するための好適なコーティング材料であって、(A)マイケル型受容体基とマイケル型供与体基との間のマイケル型反応を受けることができる反応性基を含む高分子足場、(B)高分子足場に結合した少なくとも1つの機能性部分であって、少なくとも1つの機能性部分が親水性部分を含み、高分子足場上の反応性基と反応性の親水性部分とを含む、マイケル型反応から誘導できる少なくとも1つの機能性部分、および(C)コーティング材料を架橋することができる少なくとも1つの部分を含む高分子を含むコーティング材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、基材の生物付着を防ぐための基材表面のコーティングに、およびそれに使用するのに好適なコーティング材料に関する。
【0002】
水と接触する物体、とりわけ合成材料でできた物体は一般に、生物学的に誘導された有機種の望ましくない蓄積(それがタンパク質吸着、細菌吸着およびその後の広がりに由来する場合)、または血栓形成に悩まされる傾向がある。これは「生物付着」と一般に称され、それは、生物学的種を含む、水、またはその他の水性流体(本明細書においては以下「生物流体」と言われる)との接触のために一般に起こる。生物付着時に発生する生物学的種の吸着および蓄積は、一般に不可逆であり、非特異的である。
【0003】
生物付着は様々な状況において起こる。たとえば、船体は生物付着に悩まされる傾向がある。体液と接触する、医療機器(たとえば人工移植片、カテーテル、コンタクトレンズ)は、それらの体液から生物学的種(たとえば細菌、タンパク質、細胞)を蓄積し得る。生物付着に悩まされる可能性がある典型的な表面の別の例は、水精製プラントにおいて使用される表面である。
【0004】
生物付着は、重大な望ましくない結果をもたらし得る。たとえば、医療分野においてはカテーテルによる細菌感染が生物付着によって引き起こされる可能性があり、工業界においてはフィルターの閉塞、表面上での有機材料の蓄積などが同様に問題を引き起こす。
【0005】
生物付着の特有の欠点は、生物流体が試験される実験室において起こることである。サンプルの抜き取り前の貯蔵容器などの分析前取扱装置においてだけでなく、生化学分析、診断などにおいて、多くの合成の頻繁に使い捨てできる器具が使用される。こうした場合に、それらと接触する生物流体からの生体材料の吸着は試験結果に影響を及ぼし得る、たとえば、生体材料が吸着され、こうして流体から効果的に取り去られるにつれて生物流体の中身が影響を受ける、および/または生物学的種の自然の立体配座(たとえばタンパク質の3次元構造)が合成表面との相互作用によって影響を受けて、生物活性の損失につながり得るので、これらの器具の表面が生物付着する傾向があることは非常に有害である。この問題は、たとえば、分析研究室または臨床診断試験室において使用されるマイクロタイタープレートにおけるように、試験されるべき種の量が低い場合にとりわけ顕著である。
【0006】
たとえば、マイクロプレートにおける非特異的な結合の場合、表面への共有結合は制御するのが困難であり、斑点のある被覆を頻繁にもたらし、不規則な結合、生物活性損失(敏感なモノクローナル抗体は、疎水性表面との相互作用によって引き起こされる立体配座変化のために活性を時々失う)、および試行錯誤による低い再現性をもたらす。この非特異的な結合はまた、細菌培養、酵母培養、プラスミド精製、cDNA貯蔵、ゲノムバンクの貯蔵、低温培養物(たとえば細胞/細胞培養物)の貯蔵、タンパク質分析、タンパク質治療学発見および開発、幹細胞発見、タンパク質キナーゼ、シンチレーション近接アッセイなどにおいて起こり得る。
【0007】
疎水性表面との関連で特に起きる前述の問題は、このような表面を親水性にするための技術によって対処できることが認められている。多くの生物学的種は疎水性部分を含み、こうして親水性コーティングによって撥かれるであろう(生物学的種が、上述した典型的には合成の表面の一般的には疎水性の表面によって引き付けられる傾向があるように)。この問題は、疎水性表面に限定されず、あらゆる表面で、特にまた帯電した表面で起こり得る(多くの生物学的分子もまた帯電した基を含むので)。
【0008】
異なる親水性材料、特にポリマーが有望であるが、現在最も好まれる材料は、ポリエチレンオキシド(PEO)鎖を含むもの、すなわちポリエチレングリコール(PEG)をベースとするポリマーである。
【0009】
生物流体と接触したときに生物の付着から防止されるべき物体の一般に疎水性の表面に親水性材料、典型的にはPEGを結合させるのに役立つ幾つかの異なる方法が存在する。
【0010】
このような一技術はブロックコポリマーをベースとしている。米国特許第6,093,559号明細書は、溶媒と、5未満のHLB数および水溶液中へ広がることができる少なくとも1つの親水性要素を有する非イオン性界面活性剤とからなるコーティング液を提供することによって疎水性ポリマー表面のタンパク質結合のレベルを下げる方法を開示している。この界面活性剤は典型的にはエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーである。
【0011】
国際公開第95/06251号パンフレットは、ポリエチレンオキシドブロック、反応性基官能化ポリエチレンオキシドブロック、およびポリプロピレンオキシドブロックを含む3ブロックコポリマーを使用している。
【0012】
物理的に堆積した層を生成することを基盤とする前述の技術の欠点は、このように塗布されたブロックコポリマーが生物流体中へ滲出する傾向がある成分を含有することであり、それは、たとえば分析目的のためには明らかな欠点である(Clin Chim Acta 2007;378(1−2):181−193)。非生物付着製品のさらなる例は、Coming NBS Microplate(カタログ#3676)である。この製品は、非生物付着性を提供するために界面活性剤を使用しており、この界面活性剤はまた、その後のアッセイの結果に影響を及ぼし得る。非生物付着界面活性剤はコーティングから浸みだし、そしてサンプル中へ浸みこみ、サンプルでそれらはその後の試験の結果に影響を及ぼす。
【0013】
別の技術は、その一端が表面に対して特別な親和性を有するポリマーを表面上に塗布することによる、自己組織化された単分子層(SAM)の形成をベースとしている。これは、たとえば、シランカップリング剤を含む。これに関する参考文献は、Seongbong Jo and Kinam Park,Biomaterials 21(2000)605−615である。SAMに関しては、チオール化PEG誘導体での金基材に関する幾つかの研究が報告されてきた。たとえば、Wangら,J.Phys.Chem.,B 101(1997)9767;Harderら,J.Phys.Chem.B 102(1998)426。それらの技術は、工業的規模で、欠陥なしに比較的大きい表面の場合に適用するのは困難である。
【0014】
さらに別の技術はイオン結合をベースとしている。これは、表面に引き付けられるべき親水性ポリマー(PEO)中に含有される反対の電荷、たとえば(−)のイオン性基に結合することを可能にするように、疎水性表面がイオン的に、たとえば(+)に帯電することを必要とする。このタイプの結合は、それが親水性ポリマーを適切に官能化することだけでなく表面改質を必要とするので、プロセス集約型である。
【0015】
既存の生物付着コーティングに関連する別の問題は、引っかき抵抗性などの、必要とされる機械的特性を達成するために、国際公開第2006/016800号パンフレットに開示されているものなどの、ナノ粒子の使用が必要とされることである。これらのコーティングは良好な機械的特性を有するが、それらのより剛性な構造は、亀裂が入るおよび/または基材から離層する傾向を有し、それによってコーティングが生物付着防止性能に変動を起こしやすくなる。
【0016】
前述を考慮して、生物付着防止特性を含むことに加えて、基材に容易に塗布することができ、基材への良好な接着性を有し、亀裂および離層に対して弾力的である生物付着防止コーティング用の材料を提供することが望ましく、その機能特性は、基材特性および生物付着環境に適合するように都合良くカスタマイズすることができる。
【0017】
明らかに、制御されかつ再現可能な方法での高い表面親水性被覆は、有用な生物付着防止コーティングを形成するための鍵である。
【0018】
前述の要望の1つ以上により良く対処するために、本発明は、基材に生物付着防止コーティングを提供するための好適なコーティング材料であって、
(A)マイケル型受容体基とマイケル型供与体基との間のマイケル型反応を受けることができる反応性基を含む高分子足場、
(B)前記高分子足場に結合した少なくとも1つの機能性部分であって、前記少なくとも1つの機能性部分が親水性部分を含み、前記高分子足場上の反応性基と反応性の親水性部分とを含む、マイケル型反応から誘導できる少なくとも1つの機能性部分、および
(C)前記コーティング材料を架橋することができる少なくとも1つの部分
を含む高分子を含むコーティング材料を提供する。
【0019】
コーティング材料を架橋することができる部分は、高分子足場に含まれることができるか、または高分子足場に結合したさらなる機能性部分であることができる。
【0020】
本発明に定義されるような、マイケル(Michael)型反応性基と組み合わせた高分子足場は、広範囲の防汚用途に好適である良好な機能特性を持ちながら、防汚特性を持ったコーティングを生成することができることが意外にも分かった。さらに、本コーティング材料は、高程度の構造的および機能的一貫性をもって製造することができ、本コーティング材料を生物医学用途向けに特に好適なものにする。
【0021】
生じたコーティングのさらなる利点は、それが幅広いスペクトルの基材に関して良好な再現可能な防汚結果を示すことである。
【0022】
別の態様においては、本発明は、前記のようなコーティング材料を含む非生物付着コーティングを含む物品を提供する。
【0023】
さらなる態様においては、本発明は、生物付着防止コーティングにおける、本発明に記載されるような、コーティング材料の使用であって、生物付着が、タンパク質、ペプチド、核酸、酵素、抗体、細胞および微生物、上記のものと血液との混合物の非特異的付着を意味する使用を提供する。
【0024】
なおさらなる態様においては、本発明は、次の工程:
(a)本発明に記載されるようなコーティング材料を含むフィルム形成調合物を提供する工程と;
(b)あらゆる好適な塗布方法、たとえば吹き付けコーティング、浸漬コーティング、吸引式コーティング、インク−コーティング(好ましくはインクジェットコーティング)を用いて調合物を基材に塗布する工程と;
(c)実質的にすべての揮発性物質を蒸発させる工程と;
(d)UV硬化、電子ビーム硬化、熱硬化のようなあらゆる好適な架橋技術を用いて架橋する工程と
を含む、非生物付着コーティングを基材に提供する方法を提供する。
【0025】
あるいは、工程(b)は、コーティングがキャストされてフィルムを形成し、それが次に接着剤を使用して基材に適用されてもよいように修正されてもよい(工程(e))。
【0026】
その上さらなる態様においては、本発明は、
(A)高分子が、マイケル型受容体基とマイケル型供与体基との間のマイケル型反応を受けることができる少なくとも1つの反応性基を含む、前記に従ったコーティング材料を提供する工程と;
(B)コーティング材料の機能的性能を所定の規格に対して評価する工程と;
(C)工程(B)において評価された機能的性能に基づいて、機能性部分を加えて反応性基の少なくとも一部と反応させる工程と;
(D)コーティング材料の機能的性能が所定の規格を満たすまで工程(B)および(C)を繰り返す工程と
を含むコーティング材料の機能性をカスタマイズするためのシステムを提供する。
【0027】
本発明の別の態様においては、生物付着防止コーティングにおける本発明に記載されるような高分子または高分子足場の使用が提供される。
【0028】
本発明は、広い意味で、生物付着防止コーティングを提供することにおける親水性部分が結合した高分子足場の使用をベースとしている。
【0029】
高分子足場
高分子足場は、良好な防汚機能性を持っている親水性部分を結合させるのに十分な分子量を有する構造体である。さらに、高分子足場の構造および/または組成は、コーティング材料の良好な化学的および機械的特性に向けて正に寄与し、および/またはさらなる化学的および/または機械的増強部分をその骨組に結合させることができる。
【0030】
高分子足場は好ましくは線状、分岐または樹枝状分子である。分子足場は、有機または有機−無機(ハイブリッド)オリゴマーまたはポリマーから誘導されてもよい。
【0031】
線状オリゴマーまたはポリマーハイブリッド高分子足場の例は、マイケル型反応に関与することができる少なくとも1つの反応性基を含む(すなわちマイケル型受容体または供与体基を含む)ペンダント基を含む無機オリゴマーまたはポリマー(たとえばシロキサンベースの主鎖)である。
【0032】
ハイブリッドポリマーのさらなる例は、ポリジメチルシロキサン変性キトサン.パートIII:ハイブリッド膜の製造およびキャラクタリゼーション(Polydimethylsiloxane modified chitosan.Part III:Preparation and characterization of hybrid membranes).Enescu,Daniela;Hamciuc,Viorica;Ardeleanu,Rodinel;Cristea,Mariana;Ioanid,Aurelia;Harabagiu,Valeria;Simionescu,Bogdan C.Department of Macromolecules,「Gh.Asachi」Technical University,lasi,Rom.Carbohydrate Polymers(2009),76(2),266−278.Publisher:Elsevier Ltdに開示されているようなポリジメチルシロキサン変性キトサンである。
【0033】
分岐オリゴマーまたはポリマーハイブリッド高分子足場の例は、マイケル型反応に関与することができる少なくとも1つの反応性基を含む(すなわちマイケル型受容体または供与体基を含む)ペンダント基または鎖延長基を含む分岐した無機オリゴマーまたはポリマー(たとえば分岐シロキサンベースのポリマーまたはオリゴマー)である。
【0034】
線状オリゴマーまたはポリマー有機高分子足場の例は、マイケル型反応に関与することができる少なくとも1つの反応性基を含む(すなわちマイケル型受容体または供与体基を含む)ペンダント基を含む線状有機オリゴマーまたはポリマーである。
【0035】
分岐した有機オリゴマーまたはポリマーを含む高分子足場の例としては、マイケル型反応に関与することができる少なくとも1つの反応性基を含む(すなわちマイケル型受容体または供与体基を含む)超分岐ポリマーを含む、樹枝状分子が挙げられる。
【0036】
高分子足場の主クリテリウムは、それが生物付着防止コーティングにおいて必要とされる必要な機械的特性を持つのに十分な分子量のものであること、ならびに高分子足場がマイケル型付加または反応によってそれに親水性部分およびあらゆる他の機能性部分を結合させ得ることである。このクリテリウムを満たすために、高分子足場は、少なくとも1つのマイケル型受容体および/またはマイケル型供与体を持つ。
【0037】
便宜上、マイケル型供与体およびマイケル型受容体は、マイケル型反応性基として記載されてもよく、ここで、特に明記しない限り、高分子足場上のマイケル型反応性基は、反応性の親水性部分を含む、機能性部分上のマイケル型反応性基を補完する。
【0038】
本明細書において使用される場合、用語「高分子の」または「高分子」は、大きい分子量、特に200g/モル以上、好ましくは500g/モル以上、より好ましくは1000g/モル以上、最も好ましくは1500g/モル以上の分子量を有する、分子、またはその部分を意味する。比較的高い分子量、好都合には少なくとも1800g/モル、より好都合には少なくとも2500g/モル、最も好都合には少なくとも3000g/モルが硬化時の特に低い収縮のために望ましい可能性がある。コーティング材料の粘度が基材に容易におよび一様にそれが塗布されることを可能にするのに十分に低いことを確実にするために、本発明の高分子の分子量は好ましくは15,000g/モル未満、より好ましくは12,000g/モル未満、さらにより好ましくは10,000g/モル未満、最も好ましくは8,000g/モル未満である。
【0039】
高分子化合物は、単一化合物(たとえば1つ以上の段階における有機合成によって製造される)、異なる数の繰り返し単位を持った化合物の混合物を含むポリマー材料(たとえば好適な重合法によって製造される)、重合性の高分子化合物および/またはそれらのあらゆる好適な混合物であってもよい。本発明の高分子がポリマー(すなわち重合によって得られ、1より大きい多分散性を有する)である場合、本明細書において与えられる分子量値は、本発明のこのようなポリマーの数平均分子量(M)である。
【0040】
一実施形態においては、高分子足場は樹枝状分子を含む。樹枝状分子は、超分岐のポリマーおよび/またはオリゴマーまたは構造的に完全な分子、すなわちデンドリマーもしくはデンドロンの高分子変形を好ましくは含む。構造的に完全なデンドリマー構造は、稠密な面を持ったほとんど球形の形状に達するまで、何度も反復して分岐する分岐基の繰り返し連結でコア原子または構成要素分子を軸に展開している。カスケード分子の異なるスタイルおよびデザインの多様性はこれまで報告されてきたし、このトピックスに関する刊行物の年々の数は、最初のカスケード分子が20年前に報告されて以来今まで増え続けている。
【0041】
1979年に、Denkewalterらは、アミノ酸に基づく分岐構造体に関する特許を公開した。ポリアミドアミン(PAMAM)などの樹枝状高分子がTomaliaによって、ポリアリールエーテルがFrechetによって記載された。Tomaliaは、高分岐デンドリマーの概念を復活させた。さらに、これらの周辺機能化超分岐デンドリマーは、ナノメートル−サイズの分子配列を形成するために、小さい(有機)分子と高分子量高分子との間に連結要素を有し;それらはナノ構造のための理想的な構成要素である。幾つかの商業的用途が、たとえば医療診断において実現されてきたし、さらに多くの用途が現在予測されている。
【0042】
好ましくは樹枝状分子は、これらの分子が良好な機能性を提供し、かつ、構造的に完全なデンドリマーより容易に製造されるような超分岐ポリマーおよび/またはオリゴマーである。
【0043】
好ましい樹枝状分子は、中心コアから発し、発生および反応性の機能性末端基の規定数を有し、繰り返し反応順序によって段階的方法で合成される超分岐ポリマーと記載することができる。これまでに記載された合成は、その場合に個別の有機化合物が合成される、収束的合成か、その場合にデンドリマーの構成がほとんど1の多分散性の段階重合と見なすことができる、分岐的合成かのどちらかである。
【0044】
高分子足場、またはそれらの前駆体として使用されるのに好適である樹枝状分子の例は、次の参考文献に見いだすことができる:D.A.Tomalia,A.M.Naylor,W.A.Goddard III,Angew.Chem.1990,102,119;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1990,29,138−175;D.A.Tomalia,H.Baker,J.Dewald,M.Hall,G.Kallos,S.Martin,J.Roeck,J.Ryder,P.Smith,Polym.J.Tokyo 1985,17,117−132;C.J.Hawker,J.M.J.Frechet,J.Am.Chem.Soc.1990,112,7638;G.R.Newkome,X.Lin,Macromolecules 1991,24,1443;G.R.Newkome,A.Nayak,R.K.Behera,C.N.Moorefield,G.R.Baker,J.Org.Chem.1992,57,358;T.M.Miller,E.W.Kwock,T.X.Neenan,Macromolecules 1992,25,3143;A.W.van der Made,P.W.N.M.van Leeuwen,J.Chem.Soc.Commun.1992,1400;A.Morikawa,M.Kakimoto,Y.Imai,Macromolecules 1991,24,3469;van Benthem et al.,Macromolecules 2001,34,3559−3566;Froeling,J.Polym.Sci.Part A:Vol 42(2004),3110−3115;Tomalia et.al.,Polymer Journal, Vol 17,No.1 pp 1117−132(1985);国際公開第99/61810号パンフレット。
【0045】
好ましい実施形態においては、高分子足場は、環状酸無水物またはジカルボン酸、ならびにヒドロキシアルキルアミンおよび/またはエステル分岐基をベースとする構成要素を含む。
【0046】
高分子足場、またはそれらの前駆体として使用されるのに好適である超分岐ポリマーとしては、Hybrane(DSM)、Boleorn(Perstorp)、多官能性(メタ)アクリレート(Sartomer)、超分岐ポリグリセロール(HyperPolymers)およびPriostar(Dendritic Nanotechnologies)が挙げられる。
【0047】
デンドリマーは、繰り返し分岐の化学種と一般に記載することができる。低分子量デンドリマーは典型的には、コア分子が分岐分子を提供され、これらの分岐分子が順繰りにさらなる分岐分子を提供され、結果が完全な対称の3次元構造体である(前述の超分岐ポリマーおよび/またはオリゴマーは完全な対称の3次元構造体ではない)、デンドリマーである。変形は、コアが中心に取って代わられ、片側では活性部分を保つが、すべての反対側では繰り返し分岐が伸びる、デンドロンである。
【0048】
高分子足場、またはそれらの前駆体として使用されるのに好適であるデンドリマーとしては、Astramol(ポリ(プロピレンイミン))(DSM)、Starburst(Dendritech)などの、商業的に入手可能な分子が挙げられる。
【0049】
とりわけ樹枝状分子を含む、好ましい高分子を記載するときに、次の部分が区別されてもよい:構成要素(分岐的合成がスタートするコアとして働く)、分岐基(所望の、たとえば超分岐の構造を生み出す働きをする)、および周辺(分岐の末端鎖を形成する)。
【0050】
分子足場および機能性部分の定義の下で、分子足場は、マイケル型反応によって結合させられる機能性部分を除いて高分子のすべての部分を含む。機能性部分が2つ以上のマイケル型反応によって分子足場に結合させられる場合、機能性部分は、機能性部分上の末端基の前の最後のマイケル型反応性基からの部分およびその反応性基を含む部分であると考えられる。したがって、高分子の観点から記載されるような分岐基は、分子足場の一部および機能性部分の一部を含んでもよい。
【0051】
マイケル型反応
マイケル型反応または付加は、カルバニオンまたは求核試薬(マイケル型供与体)が、α,β−不飽和化合物を含む、活性化アルケン(マイケル型受容体)と反応する共役付加反応を意味する。用語マイケル型反応は、炭素供与体のみの付加を元々包含した用語マイケル反応を含む。
【0052】
マイケル型供与体は、炭素求核試薬であっても非炭素求核試薬であってもよい。好適な非炭素求核試薬は、窒素、リン、ヒ素、酸素、硫黄、スズおよびセレンからなる群から選択される供与体原子を好ましくは含む。非炭素求核試薬を含有する好適な化合物としては、アルコール、アルコキシド、第一級および第二級アミン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンおよびそれらの誘導体、ホスフィン、スルフィド、チオール、チオレート、カルボキシレ−ト、フェノール類、フェノレート、チオフェノール類、チオフェノレート、セレニド、およびスズ誘導体が挙げられる。好適な炭素求核試薬としては、ベータ−ケトエステル、マロネートエステル、トリアルキルボラン、アルキルシリル誘導体、エノレート、シリルエノール、エナミン、および参照により本明細書に含められる、米国特許第6,887,517号明細書のスキーム1におけるアニオンからのカルバニオンが挙げられる。
【0053】
好ましい実施形態においては、マイケル型供与体はアミン、最も好ましくは第一級アミンである。マイケル型反応は、直接行われても、または当該技術分野において公知であるように、塩基(たとえばトリエチルアミン)の使用によって触媒されてもよい。第二級アミンについては反応は高温または塩基触媒を使用することによって加速することができる。ある特定の実施形態においては、マイケル型供与体は、この供与体がマイケル型受容体、好ましくはアクリル化合物と迅速におよび効果的に完全に反応し、それによって親水性部分対高分子のその他の部分の官能性の比を効果的に制御することを可能にするので、第二級アミンである。
【0054】
本発明との関連で、用語「マイケル受容体」は、いわゆるマイケル型付加などの共役付加反応で求核試薬と反応することができるあらゆる活性化アルケン化合物を意味する。
【0055】
マイケル型受容体の例はよく知られており、このタイプのあらゆる化合物が本発明において使用するのに好適である。マイケル受容体としては、α,β−不飽和エステル、α,β−不飽和アミド、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和アクリル系ニトリル、α,β−不飽和アルデヒドおよびα,β−不飽和ケトンが挙げられる。α,β−不飽和カルボニルの例は、アクロレイン、メシチルオキシド、アクリル酸およびマレイン酸である。
【0056】
好ましい実施形態においては、マイケル型受容体は、ビニルケトン、アクリレート、メタクリレート、ビニルスルホン、アクリルアミド、アレンエステル、ビニルスルホネート、ビニルホスホネート、クロトン酸エステル、ビニルスルホキシドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、マイケル型受容体は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0057】
さらなる実施形態において、マイケル型受容体は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPT(M)A)、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(HDD(M)A)、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(DPGD(M)A)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(TPGD(M)A)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(NPGD(M)A)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(PET(M)A)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(PET3(M)A)、イドデシル(メタ)アクリレート(ID(M)A)、グリセジル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート(EOEOE(M)A)、グリセロールプロポキシトリ(メタ)アクリレート(GPT(M)A)、イソボルニル(メタ)アクリレート(iBo(M)A)、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトンメタクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート(PE(M)A)、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール−ジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGD(M)A)、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェノール(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート(diTMPT(M)A)およびヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HE(M)A)ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0058】
機能性部分
機能性部分は好ましくは、線状または分岐であってもよい、そして少なくとも1つのマイケル型反応性基を含む分子鎖(有機および/または無機の)である。好ましくは機能性部分は、機能性成分と少なくとも1つのマイケル型反応性基を含む成分とを有する分子鎖であって、機能性成分と少なくとも1つのマイケル型反応性基を含む成分とが分子鎖の反対末端にある分子鎖である。この立体配置の下では、機能性成分は高分子の周辺の一部を典型的には形成し、そこでそれはその環境(たとえば基材、生物流体)と相互作用することができる。
【0059】
本発明の一実施形態においては、機能性部分はマイケル型供与体を含み、高分子足場の反応性基はマイケル型受容体を含む。あるいは、機能性部分がマイケル型受容体を含み、高分子足場の反応性基がマイケル型供与体を含んでもよいことは十分理解されるであろう。実際に、機能性部分および高分子足場の反応性基が両方ともマイケル型供与体基と受容体基との混合物を含んでもよい。しかし、この実施形態は、高分子足場の内部架橋の増加する傾向または高分子足場から切り離された機能性部分の形成、それによって硬化したコーティング材料の浸出性を増加させることのために一般に好ましくない。
【0060】
本発明の高分子において、少なくとも2つの異なった構造部分、すなわちコア(高分子足場)および周辺(親水性部分を含む機能性部分)が一般に区別される。本発明において、親水性部分は高分子の周辺に必ず配置されるが、その他の任意選択的な構造部分(たとえば親水性部分;基材に結合することができる部分およびコーティング組成物を架橋することができる部分)は、結合した機能性部分中だけでなく高分子足場中にも両方に存在することができる。
【0061】
本発明の目的のためには、用語「基材に結合すること」は、基材への接着および吸収を包含する。
【0062】
親水性部分
高分子足場は、マイケル型反応によってすべての種類の親水性部分でグラフトされることが可能である。親水性部分(好ましくはポリマー鎖)は0〜100℃の少なくとも1つの温度で水に溶解する。好ましくは、20〜40℃の温度範囲の水に溶解する部分が使用される。好ましくは、親水性部分は、水の1リットル当たり少なくとも0.1グラムに向けて、より好ましくは1リットル当たり少なくとも0.5グラムに向けて、最も好ましくは1リットル当たり少なくとも1.0グラムに向けて溶解する。水への溶解度を測定するために、この部分をグラフトするための基(すなわちマイケル反応性基)または、たとえばこの部分がポリマーであるときには、重合後にポリマーに結合しているあらゆるその他の基、たとえばイオン性基を含まない部分が採取される。好ましくは、溶解度は、pH3〜10、より好ましくは5.5〜9を有する、最も好ましくはpH7を有する水で測定される。
【0063】
ポリマー鎖は、1つのモノマー種(ホモポリマー)、またはランダムにもしくは秩序あるブロックに配置されたより多くの種(コポリマー)を含んでもよい。
【0064】
本発明の高分子中に含まれる親水性部分は、エチレンオキシド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ホスホリルコリン、グリシジル(メタ)アクリレート、サッカリドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマー単位を好ましくは含む。好ましい実施形態においては、親水性部分はポリエチレンオキシド(すなわちPEG)を含む。
【0065】
反応性の親水性部分は、
(A)窒素供与体原子(または硫黄供与体原子(たとえばチオール基))を含むマイケル型供与体基を含む反応性部分;および
(B)この供与体基の反対端の周辺部に配置されたポリ(エチレンオキシド)基を含む親水性部分
を好ましくは含む。
【0066】
例示的な実施形態においては、反応性の親水性ポリマーは、アルキレンオキシド成分が、ポリ(アルキレンオキシド)の総重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%のポリ(エチレンオキシド)を含んだ、ポリ(アルキレンオキシド)アミンである。ポリ(エチレンオキシド)が高ければ高いほど、生じる親水性部分の親水性は高くなる。
【0067】
反応性の親水性部分の例示的な例は、Huntsman Corporationから入手可能な、商品名Jeffamine(登録商標)、好ましくはMシリーズで知られるポリエーテルアミンなどの、アミン末端基を含む、そしてポリ(エチレンオキシド)を含むポリマーである。好ましくは、ポリエーテルアミンは、約500〜5000、好ましくは1000〜3000の分子量を有するモノアミンであり(ジアミンおよびトリアミンが代わりの実施形態において使用されてもよいが)、そしてここで、ポリエーテル主鎖中のエチレンオキシド対プロピレンオキシドのモル比は好ましくは少なくとも3対1、より好ましくは少なくとも5対1、最も好ましくは少なくとも10対1である。エチレンオキシド対プロピレンオキシドの比が高ければ高いほど、反応性の親水性ポリマーの親水性は高くなる。前記のような、しかし好ましくは1対3未満、より好ましくは少なくとも1対6、最も好ましくは少なくとも1対10のポリエーテル主鎖中のエチレンオキシド対プロピレンオキシドを有する、ポリエーテルアミンが反応性の親水性ポリマーとして使用されてもよい。これらの機能性部分は、それらを本発明の防汚コーティング材料において好適なものにする低い粘度、低い色および良好な靱性を有する。
【0068】
コートされた物体にコーティングが付与する典型的な利点の1つは、ポリマー鎖の親水性によって生じる、コーティングの非常に良好な生物付着防止特性である。これらの特性は、コーティングの表面での親水性ポリマーの濃度および長さを増やすとともに増加する。
【0069】
好ましくは親水性ポリマーの鎖は少なくとも平均5のモノマー単位を含み、より好ましくはポリマーは少なくとも平均7のモノマー単位を含み、もっとより好ましくはポリマーは少なくとも平均10のモノマー単位を含み、さらにもっとより好ましくはポリマーは少なくとも平均15のモノマー単位を含み、最も好ましくはポリマーは少なくとも平均20のモノマー単位を含む。
【0070】
親水性ポリマー鎖の濃度は、たとえば、樹枝状分子の前駆体へのグラフトされたポリマーの密度を上げることによってかまたは親水性ポリマー鎖の長さを増やすことによって高められてもよい。
【0071】
好ましくは、各高分子足場は、少なくとも1つの親水性ポリマー鎖、より好ましくは少なくとも2、さらにより好ましくは少なくとも4、最も好ましくは少なくとも6つの親水性ポリマー鎖を支えている(すなわちそれに結合させている)。好ましくは、各高分子足場に結合した親水性ポリマー鎖の数は、12以下、より好ましくは10以下、最も好ましくは8以下である。1高分子足場当たりの親水性鎖のより高い数は、コーティング材料のより高い粘度をもたらし、それは均一なコーティングの塗布をより困難にする。
【0072】
好ましくは、コーティング組成物は、
(A)+(B)+(C)+(D)が100重量部である、
(A)10〜90重量部の高分子足場;
(B)前記のようなマイケル型反応によって高分子足場に結合した10〜90重量部の親水性部分;および
(C)コーティング材料を架橋することができる0〜90重量部の部分;
(D)基材および/または抗菌性部分に結合することができる0〜50重量部の部分
を含む高分子を含む。
【0073】
比較的高い機械的特性を必要とする実施形態においては、高分子足場(A)含有率は好ましくは少なくとも40重量部、より好ましくは少なくとも50重量部であるが、親水性部分(B)は60重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
【0074】
比較的高い防汚特性を必要とする実施形態においては、高分子足場(A)含有率は好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下であるが、親水性部分(B)は少なくとも60重量部、好ましくは少なくとも70重量部である。
【0075】
良好な防曇性を得るためには、比較的短い長さ(たとえば5000g/モル、好ましくは4000g/モルの分子量)を有するポリマー鎖が好ましい。
【0076】
その他の機能性部分
マイケル型反応に関与することができるマイケル型反応性基を含む高分子足場を形成することの利点は、各高分子がその具体的な用途に依存して異なる機能性を有する状態で、同じ高分子足場が様々な高分子の中間体として使用できることである。
【0077】
これらのマイケル型反応性基によって、高分子足場は、
・ポリ(プロピレンオキシド)を好ましくは含む、疎水性表面に結合することができる疎水性部分;
・たとえば、第四級アミンおよび/または抗菌性ペプチドおよび/または抗生物質化合物を含む抗菌性部分
を含む様々な機能性部分を搭載することができる。
【0078】
機能性部分の一部はその他のグラフト技術を用いて結合させられてもよいことが理解されるであろうが、さらなる機能性部分の付加は、マイケル型反応によって好ましくは達成される。所定数のマイケル型受容体またはマイケル型供与体で高分子足場を生成することによって、適切なマイケル型供与体またはマイケル型受容体を含む、追加の官能基がマイケル型付加によって都合良く結合させられてもよい。
【0079】
必要ならば、1つ以上のさらなる官能性を、たとえば、親水性鎖または分岐を一方向に、疎水性鎖または分岐を別の方向に、そして、たとえば、イオン的に帯電した鎖または分岐をさらに別の方向に、高分子足場に結合させることもまた可能である。
【0080】
高分子足場が機能的能力に関与するべきである場合、高分子の構造は高分子足場を露出させることができるような構造であるべきである。こうして、一実施形態においては、高分子足場は疎水性である(そしてそれをもって疎水性基材と物理的に相互作用することができる)。生物流体の水性環境中で、および疎水性基材の存在下に、周辺の親水性鎖は、すべて一般に同じ方向に、すなわち疎水性表面から離れる方向を向いて水中へ伸び、こうして疎水性高分子足場を前記表面に露出させるであろう。別の実施形態においては、高分子足場は、たとえば第四級アンモニウム基で、イオン的に帯電することができ、こうして帯電した基材との結合相互作用することができるようにされる。
【0081】
好ましい実施形態においては、親水性部分に加えて、少なくとも1つのさらなるタイプの機能性部分が高分子足場に結合させられる。これらの機能性部分は好ましくは、適切に活性化された表面(たとえば、イオン電荷を提供された親水性または疎水性表面)に結合することができる反応性部分(たとえばカップリング基またはイオン性基)を含んでもよい、基材の表面に結合することができる部分である。
【0082】
基材接着促進剤部分
好ましくは、表面に結合することができる部分は、疎水性表面に結合することができるように、疎水性部分である。この部分は、上述のように、分子足場の一部を形成することができるが、それはまた、そこから結合した結合機能性部分に含まれることができる。後の実施形態においては、分子足場は、親水性または疎水性特性のために選択される必要がなく、親水性部分およびその他の必要とされる機能性部分のための担体(たとえば木の幹)としての機能を主として有する。このタイプの高分子はこうして、一方向に(たとえば「上方へ」)伸びる繰り返し親水性分岐と、任意選択的に、別の方向に(たとえば「下方へ」)伸びる繰り返し疎水性分岐とを有するであろう。高分子の3次元構造に関連して、親水性および疎水性官能性を含む実施形態は、それらのどちらかまたは両方が2つ以上の方向に伸びてもよいことが理解されるであろう。
【0083】
コーティング材料を架橋することができる部分
コーティング材料を架橋することができる部分は、高分子足場に含まれることができるかまたは高分子足場に結合したさらなる機能性部分であることができる。
マイケル型反応に関与することができるマイケル型反応性基を含む高分子足場を形成することの利点は、各高分子がその具体的な用途に依存して異なる機能性を有する状態で、同じ高分子足場が様々な高分子の中間体として使用できることである。
これらのマイケル型反応性基によって、高分子足場は、UV架橋することができる重合性部分を搭載することができる。
【0084】
特別な利点は、架橋することができる部分、たとえば遊離のオレフィン基で前述の分子足場を結合させることによって達成される。高分子を含むコーティング材料は、水性環境において基材上へ塗布し(水性環境においてそれは、親水性部分を環境中へ伸びさせ、その他の部分、好ましくは疎水性部分を基材の表面に結合させるためなどの立体配座を取る)、次に架橋することができる。これは、基材をコートするより堅固な構造をもたらすために用いられる。さらに、コーティング材料がその他の成分を含む実施形態においては、架橋部分は、コーティングからの抽出可能物のレベルを低下させるために使用されてもよい。たとえば、特別の実施形態においては、コーティング材料は、高分子に結合することができる部分でグラフトされたナノ粒子をさらに含む。この実施形態の利点は、ナノ粒子が機械的特性を向上させるのに十分な量で、しかしコーティングの亀裂および離層が起こるほど十分に高くはない濃度で加えられることである。それ故、乾燥コーティング組成物(すなわち、溶媒を除いた、コーティング組成物)の総質量に対する、ナノ粒子の%重量は、好ましくは50重量%未満、より好ましくは30重量%未満、さらにより好ましくは15重量%未満、最も好ましくは10重量%未満である。好ましくは、乾燥コーティング組成物の総質量に対する、ナノ粒子の%重量は、少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1.0重量%、さらにより好ましくは少なくとも5重量%である。ナノ粒子は、コーティング材料の機能性に寄与するためのこれらの最低レベルで必要とされる。本発明のコーティング材料に組み入れられてよい好適なナノ粒子に関するさらなる詳細は、国際公開第2006/016800号パンフレットに見いだすことができる。
【0085】
硬化されるコーティング材料へナノ粒子を組み入れる代案として、ナノ粒子はまた、高分子の機能性部分へ組み入れられてもよく、このナノ粒子は、マイケル型反応性基を含むハイブリッド(有機−無機)化合物をマイケル型反応によって分子足場に結合できるようにこの化合物の一部を形成する。
【0086】
好ましい実施形態においては、結合した部分は、高分子を架橋してコーティング材料のその他の高分子または成分にすることができる。
【0087】
より好ましい実施形態においては、高分子は、好ましくは放射線硬化によって、より好ましくはUV放射線によって、架橋されることができる部分を含む。典型的には、これらの部分は、アクリレートおよび/またはメタクリレートなどの、マイケル型受容体を含むが、その他の部分はまた、ビニルエーテル、アリルエーテル、スチレン系化合物およびそれらの組み合わせを含む非マイケル型反応性基を含んでもよい。
【0088】
重合性部分として、または分子足場のマイケル型受容体形成部もしくは機能性部分として使用するための(メタ)アクリレート化合物の好適な例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート;これらの(メタ)アクリレートのヒドロキシル基にエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを付加させることによって製造されるポリ(メタ)アクリレート;ならびに2つ以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に有するオリゴエステル(メタ)アクリレート、オリゴエーテル(メタ)アクリレート、オリゴウレタン(メタ)アクリレート、およびオリゴエポキシ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン;アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、カプロラクトンアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ベータ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルカルバミルエチル(メタ)アクリレート、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミドフッ素化(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ならびにトリエチレングリコールビニルエーテルおよび次式(I)
CH=C(R)−COO(RO)−R 式I
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり;Rは、2〜8個、好ましくは2〜5個の炭素原子を含有するアルキレン基であり;mは0〜12、好ましくは1〜8の整数であり;Rは水素原子もしくは1〜12個、好ましくは1〜9個の炭素原子を含有するアルキル基であるか;または、Rは、1〜2個の炭素原子のアルキル基で任意選択的に置換された、テトラヒドロフラン基を含む4〜20個の炭素原子のアルキル基であるか;またはRは、メチル基で任意選択的に置換された、ジオキサン基を含む4〜20個の炭素原子のアルキル基であるか;またはRは、C〜C12アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基で任意選択的に置換された、芳香族基である)
で表される化合物、ならびに、エトキシル化イソデシル(メタ)アクリレート、エトキシル化ラウリル(メタ)アクリレートなどの、アルコキシル化脂肪族一官能性モノマーなどである。
【0089】
そのときに使用されるUV硬化および光開始剤は、当業者に公知である。
【0090】
架橋度の制御
好ましい実施形態においては、高分子足場上の、架橋することができる、マイケル型反応性部位の割合は、機能性部分とのマイケル型反応の完了後に、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの残存マイケル型反応性基が残っているようなものである。これは、硬化工程中に、架橋してコーティング組成物中の高分子足場が低レベルの浸出性を有する完全な網状構造を形成することを可能にすることができる十分なマイケル型反応性基が存在することを確実にする。
【0091】
2つの逐次マイケル型反応に関与することができるマイケル型受容体(たとえば第一級アミンおよびホスフィンなど)については、マイケル型供与体(n供与体)対マイケル型受容体(n受容体)の好ましいモル割合は、
供与体=(n受容体−X)/2
として表されてもよく、
ここで、Xは少なくとも1、より好ましくは少なくとも2である。
【0092】
ただ一つのマイケル型反応に関与することができるにすぎないマイケル型受容体については、マイケル型供与体(n供与体)対マイケル型受容体(n受容体)の好ましいモル割合は、
供与体=n受容体−X
として表されてもよく、
ここで、Xは少なくとも1、より好ましくは少なくとも2である。
【0093】
高分子足場上の未反応のマイケル型受容体またはマイケル型供与体基は、それからマイケル反応を用いて同じまたは異なる機能性を有するさらなる成分を付加するための連結点として存在することができる。
【0094】
マイケル反応が同じまたは類似の官能基を有する化合物の結合をもたらす実施形態においては、マイケル反応は、高分子またはそれを含むコーティングの機能性が高められた機能性を有するように、官能基を再配置するための鎖延長剤として(すなわち高分子の周辺部へ)用いられる。たとえば、アクリレート基の鎖長は、隣接高分子との架橋剤として機能するその基の能力に影響を与える可能性がある。
【0095】
特別な実施形態
本発明の特別な実施形態において、分子足場は、
a)α,β−オレフィン系不飽和化合物と少なくとも2個のヒドロキシル基を含むアミンとの付加生成物を提供する工程
を含む方法によって製造される。
好ましくは、分子足場は、
b)付加生成物のヒドロキシル基の少なくとも一部を、オレフィン系不飽和化合物、特にオレフィン系不飽和カルボン酸、オレフィン系不飽和カルボキシレート、オレフィン系不飽和カルボン酸無水物、オレフィン系不飽和カルボン酸のエステル、またはオレフィン系不飽和酸ハロゲン化物でエステル化する工程
によってさらに改質される。
【0096】
工程「a」に加えられるヒドロキシル官能性アミンの量は、オレフィン系不飽和化合物中のオレフィン系不飽和基の数に比べて化学量論的に不足した比であるのが好ましい。これは、親水性部分を含む、機能性部分の付加のためのマイケル型反応に関与することができる高分子足場上にマイケル型受容体基の必要とされる形成をもたらす。
【0097】
特別な実施形態においては、アミン対オレフィン系不飽和カルボン酸のモル比は、0.99未満、特に0.98未満、より特に0.95未満、さらにより特に0.90未満または0.85未満である。この比は通常少なくとも0.5であり、特定の実施形態においては、それは0.3ほどに低くても、0.1まで下がってさえもよい。マイケル型供与体基を含む機能性部分のモル量を制御することに加えてアミン対オレフィン系不飽和カルボン酸のモル比を制御することによって、本発明の高分子の生じる構造は制御され、必要とされる機能性要件にカスタマイズされてもよい。
【0098】
工程「a」からの付加生成物は、付加生成物のヒドロキシ基をオレフィン系不飽和カルボン酸(またはそれの誘導体)でエステル化することによって工程「b」において分岐高分子足場を製造するために使用される。工程「b」で形成された、得られたオレフィン系不飽和エステルは、さらなる工程「a」において少なくとも2個のヒドロキシル基を含むアミンとの(さらなる)マイケル型付加反応を受けることができる。得られた付加生成物はさらなる工程「b」において前と同じようにエステル化することができる。こうして、官能基(不飽和基/ヒドロキシル基)の数を、反応「a」および「b」の各サイクルで増加させ、それによって親水性部分およびその他の機能性部分のマイケル型付加が可能である、かつ、コーティング組成物の硬化時に架橋することができる必要数の反応性部位を持った高分子足場を生成することが可能である。
【0099】
この実施形態の好ましい態様においては、工程a)のアミンは式:
−NH−R
(式中、RおよびRは独立して、ヒドロキシル化炭化水素基の群から選択される)
で表される。
【0100】
好ましくは、Rおよび/またはRは独立して、ヒドロキシ−アルキル部分およびポリエーテル−オール部分から選択される。
【0101】
この実施形態の特に好ましい態様においては、本発明の高分子のコアを形成してもよい好適なオレフィン系不飽和化合物は、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群から選択されてもよい。このような化合物は、所与の分子量について低粘度の液体高分子および/または良好な接着特性を示す液体高分子を有利に生成する。このような高分子は、必要ならば、粘度をさらに低下させるために水で希釈されてもよい。
【0102】
コア分子として使用されてもよい好都合な多官能性の(たとえば二、三もしくは四またはより高い官能性の)オレフィン系不飽和化合物は、
− ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、
− トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、
− ジエチレングリコールジアクリレート、
− 1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、および/またはブタンジオールジアクリレート(BDDA)などの、脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート、
− ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、
− エトキシル化および/またはプロポキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、
− ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、
− エトキシル化および/またはプロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、
− トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート;
− アルコキシル化(たとえばエトキシル化および/またはプロポキシル化)トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート;
−グリセロールトリ(メタ)アクリレート;
− アルコキシル化(たとえばエトキシル化および/またはプロポキシル化)グリセロールトリ(メタ)アクリレート;
−ヒドロキシアルキルが2−ヒドロキシエチルであるものなどの、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアピュレートトリ(メタ)アクリレート;
− ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;
− アルコキシル化(たとえばエトキシル化および/またはプロポキシル化)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;
− ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;
− ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;
− アルコキシル化(たとえばエトキシル化および/またはプロポキシル化)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート
を含んでもよい。
【0103】
4つの(メタ)アクリレート基を持った化合物は、マイケル型付加に関与することができる4つの不飽和結合を有するエステルを(コア分子として)提供することができる。
【0104】
この特別な実施形態に関するさらなる詳細は、国際公開第2009/037345号パンフレットに見いだすことができ、プロセス工程(b)において使用される特に好ましいオレフィン系不飽和カルボン酸化合物は、6ページ、19〜33行に含まれる。
【0105】
本発明はまた、上記の方法に従って製造される分子足場をカバーする。
【0106】
前述は分岐的合成を意味するが、当業者は、本発明において使用するのに好適な樹枝状ポリマーがまた収束的に合成できることを理解するであろう。これは、周辺から、すなわち好ましくはPEOから出発する合成を意味する。
【0107】
別の好ましい実施形態においては、本発明のこの実施形態において使用される樹枝状ポリマーは、超分岐ポリエステルアミドをベースとしている。本発明の目的のために好適な様々なコアおよび様々な末端基を有する超分岐ポリエステルアミドは、国際公開第1999/016810号パンフレット、国際公開第2000/056804号パンフレット、国際公開第2000/058388号パンフレット、国際公開第2003/097959号パンフレットおよび国際公開第2007/098889号パンフレットに開示されている。
【0108】
アルコール末端基または本発明の目的のために好適な変性末端基を有する超分岐ポリエステルアミドは、参照により本明細書に含められる国際公開第1999/016810号パンフレット、特に1ページ〜16ページに開示されている。
【0109】
エステルアルキルアミド−酸末端基または本発明の目的のために好適な変性末端基を有する超分岐ポリエステルアミドは、参照により本明細書に含められる国際公開第2000/056804号パンフレット、特に1ページ〜10ページに開示されている。
【0110】
本発明の目的のために好適なジアルキルアミド末端基を有する超分岐ポリエステルアミドは、参照により本明細書に含められる国際公開第2000/058388号パンフレット、特に1ページ〜12ページに開示されている。
【0111】
ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのような、ヒドロキシル官能性化合物が本発明の目的のために好適な末端基として組み入れられている超分岐ポリエステルアミドは、参照により本明細書に含められる国際公開第2003/097959号パンフレット、特に1ページ〜3ページに開示されている。
【0112】
本発明の目的のために好適な複素環末端基を有する超分岐ポリエステルアミドは、参照により本明細書に含められる国際公開第2007/098889号パンフレット、特に1ページ〜19ページに開示されている。
【0113】
超分岐ポリアミドが第三級アミン基を含有するあらゆる場合に、これらは様々な酸によってプロトン化されても、またはたとえばJerry March,Advanced organic chemistry,第4版,Wiley−Interscience 411ページ以下に記載されているような標準的な手順に従って慣習的である第四級化剤で第四級化されてもよい。
【0114】
1つの超分岐ポリマーにおいて上記の末端基の様々な異なるものの組み合わせもまた可能である。
【0115】
本発明において使用するのに好適な高分子はコーティング材料としての機能を果たす。この目的のために、これらの高分子は好ましくはフィルム形成特性を有する。
【0116】
本発明は、親水性および疎水性ポリマー分岐を含む高分子を含む。好ましくは、新規の樹枝状ポリマーは、疎水性コアと親水性周辺とを含む。
【0117】
コーティング材料は、様々な湿式コーティング技術を用いて基材上へ塗布することができる。たとえば、吹き付けコーティング、浸漬コーティング、インク印刷、任意選択的に基材を形成する前にポリマーブレンディングを用いて、基材を成形する前に成形機への吹き付け。
【0118】
コーティング材料の機能性をカスタマイズするためのシステム
本発明の別の実施形態において、
(A)高分子が、マイケル型受容体基とマイケル型供与体基との間のマイケル型反応を受けることができる少なくとも1つの反応性基を含む、前記のようなコーティング材料を提供する工程と;
(B)コーティング材料の機能的性能を所定の規格に対して評価する工程と;
(C)工程(B)において評価された機能的性能に基づいて、機能性部分を加えて少なくとも1つの反応性基の少なくとも一部と反応させる工程と;
(D)コーティング材料の機能的性能が所定の規格を満たすまで工程(B)および(C)を繰り返す工程と
を含むコーティング材料の機能性をカスタマイズするためのシステムが提供される。
【0119】
本システムは、コーティング材料が特定の用途のニーズにカスタマイズされることを有利に可能にする。さらに、本システムは、設計(たとえば基材の変化)によって起こるかまたはプロセスにおける管理されない変化(規格外基材または生物付着流体)のために起こる可能性がある、プロセスにおける変動または変化に対してコーティング材料が調整されることを可能にする。使用中に経験する具体的な条件の機能性を最適化する能力は、より大きいコーティング性能を可能にする。実際に、コーティング規格が構造クライテリア(たとえば組成)に基づくというよりは、コーティング調合物は、指定の機能特性を満たすようにカスタマイズすることができ、それによって性能の点でより大きい信頼を最終使用者に提供する。これは、機能要件を満たし得ないことが重大な結果を招き得る生物医学用途において特に重要である。
【0120】
本発明の高分子がカスタマイズされることを可能にするために、高分子足場は、機能性部分の意図される量に対して過剰のマイケル型反応性部位を好ましくは含み、それによって、高分子の機能性がさらなる機能性部分を付加することによってさらに調整できるように、生じた高分子が少なくとも1つのマイケル型反応性基を有することを確実にする。実際に、もし高分子足場が少なくとも1つの機能性部分の結合のために必要とされるマイケル反応のあらかじめ指定された数によって制限される必要がないならば、多数のマイケル型反応性基を持った高分子足場を様々な用途向けに使用できるという利点を有する。
【0121】
[基材]
本発明においてコートされるべき表面は、非常に多数の異なる種類、すなわち生物流体と接触して使用される可能性があるあらゆるものであることができる。一般にこれは、金属、プラスチックなどの合成材料、およびガラスを意味する。金属は、合金および金属酸化物を含む、すべてのタイプの金属を含む。プラスチックは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、フルオロポリマー、シリコンエラストマー、あらゆるコポリマーを含む。ガラスは典型的にはフロートガラス、ホウケイ酸ガラスなどを意味する。
【0122】
多種多様な基材が本発明による方法において基材として使用されてもよい。好適な基材は、たとえば、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、架橋ポリエチレン(XLPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリブチレン(PB)、ポリイソブテン(PIB)などのポリオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリノルボルネンのフィルムを含む、たとえば平坦なまたは曲面の、剛性のまたは可撓性の基材である。ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などのポリアリレート、ポリブタジエンアクリロニトリル(PBAN)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPO)。ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCTA)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール(PCTG)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル。ポリスルホン(PSU)、ポリアリールスルホン(PAS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPS)などのポリスルホン。PA11、PA12、PA66、PA6、PA46、PA6−co−PA66、PA610、PA69、ポリフタルアミド(PPA)、ビスマレイミド(BMI)、尿素ホルムアルデヒド(UF)などのポリアミド。酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、セルロースプロピオネートなどのセルロース誘導体。ポリウレタン(PU)、ポリイソシアヌレート(PIR)などのポリウレタン。フルオロポリマー(FE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)などのフルオロポリマー。ポリカーボネート(PC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエステルカーボネート。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、エチレン酢酸ビニル、エチレン・ビニルアルコール、エチレンN−ブチルアクリレート、ポリアミド−イミドまたは非晶質固体、たとえばガラスまたは、たとえばシリコンもしくはガリウムヒ素などの結晶性材料などのコポリマー。チタンおよびスチールなどの金属基材もまた使用されてもよい。
【0123】
好ましい基材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、シリコーンゴム、ポリノルボルネン、ガラス、チタン、スチール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0124】
基材は好ましくは成形して、たとえば、生物サンプル(たとえば血液)収集管、マイクロタイタープレート、微小流体器具、バイオセンサ、細胞培養フラスコおよび皿、マイクロチューブ、PCRチューブ、分離フィルター、およびピペットチップにすることができる。
【0125】
好ましくは、コートされるべき表面は合成の疎水性表面である。本発明との関連で疎水性表面は、45°より大きい、より典型的には90°より大きい水との接触角を有すると認めることができる。
【0126】
本発明は、本明細書において前に記載されたような樹枝状分子を含む親水性コーティングを提供されるときには疎水性表面を含む。
【0127】
表面は、船体などの大きい構造体からカテーテルなどの小さい構造体を含むような様々な、生物流体と接触して使用されることになるあらゆる物体に属することができる。本発明は、実験室装置、たとえば、様々な実験室収集管および検体管、医療収集管、マイクロタイタープレート、微小流体チップ、医療機器、およびバイオセンサなどの、ピペット、チューブ材料、容器などで使用するのに特に好適である。本発明は特に使い捨て器具に適用できる。
【0128】
本コーティングの用途としては、生物付着防止または血栓形成防止特性のコーティング、抗炎症性のコーティング、抗菌性コーティング、生物膜形成を防ぐためのコーティング、バイオレセプター用のコーティング、バイオセンサ用のコーティング、採血管および血液接触器具用の撥血液性コーティング、防曇性のコーティングが挙げられる。水溶液による物体の湿潤性を高めるためにコーティングが物体に塗布されることもまた可能である。
【0129】
本コーティングは、生物サンプル(たとえば血液)収集管、マイクロタイタープレート、微小流体器具、バイオセンサ、細胞培養フラスコおよび皿、マイクロチューブ、PCRチューブ、分離フィルター、ピペットチップなどのために有利に使用することができる。本コーティングはまた、カテーテル、移植片、ステントなどの医療機器のために使用されてもよい。
【0130】
本コーティングのための好ましい用途としては、採血管(たとえばVacutainers(登録商標))およびマイクロタイタープレートが挙げられる。
【0131】
本方法で、すべての種類の用途向けに好適な、様々なコーティング組成物を得ることができる。
【0132】
本発明のコーティング材料が防護する生物付着は、その上多様であることができる。これは、一般に、タンパク質、ペプチド、核酸、細胞、酵素、抗体、前述の細菌混合物、血液、尿、唾液の非特異的付着を意味する。生物流体は、たとえば船体の水面下部分が遭遇するような、まさに天然水であることができるし、それは、医療機器の生体内適用中のあらゆる体液、または生体外で使用されるときのもしくは試験管内で使用されるときのあらゆる体液であることができる。またはそれは、たとえば、診断、分析、もしくは合成実験室において目的とされる試験のための、生体分子を含むあらゆる、一般に水性の、溶液または懸濁液であることができる。
【0133】
生物付着防止コーティングとして塗布されたとき、本発明の高分子は、コートされた表面への生体材料の非特異的な吸着を減少させる、および好ましくは阻止するのに役立つ。これは、コートされていない表面上での非特異的な生体材料吸着と比較されたときに、より低い濃度の生体材料が吸着されることを意味する。好ましくは、この相対的減少は、80%超、より好ましくは90%超、最も好ましくは95%超である。これは、既知の生体分子、たとえばタンパク質の溶液または懸濁液を含む水性流体を提供し、標準期間流体中に、試験されるべき表面を標準寸法で浸漬し、表面を流体から取り出し、流体中の生体分子の残存濃度を測定する、簡単な試験で測定することができる。
【0134】
前述において、本発明において使用するのに好適な高分子は、大抵は表面への付着のための疎水性部分を含むと言われる。生物付着防止コーティングに高分子を使用することのさらなる利点は、提供できる材料の大きな汎用性である。こうして、カップリング剤およびイオン結合などの概念もまた、高分子へ組み入れることができる。
【0135】
生物付着防止を目的とした高分子の一般的な利点は、含めることができる親水性部分の高い密度である。これは、これらの同じ親水性部分を含むたとえばブロックコポリマーよりも優れている。
【0136】
その点において、本発明はまた、生物付着防止コーティングとして高分子、特に、末端PEO鎖を好ましくは提供された、本明細書において前に記載されたような高分子を含むフィルム形成組成物の使用を提供する。
【0137】
本発明はまた、次の工程:
(a)前記のようなコーティング材料を含むフィルム形成調合物を提供する工程と;
(b)あらゆる好適な塗布方法、たとえば吹き付けコーティング、浸漬コーティング、吸引式コーティング、インク−コーティングを用いて調合物を基材に塗布する工程と;
(c)実質的にすべての揮発性物質を蒸発させる工程と;
(d)UV硬化、電子ビーム硬化、熱硬化のようなあらゆる好適な架橋技術を用いて架橋する工程と
を含む、非生物付着コーティングを基材に提供する方法にある。
【0138】
フィルム形成調合物(コーティング組成物)を提供するための一般的な技術が公知であることは理解されるであろう。前述の調合物は、本明細書において前に記載されたような高分子、および好適な溶媒または希釈剤を典型的には含むであろう。
【0139】
本発明は、実施例によってさらに説明されるが、それらに限定されない。
【0140】
[実施例]
[実施例1〜6ならびに比較例A、BおよびC]
[原材料]
Jeffamine(登録商標)M−1000(Huntsman)は、3/19のプロピレンオキシド(PO)/エチレンオキシド(EO)比の、約1kDaのポリエーテルモノアミンである。溶媒のトルエン、およびメタノールは、Merck Chemicalsから購入した。ラジカル開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンはSigma Aldrichから入手した。
【0141】
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)および超分岐トリメチロールプロパン(15)エトキシル化トリアクリレート(TMPEO)をベースとする超分岐アクリレート機能性オリゴマーは、国際公開第2009/037345号パンフレットに記載されている方法に従ってDSMによって製造された。これらの超分岐アクリレート機能性オリゴマーは、マイケル付加によって製造され、超分岐ポリエステルアミンアクリレートをもたらした。反応の第1段階は、HDDAまたはTMPEOコアのアクリレートへのジエタノールアミンのマイケル付加、引き続く新たに導入されたヒドロキシル基とのアクリル酸の縮合であった(スキーム1)。分岐は、新たに形成されたアクリレート上で再び同じ方法によって起こることができ、総合的なより高度の分岐をもたらす。TMPEOの超分岐の生成物は、1分子当たり平均6.2個のアクリレートを含有すると測定され、超分岐HDDAについてこの値は1分子当たり平均6.4個のアクリレートであった。
【化1】





スキーム1:新規な超分岐ポリエステルアミンアクリレートの製造の概要
【0142】
[Jeffamine(登録商標)M−1000のマイケル付加を使った超分岐ポリマーの合成]
反応を、様々な量のJeffamine M−1000量で行った。10gの超分岐HDDAを100mLのトルエンに溶解させた。選択された量のJeffamine(登録商標)M−1000をトルエンに溶解させ、次に、室温で撹拌しながら5分間でHDDAに滴加した。その後反応混合物を室温で15時間撹拌した。次にトルエンを蒸発させ、生成物を減圧で50℃でのオーブン中で乾燥させた。同じ反応を、超分岐TMPEOについて行った。詳細については表1を参照されたい。
【0143】
【表1】



【0144】
[PETフィルム上のコーティング]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(5cm×15cm)をエタノールで洗浄し、その後dHOで十分にリンスした。次にフィルムをN−流れで乾燥させた。
【0145】
きれいにしたフィルムを、メタノール中2w/v%の上記の合成した超分岐ポリマーの1つおよび2モル%の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(アクリレート官能性のための光開始剤)からなる調合物中で浸漬コートした。浸漬コーティング引張速度を1センチメートル当たり17秒に設定し、サンプルをコーティング直後にUV−RIG(各面1J/cm)で硬化させた。様々な百分率のJeffamine(登録商標)M−1000マイケル付加Jeffamine(登録商標)M−1000超分岐TMPEOの比較結果のために同じ調合物タイプを使用した。
【0146】
[PETチューブ中のコーティング]
PETチューブを4cmの長さにカットした。コーティング前に、チューブをMeOHで洗浄し、その後dHOでリンスした。チューブを調合物で完全に満たした後、調合物を細いスチール針によって制御された一定速度で吸引した。調合物を抜き出した後、針の吸引をさらに10秒間保った。コーティングを5分間風乾し、その後コーティングを、Macam Flexicure Controller(UVL5101−8 2102)によるUV(2× 1J/cm)への露光によって架橋した。
【0147】
[PETチューブにおける放射標識BSA吸着試験]
タンパク質吸着実験のために125Iウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin)(37.0〜185kBq/μg)をPerkin Elmerから注文した。
125I−BSA緩衝液:125I−BSAを、標識していないBSA入りリン酸塩緩衝液(40mMのKHPO、10mMのNaHPO・2HO、150mMのNaCl、0.15μMのBSA、pH7.4)中に74kBq/mLに希釈した。
【0148】
750μLの125I−BSA緩衝液をPETチューブに加えた。チューブを室温で20時間インキュベートした。次に溶液をピペットで除去し、チューブを1000μLのdHOで3回洗浄した。洗浄後に、チューブを空の20mL液体シンチレーションカウンター(LSC)バイアルに入れた。このバイアルを20mLのPico−Fluor 15 LSCカクテルで満たした。次に液体シンチレーション計数をPackard Liquid Scintillation Analyzer 1900TRで行った。コートしていないチューブを対照サンプルとして測定し、またバックグランド放射能も測定した。5つの平行サンプルを試験した。平均した結果を用いる。
【0149】
[スチールウール試験]
この試験はスチールウール摩耗と言われる。この試験においては、0000等級のスチールウールをコートされた表面(1インチ)に押し付けて約250グラムを保証する。サンプルを、10サイクル(5cm前方および5cm後方が1サイクルである)の間重りを付けたスチールウール下で一直線に往復させる。表面を次に引っ掻き傷について目視検査する。結果をA、B、C、DおよびEとして分類する。Aについては引っ掻き傷がまったく見られず、Eについてはコーティングが完全に傷付けられるかまたは除去さえされる。
【0150】
【表2】



【0151】
表2の結果から理解できるように、超分岐アクリルコアへのJeffamineの付加はタンパク質吸着の劇的な低下をもたらす。約10モル%で、タンパク質吸着は最小限になるが、残存アクリル基は許容できる機械的耐久性を高める(耐スチールウール性を参照されたい)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に生物付着防止コーティングを提供するための好適なコーティング材料であって、
(A)マイケル型受容体基とマイケル型供与体基との間のマイケル型反応を受けることができる反応性基を含む高分子足場、
(B)前記高分子足場に結合した少なくとも1つの機能性部分であって、前記少なくとも1つの機能性部分が親水性部分を含み、前記高分子足場上の反応性基と反応性の親水性部分とを含む、マイケル型反応から誘導できる少なくとも1つの機能性部分、および
(C)前記コーティング材料を架橋することができる少なくとも1つの部分
を含む高分子を含むコーティング材料。
【請求項2】
前記コーティング材料を架橋することができる前記部分が前記高分子足場に含まれるかまたは前記高分子足場に結合したさらなる機能性部分である、請求項1に記載のコーティング材料。
【請求項3】
前記反応性の親水性部分が親水性部分およびマイケル型供与体基を含み、前記高分子足場上の前記反応性基がMichel型受容体基を含む、請求項1または2に記載のコーティング材料。
【請求項4】
前記マイケル型供与体基が、窒素、リン、ヒ素、酸素、硫黄、スズ、セレンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される供与体原子を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【請求項5】
前記反応性の親水性部分が、
(A)窒素供与体原子を含むマイケル型供与体基を含む反応性部分;および
(B)前記供与体基の反対端の周辺部に配置されたポリ(エチレンオキシド)基を含む親水性部分
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【請求項6】
前記高分子足場および反応性の親水性部分上のマイケル型受容体基対マイケル型供与体基の割合が、前記高分子足場および反応性の親水性部分を含むマイケル型反応の完了時に、前記高分子が、コーティング組成物を架橋することができる少なくとも1つの残存マイケル型反応性基を含むようなものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【請求項7】
前記高分子足場が、環状酸無水物またはジカルボン酸、ならびにヒドロキシアルキルアミンおよび/またはエステル分岐基に基づく構成要素を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【請求項8】
前記高分子足場が、オレフィン系不飽和化合物と少なくとも2個のヒドロキシル基を含むアミンとから誘導できる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【請求項9】
前記アミンが式:
−NH−R
(式中、RおよびRは独立して、ヒドロキシル化炭化水素基の群から選択される)
で表される、請求項8に記載のコーティング材料。
【請求項10】
前記親水性部分が親水性ポリマー分岐を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のコーティング材料を含む非生物付着コーティングを含む物品。
【請求項12】
生物付着防止コーティングにおける請求項1〜10のいずれか一項に記載のコーティング材料の使用であって、前記生物付着が、タンパク質、ペプチド、核酸、酵素、抗体、細胞および微生物、上述のものと血液との混合物の非特異的付着を意味する使用。
【請求項13】
次の工程:
(a)請求項1〜10のいずれか一項に記載のコーティング材料を含むフィルム形成調合物を提供する工程と;
(b)前記調合物を基材に塗布する工程と;
(c)実質的にすべての揮発性物質を蒸発させる工程と;
(d)前記コーティングを架橋する工程と
を含む、非生物付着コーティングを基材に提供する方法。
【請求項14】
(A)前記高分子が、マイケル型受容体基とマイケル型供与体基との間のマイケル型反応を受けることができる少なくとも1つの反応性基を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のコーティング材料を提供する工程と;
(B)前記コーティング材料の機能的性能を所定の規格に対して評価する工程と;
(C)工程(B)において評価された機能的性能に基づいて、機能性部分を加えて前記反応性基の少なくとも一部と反応させる工程と;
(D)前記コーティング材料の前記機能的性能が前記所定の規格を満たすまで工程(B)および(C)を繰り返す工程と
を含むコーティング材料の機能性をカスタマイズするためのシステム。
【請求項15】
生物付着防止コーティングにおける請求項1〜10のいずれか一項に定義されるような高分子の使用。

【公表番号】特表2012−521472(P2012−521472A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501309(P2012−501309)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053924
【国際公開番号】WO2010/108985
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】